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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1295942
審判番号 不服2013-20808  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-25 
確定日 2015-01-07 
事件の表示 特願2011-116158「発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月22日出願公開、特開2011-187980〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成16年4月6日(パリ条約による優先権主張2003年4月15日、同年5月29日、同年6月4日、同年9月17日、同年9月17日、同年9月17日、同年9月17日、同年9月17日、同年10月23日、同年10月27日、同年11月26日、同年11月26日、同年11月26日、同年11月26日、同年11月26日、同年11月26日、同年11月26日、同年12月12日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2006-509771号の一部を平成23年5月24日に新たな特許出願としたものであって、平成23年6月23日に手続補正がなされ、平成24年11月27日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年5月31日に手続補正がなされたが、同年6月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成25年10月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成25年10月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容
平成25年10月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし15(平成25年5月31日付け手続補正後のもの)として、

(1)「【請求項1】
光発生領域、及び光発生領域によって支持される第1層を備えた複数の材料の多層積層体を備えた発光素子を含む発光システムであって、
前記第1層の表面は、光発生領域が生成する光を、発光素子から第1層の表面を通して放出することができるように構成され、
前記第1層の表面は、パターンに従って空間的に変化する誘電関数を有し、
前記パターンは一定の格子定数及び前記格子定数を微調整するためのゼロよりも大きい値の微調整パラメータを有し、及び
前記発光素子は、光発生領域が生成する光が発光素子から第1層の表面を通して放出されるときに、光を発光システムから放出可能に形成されている、発光システム。
【請求項2】
発光システムは、プロジェクタ、携帯型電子機器、コンピュータモニター、大型電子看板システム、車両照明システム、一般照明装置、高輝度照明装置、カメラフラッシュ、医療機器、電気通信システム、セキュリティ検知システム、統合オプトエレクトロニクスシステム、軍事通信システム、バイオセンシングシステム、光線力学療法装置、暗視ゴーグル、太陽電池駆動走行照明装置、緊急照明システム、空港滑走路照明システム、航空機照明システム、手術ゴーグル、携帯型光源、及びこれらの組合せから成るグループから選択される、請求項1記載の発光システム。
【請求項3】
発光システムはプロジェクタである、請求項1記載の発光システム。
【請求項4】
プロジェクタはリアプロジェクション方式プロジェクタである、請求項3記載の発光システム。
【請求項5】
リアプロジェクション方式プロジェクタはテレビジョン用のリアプロジェクション方式プロジェクタである、請求項4記載の発光システム。
【請求項6】
プロジェクタはフロントプロジェクション方式プロジェクタである、請求項3記載の発光システム。
【請求項7】
発光システムは車両照明システムである、請求項1記載の発光システム。
【請求項8】
発光システムは一般照明装置である、請求項1記載の発光システム。
【請求項9】
前記発光システムは複数の発光素子を含み、複数の発光素子の各々は、
光発生領域、及び光発生領域によって支持される第1層を備えた複数の材料多層積層体を備え、
複数の発光素子の各々に関して、
前期第1層の表面は、光発生領域が生成する光を、発光素子から第1層の表面を通して放出可能に形成され、
第1層の表面は、パターンに従って空間的に変化する誘電関数を有し、
パターンは一定の格子定数及び前記格子定数を微調整するためのゼロよりも大きい値の微調整パラメータを有し、及び
発光素子は、光発生領域が生成する光が発光素子から第1層の表面を通して放出されるときに、光を発光システムから放出することができるように構成される、請求項1記載の発光システム。
【請求項10】
複数の発光素子はアレイとして構成される、請求項9記載の発光システム。
【請求項11】
発光システムは複数の発光素子アレイを含む、請求項10記載の発光システム。
【請求項12】
前記発光素子は表面を有するハウジングを有し、
前記発光素子はハウジングに収容され、及び
前記発光素子は、光発生領域が生成する光が発光素子から第1層の表面を通して放出されるときに、光を発光システムから放出することができるように構成される、請求項1記載の発光システム。
【請求項13】
光発生領域が生成する光が発光素子から第1層の表面を通して放出されるときに、光は、発光システムから放出される前に、少なくとも一つの光学部品を通過する、請求項1記載の発光システム。
【請求項14】
発光システムは複数の発光素子を含み、これらの発光素子の内の少なくとも幾つかの発光素子は異なる最大放出波長を有する、請求項1記載の発光システム。
【請求項15】
発光システムは複数の発光素子を含み、これらの発光素子の各々はほぼ同じ最大放出波長を有する、請求項1記載の発光システム。」

とあったものを、

(2)「【請求項1】
光発生領域、及び光発生領域によって支持される第1層を備えた複数の材料の多層積層体を備えた発光素子を含む発光システムであって、
前記第1層の表面は、光発生領域が生成する光を、発光素子から第1層の表面を通して放出することができるように構成され、
前記第1層の表面は、パターンに従って空間的に変化する誘電関数を有し、
前記パターンは一定の格子定数及び前記格子定数を微調整するための理想格子定数の1%?25%の範囲にある微調整パラメータを有し、及び
前記発光素子は、光発生領域が生成する光が発光素子から第1層の表面を通して放出されるときに、光を発光システムから放出可能に形成されている、発光システム。
【請求項2】
発光システムは、プロジェクタ、携帯型電子機器、コンピュータモニター、大型電子看板システム、車両照明システム、一般照明装置、高輝度照明装置、カメラフラッシュ、医療機器、電気通信システム、セキュリティ検知システム、統合オプトエレクトロニクスシステム、軍事通信システム、バイオセンシングシステム、光線力学療法装置、暗視ゴーグル、太陽電池駆動走行照明装置、緊急照明システム、空港滑走路照明システム、航空機照明システム、手術ゴーグル、携帯型光源、及びこれらの組合せから成るグループから選択される、請求項1記載の発光システム。
【請求項3】
発光システムはプロジェクタである、請求項1記載の発光システム。
【請求項4】
プロジェクタはリアプロジェクション方式プロジェクタである、請求項3記載の発光システム。
【請求項5】
リアプロジェクション方式プロジェクタはテレビジョン用のリアプロジェクション方式プロジェクタである、請求項4記載の発光システム。
【請求項6】
プロジェクタはフロントプロジェクション方式プロジェクタである、請求項3記載の発光システム。
【請求項7】
発光システムは車両照明システムである、請求項1記載の発光システム。
【請求項8】
発光システムは一般照明装置である、請求項1記載の発光システム。
【請求項9】
前記発光システムは複数の発光素子を含み、複数の発光素子の各々は、
光発生領域、及び光発生領域によって支持される第1層を備えた複数の材料多層積層体を備え、
複数の発光素子の各々に関して、
前期第1層の表面は、光発生領域が生成する光を、発光素子から第1層の表面を通して放出可能に形成され、
第1層の表面は、パターンに従って空間的に変化する誘電関数を有し、
パターンは一定の格子定数及び前記格子定数を微調整するための理想格子定数の1%?25%の範囲にある微調整パラメータを有し、及び
発光素子は、光発生領域が生成する光が発光素子から第1層の表面を通して放出されるときに、光を発光システムから放出することができるように構成される、請求項1記載の発光システム。
【請求項10】
複数の発光素子はアレイとして構成される、請求項9記載の発光システム。
【請求項11】
発光システムは複数の発光素子アレイを含む、請求項10記載の発光システム。
【請求項12】
前記発光素子は表面を有するハウジングを有し、
前記発光素子はハウジングに収容され、及び
前記発光素子は、光発生領域が生成する光が発光素子から第1層の表面を通して放出されるときに、光を発光システムから放出することができるように構成される、請求項1記載の発光システム。
【請求項13】
光発生領域が生成する光が発光素子から第1層の表面を通して放出されるときに、光は、発光システムから放出される前に、少なくとも一つの光学部品を通過する、請求項1記載の発光システム。
【請求項14】
発光システムは複数の発光素子を含み、これらの発光素子の内の少なくとも幾つかの発光素子は異なる最大放出波長を有する、請求項1記載の発光システム。
【請求項15】
発光システムは複数の発光素子を含み、これらの発光素子の各々はほぼ同じ最大放出波長を有する、請求項1記載の発光システム。」(当審注:下線は、請求人が補正箇所に付したものである。)

と補正するものである。

2 補正の目的

本件補正は、「微調整パラメータ」につき、補正前に「ゼロよりも大きい値の微調整パラメータ」とされていたところを、「理想格子定数の1%?25%の範囲にある微調整パラメータ」に限定するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1) 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、上記1(2)において補正後のものとして記載したとおりのものである。

(2) 引用文献の記載

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-4209号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(下線は当審で付した。)。

ア 「【0019】図4には、規則的テキスチャが形成された上部表面を備えるLEDが示されている。垂直にTIRを生じる光線γが、この上部表面に達すると、周囲にパワーを伝搬する。このパワー伝達は、第1のパス時に生じ、素子内または素子のエッジの吸収領域における光学損失の確率を低下させる。テキスチャ形成されていない表面の臨界角によって形成される角帯域幅内の光線(γ‘)は、脱出が可能になる。規則的なテキスチャ形成の総合的効果は、活性層の発光と素子の形状寸法及び周囲を整合させて、全抽出効率が大幅に増す結果が得られるのが望ましい。」

イ 「【0026】最適性能に必要な規則的テキスチャ形成の特定の形状、寸法、及び、構成は、用途によって決まる。特徴形状は、円錐状の隆起及び窪みとすることが可能である。典型的な規則的構成は、方形、矩形、または、六角形( HCP、Hexagonal Closed Packed )アレイとすることが可能である。これらの構成が、それぞれ、規則的なテキスチャ形成界面の平面図を示す図5a?5cに示されている。周期的間隔は、おそらく、素子内の光の波長と同じか、あるいは、それより短い。テキスチャ形成界面の断面プロフィールは、隆起または窪みによる山と谷を示し、高さまたは深さによって決まるFWHM幅(Full-Width-at-Half-Maximum, 最大値の1/2における全幅)のように界面の平面に沿った個々の特徴の範囲も、素子内における光の波長の数倍以下と同等にすることが可能である。隆起または窪みの最大高さまたは深さは、素子内における光の1?数波長分と同等にすることが可能である。規則的パターンの間隔は、波長によって決まる。従って、界面における電磁位相整合条件を最適に変更して、周囲に伝搬する全パワーを増大させるのは重要である。パターンの局部的特徴の範囲及び深さは、光を透過するための位相条件の変更効率に影響を及ぼす。また、全光学透過及び素子性能を最大にするため、その個々の局部的特徴のサイズ及び/または形状に関して、パターンの周期を少しづつ変化させてチャープを生じさせるか、あるいは、別の変化をつけることが可能である。
【0027】一例として、λ?400-700nmの場合の可視波長LEDについて考察することにする。この場合、図4に解説の界面に関して、規則的なテキスチャ形成は、正方形またはHCP構成を示すことが可能である。特徴は、0.1-0.9μmの範囲にわたって、0.1-0.5μmの間隔をとり、特徴の深さは0.2-15.0μmほどになる可能性がある。周期または間隔は、大きい斜角で、光を周囲に伝搬するのに十分に短くなければならない。典型的な可視波長LED構造の場合、周期は、1.0μm未満になる。特徴の最大深さは、より高い抽出効率を実現するため、0.5μm以上にすることが可能である。問題となる界面は、2次元のため、格子パターンは、単純な格子のように1次元ではなく、2次元にしなければならない。」

ウ 図2、図4ないし図5cは、次のものである。


(3) 引用発明

ア 上記(2)アの記載によれば、引用文献には、「活性層の発光」の「全抽出効率」を「増す」ための「規則的テキスチャが形成された上部表面を備えるLED」が記載されている。

イ 上記(2)アの記載と図4によれば、規則的テキスチャが形成された上部表面は、活性層によって支持される層の表面であり、活性層の発光は前記表面を通して放出することができるように構成されていると認められる。

ウ 上記(2)イの記載と図5aないし図5cによれば、「規則的テキスチャ」の「規則的構成は、方形、矩形、または、六角形( HCP、Hexagonal Closed Packed )アレイとすることが可能」な「2次元」の「格子パターン」である。

エ 上記(2)イの記載によれば、「全光学透過及び素子性能を最大にするため」、「規則的テキスチャ」の「パターンの周期を少しづつ変化させ」ている。

オ してみると、引用文献には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「活性層の発光の全抽出効率を増すための規則的テキスチャが形成された上部表面を備え、
規則的テキスチャが形成された上部表面は、活性層によって支持される層の表面であり、
活性層の発光は前記表面を通して放出することができるように構成されており、
規則的テキスチャの規則的構成は、方形、矩形、または、六角形( HCP、Hexagonal Closed Packed )アレイとすることが可能な2次元の格子パターンであり、
全光学透過及び素子性能を最大にするため、規則的テキスチャのパターンの周期を少しづつ変化させている、
LED。」(以下「引用発明」という。)

(4) 対比

本願補正発明と、引用発明を対比する。

ア 引用発明の「LED」は、本願補正発明の「発光素子」に相当する。

イ 本願補正発明の「光発生領域、及び光発生領域によって支持される第1層を備えた複数の材料の多層積層体を備えた発光素子を含む発光システムであって、前記第1層の表面は、光発生領域が生成する光を、発光素子から第1層の表面を通して放出することができるように構成され」たことと、引用発明の「活性層の発光の全抽出効率を増すための規則的テキスチャが形成された上部表面を備え、規則的テキスチャが形成された上部表面は、活性層によって支持される層の表面であり、活性層の発光は前記表面を通して放出することができるように構成されて」いることを対比する。

引用発明の「活性層」、「(表面に規則的テキスチャが形成され、活性層によって支持される)層」は、それぞれ本願補正発明の「光発生領域」、「光発生領域によって支持される第1層」に相当する。そして、引用発明の「活性層の発光は前記表面を通して放出することができるように構成されて」いることは、本願補正発明の「前記第1層の表面は、光発生領域が生成する光を、発光素子から第1層の表面を通して放出することができるように構成され」ていることに相当する。

してみると、両者は、「光発生領域、及び光発生領域によって支持される第1層を備え」、「前記第1層の表面は、光発生領域が生成する光を、発光素子から第1層の表面を通して放出することができるように構成され」ている点で一致する。

ウ 本願補正発明の「前記第1層の表面は、パターンに従って空間的に変化する誘電関数を有し、前記パターンは一定の格子定数及び前記格子定数を微調整するための理想格子定数の1%?25%の範囲にある微調整パラメータを有」することと、引用発明の「活性層の発光の全抽出効率を増すための規則的テキスチャが形成された上部表面を備え、規則的テキスチャが形成された上部表面は、活性層によって支持される層の表面であり、・・・規則的テキスチャの規則的構成は、方形、矩形、または、六角形( HCP、Hexagonal Closed Packed )アレイとすることが可能な2次元の格子パターンであり、全光学透過及び素子性能を最大にするため、規則的テキスチャのパターンの周期を少しづつ変化させている」ことを対比する。

引用発明の「活性層によって支持される層の表面」に「方形、矩形、または、六角形( HCP、Hexagonal Closed Packed )アレイとすることが可能な2次元の格子パターン」からなる「規則的構成」を有する「規則的テキスチャが形成され」ていることは、本願補正発明の「前記第1層の表面は、パターンに従って空間的に変化する誘電関数を有し、前記パターンは一定の格子定数」「を有」することに相当する。

してみると、両者は、「前記第1層の表面は、パターンに従って空間的に変化する誘電関数を有し、前記パターンは一定の格子定数」「を有」する点で一致する。

エ 以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、

「光発生領域、及び光発生領域によって支持される第1層を備え、
前記第1層の表面は、光発生領域が生成する光を、発光素子から第1層の表面を通して放出することができるように構成され
前記第1層の表面は、パターンに従って空間的に変化する誘電関数を有し、前記パターンは一定の格子定数を有する
発光素子。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本願補正発明が、「発光素子を含む発光システム」であって、「前記発光素子は、光発生領域が生成する光が発光素子から第1層の表面を通して放出されるときに、光を発光システムから放出可能に形成されている、発光システム」であるのに対し、引用発明は「LED」である点。

相違点2:本願補正発明の「発光素子」が「複数の材料の多層積層体を備え」るものであるのに対し、引用発明の「LED」が「複数の材料の多層積層体を備え」るものか否か不明である点。

相違点3:本願補正発明の「パターン」は「前記格子定数を微調整するための理想格子定数の1%?25%の範囲にある微調整パラメータを有」するのに対し、引用発明は「規則的テキスチャ」の「パターンの周期を少しづつ変化させている」ものであって、そのような「微調整パラメータ」を有するものか否か明らかではない点。

(5) 判断

以下、相違点1?3について検討する。

ア 相違点1について

引用発明の「LED」を発光システムの光源に用いることは当業者が適宜なし得たことである。そして、その際、引用発明の「LED」は「光発生領域が生成する光を、発光素子から第1層の表面を通して放出することができるように構成され」ているものであるから、光を効率よく利用するために、「発光素子から第1層の表面を通して放出され」る光が発光システムから放出可能となるようにすることも当業者が適宜なし得たことである。
よって、引用発明の「LED」を発光システムの光源に用い、相違点1に係る本願補正発明の特定事項とすることは当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2について

LEDを、複数の材料の多層積層体を備えるもので構成することは、周知の技術事項(例えば、引用文献の図2を参照。)であるから、引用発明のLEDにおいて、当該周知の技術事項を採用し、相違点2に係る本願補正発明の特定事項とすることに格別の困難性はない。

ウ 相違点3について

(ア) 引用発明の「パターンの周期」は、本願補正発明の「格子定数」に相当するものであり、引用発明の「パターンの周期を少しづつ変化させる」ことは、本願補正発明の「格子定数を微調整する」ことに相当するところ、引用発明の「パターンの周期」を「変化」させるに際し、それを理想格子定数に対して変化するパラメータ(微調整パラメータ)を用い、当該パラメータの値の範囲を微調整して定めるようになすことは、当業者が適宜なし得る程度のことである。

(イ) そして、本願明細書をみても、「微調整パラメータ」の範囲を「理想格子定数の1%?25%」に定めた点に設計的事項の域を超えるほどの格別の技術的意義があるものとは認められず、また、これによる効果が、引用発明から当業者が予測困難な程の格別顕著なものということはできない。

(ウ) 以上のことから、相違点3に係る本願補正発明の特定事項とすることは当業者が容易になし得たものと認められる。

エ 小括

以上の検討によれば、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

4 むすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年5月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)において補正前のものとして記載したとおりのものである。

2 引用文献の記載及び引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物及び引用発明は、上記第2の3(2)及び上記第2の3(3)に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、上記第2の3(4)及び上記第2の3(5)で検討した本願補正発明において、「微調整パラメータ」につき、「理想格子定数の1%?25%の範囲にある」との限定を、「ゼロよりも大きい値の」に拡張したものである。そうすると、本願発明を減縮したものである本願補正発明が、上記第2の3(4)及び上記第2の3(5)で検討したとおり、引用文献に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-06 
結審通知日 2014-08-12 
審決日 2014-08-27 
出願番号 特願2011-116158(P2011-116158)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 星野 浩一
鈴木 肇
発明の名称 発光素子  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
代理人 本田 淳  

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