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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1296047
審判番号 不服2013-22382  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-15 
確定日 2015-01-05 
事件の表示 特願2009-200469「太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月17日出願公開、特開2011- 54661〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年8月31日の出願であって、平成24年11月8日付けで拒絶理由が通知され、平成25年1月11日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年8月16日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、同年11月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成25年11月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年11月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項に記載された発明
平成25年11月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的として補正された。
よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「表面保護部材と、裏面保護部材と、前記表面保護部材と前記裏面保護部材との間に配設され、配線部材によって電気的接続された複数の太陽電池と、前記表面保護部材と前記裏面保護部材との間に、前記複数の太陽電池を封止する封止部材と、前記太陽電池の出力を取り出すための少なくとも4つの絶縁体が取り付けられた出力配線と、を備えた太陽電池モジュールであって、
2枚の太陽電池に跨るように対向する位置の前記裏面保護部材に、開口部が設けられ、前記出力配線が前記開口部を経て前記裏面保護部材の外部に取り出され、
前記出力配線は、前記裏面保護部材上において、前記2枚の太陽電池の一方に対応する位置に少なくとも2つ、他方に対応する位置に少なくとも2つそれぞれ配置されており、前記一方の太陽電池上では、前記少なくとも2つの出力配線が前記配線部材を挟んで配置されており、前記他方の太陽電池上では、前記配線部材と前記一方の太陽電池と面する端部との間に前記少なくとも2つの出力配線が配置されていることを特徴とする太陽電池モジュール。」

そこで、上記本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2001-250965号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

(a)「【0008】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の一実施例について、図を用いて詳細に説明する。図1?3は、本実施例である太陽電池モジュール1の完成図である。
【0009】太陽電池モジュール1は、ガラス等の絶縁透明体からなる表面部材2と、Al等の金属箔を樹脂フィルム(例えばPVF(ポリビニールフタレート))でサンドイッチした3層構造の裏面部材3と、これらの間に、行と列からなるマトリックス状に配列される複数の太陽電池4・・・を備えるものである。そして、封止材料として、表面部材2と太陽電池4、及び太陽電池4と裏面部材3との間に各々充てんされ、相互の位置関係を固定し、封止するEVA等の透明封止樹脂5を備えている。
【0010】そして、表面部材2及び裏面部材3の外周には、アルミ等からなる外枠6が取り付けられている。外枠6は、中空構造の本体部分6aと、本体部分6aの上部に位置し表面部材2及び裏面部材3の外周部をシール材7を介して嵌め込む断面コの字状の嵌合部分6bと、本体部分6aの外側に位置する外周溝6cを有している。この外周溝6cは、太陽電池モジュール1を屋外に設置したとき、雨水が流れる溝である。
【0011】また、図3に示すように、太陽電池モジュール1の裏面側においては、裏面部材3の外周部より内側に、太陽電池4からの出力を導出する端子ボックス8を備えている。そして、この端子ボックス8より、正極、負極の出力線9、9が導出されている。
【0012】以下に、上記完成した太陽電池モジュール1の製造途中の中間体を順次説明しながら、その構造を説明する。
【0013】図4、5は、本実施例の第1の製造途中である太陽電池モジュール中間体11を示す図であり、完成した太陽電池モジュールの裏面側より見た図である。
【0014】この中間体11は、表面部材1上に、加圧真空加熱前のシート状の受光側封止樹脂5aを配置した状態で、この上(裏面側)に、太陽電池4・・・が配置されている。
【0015】図において、太陽電池モジュール中間体11の外側に符号で表示されるように、太陽電池4・・・は、1行から12行(図面では中間の行が省略されている)と、1列から8列のマトリックス状に構成されている。【0016】各太陽電池4は、略矩形板状のシリコン単結晶又は多結晶系太陽電池が利用することができる。そして、複数の太陽電池4・・・は、各2列で構成される第1太陽電池群12a、第2太陽電池群12b、第3太陽電池群12c、第4太陽電池群12dで構成されている。
【0017】各太陽電池群12においては、各太陽電池4は直列に電気接続されており、具体的には、各列において行の順に直列接続され、各太陽電池群12の最下行である12行の太陽電池4は、同じ太陽電池群4の隣接する最下行の12行の太陽電池4と直列接続されている。
【0018】そして、各太陽電池群12は、隣接する太陽電池群12と、一端である第1行の外周側で直列に接続されている。
【0019】また、左端の第1太陽電池群12aは、最端で直列接続された第1行、第1列の太陽電池4から電気出力し、右端の第4太陽電池群12dは、最端で直列接続された第1行、第8列の太陽電池4より電気出力することで、太陽電池モジュールから出力を得ることができる。なお、以下の記述において、第X行、第Y列の太陽電池4を、太陽電池4(X、Y)と表すこととする。
【0020】次に、端子ボックス8内において、各太陽電池群12毎に、各太陽電池群12と電気的に並列に、太陽電池保護用バイパスダイオード接続するための電気配線について、説明する。
【0021】この電気配線は、両端の第1太陽電池群12a、第4太陽電池群12dの出力部からの並行配線13a、13dと、隣接する太陽電池群4間を直列接続し、この直列接続する部分から延在する並行配線13ab、13bc、13cdを有している。加えて、これら並行配線13の末端と、直交して半田接続され、端子ボックス8に向かう内部配線14a、14ab、14bc、14cd、14dを有している。そして、これら内部配線14は、あらかじめ各内部配線14を連結する絶縁部材15を有する配線ユニット体16より、構成されている。
【0022】詳細には、各並行配線13は銅等の金属箔を半田メッキしたものであり、並行配線13aは、第1太陽電池群12aの最端で直列接続され出力する太陽電池4(1、1)から延出する金属箔からなるタブ電極17、17と、半田接続され、表面部材2上の外周部で行方向に平行に配置されている。
【0023】並行配線13abは、第1太陽電池群12aの他端で直列接続された太陽電池4(1、2)から延出するタブ電極17、17および第2電極電池群12bにおいて一端で直列接続された太陽電池3(1、3)から延出するタブ電極17、17と、直線上にて半田接続され、表面部材2上の外周部で行方向に平行に配置されている。
【0024】並行配線13bcは、第2太陽電池群12bの他端で直列接続された太陽電池4(1、4)から延出するタブ電極17、17および第3太陽電池群12cにおいて一端で直列接続された太陽電池4(1、5)から延出するタブ電極17、17と、直線上にて半田接続され、表面部材2上の外周部で行方向に平行に配置されている。
【0025】並行配線13cdは、第3太陽電池群12cの他端で直列接続された太陽電池4(1、6)から延出するタブ電極17、17および第4太陽電池群12dにおいて一端で直列接続された太陽電池4(1、7)から延出するタブ電極17、17と、直線上にて半田接続され、表面部材2上の外周部で行方向に平行に配置されている。
【0026】並行配線13dは、第4太陽電池群12dの最端で直列接続され出力する太陽電池4(1、8)から延出する金属箔からなるタブ電極17、17と、半田接続され、表面部材2上の外周部で行方向に平行に配置されている。
【0027】図に示すように、並行配線13においては、並行配線13a、13bが並行配線13ac、13cdより外周側に配置され、並行配線13ac、13cdが並行配線13bcより外周側に配置されていることより、並行配線13同士が交差することがないので、交差部での絶縁処理をする必要がない。
【0028】また、図5は、図4における配線ユニット体16付近の拡大図である。配線ユニット体16において、各内部配線14は、銅等の金属箔を半田メッキしたものである。絶縁部材15(図5(a)の背面図においては、斜線で示す)は、PET樹脂等の絶縁フィルムからなり、各内部配線14の両面をアクリル系接着材(図示せず)を介して挟着すると共に、連結部15x、15yを有しており、連結部15x、15yにて各内部配線14を連結している。そして、連結部15x、15y間に抜き部15s・・・が形成されることになる。そして、これら抜き部15sにおいては、真空加熱されて完成したとき封止樹脂5が配置されることになる。長期使用に伴い封止樹脂5とPET等の絶縁部材15との界面で剥離が発生し易いのであるが、抜き部15sを設けることにより、透明樹脂5と絶縁部材15との剥離し易い界面の面積を小さくして剥離が少なくなると共に、この抜き部15に配置される封止樹脂5により、このような剥離の進行を止めることができる。
【0029】このように、本実施例においては、各内部配線14は、あらかじめ各内部配線14を連結する絶縁部材15を有する配線ユニット体16より構成されているので、各内部配線14の一端を、各並行配線13の末端に半田接続するとき、作業が容易であると共に、各内部配線14が相互にずれることもない。
【0030】その後、図6に示す第2の製造途中である太陽電池モジュール中間体21を作成する。図に示すように、配線ユニット体16と、その下に位置する太陽電池4との間に、配線ユニット体16と略同等の外寸で矩形状の加圧真空加熱前のシート状封止樹脂5bを配置する。
【0031】次に、図7に示す第3の製造途中である太陽電池モジュール中間体31を作成する。図6に示す中間体21の裏面側において、表面部材2と略同等の大きさのEVA等の加圧真空加熱前シート状の封止樹脂5cを配置し、この上に、上述の裏面部材2を配置する。詳細には、封止樹脂5c及び裏面部材3にカットライン32を設けて、ここを介して、配線ユニット体16の先端部を裏面側に露出した状態に配置する。その後、この中間体31を加圧しながら真空加熱することにより、表面部材1と裏面部材2との間に配置された太陽電池3、配線ユニット体16、その他の配線等の相互間に封止樹脂5が行き渡り、相互の位置関係を固定し、封止構造となる。そして、図7(b)の断面図に示されるように、上述の如く、抜き部15sにおいては、封止樹脂5が配置され、透明樹脂5と絶縁部材15との剥離し易い界面の面積を小さくして剥離が少なくなると共に、この抜き部15sに配置される封止樹脂5により、このような剥離の進行を止めることができる。
【0032】次に、図1に示すように、裏面部材3上にシリコーン等の接着材を介して、端子ボックス8を設置して、本実施例の太陽電池モジュールが完成する。
【0033】端子ボックス8は、プラスチック材料からなる略平たい箱体であり、裏面側に板状の蓋体8aを有し、この蓋体8aを取り除いた状態での内部構造が、図8に示される。端子ボックス8の裏面部材8側には、平面視略長方形の切り欠き部8bを有している。この切り欠き部8bより、図7に示した配線ユニット体16の先端部である各内部配線14を端子ボックス内に導いている。
【0034】端子ボックス8内部には、金属板よりなる矩形状の金属端子41a、41ab、41bc、41cd、41dを備え、これら金属端子41は、各々、内部配線14a、14ab、14bc、14cd、14dの先端部と半田接続されている。そして、外部出力を導出する金属端子41a、41dは、延在部41at、41dtを有し、この延在部41at、41dtと、端子ボックス8の側壁を貫通して導かれる出力線9、9が電気接続されている。太陽電池用保護用バイパスダイオード42が、各内部配線14間に、極性を同じとして、電気接続されている。この電気接続により、保護用バイパスダイオード42は、各太陽電池群12毎に、各太陽電池群12と電気的に並列で且つ逆方向に接続されたことになる。」

(b)「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】



上記記載事項(b)の図4?7の記載から、「内部配線14a、14ab、14bc、14cd、14d」を有する「配線ユニット体16」の先端を裏面側に露出する「カットライン32」が2枚の「太陽電池4」に対応する位置に設けられており、また、「内部配線14a」と「内部配線14ab」が2枚の「太陽電池4」の一方に対応する位置に「タブ電極17」を挟んで配置され、「内部配線14cd」と「内部配線14d」が2枚の「太陽電池4」の他方に対応する位置に「タブ電極17」を挟んで配置され、「内部配線14bc」が2枚の「太陽電池4」の境界部に配置されていることが読み取れる。

すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「ガラス等の絶縁透明体からなる表面部材2と、Al等の金属箔を樹脂フィルム(例えばPVF(ポリビニールフタレート))でサンドイッチした3層構造の裏面部材3と、これらの間に、行と列からなるマトリックス状に配列される複数の太陽電池4・・・を備えるものであって、封止材料として、表面部材2と太陽電池4、及び太陽電池4と裏面部材3との間に各々充てんされ、相互の位置関係を固定し、封止するEVA等の透明封止樹脂5を備えた太陽電池モジュール1であって、
太陽電池4・・・は、1行から12行と、1列から8列のマトリックス状に構成されており、
複数の太陽電池4・・・は、各2列で構成される第1太陽電池群12a、第2太陽電池群12b、第3太陽電池群12c、第4太陽電池群12dで構成されており、
各太陽電池群12においては、各太陽電池4は直列に電気接続されており、具体的には、各列において行の順に直列接続され、各太陽電池群12の最下行である12行の太陽電池4は、同じ太陽電池群4の隣接する最下行の12行の太陽電池4と直列接続されており、
各太陽電池群12は、隣接する太陽電池群12と、一端である第1行の外周側で直列に接続されており、
左端の第1太陽電池群12aは、最端で直列接続された第1行、第1列の太陽電池4から電気出力し、右端の第4太陽電池群12dは、最端で直列接続された第1行、第8列の太陽電池4より電気出力することで、太陽電池モジュールから出力を得ることができ、
両端の第1太陽電池群12a、第4太陽電池群12dの出力部の太陽電池4から延出する金属箔からなるタブ電極17、17と半田接続された並行配線13a、13dと、第2太陽電池群12b、第3太陽電池群12cの端部の太陽電池4から延出する金属箔からなるタブ電極17、17と半田接続され、隣接する太陽電池群4間を直列接続し、この直列接続する部分から延在する並行配線13ab、13bc、13cdを有しており、加えて、これら並行配線13の末端と、直交して半田接続され、端子ボックス8に向かう内部配線14a、14ab、14bc、14cd、14dを有しており、
そして、これら内部配線14は、あらかじめ各内部配線14を連結する絶縁部材15を有する配線ユニット体16より、構成されていて、絶縁部材15は、PET樹脂等の絶縁フィルムからなり、各内部配線14の両面をアクリル系接着材を介して挟着すると共に、連結部15x、15yを有しており、連結部15x、15yにて各内部配線14を連結しており、
封止樹脂5c及び裏面部材3の、2枚の太陽電池4に対応する位置にカットライン32を設けて、ここを介して、配線ユニット体16の先端部が裏面側に露出した状態に配置され、内部配線14aと内部配線14abが前記2枚の太陽電池4の一方に対応する位置にタブ電極17を挟んで配置され、内部配線14cdと内部配線14dが前記2枚の太陽電池4の他方に対応する位置にタブ電極17を挟んで配置され、内部配線14bcが前記2枚の太陽電池4の境界部に配置されている太陽電池モジュール1。」

3.対比
(1)本願補正発明と引用発明1との対比
(a)引用発明1の「ガラス等の絶縁透明体からなる表面部材2」、「Al等の金属箔を樹脂フィルム(例えばPVF(ポリビニールフタレート))でサンドイッチした3層構造の裏面部材3」、「封止材料として、表面部材2と太陽電池4、及び太陽電池4と裏面部材3との間に各々充てんされ、相互の位置関係を固定し、封止するEVA等の透明封止樹脂5」は、それぞれ、本願補正発明の「表面保護部材」、「裏面保護部材」、「前記表面保護部材と前記裏面保護部材との間に、前記複数の太陽電池を封止する封止部材」に相当するから、引用発明1の「ガラス等の絶縁透明体からなる表面部材2と、Al等の金属箔を樹脂フィルム(例えばPVF(ポリビニールフタレート))でサンドイッチした3層構造の裏面部材3と、」「を備えるものであって、封止材料として、表面部材2と太陽電池4、及び太陽電池4と裏面部材3との間に各々充てんされ、相互の位置関係を固定し、封止するEVA等の透明封止樹脂5を備えた太陽電池モジュール1」は、
本願補正発明の「表面保護部材と、裏面保護部材と、前記表面保護部材と前記裏面保護部材との間に配設され、」「前記表面保護部材と前記裏面保護部材との間に、前記複数の太陽電池を封止する封止部材と、」「を備えた太陽電池モジュール」に相当する。

(b)引用発明1の「各太陽電池4は直列に電気接続されており、具体的には、各列において行の順に直列接続され」る構成において、各太陽電池4は、各列において配線により直列接続されることは、当業者の技術常識からみて、自明のことであるから、引用発明1の「行と列からなるマトリックス状に配列される複数の太陽電池4・・・を備えるものであって、」「太陽電池4・・・は、1行から12行と、1列から8列のマトリックス状に構成されており、複数の太陽電池4・・・は、各2列で構成される第1太陽電池群12a、第2太陽電池群12b、第3太陽電池群12c、第4太陽電池群12dで構成されており、各太陽電池群12においては、各太陽電池4は直列に電気接続されており、具体的には、各列において行の順に直列接続され、各太陽電池群12の最下行である12行の太陽電池4は、同じ太陽電池群4の隣接する最下行の12行の太陽電池4と直列接続されており、各太陽電池群12は、隣接する太陽電池群12と、一端である第1行の外周側で直列に接続されて」いる構成は、本願補正発明の「配線部材によって電気的接続された複数の太陽電池と、」「を備えた」構成に相当する。

(c)引用発明1の「内部配線14a、14ab、14bc、14cd、14d」は、「左端の第1太陽電池群12aは、最端で直列接続された第1行、第1列の太陽電池4から電気出力し、右端の第4太陽電池群12dは、最端で直列接続された第1行、第8列の太陽電池4より電気出力することで、太陽電池モジュールから出力を得ることができ、両端の第1太陽電池群12a、第4太陽電池群12dの出力部の太陽電池4から延出する金属箔からなるタブ電極17、17と半田接続された並行配線13a、13dと、第2太陽電池群12b、第3太陽電池群12cの端部の太陽電池4から延出する金属箔からなるタブ電極17、17と半田接続され、隣接する太陽電池群4間を直列接続し、この直列接続する部分から延在する並行配線13ab、13bc、13cdを有しており、加えて、これら並行配線13の末端と、直交して半田接続され、端子ボックス8に向かう」ものであるから、本願補正発明の「前記太陽電池の出力を取り出すための少なくとも4つの」「出力配線」に相当し、また、引用発明1の「絶縁部材15」は、「PET樹脂等の絶縁フィルムからなり、各内部配線14の両面をアクリル系接着材を介して挟着する」ものであるから、引用発明1の「これら内部配線14は、あらかじめ各内部配線14を連結する絶縁部材15を有する配線ユニット体16より、構成されて」いる構成は、本願補正発明の「絶縁体が取り付けられた出力配線」に相当する。
してみると、引用発明1の「左端の第1太陽電池群12aは、最端で直列接続された第1行、第1列の太陽電池4から電気出力し、右端の第4太陽電池群12dは、最端で直列接続された第1行、第8列の太陽電池4より電気出力することで、太陽電池モジュールから出力を得ることができ、両端の第1太陽電池群12a、第4太陽電池群12dの出力部の太陽電池4から延出する金属箔からなるタブ電極17、17と半田接続された並行配線13a、13dと、第2太陽電池群12b、第3太陽電池群12cの端部の太陽電池4から延出する金属箔からなるタブ電極17、17と半田接続され、隣接する太陽電池群4間を直列接続し、この直列接続する部分から延在する並行配線13ab、13bc、13cdを有しており、加えて、これら並行配線13の末端と、直交して半田接続され、端子ボックス8に向かう内部配線14a、14ab、14bc、14cd、14dを有しており、そして、これら内部配線14は、あらかじめ各内部配線14を連結する絶縁部材15を有する配線ユニット体16より、構成されていて、絶縁部材15は、PET樹脂等の絶縁フィルムからなり、各内部配線14の両面をアクリル系接着材を介して挟着すると共に、連結部15x、15yを有しており、連結部15x、15yにて各内部配線14を連結して」いる構成は、本願補正発明の「前記太陽電池の出力を取り出すための少なくとも4つの絶縁体が取り付けられた出力配線と、を備えた」構成に相当する。

(d)引用発明1の「封止樹脂5c及び裏面部材3の、2枚の太陽電池4に対応する位置にカットライン32を設けて、ここを介して、配線ユニット体16の先端部が裏面側に露出した状態に配置され、内部配線14aと内部配線14abが前記2枚の太陽電池4の一方に対応する位置にタブ電極17を挟んで配置され、内部配線14cdと内部配線14dが前記2枚の太陽電池4の他方に対応する位置にタブ電極17を挟んで配置され、内部配線14bcが前記2枚の太陽電池4の境界部に配置されている」構成と、本願補正発明の「2枚の太陽電池に跨るように対向する位置の前記裏面保護部材に、開口部が設けられ、前記出力配線が前記開口部を経て前記裏面保護部材の外部に取り出され、前記出力配線は、前記裏面保護部材上において、前記2枚の太陽電池の一方に対応する位置に少なくとも2つ、他方に対応する位置に少なくとも2つそれぞれ配置されてされており、前記一方の太陽電池上では、前記少なくとも2つの出力配線が前記配線部材を挟んで配置されており、前記他方の太陽電池上では、前記配線部材と前記一方の太陽電池と面する端部との間に前記少なくとも2つの出力配線が配置されている」構成とは、「2枚の太陽電池に跨るように対向する位置の前記裏面保護部材に、開口部が設けられ、前記出力配線が前記開口部を経て前記裏面保護部材の外部に取り出され、前記出力配線は、前記裏面保護部材上において、前記2枚の太陽電池の一方に対応する位置に少なくとも2つ、他方に対応する位置に少なくとも2つそれぞれ配置されて」いる構成で一致する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「表面保護部材と、裏面保護部材と、前記表面保護部材と前記裏面保護部材との間に配設され、配線部材によって電気的接続された複数の太陽電池と、前記表面保護部材と前記裏面保護部材との間に、前記複数の太陽電池を封止する封止部材と、前記太陽電池の出力を取り出すための少なくとも4つの絶縁体が取り付けられた出力配線と、を備えた太陽電池モジュールであって、
2枚の太陽電池に跨るように対向する位置の前記裏面保護部材に、開口部が設けられ、前記出力配線が前記開口部を経て前記裏面保護部材の外部に取り出され、
前記出力配線は、前記裏面保護部材上において、前記2枚の太陽電池の一方に対応する位置に少なくとも2つ、他方に対応する位置に少なくとも2つそれぞれ配置されている太陽電池モジュール。」
で一致し、次の点で相違する。

(3)相違点
本願補正発明では、「前記一方の太陽電池上では、前記少なくとも2つの出力配線が前記配線部材を挟んで配置されており、前記他方の太陽電池上では、前記配線部材と前記一方の太陽電池と面する端部との間に前記少なくとも2つの出力配線が配置されている」のに対して、引用発明1では、「内部配線14aと内部配線14abが」「タブ電極17を挟んで配置され、内部配線14cdと内部配線14dが」「タブ電極17を挟んで配置され、内部配線14bcが前記2枚の太陽電池4の境界部に配置されている」点。

4.判断
(1)相違点について
引用発明1の「内部配線14aと内部配線14abが前記2枚の太陽電池4の一方に対応する位置にタブ電極17を挟んで配置され、内部配線14cdと内部配線14dが前記2枚の太陽電池4の他方に対応する位置にタブ電極17を挟んで配置され、内部配線14bcが前記2枚の太陽電池4の境界部に配置されている」構成について、引用文献1の全記載を参照しても、格別な技術的意味を持って配置された構成ではないことが明らかであり、また、引用発明1のような配置に格別な技術的意味があるという技術常識もないから、引用発明1の「内部配線14a、14ab、14bc、14cd、14d」の配置は、内部配線自体の幅、太陽電池素子の幅、太陽電池の配線部材間の幅、太陽電池の端部と配線部材間の幅等を勘案して適宜設計し得るものであることは、当業者には自明のことにすぎない。
そして、特開2006-278904号公報(特に、図6参照:以下「引用文献2」という。)には、引用発明1と同じ5つの配線(「突出部20b」、「突出部30b」、「突出部31b」、「突出部50b」、「突出部51b」が相当)有する太陽電池モジュールにおいて、5つの配線を引用発明1の配置とは異なる配置としたものが記載されていることや、本願補正発明の配置が他の配置(例えば、引用発明1の配置、本願の図7、9に記載された配置)に対して格別な効果を奏するものでもないことを考慮すると、引用発明1の「内部配線14a、14ab、14bc、14cd、14d」の配置を適宜設計変更して本願補正発明のような配置とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)効果について
本願補正発明が奏し得る効果は、引用発明1から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(3)結論
本願補正発明は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.審判請求書の請求の理由について
(1)請求人の主張について
請求人は、請求の理由において、
「特に出力配線のレイアウトにより融通を利かせることができるようにするため、「…前記太陽電池の出力を取り出すための少なくとも4つの絶縁体が取り付けられた出力配線…」を使用するとした本願発明のポイントにつきましては、配線の位置ずれを防止することを目的とした引用文献1の開示内容と相反するものであり、本願発明を想到することはできません。
加えて引用文献1-3においては、「前記一方の太陽電池上では、前記少なくとも2つの出力配線が前記配線部材を挟んで配置されており、前記他方の太陽電池上では、前記配線部材と前記一方の太陽電池と面する端部との間に前記少なくとも2つの出力配線が配置されている」構成は開示されておらず、太陽電池が割れや、EVA層(封止層)に気泡等が生じたりするのを防止するとした課題は開示されていません。
したがって、本願発明の課題が知られていない状況で、引用文献1と相反する構成とする動機付けはなく、引用文献1-3を組み合わせても本願発明を容易に想到することはできません。」と記載し、本願補正発明の「前記太陽電池の出力を取り出すための少なくとも4つの絶縁体が取り付けられた出力配線」は、配線の位置ずれを防止することを目的とした引用文献1の開示内容と相反するものである旨の主張を行っている。
上記「3.」「(1)」「(c)」で指摘したとおり、引用発明1の「・・・これら内部配線14は、あらかじめ各内部配線14を連結する絶縁部材15を有する配線ユニット体16より、構成されていて、絶縁部材15は、PET樹脂等の絶縁フィルムからなり、各内部配線14の両面をアクリル系接着材を介して挟着すると共に、連結部15x、15yを有しており、連結部15x、15yにて各内部配線14を連結して」いる構成は、本願補正発明の「前記太陽電池の出力を取り出すための少なくとも4つの絶縁体が取り付けられた出力配線と、を備えた」構成に相当すると認められるところ、上記請求人の主張は採用し得るものではない。
ただし、請求人が、本願補正発明の「少なくとも4つの絶縁体が取り付けられた出力配線」を、「少なくとも4つの、個別に絶縁体が取り付けられた出力配線」、すなわち、引用発明1の「これら内部配線14は、あらかじめ各内部配線14を連結する絶縁部材15を有する配線ユニット体16より、構成されていて、絶縁部材15は、PET樹脂等の絶縁フィルムからなり、各内部配線14の両面をアクリル系接着材を介して挟着すると共に、連結部15x、15yを有しており、連結部15x、15yにて各内部配線14を連結して」いる構成、すなわち、4つの出力配線全体に1つの絶縁体が取り付けられ、4つの出力配線が絶縁体によって1つに連結されている構成は含まないと限定解釈しているとすれば、請求人の主張に首肯し得るところはある。
しかし、本願補正発明をそのように限定解釈する理由は見当たらないから、請求人の主張は採用し得るものではないことに変わりはない。

なお、本願補正発明について、請求人が上記のような限定解釈を行っている可能性があることに鑑み、限定解釈した本願補正発明も、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを、参考までに、以下に、簡単に示しておく。

(2)限定解釈した本願補正発明について
限定解釈した本願補正発明と、引用文献2(特に、段落【0036】?【0046】、図6、7参照)に「第2の実施の形態」として記載された発明(以下「引用発明2」という。)とを対比すると、上記「3.」「(3)」で挙げた相違点と同様の相違点に加えて、
引用発明2の「突出部20b」、「突出部30b」、「突出部31b」、「突出部50b」、「突出部51b」に、個別に絶縁体が取り付けられていない点で相違する。
上記「3.」「(3)」で挙げた相違点と同様の相違点については、上記「4.」「(1)」での検討と同様であるから、追加の相違点について検討する。
太陽電池モジュールにおいて、個別に絶縁体が取り付けられた出力配線は、特開平9-260707号公報(特に、「導体12の外周部にある電気的な絶縁物13」参照)、特開平9-326497号公報(特に、段落【0011】?【0014】、図5、6参照)、特開2003-86820号公報(特に、段落【0043】?【0046】、図7?10参照)に示されるように周知であるから、引用発明2の「突出部20b」、「突出部30b」、「突出部31b」、「突出部50b」、「突出部51b」に、個別に絶縁体を取り付けることは、当業者が容易に想到し得ることである。
すると、限定解釈した本願補正発明は、引用発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年11月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年1月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「表面保護部材と、裏面保護部材と、前記表面保護部材と前記裏面保護部材との間に配設され、配線部材によって電気的接続された複数の太陽電池と、前記表面保護部材と前記裏面保護部材との間に、前記複数の太陽電池を封止する封止部材と、前記太陽電池の出力を取り出すための少なくとも4つの出力配線と、を備えた太陽電池モジュールであって、
2枚の太陽電池に跨るように対向する位置の前記裏面保護部材に、開口部が設けられ、前記出力配線が前記開口部を経て前記裏面保護部材の外部に取り出され、
前記出力配線は、前記裏面保護部材上において、前記2枚の太陽電池の一方に対応する位置に少なくとも2つ、他方に対応する位置に少なくとも2つそれぞれ配置されており、前記一方の太陽電池上では、前記少なくとも2つの出力配線が前記配線部材を挟んで配置されており、前記他方の太陽電池上では、前記配線部材と前記一方の太陽電池と面する端部との間に前記少なくとも2つの出力配線が配置されていることを特徴とする太陽電池モジュール。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物、その記載内容、引用発明1は、上記「第2」「[理由]」「2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、「絶縁体が取り付けられた」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する本願補正発明は、前記「第2」「3.」及び「4.」に記載したとおり、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
してみると、本願発明は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-31 
結審通知日 2014-11-04 
審決日 2014-11-18 
出願番号 特願2009-200469(P2009-200469)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 吉美加藤 昌伸  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 伊藤 昌哉
山口 剛
発明の名称 太陽電池モジュール  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 徳田 佳昭  

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