• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1296601
審判番号 不服2013-2974  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-15 
確定日 2015-01-22 
事件の表示 特願2009-547387「ネットワークベースモビリティ管理システムのためのメッセージ順序付け」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月31日国際公開、WO2008/091906、平成22年 5月20日国内公表、特表2010-517438〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)1月22日(優先権主張2007年1月22日 米国、2008年1月2日 米国)を国際出願日とする国際出願であって、平成24年10月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月15日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成26年3月20日付けで拒絶理由を通知し、同年7月23日付けで手続補正がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1?39に係る発明は、平成26年7月23日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?39に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである(なお、下線は請求人が付与した。)。

「【請求項1】
ドメインノードへの登録を開始すること;
前記登録に関して、前記ドメインノードにメッセージが到達する順序が不正であることを前記ドメインノードが検出できるようにするためのシーケンス情報を生成すること、ここにおいて、前記シーケンス情報は前記ドメインノードとモバイルデバイスとの間の通信チャネルの前記登録を順序づけるものであり;および
前記ドメインノードとの順序正しい通信のため前記シーケンス情報を用いること、を含むモバイルデバイスのための通信方法。」


3.当審の拒絶理由
一方、当審が平成26年3月20日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された特開2004-129210号公報(以下、「引用文献1」という。)に記載された発明、並びに、同じく特開2000-183972号公報(以下、「引用文献2」という。)、及び、同じく特開2004-274733号公報(以下、「引用文献3」という。)に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである、というものである。


4.引用文献
4-1.引用文献1
引用文献1には、図面とともに、次の(ア)?(オ)の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。

(ア)「【0001】
【発明の属する利用分野】
本発明は、インターネットとのアクセスを目的とする移動通信システムにおいて、移動端末が、サービス形態の異なる移動通信網間を移動(ローミング)する際に生じるホームアドレスの変更をサポートし、公表された一つのアドレスで通信を可能とする移動管理方法および移動端末に関する。 」

(イ)「【0003】
モバイルIPv6においては、移動端末はホームリンクから離れた場合に現在接続しているリンクのアクセスルータから送信されるネットワーク情報から現在接続しているリンクのプレフィックス情報を取得することにより、そのリンクで一時的に使用するケアオブアドレスを生成する。その後、バインディングアップデートメッセージをホームエージェントに送信することにより、そのケアオブアドレスをプライマリケアオブアドレスとして、移動端末のホームリンク上のホームエージェントに登録する。ホームエージェントは移動端末からのバインディングアップデートメッセージを受信した後、ホームアドレスとケアオブアドレスを関連付けるバインディングキャッシュを作成もしくは更新する。 」

(ウ)「【0095】
初めに、移動端末10が、同一ドメインネットワーク1内でサブネットをまたがる移動を行った場合の動作について、図1と、図10を用いて説明する。図10は移動端末10が実施する本発明に関する処理手順を示すフロー図である。
【0096】
まず、移動端末10がサブネットを移動し、移動先サブネットに配置されたルータからL1/2処理部11を介してL3処理部12がネットワーク情報を受信する。そして、L3処理部12が受信したネットワーク情報から、そのサブネットにおいて有効なケアオブアドレスCoAを生成するとともに、受信したネットワーク情報と、現在記憶している先に接続していたサブネットのネットワーク情報とを比較し、移動したか否かを検知する(ステップS11)。この移動検知処理は、モバイルIP処理部14が行うことも可能である。
【0097】
次に、モバイルIP処理部14がL3処理部12からの移動検知処理(ステップS11)の結果としてサブネット間を移動したか否かを判定する(ステップS12)。
【0098】
なお、移動検知(ステップS11)の開始条件としては、上記の方法の他に、下位レイヤー、すなわちL1/2処理部11が実施するハンドオーバ処理の開始あるいは完了トリガを利用してもよい。その際、L1/2処理部11とモバイルIP処理部14は結線される必要がある。
【0099】
次に、移動を検知したがサブネットが変わっていない場合、すなわち、新たに取得したネットワーク情報が先に取得したものと同じである場合は、ステップS11に戻る。
【0100】
一方、移動がサブネットにまたがるものである場合、ネットワーク情報などから取得できるドメインIDやプレフィクス情報、また認証手続きなどを通じて、移動した先のサブネットが同一ドメイン内であるか否かを判定する(ステップS13)。同一ドメイン内である場合、モバイルIP処理部14は、そのサブネットにおいて取得した新しいケアオブアドレスCoA-Mとドメインネットワーク1において有効なホームアドレスHoA-Mをホームエージェント装置50?1に登録する(ステップS14)。
【0101】
なお、モバイルIP処理部14が行う登録処理は、モバイルIP手順に規定された登録要求電文(例えば図21に示すバインディングアップデートメッセージ(Binding update message)1000)を含むパケットをホームエージェント装置50-1に送信する動作(A1)と、ホームエージェント装置50-1から有効な登録応答電文(例えば図22に示すバインディングアックメッセージ(Binding acknowledge message)1010)を含むパケットを受信(A2)し、モバイルIP処理部14が処理を正しく完了できるまでの動作を含む。このパインディングアップデータメッセージ1000および、バインディングアックメッセージ1010内のモビリティオプションに、上記のケアオブアドレスCoA-MとホームアドレスHoA-Mとが記載され、ホームエージェント装置50-1に通知される。 」

(エ)「【0120】
図11はホームエージェント装置50のモバイルIP処理部54が実施する処理手順である。
【0121】
まず、モバイルIP処理部54は、移動端末10の位置管理をモバイルIP手順に従って実施する。すなわち、モバイルIP処理部54は、L1/2処理部51、L3処理部52経由で移動端末10からのパケットを受信し(ステップS51)、そのパケットに有効な登録要求電文が含まれているか否かを判定する(ステップS52)。パケットに有効な登録要求電文が含まれている場合には、モバイルIP処理部54はバインディングキャッシュの更新処理を行う(ステップS53)。
【0122】
このバインディングキャッシュの更新(ステップS53)では、以下の処理を行う。ホームエージェント装置50が管理するバインディングキャッシュに、移動端末10のエントリがある場合は、その内容を更新し、エントリが存在しない場合には登録要求電文に含まれる情報、例えば移動端末10のホームアドレスや、ケアオブアドレス、ライフタイム等を用いて新規にエントリを作成する。ここで、バインディングキャッシュのデータ構成について説明する。図17(a)は従来のバインディングキャッシュエントリ150を示し、図17(b)は本発明によって生成されるバインディングキャッシュエントリ160を示す。
【0123】
モバイルIP処理部54は各フィールド、すなわち移動端末10のホームアドレス(Home Address)151とケアオブアドレス(Care of Address)152、登録要求のライフタイム(BU Lifetime)153、本エントリのライフタイム(BC Lifetime)154、登録要求電文のシーケンス番号(BU Seq. Number)155、登録要求のフラグ(BU Flag)156等の必要事項を記載する。従来のエントリ150は、ホームアドレスフィールド151にホームアドレス(HoA-1)を、ケアオブアドレスフィールド152にアクセスしているサブネットのアドレス(CoA-1)を記載していたのに対し、本発明によるエントリ160では、ホームアドレスフィールド151にメインホームアドレス(HoA-M)、ケアオブアドレスフィールド152にアクセス先ドメインネットワークのホームアドレス(HoA-1)を記載している点が異なる。さらに、本発明の特徴は、上記バインディングキャッシュエントリへの記載内容に関して、モバイルIP処理部54が何ら新たな処理を追加する必要がない点にあり、標準的なモバイルIPが規定するホームエージェント装置50をそのまま使用できる点にある。
【0124】
次に、モバイルIP処理部54がこのバインディングキャッシュの更新完了後、モバイルIP処理部54がL3処理部52、L1/2処理部51を介して移動端末10宛にバインディングキャッシュ更新の成否を含む、登録応答電文をパケット送信する(ステップS54)。
【0125】
一方、受信したパケットに有効な登録要求電文が含まれていない場合、モバイルIP処理部54はL3処理部52においてモバイルIP手順を含まない通常のIP層処理を行う(ステップS57)。
【0126】
また、ステップS51において、モバイルIP処理部54の受信したパケットが移動端末10からのものでない場合は、移動端末10宛のものか否かを判定する(ステップS55)。
【0127】
移動端末10宛のパケットである場合、モバイルIP処理部54は、バインディングキャッシュの移動端末10に関するエントリについてホームアドレスHoAをキーとして検索し、エントリがある場合は、登録されているケアオブアドレスCoAを宛先とするIPヘッダで受信パケットをカプセル化してL3処理部52、L1/2処理部51の順に送信する。また、エントリがなかった場合は、ホームエージェント装置50に接続されたホームネットワークに受信パケットをルーティングする(ステップS56)。例えば、ホームエージェント装置50が図6の構成の場合には、L3処理部52、L1/2処理部51の順にネットワークへ送信し、図7の構成の場合には、L3処理部52、L1/2処理部56の順にホームネットワークへ送信する。」

(オ)図21には、「Sequence #」を含む登録要求電文(バインディングアップデートメッセージ(Binding update message)1000)が記載されている。

上記(エ)で摘示した「このバインディングキャッシュの更新(ステップS53)では、以下の処理を行う。ホームエージェント装置50が管理するバインディングキャッシュに、移動端末10のエントリがある場合は、その内容を更新し、エントリが存在しない場合には登録要求電文に含まれる情報、例えば移動端末10のホームアドレスや、ケアオブアドレス、ライフタイム等を用いて新規にエントリを作成する」及び「モバイルIP処理部54は各フィールド、すなわち移動端末10のホームアドレス(Home Address)151とケアオブアドレス(Care of Address)152、登録要求のライフタイム(BU Lifetime)153、本エントリのライフタイム(BC Lifetime)154、登録要求電文のシーケンス番号(BU Seq. Number)155、登録要求のフラグ(BU Flag)156等の必要事項を記載する。」、並びに、(オ)で摘示した図21の登録要求電文(バインディングアップデートメッセージ(Binding update message)1000)中の「Sequence #」からみて、移動端末が送信する登録要求電文は、該登録要求電文のシーケンス番号(BU Seq. Number)を有しているといえる。

このため、上記(ア)?(オ)で摘記した事項により、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 移動端末がサービス形態の異なる移動通信網間を移動(ローミング)する際に生じるホームアドレスの変更をサポートし、公表された一つのアドレスで通信を可能とする移動管理方法において、

移動端末は、
移動検知処理(ステップS11)の結果としてサブネット間を移動したか否かを判定し、
移動がサブネットにまたがるものである場合、ネットワーク情報などから取得できるドメインIDやプレフィクス情報、また認証手続きなどを通じて、移動した先のサブネットが同一ドメイン内であるか否かを判定し、同一ドメイン内である場合、モバイルIP処理部14は、そのサブネットにおいて取得した新しいケアオブアドレスCoA-Mとドメインネットワーク1において有効なホームアドレスHoA-Mをホームエージェント装置50?1に登録し、
なお、登録処理は、モバイルIP手順に規定され、シーケンス番号(BU Seq. Number)を有する登録要求電文(例えば図21に示すバインディングアップデートメッセージ(Binding update message)1000)を含むパケットをホームエージェント装置50-1に送信することにより、そのケアオブアドレスをプライマリケアオブアドレスとして、移動端末のホームリンク上のホームエージェント装置に登録し、

ホームエージェント装置は、
移動端末からのバインディングアップデートメッセージを受信した後、移動端末10のホームアドレス(Home Address)151とケアオブアドレス(Care of Address)152、登録要求のライフタイム(BU Lifetime)153、本エントリのライフタイム(BC Lifetime)154、登録要求電文のシーケンス番号(BU Seq. Number)155、登録要求のフラグ(BU Flag)156等の必要事項をバイディングキャッシュエントリに記載し、ホームアドレスとケアオブアドレスを関連付けるバインディングキャッシュを作成もしくは更新し、
受信したパケットが移動端末10宛のパケットである場合、モバイルIP処理部54は、バインディングキャッシュの移動端末10に関するエントリについてホームアドレスHoAをキーとして検索し、エントリがある場合は、登録されているケアオブアドレスCoAを宛先とするIPヘッダで受信パケットをカプセル化してL3処理部52、L1/2処理部51の順に送信する
方法。」

4-2.引用文献2
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。

(カ)「【0057】新-旧経路設定
図13は、ドメインルータによって新-旧ハンドオフ経路設定メッセージの処理に用いられる方法例を示す流れ図である。前述されているように、ハンドオフ経路設定メッセージは、モバイルデバイスによって開始され、新たな基地局から旧基地局及び選択された中間ルータさらにクロスオーバールータを含んで送出される。このメッセージを受信する基地局あるいはルータは、発信側モバイルデバイスIPアドレスに対応するルーティングテーブル内のエントリを、ハンドオフ経路設定メッセージが到達したルータあるいは基地局のインターフェースへのポイントに更新する。詳細に述べれば、ハンドオフ経路設定メッセージを受信するドメインルータは、(i)新基地局とクロスオーバールータとの間のハンドオフ後のパケット伝達経路に相当する各ルータ(新基地局及びクロスオーバールータを含む)及び(ii)クロスオーバールータと旧基地局との間のハンドオフの前のパケット伝達経路に相当する各ルータ(旧基地局を含む)が含まれる。本明細書において例示・記述されている方法は、本発明の実施例に従ってHAWAIIをインプリメントしているホストベースドメイン内の各々のルータ(これらには、前述されているように、ドメイン内の基地局も含まれる。なぜなら、基地局は、サブネットの有線部分へのインターフェースとして働くルータ機能を維持あるいはそれへのアクセスが可能であるからである。)に対して適用可能である。ここで記述されるメッセージ処理手続きは、前述されているように、現在のルータにおいて利用可能な処理及びメモリ機能を用いて実行される。ステップ410では、ドメインルータが、まず、ハンドオフ経路設定メッセージを受信する。ルータは、メトリックフィールドをインクリメントする(ステップ412)。ステップ414においては、ルータは経路設定メッセージが受信されたルータインターフェースを識別し、変数Intf1をそのインターフェースに設定する。ステップ418では、ルータはモバイルデバイスのIPアドレスに対する既存のエントリがルーティングテーブル内に存在するか否かをチェックする。存在しない場合には、ステップ420においてルーティングテーブルエントリが入力され、これはモバイルデバイスのIPアドレスをIntf1(ステップ414で識別されたルータインターフェース)にマッピングする。モバイルデバイスのIPアドレスに対する既存のエントリが存在する場合には、ステップ422において、ハンドオフ経路設定メッセージのシーケンスナンバーが既存のルータシーケンスナンバーエントリと比較される。ハンドオフ経路設定メッセージ中のシーケンスナンバーが既存のルータシーケンスナンバーエントリより大きい場合には、ハンドオフ経路設定メッセージがルータにストアされているものよりもより新しい情報要素を含むことを意味しており、ステップ424において、当該モバイルデバイスに係るルーティングテーブルエントリが更新される。 」

(キ)「【0064】しかしながら、経路設定メッセージにシーケンスナンバーフィールドを含ませることによって、パケットルーピングは回避される。モバイルデバイスが起動する際、シーケンスナンバーフィールドは0にセットされ、モバイルデバイスが起動した直後であって隣接する基地局へハンドオフされていないことを表している。モバイルデバイスがハンドオフされるたびに、モバイルデバイスは情報要素と共に送出されるシーケンスナンバーをインクリメントする。それゆえ、リフレッシュ経路設定メッセージを開始する基地局は、ハンドオフ前の値(すなわち、その基地局に依然として接続されている間のシーケンスナンバーフィールド値に対応する値)にセットされたシーケンスナンバーフィールドを有する情報要素を送出する。新基地局へハンドオフされたモバイルデバイスは、1だけインクリメントされたシーケンスナンバーフィールド値を有するハンドオフ経路設定メッセージを開始する。それゆえ、基地局BS9から送出されたルータR7に到達するリフレッシュ経路設定メッセージは、モバイルデバイス114によって開始されたハンドオフ経路設定メッセージのシーケンスナンバーフィールド値よりも小さいシーケンスナンバーフィールド値を有することになる。ルータR7は、リフレッシュ経路設定メッセージがちょうど受信したハンドオフ経路設定メッセージと同じ程度に新しくはない、ということを認識し、当該モバイルデバイスに対応するルーティングテーブルエントリを変更せずにリフレッシュ経路設定メッセージを転送する。よって、パケットルーピング、及びそれがもたらす望ましくない結果、は回避される。 」

4-3.引用文献3
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。

(ク)「【0017】
本構成により、移動ネットワーク内に複数の移動ルータ装置を設け、ホームエージェントにバインディングアップデート処理を行う移動ルータ装置を変更しても、最新のシーケンス番号を受け継いでバインディングアップデート処理ができるため、メッセージが最新の情報を含むことを保証することができ、ホームエージェントが前記情報を古い情報と判断して廃棄されるのを防ぐことができるという作用を有する。 」


5.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

(a) 引用発明は、以下のごとく、本願発明と同様に、「ドメインノードへの登録を開始すること」を含んでいるといえる。

(a-1)本願発明の「ドメインノード」について、本願の明細書の段落【0011】には、「該方法はネットワークドメインノードに登録を開始すること、および該登録に関してシーケンス情報を生成することを含んでいる。その後、シーケンス情報はネットワークドメインノードとのさらなる通信を容易にするために用いられる。ネットワークドメインノードは、例えばローカルモビリティアンカーとすることができ、プロキシモバイルインターネットプロトコルおよびネットワークベース局所モビリティ管理プロトコルのような例示的なプロトコルで動作する。」と記載され、同段落【0030】には、「具体的に図7(モバイルデバイスからの通信を容易にするシステム700)を参照する。システム700は、アクセスポイントを介してネットワークドメインノードに登録するための論理モジュール702と、該ネットワークドメインノードに登録する際にシーケンスデータを生成するための論理モジュール704とを含んでいる。論理モジュール706は、アクセスポイントを介して通信するために該シーケンスデータを処理するのに用いることができる。」と記載され、同段落【0031】には、「次に図8(ネットワークドメインからの通信を容易にするシステム800)を参照する。システム800は、アクセスポイントを介してモバイルデバイスを登録するための論理モジュール802と、該モバイルデバイスを登録する際にシーケンスデータを生成するための論理モジュール704とを含んでいる。論理モジュール806は、モバイルデバイスによる後の通信の際に該シーケンスデータを復号するのに用いることが可能である。」と記載されている。
該記載からみて、本願発明の「ドメインノード」は、モバイルデバイスを登録し、ローカルモビリティアンカーとしての機能を有するノードであるといえる。
これに対して、引用発明のホームエージェント装置は、「移動端末からのバインディングアップデートメッセージを受信した後、移動端末10のホームアドレス(Home Address)151とケアオブアドレス(Care of Address)152、登録要求のライフタイム(BU Lifetime)153、本エントリのライフタイム(BC Lifetime)154、登録要求電文のシーケンス番号(BU Seq. Number)155、登録要求のフラグ(BU Flag)156等の必要事項をバイディングキャッシュエントリに記載し、ホームアドレスとケアオブアドレスを関連付けるバインディングキャッシュを作成もしくは更新し、受信したパケットが移動端末10宛のパケットである場合、モバイルIP処理部54は、バインディングキャッシュの移動端末10に関するエントリについてホームアドレスHoAをキーとして検索し、エントリがある場合は、登録されているケアオブアドレスCoAを宛先とするIPヘッダで受信パケットをカプセル化してL3処理部52、L1/2処理部51の順に送信する」装置である。
引用発明のホームエージェント装置は、「移動端末10のホームアドレス(Home Address)151とケアオブアドレス(Care of Address)152」とが登録されていることから、モバイルデバイスが登録されているといえる。
また、引用発明のホームエージェント装置は、「受信したパケットが移動端末10宛のパケットである場合、モバイルIP処理部54は、バインディングキャッシュの移動端末10に関するエントリについてホームアドレスHoAをキーとして検索し、エントリがある場合は、登録されているケアオブアドレスCoAを宛先とするIPヘッダで受信パケットをカプセル化してL3処理部52、L1/2処理部51の順に送信する」ことから、ローカルモビリティアンカーとしての機能を有するノードであるといえる。
してみると、引用発明のホームエージェント装置は、「ドメインノード」に相当するといい得る。

(a-2)引用発明の移動端末は、「移動検知処理(ステップS11)の結果としてサブネット間を移動したか否かを判定し、移動がサブネットにまたがるものである場合」、「そのサブネットにおいて取得した新しいケアオブアドレスCoA-Mとドメインネットワーク1において有効なホームアドレスHoA-Mをホームエージェント装置50?1に登録し」ている。
このため、引用発明は、移動端末がホームエージェント装置への登録を開始しているといい得る。

(a-3) (a-2)により、引用発明は、移動端末がホームエージェント装置への登録を開始しているといい得、(a-1)により、引用発明のホームエージェント装置は、「ドメインノード」に相当するといい得ることから、引用発明は、本願発明と同様に、「ネットワークドメインノードへの登録を開始すること」を含んでいるといえる。

(b) 引用発明の移動端末は、「移動がサブネットにまたがるものである場合、ネットワーク情報などから取得できるドメインIDやプレフィクス情報、また認証手続きなどを通じて、移動した先のサブネットが同一ドメイン内であるか否かを判定し、同一ドメイン内である場合、モバイルIP処理部14は、そのサブネットにおいて取得した新しいケアオブアドレスCoA-Mとドメインネットワーク1において有効なホームアドレスHoA-Mをホームエージェント装置50?1に登録」するとともに、その「登録処理は、モバイルIP手順に規定され、シーケンス番号(BU Seq. Number)を有する登録要求電文(例えば図21に示すバインディングアップデートメッセージ(Binding update message)1000)を含むパケットをホームエージェント装置50-1に送信することにより、そのケアオブアドレスをプライマリケアオブアドレスとして、移動端末のホームリンク上のホームエージェントに登録」するものである。
そして、該登録処理では、シーケンス番号を有する登録要求電文(バインディングアップデートメッセージ(Binding update message))を含むパケットを、移動端末がホームエージェント装置50-1に送信していることから、登録要求電文(バインディングアップデートメッセージ(Binding update message))が有するシーケンス番号は、移動端末において生成されているものと解するのが妥当である。
また、該シーケンス番号は登録処理に用いられるものであるから、登録に関してのものであるといい得る。
してみると、引用発明は、本願発明と同様に、「前記登録に関して」、「シーケンス情報を生成すること」を含んでいるといえる。

(c) 引用発明は、「移動端末が、サービス形態の異なる移動通信網間を移動(ローミング)する際に生じるホームアドレスの変更をサポートし、公表された一つのアドレスで通信を可能とする移動管理方法」であることから、「モバイルデバイスのための通信方法」であるといえる。

以上から、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「 ドメインノードへの登録を開始すること;
前記登録に関して、シーケンス情報を生成すること、
を含むモバイルデバイスのための通信方法。」

また、本願発明と引用発明とは、次の点で相違する。
<相違点>
本願発明では、「シーケンス情報」が、「前記ドメインノードにメッセージが到達する順序が不正であることを前記ドメインノードが検出できるようにするための」ものであり、「前記ドメインノードとモバイルデバイスとの間の通信チャネルの前記登録を順序づけるものであり」、「前記ドメインノードとの順序正しい通信のため」用いられるのに対して、引用発明は「シーケンス情報」がこのように用いられるものであるのか記載されていない点。


6.当審の判断
引用文献2には、上記(カ)及び(キ)の摘示事項から、「ハンドオフ経路設定メッセージのシーケンスナンバーが既存のルータシーケンスナンバーエントリと比較される。ハンドオフ経路設定メッセージ中のシーケンスナンバーが既存のルータシーケンスナンバーエントリより大きい場合には、ハンドオフ経路設定メッセージがルータにストアされているものよりもより新しい情報要素を含むことを意味しており、ステップ424において、当該モバイルデバイスに係るルーティングテーブルエントリが更新される」なる事項、「モバイルデバイスがハンドオフされるたびに、モバイルデバイスは情報要素と共に送出されるシーケンスナンバーをインクリメントする。」なる事項、及び、「基地局BS9から送出されたルータR7に到達するリフレッシュ経路設定メッセージは、モバイルデバイス114によって開始されたハンドオフ経路設定メッセージのシーケンスナンバーフィールド値よりも小さいシーケンスナンバーフィールド値を有することになる。ルータR7は、リフレッシュ経路設定メッセージがちょうど受信したハンドオフ経路設定メッセージと同じ程度に新しくはない、ということを認識し、当該モバイルデバイスに対応するルーティングテーブルエントリを変更せずにリフレッシュ経路設定メッセージを転送する。よって、パケットルーピング、及びそれがもたらす望ましくない結果、は回避される」なる事項が記載されている。
また、引用文献3には、上記(ク)の摘示事項から、「移動ネットワーク内に複数の移動ルータ装置を設け、ホームエージェントにバインディングアップデート処理を行う移動ルータ装置を変更しても、最新のシーケンス番号を受け継いでバインディングアップデート処理ができるため、メッセージが最新の情報を含むことを保証することができ、ホームエージェントが前記情報を古い情報と判断して廃棄されるのを防ぐことができるという作用を有する」なる事項が記載されている。

そして、これらの記載事項から、以下の事項がいえる。

(1) 「ハンドオフ経路設定」や「バインディングアップデート処理」は、ホームエージェントと移動端末との間の通信経路、即ち、ホームエージェントと移動端末との間の通信チャネルの登録を行うことであるから、「ハンドオフ経路設定メッセージ」或いは「バインディングアップデート処理」のためのメッセージは、ホームエージェントと移動端末との間の通信チャネルの登録に関するメッセージであるといい得る。

(2) 「ハンドオフ経路設定メッセージ」或いは「バインディングアップデート処理」のためのメッセージが含むシーケンス番号は、ホームエージェントが該メッセージが最新のものであるか否かの検出を行い、最新のメッセージを古いものと判断して廃棄されるのを防ぐために用いられているとともに、ホームエージェントにメッセージが到達する順序が不正であることをホームエージェントが検出できるようにするためのものであるといい得る。
このため、該シーケンス番号はホームエージェントとの順序正しい通信のために用いられているといい得る。

(3) 「ハンドオフ経路設定メッセージ」或いは「バインディングアップデート処理」のためのメッセージが含むシーケンス番号は、「モバイルデバイスがハンドオフされるたびに、モバイルデバイスは情報要素と共に送出されるシーケンスナンバーをインクリメントする」ものであるから、該メッセージが生成されて送信される順序に付与されており、該シーケンス番号は、ホームエージェントと移動端末との間の通信チャネルの登録を順序づけるものであるといい得る。

(4) (1)?(3)の事項から、「ハンドオフ経路設定メッセージ」或いは「バインディングアップデート処理」のためのメッセージが含むシーケンス番号は、「前記ドメインノードにメッセージが到達する順序が不正であることを前記ドメインノードが検出できるようにするための」ものであり、「前記ドメインノードとモバイルデバイスとの間の通信チャネルの前記登録を順序づけるものであり」、「前記ドメインノードとの順序正しい通信のため」用いられているものであるといいえること。

引用発明は、「移動端末がサービス形態の異なる移動通信網間を移動(ローミング)する際に生じるホームアドレスの変更をサポートし、公表された一つのアドレスで通信を可能とする」ためものである。
そして、このためには、移動(ローミング)と変更されたホームアドレスとが正しい対応となっていること、即ち、ホームアドレスの変更を行うための登録に関するメッセージが最新の情報を含むことを保証する必要があることは明らかであり、該課題は、引用発明に内在する課題であるといい得る。
してみると、引用発明において、該課題を解決するために、引用文献2及び3に記載された事項を適用し、「シーケンス情報」が「前記ドメインノードにメッセージが到達する順序が不正であることを前記ドメインノードが検出できるようにするための」ものとし、「前記ドメインノードとモバイルデバイスとの間の通信チャネルの前記登録を順序づけるもの」とするとともに、「前記ドメインノードとの順序正しい通信のため前記シーケンス情報を用いる」ことは、当業者であれば容易になし得るものである。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2及び3に記載された事項から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。


7.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2014-08-18 
結審通知日 2014-08-19 
審決日 2014-09-04 
出願番号 特願2009-547387(P2009-547387)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04W)
P 1 8・ 536- WZ (H04W)
P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 紀之▲高▼橋 真之  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 吉田 隆之
佐藤 聡史
発明の名称 ネットワークベースモビリティ管理システムのためのメッセージ順序付け  
代理人 中村 誠  
代理人 福原 淑弘  
代理人 竹内 将訓  
代理人 井関 守三  
代理人 岡田 貴志  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 直樹  
代理人 砂川 克  
代理人 白根 俊郎  
代理人 佐藤 立志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 峰 隆司  
代理人 井上 正  
代理人 堀内 美保子  
代理人 幸長 保次郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ