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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
管理番号 1297149
審判番号 不服2012-21207  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-26 
確定日 2015-02-04 
事件の表示 特願2011-133301「アナログモードで作動しているGPS装備無線装置の位置を見つける方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月8日出願公開、特開2011-247895〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本件出願」という。)は、1999年(平成11年)3月29日にアメリカ合衆国でされた特許出願に基づくパリ条約の優先権を主張して平成12年3月28日にされた国際特許出願(特願2000-608197号)の一部を、平成23年6月15日に新たな特許出願(外国語書面出願)としたものである。この特許出願の分割は、適法と認められるので、本件出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。
本件出願は、平成23年7月15日付けで外国語書面の翻訳文が提出され、同日付け手続補正書により特許請求の範囲についての補正がされ、平成24年3月21日付け手続補正書により特許請求の範囲についての補正がされた。そして、平成24年6月21日付けで拒絶査定がされ、同年同月26日に査定の謄本が送達された。
これに対して、平成24年10月26日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲についての補正がされた。
当審は、平成26年2月25日付けで拒絶の理由を通知し、請求人は、同年7月24日付け手続補正書により特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)をするとともに、同日付けで意見書(以下、単に「意見書」という。)を提出した。

第2 当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した拒絶の理由のうち、本件補正前の請求項1の記載に関するものは、以下のとおりである。

「この審判事件に関する特許出願は、下記に示すとおり、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1.請求項1
(1)請求項1に記載された「非同期時間源」は、発明の詳細な説明に記載されていないので、何を指しているのか明確でない。
段落0035の「受信機の内部GPS時計は“真”のGPS時間に正確に同期されない。したがって、受信機はサテライト信号が受信された“真”のGPS時間の正確なポイントを知ることができない。」という記載から判断して、「GPS衛星に搭載された時計と同期していない時計」という意味か。

(2)請求項1には、「非同期時間源から測られた測定時間を各距離測定値に割り当てること」と「大体のタイムスタンプを決定すること」とが別個の事項として記載されているが、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、両者がどのように区別されるのかを理解することができない。
まず、「非同期時間源から測られた測定時間を各距離測定値に割り当てること」における「非同期時間源」は、上記(1)で述べたとおり、何を指しているのか明確でないが、「GPS衛星に搭載された時計と同期していない時計」(以下、単に「同期していない時計」という。)を意味すると思われる。そして、「非同期時間源から測られた測定時間」における「測定」は、「遠隔局から少なくとも5つのサテライトの各々までの距離を測定すること」における「測定」を意味することが明らかであり、「時間」は、「時刻」の誤りと考えられるから、「非同期時間源から測られた測定時間」は、遠隔局から少なくとも5つのGPS衛星のそれぞれまでの距離の測定を行った時刻を、同期していない時計で測って得た値を意味する。そうすると、「非同期時間源から測られた測定時間を各距離測定値に割り当てること」は、遠隔局から少なくとも5つのGPS衛星のそれぞれまでの距離の測定を行った時刻を同期していない時計で測り、それによって得られた値を、当該距離の測定によって得られた少なくとも5つの距離測定値に割り当てることを意味することになる。
一方、「大体のタイムスタンプを決定すること」は、段落0042の「タイムスタンプとして一般的に知られている、サテライト距離測定がなされる大体の時間を記録すること」という記載や、段落0044の「遠隔局が時間の推定を持たないならば、遠隔局はタイムスタンプなしでこれらの距離測定値をWPF18に送ることができる。WPF18が…(略)…測定値を受け取るとき、WPF18は…(略)…タイムスタンプを測定値に割り当てるであろう。この実施例では、遠隔局からの測定値を受け取った後に、測定値のタイムスタンプがWPF18で行われるであろう。」という記載から判断して、GPS衛星までの距離の測定がなされた「大体の時刻」を、当該距離の測定によって得られた距離測定値に割り当てることを意味すると思われる。そして、「大体の時刻」は、同期していない時計で計った時刻を意味すると思われるから、「大体のタイムスタンプを決定すること」は、GPS衛星までの距離の測定がなされた時刻を同期していない時計で計り、それを当該距離の測定によって得られた距離測定値に割り当てることを意味することになる。
以上のとおりであるから、「非同期時間源から測られた測定時間を各距離測定値に割り当てること」と「大体のタイムスタンプを決定すること」とは、請求項1に別個の事項として記載されているにもかかわらず、意味内容が同じであり、両者を区別することができない。
仮に両者を合わせて一つの事項を表す趣旨だとすると、上記(1)で述べたことも含めて、「GPS衛星に搭載された時計と同期していない時計で測られた距離測定の時刻を各距離測定値に割り当てることにより、大体のタイムスタンプを決定すること」という意味か。この場合、請求項2及び5のそれぞれに記載された「前記測定時間」も、「前記距離測定の時刻」とするべきである。

(3)…(略)…

(4)請求項1に記載された「前記タイムスタンプ測定時間」は、これより前に「タイムスタンプ測定時間」が記載されていないので、何を指しているのか分からない。
上記(2)で述べたとおりであるとすると、「タイムスタンプ測定時間」は、「大体のタイムスタンプ」という意味か。

以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、明確でない。請求項1の記載を直接又は間接的に引用して記載された請求項2から7までのそれぞれに係る発明も、同様である。」

第3 本件出願に係る発明
1.本件補正前
本件補正前の請求項1から20までのそれぞれに係る発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1から20までのそれぞれに記載された事項によって特定されるものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された事項は、以下のとおりである。

「【請求項1】
ネットワーク時間を有し、無線リンクを採用している通信ネットワークで遠隔局の位置を見つけるために使用される方法であって、
遠隔局から少なくとも5つのサテライトの各々までの距離を測定すること、
非同期時間源から測られた測定時間を各距離測定値に割り当てること、
大体のタイムスタンプを決定すること、
前記大体のタイムスタンプのエラーを決定すること、
前記少なくとも5つのサテライトの各位置を決定すること、
無線位置決め機能(WPF)で前記遠隔局の位置を決定すること、
を含み、前記遠隔局の前記位置は前記少なくとも5つのサテライトまでの前記距離、前記距離測定値の各々に対応する前記タイムスタンプ測定時間、及び前記少なくとも5つのサテライトの各々の前記位置を使用して決定される、方法。」

2.本件補正後
本件補正により本件補正前の請求項11が削除されたので、請求項の数は19に減った。
本件補正後の請求項1から19までのそれぞれに係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1から19までのそれぞれに記載された事項によって特定されるものである。そして、本件補正後の請求項1に記載された事項は、以下のとおりである。下線は、補正箇所を示す。

「【請求項1】
ネットワーク時間を有し、複数の無線リンクを採用している通信ネットワークで遠隔局の位置を見つけるために使用される方法であって、
前記遠隔局が、前記遠隔局から少なくとも5つのサテライトの各々までの複数の距離を測定すること、
サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間を、前記複数の距離の各々に割り当てること、
前記遠隔局が、大体のタイムスタンプを決定すること、
前記少なくとも5つのサテライトの各々の位置を決定すること、
無線位置決め機能(WPF)が前記遠隔局の位置を決定すること、
を含み、前記遠隔局の前記位置は、前記少なくとも5つのサテライトの各々までの前記距離、距離測定値の各々に対応するタイムスタンプ測定時間、及び前記少なくとも5つのサテライトの各々の前記位置を使用して決定される、方法。」

第4 判断
本件補正後の請求項1の記載は、本件補正前の請求項1の記載について当審が通知した拒絶の理由を解消するものであるか否かについて、以下に判断を示す。

1.「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」について
(1)当審は、本件補正前の請求項1に記載された「非同期時間源」は、何を指しているのか分からないと指摘した(上記「第2」1.(1))。
これに対し、請求人は、本件補正前の請求項1に記載された「非同期時間源」及び「各距離測定値」を、それぞれ「サテライト時計と同期していない時刻」及び「前記複数の距離の各々」とする補正をした。
本件補正後の請求項1に記載された「前記複数の距離の各々」は、本件補正前の請求項1に記載された「各距離測定値」と同じものを指すと認められる。したがって、本件補正により、「前記複数の距離の各々に」は、「非同期時間源から測られた測定時間」に代えて、「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」を「割り当てる」ことになった。

(2)ここで、「サテライト時計と同期していない時刻」の「時刻」は、「時の流れにおけるある一瞬。時点。」(広辞苑第六版)の意味である。一方、「測定時間」の「時間」は、「時の流れの2点間(の長さ)。時の長さ。」(広辞苑第六版)の意味である。また、「測定時間」の「測定」は、「前記遠隔局が、前記遠隔局から少なくとも5つのサテライトの各々までの複数の距離を測定すること」における「測定」を意味することが明らかである。
なお、当審は、「測定時間」の「時間」について、「時刻」の誤りと考えられると指摘したが、請求人は、何の応答もせず、「測定時間」という記載を維持している。したがって、「測定時間」という記載に誤りはないと解する。

(3)そうすると、「測定時間」が「サテライト時計と同期していない時刻から測られ[る]」は、「測定」に関連する「時の流れの2点間の長さ」が、「サテライト時計と同期していない時刻から測られる」ことを意味する。
これを文字どおり解釈すれば、「測定」に関連する「時の流れの2点間の長さ」が、「時の流れにおけるある一瞬」である「サテライト時計と同期していない時刻」を起点にして「測られる」という意味になるかと思われる。
しかし、本件補正後の請求項1の記載からは、また、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「時の流れの2点間の長さ」の起点となる「サテライト時計と同期していない時刻」と、「時の流れの2点間の長さ」の終点となる時刻とが、「測定」との関係でどのように定められるのかを理解することができない。そのため、本件補正後の請求項1に記載された「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」は、その意味を理解することができない。

(4)請求人は、この点について、意見書の(2)で、「「非同期時間源」を「サテライト時計と同期していない時刻」と補正しましたので不明確は解消されるものと思料致します。」と述べるだけであるから、不明確がどのように解消されたと主張しているのか判然としない。

(5)請求人は、同じく意見書の(2)で、「本補正の根拠は明細書の段落[0035]の記載に基づいています。」と主張するので、検討する。
本件出願の明細書の段落0035の記載は、以下のとおりである。

「【0035】
注目されるべきは、通常のGPS受信機は、サテライト信号が受信機の内部GPS時計に関して受信される時間に注意する。しかしながら、受信機の内部GPS時計は“真”のGPS時間に正確に同期されない。したがって、受信機はサテライト信号が受信された“真”のGPS時間の正確なポイントを知ることができない。この状況は、本発明の譲受人に譲渡され、ここに引用文献として組み込まれた、1998年3月17日に出願された、“無線CDMAトランシーバの位置を決定するシステムと方法”と題する米国特許出願No.09/040,501にさらに記述され緩和される。」

この記載から、GPS受信機の内部GPS時計は、“真”のGPS時間に正確に同期されないことが分かる。そして、「したがって、受信機はサテライト信号が受信された“真”のGPS時間の正確なポイントを知ることができない。」ことになる理由は、GPSを利用して位置を測定する場合、「通常のGPS受信機は、サテライト信号が受信機の内部GPS時計に関して受信される時間に注意する。」と記載されているとおり、サテライト信号がGPS受信機で受信された時刻を測定する必要があるにもかかわらず、サテライト信号がGPS受信機で受信されたときにGPS受信機の内部GPS時計が指し示す時刻が、「“真”のGPS時間の正確なポイント」(つまり、サテライト時計が指し示す時刻)と一致しないからであると解される。そうすると、段落0035で問題にされているのは、要するに、サテライト時計に正確に同期されないGPS受信機の内部GPS時計では、サテライト信号がGPS受信機で受信された時刻を正確に測定することができないということである。このことから逆に、サテライト信号がGPS受信機で受信される時刻は、サテライト時計と同期していない時計(GPS受信機の内部GPS時計)で測定されることが分かる。
段落0035に記載されていると認められるのは、サテライト信号がGPS受信機で受信される時刻が、サテライト時計と同期していない時計で測定されることであり、「測定時間」が「サテライト時計と同期していない時刻から測られ[る]」ことではない。
したがって、段落0035の記載を参酌しても、本件補正後の請求項1に記載された「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」の意味を理解することができない。

2.「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間を、前記複数の距離の各々に割り当てること」と「大体のタイムスタンプを決定すること」との区別について
(1)当審は、本件補正前の請求項1に記載された「非同期時間源から測られた測定時間を各距離測定値に割り当てること」と「大体のタイムスタンプを決定すること」とについて、両者がどのように区別されるのかを理解することができないと指摘した(上記「第2」1.(2))。
これに対し、請求人は、本件補正前の請求項1に記載された「非同期時間源から測られた測定時間を各距離測定値に割り当てること」を「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間を、前記複数の距離の各々に割り当てること」とする補正をした。
また、請求人は、本件補正前の請求項1に記載された「大体のタイムスタンプを決定すること」を「前記遠隔局が、大体のタイムスタンプを決定すること」とする補正をした。この補正は、「大体のタイムスタンプを決定する」主体を「前記遠隔局」に限定するものであり、「大体のタイムスタンプを決定すること」の意味内容を変更するものではない。

(2)そうすると、補正後の請求項1に記載された「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間を、前記複数の距離の各々に割り当てること」と「前記遠隔局が、大体のタイムスタンプを決定すること」との区別について検討することになるが、上記1.でみたように、「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」は、その意味を理解することができないので、両者の区別について検討することもできない。

(3)請求人は、意見書の(2)で、「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」と「大体のタイムスタンプ」との関係について次のように主張する。

「「サテライト時計と同期していない時刻」は「大体のタイムスタンプ」と同様の意味を持ちますが、段落[0040]に記載されていますように遠隔局の位置を見つけるためには遠隔局は大体のGPS時間を認識している必要があります。このために段落0043に記載されていますように、タイムスタンプ(測定時間)を測定値(距離)に割り当てられます。」

しかし、以下に述べるとおり、請求人の主張は、採用することができない。

ア.まず、「「サテライト時計と同期していない時刻」は「大体のタイムスタンプ」と同様の意味を持ちます」という請求人の主張は、本件補正後の請求項1の記載に照らして不合理である。
すなわち、「サテライト時計と同期していない時刻」は、「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間を、前記複数の距離の各々に割り当てる」時点で決定されている。そうでないとすると、「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」も決定されていないことになり、「前記複数の距離の各々に割り当てる」ことができないからである。請求項1の記載によれば、その後に「前記遠隔局が、大体のタイムスタンプを決定する」ことになるが、ここで、請求人が主張するように、「大体のタイムスタンプ」が「サテライト時計と同期していない時刻」と同様の意味であるとすると、既に決定されている「サテライト時計と同期していない時刻」を再び「前記遠隔局が」「決定する」ことになって不合理である。

イ.次に、請求人の「段落[0040]に記載されていますように遠隔局の位置を見つけるためには遠隔局は大体のGPS時間を認識している必要があります。」という主張は、段落0040の記載と矛盾する。
本件出願の明細書の段落0040の記載は、以下のとおりである。

「【0040】
GPS受信機を使用する通常の無線通信ネットワークは、4つの未知数(x、y、z、t)を解くために4つのサテライトからの到着の時間(TOA)測定値を使用し、ここにtはユーザ端末時計における時間偏倚である。対照的に、ほとんどの地球基準ネットワークが未知数(x、y、z)を解くために到着の時間差(TDOA)を使用する。どちらの方法も、見つけられる遠隔局が大体のGPS時間を認識していることを必要とする。図7の方法700で示されるように、大体のGPS時間の遠隔局の知識が本発明の性能を高めるかもしれないが、本発明はそうしない。」

この記載からは、「到着の時間(TOA)測定値」を使用する方法も、「到着の時間差(TDOA)」を使用する方法も、「見つけられる遠隔局が大体のGPS時間を認識していることを必要とする。」のに対し、「本発明はそうしない。」ことが読み取れる。
すなわち、段落0040の記載によれば、本件出願に係る発明は、請求人の主張とは逆に、見つけられる遠隔局が大体のGPS時間を認識していることを必要としない。

3.「タイムスタンプ測定時間」について
(1)当審は、本件補正前の請求項1に記載された「前記タイムスタンプ測定時間」は、何を指しているのか分からないと指摘した(上記「第2」1.(4))。
これに対し、請求人は、本件補正前の請求項1に記載された「前記タイムスタンプ測定時間」を「タイムスタンプ測定時間」とする補正をした。

(2)しかし、「タイムスタンプ測定時間」は、以下に述べるとおり、依然として何を指しているのか分からない。
まず、本件補正後の請求項1には、「前記遠隔局が、前記遠隔局から少なくとも5つのサテライトの各々までの複数の距離を測定する」と記載されているから、「距離測定値の各々に対応するタイムスタンプ測定時間」における「距離測定値の各々」は、「遠隔局が」「測定する」「遠隔局から少なくとも5つのサテライトの各々までの複数の距離」を指していると認められる。
次に、本件補正後の請求項1には、「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間を、前記複数の距離の各々に割り当てる」と記載されているから、「距離測定値の各々に対応するタイムスタンプ測定時間」は、「距離測定値の各々に」割り当てられた「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」の意味かと思われる。
ところが、上記1.でみたように「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」それ自体の意味が明確でないことはおくとしても、本件補正後の請求項1には、「距離測定値の各々に対応する測定時間」ではなく、「距離測定値の各々に対応するタイムスタンプ測定時間」と記載されている。このように、「距離測定値の各々に」割り当てられた「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」の意味であることが明らかな「距離測定値の各々に対応する測定時間」ではなく、「距離測定値の各々に対応するタイムスタンプ測定時間」が記載されていることに加えて、本件補正後の請求項1には「前記遠隔局が、大体のタイムスタンプを決定する」と記載されていることも考え合わせると、「距離測定値の各々に対応するタイムスタンプ測定時間」は、単に「距離測定値の各々に」割り当てられた「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」を指すのではなく、「遠隔局が」「決定する」「大体のタイムスタンプ」にも関連付けられた何らかの量を指すものと思われる。
しかし、補正後の請求項1の記載からは、「距離測定値の各々に」割り当てられた「サテライト時計と同期していない時刻から測られた測定時間」と、「遠隔局が」「決定する」「大体のタイムスタンプ」とが、どのように関連付けられるのかを把握することができない。そのため、「距離測定値の各々に対応するタイムスタンプ測定時間」が何を指しているのかを理解することもできない。

(3)この点について、請求人は、意見書の(2)で「「前記タイムスタンプ測定時間」を「タイムスタンプ測定時間」と補正しましたので不明確は解消されるものと思料致します。」と述べるだけであるから、不明確がどのように解消されたと主張しているのか判然としない。

(4)請求人は、同じく意見書の(2)で、「本補正の根拠は明細書の段落[0035]の記載に基づいています。」と主張する。しかし、本件出願の明細書の段落0035の記載は、上記1.に示したとおりであり、「タイムスタンプ測定時間」に関係するものとは認められない。

4.判断のまとめ
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、依然として明確でない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-12 
結審通知日 2014-09-16 
審決日 2014-09-24 
出願番号 特願2011-133301(P2011-133301)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸次 一夫  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 酒井 伸芳
森 竜介
発明の名称 アナログモードで作動しているGPS装備無線装置の位置を見つける方法および装置  
代理人 岡田 貴志  
代理人 白根 俊郎  
代理人 野河 信久  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 中村 誠  
代理人 福原 淑弘  
代理人 堀内 美保子  
代理人 峰 隆司  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井関 守三  
代理人 竹内 将訓  
代理人 河野 直樹  
代理人 砂川 克  
代理人 蔵田 昌俊  

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