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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1296464
審判番号 不服2014-5729  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-28 
確定日 2015-01-13 
事件の表示 特願2012-163797「再構成可能なプログラマブルロジックデバイスコンピュータシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月20日出願公開、特開2012-252712〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成11年11月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年11月20日、米国)に出願した特願2000-584401号(以下、「原願」という。)の一部を平成22年3月16日に新たな特許出願とした特願2010-59968号の一部をさらに、平成23年1月11日に新たな特許出願とした特願2011-3508号の一部をさらに、平成24年7月24日に新たな特許出願としたものであって、同日付けで審査請求がなされ、平成25年8月30日付けで拒絶理由通知(同年9月3日発送)がなされ、同年11月29日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年12月13日付けで拒絶査定(同年12月17日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成26年3月28日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年6月17日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされたものである。


第2 平成26年3月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年3月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成26年3月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成25年11月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項18の記載

「 【請求項1】
所与のアプリケーションを実行するために再構成可能なコンピュータの能力を増大させるように該再構成可能なコンピュータのリソースを管理する方法であって、該再構成可能なコンピュータは、複数の再生可能なプログラマブルロジックリソースとリソースマネージャとを含み、該方法は、
該リソースマネージャが、該所与のアプリケーションを実行するために該複数のプログラマブルロジックリソースを割り当てる間に、二次記憶装置と該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの1つ以上との間で、該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの該1つ以上の構成データと該所与のアプリケーションの状態情報とを交換することを含む、方法。
【請求項2】
前記再構成可能なコンピュータは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイス上で実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再構成可能なコンピュータは、マイクロプロセッサ上で実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記再構成可能なコンピュータは、マイクロプロセッサ上で部分的に実行され、プログラマブルロジックデバイス上で部分的に実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所与のアプリケーションは、複数の機能を含み、前記複数のプログラマブルロジックリソースは、該複数の機能を実行するように割り当てられている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のプログラマブルロジックリソースの割り当ては、リソースライブラリによって特定された該複数のプログラマブルロジックリソースの特性に基づいて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記割り当ては、ランタイム中に実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所与のアプリケーションは、複数の機能を含み、前記割り当てを行うことは、該複数の機能をソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ハードウェア機能に分割された前記アプリケーションの機能は、前記複数のプログラマブルロジックリソースによって実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
所与のアプリケーションを実行するために再構成可能なコンピュータの能力を増大させるように該再構成可能なコンピュータのリソースを管理するシステムであって、該再構成可能なコンピュータは、複数の再生可能なプログラマブルロジックリソースを含み、該システムは、
該所与のアプリケーションを実行するために該複数のプログラマブルロジックリソースを割り当てる間に、二次記憶装置と該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの1つ以上との間で、該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの該1つ以上の構成データと該所与のアプリケーションの状態情報とを交換する手段を含む、システム。
【請求項11】
前記再構成可能なコンピュータは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイス上で実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記再構成可能なコンピュータは、マイクロプロセッサ上で実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記再構成可能なコンピュータは、マイクロプロセッサ上で部分的に実行され、プログラマブルロジックデバイス上で部分的に実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記所与のアプリケーションは、複数の機能を含み、前記複数のプログラマブルロジックリソースは、該複数の機能を実行するように割り当てられている、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数のプログラマブルロジックリソースの割り当ては、リソースライブラリによって特定された該複数のプログラマブルロジックリソースの特性に基づいて実行される、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記割り当ては、ランタイム中に実行される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記所与のアプリケーションは、複数の機能を含み、前記割り当てを行う手段は、該複数の機能をソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割する手段を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記ハードウェア機能に分割された前記アプリケーションの機能は、前記複数のプログラマブルロジックリソースによって実行される、請求項17に記載のシステム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
所与のアプリケーションを実行するために再構成可能なコンピュータの能力を増大させるように該再構成可能なコンピュータのリソースを管理する方法であって、該再構成可能なコンピュータは、複数の再構成可能なプログラマブルロジックリソースとリソースマネージャとを含み、該方法は、
該リソースマネージャが、該所与のアプリケーションを実行するために該複数のプログラマブルロジックリソースを割り当てる間に、二次記憶装置と該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの1つ以上との間で、該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの該1つ以上の構成データと該所与のアプリケーションの状態情報とを交換することを含み、
該複数の再構成可能なプログラマブルロジックリソースは、複数の独立したハードウェアリソースであり、該複数の独立したハードウェアリソースのそれぞれは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイスに基づいており、
該複数のプログラマブルロジックリソースの割り当ては、該所与のアプリケーションを実行するランタイム中に該複数のプログラマブルロジックリソースの特性に少なくとも基づいて実行される、方法。
【請求項2】
前記再構成可能なコンピュータは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイス上で実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再構成可能なコンピュータは、マイクロプロセッサ上で実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記再構成可能なコンピュータは、マイクロプロセッサ上で部分的に実行され、プログラマブルロジックデバイス上で部分的に実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所与のアプリケーションは、複数の機能を含み、前記複数のプログラマブルロジックリソースは、該複数の機能を実行するように割り当てられている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のプログラマブルロジックリソースの特性は、リソースライブラリによって特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記所与のアプリケーションは、複数の機能を含み、前記割り当てを行うことは、該複数の機能をソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ハードウェア機能に分割された前記アプリケーションの機能は、前記複数のプログラマブルロジックリソースによって実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
所与のアプリケーションを実行するために再構成可能なコンピュータの能力を増大させるように該再構成可能なコンピュータのリソースを管理するシステムであって、該再構成可能なコンピュータは、複数の再構成可能なプログラマブルロジックリソースを含み、該システムは、
該所与のアプリケーションを実行するために該複数のプログラマブルロジックリソースを割り当てる間に、二次記憶装置と該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの1つ以上との間で、該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの該1つ以上の構成データと該所与のアプリケーションの状態情報とを交換する手段を含み、
該複数の再構成可能なプログラマブルロジックリソースは、複数の独立したハードウェアリソースであり、該複数の独立したハードウェアリソースのそれぞれは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイスに基づいており、
該複数のプログラマブルロジックリソースの割り当ては、該所与のアプリケーションを実行するランタイム中に該複数のプログラマブルロジックリソースの特性に少なくとも基づいて実行される、システム。
【請求項10】
前記再構成可能なコンピュータは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイス上で実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記再構成可能なコンピュータは、マイクロプロセッサ上で実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記再構成可能なコンピュータは、マイクロプロセッサ上で部分的に実行され、プログラマブルロジックデバイス上で部分的に実行される中央プロセッシングユニットをさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記所与のアプリケーションは、複数の機能を含み、前記複数のプログラマブルロジックリソースは、該複数の機能を実行するように割り当てられている、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数のプログラマブルロジックリソースの特性は、リソースライブラリによって特定される、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記所与のアプリケーションは、複数の機能を含み、前記割り当てを行う手段は、該複数の機能をソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割する手段を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記ハードウェア機能に分割された前記アプリケーションの機能は、前記複数のプログラマブルロジックリソースによって実行される、請求項15に記載のシステム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。)
(なお、下線は、補正箇所を示すものとして、出願人が付与したものである。)

に補正するものである。

そして、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的として、補正前の請求項7及び請求項16を削除し、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(以下、「限定的減縮」という。)を目的として、補正前の請求項1及び請求項10における「複数の再生可能なプログラマブルロジックリソース」(当審注:「再生可能なプログラマブルロジックリソース」は「再構成可能なプログラマブルロジックリソース」の誤記と認められる)について、下位概念化する補正を行い、特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的として、補正前の請求項1及び請求項10における「再生可能なプログラマブルロジックリソース」を「再構成可能なプログラマブルロジックリソース」と訂正するとともに、各請求項間における記載ぶりを統一したものであり、これによって、当該発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。

2.独立特許要件

以上のように、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、補正前の請求項1に対して、限定的減縮を行ったものと認められる。そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、前記「1.補正の内容」において、補正後の請求項1として引用した、次の記載のとおりのものである。

「所与のアプリケーションを実行するために再構成可能なコンピュータの能力を増大させるように該再構成可能なコンピュータのリソースを管理する方法であって、該再構成可能なコンピュータは、複数の再構成可能なプログラマブルロジックリソースとリソースマネージャとを含み、該方法は、
該リソースマネージャが、該所与のアプリケーションを実行するために該複数のプログラマブルロジックリソースを割り当てる間に、二次記憶装置と該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの1つ以上との間で、該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの該1つ以上の構成データと該所与のアプリケーションの状態情報とを交換することを含み、
該複数の再構成可能なプログラマブルロジックリソースは、複数の独立したハードウェアリソースであり、該複数の独立したハードウェアリソースのそれぞれは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイスに基づいており、
該複数のプログラマブルロジックリソースの割り当ては、該所与のアプリケーションを実行するランタイム中に該複数のプログラマブルロジックリソースの特性に少なくとも基づいて実行される、方法。」

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原願の優先日前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成25年8月30日付けの拒絶理由通知において引用された刊行物である、特開平8-305547号公報(平成8年11月22日出願公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0007】
【実施例】図1は本発明の一実施例におけるコンピュータアーキテクチャを表すPLDによるコンピュータのブロック図である。本実施例のコンピュータは、 PLD(Programmable Logic Device :プログラム可能型論理デバイス)1と、ハードディスク等の入出力装置2から構成される。」

B 「【0009】従来のCPUでは、1つの演算部と1つの制御部で全ての処理を行うものであるが、本実施例のPLD1では、固定された演算部や制御部は持たず、実行する処理に応じて演算部や制御部に該当する論理回路を構成する。次に、上述したPLD1の条件を説明する。PLD1は、十分に大きな規模のものとする。これにより、処理を実行するのに必要な論理回路をPLD1内に複数構成することができるようになり、複数のプログラムを取り込み、互いに干渉することなく並行して処理が可能となる。規模を大きくするために、複数のPLDを接続しても構わない。」

C 「【0012】例えば、電源投入時、入出力装置からブートプログラム、あるいはOSを読み込み、PLDに書き込む装置を備える。この入力装置としては、ハードディスク、ROM等が適用できる。また、PLD内の一部を不揮発として、その部分にブートプログラムあるいはOSをロードするための機構をプログラムしておく。」

D 「【0014】次に、PLD1はブートプログラムを実行してOSを入出力装置2から読み込み、PLD自身に書き込む(図2の2)。そして、PLD1はOSを実行する(図2の3)。なお、ブートプログラムを用いない場合は、OSを入出力装置から読み込み、PLDに書き込んで、OSを実行する。
〔プロセスの実行〕図3はアプリケーション、ツール、デーモン等のプロセス実行時の動作フローチャートである。
【0015】まず、PLD1に読み込んだOSが実行開始要求を受けて、プロセスを書き込むPLD内の領域を確保する。PLD内の領域内の領域の管理はOSが行う(図3の1)。次に、OSがプロセスのネットリストを入出力装置2から読み込み、確保したPLD領域に書き込む(図3の2)。
【0016】そして、プロセスの書き込みが終わると、OSはプロセスを実行させる(図3の3)。プロセスは目的の処理を行い、終了すると、OSに終了したことを伝える(図3の4)。OSは、プロセスからの処理終了通知を受けて、プロセスが使用していたPLD内の領域を解放する(図3の5)。
・・・(後略)」

E 「【0033】変換したネットリストをPLDにプログラムすれば、PLDは意図した動作を行う。本コンピュータを利用するためには、入出力やPLD自身へのプログラミング機能等を管理するプログラムが必要である。この様にシステム内で共有する資源は、OSが管理する。本発明の場合、OSも他のプログラムと同様にネットリストである。」

F 「【0039】図13はOSによるPLD領域確保動作を表すブロック図である。PLDの空き領域が足らなくなった時は、従来のコンピュータのスワップイン/アウトの様に、一時的にプロセスの状態を二次記憶装置3に退避させる(図13の1)。この場合、OSはプロセスのスケジューリングを行う。また、空き領域よりも大きなプロセスを動作させるために、プロセスの一部を二次記憶装置3に退避させる(図13の2)。これは、従来のコンピュータのページイン/アウトと同様の概念である。従来のページイン/アウトは、メモリ上にない命令/アドレスをアクセスした時にトラップが発生することを利用し、ページインするが、本発明のコンピュータは、PLD上にない回路へのアクセスは、システムコール信号に接続されており、それの入力によってOSが二次記憶装置から読み戻す。」

G 「【0053】さらに、電源投入時にブートプログラム、OSを読み込む入出力装置は、ハードディスク、光磁気ディスク、ROMのいずれであっても良い。本実施例では、PLDの一部分を不揮発にする方法を述べたが、いくつかのPLDで装置を構成する場合は、その中のいくつかを不揮発のPLDで構成しても良い。」

H 「【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、PLDがプログラムを取り込み、自身に書き込むことで所望の処理を実行可能な論理回路を構成することとしたので、PLDによるコンピュータが実現できる。これにより、目的の処理を行う論理回路を構成して、この論理回路のみを動作させて処理を行うことができるので、CPUのように常に多くの回路を動作させる必要がなく、また、制御や演算を行う論理回路を複数構成して、これらを並行して動作させて処理を行うことができるので、待ち時間が必要なく、これにより、高速処理が可能となる。」

J OSによるPLD領域確保動作を表すブロック図である図13から、「スワップイン/アウト」の動作は「メモリ、レジスタ フリップフロップの状態をセーブ、リストア」する態様を含むことが読みとれる。

ここで、上記引用文献に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Hの「本発明は、PLDがプログラムを取り込み、自身に書き込むことで所望の処理を実行可能な論理回路を構成することとしたので、PLDによるコンピュータが実現できる・・・これにより、高速処理が可能となる」との記載、上記Eの「本コンピュータを利用するためには、入出力やPLD自身へのプログラミング機能等を管理する」との記載からすると、引用文献には、
“所望の処理を実行可能な論理回路を構成するPLDにより高速処理を可能とするコンピュータを管理する方法”
が記載されていると解される。

(イ)上記Aの「本実施例のコンピュータは、 PLD・・・と、ハードディスク等の入出力装置2から構成される」との記載、上記Cの「電源投入時、入出力装置からブートプログラム、あるいはOSを読み込み、PLDに書き込む」との記載、上記Eの「本コンピュータを利用するためには、入出力やPLD自身へのプログラミング機能等を管理する・・・この様にシステム内で共有するこの資源は、OSが管理する」との記載からすると、引用文献に記載されている「コンピュータ」が、
“PLDとシステム内の資源を管理するOSとを含”む態様
が記載されていると解される。

(ウ)上記Dの「〔プロセスの実行〕図3はアプリケーション、ツール、デーモン等のプロセス実行時の動作フローチャート・・・PLD内の領域内の領域の管理はOSが行う・・・OSがプロセスのネットリストを入出力装置2から読み込み、確保したPLD領域に書き込む」との記載、上記Fの「図13はOSによるPLD領域確保動作を表すブロック図・・・従来のコンピュータのスワップイン/アウトの様に、一時的にプロセスの状態を二次記憶装置3に退避させる・・・本発明のコンピュータは、PLD上にない回路へのアクセスは・・・OSが二次記憶装置から読み戻す」との記載からすると、引用文献に記載されている「OS」が、
“プロセス(アプリケーション、ツール、デーモン等)を実行するために、プロセスのスワップイン/アウトの間に、プロセスのネットリストを入出力装置からPLDに書き込み、プロセスの状態を二次記憶装置に退避させたり読み戻したりする”態様
が記載されていると解される。

以上、(ア)ないし(ウ)で指摘した事項を踏まえると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「所望の処理を実行可能な論理回路を構成するPLDにより高速処理を可能とするコンピュータを管理する方法であって、該コンピュータは、PLDとシステム内の資源を管理するOSとを含み、該方法は、
該OSが、プロセス(アプリケーション、ツール、デーモン等)を実行するために、プロセスのスワップイン/アウトの間に、プロセスのネットリストを入出力装置からPLDに書き込み、プロセスの状態を二次記憶装置に退避させたり読み戻したりすることを含む方法。」

(3)参考文献に記載されている技術的事項

原願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-355867号公報(平成4年12月9日出願公開。以下、「参考文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

K 「【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明に係る分散処理方式を用いた一実施例を示す分散処理システムの全体図である。図において、この分散処理システム1は、大きくはLAN2でそれぞれ結合されたコンピュータ3,4,5で構成されている。このうち、コンピュータ3,4はマルチプロセッサ構造であり、内部で並行処理可能になっている。さらに詳述すると、コンピュータ3は、処理速度/対応可能処理およびそのレベルを含んだ自分の能力を示す種別コードを各々持ったプロセッサユニット(PU)6,7,8と、メインメモリ(MM)9を有し、これらが内部バス10で互いに接続されている。コンピュータ4は、コンピュータ3と同様に、処理速度/対応処理およびそのレベルを含んだ自分の能力を示す種別コードを各々持ったプロセッサユニット(PU)11,12,13と、メインメモリ(MM)14を有し、これらが内部バス15で互いに接続されている。コンピュータ5は、内部バス16で互いに接続されたプロセッサユニット(SPU)17とメインメモリ(MM)18を有している。なお、ここでのプロセッサユニット(SPU)17は、この分散処理システム1での中核をなすものであり、各プロセッサユニット(PU)6?8,11?13の制御およびプロセスの割当を行う。」

L 「【0011】図3はプロセッサユニット6が処理中にプロセスの発生を検出したときの処理手順を示すフローチャートであり、この処理手順を図3とともに次に説明する。まず、各プロセスには、発生時に種別コードが付与される(ステップ301)。なお、ここでの種別コードは、プロセッサユニット(PU)6が持つ種別コードと同じものである。そこで、プロセッサユニット(PU)6は、そのプロセスを自分で処理するかどうかを決める(ステップ302)。ここで、そのプロセスを外部で処理すべきと判断した場合は、プロセッサユニット(SPU)17にそのプロセスの種別コードを通知する(ステップ303)。すると、プロセッサユニット(SPU)17は、そのプロセスの種別コードをプロセッサユニット(PU)管理テーブルと見比べる(ステップ304)。そして、該当する種別コードに合致するか、その処理レベルを含むプロセッサユニット(PU)6?8,11?13を選択し、そのプロセスを実行させる(ステップ305)。これに対して、上記プロセスを内部で処理すべきと判断した場合は自己処理することになる(ステップ306)。」

(4)本件補正発明と引用発明との対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「所望の処理」及び「(PLDにより高速処理を可能とする)コンピュータ」は、それぞれ、本件補正発明の「所与のアプリケーション」及び「再構成可能なコンピュータ」に相当する。そして、引用発明の「PLDにより高速処理を可能とする」とは、PLDによりコンピュータの能力を増大させることに他ならない。また、引用発明においても、上記(2)の(イ)で検討したように、システム内の資源(本件補正発明の「リソース」に対応)を管理するものである。
してみると、引用発明の「所望の処理を実行可能な論理回路を構成するPLDにより高速処理を可能とするコンピュータを管理する方法」は、本件補正発明の「所与のアプリケーションを実行するために再構成可能なコンピュータの能力を増大させるように該再構成可能なコンピュータのリソースを管理する方法」に相当するといえる。

(4-2)引用発明の「PLD」は、本件補正発明の「再構成可能なプログラマブルロジックリソース」に相当する。また、引用発明の「OS」は、システム内の資源を管理するものであるから、本件補正発明の「リソースマネージャ」に対応する。

(4-3)引用発明の「プロセス(アプリケーション、ツール、デーモン等)」及び「二次記憶装置」は、それぞれ、本件補正発明の「所与のアプリケーション」及び「二次記憶装置」に相当する。また、引用発明の「入出力装置」は、上記Aに「ハードディスク等の入出力装置2」と記載されていることから、本件補正発明の「二次記憶装置」に対応するといえる。
そして、上記Jに記載されるように、引用発明の「スワップイン/アウト」の動作は、「メモリ、レジスタ フリップフロップの状態をセーブ、リストア」する態様を含むものであるから、引用発明の(二次記憶装置に退避させたり読み戻したりする)「プロセスの状態」は、本件補正発明の「プログラマブルロジックリソースの」「構成データと該所与のアプリケーションの状態情報」に相当しているといえる。
してみると、引用発明の「該OSが、プロセス(アプリケーション、ツール、デーモン等)を実行するために、プロセスのスワップイン/アウトの間に、プロセスのネットリストを入出力装置からPLDに書き込み、プロセスの状態を二次記憶装置に退避させたり読み戻したりすること」と、本件補正発明の「該リソースマネージャが、該所与のアプリケーションを実行するために該複数のプログラマブルロジックリソースを割り当てる間に、二次記憶装置と該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの1つ以上との間で、該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの該1つ以上の構成データと該所与のアプリケーションの状態情報とを交換すること」とは、“該リソースマネージャが、該所与のアプリケーションを実行するために該プログラマブルロジックリソースを割り当てる間に、二次記憶装置と該プログラマブルロジックリソースとの間で、該プログラマブルロジックリソースの構成データと該所与のアプリケーションの状態情報とを交換すること”である点で共通するといえる。

以上から、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

「所与のアプリケーションを実行するために再構成可能なコンピュータの能力を増大させるように該再構成可能なコンピュータのリソースを管理する方法であって、該再構成可能なコンピュータは、再構成可能なプログラマブルロジックリソースとリソースマネージャとを含み、該方法は、
該リソースマネージャが、該所与のアプリケーションを実行するために該プログラマブルロジックリソースを割り当てる間に、二次記憶装置と該プログラマブルロジックリソースとの間で、該プログラマブルロジックリソースの構成データと該所与のアプリケーションの状態情報とを交換することを含む、方法。」

(相違点1)

再構成可能なプログラマブルロジックリソースに関して、本件補正発明が、「複数の再構成可能なプログラマブルロジックリソース」を含み、「複数の独立したハードウェアリソースであり、該複数の独立したハードウェアリソースのそれぞれは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイスに基づいて」いるものであるのに対して、引用発明は、そのようなものであるか不明である点。

(相違点2)

プログラマブルロジックリソースに関して、本件補正発明が、「該複数のプログラマブルロジックリソースの割り当ては、該所与のアプリケーションを実行するランタイム中に該複数のプログラマブルロジックリソースの特性に少なくとも基づいて実行される」ものであるのに対して、引用発明は、そのようなものであるか不明である点。

(5)当審の判断

上記相違点1及び相違点2について検討する。

(5-1)相違点1について

引用文献の上記Bに「PLD1は、十分に大きな規模のものとする。これにより、処理を実行するのに必要な論理回路をPLD1内に複数構成することができるようになり、複数のプログラムを取り込み、互いに干渉することなく並行して処理が可能となる。規模を大きくするために、複数のPLDを接続しても構わない。」と記載されるように、引用文献においても、プロセスを割り当てる対象としてのPLDを複数設けることが記載されている。しかも、必要な論理回路をPLD1内に複数構成することとは別の態様として複数のPLDを設ける旨の記載がされているから、該複数のPLDは、複数の独立したハードウェアリソースであって、それぞれが少なくとも1つのPLDに基づくものであることは明らかである。
してみると、引用発明においても、複数のPLDを含むように構成し、該複数のPLDが独立したハードウェアリソースであって、それぞれが少なくとも1つのPLDに基づくものであるように構成すること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1は格別なものではない。

(5-2)相違点2について

引用文献の上記Gに「いくつかのPLDで装置を構成する場合は、その中のいくつかを不揮発のPLDで構成しても良い」と記載されるように、引用文献には、特性の異なる複数のPLDを用いる態様も示唆されている。そして、参考文献の上記K及び上記Lに、プロセッサユニットの割り当てを、プロセッサユニットの種別コード(プロセッサユニットの処理速度/対応可能処理およびそのレベルを含んだ自分の能力を示す情報)に基づいて行うことが記載されているように、リソースの割り当てをランタイム中にリソースの特性に基づき実行することは、当該技術分野において普通に行われている周知技術であった。
してみると、引用発明においても、複数のPLDの割り当てをランタイム中に該PLDの特性に基づき実行するように構成すること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点2は格別なものではない。

(5-3)小括

上記で検討したごとく、相違点1及び相違点2は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび

以上のように、上記「2.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成26年3月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年11月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「所与のアプリケーションを実行するために再構成可能なコンピュータの能力を増大させるように該再構成可能なコンピュータのリソースを管理する方法であって、該再構成可能なコンピュータは、複数の再生可能なプログラマブルロジックリソースとリソースマネージャとを含み、該方法は、
該リソースマネージャが、該所与のアプリケーションを実行するために該複数のプログラマブルロジックリソースを割り当てる間に、二次記憶装置と該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの1つ以上との間で、該複数のプログラマブルロジックリソースのうちの該1つ以上の構成データと該所与のアプリケーションの状態情報とを交換することを含む、方法。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成26年3月28日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成26年3月28日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」で検討した本件補正発明から「該複数の再構成可能なプログラマブルロジックリソースは、複数の独立したハードウェアリソースであり、該複数の独立したハードウェアリソースのそれぞれは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイスに基づいており」及び「該複数のプログラマブルロジックリソースの割り当ては、該所与のアプリケーションを実行するランタイム中に該複数のプログラマブルロジックリソースの特性に少なくとも基づいて実行される」を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、上記「第2 平成26年3月28日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」ないし「(5)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-20 
結審通知日 2014-08-21 
審決日 2014-09-02 
出願番号 特願2012-163797(P2012-163797)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 毅多賀 実  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 仲間 晃
田中 秀人
発明の名称 再構成可能なプログラマブルロジックデバイスコンピュータシステム  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  

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