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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09D
管理番号 1295957
審判番号 不服2012-24045  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-04 
確定日 2015-01-08 
事件の表示 特願2006- 86168「光触媒コーティング剤及び光触媒担持体」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日出願公開、特開2007-262150〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成18年3月27日に出願された特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。

平成23年10月26日付け 拒絶理由通知
平成23年12月22日 意見書・手続補正書
平成24年 9月 6日付け 拒絶査定
平成24年12月 4日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成24年12月13日付け 手続補正指令(方式)
平成24年12月21日 手続補正書(方式)
平成25年 1月18日付け 前置審査移管
平成25年 2月 7日付け 前置報告書
平成25年 2月 8日付け 前置審査解除
平成25年 7月26日付け 審尋書
平成25年 9月 9日 回答書
平成26年 3月11日付け 拒絶理由通知
平成26年 5月19日 意見書・手続補正書
平成26年 9月19日 審理面接

第2 本願の請求項に記載された事項
平成26年5月19日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1及び2には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
箔状、板状及び針状結晶構造を有するケイ酸カルシウム板の表面に光触媒機能を有する酸化チタンを担持させ、かつ酸化チタンの光触媒機能を阻害することなくケイ酸カルシウムの表面に着色するための光触媒コーティング剤であって、
無機系顔料と、アナターゼ型酸化チタンと、シリカ質粒子と、それらを分散させる分散剤とを含有する水溶液からなり、
前記ケイ酸カルシウム板は表面に1nm?1000nmの大きさの微細孔を有し、
前記シリカ粒子は5nm?100nmの大きさを有することを特徴とする光触媒コーティング剤。
【請求項2】
箔状、板状及び針状結晶構造を有するケイ酸カルシウム板と、該ケイ酸カルシウム板の表面に形成される光触媒コーティング層とからなる光触媒担持体であって、
前記光触媒コーティング層は、前記ケイ酸カルシウム板の表面に、無機系顔料と、アナターゼ型酸化チタンと、シリカ質粒子と、それらを分散させる分散剤とを含有する水溶液からなる光触媒コーティング剤を塗布することにより形成され、
前記ケイ酸カルシウム板は表面に1nm?1000nmの大きさの微細孔を有し、
前記シリカ粒子は5nm?100nmの大きさを有し、
前記分散剤の分散機能により、前記無機系顔料が分散された状態で前記ケイ酸カルシウム板の表面に付着され、かつ前記アナターゼ型酸化チタンが前記無機系顔料に埋め尽くされることなく前記ケイ酸カルシウム板の表面に担持されていることを特徴とする光触媒担持体。」
(以下、各請求項に記載された事項で特定される発明を併せて「本願発明」ということがある。)

第3 原査定の拒絶理由
原審では、概略、以下の拒絶理由が通知され、拒絶査定がなされた。
<拒絶理由通知>
「理由1
この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物A?Gに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2
この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物A?Hに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

A.特開2001-31913号公報
B.特開2001-40245号公報
C.特開2004-346201号公報
D.特開2004-346202号公報
E.特開2005-61156号公報
F.特開2004-52423号公報
G.特開平11-246787号公報
H.特開2004-67947号公報
刊行物A?Gには、ケイ酸カルシウム板に塗布する光触媒コーティング剤であって、無機系顔料、アナターゼ型酸化チタン、シリカ質粒子、及び分散剤を含有する水溶液である光触媒コーティング剤、該コーティング剤をケイ酸カルシウム板の表面に塗布して得られる光触媒担持体が記載されている。
刊行物Hには、ケイ酸カルシウム板に塗布する光触媒コーティング剤であって、アナターゼ型酸化チタン、シリカ質粒子、及び分散剤を含有する水溶液である光触媒コーティング剤、該コーティング剤をケイ酸カルシウム板の表面に塗布して得られる光触媒担持体が記載されているところ、コーティング剤に着色顔料を配合することは周知慣用の技術であり、そして、光触媒との関係を考慮して無機系顔料を用いることも、当業者が容易に想到することである。」
<拒絶査定>
「この出願については、平成23年10月26日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
出願人は平成23年12月22日付けで手続補正書を提出して請求項1及び3を補正し、当該請求項において光触媒コーティング剤が、「ケイ酸カルシウム板の表面の微細孔を埋め尽くす膜を形成しない」ものである旨を新たに規定した。
ここで、「ケイ酸カルシウム板の表面の微細孔を埋め尽くす膜を形成しない」との点について検討するに、そもそも、塗料を塗布して形成する塗膜の厚さ(塗膜が薄ければ、表面の微細孔を埋め尽くす膜を形成しないと解される。)を規定したところで、塗料自体に差違が生じるわけではないし、これがいわゆる「用途発明」に相当するものとは認め難く、また、塗料の塗布に際して、塗膜をどの程度の厚さとするかは、塗料の塗布を行う者が実施に際して適宜決定することであり、そして、塗料の塗布に際して、被塗布材料が固有に有する特性等を維持する/生かすよう配慮することも、当業者が実施に際して適宜なし得ることである。
一方で、ケイ酸カルシウム板については、その表面に微細孔を有すること、それによりケイ酸カルシウム板としての機能(調湿機能や吸着機能等)が発揮されることが周知である。
これらの事項を考慮すると、この出願の請求項1?4に係る発明は、実質的に拒絶理由通知書で引用した刊行物A?Gに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、依然として先の拒絶理由1が解消していないといわざるを得ないし、仮にそうとまでいえなかったとしても、この出願の請求項1?4に係る発明は、拒絶理由通知書で引用した刊行物A?Gに記載された発明(及び当技術分野における周知慣用の発明)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、依然として先の拒絶理由2が解消していない。」

第4 当審が通知した拒絶理由
当審が平成26年3月11日付けで通知した拒絶理由は、概略、以下のとおりである。

「理由1:本願は、明細書の発明の詳細な説明(及び図面)の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2:本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。


・・(中略)・・
2.理由1について
・・(中略)・・
してみると、本願明細書の発明の詳細な説明は、「箔状、板状及び針状結晶構造を有するケイ酸カルシウム板等の無機系多孔質基材の表面を微細孔を埋め尽くすことなく顔料により綺麗に着色できるとともに、表面に十分な量の酸化チタンを担持させることができ、必要最低限の量の酸化チタンで空気中の有害有機物質や悪臭成分等を良好に分解して無害化することができる」(【0007】)という技術的意義を有する本願発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。(必要ならば平成23年(行ケ)10251号判決等を参照されたい。)

3.理由2について

(1)請求項の明確性について
・・(中略)・・
以上のとおりであるから、本願請求項1ないし4の各記載は、いずれも特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものではない。

(2)明細書のサポート要件について
・・(中略)・・
してみると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、たとえその技術常識に照らしても、本願の請求項に記載された事項で特定されるすべての場合について、上記本願発明の解決課題を解決することができるものと認識することができるとはいえない。
したがって、本願請求項1ないし4に記載された事項で特定される発明が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができない(平成17年(行ケ)10042号判決参照)。
結局、本願の各請求項の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

(3)理由2に係るまとめ
以上の(1)及び(2)のとおりであるから、本願の各請求項の記載は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

○当審の付記
1.請求人が平成25年9月9日付け回答書で提示した補正案のとおりに特許請求の範囲を補正したとしても、上記各拒絶理由は解消されないものと認められるので留意されたい。
2.この拒絶理由通知に対して、意見書を提出する場合、上記各拒絶理由を解消するためには、挙証した上での意見・説明を要するものと認められるので留意されたい。
3.この拒絶理由通知に対して、特許請求の範囲及び明細書を補正する場合、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲(いわゆる出願当初の明細書及び特許請求の範囲)における補正の根拠を意見書において提示・説明されたい。(補正により新たな技術的事項を導入することがないよう厳に留意されたい。)
4.この拒絶理由通知が行われたことにより、原査定(及び前置報告書)における拒絶理由が解消されているものではないことに留意されたい。」

第5 当審の判断
当審は、当審が通知した拒絶理由1及び2並びに原査定における拒絶理由1により、本願は依然として拒絶すべきものと判断する。以下詳述する。

I.当審が通知した拒絶理由1及び2について
(以下、それぞれ「拒絶理由A」及び「拒絶理由B」と言い替える。)

拒絶理由A:本願は、明細書の発明の詳細な説明(及び図面)の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
拒絶理由B:本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

1.前提事項
上記理由A及びBにつき検討するにあたり、当業者の技術常識に基づき前提となる事項について検討する。

(1)分散剤の働きについて
分散剤は、分散媒(例えば水など)に対して親和性が低いため、溶解性又は自己分散性を有しない分散質材料につき、分散性を付与するために添加使用される添加剤であり、両親媒性を有することを特徴とする添加剤である。
そして、分散剤の分散機構は、分散質材料の粒子の表面に対し分散剤分子がその分散質に親和性を有する部分から多数吸着され、分散媒に親和性を有する部分が外側に突出する形になっている分散粒子(「ミセル」などと称呼される。)を形成し、分散媒中に安定に浮遊できる状態になるとともに、分散粒子同士又は分散粒子と容器内壁との間で、分散媒が十分に存在する限りにおいて、分散媒に親和性を有する部分の(電気的)斥力及び立体障害などにより粒子同士又は粒子と容器内壁が固着せず、個々の分散粒子が独立して分散媒中に存在する(いわゆる「凝集しない」)状態となるものである。

(2)無機材料の粒子同士及び粒子と他の材料の固着について
無機材料の粒子は、いわゆる乾燥状態において、その粒子同士又は粒子と他の材料との間で、何らの特別な手段(加熱及び高圧負荷などの物理的手段又は結着剤(バインダー)の使用など)を講じない限りにおいて、常態では有意な固着を示さない。
例えば、砂などの無機材料の粒子により鋳物型を構成する場合に、バインダーを使用せず、高温焼き締めなどのその他の手段を講じなければ、僅かな衝撃などにより容易に破壊されるものであるし、また、多孔質板表面に無機材料の粒子を単にスプレー付着させたとしても、僅かな衝撃などにより容易に無機粒子が脱離するものである。

以上の前提事項に基づき、上記理由A及びBにつき以下検討する。

2.理由Aについて
平成24年12月4日付けで手続補正された本願明細書(以下「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明には、
「【0011】
本発明による本発明による光触媒コーティング剤によれば、光触媒コーティング剤をケイ酸カルシウム板の表面に塗布したときに、ケイ酸カルシウム板との親和性が最も高い分散剤がケイ酸カルシウム板の箔状、板状及び針状結晶の微細孔内に先に配向され、この分散剤によってシリカ質粒子が微細孔から表面側に押し出されるように配向され、シリカ質粒子によってアナターゼ型酸化チタンが更に表面側に押し出されるように配向されることになる。」
と記載され、段落【0015】及び【0017】にも略同旨が記載されており、さらに、分散剤の(ケイ酸カルシウム板との)親和性の大小に基づいた各粒子の定着機構及び模式図につき、【0027】ないし【0033】及び【図1】ないし【図3】にて説明されてはいる。
しかるに、上記1.の前提事項(特に(1)の事項)からみて、水性コーティング剤中において、シリカ質粒子、アナターゼ型酸化チタン(粒子)及び無機系顔料粒子は、全ての粒子それぞれが分散剤分子の吸着により独立して分散存在しており、それはケイ酸カルシウム板表面に塗布した直後の湿潤塗膜中においても、経時的に分散媒である水が一定以上に蒸発散逸するまで同一の状態であるから、各粒子が分散剤分子が吸着された分散粒子の状態でケイ酸カルシウム板表面にそれぞれ同確率で一斉に定着することはあっても、分散剤、シリカ粒子及びアナターゼ型酸化チタン(粒子)(並びにさらに無機系顔料粒子)が上記のように段階的に配向定着するものとは認められない。
そして、上記1.の前提事項(特に(2)の事項)からみて、無機材料の粒子は、いわゆる乾燥状態において、その粒子同士又は粒子と他の材料(ケイ酸カルシウム板)との間で、何らの特別な手段(加熱及び高圧負荷などの物理的手段又は結着剤(バインダー)の使用など)を講じない限りにおいて、常態では有意な固着を示さないのであるから、本願発明のコーティング剤を塗布してその塗膜が乾燥した際に、分散剤が結着剤として機能する場合を除き、シリカ質粒子、アナターゼ型酸化チタン(粒子)又は無機系顔料粒子とケイ酸カルシウム板との間並びにシリカ質粒子、アナターゼ型酸化チタン(粒子)及び無機系顔料粒子の各粒子の相互間において、有意な固着(僅かな衝撃などにより脱離しない程度の固着)がなされるものとは認められず、また、分散剤が結着剤として機能するならば、各粒子が同確率で一斉に定着することにより各粒子が混在してケイ酸カルシウム板表面に固着して塗膜を形成するものと認められるから、いずれにしても、上記のような配向定着に基づき十分な固着力を有する【図1】に示されるようなコーティング層が形成されるものとは認められない。
(なお、【0022】には、「シリカ質粒子7に分散剤6を添加して構成したバインダー水溶液」なる記載があるが、これはシリカ質粒子の表面に分散剤分子が吸着している粒子状物であって、バインダーとして機能するのは、分散剤(分子)であり、シリカ質粒子自体は、バインダーとして機能しているものとは認められない。)
さらに、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、本願発明に係る水性コーティング剤を使用してケイ酸カルシウム板を塗装した場合に、当該【図1】に示されるようなコーティング層が形成されるであろうと当業者が客観的に認識することができる記載又は示唆が存在するものとは認められない。(ちなみに【図4】の顕微鏡写真は、コーティングを施す前のケイ酸カルシウム板表面に係るものと認められる。)
してみると、本願明細書の発明の詳細な説明は、「箔状、板状及び針状結晶構造を有するケイ酸カルシウム板等の無機系多孔質基材の表面を微細孔を埋め尽くすことなく顔料により綺麗に着色できるとともに、表面に十分な量の酸化チタンを担持させることができ、必要最低限の量の酸化チタンで空気中の有害有機物質や悪臭成分等を良好に分解して無害化することができる」(【0007】)という技術的意義を有する本願発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

3.理由Bについて
特許法第36条第6項第1号の規定に適合するか否か(いわゆる「明細書のサポート要件」)につき検討する。

(1)本願発明の解決課題について
本願発明の解決しようとする課題は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【0007】)からみて、「箔状、板状及び針状結晶構造を有するケイ酸カルシウム板等の無機系多孔質基材の表面を微細孔を埋め尽くすことなく顔料により綺麗に着色できるとともに、表面に十分な量の酸化チタンを担持させることができ、必要最低限の量の酸化チタンで空気中の有害有機物質や悪臭成分等を良好に分解して無害化することができる光触媒コーティング剤(組成物)及び光触媒担持体」の提供にあるものと認められる。

(2)検討
本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討すると、
「【0016】
以上、説明したように、本発明の光触媒コーティング剤及び光触媒担持体によれば、光触媒コーティング剤の水溶液中に分散剤の分散機能によって無機系顔料とアナターゼ型酸化チタンとシリカ質粒子とが分散された状態で含有されることになるので、ケイ酸カルシウム板の表面に光触媒コーティング剤を塗布したときに、それらの粒子が互いに結合して一次粒子から二次粒子、三次粒子……と大きくなるようなことはなく、大きくなった粒子によってケイ酸カルシウム板の箔状、板状及び針状結晶の微細孔が埋め尽くされるようなことはない。従って、ケイ酸カルシウム板としての機能(調湿機能や吸着機能等)を維持した状態で、ケイ酸カルシウム板の表面を無機系顔料によって斑が生じることなく着色できる。また、ケイ酸カルシウム板の表面に十分な量のアナターゼ型酸化チタンを担持させることができるので、光触媒機能を十分に発揮させることができ、空気中の有害有機物質や悪臭成分等を良好に分解して無害化することができる。
【0017】
さらに、光触媒コーティング剤をケイ酸カルシウム板の表面に塗布したときに、ケイ酸カルシウム板との親和性が最も高い分散剤がケイ酸カルシウム板の箔状、板状及び針状結晶の微細孔内に先に配向され、この分散剤によってシリカ質粒子が微細孔から表面側に押し出されるように配向され、シリカ質粒子によってアナターゼ型酸化チタンが更に表面側に押し出されるように配向されるので、必要最低限の量のアナターゼ型酸化チタンで良好な光触媒機能を得ることができ、コストを安く抑えることができる。」
と、「微細孔を埋め尽くすことなく顔料により綺麗に着色できる」こと及び「表面に十分な量の酸化チタンを担持させることができる」ことに係る作用機序につき一応記載されてはいる。
しかるに、上記2.においても説示したとおり、上記1.の前提事項(特に(1)の事項)からみて、水性コーティング剤中において、シリカ質粒子、アナターゼ型酸化チタン(粒子)及び無機系顔料粒子は、全ての粒子それぞれが分散剤分子の吸着により独立して分散存在しており、それはケイ酸カルシウム板表面に塗布した直後の湿潤塗膜中においても、経時的に分散媒である水が一定以上に蒸発散逸するまで同一の状態であるから、各粒子が分散剤分子が吸着された分散粒子の状態でケイ酸カルシウム板表面にそれぞれ同確率で一斉に定着することはあっても、分散剤、シリカ粒子及びアナターゼ型酸化チタン(粒子)(並びにさらに無機系顔料粒子)がケイ酸カルシウム板表面に対して段階的に配向定着するものとは認められない。
そして、経時的に分散媒である水が一定以上に蒸発散逸した時点以降の段階で、分散粒子の周囲に存在していた分散媒が存在しなくなり、各分散粒子の分散媒中の分散状態が破壊されて、分散粒子同士又は分散粒子とケイ酸カルシウム板表面との接触が生起することにより、分散粒子同士の凝集及び分散粒子又はその凝集粒子のケイ酸カルシウム板表面への定着が進行し、結局、分散媒などの揮発性成分が完全に蒸発散逸し、水性コーティング剤に基づく乾燥塗膜が形成されるものと理解するのが自然である。
してみると、本願明細書の発明の詳細な説明における上記作用機序に係る記載は、当業者の技術常識に基づかないものであり、本願発明に係る上記解決課題を解決できるであろうと当業者がその技術常識に照らして認識することができる作用機序であるものとは認められない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を更に検討しても、上記のものと異なる本願発明に係る作用機序を認識することができる記載はなく、実施例(比較例)などの実験例についても記載されていない。
してみると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、たとえその技術常識に照らしても、本願の請求項に記載された事項で特定されるすべての場合について、上記本願発明の解決課題を解決することができるものと認識することができるとはいえない。
したがって、本願請求項1及び2に記載された事項で特定される発明が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができない(平成17年(行ケ)10042号判決参照)。
結局、本願の各請求項の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本願の各請求項の記載は、特許法第36条第6項(柱書)に規定する要件を満たしていない。

4.請求人の主張について
なお、請求人は、平成26年5月19日付け意見書において、高橋紳矢著の博士論文の内容を提示し、「構成成分のうち、接触する環境(空気や水等)との界面自由エネルギーを最少とする成分が、その表(界)面に吸着・配向する」ことが当業者に周知であることをもって、本願発明における上記3種の粒子が配向されることが、当業者が認識することができると主張している(意見書「(4)補正後の請求項が特許性を有すること」の「(理由1)」の欄)。
しかるに、上記博士論文は、「MMA/PFOM及びMMA/PFOSAM共重合体」なる特異な有機高分子を含む系に係るものであり、分散剤以外の高分子を含有するものではない本願発明のコーティング剤における各粒子の配向・吸着に妥当するものとは認められない。
また、上記「構成成分のうち、接触する環境(空気や水等)との界面自由エネルギーを最少とする成分が、その表(界)面に吸着・配向する」との点が、本願発明の場合に一般に妥当するとしても、本願発明のコーティング剤における各粒子及び周辺の物質(溶媒、空気、ケイ酸カルシウム板)の間の界面自由エネルギーの大小関係については不明なのであるから、本願明細書の発明の詳細な説明(【0023】等)に記載された各粒子の配向が、上記作用機序により達成されるものと当業者が認識することができる技術的根拠になるものとはいえない。
なお、当審は、平成26年9月19日の審理面接の際に、請求人に対して上記各粒子の配向・吸着につき立証できる技術資料の提示を要請したが、当該提示はされなかった。
してみると、請求人の上記意見書における主張は、技術的根拠を欠くものであり、当を得ないものであって、当審の上記2.及び3.の検討の結果を左右するものではない。

5.理由A及びBについてのまとめ
以上のとおり、本願の各請求項及び明細書の発明の詳細な説明の各記載は、いずれも不備があり、特許法第36条第4項第1号又は同法同条第6項に規定する要件を満たしていないものであるから、本願は、同法第49条第4号に該当し、拒絶すべきものである。

II.原査定の拒絶理由1について
(以下、「拒絶理由C」と言い替える。)

拒絶理由C:本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物A?Cに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

引用刊行物:(それぞれ原審で引用された刊行物A、B及びGである。)
A.特開2001-31913号公報
B.特開2001-40245号公報
C.特開平11-246787号公報
(以下、上記「A.」、「B.」及び「C.」の各刊行物につき、それぞれ「引用例A」、「引用例B」及び「引用例C」という。)

1.各引用例に記載された事項

(1)引用例A
上記引用例Aには、以下の事項が記載されている。
(A-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)光触媒性半導体材料、(B)難分解性結着剤、(C)難分解性着色料が溶媒中に分散してなる塗料組成物。
【請求項2】 (C)難分解性着色料が耐酸化性と耐還元性を有する無機顔料であることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
・・(中略)・・
【請求項7】 (B)難分解性結着剤がシリコン系化合物を含むことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の塗料組成物。
【請求項8】 溶媒が水であることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の塗料組成物。
【請求項9】 請求項1から請求項8の何れかに記載の塗料組成物で塗布、成膜されたことを特徴とする該塗膜被覆物品。」
(A-2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は部材表面に着色された光触媒性塗膜を形成するための塗料組成物および該塗膜被覆物品に関する。特に建造物や構造物などの表面を親水化することにより、表面が汚れることを防止し、または表面を水を用いて容易に清浄化することの可能な耐久性に優れた着色塗膜を形成するための塗料組成物および該塗膜被覆物品に関する。」
(A-3)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術における前記問題点を背景になされたもので、その課題は、防汚性、耐久性、意匠性に優れた着色された光触媒性の塗料組成物および該塗膜被覆物品を提供することにある。」
(A-4)
「【0014】(A)光触媒性半導体材料としては、光触媒活性を有するものであれば特に制限はないが、アナタース型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、酸化第二鉄、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられ、1種又は2種以上が使用できる。なかでも、アナタース型二酸化チタンが好ましい。
【0015】(B)難分解性結着剤としては、加水分解性シラン、アルキルシリケ-ト、ポリオルガノシロキサン、アクリルシリコーン樹脂、シリカ、コロイダルシリカ、水溶性シリカ、シラノ-ル、水ガラス、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウムなどのシリコン系化合物、・・(中略)・・などの無機系化合物・・(中略)・・などが使用できる。
【0016】・・(中略)・・
【0022】特に(B)難分解性結着剤がシリコン系化合物を含有することが好ましい。シリコン系化合物としては、前記のシリコン系化合物が挙げられる。より好ましくは、シロキサン結合(≡Si-O-Si≡)が主成分であることが望ましく、加水分解性シラン、ポリオルガノシロキサン、アルキルシリケ-ト、シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウムなどが挙げられる。
【0023】(C)難分解性着色料としては、光触媒性半導体と併用しても変色、変質、分解しない無機顔料中の耐酸化性と耐還元性を有する無機顔料、あるいは難分解性に加工した顔料の中から選ばれ、単独または2種以上を併用して適宜用いる。
【0024】・・(中略)・・
【0040】本発明の塗料組成物に利用できる溶媒は、塗料組成物の(A)光触媒性半導体材料、(B)難分解性結着剤、(C)難分解性着色料とが分散するものであれば特に制限されない。例えば、アルコール類、エーテル類、アセトン、2-ブタノン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族、芳香族、脂環式の炭化水素、石油類等の一般的な有機溶媒や水が挙げられ、これらを単独、もしくは混合して用いることができる。中でも水及び/又は水溶性溶媒が好ましい。特に水が好ましい。
【0041】本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて分散安定剤、界面活性剤、消泡剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、香料、硬化剤などを添加する
ことが可能である。
【0042】本発明の塗料組成物は、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、羽根式攪拌機、マグネチックスターラー、高速分散機、乳化機などにて混合、分散処理を行う。」
(A-5)
「【0043】本発明の塗料組成物を被覆可能な基材としては、無機材料、金属材料、有機材料あるいはそれらの複合体であり、特に限定されるものではない。例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、セメント、コンクリ-ト、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの塗装体等である。
【0044】本発明の塗料組成物は着色を必要とするもので防汚効果、親水効果を期待される物品に適用される。着色効果は完全隠ぺいのものから着色ガラスのように透光性を有するものまで調整して適用できる。該塗膜被覆物品としては、建築物や構造物や車輌の外装や内装などが挙げられ、より具体的には、屋根材、瓦、カラートタン、カラー鉄板、窯業系建材、サイディング材、ケイカル板、セメント壁、アルミサイディング、カーテンウォール、塗装鋼板、石材、ALC、タイル、ガラスブロック、サッシ、ビルサッシ、網戸、雨戸、門扉、出窓、天窓、窓枠、トップライト、カーポート、サンルーム、ベランダ、ベランダ手すり、屋根樋、板ガラス、着色ガラス、ガラス用フィルム、太陽熱温水器等の集熱器用カバ-、エアコン室外機、店舗看板、サイン、広告塔、ショーケース、ショーウィンドウ、冷蔵・冷凍ショーケース、シャッタ-、屋外ベンチ、自動販売機、遮音壁、防音壁、道路化粧板、ガードフェンス、桁美装板、トンネル内装板、道路反射鏡、標識板、碍子、保護板、保護膜、料金所、料金ボックス、街灯、道路、舗装路、舗道、プラント外壁、プラント内壁、石油貯蔵タンク、煙突、機械装置、農業用ガラス、ガラス温室、ビニールハウス、テント、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オ-トバイ、自動車用ガラス、キッチン設備部材、浴室設備部材、衛生陶器、陶磁器、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフ-ド、換気扇、フィルム、ワッペンなどが挙げられる。」
(A-6)
「【0051】
【実施例】以下本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(調合例1)ベンガラ(戸田工業社製、140ED、酸化鉄Fe2O3、平均粒子径0.21μm)60部、分散剤(BASFジャパン社製、ピグメントディスパーザーMD-20)2.4部、消泡剤(サンノプコ社製、SNデフォーマー477)0.6部、蒸留水28部、プロピレングリコール9部の混合物をペイントシェーカーにて1時間分散させて着色材分散液を得た。この着色材分散液29.2部、光触媒性半導体材料としてアナタース型酸化チタンスラリー(石原産業社製、STS-21、固形分濃度40%、水溶媒、pH=9、平均粒子径=20nm)43.8部、難分解性結着材としてシリコーンアクリルエマルジョン溶液(信越化学工業社製、X-41-7001、固形分濃度42%、pH=7)83.3部、蒸留水33.8部、塩基性硬化触媒(信越化学工業社製、CAT-AS)10部の混合物をペイントシェーカーにて1時間分散させて塗料組成物Aを得た。塗料組成物Aの不揮発分濃度は35%、不揮発分中の着色材/光触媒/結着剤の重量比は1/1/2、不揮発分中のシリカ換算シリコン化合物の含有重量比は25%、揮発分中の水分の重量比は90%である。
【0052】(調合例2)調合例1において60部のベンガラに変えてチタン白(石原産業社製、タイペークCR-97、ルチル型酸化チタン、平均粒子径0.25μm)60部とし、あとは調合例1と同様に調合して塗料組成物Bを得た。塗料組成物Bの不揮発分濃度、不揮発分中の着色材/光触媒/結着剤の重量比、不揮発分中のシリカ換算シリコン化合物の含有重量比、揮発分中の水分の重量比は塗料組成物Aと同じである。
【0053】・・(中略)・・
【0058】(実施例1)150mm×65mmに裁断した厚さ3mmの石綿セメントけい酸カルシウム板(JIS-A5418に準拠したもの)に樹脂系プライマー(日本ペイント社製、ニッペウルトラシーラーII)を刷毛塗りで塗布し、室温にて24時間乾燥した。ついで調合例1で作製した塗料組成物Aを上記したプライマー塗装を行った石綿セメントけい酸カルシウム板上に刷毛塗りで塗布し、室温にて1週間乾燥し、被覆物試験板aを得た。
【0059】(実施例2)実施例1と同様にして、調合例2で作製した塗料組成物Bを前記したプライマー塗装を行った石綿セメントけい酸カルシウム板上に塗工し、被覆物試験板bを得た。」

(2)引用例B
上記引用例Bには、以下の事項が記載されている。
(B-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 光触媒性半導体材料、難分解性結着剤、光遮蔽性材料を含有してなる光触媒性親水性塗料組成物
【請求項2】 前記光遮蔽性材料は、粒子径0.001μm以上0.1μm以下のルチル型二酸化チタン微粒子である請求項1記載の光触媒性親水性塗料組成物
【請求項3】 前記光遮蔽性材料は、粒子径0.001μm以上0.1μm以下の酸化亜鉛微粒子である請求項1記載の光触媒性親水性塗料組成物
・・(中略)・・
【請求項6】 更に難分解性着色料を含有してなる請求項1乃至5いずれか1項記載の光触媒性親水性塗料組成物
【請求項7】 請求項1乃至6に記載の光触媒性親水性塗料組成物を塗布して形成した光触媒性親水性塗膜
【請求項8】 基材と、請求項7記載の光触媒性親水性塗膜とからなる光触媒性親水性複合材
・・(後略)」
(B-2)
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、光触媒性半導体のバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射されることにより、光触媒性半導体から発生するラジカルによって、最表層部分では、親水効果、防汚効果が得られるものの、塗膜および基材表面に存在する有機化合物が分解されたり、また紫外線により塗膜および基材が直接分解されるという不具合を解決することを目的とする。」
(B-3)
「【0017】前記発明の光触媒性親水性塗料組成物を被覆使用できる基材としては、降雨による自己浄化が期待できる屋外用途においては、例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、セメント、コンクリ-ト、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの塗装体等である。
【0018】より具体的には、外壁や屋根のような建物外装;窓枠;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オ-トバイのような乗物の外装及び塗装;窓ガラス;看板、交通標識、防音壁、ビニ-ルハウス、碍子、乗物用カバ-、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバ-、太陽熱温水器等の集熱器用カバ-、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシ-ラ-、ガ-ドレ-ル、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッタ-、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバ-、防塵カバ-及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等である。
【0019】前記発明の光触媒性親水性塗料組成物を被覆使用できる基材としては、水洗による清浄化が期待できる用途においては、例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、セメント、コンクリ-ト、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの塗装体等である。
【0020】より具体的には、上記屋外用途部材が含まれることは勿論、その他に、建物の内装材、窓ガラス、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフ-ド、換気扇、窓レ-ル、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等である。」
(B-4)
「【0048】本発明における無機微粒子紫外線遮蔽剤を塗料組成物に混合させる場合、任意の分散剤を使用できる。水系溶媒に分散させる場合、水系分散剤としては、例えば高分子量のポリカルボン酸の塩、スチレン・マレイン酸共重合物の塩、ナフタレン・スルホン酸のホルマリン縮合物、長鎖アルキル有機スルホン酸の塩、リグニンスルホン酸の塩、ポリリン酸、ポリケイ酸の塩、長鎖アルキルアミン塩、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができ、1種または2種以上使用できる。
・・(中略)・・
【0050】本発明において用いられる光触媒半導体材料としては、TiO_(2)、ZnO、SnO_(2)、SrTiO_(3)、CdS、CdO、CaP、InP、In_(2)O_(3)、CaAs、BaTiO_(3)、K_(2)NbO_(3)、Fe_(2)O_(3)、Ta_(2)O_(5)、WO_(3)、SaO_(2)、Bi_(2)O_(3)、NiO、Cu_(2)O、SiC、SiO_(2)、MoS_(2)、MoS_(3)、InPb、RuO_(2)、CeO_(2)などを挙げることができる。これらの中でも酸化チタンが好ましい。酸化チタンの中でも結晶形がアナタ-ゼ型およびブルッカイト型がより好ましい。」
(B-5)
「【0053】本発明における難分解性結着剤としては、加水分解性シラン、アルキルシリケート、ポリオルガノシロキサン、アクリルシリコーン樹脂、シリカ、コロイダルシリカ、水溶性シリカ、シラノール、水ガラス、ケイ酸チリウム、ケイ酸カリウムなどのシリコン系化合物、・・(中略)・・などの無機系化合物・・(中略)・・などが使用できる。
【0054】・・(中略)・・
【0061】特に難分解性結着剤がシリコン系化合物を含有することが好ましい。シリコン系化合物としては、前記のシリコン系化合物が挙げられる。より好ましくは、シロキサン結合(≡Si-O-Si≡)が主成分であることが望ましく、加水分解性シラン、ポリオルガノシロキサン、アルキルシリケ-ト、シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウムなどが挙げられる。
【0062】本発明における難分解性結着剤は、ペルオキソチタン酸またはその部分縮合物などの無定型の酸化チタン前駆体化合物がが好適である。これらは難分解性結着剤としてばかりでなく、光遮蔽性材料としての機能も充分果たし得る。しかし親水維持性に乏しいため、例えばコロイダルシリカのような親水維持性に富むものとの併用が好ましい。さらにコロイダルシリカを添加することで塗膜の屈折率を下げ、可視域での反射を減らすという効果も生まれる。
【0063】本発明における難分解性結着剤の添加量は、全体の固形分に対して、10?95重量%の範囲が好ましく、より好ましくは20?80重量%である。添加量が10重量%未満では塗膜の膜強度が著しく低下する。また95重量%を超えると、光触媒半導体材料の添加量が少なくなり、光触媒活性を起こすには十分でなく、期待する親水性、防汚性を得られない。」
(B-6)
「【0064】本発明の塗料組成物は、光触媒半導体材料と併用しても変色、変質、分解しない着色料を、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で添加してもよい。
【0065】着色料としては、特に限定はないが、着色に使用できるもので無機顔料、有機顔料、染料などの中から選ばれ、単独または2種以上を併用して適宜用いる。」
(B-7)
「【0073】
【実施例】以下に、実施例を掲げてこの発明をさらに具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(調合例1)光触媒半導体材料として、二酸化チタンアナターゼ型微粒子ゾル溶液(田中転写社製、TO-240)125.0部、難分解性結着剤および光遮蔽性材料としてペルオキソチタン酸溶液(田中転写社製、PTA-170)411.76部の混合物を常温で30分攪拌することにより、塗料組成物Aを得た。
【0074】(調合例2)光触媒半導体材料として、二酸化チタンアナターゼ型微粒子ゾル溶液(田中転写社製、TO-240)125.0部、難分解性結着剤および光遮蔽性材料としてペルオキソチタン酸溶液(田中転写社製、PTA-170)352.94部、さらに光遮蔽性材料として、イオン交換水1.2部、プロピレングリコール0.1部、分散剤(ビーエーエスエフジャパン社製、ピグメントディスパーザーMD20)0.1部中にあらかじめ分散させておいた二酸化チタンルチル型微粒子粉末(石原産業社製、TTO-55D)1.0部の混合液を30分攪拌することにより、塗料組成物Bを得た。
【0075】(調合例3)光触媒半導体材料と難分解性結着剤の混合物として、光触媒酸化チタン/コーティング液(石原産業社製、ST-K03)60.0部、難分解性結着剤として、コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスIPA-ST)10.0部、光遮蔽性材料として、二酸化チタンルチル型微粒子粉末(石原産業社製、TTO-55D)1.0部、2-プロパノール429.0部の混合液を30分攪拌することにより、塗料組成物Cを得た。
【0076】(調合例4)光触媒半導体材料と難分解性結着剤の混合物として、光触媒酸化チタン/コーティング液(石原産業社製、ST-K03)60.0部、難分解性結着剤として、コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスIPA-ST)10.0部、光遮蔽性材料として、ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤(旭電化社製、アデカスタブLA-51)1.0部、2-プロパノール429.0部の混合液を30分攪拌することにより、塗料組成物Dを得た。
【0077】・・(中略)・・
【0080】(実施例1)40×40mmに切断したスライドガラス板(松波硝子工業製、標準大型水緑磨S9213、厚さ1.3mm)に調合例1で作製した塗料組成物Aを0.34g刷毛塗りで塗布し、室温にて3日間乾燥させ、膜厚1μmの被覆物試験板aを得た。また150mm×65mmに裁断した石綿セメントケイ酸カルシウム板(JIS A5418に準拠したもの)にエポキシ樹脂系プライマー(エスケー化研、商品名 SKサーフエポ)をスプレー塗装し、室温で24時間乾燥させ、続いてアクリルウレタン塗料(イサム塗料、商品名 ハイアート1000)を、上記したプライマー塗装を行った石綿セメントケイ酸カルシウム板上にスプレー塗装し、室温で24時間乾燥させた。ついで調合例1で作製した塗料組成物Aを2.07g刷毛塗りで塗布し、室温にて3日間乾燥させ、塗料組成物Aの膜厚1μmの被覆物試験板a’を得た。
【0081】(実施例2)実施例1と同様にして、調合例1で作製した塗料組成物Aをガラスには0.68g、プライマーおよび塗料の塗装を行った石綿セメントケイ酸カルシウム板には、4.14g刷毛塗りで塗布し、室温にて3日間乾燥させ、膜厚2μmのガラス製の被覆物試験板bおよび石綿セメントケイ酸カルシウム板製の被覆物試験板b’を得た。
【0082】(実施例3)実施例1と同様にして、調合例2で作製した塗料組成物Bをガラスには0.34g、プライマーおよび塗料の塗装を行った石綿セメントケイ酸カルシウム板には、2.07g刷毛塗りで塗布し、室温にて3日間乾燥させ、膜厚1μmのガラス製の被覆物試験板cおよび石綿セメントケイ酸カルシウム板製の被覆物試験板c’を得た。
【0083】(実施例4)実施例1と同様にして、調合例3で作製した塗料組成物Cをガラスには0.22g、プライマーおよび塗料の塗装を行った石綿セメントケイ酸カルシウム板には、1.34g刷毛塗りで塗布し、室温にて3日間乾燥させ、膜厚1μmのガラス製の被覆物試験板dおよび石綿セメントケイ酸カルシウム板製の被覆物試験板d’を得た。
【0084】(実施例5)実施例1と同様にして、調合例4で作製した塗料組成物Dをガラスには0.20g、プライマーおよび塗料の塗装を行った石綿セメントケイ酸カルシウム板には、1.22g刷毛塗りで塗布し、室温にて3日間乾燥させ、膜厚1μmのガラス製の被覆物試験板eおよび石綿セメントケイ酸カルシウム板製の被覆物試験板e’を得た。」

(3)引用例C
上記引用例Cには、以下の事項が記載されている。
(C-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 光触媒活性を有する酸化チタン微粒子が分散されたシリカの膜であって、且つ多孔質構造を有していることを特徴とする建材用塗膜。
・・(中略)・・
【請求項3】 アルカリ金属珪酸塩水溶液、光触媒活性を有する酸化チタン微粒子、及び二酸化炭素を発生する発泡剤を含有することを特徴とする建材用塗料組成物。
【請求項4】 表面にOH基を有するSiO_(2)微粒子を含有している請求項3に記載の建材用塗料組成物。
【請求項5】 SiO_(2)微粒子及びアルコキシシランを含有している請求項3に記載の建材用塗料組成物。
・・(中略)・・
【請求項13】 基材表面に、請求項1又は2に記載された塗膜が形成されている建材。
【請求項14】 前記塗膜は、下地処理された基材表面に形成されている請求項13に記載の建材。」
(C-2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高硬度、耐候性、防火性、意匠性、耐久性、抗菌性、消臭性、防汚染性が要求される建築材料に用いられる塗膜、及び該塗膜を形成するのに用いられる塗料組成物、塗膜形成方法、及び該塗膜が形成された建材に関するものである。」
(C-3)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、酸化チタンは、その触媒機能故に、樹脂塗膜を分解してしまうという問題がある。酸化チタンによる塗膜の分解作用は、塗膜の強度、硬度、耐水性、耐候性等の物性低下を招くため、抗菌、防汚、消臭機能等を保持しているにも拘わらず、塗膜の耐久性を確保できなくなってしまう。
【0006】光触媒によっても分解されないような塗膜として、シリカのような無機系塗膜構成成分を用いることが提案されている。光触媒活性を有する無機質塗膜を形成する具体的方法としては、○1(審決注:いわゆる丸数字は使用できないので、このように以下表現する。)TiO_(2)粒子とシリカの粒子とを含む懸濁液を塗布後、加熱してTiO_(2)粒子及びシリカ粒子の焼結被膜を形成する方法;○2水ガラスのようなアルカリ金属珪酸塩水溶液にTiO_(2)粒子を分散させてなる懸濁液を塗布後、加熱して、脱水縮合させることにより、酸化チタン粒子が分散されたシリカの塗膜を形成する方法;○3テトラアルコキシシランにTiO_(2)粒子を分散させてなる懸濁液を塗布後、加熱して、脱水縮合させることにより、酸化チタン粒子が分散されたシリカの塗膜を形成する方法が挙げられる。
・・(中略)・・
【0011】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、塗料自体が本来有する耐水性、耐候性、意匠性、隠蔽性を維持しつつ、抗菌、防汚、消臭機能を半永久的に発揮できる塗膜、該塗膜を従来より簡単で安価に形成することができる建材用塗料組成物及び該塗膜の形成方法、並びに該塗膜が形成された建材を提供することにある。」
(C-4)
「【0020】
【発明の実施の形態】本発明に係る建材用塗膜は、光触媒活性を有する酸化チタン微粒子が分散されたシリカの膜であって、且つ多孔質構造を有しているものである。
【0021】ここで、光触媒活性を有する酸化チタンとは、具体的にはアナターゼ型、ルチル型の結晶性酸化チタンをいい、これらのうちアナターゼ型の純度99%以上の高純度酸化チタン微粒子が自己浄化、抗菌という光触媒活性が強いので好ましく用いられ、特に粒径10μm以下、比表面積200g/m^(2)以上のグレードの酸化チタンが好ましく用いられる。」
(C-5)
「【0039】第2塗料組成物は、上記必須成分(アルカリ金属珪酸塩、光触媒活性を有する酸化チタン、二酸化炭素を発生する発泡剤)の他に、必要に応じて以下のような成分を含有してもよい。尚、以下の成分は、第1塗料組成物においても同様に、必要に応じて添加してもよい。
【0040】まずはコロイダルシリカ等のシリカ微粒子を含有することが好ましい。コロイダルシリカは、アルカリ金属珪酸塩中のSiO_(2)と同様に塗膜成分として働くことができるので、コロイダルシリカを用いることにより、第1の塗料中に含まれるアルカリ金属珪酸塩の含有量を減らすことが可能となる。このことは、アルカリ金属珪酸塩に基づくアルカリ金属量を減らすことになるので、アルカリ金属除去のための洗浄作業を簡単にできるという効果が得られる。また、第1又は第2塗料組成物におけるコロイダルシリカとアルカリ金属珪酸塩の配合比率を調整することによって、形成される塗膜の空孔サイズを調整することもできる。尚、コロイダルシリカは、シラン処理したものを用いることが好ましい。シラン処理したコロイダルシリカは、pH変化に対しても、良好な分散性を有するからである。
【0041】そしてコロイダルシリカを含有する場合には、シランアルコキシドを含有することが好ましい。アルカリ金属珪酸塩とコロイダルシリカは相溶性が不十分であるために、塗料中でコロイダルシリカが凝集しやすく、均一分散させることが困難であるが、シランアルコキシドを共存させることによりコロイダルシリカを安定に分散させることができるからである。・・(後略)」
(C-6)
「【0048】塗料組成物には、さらに必要に応じて、充填剤、顔料、分散剤などを含有することができる。
【0049】上記充填剤としては、二酸化ケイ素の粉末を用いることが好ましい。特に、必須成分の他にコロイダルシリカ、シランアルコキシドを含有していない場合の充填剤として好ましい。・・(中略)・・
【0051】本発明に用いられる顔料としては、コバルトブルー、赤ベンガラ、黄ベンガラ、マンガンバイオレット、フタロシアニンブルー等の無機系、有機系の顔料が挙げられ、分散剤としては、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のピロリン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。」
(C-7)
「【0066】本発明の建材は、上記第1?第3の塗膜形成方法のいずれかにより、基材に本発明の塗膜を形成したものである。
【0067】ここで、基材としては、塗膜形成時の焼成温度がそれ程の高温でないことから、金属板、セメント板、プラスチック板などいずれを用いることができ、また多孔質、非多孔質を問わない。但し、塗膜はガラス質で不燃性であるから、不燃性用途の建材である金属材料、窯業材料、無機質材料を用いることがより効果的である。具体的には、石綿セメント板、パーライト保温板、ALC板、GRC板等のセメント板;ガラス繊維、ガラスウール、ロックウール、金属繊維、カーボンファイバー等の無機繊維を主成分とした硬質無機板や無機繊維クロス;金属パネル等を挙げることができる。
【0068】これらの基材は、必要に応じてプライマー、シーラー、サーフェーサー、パテ等の下地処理剤で予め下地処理をしておいてもよい。下地処理剤の適宜選択により、基材とガラス質塗膜の密着性を向上させることができ、凹凸ある基材表面を平滑化して、硬質なガラス質塗膜の基材に対する界面濡れ性を向上させることができる。
【0069】このような基材に形成される塗膜は、前述の本発明に係る塗膜である。塗膜の厚みは、20?200μmとすることが好ましい。意匠性を満足できるように基材表面を隠蔽するためには、この程度の膜厚が必要だからである。尚、所定膜厚の塗膜を形成するに際しては、1回の塗装で形成してもよいし、2、3回に分けて重ね塗りにより所定膜厚としてもよい。複数回に分けて重ね塗りすることにより多層構造となって、基材にまで連通するような多孔質構造ではなくなるが、1回でぶ厚いガラス質の膜を形成するよりも、耐衝撃性に優れた塗膜を形成することができるからである。
【0070】本発明に係る建材は、本発明に係る建材用塗膜が形成されているので、塗膜形成要素たるシリカなわちシロキサン結合により3次元網状化した硬質のガラス質塗膜に基づいて、高硬度で、耐火性、耐候性、耐水性に優れ、また塗膜中に分散された光触媒活性を有する酸化チタンに基づいて消臭性、殺菌性、防汚性を半永久的に発揮でき、しかも多孔質構造に基づいて、耐クラック性を有し、さらには酸化チタン含有量に見合った光触媒活性(消臭性、殺菌性、防汚性)を有する。」
(C-8)
「【0071】
【実施例】
・・(中略)・・
【0082】実施例1:
4号珪酸ソーダ(30%水溶液)100重量部、純度99%のアナターゼ型微粒子酸化チタン40重量部、シリカ微粉末20重量部、ピロリン酸ナトリウム2重量部、セロソルブ系溶媒3重量部、ヒマシ油エチレンオキサイド付加物の界面活性剤3重量部、水100重量部をボールミルに仕込み、10時間撹拌して、A液を調製した。
【0083】次に、酸性コロイダルシリカ(日産化学社製の「スノーテックス0」)100重量部に、メチルトリメトキシシラン10重量部を攪拌しながら徐々に滴下した。更に、1時間攪拌して加水分解させた後、5%NaOH水溶液を添加して、pH11に調整してB液とした。
【0084】A液:B液を3:1に配合してなる塗料組成物を、二酸化炭素:空気を3:1の割合で噴射するスプレー装置を用いて、塗料組成物に二酸化炭素を吹き込みつつスプレー塗装し、50℃で10分間、120℃で10分間乾燥硬化させた。基材として珪酸カルシウム板を使用し、厚み100μmの塗膜を形成した。
【0085】続いて、回転ブラシを用いて塗膜を水洗浄することによりアルカリ金属炭酸塩を溶出除去し、120℃で10分間再乾燥した。得られた塗膜は、肉眼で判別できるようなクラックは認められないが、平均孔径0.5μmの連続気泡を有する多孔質構造を有していた。
【0086】このようにして製造した建材について、上記評価方法により、表面硬度、耐沸騰水性、耐候性、密着性、不燃性、抗菌性、消臭性、防汚性を評価した。評価結
果を表1に示す。
・・(中略)・・
【0090】表1からわかるように、実施例1の方法によれば厚膜のガラス質塗膜を形成できたのに対し、比較例では実用に耐え得るような厚膜を形成することができなかった。すなわち、密着性に劣り、また肉眼でも認識できるようなクラックが生じたために耐候性も劣ることとなった。
【0091】また、酸化チタンを同程度の量だけ含有しているにも拘わらず、微細孔が多数形成された多孔質構造の実施例1の方が、耐候性、消臭性、防汚性の点で優れていた。
【0092】実施例2:
4号珪酸ソーダ(30%水溶液)100重量部、純度99%のアナターゼ型微粒子酸化チタン50重量部、シリカ微粉末20重量部、ピロリン酸ナトリウム2重量部、セロソルブ系溶媒3重量部、ヒマシ油エチレンオキサイド付加物の界面活性剤3重量部、水90重量部をボールミルに仕込み、10時間撹拌してこれらの化合物を分散させることによりA液を調製した。
【0093】次に、酸化亜鉛20重量部、リン酸アルミニウム10重量部、ピロリン酸ナトリウム2重量部、セロソルブ系溶媒3重量部、水90重量部をボールミルに仕込み、10時間撹拌して分散させ、C液を調製した。
【0094】A液:C液を3:1に配合してなる塗料組成物を、二酸化炭素:空気を3:1の割合で噴射するスプレー装置を用いて、塗料組成物に二酸化炭素を吹き込みつつ、基材(珪酸カルシウム板)の表面にスプレー塗装し、50℃で10分間、120℃で10分間乾燥硬化させて、厚み100μmの塗膜を形成した。続いて、回転ブラシを用いて塗膜を水洗浄することによりアルカリ金属炭酸塩を溶出除去し、120℃の温度で10分間再乾燥して、細孔径5μm以下の連続気泡を有する多孔質構造の塗膜を形成した。
【0095】このようにして製造した建材について、上記評価方法により、表面硬度、耐沸騰水性、耐候性、密着性、不燃性、抗菌性、消臭性、防汚性を評価した。評価結果を表2に示す。
・・(中略)・・
【0100】
【発明の効果】本発明の塗膜は、高硬度で耐火性、耐候性、耐沸騰水性に優れ、しか多孔質構造を有しているので基材の膨張収縮に対しても追随でき、環境の変化に対してもクラックなどが生じにくく、耐久性に優れている。また、厚膜であるにも拘わらず、塗膜中に含まれる酸化チタンの含有量に見合った抗菌、消臭、防汚作用を半永久的に有効に発揮できる。」

2.拒絶理由Cに係る検討

(1)各引用例記載の発明
上記AないしCの各引用例には、それぞれ、シリカ(二酸化ケイ素)微粒子などのシリコン系微粒子などを含む難分解性結着剤及びアナターゼ型酸化チタン光触媒粒子を含有する光触媒コーティング剤が記載されており(摘示(A-1)及び(A-4)、(B-1)及び(B-6)並びに(C-1)参照)、さらに、当該コーティング剤には、無機系顔料などの難分解性着色剤(摘示(A-1)及び(A-4)、(B-1)及び(B-6)並びに(C-6)参照)及び分散(安定)剤(摘示(A-4)、(B-4)及び(C-6)参照)を添加使用することも記載されている。
また、上記AないしCの各引用例には、それぞれ、上記コーティング剤を構成するにあたり、溶媒(分散媒)を水とすることも記載されており(摘示(A-1)、(B-1)及び(B-4)並びに(C-1)及び(C-8)参照)、さらに、当該コーティング剤を塗布する基材として、ケイ酸カルシウム板に塗布することも記載されている(摘示(A-5)及び(A-6)、(B-3)及び(B-7)並びに(C-7)及び(C-8)参照)。
なお、上記各引用例記載の「光触媒コーティング剤」についても、基材表面に光触媒機能を有する酸化チタンを担持させるとともに、着色剤を使用した場合、基材表面が着色されることは、いずれも当業者に自明である。
してみると、上記AないしCの各引用例には、それぞれ、
「ケイ酸カルシウム板の表面に光触媒機能を有する酸化チタンを担持させ、かつケイ酸カルシウム板の表面に着色するための光触媒コーティング剤であって、
無機系顔料と、アナターゼ型酸化チタンと、シリカ質粒子と、それらを分散させる分散剤とを含有する水溶液からなる光触媒コーティング剤」
に係る発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものといえる。

(2)対比・検討

ア.対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、両者は、
「ケイ酸カルシウム板の表面に光触媒機能を有する酸化チタンを担持させ、かつケイ酸カルシウムの表面に着色するための光触媒コーティング剤であって、
無機系顔料と、アナターゼ型酸化チタンと、シリカ質粒子と、それらを分散させる分散剤とを含有する水溶液からなる光触媒コーティング剤」
の点で明らかに一致し、以下の3点でのみ一応相違するかに見える。

相違点1:「ケイ酸カルシウム板」につき、本願発明1では「箔状、板状及び針状結晶構造を有する」ものであり、「表面に1nm?1000nmの大きさの微細孔を有」するものであるのに対して、引用発明では、ケイ酸カルシウム板の結晶構造及び微細孔の有無並びにその大きさについて規定されていない点
相違点2:「光触媒コーティング剤」につき、本願発明1では、「酸化チタンの光触媒機能を阻害することなくケイ酸カルシウムの表面に着色する」のに対して、引用発明では、「ケイ酸カルシウム板の表面に着色する」ものであり、「酸化チタンの光触媒機能を阻害する」か否かにつき規定されていない点
相違点3:「シリカ質粒子」につき、本願発明1では、「シリカ粒子は5nm?100nmの大きさを有する」ものであるのに対して、引用発明では、その大きさ(粒径)につき規定されていない点

イ.各相違点に係る検討

(ア)相違点1
上記相違点1につき検討すると、ケイ酸カルシウム板は、一般に、サブミクロンオーダーの微細な多孔質であることによる調湿機能を有する建材として使用されるものであって、その結晶構造はトバモライト又はゾノトライトなる斜方晶系又は三斜晶系のものであるから、前者の場合、箔状又は板状の結晶構造となり、後者の場合、針状の結晶構造となることは、当業者の技術常識の範ちゅうのことと認められる(必要ならば下記参考文献1等を参照のこと。)。
してみると、引用発明における「ケイ酸カルシウム板」についても、「箔状、板状及び針状結晶構造を有する」ものであり、「表面に1nm?1000nmの大きさの微細孔を有」するものであるものと認められ、ケイ酸カルシウム板に関する通常の物性を規定したに過ぎないものであるから、上記相違点1については、実質的な相違点であるとはいえない。

参考文献1:無機マテリアル学会編「セメント・セッコウ・石灰ハンドブック」1995年11月1日、技報堂出版株式会社発行、219頁及び477?478頁

(イ)相違点2
上記相違点2につき検討すると、上記I.の2.及び3.で説示したとおり、本願発明の光触媒コーティング剤を使用してケイ酸カルシウム板の表面に塗膜を形成した場合の「無機系顔料」、「アナターゼ型酸化チタン(粒子)」及び「シリカ質粒子」が特異な配向構造となることに係る作用機序については不明であるから、本願発明1における「酸化チタンの光触媒機能を阻害することなくケイ酸カルシウムの表面に着色する」ことが上記3種の粒子成分を含有する本願発明1のコーティング剤で達成されるのであるならば、引用発明の上記3種の粒子成分を含有するコーティング剤においても、同程度の効果が奏されるものと認めるのが自然である。
してみると、上記相違点2についても実質的な相違点であるとはいえない。

(ウ)相違点3
上記相違点3につき検討すると、シリカ微粒子は、上市されているものとして粒径数nm?数十μmのものが存在するが、例えば、当業者に周知で極めて汎用の「アエロジル」なる商品名で上市されているものは、数nm?数十nmの粒径のものであることが当業者に自明である(必要ならば下記参考文献2参照のこと。)。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、シリカ微粒子として5nm?100nmの大きさを有するものを使用したことにより、特異な効果を奏しているものとは認められない。
(なお、上記I.の2.及び3.で説示したとおり、本願発明の光触媒コーティング剤を使用してケイ酸カルシウム板の表面に塗膜を形成した場合の「無機系顔料」、「アナターゼ型酸化チタン(粒子)」及び「シリカ質粒子」が特異な配向構造となることに係る作用機序については不明であるから、ケイ酸カルシウム板の微細孔の大きさとシリカ微粒子の大きさとの間に所期の効果の有無に係る因果関係が存するものとも認められないし、また、そもそも、技術常識からみて、ケイ酸カルシウム板の微細孔の大きさがシリカ粒子の大きさより小さい場合に、明細書の発明の詳細な説明(【0023】)に記載されるような現象が生起するものとも認められない。)
してみると、上記相違点3に係る「シリカ粒子は5nm?100nmの大きさを有する」と規定した点に格別な技術的意義が存するものとは認められず、上記相違点3は、実質的な技術的相違点であるものとは認められない。

参考文献2:「便覧ゴム・プラスチック配合薬品」2003年12月2日、株式会社ポリマーダイジェスト発行、203?204頁

ウ.対比・検討のまとめ
したがって、上記相違点1ないし3はいずれも実質的な相違点であるとはいえないから、本願発明1と引用発明とは実質的に同一であり、本願発明1は、上記引用例A、B又はCに記載された発明であると認められる。

(3)請求人の主張について
なお、請求人は、本件審判請求書において、本願発明が、「分散剤を除き高分子系でない」との発明特定事項とするのに対して、原審における上記AないしHの各刊行物には、当該「分散剤を除き高分子系でない」との事項が記載されておらず、当該事項が具備されるべき動機付けとなる事項も記載されていないとして、本願発明が特許されるべきであると主張している(「[3]本願発明が特許されるべき理由」の欄)。
しかるに、上記「分散剤を除き高分子系でない」との事項は、平成24年12月4日付けの手続補正により、追加された事項であり、平成26年5月19日付けの手続補正により削除された事項であるから、上記主張は、請求項の記載に基づかないものとなっており、採用する余地がなく、上記当審の拒絶理由Cに係る検討の結果を左右するものではない。

(4)拒絶理由Cに係る検討のまとめ
以上のとおり、本願発明1は、上記引用例A、B又はCに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本願は、請求項2に係る発明につき検討するまでもなく、特許法第49条第2号に該当するから、拒絶すべきものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第49条第2号又は第4号に該当し、いずれにしても拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-10 
結審通知日 2014-11-11 
審決日 2014-11-26 
出願番号 特願2006-86168(P2006-86168)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C09D)
P 1 8・ 113- WZ (C09D)
P 1 8・ 121- WZ (C09D)
P 1 8・ 536- WZ (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 達也  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 橋本 栄和
日比野 隆治
発明の名称 光触媒コーティング剤及び光触媒担持体  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 一色国際特許業務法人  
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