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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1297120
審判番号 不服2013-24522  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-13 
確定日 2015-02-05 
事件の表示 特願2011- 11990「太陽電池セル及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月28日出願公開、特開2011- 86959〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年8月30日に出願した特願2006-233289号(以下「原出願」という。)の一部を平成23年1月24日に新たな特許出願としたものであって、平成25年8月7日付けで手続補正がなされたが、同年10月1日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年12月13日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に補正がなされたものである。

第2 平成25年12月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年12月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を、特許請求の範囲の限定的減縮を目的として下記の通りに補正したものである。
「【請求項1】
発電機能を有する半導体接合領域が一方主面側に形成された単結晶シリコン半導体基板を備える厚さが150?205μmの太陽電池セルであって、
少なくとも1つの端部の側面が、エネルギービーム加工により形成された分割溝の部分で割断して形成した側面であり、該側面が、前記エネルギービーム加工によるエネルギービーム加工領域と、前記割断による割断領域とから形成されており、前記エネルギービーム加工領域の深さが、太陽電池セルの厚みの35%未満でないことを特徴とする太陽電池セル。」

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下単に「特許法第17条の2」という。)第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

2 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された上記のとおりのものである。(「第2」[理由]「1」参照。)

3 引用刊行物
これに対して、原査定における拒絶の理由で引用した、原出願の出願前である平成17年9月2日に頒布された「特開2005-236017号公報 」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。ただし、下線は当審で付した。
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
この発明は、太陽電池セルの製造方法に関し、詳しくは、PN接合層が形成された半導体基板を分割して個々の太陽電池セル得るための方法に関する。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明による太陽電池セルの製造方法は、一方の表面側にPN接合層が形成され分割を要する半導体基板を加工ステージ上に位置決めし、位置決めされた半導体基板にレーザーを走査して半導体基板を局部的に溶融させることにより分割溝を形成し、分割溝を利用して半導体基板を分割し太陽電池セルを得る工程を備え、半導体基板を加工ステージ上に位置決めする前記工程は、半導体基板の一方の表面が加工ステージと対向するように加工ステージ上に位置決めする工程であり、位置決めされた半導体基板にレーザーを走査する前記工程は、半導体基板の他方の表面側から所望の分割線に沿ってレーザーを走査して他方の表面側に分割溝を形成する工程であることを特徴とする。
【0010】
この発明による太陽電池セルの製造方法において、半導体基板としては、例えば、一方の表面にPN接合層が形成された厚さ200?300μm程度のP型シリコン基板を用いることができる。
また、この発明による太陽電池セルの製造方法において、レーザーとしては、例えば、YAGレーザー(発振波長1.06μm)を用いることができる。
例えば、出力が1?100W程度、ビーム径が1?10mm程度のYAGレーザーを半導体基板上におけるビーム径が5?500μm程度となるようにフォーカスし、50?300mm/sec.程度のスイープ速度で分割線に沿って走査させることにより分割溝を形成することができる。
【0011】
1つの分割溝を形成するにあたって、レーザーの走査は1回でもよいし、複数回であってもよいが、レーザー走査による熱が半導体基板の一方の表面側に形成されたPN接合層(表面側からの深さは数μm程度)に達しないように注意する必要がある。
というのは、レーザー走査による熱がPN接合層に達した場合、接合部でのリークが発生し、得られた太陽電池セルの曲線因子(FF)が低下し、これに伴い最大出力(Pmax)も低下するからである。ダメージが大きい場合には、接合部の損傷につながり、開放電圧(Voc)や短絡電流(Isc)も低下しかねない。
なお、上記のレーザーの仕様は典型値であり、この発明で用いうるレーザーを限定するものではない。
例えば、YAGレーザー以外にも、各次YAG、CO2、KrF、ArF、XeCl等のレーザーを用いることができる。
【0012】
また、この発明による太陽電池セルの製造方法において、レーザーを走査する前記工程は、分割溝の深さが半導体基板の厚さの50?90%となるようにレーザーを走査する工程であることが好ましい。
というのは、分割溝の深さが半導体基板の厚さの50?90%程度となるようにレーザーを走査すれば、レーザーの走査による熱が半導体基板の一方の表面側に形成されたPN接合層に達することを防止でき、かつ、良好な分割特性が得られるからである。」
「【0020】
以下、実施例による太陽電池セルの製造方法についてより具体的に説明する。
まず、図1および図2に示されるように、半導体基板10(P型シリコン基板(厚さ300μm))の一方の表面10aに不純物を含む溶液を塗布するか、或いは、気相中から800?900℃程度で熱拡散させてN型の不純物拡散層12を形成し、PN接合層11を作り出す。
N型の不純物拡散層12が形成された一方の表面10aが後の太陽電池セル40(図7参照)における受光面となり、他方の面10bが後の太陽電池セル40における裏面となる。なお、受光面側には金属酸化物等からなる反射防止膜(図示せず)を形成しておくことが好ましい。
【0021】
次に、図3(a)に示されるように、半導体基板10の一方の表面10a側にグリッド状の受光面電極13を形成すると共に、図3(b)に示されるように、他方の表面10b側に裏面電極14を形成する。
これらの受光面電極13や裏面電極14は、真空蒸着法やスクリーン印刷法で形成できる。受光面電極13および裏面電極14の表面には、必要に応じてハンダ(図示せず)が被覆されてもよい。
【0022】
次に、図4に示されるように、受光面電極13が形成された半導体基板10の一方の表面10a(図3(a)参照)が加工ステージ20と対向するように半導体基板10を加工ステージ20上に真空吸着によって位置決めする。つまり、PN接合層11(図6参照)が形成されていない半導体基板10の他方の表面10bが加工ステージ20上で上を向いた状態となる。
【0023】
次に、図5に示されるように、半導体基板10の他方の表面側10bから、YAGレーザー(発振波長1.06μm)を発振するレーザー発振器30を用い、所望の分割線に沿ってレーザー31を走査し分割溝15を形成する(レーザースクライブ)。レーザー31の出力は12W、ビーム径は1.5mmで、半導体基板10上において数十μm程度となるようにフォーカスする。
レーザー31のスイープ速度を50?300mm/sec.に設定し、所望の分割線上を2?3回走査することにより分割溝15が形成される。スイープ速度を速く(200?300mm/sec.程度)し複数回分割線上をスイープすることで、1回のみの速度の遅いスイープと比較してレーザー切断面が平滑になるためより薄い半導体基板にもダメージが少ないレーザースクライブが可能となる。
【0024】
ここで、図6に示されるように、形成された分割溝15の深さDは200μmであり、半導体基板10の厚さT(300μm)の67%となっている。このため、上述の通り、PN接合層11に熱的なダメージが加わることなく、かつ、後の分割(ブレイク)工程で良好な分割が行なえるようになる。
なお、加工ステージ20上に位置決めされた半導体基板10は、受光面電極13に起因する凹凸が比較的大きいため、真空吸着によってはしっかり固定されておらず、その固定力は位置決め程度であるが、この発明では半導体基板10に対して物理的に非接触なレーザー31によって分割溝15を形成するため、位置決め程度の固定力で十分である。
その後、図7に示されるように、半導体基板10を分割溝15(図4参照)に沿って分割し、太陽電池セル40を得る。」
b 図面の記載
「【図5】


「【図6】


c 引用例記載の事項についての考察
引用例には、「半導体基板10の他方の表面側10bから、YAGレーザー(発振波長1.06μm)を発振するレーザー発振器30を用い、所望の分割線に沿ってレーザー31を走査し分割溝15を形成する(レーザースクライブ)」(【0023】)、「形成された分割溝15の深さDは200μmであり、半導体基板10の厚さT(300μm)の67%となっている。このため、上述の通り、PN接合層11に熱的なダメージが加わることなく、かつ、後の分割(ブレイク)工程で良好な分割が行なえるようになる」(【0024】)と記載されているから、引用例1には、「所望の分割線に沿ってレーザー31を走査し分割溝15を形成」した後に、「半導体基板10の分割(ブレイク)工程を有する」ことが記載されていると認められる。

c 引用例記載の発明
上記a及びbの記載並びに上記cの考察からすると、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「厚さ300μmのP型シリコン基板10の一方の表面10aに熱拡散させてN型の不純物拡散層12を形成し、PN接合層11を作り出し、受光面電極13及び裏面電極14を形成した太陽電池セルであって、
所望の分割線に沿ってレーザー31を走査し分割溝15を形成し、
その後、半導体基板10の分割(ブレイク)工程を有し、
形成された分割溝15の深さDは200μmであり、半導体基板10の厚さの67%となっている、
太陽電池セル。」

4 本件補正発明と引用発明の対比
ここで、本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「PN接合層11」、「P型シリコン基板10」は、本件補正発明の「発電機能を有する半導体接合領域」、「シリコン半導体基板」に相当する。
そうすると、引用発明の「厚さ300μmのP型シリコン基板10の一方の表面10aに熱拡散させてN型の不純物拡散層12を形成し、PN接合層11を作り出し、受光面電極13及び裏面電極14を形成した太陽電池セル」と本件補正発明の「発電機能を有する半導体接合領域が一方主面側に形成された単結晶シリコン半導体基板を備える厚さが150?205μmの太陽電池セル」とは、「発電機能を有する半導体接合領域が一方主面側に形成されたシリコン半導体基板を備える太陽電池セル」で共通する。
(2)引用発明の「レーザー31」は、本件補正発明の「エネルギービーム」に相当する。
また、引用発明は、「所望の分割線に沿ってレーザー31を走査し分割溝15を形成し、その後、半導体基板10の分割(ブレイク)工程を有」するものであるから、引用発明は、本件補正発明の「少なくとも1つの端部の側面が、エネルギービーム加工により形成された分割溝の部分で割断して形成した側面であり、該側面が、前記エネルギービーム加工によるエネルギービーム加工領域と、前記割断による割断領域とから形成されて」いる構成に相当する構成を有するものである。
(3)引用発明の「分割溝15の深さD」が、本件補正発明の「エネルギービーム加工領域の深さ」に相当する。

上記(1)乃至(3)の対比から、本件補正発明と引用発明は、
「発電機能を有する半導体接合領域が一方主面側に形成されたシリコン半導体基板を備える太陽電池セルであって、
少なくとも1つの端部の側面が、エネルギービーム加工により形成された分割溝の部分で割断して形成した側面であり、該側面が、前記エネルギービーム加工によるエネルギービーム加工領域と、前記割断による割断領域とから形成されている太陽電池セル。」
で一致し、以下a及びbの点で相違する。

(相違点)
a シリコン半導体基板が、本件補正発明は、単結晶であるのに対し、引用発明は、如何なる結晶性の基板か不明である点。
b 本件補正発明は、太陽電池セルの厚さが150?205μmであり、エネルギービーム加工領域の深さが、太陽電池セルの厚みの35%未満でないのに対し、引用発明は、P型シリコン基板10の厚さが300μmであり、形成された分割溝15の深さDは200μmであり、半導体基板10の厚さの67%となっている点。

5 当審の判断
以下、上記a及びbの相違点について検討する。
(aの相違点について)
太陽電池セルを形成するシリコン基板として単結晶のものを採用することは、周知技術(特開2004-31839号公報の【0008】参照。)であり、引用発明のP型シリコン基板を単結晶とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。
(bの相違点について)
太陽電池セルの厚さは、セルの強度等を考慮しながら必要に応じて適宜設計できるものであるから、引用発明の太陽電池セルの厚さを150?205μmの範囲内とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。
また、引用例には、「分割溝の深さが半導体基板の厚さの50?90%程度となるようにレーザーを走査すれば、レーザーの走査による熱が半導体基板の一方の表面側に形成されたPN接合層に達することを防止でき、かつ、良好な分割特性が得られるからである」(【0012】)、「形成された分割溝15の深さDは200μmであり、半導体基板10の厚さT(300μm)の67%となっている。このため、上述の通り、PN接合層11に熱的なダメージが加わることなく、かつ、後の分割(ブレイク)工程で良好な分割が行なえるようになる」(【0024】)と記載されており、これらの記載から、良好な分割を行うためには、半導体基板の厚さの50?90%程度、例えば67%の分割溝がよいことが読み取れるし、太陽電池セルの分割(ブレイク)を良好に行うためには、分割溝が深い方がいいことは、当業者であれば普通に想起し得ることである。
したがって、引用発明の太陽電池セルの厚さを150?205μmとし、太陽電池セルの良好な分割を行うために、分割溝の深さを太陽電池セルの厚みの35%未満でないようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

上記a及びbの相違点については上記のとおりであり、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用例の記載事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本件補正発明は、引用発明、引用例の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 本件補正についての補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年12月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年8月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの以下のものである。
「【請求項1】
発電機能を有する半導体接合領域が一方主面側に形成されたシリコン半導体基板を備える150?205μmの太陽電池セルであって、
少なくとも1つの端部の側面が、エネルギービーム加工により形成された分割溝の部分で割断して形成した側面であり、該側面が、前記エネルギービーム加工によるエネルギービーム加工領域と、前記割断による割断領域とから形成されており、前記エネルギービーム加工領域の深さが、太陽電池セルの厚みの35%未満でないことを特徴とする太陽電池セル。」

2 引用刊行物及び引用発明
原査定における拒絶の理由で引用した、原出願の出願前に頒布された刊行物及びその記載事項、並びに引用発明は、上記「第2」[理由]「3」に記載したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比及び判断
本願発明は、実質的に、本件補正発明の発明特定事項である「シリコン半導体基板」に関し、「単結晶」である構成を省いたものである。
ここで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「発電機能を有する半導体接合領域が一方主面側に形成されたシリコン半導体基板を備える太陽電池セルであって、少なくとも1つの端部の側面が、エネルギービーム加工により形成された分割溝の部分で割断して形成した側面であり、該側面が、前記エネルギービーム加工によるエネルギービーム加工領域と、前記割断による割断領域とから形成されている太陽電池セル。」
で一致し、上記「第2」[理由]「4」に記載したbの相違点で相違する。

そして、上記bの相違点に係る本願発明は、上記「第2」[理由]「5」「(bの相違点について)」で述べたとおり、引用発明及び引用例記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願発明は、引用発明及び引用例記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-26 
結審通知日 2014-12-02 
審決日 2014-12-15 
出願番号 特願2011-11990(P2011-11990)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 北川 清伸
土屋 知久
発明の名称 太陽電池セル及びその製造方法  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 徳田 佳昭  

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