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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1297153
審判番号 不服2013-6576  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-10 
確定日 2015-02-04 
事件の表示 特願2008-554234「天井タイル及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月23日国際公開、WO2007/094895、平成21年 7月23日国内公表、特表2009-526929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年1月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:平成18年2月13日,米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年4月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、これと同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、以下に記載する「補正前」のものから、「補正後」のものに補正しようとする事項を含むものである(下線は補正前後で相違する箇所に当審で付与)。

(補正前:平成24年3月21日付けの手続補正書)
「【請求項1】
矩形状を有するとともに、2フィート×2フィート乃至5フィート×5フィートの公称寸法を有し、石膏及びセルロースファイバを含む石膏ボードから形成された天井タイルであって、
前記石膏ボードは、前記石膏及び前記セルロースファイバが、水中で均一に混合されてスラリーが形成され、前記スラリーからボードが形成され、前記ボードが加圧下に加熱された後に脱水され、所望のボード厚に圧縮され、前記セルロースファイバの空間内またはその周囲の隙間内で再水和され、再結晶され、乾燥されて形成され、
また前記石膏ボードは、その面に複数の穴を形成するように処理され、前記穴の全容積が、前記石膏ボードの重量を少なくとも10%だけ減少させるのに十分であるとともに、前記石膏ボードによって示されるノイズ低減係数を、穴が無い同じ組成の石膏ボードにおいて見出されるノイズ低減係数を越えるように高めたことを特徴とする天井タイル。」

(補正後)
「【請求項1】
矩形状を有するとともに、[2フィート×2フィート]乃至[5フィート×5フィート]の公称寸法を有し、石膏及びセルロースファイバを含む石膏ボードから形成された天井タイルであって、
前記石膏ボードは、前記セルロースファイバを8?30重量%含み、前記石膏とで少なくとも90重量%となる組成の固体成分を水に加えてスラリーとし、前記スラリーからボードが形成され、前記ボードが加圧下に加熱された後に脱水され、所望のボード厚に圧縮され、前記セルロースファイバの空間内またはその周囲の隙間内で再水和され、再結晶され、乾燥されて形成され、
前記石膏ボードの面に、全容積で前記石膏ボード重量を10?20%減少させるに等しい容積の複数の穴が形成されて、ノイズ低減係数が高められたことを特徴とする天井タイル。」

2 補正の適否の判断(新規事項)
(1)本件補正は、「スラリー」の構成要素となる「石膏」及び「セルロースファイバ」の重量%について、何ら規定しないものから、「前記セルロースファイバを8?30重量%含み、前記石膏とで少なくとも90重量%となる組成の固体成分を水に加えてスラリー」と、すなわち、水を加える前の「固体成分」に対して、「セルロースファイバを8?30重量%」含み、また、「石膏とで少なくとも90重量%」となるものに補正しようとするものである。

ここで、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のうちの、明細書の段落【0012】をみると、「石膏に対するセルロースファイバの比率は約8%?約30%であり、好ましくは石膏の各相補体に対するセルロースファイバの重量比は8%?15%である。セルロースファイバおよび石膏は、好ましくは、タイル10または後述する構造ボードを製造するための完成ボードの乾燥固体の少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも95%を構成する。」との記載はある。
上記箇所には「セルロースファイバの比率は約8%?約30%」との記載はあるが、これは「石膏」に対する比率であって、「固体成分」に対するものではないから、上記箇所には、水を加える前の「固体成分」に対して、「セルロースファイバを8?30重量%」含み、との点が記載されているとはいえない。
また、当初明細書等のうちの特許請求の範囲の【請求項15】をみると、「固体の少なくとも90%が約8%?約30%セルロースファイバであり、それぞれの相補体が石膏から成るような希釈水スラリー中の石膏を加圧下で焼成するステップと」との記載はある。
上記箇所には「約8%?約30%セルロースファイバ」との記載はあるものの、「約8%?約30%」が、どのようなものに対する割合を表しているの不明であるから、上記箇所には、水を加える前の「固体成分」に対して、「セルロースファイバを8?30重量%」含み、との点が記載されているとはいえない。
さらに、当初明細書等の他の個所をみても同様である。
ところで、審判請求人は、審判請求書の3.(1)において「本審判請求書と同時に提出した手続補正書により、請求項1、6、13の文中および後段を、明細書段落〔0006〕、〔0007〕、〔0016〕、〔0021〕及び請求項13の記載事項に基づいて、「石膏ボードの組成」と「穴の全容積」をそれぞれ限定する補正を行う・・・」と主張している。
(上記明細書段落〔0016〕、〔0021〕については、当初明細書の段落の【0012】【0017】に対応するが、〔0006〕、〔0007〕については、当初明細書において対応する段落ない。また上記請求項13は、当初の【請求項15】に対応する。)
しかしながら、上記段落及び請求項には、水を加える前の「固体成分」に対して、「セルロースファイバを8?30重量%」含み、また、「石膏とで少なくとも90重量%」となるものにするという点については、記載されていないので、出願人の意見を採用することができない。
そうすると、水を加える前の「固体成分」に対して、「セルロースファイバを8?30重量%」含み、また、「石膏とで少なくとも90重量%」となるものにするという補正事項は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないので、第17条の2第3項の規定に違反している。

3 むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1(補正前:平成24年3月21日付けの手続補正書)」に記載したとおりのものと認める。

2 引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平8-66985号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同じ。)

(ア)「【請求項14】 実質的に石膏と、セルロースフアイバと、軽量凝結材料と、結合剤とを含み、乾量固形分%でセルロースフアイバが少なくとも約13重量%含ませられ、石膏の多部分およびセルロースフアイバの少部分が粉砕され石膏ボードの形態に作成されてなるミネラルウールを含まない湿潤された音響タイル配合物。」

(イ)「【請求項31】 実質的に石膏と、セルロースフアイバと、軽量凝結材料と、結合剤とを含み、石膏およびセルロースフアイバの少なくとも一部が石膏およびセルロースフアイバの希釈スラリを圧力下で焼成することにより製造された複合材料の形態で作成されてなるミネラルウールを含まない乾燥音響タイル。」

(ウ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は天井用の音響タイルやパネルの製造に有用な音響タイル配合物に関する。また本発明は特に通常音響天井タイルに存在するミネラルウールの全てあるいは一部と交換可能な石膏・セルロースフアイバ配合物に基づく音響タイル配合物に関する。更に本発明はまた音響天井タイルやパネルの製造するための水・フエルテイング工程に使用される新規な石膏・セルロースフアイバ・軽量凝結材料でなる配合物に関する。」

(エ)「【0004】 1994年6月14日付けで特許された米国特許第5,320,677号には複合材料およびその製造法を開示しており、この場合粉砕された石膏がセルロースフアイバの存在下で希釈スラリ内で圧縮され焼成される。未焼成の粉砕石膏およびセルロースフアイバは十分な水と共に混合されて希釈スラリが作成され、このスラリは圧力下で加熱されて石膏が焼成され、硫酸カルシウムアルフア半水和物に変換される。この結果共に焼成された材料が硫酸カルシウム結晶と物理的に絡み合うセルロースフアイバとなる。この絡み合いにより、硫酸カルシウムとセルロースフアイバとが良好に結合される上、アルフア半水和物が次に再水和化されて2水和物(石膏)が得られる。
【0005】
共に焼成された石膏・セルロースフアイバ材料は乾燥され、その直後冷却されて安定し、再水和可能なアルフア半水和物配合物が得られ、後工程での使用が可能にされる。一方、共に焼成された材料は再水和に不必要の過度の水が分離され、複合粒子を所望の形状にし、この粒子を再水和化して硬化され、安定化された石膏・セルロースフアイバ複合材料にすることにより、直接使用可能な製品に変換し得ることになる。
【0006】ミネラルウール音響タイルは顕著な多孔性を示しており、これは良好な吸音性を与えるために必要である。また先行技術(米国特許第3,498,404号、第5,013,405号および第5,047,120号)には、発泡パーライトのようなミネラル充填剤が配合物内に含まれて吸音特性を向上し重量を軽量化する構成が開示されてはいる。」

(オ)「【0010】
【実施例】本発明による音響タイル配合物は置換物としてミネラルウールを一部あるいは全部を含み水・フエルテイング工程を用いて天井タイルまたはパネルを製造する石膏・セルロースフアイバ配合物に基づく。このとき石膏およびセルロースフアイバの外に配合物には軽量凝結材料ないしは結合剤も含ませることもでき、更にクレー、凝集剤、界面活性剤のような他の添加剤も通常音響天井タイル配合物に含ませることができる。且つ上述した如く、配合物にはある程度のミネラルウール(少量)が含まれるが、本発明による配合物を用いてミネラルウールを含まない音響タイルまたはパネルが作製可能にする。」

(カ)「【0016】本発明に用いる好適なセルロースフアイバ源は石膏・セルロースフアイバの複合材料であり、これは米国特許第5,320,677号に開示されると同様に共に焼成され得る。以下に開示するように、焼成されていない石膏およびウツドフアイバあるいはペーパーフアイバは十分な水と混合されて希釈スラリが形成され、このスラリは圧力下で加熱され、石膏が焼成されて更にアルフア硫酸カルシウム半水和物に変換される。この結果得られる複合材料はセルロースフアイバおよびセルロースフアイバと絡み合わされた硫酸カルシウム結晶からなる。複合材料が乾燥され、その直後に冷却されて安定せしめられ、再水和可能な硫酸カルシウム半水和物が得られる、若しくは複合材料スラリは音響タイルを製造する際直接使用可能である。共に焼成される石膏・セルロースフアイバ複合材料を使用する場合マツト固形分を多く保持し、湿潤ラツプ強度の良い音響タイル配合物が与えられるが、長く強いウツドフアイバが使用されるときはペーパーフアイバ(新聞印刷用紙)と物理的に混合される石膏で作られたタイルより脱水が緩徐であり、切断がより困難であることが判明している。」

(キ)「【0027】石膏およびウツドフアイバが15%固形分の稠度で反応器内で共に焼成された。この焼成は米国特許第5,320,677号に開示される方法に従つて実行される。共焼成後に複合材料を真空減圧し、その後複合材料を十分に水和化して硫酸カルシウム2水和物(石膏)にしその後120°F(約49℃)で夜通し乾燥して一定重量にすることにより過度の水が複合材料から除去され得た。真空減圧により過度の水を除去した後複合材料が30分間250°F(約121℃)で直ちに乾燥されて水和化を避け、この後120°F(約49℃)で夜通し一定重量になるまで乾燥された点を除き、別のバツチの石膏・ウツドフアイバを上述したように共に焼成した。この複合材料では硫酸カルシウムが半水和物状であつた。乾燥後、共に2水和物および半水和物状の石膏・ウツドフアイバをツインシエルブレンダ内で分解されその後音響タイル配合物に入れた。」

(ク)「【0031】湿潤マツトは600°F(316℃)で30分間の間オーブン内で乾燥され、その後オーブン温度は350°F(約177℃)まで下げられ、タイルは更に90分間の間乾燥された。乾燥前に、内部の石膏を焼成することなく湿潤マツトが乾燥できるかどうかを決めるテストが行われた。マツトは上述したように石膏を焼成して半水和物あるいは無水和物にすることなくオーブン内で乾燥できることが決定された。」

(ケ)上記(ア)には、「石膏の多部分およびセルロースフアイバの少部分が粉砕され石膏ボードの形態に作成されてなるミネラルウールを含まない湿潤された音響タイル配合物 」が示されており、この「音響タイル配合物」は、上記(ウ)に示されているとおり「天井用の音響タイル」「の製造」に用いられるものである。また、上記(オ)にも「本発明による配合物を用いてミネラルウールを含まない音響タイルまたはパネルが作製可能にする。」と示されている。そうすると、引用例1には、石膏の多部分およびセルロースフアイバの少部分が粉砕され石膏ボードの形態に作成されてなるミネラルウールを含まない湿潤された音響タイル配合物を使用して製造される天井用の音響タイルが、実質的に記載されているといえる。

上記の記載事項(ア)?(オ)、(ケ)を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「石膏の多部分およびセルロースフアイバの少部分が粉砕され石膏ボードの形態に作成されてなるミネラルウールを含まない湿潤された音響タイル配合物を使用して製造される天井用の音響タイル」


3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「天井用の音響タイル」は、本願発明の「天井タイル」に相当する。
また、引用発明の「石膏の多部分およびセルロースフアイバの少部分が粉砕され石膏ボードの形態に作成されてなるミネラルウールを含まない湿潤された音響タイル配合物」は、本件発明の「石膏及びセルロースファイバを含む石膏ボード」に相当する。
また、引用発明の「を使用して製造される」は、当該記載の後に完成品を示すとともに、当該記載前において完成品をつくるための材料を示す語句であるので、この「を使用して製造される」は、本願発明の「から形成された」に相当する。


そうすると、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「石膏及びセルロースファイバを含む石膏及びセルロースファイバを含む石膏ボードから形成された天井タイル」

(相違点1)
天井タイルが、本願発明では、矩形状を有するとともに、2フィート×2フィート乃至5フィート×5フィートの公称寸法を有するものであるのに対して、引用発明では、前者のような形状及び公称寸法有するものであるかどうか不明である点。

(相違点2)
石膏ボードが、本願発明では、石膏及びセルロースファイバが、水中で均一に混合されてスラリーが形成され、前記スラリーからボードが形成され、前記ボードが加圧下に加熱された後に脱水され、所望のボード厚に圧縮され、前記セルロースファイバの空間内またはその周囲の隙間内で再水和され、再結晶され、乾燥されて形成されるものであるのに対し、引用発明では、そのように形成されるかどうか不明である点。

(相違点3)
石膏ボードが、本願発明では、その面に複数の穴を形成するように処理され、前記穴の全容積が、前記石膏ボードの重量を少なくとも10%だけ減少させるのに十分であるとともに、ノイズ低減係数を、穴が無い同じ組成のものにおいて見出されるノイズ低減係数を越えるように高めたものであるのに対して、引用発明では、そのような構成が不明である点。


4 判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
矩形状の天井タイルは、例示するまでも無く従来より周知であり、また天井タイルとして、どのような寸法のものとするかは、天井全体の大きさ、形状に応じ適宜選択しうる設計事項である。
そうすると、天井タイルの形状及び公称寸法を、相違点1に係る本願発明のように、矩形状とするとともに、2フィート×2フィート乃至5フィート×5フィートの公称寸法とすることは、当業者であれば適宜なし得る事項である。

(相違点2について)
引用例1の(カ)には、音響タイル配合物の形成過程において、「石膏およびウツドフアイバ」が「十分な水と混合されて希釈スラリが形成され、このスラリは圧力下で加熱され」る点、「石膏が焼成されて更にアルフア硫酸カルシウム半水和物に変換される」点、「複合材料はセルロースフアイバおよびセルロースフアイバと絡み合わされた硫酸カルシウム結晶からなる」点、及び「複合材料が乾燥され、その直後に冷却されて安定せしめられ、再水和可能な硫酸カルシウム半水和物が得られる」点が示されている。また「長く強いウツドフアイバが使用されるときはペーパーフアイバ(新聞印刷用紙)と物理的に混合される石膏で作られたタイルより脱水が緩徐であり・・・」との記載もあるように、上記の作成過程において「脱水」がなされる点も示唆されている。
すなわち、引用例1の(カ)には、音響タイル配合物の作成過程において、石膏及びセルロースファイバを含む材料から、スラリーが形成され、このスラリーを加圧下に加熱すること、乾燥すること、脱水がなされることが示されているとともに、この作成過程において、「硫酸カルシウム結晶」、「再水和可能な硫酸カルシウム半水和物」が得られることが示されている。
そうすると、引用例1には、本願発明の「石膏及びセルロースファイバが」「混合されてスラリーが形成され」る点、「加圧下に加熱され」る点、「脱水され」る点、「乾燥され」る点が示されているといえるとともに、引用発明の音響タイル配合物を形成する過程においても、「セルロースファイバの空間内またはその周囲の隙間内で再水和され、再結晶され」ていることは明らかである。
また、石膏及びセルロースファイバを含むスラリーを形成する際に水中で均一に混合することは、周知技術であり、石膏ボードを形成するに当たって所望のボード厚に圧縮することは、当然、当業者が行いうる事項である。
そうすると、引用発明に引用例1に記載された事項及び周知技術を適用することにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

なお、引用例1の(カ)、(キ)で引用している米国特許第5,320,677号(対応する日本国特許文献は、特許第3376429号公報(当該公報の【特許請求の範囲】、第1頁第1欄第13行-第2頁第3欄第1行、第4頁第8欄第7行-第5頁第10欄第38行等))にも、石膏ボードが、スラリーを加圧下に加熱された後に脱水され、所望の製品の厚さにされ、再水和され、再結晶され、乾燥されて形成される点が示されており、石膏ボードの、本願発明と同様の形成過程をみることができる。

(相違点3について)
石膏ボードの面に穴を複数形成することは、特開昭58-117156号公報、米国特許第6675551号明細書、米国特許第2668123号明細書、特開2001-132132号公報等に記載されているように周知技術であるから、引用発明に上記周知技術を適用して、石膏ボードの面に、穴を複数形成することは、当業者であれば容易になし得ることである。
そして、天井ボードの分野において、軽量化は周知の課題であり、穴を複数形成すれば結果的に軽量化が図れることは明らかである。また、穴を複数形成し、体積を減少させることは、上記米国特許第6675551号明細書(第1欄第11-13行、第3欄第8-19行、第4欄第48-63行、第5欄第22行ー第6欄第3行、第6欄第12-17行)、米国特許第2668123号明細書等に記載されているように周知技術にすぎない。
そうすると、引用発明の石膏ボードの面に、穴を複数形成するに際して、吸音効果と強度面を考慮して前記穴の全容積が、前記石膏ボードの重量を少なくとも10%だけ減少させるのに十分なものとすることは、前記周知技術を考慮し、適宜なし得る事項である。
そして、石膏ボードに複数の穴を形成すれば、前記石膏ボードによって示されるノイズ低減係数を、穴が無い同じ組成の石膏ボードにおいて見出されるノイズ低減係数を越えるように高められることは通常技術常識でもある。
したがって、引用発明に周知技術を適用することにより、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明による効果も、引用発明、引用例1に記載された事項及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。


5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用例1に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?17に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-11 
結審通知日 2014-09-16 
審決日 2014-09-24 
出願番号 特願2008-554234(P2008-554234)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
P 1 8・ 561- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渋谷 知子  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 西田 秀彦
住田 秀弘
発明の名称 天井タイル及びその製造方法  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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