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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1295663
審判番号 不服2012-20724  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-22 
確定日 2014-12-26 
事件の表示 特願2008-512313「通気性ポリウレタンベースの毛髪固定剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月23日国際公開、WO2006/124250、平成20年11月20日国内公表、特表2008-540647〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2006年4月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年5月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年4月7日付けで手続補正書が提出され、平成23年9月26日付けで拒絶理由が通知され、平成24年3月26日に意見書、手続補正書及び手続補足書が提出されたところ、同年6月18日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月22日に審判請求がされるとともに、手続補正書が提出され、同年11月12日に手続補正書(審判請求書)及び手続補足書が提出され、当審において、平成26年1月27日付けで審尋がされ、それに対する回答がなされなかったものである。

第2 本件出願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明
本件出願に係る発明は、平成24年10月22日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?27に記載された事項により特定されるとおりのものであり、このうち請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである(なお、当該手続補正書による補正は、補正前の請求項1の「…を含む毛髪固定剤組成物。」を「…を含む、毛髪固定剤組成物。」とする補正であって特許法第17条の2第5項第3号に規定する誤記の訂正に該当するものであるから、補正の目的要件を満たすものであり独立特許要件についての検討を要さないものである。)。
「I)垂直透湿度(MVTR)が500グラム/m^(2)/24時間より大きく、
(a)ポリウレタンの12重量%から80重量%を構成する量のポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位であって、(i)前記ポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位におけるアルキレンオキシド基は、2個から10個の炭素原子を有し、無置換であり、(ii)前記アルキレンオキシド基の少なくとも50重量%は、エチレンオキシドであり、(iii)前記側鎖単位の前記量は、前記側鎖単位の分子量が600グラム/モル未満のときは少なくとも30重量%であり、前記側鎖単位の分子量が600グラム/モルから1,000グラム/モルのときは少なくとも15重量%であり、前記側鎖単位の分子量が1,000グラム/モルより大きいときは少なくとも12重量%であるポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位と、
(b)前記ポリウレタンの25重量%未満を構成する量のポリ(エチレンオキシド)主鎖単位と
を含むポリウレタンと、
II)水、有機溶媒、およびそれらの混合物から選択される希釈剤と、
III)ポリオキシエチレン化酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、酢酸ビニルクロトン酸コポリマー、メタクリル酸ビニルコポリマー、ポリビニルメチルエーテル(PVM)/マレイン酸(MA)のモノアルキルエステル、アクリル酸/アクリル酸エチル/N-tert-ブチル-アクリルアミドターポリマー、ポリ(メタクリル酸/アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)、アクリレートコポリマー、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、アクリレート/オクチルアクリルアミドコポリマー、酢酸ビニル(VA)/クロトネート/ネオデカン酸ビニルコポリマー、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、ポリ(N-ビニルホルムアミド)、スルホン酸ポリスチレンナトリウム、ポリクオタニウム、ポリイミド-1、ポリウレタン、ビニルピロリドン(VP)/アクリレート/ラウリルメタクリレートコポリマー、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミン/アクリレートコポリマー、メタクリロールエチルベタイン/アクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、VP/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、VP/メタクリルアミド/ビニルイミダゾールコポリマー、VP/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPA)アクリレートコポリマー、VP/ビニルカプロラクタム/DMAPAアクリレートコポリマー、ビニルカプロラクタム/VP/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、VA/マレイン酸ブチル/アクリル酸イソボルニルコポリマー、VA/クロトネートコポリマー、アクリレート/アクリルアミドコポリマー、VA/クロトネート/プロピオン酸ビニルコポリマー、VP/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニルターポリマー、VP/酢酸ビニルコポリマー、VP/アクリレートコポリマー、アクリレート/ヒドロキシアクリレートコポリマー、アクリレート/ヒドロキシエステルアクリレートコポリマー、アクリレート/メタクリル酸ステレス-20コポリマー、アクリル酸tert-ブチル/アクリル酸コポリマー、ジグリコール/シクロヘキサンジメタノール/イソフタレート/スルホイソフタレートコポリマー(ポリエステル-1)、VA/アルキルマレエート半エステル/N置換アクリルアミドターポリマー、ビニルカプロラクタム/VP/メタクリロアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドターポリマー、メタクリレート/アクリレートコポリマー/アミン塩、ポリビニルカプロラクタム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ポリ(メタクリル酸/アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPSA)、エチレンカルボキサミド(EC)/AMPSA/メタクリル酸(MAA)、ポリウレタン/アクリレートコポリマーおよびヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドグアー、アクリレートコポリマー、アクリレートクロスポリマー、AMPアクリレート/メタクリル酸アリルコポリマー、ポリアクリレート-6、ポリアクリレート-8、ポリアクリレート-9、ポリアクリレート-14、アクリレート/ラウリルアクリレート/ステアリルアクリレート/エチルアミンオキシドメタクリレートコポリマー キトサンのピロリドンカルボン酸塩、グリコール酸キトサン、またはカチオン性ポリガラクトマンナンから選択される、少なくとも1種の第2の毛髪固定剤ポリマーと
を含む、毛髪固定剤組成物。」

第3 拒絶査定の理由
平成24年6月18日付け拒絶査定は、「この出願については、平成23年9月26日付け拒絶理由通知書に記載した理由3によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、当該拒絶査定の備考欄には、理由3について「…請求項1?27に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。」と記載されている。
そして、引用文献1は、当該拒絶理由通知によれば次のとおりである。

引用文献1:国際公開第03/087183号

第4 当審の判断
当審は、本願発明は、前記拒絶査定における理由によって特許を受けることができないものと判断する。

1.引用文献1に記載された事項
本願の優先日(2005年5月18日)前に頒布されたことが明らかな引用文献1には、次の事項が記載されている(なお、摘示事項には、引用文献1の邦文のパテントファミリーである特表2005-522543号公報の対応する記載を付すとともに、引用文献1の該当箇所に、特表2005-522543号公報の対応する箇所を括弧書きで付して、表記する。)。

a."CLAIMS
1. A polyurethane composition having an upright moisture vapor transmission rate(MVTR) of more than about 500 gms/m^(2)/24 hr and comprising:
(a)poly(alkylene oxide) side-chain units in an amount comprising about 12wt.% to about 80wt.% of said polyurethane, wherein (i)alkylene oxide groups in said poly(alkylene oxide) side-chain units have from 2 to 10 carbon atoms and are unsubstituted, subsitituted, or both unsubstituted and subsitituted, (ii)at least about 50wt.% of said alkylene oxide groups are ethylene oxide, and (iii)said amount of said side-chain units is at least about 30wt.% when the molecular weight of said side-chain units is less than about 600 grams/mole, at least about 15wt.% when the molecular weight of said side-chain units is from about 600 to about 1,000 grams/mole, and at least about 12wt.% when the molecular weight of said side-chain units is more than about 1,000 grams/mole, and
(b)poly(alkylene oxide) main-chain units in an amount comprising less than about 25wt.% of said polyurethane.

54.A personal care composition comprising a topically acceptable phase, together with a polyurethane having an upright moisture vapor transmission rate(MVTR) of more than about 500 gms/m^(2)/24 hr and comprising:
(a)poly(alkylene oxide) side-chain units in an amount comprising about 12wt.% to about 80wt.% of said polyurethane, wherein (i)alkylene oxide groups in said poly(alkylene oxide) side-chain units have from 2 to 10 carbon atoms and are unsubstituted, subsitituted, or both unsubstituted and subsitituted, (ii)at least about 50wt.% of said alkylene oxide groups are ethylene oxide, and (iii)said amount of said side-chain units is at least about 30wt.% when the molecular weight of said side-chain units is less than about 600 grams/mole, at least about 15wt.% when the molecular weight of said side-chain units is from about 600 to about 1,000 grams/mole, and at least about 12wt.% when the molecular weight of said side-chain units is more than about 1,000 grams/mole, and
(b)poly(alkylene oxide) main-chain units in an amount comprising less than about 25wt.% of said polyurethane.
…"
(「【特許請求の範囲】
【請求項1】約500gms/m^(2)/24hrを上回る垂直水蒸気透過率(MVTR)を有するポリウレタン組成物であって、
(a)前記ポリウレタンの約12?約80重量%の量のポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位と、
(b)前記ポリウレタンの約25重量%未満の量のポリ(エチレンオキサイド)主鎖単位と、
を含んでなる前記ポリウレタン組成物において、
(i)前記ポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位中のアルキレンオキサイド基は2?10個の炭素原子を有し、かつ、非置換、置換、または非置換および置換されており、
(ii)前記アルキレンオキサイド基の少なくとも約50重量%はエチレンオキサイドであり、そして
(iii)前記側鎖単位の分子量が約600グラム/モルよりも低いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約30重量%であり、前記側鎖単位の分子量が約600?約1,000グラム/モルのとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約15重量%であり、そして前記側鎖単位の分子量が約1,000グラム/モルよりも高いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約12重量%である、
ことを特徴とする、前記ポリウレタン組成物。

【請求項54】局所的に許容できる相と、約500gms/m^(2)/24hrを上回る垂直水蒸気透過率(MVTR)を有するポリウレタンとを含んでなるパーソナルケア組成物であって、
前記ポリウレタンは、
(a)前記ポリウレタンの約12?約80重量%の量のポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位と、
(b)前記ポリウレタンの約25重量%未満の量のポリ(エチレンオキサイド)主鎖単位と、
を含んでなり、
(i)前記ポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位中のアルキレンオキサイド基は2?10個の炭素原子を有し、かつ、非置換、置換、または非置換および置換されており、
(ii)前記アルキレンオキサイド基の少なくとも約50重量%はエチレンオキサイドであり、そして
(iii)前記側鎖単位の分子量が約600グラム/モルよりも低いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約30重量%であり、前記側鎖単位の分子量が約600?約1,000グラム/モルのとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約15重量%であり、そして前記側鎖単位の分子量が約1,000グラム/モルよりも高いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約12重量%である、
ことを特徴とする、前記組成物。」、
第87?109頁”CLAIMS”(第2?10頁【特許請求の範囲】))

b."Overview of Applications
The waterborne polyurethane dispersions of the present invention can be processed by methods well known to those skilled in the art(including blending with other polymers and materials) to make coatings and films and other articles having excellent breathability, i.e., moisuture vapor transmission rates("MVTR") … Applications include …and personal care products such as skin care, hair care, and nail care products …."
(「用途の概要
本発明の水系ポリウレタン分散液は、優れた通気性、すなわち、水蒸気透過率(MVTR)を有するコーティング、フィルムおよび他の成品を製造するための当業者らに周知である方法(他のポリマーおよび材料と混ぜ合わせることを含む)によって加工することができる。…用途としては、…スキンケア製品、ヘアケア製品およびネイルケア製品のごときパーソナルケア製品…などが挙げられる。」、
第29?30頁”Overview of Applications”(段落【0048】?【0049】))

c."Personal Care Applications
The waterborne polyurethane dispersions of the present invention are desirable in personal care compositions because of negative customer perceptions regarding the presence of NMP, especially in skin care products such as cosmetics. The waterborne polyurethane dispersions can be used as film formers in personal care formations to provide desirable properties such as the following: water or moisuture resistance, luster, better spreadability of sunscreen actives, and the like. Such dispersions can be incorporated into personal care products such as…, as well as nail care products, hair care products, and the like. Such personal care products can be lotions, gels, sprays, sticks, compressed liquids, liquid suspensions, and the like.
Personal care compositions can include the waterborne polyurethane dispersions of this invention, mixed and optionally reacted further with a topically acceptable phase. The term "topically acceptable phase" means any combination of optional liquid or solid ingredients suitable for a desired personal care composition in combination with(and sometimes reacted with) the plasticized waterborne polyurethane dispersions described heretofore. Such optional ingredients can comprise one or more of the wide variety of components well known to those skilled in the art, such as … diluents …,as well as numerous other optional components for enhancing and maintaining the properties of the personal care composition. …
A diluent such as water(often deionized) can be used and typically comprises about 5wt.% to about 99wt.%, and preferably about 20wt.% to about 99wt.% of the total weight of the personal care compositions of the present invention.…"
(「パーソナルケア用途
本発明の水系ポリウレタン分散液は、特に化粧品のごときスキンケア製品におけるNMPの存在に対して利用者が否定的な見解を示しているため、パーソナルケア組成物において望ましいとされる。前記水系ポリウレタン分散液は、以下のような望ましい特性、例えば耐水性または耐湿性、光沢、日焼け防止活性剤のより良い展延性などを実現するために、パーソナルケア配合物中で膜形成剤として用いることができる。そのような分散液は、…並びにネイルケア製品、ヘアケア製品などのごときパーソナルケア製品に導入することができる。そのようなパーソナルケア製品としては、ローション、ジェル、スプレー、スティック、圧縮液、液体懸濁液などが挙げられる。
パーソナルケア組成物は、局所的に許容できる相と混ぜ合わされて、さらに任意に反応させられた本発明の水系ポリウレタン分散液を含有することができる。「局所的に許容できる相」という用語は、前記可塑化された水系ポリウレタン分散液と組み合わされた(および場合によっては反応した)所望のパーソナルケア組成物に好適な任意の液体または固体材料の任意の組み合わせを意味する。そのような任意の材料は、当業者らに周知である各種成分、例えば…、希釈剤、…、並びに、パーソナルケア組成物の特性を強化および維持するための数多くの他の任意の成分、のうちの1種以上を含んでなっていてもよい。…
水(脱イオン水であることが多い)のごとき希釈剤を用いることができ、一般に、本発明のパーソナルケア組成物の総重量の約5?約99重量%、好ましくは約20?約99重量%を占める。…」、
第34?48頁 ”Personal Care Applications ”(段落【0056】?【0074】))

2.検討
(1)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、
・「局所的に許容できる相と、約500gms/m^(2)/24hrを上回る垂直水蒸気透過率(MVTR)を有するポリウレタンとを含んでなるパーソナルケア組成物であって、前記ポリウレタンは、
(a)前記ポリウレタンの約12?約80重量%の量のポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位と、
(b)前記ポリウレタンの約25重量%未満の量のポリ(エチレンオキサイド)主鎖単位と、
を含んでなり、
(i)前記ポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位中のアルキレンオキサイド基は2?10個の炭素原子を有し、かつ、非置換、置換、または非置換および置換されており、
(ii)前記アルキレンオキサイド基の少なくとも約50重量%はエチレンオキサイドであり、そして
(iii)前記側鎖単位の分子量が約600グラム/モルよりも低いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約30重量%であり、前記側鎖単位の分子量が約600?約1,000グラム/モルのとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約15重量%であり、そして前記側鎖単位の分子量が約1,000グラム/モルよりも高いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約12重量%である、
ことを特徴とする、前記組成物。」(摘示a)、
・「局所的に許容できる相」として、水等の希釈剤を用いることができること(摘示c)、
・「パーソナルケア」の用途として「ヘアケア」の用途があること(摘示b、c)、
が記載されている。
そして、以上の事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「希釈剤としての水と、約500gms/m^(2)/24hrを上回る垂直水蒸気透過率(MVTR)を有するポリウレタンとを含んでなるヘアケア組成物であって、前記ポリウレタンは、
(a)前記ポリウレタンの約12?約80重量%の量のポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位と、
(b)前記ポリウレタンの約25重量%未満の量のポリ(エチレンオキサイド)主鎖単位と、
を含んでなり、
(i)前記ポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位中のアルキレンオキサイド基は2?10個の炭素原子を有し、かつ、非置換、置換、または非置換および置換されており、
(ii)前記アルキレンオキサイド基の少なくとも約50重量%はエチレンオキサイドであり、そして
(iii)前記側鎖単位の分子量が約600グラム/モルよりも低いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約30重量%であり、前記側鎖単位の分子量が約600?約1,000グラム/モルのとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約15重量%であり、そして前記側鎖単位の分子量が約1,000グラム/モルよりも高いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約12重量%である、前記組成物。」

(2)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「希釈剤としての水」は、本願発明の「II)水、有機溶媒、およびそれらの混合物から選択される希釈剤」の水が選択された場合の希釈剤に相当する。

また、引用発明の、
・約500gms/m^(2)/24hrを上回る垂直水蒸気透過率(MVTR)を有するポリウレタン、
及び、当該ポリウレタンに係る、
・(a)前記ポリウレタンの約12?約80重量%の量のポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位、

・(b)前記ポリウレタンの約25重量%未満の量のポリ(エチレンオキサイド)主鎖単位、

・(i)前記ポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位中のアルキレンオキサイド基は2?10個の炭素原子を有し、かつ、非置換、置換、または非置換および置換されており、

・(ii)前記アルキレンオキサイド基の少なくとも約50重量%はエチレンオキサイドであり、

・(iii)前記側鎖単位の分子量が約600グラム/モルよりも低いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約30重量%であり、前記側鎖単位の分子量が約600?約1,000グラム/モルのとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約15重量%であり、そして前記側鎖単位の分子量が約1,000グラム/モルよりも高いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約12重量%である、
との事項は、順に、本願発明の、
・I)垂直透湿度(MVTR)が500グラム/m^(2)/24時間より大きく…ポリウレタン、

・(a)ポリウレタンの12重量%から80重量%を構成する量のポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位、

・(b)前記ポリウレタンの25重量%未満を構成する量のポリ(エチレンオキシド)主鎖単位、

・(i)前記ポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位におけるアルキレンオキシド基は、2個から10個の炭素原子を有し、無置換であり、

・(ii)前記アルキレンオキシド基の少なくとも50重量%は、エチレンオキシドであり、
(引用発明の「…非置換、置換、または非置換および置換…」のうち「非置換」に対応するものと認められる。)

・(iii)前記側鎖単位の前記量は、前記側鎖単位の分子量が600グラム/モル未満のときは少なくとも30重量%であり、前記側鎖単位の分子量が600グラム/モルから1,000グラム/モルのときは少なくとも15重量%であり、前記側鎖単位の分子量が1,000グラム/モルより大きいときは少なくとも12重量%であるポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位、

に相当するから、引用発明の、
「約500gms/m^(2)/24hrを上回る垂直水蒸気透過率(MVTR)を有するポリウレタンとを含んでなる…組成物であって、前記ポリウレタンは、
(a)前記ポリウレタンの約12?約80重量%の量のポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位と、
(b)前記ポリウレタンの約25重量%未満の量のポリ(エチレンオキサイド)主鎖単位と、
を含んでなり、
(i)前記ポリ(アルキレンオキサイド)側鎖単位中のアルキレンオキサイド基は2?10個の炭素原子を有し、かつ、非置換、置換、または非置換および置換されており、
(ii)前記アルキレンオキサイド基の少なくとも約50重量%はエチレンオキサイドであり、そして
(iii)前記側鎖単位の分子量が約600グラム/モルよりも低いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約30重量%であり、前記側鎖単位の分子量が約600?約1,000グラム/モルのとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約15重量%であり、そして前記側鎖単位の分子量が約1,000グラム/モルよりも高いとき、前記側鎖単位の量は少なくとも約12重量%である、前記組成物。」は、
本願発明の、
「I)垂直透湿度(MVTR)が500グラム/m^(2)/24時間より大きく、
(a)ポリウレタンの12重量%から80重量%を構成する量のポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位であって、(i)前記ポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位におけるアルキレンオキシド基は、2個から10個の炭素原子を有し、無置換であり、(ii)前記アルキレンオキシド基の少なくとも50重量%は、エチレンオキシドであり、(iii)前記側鎖単位の前記量は、前記側鎖単位の分子量が600グラム/モル未満のときは少なくとも30重量%であり、前記側鎖単位の分子量が600グラム/モルから1,000グラム/モルのときは少なくとも15重量%であり、前記側鎖単位の分子量が1,000グラム/モルより大きいときは少なくとも12重量%であるポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位と、
(b)前記ポリウレタンの25重量%未満を構成する量のポリ(エチレンオキシド)主鎖単位と
を含むポリウレタン…を含む、組成物。」に相当する。

そうすると、両者は、
「I)垂直透湿度(MVTR)が500グラム/m^(2)/24時間より大きく、
(a)ポリウレタンの12重量%から80重量%を構成する量のポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位であって、(i)前記ポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位におけるアルキレンオキシド基は、2個から10個の炭素原子を有し、無置換であり、(ii)前記アルキレンオキシド基の少なくとも50重量%は、エチレンオキシドであり、(iii)前記側鎖単位の前記量は、前記側鎖単位の分子量が600グラム/モル未満のときは少なくとも30重量%であり、前記側鎖単位の分子量が600グラム/モルから1,000グラム/モルのときは少なくとも15重量%であり、前記側鎖単位の分子量が1,000グラム/モルより大きいときは少なくとも12重量%であるポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位と、
(b)前記ポリウレタンの25重量%未満を構成する量のポリ(エチレンオキシド)主鎖単位と
を含むポリウレタンと、
II)水、有機溶媒、およびそれらの混合物から選択される希釈剤と、
を含む、組成物。」
の点で一致し、次の点で相違すると認められる。

[相違点]本願発明は、組成物の用途が「毛髪固定剤」であり、「III)ポリオキシエチレン化酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、酢酸ビニルクロトン酸コポリマー、メタクリル酸ビニルコポリマー、ポリビニルメチルエーテル(PVM)/マレイン酸(MA)のモノアルキルエステル、アクリル酸/アクリル酸エチル/N-tert-ブチル-アクリルアミドターポリマー、ポリ(メタクリル酸/アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)、アクリレートコポリマー、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、アクリレート/オクチルアクリルアミドコポリマー、酢酸ビニル(VA)/クロトネート/ネオデカン酸ビニルコポリマー、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、ポリ(N-ビニルホルムアミド)、スルホン酸ポリスチレンナトリウム、ポリクオタニウム、ポリイミド-1、ポリウレタン、ビニルピロリドン(VP)/アクリレート/ラウリルメタクリレートコポリマー、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミン/アクリレートコポリマー、メタクリロールエチルベタイン/アクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、VP/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、VP/メタクリルアミド/ビニルイミダゾールコポリマー、VP/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPA)アクリレートコポリマー、VP/ビニルカプロラクタム/DMAPAアクリレートコポリマー、ビニルカプロラクタム/VP/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、VA/マレイン酸ブチル/アクリル酸イソボルニルコポリマー、VA/クロトネートコポリマー、アクリレート/アクリルアミドコポリマー、VA/クロトネート/プロピオン酸ビニルコポリマー、VP/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニルターポリマー、VP/酢酸ビニルコポリマー、VP/アクリレートコポリマー、アクリレート/ヒドロキシアクリレートコポリマー、アクリレート/ヒドロキシエステルアクリレートコポリマー、アクリレート/メタクリル酸ステレス-20コポリマー、アクリル酸tert-ブチル/アクリル酸コポリマー、ジグリコール/シクロヘキサンジメタノール/イソフタレート/スルホイソフタレートコポリマー(ポリエステル-1)、VA/アルキルマレエート半エステル/N置換アクリルアミドターポリマー、ビニルカプロラクタム/VP/メタクリロアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドターポリマー、メタクリレート/アクリレートコポリマー/アミン塩、ポリビニルカプロラクタム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ポリ(メタクリル酸/アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPSA)、エチレンカルボキサミド(EC)/AMPSA/メタクリル酸(MAA)、ポリウレタン/アクリレートコポリマーおよびヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドグアー、アクリレートコポリマー、アクリレートクロスポリマー、AMPアクリレート/メタクリル酸アリルコポリマー、ポリアクリレート-6、ポリアクリレート-8、ポリアクリレート-9、ポリアクリレート-14、アクリレート/ラウリルアクリレート/ステアリルアクリレート/エチルアミンオキシドメタクリレートコポリマー キトサンのピロリドンカルボン酸塩、グリコール酸キトサン、またはカチオン性ポリガラクトマンナンから選択される、少なくとも1種の第2の毛髪固定剤ポリマー」(以下、「第2の毛髪固定剤ポリマー」という。)を含むものであるのに対して、引用発明は、組成物の用途が「ヘアケア組成物」であり、第2の毛髪固定剤ポリマーを含むことを発明特定事項としないものである点。

(3)相違点についての検討
まず、[相違点]のうち、組成物の用途に係る点について検討する。
引用文献1の「…水系ポリウレタン分散液は、…、パーソナルケア配合物中で膜形成剤として用いることができる。…」(摘示c)との記載等からみて、引用発明において、I)のポリウレタンからなる成分は、パーソナルケア配合物中で膜形成剤の働きをするものであって、引用発明は斯かる働きをするポリウレタンを利用するヘアケア組成物に係る発明と認められる。
そして、膜形成剤の働きをする組成物が毛髪を固定する働きをし得ることは、周知の技術的事項と認められる(例えば、毛髪固定用途のためのポリウレタンに係る発明を開示した特開平11-310520号の段落【0005】には、従来の技術について、「ほとんどの毛髪固定組成物は、固定剤として機能するフィルム形成ポリマー…を含有する。…」と、膜形成剤に相当するものと解されるフィルム形成ポリマーが、通常、毛髪固定組成物において用いられることが開示されている。なお、毛髪固定剤(整髪剤)がヘアケア組成物の一種類であることは技術常識と認められる。)。
そうすると、膜形成剤の働きをするポリウレタンを含むヘアケア組成物である引用発明について、ポリウレタンが毛髪を固定する働きをすることを期待して、引用発明を毛髪固定剤の用途で用いることは、当業者が周知の技術的事項を考慮して、容易に想到し得たことと認められる。

次に、[相違点]のうち、第2の毛髪固定剤ポリマーを含むことに係る点について検討する。
毛髪固定剤組成物において、複数の毛髪固定剤ポリマーを用いることは、周知の技術であって、また、本願発明において特定される各種の「第2の毛髪固定剤ポリマー」は、周知の毛髪固定剤ポリマーと認められる(例えば、前出の特開平11-310520号の段落【0037】には、「…本発明の毛髪固定ポリウレタンは、当業界で公知の他の毛髪固定ポリマー…と共に…用いることができる。」と、毛髪固定剤ポリマーであるポリウレタンと他の毛髪固定剤ポリマーを併用し得ることが開示されており、併用し得る毛髪固定ポリマーとして、「酢酸ビニル/クロトン酸エステル/ネオデカン酸ビニルコポリマー」、「アクリレートコポリマー」(「酢酸ビニル(VA)/クロトネート/ネオデカン酸ビニルコポリマー」、「アクリレートコポリマー」にあたる。)等の、本願発明の第2の毛髪固定剤ポリマーにあたるものが開示されている。)ことを考慮すると、毛髪固定剤ポリマーであるポリウレタンを含有する引用発明において、本願発明で特定される第2の毛髪固定剤ポリマーを用いることは、当業者が、周知技術を考慮して容易に想到し得たことと認められる。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の記載をみても、第2の毛髪固定剤ポリマーを用いることについては、「好適な必要に応じた毛髪固定剤ポリマーとしては、例えば、…、限定することなく、ポリオキシエチレン化酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、…、の一種または複数種を含む。…」(段落【0095】)との記載があるのみであって、それを用いることによって、当業者が予測し得ない顕著な効果が奏されるものとは認められない。

以上のとおりであるから、[相違点]に係る本願発明の構成の点は、周知技術ないし周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たものといえる。

(4)本願発明の効果について
本願発明は、前記「第2」に記載したとおりのI)のポリウレタンからなる成分と、II)の希釈剤からなる成分と、III)の第2の毛髪固定剤ポリマーからなる成分とを含む毛髪固定剤組成物に係る発明であるところ、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参照しても、実施例としては、斯かる成分を含む毛髪固定剤組成物の例は何ら開示されておらず(ポリウレタン単独での垂直水蒸気透過率(MVTR)のデータ等を示した実施例が開示されるのみである。)、発明の詳細な説明の記載全体を参照しても、本願発明の毛髪固定剤組成物によって、毛髪固定剤組成物の如何なる特性が改善されるものであるのかについて、何ら具体的に開示されていないことを考慮すると、本願明細書の発明の詳細な説明を参照しても、本願発明の毛髪固定剤組成物によって奏される効果については、何ら具体的に確認できないものといわざるを得ないから、本願発明が、引用文献1に記載された技術的事項、周知技術、周知の技術的事項から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものとは認められない。

なお、請求人は、平成24年3月26日付け手続補足書によって実験成績証明書、平成24年11月13日付け手続補足書によって甲第2?13号証を提出して、審判請求書において、
「4.2 …粘性特性および濁度(透明性)が毛髪固定剤組成物に重要な特性であることは、ヘアケア製品の分野および毛髪固定剤の分野における当業者にとっては当然の周知の技術常識です。明細書に周知の技術常識を記載することは要求されませんので、本願明細書においてはそのような当然の周知の技術常識について記載を省略したものに過ぎません。そのため、本願発明においても粘性特性や濁度が重要であることは当業者が理解できることですので、甲第1号証の実験データは参酌されるべきものであると思料致します。
4.3 上述しました毛髪固定剤の分野の技術常識に関する文献として、甲第2号証?甲第13号証を提出致します。…」(審判請求書第2頁)
との主張をしている。
そこで、斯かる主張について検討する。

当該主張は、粘性特性および濁度(透明性)が毛髪固定剤組成物にとって重要な特性であることは技術常識であって、本願発明においても粘性特性や濁度が重要であることは当業者が理解できることであるから、甲第1号証の実験成績証明書の実験データは、本願発明の効果について参酌されるべきものであることを主張するものと認められる。

しかしながら、一般に粘性特性および濁度(透明性)が毛髪固定剤組成物の重要な特性であることが技術常識であったとしても、本願発明がそれらの特性(すなわち粘度、降伏値、濁度)の向上を図り、それらの特性の点で優れた効果を奏するものであることは、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていたものとは認められないから、当該実験成績証明書の実験データは本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていた効果を実証するものとはいえず、本願発明の効果について参酌することはできない。
また、当該実験成績証明書の実験データをみると、本発明品として記載された実施例No.3は、ポリウレタンとして「ポリマーA」を含有するものであるところ、「ポリマーA」が、どのようなポリ(アルキレンオキシド)側鎖単位をどの程度の割合で含有し、ポリ(エチレンオキシド)主鎖単位をどの程度の割合で含有するものであるか等の事項は、当該実験成績証明書の記載を参照しても明確でなく、実施例No.3が本願発明品にあたるものであるか否か、及び、仮に、本願発明品にあたるものであるとしても、その一例をもって、成分I、成分IIIとして、種々の特性のポリマーを含有するものを包含する本願発明の効果を確認するに十分なものであるか否か、は不明なものである。そうすると、仮に、甲第1号証の実験成績証明書の実験データを参酌したとしても、その内容をもって、本願発明が顕著な効果を奏するものであることを認めることはできない。
よって、上記の請求人の主張は認められない。

(5)まとめ
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた発明と認められる。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の点について検討するまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-31 
結審通知日 2014-08-01 
審決日 2014-08-18 
出願番号 特願2008-512313(P2008-512313)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉岡 沙織光本 美奈子  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 加賀 直人
星野 紹英
発明の名称 通気性ポリウレタンベースの毛髪固定剤組成物  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
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