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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1297145
審判番号 不服2012-16308  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-22 
確定日 2015-02-04 
事件の表示 特願2007-538571「データ処理システム及びデータ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月 4日国際公開、WO2006/046195、平成20年 5月29日国内公表、特表2008-518345〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成17年10月24日(パリ条約による優先権主張2004年10月28日、英国)の出願であって、平成23年3月25日付けで拒絶理由の通知がなされ、同年9月22日付けで手続補正書の提出がなされ、平成24年4月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年8月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において、平成26年5月23日付けで拒絶理由が通知され、同年8月5日付けで手続補正書の提出がなされたものである。



2.本願発明

本願の請求項8に係る発明は、平成26年8月5日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「データ処理システムであって、サーチ・タームを受け取るためのユーザ・インタフェース装置と、データストレージにアクセスするよう構成されたプロセッサであって、前記データストレージが少なくとも1つのサーチ可能要素を有しており、前記プロセッサは、前記少なくとも1つのサーチ可能要素内の前記サーチ・タームのプレフィックス及びサフィックスを検査し、サーチ可能要素の成分を前記検査に基づいて選択するよう更に構成されており、各成分が前記サーチ可能要素内の前記サーチ・タームのプレフィックス及び/又はサフィックス、並びに前記サーチ・タームを特定の閾値を上回る数だけ有しており、前記プロセッサは、前記成分のリストを作成するよう更に構成されており、前記リストが前記成分の生起の示標を有しているデータ処理システム。」



3.引用文献

(1)引用文献1について
平成26年5月23日付けの拒絶理由通知において引用された特開平9-218881号公報(以下、「引用文献1」という。)には、下記の事項が記載されている。

A.「【0011】
【発明の実施の形態および実施例】図1は、本発明の一実施例である追加検索語候補提示装置PS1を示すブロック図である。
【0012】追加検索語候補提示装置PS1は、制御部10と、検索語用メモリ11と、出現単語表用メモリ12と、追加検索語候補提示手段20とを有する。追加検索語候補提示手段20は、出現単語順位付け部21と、追加検索語候補選択部22と、追加検索語候補提示部23とを有する。
【0013】追加検索語候補提示装置PS1は、全文検索の対象になる文書全体をデータベースに登録し、所定の検索条件に関連する文書を上記データベースから取り出す文書検索装置において、追加すべき検索語の候補を提示する装置である。ここで、「所定の検索条件に関連する文書」は、「所定の検索語と同一の単語が含まれる文書」、「所定の検索語と同義の単語が含まれる文書」、「所定の検索語と送りがなが異なる単語が含まれる文書」である。また、上記の場合、所定の検索語とは、1つの検索語または複数の検索語のことである。
【0014】検索語用メモリ11は、所定の検索語を記憶する記憶部であり、2回目以降の検索において、上記所定の検索語を追加検索語とANDまたはORする場合に、その所定の検索語を取り出すために記憶させるものである。出現単語表用メモリ12は、図2に示す出現単語表T1を記憶する部分である。
【0015】制御部10は、所定の検索条件を用いた検索によって得られた文書中に存在する単語をピックアップする単語ピックアップ手段の例である。追加検索語候補提示手段20は、次回の検索時に追加すべき新たな検索語の候補として、上記ピックアップされた単語を提示する追加検索語候補提示手段の例である。」

B.「【0017】出現単語表T1は、ヒットした所定の文書に存在する全ての単語をピックアッップし、このピックアップされた各単語と、このピックアップされた各単語が存在する文書(ヒットした所定の文書に限る)の数とを対応させた表である。
【0018】つまり、所定の検索語に基づく検索によってヒットした文書中に、「ネットワーク」、「システム」等の単語が存在し、そのうちの「ネットワーク」という単語が含まれるヒット文書が10個あり、「システム」という単語が含まれるヒット文書が4つ存在している例が図2に示されている。」

C.「【0020】追加検索語候補提示手段20は、所定の検索語に対応する単語を追加検索語候補として提示する手段であり、出現単語順位付け部21と、追加検索語候補選択部22と、追加検索語候補提示部23とを有する。
【0021】出現単語順位付け部21は、出現単語を所定の方法で順位付けする部分であり、追加検索語候補選択部22は、この順位付けされた出現単語を所定の順序で所定数選択する部分であり、追加検索語候補提示部23は、この追加検索語候補選択部22が選択した出現単語を追加検索語候補として提示する部分である。」

D.「【0030】図7は、上記実施例における追加検索語候補提示動作(S10)を具体的に示すフローチャートである。
【0031】図7に示すフローチャートにおいて、ユーザからの追加検索語候補提示要求を制御部10が受けると(S11)、制御部10が出現単語表T1を作成する(S12)。そして、その出現単語を取り出し、順位付けする(S13)。順位づけの方法としては種々の方法が考えられるが、出現文書数の少ないものから順位づけする方法(第1の方法)や、出現文書数が中程度のものを絞り込むことがより有効であるとして、図3に示すグラフの関数に応じて、点数づけし(評価し)、その点数の高いものから順位づけする方法(第2の方法)等が考えられる。
【0032】このように順位づけされた出現単語の中から、所定数の出現単語を絞って追加検索語候補とするような追加検索語候補選択を行なう(S14)。この場合、適当な閾値を定め、この定められた閾値よりも低い順位の出現単語を、追加検索語候補から除去する。
【0033】このようにして残った出現単語を追加検索語候補として、出現文書数とともにユーザに提示する(S15)。ユーザは、この中から追加検索語を任意に選び出し、検索条件にAND条件として追加し(S3)、再検索を行なう(S4)。」

E.「【0037】次に、上記実施例をより具体的に説明する。
【0038】まず、ユーザは「計算機」という単語を最初の検索語として検索を行ない、その検索された文書数が当初の希望数よりも多かったとし、AND条件で新たな検索語を追加するために、追加検索語候補提示要求を出したとする。このときに、図2に示す出現単語表T1が制御部10によって与えられ、「出現単語順位づけ方法」として、「出現文書数の少ないものから順位づけする方法」を採用することとし、追加検索語候補選択部22の閾値として「4」を用いる(順位第4位までを抜き出す)ものとする。
【0039】ここで、要求を受けた制御部10は、出現単語表T1を調べ、結果として図5に示す順位づけされた出現単語を得る。
【0040】最後に、追加検索語候補選択部22において、図5に示すように、順位の上位4個の出現単語が残り、この上位4個の出現単語を追加検索語候補としてユーザーに提示する。この場合、その候補を表示装置等に表示することによって提示する。ユーザーは、提示された4個の追加検索語候補の中から適当なものを選び、この選ばれた追加検索語を検索条件に追加し、再検索を行なう。」

F.図2には、出現単語表として、出現単語毎に出現文書数(出現単語が存在する文書の数)を記載した一覧表が記載されている。

G.ここで、上記引用文献1の記載事項について検討する。
(あ)文書を検索するための構成について
上記Aには、「全文検索の対象になる文書全体をデータベースに登録し、所定の検索条件に関連する文書を上記データベースから取り出す文書検索装置」であること、「所定の検索条件に関連する文書」とは、「所定の検索語と同一の単語が含まれる文書」であることが記載されている。
よって、引用文献1には、「全文検索の対象になる文書全体をデータベースに登録し、所定の検索語と同一の単語が含まれる文書を上記データベースから取り出す文書検索装置」が記載されている。

(い)検索された文書から出現単語をピックアップする構成について
上記Aには、「制御部10は、所定の検索条件を用いた検索によって得られた文書中に存在する単語をピックアップする」とされ、上記(あ)の事項を踏まえると、前記「所定の検索条件を用いた検索によって得られた文書中」とは、「所定の検索語を用いた検索によって得られた文書中」ということができる。
また、上記Dには、「制御部10が出現単語表T1を作成する(S12)」、上記Bには、「出現単語表T1は、ヒットした所定の文書に存在する全ての単語をピックアッップし、このピックアップされた各単語と、このピックアップされた各単語が存在する文書(ヒットした所定の文書に限る)の数とを対応させた表である」ことがそれぞれ記載されている。
そして、上記Fには、「出現単語が存在する文書の数」を「出現文書数」とすることが記載されている。
よって、引用文献1には、「制御部は、所定の検索語を用いた検索によって得られた文書中に存在する全ての単語をピックアッップし、このピックアップされた各出現単語と出現文書数とを対応させた出現単語表を作成」することが記載されていると認められる。

(う)出現単語の順位付け構成について
上記Cには、「出現単語順位付け部21は、出現単語を所定の方法で順位付けする部分であり」、上記Dには、「その出現単語を取り出し、順位付けする(S13)。順位づけの方法としては種々の方法が考えられるが、出現文書数の少ないものから順位づけする方法(第1の方法)や、出現文書数が中程度のものを絞り込むことがより有効である」ことがそれぞれ記載されている。
よって、引用文献1には、「出現単語順位付け部は、出現文書数に基づいて出現単語を順位付け」することが記載されていると認められる。

(え)出現単語から検索語の候補を選択する構成について
上記Cには、「追加検索語候補選択部22は、この順位付けされた出現単語を所定の順序で所定数選択する部分であり」、上記Dには、「このように順位づけされた出現単語の中から、所定数の出現単語を絞って追加検索語候補とするような追加検索語候補選択を行なう(S14)。この場合、適当な閾値を定め、この定められた閾値よりも低い順位の出現単語を、追加検索語候補から除去する」、上記Eには、「追加検索語候補選択部22の閾値として「4」を用いる(順位第4位までを抜き出す)ものとする」ことがそれぞれ記載されている。
よって、引用文献1には、「追加検索語候補選択部は、閾値より上位の順位の出現単語を選択」することが記載されていると認められる。

(お)選択された検索語候補を提示する構成について
上記Cには、「追加検索語候補提示部23は、この追加検索語候補選択部22が選択した出現単語を追加検索語候補として提示する部分である」、上記Dには、「このようにして残った出現単語を追加検索語候補として、出現文書数とともにユーザに提示する(S15)」ことがそれぞれ記載されている。
よって、引用文献1には、「追加検索語候補提示部は、選択された出現単語を出現文書数とともに提示」することが記載されていると認められる。

以上から、上記A乃至G及び関連図面の記載に基づけば、引用文献1には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「全文検索の対象になる文書全体をデータベースに登録し、所定の検索語と同一の単語が含まれる文書を上記データベースから取り出す文書検索装置において、
制御部は、前記所定の検索語を用いた検索によって得られた文書中に存在する全ての単語をピックアッップし、このピックアップされた各出現単語と出現文書数とを対応させた出現単語表を作成し、
出現単語順位付け部は、前記出現文書数に基づいて前記出現単語を順位付けし、
追加検索語候補選択部は、閾値より上位の順位の前記出現単語を選択し、
追加検索語候補提示部は、前記選択された出現単語を前記出現文書数とともに提示する、
文書検索装置。」


(2)引用文献2について
平成26年5月23日付けの拒絶理由通知において引用された特開平7-28835号公報(以下、「引用文献2」という。)には、下記の事項が記載されている。

H.「【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の文書検索装置は、文書を記憶する文書記憶手段と、該文書記憶手段に記憶された文書より検索語を含む文書を検索する検索手段と、該検索手段により検索された前記検索語を含む文書より、該検索語に隣接する文字または文字列を抽出する抽出手段と、該抽出手段により抽出された文字または文字列に基づいて、前記検索手段により検索結果をソートするソート手段と、該ソート手段によってソートされた検索結果を表示する表示手段とを具える。」

I.「【0011】次に図3に示すフローチャートを参照して、本装置の動作を説明する。まず、ステップS1では、検索語が検索語保持部1に設定されているかどうかの判定を行なう。検索語が設定されるまでステップS1が繰り返される。検索語が検索語保持部1に設定されるとステップS2に移る。ステップS2では、マッチング処理部3で対象文書保持部2から文書を取り出し、検索語保持部1にある検索語と文書中の文字列とのマッチングを行なう。ステップS3では、マッチングの対象となる文書が残っているかどうかの判定を行なう。文書が残っている場合には、次の文書と検索語のマッチングを行なうためにステップS2が繰り返される。文書が残っていない場合は、ステップS4に移る。ステップS4では、マッチした文書に対して、接続文字獲得処理部4で検索語に続く接続文字の獲得を行なう。このとき、1つの文書の複数の位置に検索語が存在する場合は、そのすべての接続文字を獲得する。獲得した接続文字とその文書を文書・接続文字保持部5に保持して、ステップS5に移る。ステップS5では、接続文字についてソーティング処理部6を使って、検索結果のソーティングを行ない、ソーティング結果をソーティング結果保持部7に保持して、ステップS6に移る。結果のソーティングとは接続文字ごとに検索結果を分類し、分類結果を件数が多い順に並べる作業を指す。ステップS6では、検索結果表示部8で、ソーティング結果に従って検索結果の表示を行なう。例えば、検索語が対象文書に100回出現する場合、図6に示すように接続文字ごとに分類した表示を行なう。検索結果の表示を行なったら終了する。」

J.「【0013】2.上記実施例では、検索語に後続する接続文字について検索結果をソーティングする場合について説明したが、これに限定されるものでなく、検索語の前方に接続する文字などについて検索結果のソーティングを行なってもよいものである。
【0014】3.上記実施例では、接続文字を1文字とした場合について説明したが、これに限定されるものでなく、2文字以上の文字列や単語などについて検索結果のソーティングを行なってもよいものである。」

K.「【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、検索結果を検索語に続く接続文字についてソーティングし、ソーティング結果に従って検索結果を表示するようにしたので、検索結果から検索意図に本当に合致する文書を検索者が効率よく取り出すことができるという効果が得られる。」

L.図6には、検索結果表示部が表示する検索結果の表示例として、検索語「福岡」と、検索語「福岡」の接続文字「県」と、それらの組の件数が「50」であることが記載されている。

M.ここで、上記引用文献2の記載事項について検討する。
上記Hには、「文書検索装置」が、「該文書記憶手段に記憶された文書より検索語を含む文書を検索する検索手段と、該検索手段により検索された前記検索語を含む文書より、該検索語に隣接する文字または文字列を抽出する抽出手段と、該抽出手段により抽出された文字または文字列に基づいて、前記検索手段により検索結果をソートするソート手段」を有することが記載されている。
上記Iには、「文書検索装置」の処理として、接続文字獲得処理部4が「検索語に続く接続文字の獲得を行なう」こと、ソーティング処理部6が「接続文字ごとに検索結果を分類し、分類結果を件数が多い順に並べる」ことが記載されている。
上記Jには、接続文字として、「検索語に後続する接続文字」に「限定されるものでなく、検索語の前方に接続する文字」でもよいこと、「接続文字を1文字」に「限定されるものでなく、2文字以上の文字列や単語など」でもよいことが記載されている。
そして、上記I及びJに記載された「接続文字」は、上記Hに記載された「該検索語に隣接する文字」に相当するものであることは明らかである。

よって、上記H乃至M及び関連図面の記載から、引用文献2には、実質的に下記の事項が記載されていると認められる。

「検索意図に本当に合致する文書を検索者が効率よく取り出すことができるようにするために、文書検索装置において、記憶された文書より検索語を含む文書の検索を行い、検索された前記検索語を含む文書より、該検索語に隣接する単語の抽出を行い、抽出された単語の件数の多い順に、該検索語と該検索語に隣接する単語とそれらの組の件数を表示すること。」



4.対比

本願発明は、「サーチ・タームのプレフィックス及びサフィックス」を発明特定事項に含んでいるので、最初に、該「プレフィックス」及び「サフィックス」が、一般的な「接頭辞」及び「接尾辞」(例えば、「unbelievable」において、「un」がプレフィックス(接頭辞)であり「able」がサフィックス(接尾辞))を意味するものであるのか、それとも、そのような一般的な「接頭辞」及び「接尾辞」以外を意味するものであるのかを検討し、次に、本願発明と引用発明との対応関係について検討する。

(1)本願発明の「プレフィックス」及び「サフィックス」について
本願明細書の段落【0031】?【0032】には、「BACH」のプレフィックスの例として「Tebastian」が記載され、プレフィックスを含む成分例が記載された【表1】には、「BACH」のプレフィックスの例として「Richard」等が記載され、プレフィックス及びサフィックスをサーチタームと組み合わせた新たなサーチタームを記載した図3には、「BACH」のサフィックスの例として「HOME」及び「BIBLIOGRAPHY」が記載されている。
これらの本願明細書及び図面の記載から、本願発明の「プレフィックス」及び「サフィックス」には、一般的な「接頭辞」及び「接尾辞」を意味するものではなく、「プレフィックス」は「サーチ・ターム」の直前に存在する「単語」、「サフィックス」は「サーチ・ターム」の直後に存在する「単語」が少なくとも含まれるものであると解される。

(2)本願発明と引用発明との対応関係について
ア.引用発明の「所定の検索語」は、検索を行うために用いられるものであるから、本願発明の「サーチ・ターム」に相当している。また、引用発明において、該「所定の検索語」は、何らかのユーザインタフェースによって文書検索装置へ入力されるものであることは明らかである。
よって、引用発明も「サーチ・タームを受け取るためのユーザ・インタフェース装置」を有しているといえる。

イ.引用発明の「データベース」に登録されている文書は、「全文検索の対象」であることから、引用発明の「全文検索の対象になる文書」は、本願発明の「サーチ可能要素」に相当している。
よって、引用発明の「データベース」は、本願発明の「データストレージ」に相当し、「少なくとも1つのサーチ可能要素を有して」いるといえる。

ウ.引用発明の文書検索装置は、データベースから「所定の検索語と同一の単語が含まれる文書」を取り出すものであるところ、該文書検索装置はCPU等のプロセッサにより制御されるものであることは明らかであるから、引用発明の「文書検索装置」も、「データストレージにアクセスするよう構成されたプロセッサ」を有しているといえる。

エ.引用発明の「出現単語」は、「所定の検索語を用いた検索によって得られた文書中に存在する全ての単語」であるから、文書内に「所定の検索語」と共に存在している「単語」であるといえる。さらに、引用発明の「出現単語」は、「所定の検索語を用いた検索によって得られた文書」を検査することでピックアップされたものであるともいえる。
そして、上記(1)及び上記イの検討事項を踏まえると、本願発明と引用発明は、「少なくとも1つのサーチ可能要素内のサーチ・タームと共に存在している単語を検査」する構成を有している点で共通している。

オ.引用発明は、「閾値より上位の順位の出現単語を選択」するものであるところ、該「出現単語」は、所定の検索語を用いた検索によって得られた文書中に存在する「単語」であるから、文書の一部を構成する「成分」とも呼び得るものである。
そして、上記イ及びエの事項を踏まえると、本願発明と引用発明は、「サーチ可能要素の成分を検査に基づいて選択」する構成を有している点で共通している。

カ.本願発明の「成分のリスト」は、「成分の生起の示標を有している」とされているところ、本願明細書の【表1】には、各成分の生起の示標として、成分毎の要素の数が記載されている。
これに対して、引用発明では、選択された「出現単語」は、「出現文書数とともに提示」されるものであり、引用文献1の図5には、提示される選ばれた4個の出現単語と各出現単語毎の出現文書数のリストが記載され、また、引用発明の「出現文書数」は、「出現単語が存在する文書の数」であるから、本願発明の「生起の示標」に相当している。
よって、本願発明と引用発明は、「成分のリストを作成するよう更に構成されており、前記リストが前記成分の生起の示標を有している」とする構成を有している点で共通している。

キ.引用発明の「文書検索装置」は、データベースから文書を取り出し、また、該文書から出現単語のピックアップ等のデータ処理を行うものであるから、「データ処理システム」と呼び得るものである。


(3)本願発明と引用発明の一致点について
上記の対応関係から、本願発明と引用発明は、

「データ処理システムであって、サーチ・タームを受け取るためのユーザ・インタフェース装置と、データストレージにアクセスするよう構成されたプロセッサと、前記データストレージが少なくとも1つのサーチ可能要素を有しており、前記少なくとも1つのサーチ可能要素内の前記サーチ・タームと共に存在している単語を検査し、サーチ可能要素の成分を前記検査に基づいて選択し、前記成分のリストを作成するように構成されており、前記リストが前記成分の生起の示標を有しているデータ処理システム。」

の点で一致している。


(4)本願発明と引用発明の相違点について
本願発明と引用発明とは、下記の点で相違する。

(相違点1)
本願発明の「データストレージにアクセスするよう構成されたプロセッサ」は、「前記少なくとも1つのサーチ可能要素内のサーチ・タームと共に存在している単語を検査し、サーチ可能要素の成分を前記検査に基づいて選択」、及び、「前記成分のリストを作成」することを行うものであるが、引用発明の「データストレージにアクセスするよう構成されたプロセッサ」は、そのような処理を行うか定かではない点。

(相違点2)
本願発明では、「サーチ・タームと共に存在している単語」を「プレフィックス及びサフィックス」としているのに対し、引用発明ではそのような限定はなされていない点。

(相違点3)
本願発明の「成分」は、「各成分が前記サーチ可能要素内の前記サーチ・タームのプレフィックス及び/又はサフィックス、並びに前記サーチ・タームを特定の閾値を上回る数だけ有」するものとされているのに対し、引用発明の「成分」はそのようなものとはされていない点。



5.当審の判断

(1)相違点1について
引用発明は、上記4.(2)ウに記載したように、「データストレージにアクセスするよう構成されたプロセッサ」を有していると認められるものの、「前記少なくとも1つのサーチ可能要素内のサーチ・タームと共に存在している単語を検査」するのは「制御部」であり、「サーチ可能要素の成分を前記検査に基づいて選択」するのは「追加検索語候補選択部」であり、「前記成分のリストを作成」するのは「追加検索語候補提示部」とされている。
しかしながら、引用発明のような「文書検索装置」は、コンピュータにより実現されるものであり、コンピュータにおいてデータ処理を行うのは実際にはコンピュータ内のプロセッサであることを鑑みれば、引用発明における「制御部」、「追加検索語候補選択部」、「追加検索語候補提示部」の各処理は、「文書検索装置」内で「データストレージにアクセスするよう構成されたプロセッサ」により処理されているものと認められるので、相違点1は実質的な相違点とはいえない。


(2)相違点2について
文書検索装置において、検索意図に本当に合致する文書を検索者が効率よく取り出すことができるようにするために、
「記憶された文書より検索語を含む文書の検索を行い、検索された前記検索語を含む文書より、該検索語に隣接する単語の抽出を行い、抽出された単語の件数の多い順に、該検索語と該検索語に隣接する単語とそれらの組の件数を表示すること。」
は、上記3.(2)に記載したように、引用文献2に記載されている。
また、引用文献1の段落【0085】には、「本発明によれば、再検索によって適切な検索結果を得ることができ、したがって、ユーザは、本当に必要な情報を短時間にしかも容易に取得することができる」と記載されていることから、引用発明の選択された「出現単語」の提示は、ユーザにとって本当に必要な情報を取得するためのものといえる。
してみると、引用発明と引用文献2は、共にユーザにとって本当に必要な文書を取得するための情報を提示する「文書検索装置」であり、引用文献2に記載された「検索語に隣接する単語」は、検索語が含まれる文書中に存在する単語であるから引用発明の「出現単語」でもあるとともに、検索語の直前又は直後に存在する単語であるから、上記4.(1)に記載したように「プレフィックス」又は「サフィックス」と呼び得るものでもあると認められる。
よって、引用発明において、引用文献2に記載された事項を採用し、「出現単語」を「検索語に隣接する単語」に限定すること、即ち、相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。


(3)相違点3について
引用発明では、全ての「出現単語」を提示するわけではなく、閾値より上位の順位の出現単語が選択されて提示が行われ、これは「閾値より上位の順位の出現単語」ほどユーザにとって本当に必要な文書を取得するために有効であることを意味していると解される。
また、引用文献2には、上記(2)に記載したように、「抽出された単語の件数の多い順に、該検索語と該検索語に隣接する単語とそれらの組の件数を表示すること。」が記載され、ここで、件数の多い順に表示することは、「件数の多い」「該検索語と該検索語に隣接する単語」ほど、ユーザにとって本当に必要な文書を取得するために有効であることを意味していると解される。
してみると、引用発明に引用文献2に記載された事項を採用し、全ての「該検索語と該検索語に隣接する単語」を提示せず、件数が「特定の閾値を上回る数だけ有」する「該検索語と該検索語に隣接する単語」を「成分」として選んで提示すること、即ち、相違点3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。


(4)本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載事項から当業者が予測できる範囲のものである。



6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-28 
結審通知日 2014-09-02 
審決日 2014-09-22 
出願番号 特願2007-538571(P2007-538571)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩間 直純  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 仲間 晃
飯田 清司
発明の名称 データ処理システム及びデータ処理方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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