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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1297154
審判番号 不服2013-6577  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-10 
確定日 2015-02-04 
事件の表示 特願2005-123289「歪みを制御したIII族窒化物発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月 4日出願公開、特開2005-311374〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成17年4月21日(パリ条約による優先権主張2004年4月21日、米国)の出願であって、平成23年5月20に及び平成24年7月10日に手続補正がなされ、同年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年4月10日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされた後、当審において、平成26年3月14日付けで拒絶理由が通知され、同年6月19日に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成26年6月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項7に係る発明は次のとおりのものである。

「III族窒化物発光装置であって、
核生成領域と、
前記核生成領域上に形成された格子定数a_(1)を有する基部領域と、
前記基部領域の上に重なり、n型領域とp型領域の間に配置されたInGaNである発光層と、
を含み、
前記基部領域の厚みは、0.5?5μmであり、
前記発光層は、8%よりも大きい平均InN組成を有し、ここで平均InN組成はIII族窒化物全体を100%としたときのInNの組成比であり、
前記発光層と同じ組成を有する弛緩した自立層が、格子定数a_(2)を有し、
a_(1)に対するa_(2)の比率は、1と1.01の間であり、
前記基部領域は、AlInGaN層を含む、
ことを特徴とする装置。」(以下「本願発明」という。)

なお、請求項7における「格子定数a1を有する基部領域」は、「格子定数a_(1)を有する基部領域」の誤記と認められるので、上記のとおり認定した(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

3 刊行物の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2000-58920号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある。

(1)「【請求項1】 核形成層と、
前記核形成層上に成長させた厚いInGaN層と、
前記厚いInGaN層上に形成した活性層と、
を備えることを特徴とする半導体。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は半導体分野に関する。より詳細には、この発明は青色発光素子において使用することができる第III-V族窒化物半導体膜に関する。
【0002】この発明は、発光ダイオード(LED)及びダイオードレーザを含む短波長可視光発光光電素子を形成するために使用することができる基板上に形成されたIII-V族窒化物膜を提供するものである。
【0003】この発明は、青色、緑色、あるいは均一赤色発光のための適したバンドギャップを提供する、厚いInGaN層上に発光デバイスへテロ構造を成長させるための方法を提供するものである。
【0004】この発明は格子のずれを防ぐ安定なInGaN構造を提供するものである。
……
【0007】光電素子の性能は、基板上に形成されたIII-V族窒化物膜の品質に依存する。III-V族窒化物膜の重要な構造特性は、各層間の格子のずれであり、発光の品質に影響する。特に、異なる材料間で起こる格子のずれにより、転位、クラック、あるいは合金の不均一性などの結晶欠陥が生じることがあり、これにより材料の光電品質が低下する。」

(3)「【0010】これまでのところ、そのような高In量のInGaN合金をGaN上で成長させるのは、金属-有機化学気相成長(MOCVD)などの従来の技術を用いては、不可能ではないが、困難であった。とりわけ、これらの従来の技術を用いる場合、InGaN合金活性領域は偏析する傾向がある。インジウム量が増加すると発光波長がより長くなり、InGaN合金は不安定になる。不安定になると、InGaN合金はIn-リッチ領域及びGa-リッチ領域に分離するあるいは偏析し、そのためInGaN合金組成が均一でなくなり、それにより活性領域のバンドギャップエネルギーも均一でなくなる。」

(4)「【0014】GaNのバンドギャップは3.4eVであり、InNのバンドギャップは1.9eVであるので、前記従来のLED構造200において青色発光を得るためには、約30%のIn組成を有するIII-V族合金が必要である。しかしながら、GaN及びInNは非常に大きな格子のずれを有するので、高In量のInGaN合金の相分離を引き起こすことがある。このように、これまでは、従来の成長技術を用いて、優れた光電品質を有する、In量が20%を超えるInGaN合金を形成するのは大変困難であった。このように、III-V族窒化物層上に成長させたInGaNを用いた、有効な純青色、緑色、または赤色発光構造を作製するのは、非常に困難であることがわかっている。」

(5)「【0015】
【発明が解決しようとする課題】発明者らは、これらの問題は合金の偏析を引き起こすこともあるGaNとInN間の10%を超える格子のずれにより起こることを見出した。このように、均一合金のxの量が20%よりも高いIn_(x)Ga_(1-x)N合金は、MOCVDなどの従来技術を用いて達することは困難である。
【0016】このように、前記従来構造の問題を避けるように、InGaNを他のIII-V族窒化物と共に使用するのは好都合であろう。」

(6)「【0017】
【課題を解決するための手段】このように、この発明は厚いInGaN層を組み込んだ新規半導体構造を提供する。本発明の改良層構造では、転位フィルタ及び側面のn-コンタクト層の両方として、厚いInGaN層が通常デバイス構造に組み入れられている厚いGaN層にとって代わる。厚いInGaN層を蒸着させると、デバイスヘテロ構造の成長のために使用される典型的なGaNテンプレートに比べ大きな格子パラメータの確立が可能となる。その結果、厚いInGaN層上に成長させた高インジウム量のヘテロ構造活性領域では、従来のGaN上に成長させた高インジウム量のへテロ構造に比べ、ずれ歪みが小さくなる。そのため、デバイスは合金偏析による構造劣化を受けにくくなる。このように、厚いInGaN構造により、改善された構造特性及び光電特性を有する高インジウム量の活性領域の成長が可能となる。InGaN合金の偏析に関する障害を克服することにより、InGaN層の組成の不均一性が改善され、そのため青色、緑色、均一赤色LEDのスペクトル発光がより純粋なものとなる。」

(7)「【0022】
インジウム量が約20%までの比較的偏析しないInGaN膜は厚いGaN上に成長させることができるが、インジウム量が約30%の厚いInGaN層上にInGaN膜を成長させることによりインジウム量を例えば50%に拡大させることができる。というのは、格子のずれの大きさが同等であるからである。InGaN活性層330はこのように高インジウム量へテロ構造活性量域であり、GaN上に直接成長させたInGaN膜に比べ、格子のずれ歪みが小さい。格子のずれを減少させることにより、InGaN合金の相分離は最小に抑えられ、これにより最も重要な活性領域材料の光電品質が保持される。」

(8)「【0026】図3は本発明の他の実施の形態にかかるレーザダイオード構造400を示したものである。この実施の形態においては、従来のGaN層の代わりに、厚いInGaN層420が形成される。これにより、レーザへテロ構造を成長させるために、格子パラメータがより大きいテンプレートを確立する。このため、組成の均一な高インジウム量のInGaN合金活性領域が実現できる。このように、明るく、スペクトルの純粋な光が発光される。レーザダイオードへテロ構造480は全て厚いInGaN層420上に成長させる。
【0027】レーザダイオード400には基板405が含まれる。この基板は周知のあるいは最近開発された基板材料、例えばサファイア、炭化珪素またはスピネルなどのいずれの材料により形成してもよい。基板の厚さは典型的には約100?500μmである。
【0028】バッファ層410を基板405上に形成する。バッファ層410は主に湿潤層として機能し、サファイア基板405が滑らかにかつ均一に被覆されるようにする。バッファ層410は、核形成層としても知られており、典型的にはGaN、InGaN、AlNまたはAlGaNのいずれかで形成される。
……
【0030】その後、厚いInGaN層420をバッファ層410上に形成する。厚いInGaN層420はn-型ドープされ、その厚さは典型的には0.5μm?100μmである。厚いInGaN層420を形成した後、素子のへテロ構造を形成する。この発明に従い素子のへテロ構造を形成する場合、n-型クラッド層を最初に形成する。n-クラッド層は厚いInGaN層420上に形成された第1のIII-V族窒化物層430である。第1のIII-V族窒化物層430はn-型ドープされ、その厚さは約0.2から2μmである。その後、複合InGaN活性層及び導波路(waveguide)435をInGaN層420上に形成する。この複合導波路の総厚は0.05?0.4μmである。導波路にはInGaN量子井戸活性領域437が含まれる。この量子井戸活性領域437は厚さが典型的には約10から100オングストロームの量子井戸を含む。InGaN活性領域437は単一井戸構造あるいは多重井戸構造をとってもよい。このように、活性層435は導波路として作用し、その構造と共に活性領域437を含む。活性領域437内で利得が発生し、その結果、発光が得られる。
【0031】第2のIII-V族窒化物層440をInGaN活性層435上に形成する。前記第2のIII-V族窒化物層440上に、第3のIII-V族窒化物層450を形成する。第2及び第3のIII-V族窒化物層440と450はどちらもp-型ドープされる。第2のIII-V族窒化物層440はp-型クラッド層として機能し、その厚さは典型的には0.2μmから2μmである。第3のIII-V族窒化物層450により、ヘテロ構造のp-側に接触するように、抵抗が最小の金属電極を形成させるのが容易になる。」

(9)「【0038】より重要なことは、ヒラマツが、非常に薄いGaN、AlNまたはAlGaNバッファ(核形成)層上に直接成長させたInGaNは優れた構造特性及び光電特性を示したことを示唆したことである。これにより、InGaNの偏析は格子のずれによるものであり、InGaN合金に関連する混和性ギャップによるものではないことが示唆される。このように、より格子パラメータがより大きいエピタキシーテンプレートを確立することにより、高インジウム量InGaN合金への整合が良好になり、相偏析を防ぐことができる。その結果、GaNよりも、InGaN上では高品質、高インジウム量のInGaN層を成長させ、青色、緑色(及び均一な黄色あるいは赤色)LEDおよびレーザーダイオードの活性領域を形成することができる。インジウム量が約20%までのInGaN膜は以前から厚いGaN上に成長させることができたが、この発明によれば、インジウム量が約30%のInGaN層上にそのようなInGaN膜を成長させることにより、InGaN膜のインジウム量を、例えば50%まで拡大することができる。なぜなら、格子のずれの大きさが同等であるからである。」

(10)図3は次のものである。



4 引用発明
上記3(特に(1)及び(8))によれば、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「核形成層であるバッファ層410と、
核形成層上に成長させた厚いInGaN層420と、
厚いInGaN層420上に形成したInGaN活性層435と、
を備える第III-V族窒化物半導体膜からなるレーザダイオード構造400であって、
バッファ層410を基板405上に形成し、
厚いInGaN層420をバッファ層410上に形成することにより、レーザへテロ構造を成長させるための格子パラメータがより大きいテンプレートを確立し、
第1のIII-V族窒化物層430であるn-クラッド層を厚いInGaN層420上に形成し、
InGaN活性層435をInGaN層420上に形成し、
p-型ドープされた第2のIII-V族窒化物層440をInGaN活性層435上に形成したレーザダイオード構造400。」

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「第III-V族窒化物半導体膜からなるレーザダイオード構造400」は、本願発明の「III族窒化物発光装置」に相当する。

(2)引用発明の「核形成層であるバッファ層410」は、本願発明の「核生成領域」に相当する。

(3)引用発明の「バッファ層410上に形成」された「厚いInGaN層420」は、本願発明の「前記核生成領域上に形成された」「基部領域」に相当する。

(4)引用発明の「厚いInGaN層420上に形成」された「第1のIII-V族窒化物層430であるn-クラッド層」は、本願発明の「n型領域」に相当する。

(5)引用発明の「InGaN活性層435上に形成」された「p-型ドープされた第2のIII-V族窒化物層440」は、本願発明の「p型領域」に相当する。

(6)引用発明の「InGaN層420上に形成」された「InGaN活性層435」は、本願発明の「前記基部領域の上に重なり、n型領域とp型領域の間に配置されたInGaNである発光層」に相当する。

(7)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「III族窒化物発光装置であって、
核生成領域と、
前記核生成領域上に形成された基部領域と、
前記基部領域の上に重なり、n型領域とp型領域の間に配置されたInGaNである発光層と、
を含む装置。」

(8)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1>
基部領域の厚みに関し、本願発明では、0.5?5μmであるのに対し、引用発明では、厚いInGaN層420の厚みが特定されていない点。

<相違点2>
発光層の平均InN組成に関し、本願発明では、8%よりも大きい平均InN組成を有するのに対し、引用発明では、InGaN活性層435の平均InN組成が特定されていない点。

<相違点3>
基部領域の格子定数a_(1)と発光層の格子定数a_(2)の関係に関し、本願発明では、基部領域の格子定数a_(1)に対する発光層と同じ組成を有する弛緩した自立層の格子定数a_(2)の比率が1と1.01の間であるのに対し、引用発明では、厚いInGaN層420は、InGaN活性層435のレーザへテロ構造を成長させるための格子パラメータがより大きいテンプレートを確立するものであるが、厚いInGaN層420の格子定数a_(1)とInGaN活性層435の格子定数a_(2)の関係が特定されていない点。

<相違点4>
基部領域の組成に関し、本願発明では、AlInGaN層を含むのに対し、引用発明では、InGaN層420である点。

6 判断
まず、相違点3について検討し、その後相違点1、相違点4、相違点2の順に検討する。
(1)相違点3について
引用発明の基部領域は、発光層のレーザへテロ構造を成長させるための格子パラメータがより大きいテンプレートを確立するものであるところ、引用文献には、「InGaN活性層330は……、GaN上に直接成長させたInGaN膜に比べ、格子のずれ歪みが小さい。格子のずれを減少させることにより、InGaN合金の相分離は最小に抑えられ、これにより最も重要な活性領域材料の光電品質が保持される。」(上記3(7)を参照。)と記載されていることをも踏まえると、引用発明は、GaNより格子定数が大きく、InGaN活性層の格子定数により近い格子定数を有する「厚いInGaN層420」を採用して、その上に「InGaN活性層435」を形成することにより「InGaN活性層435」に生じるずれ歪みを小さくするものであると認められる。
したがって、引用発明において、ずれ歪みをより小さくするために、厚いInGaN層420の格子定数をInGaN活性層435の格子定数に十分近づけることは当業者が容易に想到し得たことである。そのようなところ、両者の格子定数の比は当業者が適宜設計し得るものであって、相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得たことである。

(2)相違点1について
上記(1)で検討したように、引用発明は、「厚いInGaN層420」の上に「InGaN活性層435」を形成することにより「InGaN活性層435」に生じるずれ歪みを小さくするものであると認められるところ、InGaN活性層435に生じるずれ歪みを小さくするためには、厚いInGaN層420は、そのInGaN活性層435側に歪みが残らないような十分な厚みを有する必要があることは当業者にとって自明である。他方、厚いInGaN層420の厚さを不必要に厚くすることは経済的でないことも当業者にとって自明である。
そのようなところ、引用発明において、厚いInGaN層420の厚さを如何にするかは当業者が適宜設計し得るものであり、引用文献には、「厚いInGaN層420は……、その厚さは典型的には0.5μm?100μmである。」(上記3(8)を参照。)と記載されていることに照らせば、引用発明において、厚いInGaN層420の厚さを0.5?5μmとすること、すなわち相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得たことである。

(3)相違点4について
AlInGaNを用いると、InGaN発光層と格子定数が整合し、バンドギャップがInGaN発光層より大きい層を形成できることは、本願の優先日前に周知の技術である(例えば、特表2003-527745の段落【0047】には、バッファ層の面内格子定数がInGaN活性層の面内格子定数に近づくように、InAlGaNで成長させると、InAlGaNバッファ層のバンドギャップが光吸収が無くなるように、InGaN活性層のバンドギャップより大きくなることが記載されている。また、特開平9-266326号公報の段落【0027】には、InGaNの発光層5に対して、InGaNよりもバンドギャップが広く、格子定数を発光層5の格子定数にほぼ一致させた組成比のAl_(x)Ga_(y)In_(1-x-y)N(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)を中間層4として用いることが記載されている。)。
また、発光層の上方又は下方の層のバンドギャップを発光層のバンドギャップより大きくすることにより光吸収を抑制することも本願の優先日前に周知の技術である(例えば、上記特表2003-527745の記載を参照。また、特開2002-185037号公報の段落【0031】には、発光層よりも上の層又は下の層に、例えばAl組成が高い等によりバンドギャップの大きい層を備えていると、光の吸収が抑制できることが記載されている。)。
そして、光の吸収を抑え発光効率を上げることは半導体発光装置において周知の課題であるから、引用発明において、InGaN層420にかえてAlInGaN層を採用して、InGaN活性層435と格子定数が整合し、バンドギャップがInGaN活性層435より大きい層を形成すること、すなわち相違点4に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

(4)相違点2について
引用発明において、InGaN活性層435の平均InN組成を如何にするかは、当業者が適宜設定し得る設計的事項というべきところ、引用文献には、「均一合金のxの量が20%よりも高いIn_(x)Ga_(1-x)N合金は、MOCVDなどの従来技術を用いて達することは困難である。……このように、前記従来構造の問題を避けるように、InGaNを他のIII-V族窒化物と共に使用するのは好都合であろう。」(上記3(5)を参照。)及び「このように、より格子パラメータがより大きいエピタキシーテンプレートを確立することにより、高インジウム量InGaN合金への整合が良好になり、相偏析を防ぐことができる。その結果、GaNよりも、InGaN上では高品質、高インジウム量のInGaN層を成長させ、青色、緑色(及び均一な黄色あるいは赤色)LEDおよびレーザーダイオードの活性領域を形成することができる。インジウム量が約20%までのInGaN膜は以前から厚いGaN上に成長させることができたが、この発明によれば、インジウム量が約30%のInGaN層上にそのようなInGaN膜を成長させることにより、InGaN膜のインジウム量を、例えば50%まで拡大することができる。なぜなら、格子のずれの大きさが同等であるからである。」(上記3(9)を参照。)と記載されていることに照らせば、引用発明において、InGaN活性層435の平均InN組成を8%よりも大きくすること、すなわち相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。

(5)本願発明の効果について
本願発明によってもたらされる効果を全体としてみても、引用発明及び周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

(6)意見書の主張について
平成26年6月19日付けの意見書において、請求人は、引用文献においては、相分離を最小にすることを述べているだけであって、高い放射再結合効率を達成するために相分離がある程度必要であることは、開示も示唆もされておらず、「該平均InN組成bは、8%よりも大きく、該発光層のInN組成が、平均InN組成bから20%未満の範囲で変化」することに関して開示されていない旨主張しているところ、発光層のInN組成が平均InN組成bから20%未満の範囲で変化することを特定しているのは請求項1等に係る発明であって、本願発明は、発光層のInN組成が平均InN組成bから20%未満の範囲で変化することを特定するものではなく、また、上記(4)のとおりであるから、採用できない。

7 むすび
以上の検討によれば、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-02 
結審通知日 2014-09-04 
審決日 2014-09-18 
出願番号 特願2005-123289(P2005-123289)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 芝沼 隆太  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 中田 誠
畑井 順一
発明の名称 歪みを制御したIII族窒化物発光装置  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  

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