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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1296024
審判番号 不服2013-13982  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-19 
確定日 2015-01-05 
事件の表示 特願2010-549237「尺度評価された情動状態を伴う買物客向け情報伝達」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月11日国際公開、WO2009/109915、平成23年 4月28日国内公表、特表2011-513851〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,2009年3月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年3月3日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成24年5月23日付けの拒絶理由通知に対して,指定された期間内に応答がなく,平成25年3月13日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して平成25年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成25年12月20日付けの審尋に対して平成26年6月20日付けで回答書が提出されたものである。

2.本願発明
平成25年7月19日付けの手続補正は,平成24年5月23日付けの拒絶理由通知の[理由2]で指摘された記載不備を解消するために,請求項1?9の「情報伝達」を「情報伝達媒体」と補正し,請求項12?15の「買物客向け情報伝達」を「製品パッケージ」と補正するものであり,「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当すると認められるので,特許法第17条の2第5項第4号に掲げられた事項を目的とするものに該当し,適法になされたものである。
したがって,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年7月19日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
尺度評価された情動状態又は尺度評価された情動状態要素のいずれかに類似しているしるしを含み,前記情動状態又はその要素が製品又はサービスの使用に関連する,製品又はサービスに関する買物客向け情報伝達媒体。」

3.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された,特開2002-133264号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,商品情報提示方法及び装置にかかり,特に,インターネット等のオンライン回線を介して商品に関連する情報を提示する商品情報提示方法及び装置に関する。」

(イ)「【0011】例えば,前記評価情報として,商品の購入者が該商品に対して設定した評価値を採用する。商品の購入者は,その使用感や購入時の印象などのように,商品に対して意見や要望を有することが多い。そこで,この意見や要望を分類して例えば商品の実用度を評価基準として優良否のように複数の段階の評価値を設定すれば,容易に評価情報を設定することができる。」

(ウ)「【0015】図1には,本発明の実施の形態が適用可能なネットワークシステムの概略構成が示されている。図1に示したように,ネットワークシステム80は,各々同一または異なる操作者が操作する操作側の複数のコンピュータ84,及び同一または異なる処理側の複数のコンピュータ82が,それぞれモデム,ルータ,TA(ターミナル・アダプタ:Terminal Adapter)等の接続装置86を介して,ネットワーク(例えば,インターネット)88に接続されて構成されている。複数のコンピュータ82,84は,ネットワーク88を介して,相互通信により情報授受が可能である。
【0016】また,以下の説明では,図1に示したように,複数のコンピュータ82のうち少なくとも1つのコンピュータ82が各種情報を提供するコンピュータ(以下,「サーバ・コンピュータ」という)83として機能し,また,操作側のコンピュータ84は,ユーザにより商品の注文を行うコンピュータ(以下,「ユーザ・コンピュータ」という)85として機能する構成を一例として説明する。なお,ユーザ・コンピュータ85,サーバ・コンピュータ83を各々1台ずつとして説明するが,本発明は,これに限定されるものではなく,複数台でもよい。また,本実施の形態では,ユーザ・コンピュータ85を操作する操作者をユーザといい,このユーザには後述する利用者である第三者を含むものである。」

(エ)「【0042】図6には,サーバ・コンピュータ83から送信されたデータにより,ユーザ・コンピュータ85に表示される検索商品一覧の画面例を示した。画面210は,検索結果の一覧表の表示領域212を含んでいる。検索結果の一覧表は,商品毎に,商品名の表示欄214,作者名の表示欄216,出版社の表示欄218,商品の価格の表示欄220,利用者評価の表示欄222,及び在庫状態の表示欄224が対応されている。商品名の表示欄214,作者名の表示欄216,出版社の表示欄218,及び商品の価格の表示欄220に対応されるデータは,商品マスタ26から抽出したデータであり,利用者評価の表示欄222に対応されるデータは,利用者評価マスタ28から抽出したデータであり,在庫状態の表示欄224に対応されるデータは,商品在庫マスタ34から抽出したデータである。この他のデータとして,商品の発売日や販売地域を追加してもよい。
【0043】なお,利用者評価の表示欄222に対応されるデータは,作者や他の利用者などから事前に商品毎に評価を受け取って予め登録されたデータであり(詳細は後述),本実施の形態ではその平均値や標準値をデータとしている。この表示は,ユーザ側で把握が容易なように,段階表示が好ましい。図6の例では,商品の面白さや感動など感覚を評価基準として度合いが大きくなるに従って増加するポイントとなるよう,ポイントを予め定めたマーク「★」に対応させ,その個数で評価段階を表している。この評価段階は,本発明の評価段階及び評価値に相当する。
【0044】このマーク「★」が表示された欄は,ボタンとして機能させることができる。このボタンを押圧することによって,評価の詳細や評価基準の変更,評価の分類(年齢や性別)によって,評価段階を別途表示させることができる。」

(オ)「【0068】なお,本実施の形態では,商品として,文献(書籍)を一例として扱ったが,本発明はこれに限定されるものではなく,カー用品や玩具などのショッピングが可能な商品へ適用することができる。」

上記摘記事項(イ)の「【0011】例えば,前記評価情報として,商品の購入者が該商品に対して設定した評価値を採用する。商品の購入者は,その使用感や購入時の印象などのように,商品に対して意見や要望を有することが多い。そこで,この意見や要望を分類して例えば商品の実用度を評価基準として優良否のように複数の段階の評価値を設定すれば,容易に評価情報を設定することができる。」との記載からみて,引用例1には,「評価基準には,購入者が有する,商品の使用感や購入時の印象なども含まれる」との事項が記載されていると認められる。

上記摘記事項(エ)の「【0043】なお,利用者評価の表示欄222に対応されるデータは,作者や他の利用者などから事前に商品毎に評価を受け取って予め登録されたデータであり(詳細は後述),本実施の形態ではその平均値や標準値をデータとしている。」との記載からみて,引用例1には,「利用者評価の表示欄222に対応されるデータは,利用者から事前に商品毎に評価を受け取って予め登録されたデータであり」との事項が記載されていると認められる。

そうすると,上記摘記事項(ア)?(オ)の記載及び図面の記載から,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「インターネット88を介してサーバ・コンピュータ83と接続されたユーザ・コンピュータ85に表示される検索商品一覧の画面であって,
検索商品一覧の画面には,商品毎に,利用者評価の表示欄222が対応されており,
利用者評価の表示欄222に対応されるデータは,利用者から事前に商品毎に評価を受け取って予め登録されたデータであり,この表示は,ユーザ側で把握が容易なように,段階表示されており,
例えば,商品の面白さや感動など感覚を評価基準として度合いが大きくなるに従って増加するポイントとなるよう,ポイントを予め定めた★マークに対応させ,その個数で評価段階を表すようになっており,
前記商品は,文献(書籍)やカー用品,玩具などのショッピングが可能な商品であり,
評価基準には,購入者が有する,商品の使用感や購入時の印象なども含まれる,
検索商品一覧の画面。」

4.対比・判断
(1)対比
(a)引用例1発明の「商品」は,文献(書籍)やカー用品,玩具などの「ショッピングが可能な商品」であるから,引用例1発明の「商品」は,ユーザの「ショッピング」の対象である点で本願発明の「製品」に相当し,引用例1発明の「ユーザ」は,商品を「ショッピングする者」である点で,本願発明の「買物客」に相当する。
そして,引用例1発明の「利用者評価の表示欄222」は,商品毎に設けられているから,引用例1発明の「利用者評価の表示欄222」に表示される「データ」は,商品に「関する」情報であり,また,ユーザに提供される「ユーザ(買物客)向け」の情報である。
また,引用例1発明の「検索商品一覧の画面」は,ユーザに対して情報を「伝達」する「媒体」であるから,「情報伝達媒体」であるといえる。
してみれば,引用例1発明の「検索商品一覧の画面」が本願発明の「製品に関する買物客向け情報伝達媒体」に相当する。

(b)
(b-1)引用例1発明の「商品の面白さや感動」などの「感覚」は,「消費者(利用者)」の「内面的感覚を指す」ものであるから,引用例1発明の「商品の面白さや感動」が本願発明の「情動状態」に相当する。
また,引用例1発明において,「商品の面白さや感動(情動状態)」の情報は,★マークの個数で「利用者評価の表示欄222」に表示されるものであり,「利用者評価の表示欄222」の「データ」は,「利用者から事前に商品毎に評価を受け取って予め登録されたデータ」であるから,引用例1発明の「商品の面白さや感動(情動状態)」は,「利用者によって評価された」データであるといえる。
してみれば,引用例1発明の「利用者によって評価された,商品の面白さや感動(情動状態)」と本願発明の「尺度評価された情動状態」とは,共に「評価された情動状態」である点で共通している。
(b-2)引用例1発明の「利用者評価の表示欄222」では,★マークの個数で,「商品の面白さや感動(情動状態)」の度合いを表しているから「利用者評価の表示欄222」に表示される「★マーク」は,「商品の面白さや感動(情動状態)」の「度合い」に「類似」している「しるし」であるといえる。
そうすると,引用例1発明の「商品の面白さや感動(情動状態)の度合いを表す★マーク」が本願発明の「情動状態に類似しているしるし」に相当する。
(b-3)引用例1発明の「検索商品一覧の画面(製品に関する買物客向け情報伝達媒体)」は,「商品の面白さや感動(情動状態)の度合いを表す★マーク(情動状態に類似しているしるし)」を「含」むものである。
(b-4)以上の(b-1)?(b-3)のことから,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「評価された情動状態に類似しているしるしを含み」の点で共通している。

(c)引用例1発明において,「商品の面白さや感動(情動状態)などの度合いを表す★マーク」は,利用者が,事前に商品に対して行った評価の結果であり,この評価を行うために,例えば,利用者が,文献(書籍)を「読ん」だり,カー用品や玩具を「使用」したりすることは自明のことである。
してみれば,引用例1発明と本願発明とは,「情動状態が製品の使用に関連する」ものである点で一致する。

そうすると,本願発明と引用例1発明とは,

「評価された情動状態に類似しているしるしを含み,
前記情動状態が製品の使用に関連する,
製品に関する買物客向け情報伝達媒体。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では,情動状態が,「尺度評価された」ものであるのに対して,引用例1発明では,「商品の面白さや感動」は,利用者によって評価されたものであり,「尺度評価された」ものではない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。

[相違点1]について
平成25年9月11日付けの審判請求書(第5頁第22?27行)の「本願発明において,尺度評価された情動状態とは,製品又はサービスのユーザー等の生理学的状態を測定し,その生理学的状態を情動状態と関連付け,その情動状態のレベルを,使用に対する生理学的状態反応のレベルと関連付けて尺度を導き,誘導された情動状態尺度上で,特定の製品又はサービスの使用に関連した特定の情動状態について値を決定することにより導かれるものであり,単なる商品の利用者評価とは異なるものである。」との記載を参酌すると,本願発明の「尺度評価された」とは,「製品又はサービスのユーザー等の生理学的状態を測定し,その生理学的状態を情動状態と関連付け,その情動状態のレベルを,使用に対する生理学的状態反応のレベルと関連付けて尺度を導き,誘導された情動状態尺度上で,特定の製品又はサービスの使用に関連した特定の情動状態について値を決定することにより導かれるもの」,すなわち,「生理学的状態の測定値に基づいて客観的に評価された」との意味であると理解される。

商品やサービスの使用者の感情(情動状態)を「生理学的状態の測定値に基づいて客観的に評価する」ことは,周知技術である。
例えば,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2002-228657号公報(以下,「引用例2」という。)には,「心身状態評価方法」に関して次の事項が記載されている。
・「心身状態の相異なる複数の側面をそれぞれ反映する複数の指標物質の濃度を同時に測定し,これらの測定結果を総合化して心身状態を多面的に総合評価する,心身状態評価方法」(【0009】段落)
・「測定結果の総合化を,前記複数の指標物質それぞれの濃度に関する「低濃度化」,「変化なし」,「高濃度化」の三種類の測定結果の組合わせ態様の判定によって行う」(【0010】段落)
・「心身状態の複数の側面が,少なくとも精神的活性度,ストレス及び疲労を含む」(【0012】段落)
・「精神的活性度を反映する指標物質が唾液中の免疫グロブリンAであり,ストレスを反映する指標物質が唾液中のクロモグラニンAであり,疲労を反映する指標物質が唾液中のコルチゾールである」(【0013】段落)
・「(第9発明の構成)上記課題を解決するための本願第9発明(請求項9に記載の発明)の構成は,第6発明に係る評価方法による評価結果を前記商品又は環境の感性的品質として任意の手段で表示する,商品又は環境の品質表示方法である。」(【0017】段落)
また,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2006-12171号公報(以下,「引用例3」という。)には,「生体認識を用いたレビュー管理システム」に関して次の事項が記載されている。
・「笑い声の量,笑顔の大きさと持続時間,涙の量を用いて,ある人が製品・サービス・創造的作業又は事物をどのくらい面白いと思っているか判定することができる。」(【0013】段落)
・「図1は,顔面と音声のバイオメトリック情報に限定されているが,他のバイオメトリクスやバイオメトリック情報を捕捉して感情及び/又は感情レベルを判定できることは当業者には理解されよう。例えば,感情反応認識装置100は,手のジェスチャー,心拍,発汗,ボディランゲージ,無関係なおしゃべりの量等を捕捉できる。決定メカニズム及び反応解釈装置115は,変換アルゴリズムを用いて一次バイオメトリック表現(微笑み,声を出した笑い,涙等)を笑い,恐れ,驚き等の感情及び/又はこれに対応するレベルに変換できる。」(【0042】段落)
・「例えば,ある映画がコメディだとすると,どの位映画が面白かったかを確定する反応評価メトリックは惹起された面白いと言う感情の量に基づいたものとなり,これは表現された笑い及び/又は微笑みの量に基づくことができる。」(【0046】段落)

そして,上記引用例2の【0053】段落に,「商品又は環境の感性的品質の評価結果を,商品又は環境の品質表示として,例えば商品自体やその包装,商品又は商品としての環境の広告媒体,商品又は商品としての環境の取扱い説明書,技術資料,取引書類(下線部を追加)等に表示することも,特に好ましい。近年の商品需要者は,商品又は商品としての環境に対して単なる技術的な品質のみでなく精神的な満足感や快適感等を求める傾向が強い。商品又は環境の感性的品質の評価結果を表示することは,このような需要者の要求に信頼性のある客観的な評価情報を提供して対応することになり,非常に好ましい。」と記載され,引用例3の【0046】段落に,「また興味のある人(例えばユーザ,消費者,観客,視聴者等)へ情報220を提供してその製品がどれほど感動的か,又製品の認知によってどのような種類の感情的反応が予想されるかを示すことができる。」と記載されているように,引用例2,3には,商品やサービスのユーザに対して,当該商品やサービスの感性的品質の客観的な評価結果等を提供することも示唆されている。

してみれば,引用例1発明に上記周知技術を適用して,情動状態を「尺度評価された」ものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,引用例1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-01 
結審通知日 2014-08-05 
審決日 2014-08-18 
出願番号 特願2010-549237(P2010-549237)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 須田 勝巳
清田 健一
発明の名称 尺度評価された情動状態を伴う買物客向け情報伝達  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 深町 美音子  
復代理人 主代 静義  

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