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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1295683
審判番号 不服2013-20419  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-21 
確定日 2014-12-22 
事件の表示 特願2011-284611「導電膜形成方法、銅微粒子分散液及び回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成25年7月8日出願公開、特開2013-135089〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本件補正
本願は、平成23年12月27日の出願であって、平成25年9月13日付け(発送日:9月18日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
審判請求時(平成25年10月21日付け)の手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の請求項2に記載されていた事項を請求項1に付加することによって、本件補正前の請求項1を引用する請求項2を補正後の請求項1とするとともに、各請求項の項番を整理するものであるから、本件補正は、本件補正前の請求項1を削除したものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定する「請求項の削除」を目的とするものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「基材上に導電膜を形成する導電膜形成方法であって、
銅微粒子から成る皮膜を基材上に形成する工程と、
前記皮膜に光を照射してその皮膜内の銅微粒子を光焼成する工程と、
銅微粒子が光焼成された前記皮膜にめっきを施す工程とを有し、
前記基材は、熱可塑性樹脂であり、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、スチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、スチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン及びポリテトラフルオロエチレンよりなる群から選ばれることを特徴とする導電膜形成方法。」

第3 刊行物に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された特開2010-219075号公報(以下「刊行物」という。)には、「プリント配線板及びその製造方法」に関し、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与するものである。

ア.「【請求項8】
基材上に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成する工程、該印刷層を焼成処理して金属微粒子焼結膜を形成する工程、及びパターン状の金属微粒子焼結膜を得る工程を有するプリント配線板の製造方法であって、基材と金属微粒子焼結膜の界面の平均粗さが30nm以下であることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記パターン状の金属微粒子焼結膜を得る工程が、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液をパターン状に印刷することにより行われる請求項8に記載のプリント配線板の製造方法。
・・・略・・・
【請求項11】
前記金属又は金属酸化物が、銀、ニッケル、銅、酸化銅、及び表面が酸化された銅から選ばれる少なくとも1種である請求項8?10のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。」

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、基材上に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成し、該印刷層を焼成処理して金属微粒子焼結膜を形成してなるプリント配線板及びその製造方法に関する。」

ウ.「【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のプリント配線板は、基材上に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成し、該印刷層を焼成処理して金属微粒子焼結膜を形成してなる。
【0013】
(基材)
本発明において用いる基材としては、プリント配線板に用いられるものであれば特に制限されるものではないが、一般にはポリイミドなどの絶縁性の高分子フィルムが用いられる。本発明では後に詳述するように、金属又は金属酸化物微粒子が低温かつ短時間で焼結されてプリント配線板が形成されるため、基材に損傷を与えることが少なく、プラスチックなどの高分子材料も基材とすることができ、特にポリイミドなどの樹脂フィルムを用いることができる点で非常に有用である。
【0014】
基材として用い得る高分子材料としては、用途に応じて種々のものを挙げることができるが、融点200℃以上のものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、アラミド樹脂、エポキシ樹脂、ガラス-エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、あるいはポリエステルアミド、ポリエステルなどの液晶ポリマーなどを使用することができる。これらのうち、耐熱性、機械強度、電気絶縁性、耐薬品性などの点から、ポリイミド樹脂が好ましい。」

エ.「【0016】
(金属又は金属酸化物微粒子)
金属の種類としては、導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムなどの貴金属;銅、ニッケル、スズ、鉄、クロム、アルミニウム、モリブデン、タングステン、亜鉛、チタン、鉛などの卑金属が挙げられる。
これらのうち、高い導電性を有し、かつ微粒子を容易に維持できる点から、金、銀、銅、及びニッケルが好ましく、導電性、経済性、耐マイグレーション性などを加味すると、銅が好ましい。
これらの金属は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して、又は合金化して使用してもよい。また、金属酸化物としては、酸化銀、酸化第一銅、酸化第二銅又はこれらの混合物などが好適に挙げられる。これらのうち、特に銅の化合物が好ましく、とりわけ、銅の酸化物(酸化第一銅、酸化第二銅又はこれらの混合物)が好適である。
なお、ここで金属酸化物には、金属の表面が酸化された態様も含み、本発明においては、表面が酸化された銅が好ましい。」

オ.「【0024】
一方、本発明では、基材上に微粒子分散液を所望のパターンに直接印刷することができるため、パターン状の印刷層を形成した後に、焼成処理をしてパターン状の金属微粒子焼結膜を得ることもできる。該方法は、上記フォトレジストを用いた方法に比較して、さらに生産性を向上させることができ、かつ界面が平滑であるので、細線のエッジが乱れることがなく、信頼性の高い配線が得られるため好ましい。
なお、形成された金属パターンは、めっきにより厚膜化を行うことができる。めっきとしては、電解めっき、無電解めっきなど、公知の方法を用いることができる。また、パターン状に金属微粒子焼結膜を形成した後、めっきを行ってもよいし、金属微粒子焼結膜全面にめっきを行い、その後エッチング等によりパターンを形成してもよい。」

カ.「【0026】
(焼成処理)
次に、本発明における焼成は、金属又は金属化合物微粒子が融着して、金属微粒子焼結膜を形成することができる方法であれば特に制限はなく、例えば、焼成炉で行ってもよいし、プラズマ、加熱触媒、紫外線、真空紫外線、電子線、赤外線ランプアニール、フラッシュランプアニール、レーザーなどを用いてもよい。これらの焼成は、不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で行うのが、金属微粒子焼結膜の導電性の観点から好ましい。
これらの焼成処理は、短時間に行われるのが好ましく、昇温速度は100℃/分以上、好ましくは200℃/分以上で行うのがよい。焼成反応にかかる時間は、5分以内、さらには2分以内とすることが好ましく、粒成長を抑制することができる。
【0027】
また、金属微粒子が卑金属又は酸化物を含む場合は、還元性を持つ活性種を発生させる方法が好ましい。さらに、基材が樹脂や低耐熱基材である場合には、基材の熱ダメージを防ぎ、基材の分解や変形などを生じさせないように、微粒子を塗布層の表層から、均一に加熱する方法を用いるのが好ましい。
上記のような焼成方法のうち、特に、マイクロ波エネルギーの印加により発生する表面波プラズマ(以下「マイクロ波表面波プラズマ」と称することがある。)による焼成処理は、基材への熱ダメージが少なく、大面積の処理が可能で、短時間の焼成処理が可能である。」

キ.「【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
この例で得られたプリント配線板について、以下の方法によって評価した。
・・・略・・・
4.めっき後の密着性
各実施例及び比較例で得られたプリント配線板について、さらに電解銅めっきを行った。電解銅めっきは、硫酸銅めっき浴(硫酸銅:70g/L、硫酸:200g/L、添加剤(トップルチナSF-M:奥野製薬工業社製):5mL、塩酸:0.125mL/L)を用い、温度:25℃、陰極電流密度:3Adm^(2)、陽極電流密度:1.5Adm^(2)の条件で、金属微粒子焼結膜上に、電解銅めっき処理を施し、膜厚8μmの電解銅めっき膜を形成した。」

ク.記載事項アの請求項11の記載及び記載事項エの「金属の種類としては、導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく」並びに「導電性、経済性、耐マイグレーション性などを加味すると、銅が好ましい」との記載によれば、「金属又は金属酸化物微粒子」として「銅微粒子」とした発明を把握することができる。

ケ.記載事項オの「形成された金属パターンは、めっきにより厚膜化を行うことができる」並びに「パターン状に金属微粒子焼結膜を形成した後、めっきを行ってもよい」との記載及び記載事項キの「めっき後の密着性/各実施例及び比較例で得られたプリント配線板について、さらに電解銅めっきを行った」との記載によれば、金属微粒子焼結膜の形成後にめっきを行う工程を有する発明を把握することができる。

上記記載事項及び認定事項を総合して、プリント配線板への金属微粒子焼結膜を形成する方法を、本願発明に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「基材上に金属微粒子焼結膜を形成する金属微粒子焼結膜形成方法であって、
基材上に、銅微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成する工程と、
該印刷層を焼成処理して銅微粒子焼結膜を形成する工程と、
銅微粒子焼結膜を形成した後、めっきを行う工程とを有し、
前記基材は、高分子材料であり、
前記高分子材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、アラミド樹脂、エポキシ樹脂、ガラス-エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、あるいはポリエステルアミド、ポリエステルなどの液晶ポリマーなどから選ばれる金属微粒子焼結膜形成方法。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「基材」、「金属微粒子焼結膜」、「金属微粒子焼結膜形成方法」及び「高分子材料」は、その意味、機能、構造からみて、本願発明の「基材」、「導電膜」、「導電膜形成方法」及び「熱可塑性樹脂」に、それぞれ相当する。

b.引用発明において、印刷層は、銅微粒子を含む塗布液を印刷したものであり、焼成処理して銅微粒子焼結膜とされるものであるから、引用発明の「基材上に、銅微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成する工程」は、本願発明の「銅微粒子から成る皮膜を基材上に形成する工程」に相当する。

c.引用発明の「該印刷層を焼成処理して銅微粒子焼結膜を形成する工程」は、本願発明の「前記皮膜に光を照射してその皮膜内の銅微粒子を光焼成する工程」と、「前記皮膜内の銅微粒子を焼成する工程」という限りで共通する。

d.引用発明の「銅微粒子焼結膜を形成した後、めっきを行う工程」は、本願発明の「銅微粒子が光焼成された前記皮膜にめっきを施す工程」と、「銅微粒子が焼成された前記皮膜にめっきを施す工程」で共通する。

e.引用発明の「高分子材料」は「ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、アラミド樹脂、エポキシ樹脂、ガラス-エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、あるいはポリエステルアミド、ポリエステルなどの液晶ポリマーなどから選ばれる」ものであり、本願発明の「熱可塑性樹脂」は「ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、スチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、スチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン及びポリテトラフルオロエチレンよりなる群から選ばれる」ものであるから、両者は少なくとも「ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート」で一致するものである。

以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「基材上に導電膜を形成する導電膜形成方法であって、
銅微粒子から成る皮膜を基材上に形成する工程と、
前記皮膜内の銅微粒子を焼成する工程と、
銅微粒子が焼成された前記皮膜にめっきを施す工程とを有し、
前記基材は、熱可塑性樹脂であり、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、から選ばれる導電膜形成方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
銅微粒子を焼成する工程について、本願発明では「皮膜に光を照射してその皮膜内の銅微粒子を光焼成」する工程であるのに対し、引用発明では光を照射する焼成か否か明らかでない点。

第5 判断
刊行物には「本発明における焼成は、金属又は金属化合物微粒子が融着して、金属微粒子焼結膜を形成することができる方法であれば特に制限はなく、例えば、焼成炉で行ってもよいし、プラズマ、加熱触媒、紫外線、真空紫外線、電子線、赤外線ランプアニール、フラッシュランプアニール、レーザーなどを用いてもよい」(記載事項カ)と記載されているように、引用発明の銅微粒子焼結膜を形成する工程は、銅微粒子焼結膜を形成することができる方法であれば、各種のものが採用できるのであって、赤外線ランプアニール、フラッシュランプアニールのような光焼成も含まれている。また、引用発明においては「基材が樹脂や低耐熱基材である場合には、基材の熱ダメージを防ぎ、基材の分解や変形などを生じさせないように、微粒子を塗布層の表層から、均一に加熱する方法を用いるのが好ましい」(記載事項カ)と記載されているように銅微粒子焼結膜を形成する方法は選択されるものであるし、樹脂基材に形成された皮膜を光焼成して導電膜を得ることは、例えば、特開2009-124032号公報(請求項1、請求項4、請求項6参照)、特開2010-161251号(請求項1、請求項6、請求項12参照)に記載されているように従来周知の方法であって、特別な方法ではなく、引用発明において光焼成を採用することを阻害する特段の事情もない。
してみると、銅微粒子を焼成する工程に光焼成を採用して、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとは言えない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-31 
結審通知日 2014-08-01 
審決日 2014-08-12 
出願番号 特願2011-284611(P2011-284611)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川内野 真介飛田 雅之  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 森川 元嗣
稲葉 大紀
発明の名称 導電膜形成方法、銅微粒子分散液及び回路基板  
代理人 野口 裕弘  
代理人 野口 裕弘  

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