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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1296026
審判番号 不服2013-14578  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-30 
確定日 2015-01-05 
事件の表示 特願2008-200854「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月12日出願公開、特開2009-265593〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願2008-200854号に係る手続の経緯の概要は以下のとおりである。
平成20年(2008)8月4日 出願(パリ条約による優先権主張、
外国庁受理2008年4月21日、韓国)
平成20年9月24日 補正書
平成23年5月20日 拒絶理由
平成23年8月24日 意見書、補正書
平成24年3月19日 拒絶理由(最後)
平成24年6月26日 意見書、補正書
平成25年3月25日 補正却下の決定、拒絶査定
平成25年7月30日 拒絶査定不服審判請求
平成26年4月 8日 拒絶理由
平成26年7月 7日 意見書・補正書

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成26年7月7日になされた手続補正後の明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも上面に取り付けられた偏光板を含む、画像が表示される液晶パネルと、
前記液晶パネルの下側に備えられて光を提供するバックライト装置と、
前記偏光板上に備えられ、外部衝撃から前記液晶パネルを保護する強化基板、及び前記強化基板上に形成されて外部から入射する外部光の反射率を低減する低反射層からなる保護部材と、
前記偏光板及び前記保護部材の強化基板と類似した屈折率を有する材質からなり、前記液晶パネルと前記保護部材との間に介在してこれらを密着させる粘着層
とを含み、
前記強化基板の屈折率は1.4?1.7であり、
前記粘着層の屈折率は1.3?1.8であり、
前記偏光板の屈折率は1.4?1.6であり、
これら各層の屈折率の差が0.2以下の範囲内の値に設定され、
前記強化基板が強化ガラスであり、
前記低反射層は、互いに異なる屈折率を有する2つの物質が交互に形成され、5つ又は6つの層をなし、第1層は低屈折率を有する物質で形成し、第2層は高屈折率を有する物質で形成し、第3層は再び低屈折率を有する物質で形成する方式により形成され、
前記保護部材の少なくとも一側縁部領域に形成され、前記バックライト装置から提供された光の漏れを防止し、外部光の反射率が0.5?1.5%である光漏れ防止部をさらに含む
ことを特徴とする液晶表示装置。」

第3 刊行物の記載
平成26年4月8日付け拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平3-93365号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
1 「そこで、保護板と液晶パネルの間を、保護板と液晶パネルの屈折率と略等しい透明物質からなる継続層で埋めることにより、保護板裏面と液晶パネル表面の表面反射を抑えることが出来る。この継続層に弾性を持たせることにより、保護板に加わる外力を吸収することが出来る。また、継続層の形或は空気吸引による充填や、真空中での貼り付けとし,保護板と継続層の境界面、継続層と液晶パネルの境界面,及び継続層と拡散板の境界面における空気の介在を防止した。」(3頁左下欄6行?15行)(下線は当審で付した。以下同じ。)

2 「保護板2の材質はガラスまたはアクリル」(4頁右下欄1行?2行)

3 「第1図は第8図の液晶ファインダ17のA-A断面図であり、本発明の要部である。液晶ファインダ17は液晶パネル27と、液晶パネル27を保護する保護板2と、液晶パネル27を照明する光源9と、・・・から構成される。保護板2の表面には反射防止膜1が形成されている。また液晶パネル27の表裏面には偏光板4及び6が貼付られている。保護板2と偏光板4、または偏光板6と拡散板10との間には継続層4及び35が充填されている。」(4頁右上欄6行?18行)(ここで前記「継続層4」は「継続層3」の誤記であると認められる。)

4 「第9図に表面反射防止膜1の構成を示す。表面反射防止膜lとして・・・中心周波数をλ_(0)=550nmにおき、基層50(クラウンガラス)上に3層の薄膜を形成したもので、第1層51はフッ化セリウム(CeF_(2),n=1.7)を厚みd_(1)=λ_(0)/4に形成し、第2層52に酸化ジルコニウム(ZrO_(2),n=2.1)を厚みd_(2)=λ_(0)/2に形成し、第3層53にフッ化マグネシウム(MgF_(2),n=1.4)を厚みd_(2)=λ_(0)/4に形或したものである.第10図は3層コーティングした表面反射防止膜1の効果を示し、可視域(400nm?800nm)にわたり表面反射率が略0.5%以下に改善されている.また同様に、拡散板10表面にも表面反射防止膜36を形成することもでき、これにより拡散板10表面における表面反射率は略0.5%以下に改善される。
保護板2と偏光板との間に充填された継続層3及び拡散板10と偏光板6との間に充填された継続層35は透明物質で、その屈折率は保護板2や偏光板4,6または拡散板12の屈折率と略等しい値である.即ち、保護板2の材質はガラスまたはアクリルで、その屈折率は略1.5である.拡散板10の材質は乳白色アクリルで、その屈折率は略1.5である。偏光板4,6の材質はポリビニルアルコールと酢酸セルロースで、それらの屈折率もやはり略1.5である。また、継続層3,35に用いる透明物質はカナダバルサム、弾性を有する2液性エポキシ樹脂、またはシリコンポリマー等で、その屈折率はいずれも略1.5である。」(4頁右上欄19行?同頁右下欄9行)

5 第1図は以下のものである。


第4 引用発明
1 上記第3、3及び第1図によれば、刊行物1には、下から「光源9」、「偏光板6」、「液晶パネル27」、「偏光板4」、「継続層3」、「保護板2」、「反射防止膜1」の順で配置されている「液晶ファインダ17」が記載されていると認められる。

2 上記第3、4によれば、刊行物1には、「表面反射防止膜1」が、3層構成のものであり、基層から順に第1層、第2層、第3層それぞれの屈折率が、1.7、2.1、1.4であることが記載されていると認められる。
したがって、「表面反射防止膜1」は「液晶ファインダ17」の表面側(上側)から順に、屈折率1.4、2.1、1.7の層が積層されているといえる。

3 上記第3および上記1、2によれば、刊行物1には、
「下から光源9、偏光板6、液晶パネル27、偏光板4、継続層3、保護板2、反射防止膜1の順で配置されている液晶ファインダであって、
前記反射防止膜1は上から順に屈折率1.4、2.1、1.7の各層が積層された3層構成のものであり、
ガラスまたはアクリルを材質とする前記保護板2は液晶パネル27を保護し、
前記継続層3は保護板2と液晶パネル27間の空気の介在を防止するものであり、
上記偏光板6、偏光板4、継続層3、保護板2の屈折率は略1.5である液晶ファインダ17。」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

第5 対比・判断
本願発明と引用発明を対比する
1 引用発明の「光源9」、「液晶パネル27」、「偏光板4」、「液晶ファインダ17」は、それぞれ、本願発明の「バックライト装置」、「液晶パネル」、「偏光板」、「液晶表示装置」に相当する。

2 引用発明の上記「継続層3」について、刊行物1には、「そこで、保護板と液晶パネルの間を、保護板と液晶パネルの屈折率と略等しい透明物質からなる継続層で埋めることにより、保護板裏面と液晶パネル表面の表面反射を抑えることが出来る。この継続層に弾性を持たせることにより保護板に加わる外力を吸収することが出来る。また,継続層の形或は空気吸引による充填や、真空中での貼り付けとし,保護板と継続層の境界面、継続層と液晶パネルの境界面,及び継続層と拡散板の境界面における空気の介在を防止した。」(3頁左下欄6行?15行)と説明されている。(下線は当審で付した。以下同じ。)
本願発明の「粘着層」について、本願発明の明細書には「【0022】 ・・・前記液晶パネルと前記保護部材との間に介在してこれらを密着させる粘着層とを含む。」、
「【0024】 ・・・保護部材の強化基板と液晶パネル間の空隙がなく、かつ強化基板及び液晶パネルと同一の屈折率を有する材質で粘着層を形成することにより、液晶パネルの外部への光の総反射率を低下させて屋外視認性を改善できるという効果がある。」と説明されている。
してみると刊行物1の上記「継続層で埋めることにより・・・保護板と継続層の境界面、継続層と液晶パネルの境界面,及び継続層と拡散板の境界面における空気の介在を防止」することとは、継続層が保護板と液晶パネルの間に介在してこれらを密着させることであると解される。

3 引用発明の偏光板4、保護板2の屈折率は略1.5であるから、引用発明は、本願発明の「強化基板の屈折率は1.4?1.7」及び「偏光板の屈折率は1.4?1.6」との事項を満たすといえる。

4 引用発明の「継続層3」と本願発明の「粘着層」とは「層」という概念で共通する。また、引用発明の「継続層3」の屈折率は、略1.5であるから、引用発明の当該事項と、本願発明の「粘着層の屈折率は1.3?1.8」とは、「前記『層』の屈折率は1.3?1.8であり」との事項を満たす点において一致するといえる。

5 引用発明の「保護板2」と本願発明の「強化基板」は「板部材」という概念で共通する。

6 よって、本願発明と引用発明は、
「少なくとも上面に取り付けられた偏光板を含む、画像が表示される液晶パネルと、
前記液晶パネルの下側に備えられて光を提供するバックライト装置と、
前記偏光板上に備えられ、外部衝撃から前記液晶パネルを保護する板部材、及び前記板部材上に形成されて外部から入射する外部光の反射率を低減する低反射層と、
前記偏光板及び前記板部材と類似した屈折率を有する材質からなり、前記液晶パネルと前記板部材との間に介在してこれらを密着させる層と
を含み、
前記板部材の屈折率は1.4?1,7であり、
前記層の屈折率は1.3?1.8であり、
前記偏光板の屈折率は1.4?1.6である、
液晶表示装置。」
である点で一致し、下記(1)ないし(4)の点で相違するものと認められる。
(1)本願発明の「強化基板」が強化ガラスであるのに対して、引用発明の「保護板2」は「ガラスまたはアクリル」であり、該「ガラス」が「強化ガラス」であるのか否か明らかでない点(以下「相違点1」という。)。

(2)本願発明は、液晶パネルと強化基板の間に介在する層が、「粘着層」であり、強化基板、粘着層、偏光板各層の屈折率の差が0.2以下の範囲内の値に設定されているのに対し、引用発明では、「継続層3」が「粘着層」であるのか否か明らかでなく、「保護板2」、「継続層3」、「偏光板4」各層の屈折率の差がどの程度か明らかでない点(以下「相違点2」という。)。

(3)本願発明の「低反射層」は、「互いに異なる屈折率を有する2つの物質が交互に形成され、5つ又は6つの層をなし」ているのに対して、引用発明の「反射防止膜1」は「それぞれの屈折率が1.7、2.1、1.4の3層構成のものであ」る点(以下「相違点3」という。)。

(4)本願発明は、「(保護部材の少なくとも一側縁部領域に形成され、バックライト装置から提供された光の漏れを防止する)外部光の反射率が0.5?1.5%である光漏れ防止部をさらに含む」のに対し、引用発明は、そのような「光漏れ防止部」を備えていない点(以下「相違点4」という。)。

8 判断
(1)相違点1について
液晶パネルを保護する板部材として「強化ガラス」を用いることは、本願の優先日前に頒布された刊行物2(特開平7-270758号公報 【0002】段落参照。)、刊行物3(特開2003-5662号公報 【0013】、【0031】段落参照。)に記載されている。
液晶パネルを保護する板部材が、十分な強度を備える必要があり、「強化ガラス」が強度のあるガラス材料であることは、当業者ならば理解し得るものと解される。
よって、上記刊行物2、3記載の「強化ガラス」を引用発明に適用して上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
引用発明の「継続層3」は、「保護層2」と「液晶パネル27」間の空気の介在を防止するものであるから、引用発明において、当該「継続層3」を、それらの間の空気介在を防止するような「粘着層」で構成することは当業者が容易になし得ることである。
また、引用発明の「保護板2、継続層3、偏光板4」の屈折率の差をどの程度の範囲内の値に設定することは、当業者の適宜設定し得る設計的事項にすぎないところ、本願明細書をみても、強化基板、粘着層、偏光板各層の屈折率差を「0.2以下の範囲の値」に設定した点に格別の技術的意義は認められない。したがって、引用発明において、上記各層の屈折率の差の値を0.2以下と定めることは、当業者が適宜になし得る程度のことである。

(3)相違点3について
低反射層として、「互いに異なる屈折率を有する2つの物質が交互に形成され、5つ又は6つの層をな」すものは、本願の優先日時点で周知であるから(必要なら、刊行物5(特開2000-199801号公報 図2、図3)、刊行物6(特開2005-275294号公報 図1)、刊行物7(特開2002-202401号公報 図9)、参照。) 、引用発明の「反射防止膜1」としてそのようなものを採用して上記相違点3に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易になし得ることである。

(4)相違点4について
液晶パネルの前面に配置された保護基板に、表示領域の縁部に沿った遮光部材を配置し、その視認性を向上させることは本願の優先日時点で周知であるところ(必要なら、刊行物8(特開2007-114737号公報【0056】?【0060】、図4)、刊行物9(国際公開第2007/066590号【0020】、【0022】、図1、3)、刊行物10(特開平10-239693号公報【0018】?【0022】、図2)、参照。) 、バックライトからの光漏れが表示画像の表示品質に悪影響を与えることも本願の優先日時点で周知であるから(必要なら、刊行物11(特開平3-259119号公報 1頁右下欄15?2頁右上欄19行)、刊行物12(特開2003-5160号公報 【0022】、【0023】)参照。)、引用発明において、その視認性を向上させるために、保護板2に表示領域の縁部に沿った遮光部材を配置し、当該遮光部材を光源9(バックライト装置)からの光洩れを防止するものとなすことは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明において、「光洩れ防止部」の「外部光の反射率が0.5?1.5%である」の特定事項に関し、本願明細書には、
「【0078】
さらに、保護部材260の少なくとも一側縁部領域には、その下側に備えられる液晶パネル250に提供された光の漏れを防止する光漏れ防止部(又は、光漏れ防止部材)261が備えられている。ここで、光漏れ防止部261は、別途のシートタイプで備える(又は、取り付ける)こともできるが、カラーフィルタ基板のブラックマトリクス(BM)を形成する場合と同様に、スパッタリングやコーティング方式を適用したフォトリソグラフィ工程により形成される樹脂系BM、又は不透明な金属製のクロムオキサイド(CrOx)などで形成されて1つの層をなすことが好ましい。」
と記載されているところ、上記刊行物8には、
「【0061】
なお、遮光部材17は、液晶パネル28からの光(表示)を完全に遮光するものの他、一部を遮光する半遮光性のものも含むものである。或いは、黒色の遮光部材の他、所定のカラー色(例えば赤、青、緑等)に着色した着色部材も含むものであっても良い。なお、遮光部材17は金属クロムからなるものを用いているが、その他にも、カーボンやチタンをフォトレジストに分散してなる樹脂ブラックや、ニッケル等の金属材料を用いることも可能である。或いは、低反射用として、金属クロムと酸化クロムの2層構造のものを採用することも可能である。」
との記載がある。
すなわち、本願明細書によれば、本願発明の「光漏れ防止部」は、「樹脂BM」または「クロムオキサイド(CrO_(x))」から成るものであり、また、刊行物8に記載された「遮光部材17」も、「樹脂ブラック」または「酸化クロム」を含む層から成るものであり、両者は同様の材料からなるものということができるところ、刊行物8の「遮光部材17」は、本願発明の「光洩れ防止部」に相当するといえるから、両者は略同程度の外部光反射率を有するものと解することができる。
そして、引用発明1に上記「遮光部材17」を配置したものにおいて、当該「遮光部材17」の「外部光の反射率」をどの程度の範囲とするかは、当業者が適宜定めるべき設計的事項であって、本願明細書をみても、遮光部材17の外部光の反射率を「0.5%?1.5%」と定めたことに格別のの技術的意義は認められず、上記「遮光部材17」の外部光の反射率を0.5%?1.5%となすことが、当業者において格別困難なこととはいえない。

そして、本願発明の奏する効果が、引用発明、刊行物2、3の記載事項及び周知事項から当業者が予測困難な程の格別顕著なものということはできない。
よって、引用発明において、上記相違点1?4に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

第6 むすび
上記のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2、3、の記載事項及び周知技術に基づいて容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の発明に該当し、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-04 
結審通知日 2014-08-05 
審決日 2014-08-18 
出願番号 特願2008-200854(P2008-200854)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 都志行  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 畑井 順一
吉野 公夫
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  
代理人 上田 俊一  

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