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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04N |
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管理番号 | 1297187 |
判定請求番号 | 判定2014-600053 |
総通号数 | 183 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2015-03-27 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2014-11-06 |
確定日 | 2015-02-19 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3549195号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』において、被請求人が音声ファイルを解析することによって作成される音声認識結果を記録した記録媒体」は、特許第3549195号発明の請求項6に記載された発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、イ号図面並びにその説明書に示す「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』において、被請求人が音声ファイルを解析することによって作成される音声認識結果を記録した記録媒体」(以下、イ号物件という)は、特許第3549195号(以下、本件特許という)の請求項6に記載された発明(以下、本件特許発明という)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 第2 本件特許発明 本件特許発明は、本件特許明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項6に記載されたとおりのものであり、それを構成要件に分説すると、次のとおりである。 [本件特許発明] A 開始位置と終了位置とによって再生個所を特定可能な記録媒体(a)の特定部分に対応する句(p1)における当該開始位置情報及び終了位置情報、及び B 句の関連情報を(P) C 記録したことを特徴とする記録媒体(b)(c)。 第3 イ号物件 判定請求書に添付されたイ号物件説明書(甲第12号証)、及び甲第3ないし11号証の記載内容を検討すると、イ号物件に関して以下の事項が認められる。 (a)甲第9号証の記載によれば、被請求人が提供する「音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス」は、当該サービスのユーザーが会議等を録音した音声ファイルを被請求人のサーバにアップロードすると、被請求人のサーバにおいて音声認識が行なわれ、音声認識結果がダウンロード可能な状態でユーザーに提供され、ユーザーが音声認識結果の編集ツールを使用して議事録を作成するというサービスである。 (b)甲第5ないし6号証には、ユーザーに提供される音声認識結果のサンプルファイルである「サンプル結果.fvp」を解析した結果が記載されており、その記載内容によれば、ユーザーに提供される音声認識結果は、ユーザーがアップロードした音声ファイル(データ形式はリニアPCM、ファイル形式はwav)を複製し圧縮した圧縮音声データ(0000.wma?0006.wma)と音声認識結果データ(0000.xml)から構成されていることが分かる。 そして、音声認識結果データには、 (c)甲第7ないし8号証には、被請求人からユーザーに提供されるアプリケーション「VoiceGraphy/編集ツール」を用いて、「サンプル結果.fvp」の内容を検証した結果が記載されており、その記載内容によれば、上記 (d)ユーザーがアップロードした音声ファイル(データ形式はリニアPCM、ファイル形式はwav)及びユーザーに提供される音声認識結果は被請求人のサーバに保存されているのであるから、ユーザーがアップロードした音声ファイル(データ形式はリニアPCM、ファイル形式はwav)、音声認識結果に含まれる圧縮音声データ(0000.wma?0006.wma)及び音声認識結果データ(0000.xml)は、サーバに記録されたものといえる。 (e)甲第3ないし12号証の記載事項、及び判定請求書の請求人によるイ号物件の説明を総合すると、イ号物件は次のとおりである。 [イ号物件] a ユーザーがアップロードし、サーバに記録された音声ファイル(データ形式はリニアPCM、ファイル形式はwav)を複製し圧縮してサーバに記録された圧縮音声データ(0000.wma?0006.wma)の、上記音声ファイルを音声認識して得られた議事の特定部分の句に対応する開始位置と終了位置を表すデータ(stimeプロパティ、etimeプロパティ)と、 b 上記句の文字情報( c 第4 対比判断 1.本件特許発明について まず、充足性の判断を行う前に、本件特許発明の記録媒体(a)及び記録媒体(b)(c)が、それぞれの記録媒体がどのような記録媒体であるのかについて確認する。 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、 「【従来の技術】従来のマルチメディア媒体は一度作成されると、再生個所や再生順、再生方法についての自由度がきわめて低く、以下に示すように、利用者の多様なニーズに変幻自在に対応することが不可能であった。」(段落【0002】)、 「【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のマルチメディア媒体を自在に活用することができ、学習効果を上げることができるシステムの提供を課題とするものである。」(段落【0010】)、 「本願発明は、記録媒体aを利用目的に応じて句p1に分割する。句p1は開始位置と終了位置によって特定される記録媒体aのなかの一部分に相当する。作成された複数の句p1を利用目的に応じて集め(これを仮想トラック61という)、さらに仮想トラック61を集めて1個の集合(これを仮想ディスクという)とする。この仮想ディスクに、タイトル、記録媒体aとの同一性を識別するための番号、各句p1ごとに関連付ける画像、文字などの各種情報とともに制御ファイルa1として記録媒体bに保存する。 制御ファイルa1はひとつのデータベースであり、ヘッダー部と本体部に分かれ、ヘッダー部にはタイトル、識別番号、画像や文字や音声の出力制御情報、仮想トラック情報などの総体的情報が記録され、本体部には開始位置、終了位置などの再生制御情報、関連画像や文字や音声の出力制御情報、ディクテーション情報など各句固有情報を持つフレームカードp2がリスト状に記録される。」(段落【0012】)、 「更に、記録媒体aに対して、必要に応じて、画像や文字を関連付けた制御ファイルa1を記録した記録媒体b、c、即ち、請求項6に係る発明として開示する、開始位置と終了位置とによって再生個所を特定可能な記録媒体aに記録される句p1における当該開始位置情報及び終了位置情報、及び句p1の関連情報Pが記録されたことを特徴とする記録媒体によって、すでに数多く製作されている記録媒体aの資源を引き出し、数倍する価値を生み出すことができる。」(段落【0030】) との記載がある。 これらの記載を参酌すると、本件特許発明は、従来のマルチメディア媒体には再生個所や再生順、再生方法についての自由度がきわめて低く不便であるという課題が存在し、その課題を解決するために為された発明であって、従来のマルチメディア媒体を自在に活用することができるという効果を奏するという発明である。 そして、本件特許明細書に開示された具体的な技術は、記録媒体aの一部分に相当する句に関連付けた制御ファイルa1を生成し記録媒体b又はcに保存するというものであり、上記制御ファイルa1は、開始位置、終了位置などの再生制御情報、関連画像や文字や音声の出力制御情報などの各句固有情報を持つデータベースであって、本件特許発明の「開始位置と終了位置とによって再生個所を特定可能な記録媒体(a)の特定部分に対応する句(p1)における当該開始位置情報及び終了位置情報、及び句の関連情報(P)」に対応するものである。 すなわち、本件特許発明における記録媒体(a)は、再生個所や再生順、再生方法についての自由度の低い従来のマルチメディア媒体であって、記録媒体(b)(c)に記録された情報により自在に活用できるように為されたマルチメディア媒体を指すものであり、一方、記録媒体(b)(c)は、記録媒体(a)を自在に活用するための情報を記録した記録媒体である。 なお、記録媒体(c)に関しては、本件特許明細書の発明の詳細な説明に「あるいは、記録媒体aと制御ファイルa1の内容を同時に保持する新しい記録媒体cを利用する。」(段落【0017】)と記載されるように、記録媒体(a)と制御ファイルa1とを同時に保持した新しい媒体であると説明されている。 そうすると、記録媒体(a)は、記録媒体(c)に複製された従来のマルチメディア媒体も含むものであるといえるから、その記録媒体のファイル形式が従来のマルチメディア媒体のファイル形式を保持したままで複製されたものである限り、請求人の主張する記録された物や場所に特定されていない記録媒体といえる。 2.判断 上記1.における本件特許発明の認定を踏まえ、イ号物件が本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについて検討する。 (1)構成要件Aについて イ号物件の構成aは「ユーザーがアップロードし、サーバに記録された音声ファイル(データ形式はリニアPCM、ファイル形式はwav)を複製し圧縮してサーバに記録された圧縮音声データ(0000.wma?0006.wma)の、上記音声ファイルを音声認識して得られた議事の特定部分の句に対応する開始位置と終了位置を表すデータ(stimeプロパティ、etimeプロパティ)」というものであり、まず、音声ファイルと圧縮音声データについて検討する。 イ号物件の「音声ファイル(データ形式はリニアPCM、ファイル形式はwav)」は、wav形式の音声ファイルが一般的に時間情報を有していない音声ファイル形式であるから、再生個所や再生順、再生方法についての自由度の低いファイル形式といえる。 そして、当該音声ファイルは、音声認識の対象である音声ファイルそのものであり、ファイル形式がwav形式であっても、CDやテープ等と同じように音声ファイルの先頭からのトータル時間を用い、開始位置と終了位置を指定することによって再生箇所を特定することは可能であるから、本件特許発明の構成Aの「開始位置と終了位置とによって再生個所を特定可能な記録媒体(a)」に相当するものといえる。 また、イ号物件の「圧縮音声データ(0000.wma?0006.wma)」は、wma形式の音声ファイルが時間情報(PTS:presentation time stamp等)を有する音声ファイル形式であるから、音声ファイルを複製し圧縮する過程において、時間情報を有する再生個所や再生順、再生方法についての自由度の高いファイル形式へ変換された音声ファイルの複製であるといえる。 そして、「議事の特定部分の句に対応する開始位置と終了位置を表すデータ(stimeプロパティ、etimeプロパティ)」は、圧縮音声データの時間情報を指定するものと認められる。 次に、イ号物件の「開始位置と終了位置を表すデータ(stimeプロパティ、etimeプロパティ)」について検討すると、この開始位置と終了位置を表すデータは、「圧縮音声データ(0000.wma?0006.wma)」の特定部分の句に対応するものであり、本件特許発明の「記録媒体(a)」に相当する「音声ファイル(データ形式はリニアPCM、ファイル形式はwav)」の特定部分の句に対応するものではない。 では、イ号物件の「音声ファイル(データ形式はリニアPCM、ファイル形式はwav)」の複製である「圧縮音声データ(0000.wma?0006.wma)」が、本件特許発明の「記録媒体(a)」に相当するものといえるかについて検討すると、「記録媒体(a)」は、上記1.において確認したように、再生個所や再生順、再生方法についての自由度の低いファイル形式を保ったままで複製されている限り「記録媒体(a)」ということができるものであるが、イ号物件の「圧縮音声データ(0000.wma?0006.wma)」は、「音声ファイル(データ形式はリニアPCM、ファイル形式はwav)」を、再生個所や再生順、再生方法についての自由度の高いファイル形式へ変換して複製されたものであるから、本件特許発明の「記録媒体(a)」ということはできない。 よって、イ号物件の「開始位置と終了位置を表すデータ(stimeプロパティ、etimeプロパティ)」は、本件特許発明の「記録媒体(a)の特定部分に対応する句(p1)における当該開始位置情報及び終了位置情報」とは異なる情報である。 さらに検討すれば、本件特許発明は、上記1.において確認したように、再生個所や再生順、再生方法についての自由度の低い記録媒体(a)を自在に活用するための情報である「開始位置と終了位置とによって再生個所を特定可能な記録媒体(a)の特定部分に対応する句(p1)における当該開始位置情報及び終了位置情報、及び句の関連情報(P)を記録したことを特徴とする記録媒体(b)(c)」というものであるのに対し、イ号物件は、音声ファイルの議事録を作成するためのサービスに係るものであり、圧縮音声データについての開始位置と終了位置を表すデータは、音声認識された議事の句が正しく音声認識されているかを確認する目的で、既に再生個所や再生順、再生方法についての自由度の高い形式に変換された圧縮音声データの該当部分を再生するためのデータであって、最初にユーザーがアップロードした再生個所や再生順、再生方法についての自由度の低い音声ファイルを自在に活用するためのデータではない。 このように、本件特許発明とイ号物件は、その使用目的が異なることからその構成にも当然相違が存在するものと認められる。 したがって、イ号物件の構成aは、本件特許発明の構成要件Aを充足しない。 (2)構成要件Bについて イ号物件の構成bである「上記句の文字情報( したがって、イ号物件の構成bは、本件特許発明の構成要件Bを充足する。 (3)構成要件Cについて イ号物件の構成cである「 しかし、上記(1)において検討したように、イ号物件の構成aは本件特許発明の構成要件Aとは異なるものであるから、その構成aを記録した構成cは、本件特許発明の構成要件Cとは異なるものである。 したがって、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。 3.均等の判断 最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決(平成6年(オ)第1083号)は、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても、以下の5つの要件を満たす場合には、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、対象製品等は特許発明の技術的範囲に属するものとするのが相当であると判示をしている。 「(積極的要件) (1)異なる部分が特許発明の本質的部分でなく、 (2)異なる部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、 (3)右のように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、 (消極的要件) (4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものでなく、かつ、 (5)対象製品等が、特許発明の出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情もない。」 イ号物件は、上記2.において判断したように、本件特許発明の構成要件A及びCにおいて本件特許発明と相違するものであるが、構成要件Cの相違は構成要件Aの相違に起因するものであるから、イ号物件の構成aが本件特許発明の構成要件Aと均等なものであるのかについて検討する。 上記1.において検討したように、本件特許発明は、再生個所や再生順、再生方法についての自由度の低い記録媒体(a)を自在に活用するために為された発明であり、記録媒体(a)を自在に活用するための情報を記録媒体(b)(c)に記録したという発明であるから、本件特許発明の構成要件Aの記録媒体(a)の特性というものは、本件特許発明の本質的部分に関わるものである。 さらに検討すれば、イ号物件の構成aの「音声ファイル(データ形式はリニアPCM、ファイル形式はwav)複製し圧縮してサーバに記録された圧縮音声データ(0000.wma?0006.wma)」の特定部分に対応する「音声ファイルを音声認識して得られた議事の特定部分の句に対応する開始位置と終了位置を表すデータ(stimeプロパティ、etimeプロパティ)」は、上記2.(1)において判断したように、音声認識された議事の句が正しく音声認識されているかを確認することに用いられるデータであり、既に再生個所や再生順、再生方法についての自由度の高い形式に変換された圧縮音声データの該当部分を再生するためのデータである。 したがって、本件特許発明の構成要件Aの再生個所や再生順、再生方法についての自由度の低い記録媒体(a)を、イ号物件の構成aの既に再生個所や再生順、再生方法についての自由度の高い形式に変換された圧縮音声データに置き換えた場合、再生個所や再生順、再生方法についての自由度の低い記録媒体(a)を自在に活用するという本件特許発明の目的を達成することにはできず、同一の作用効果を奏するものとはならない。 したがって、構成要件Aに係る本件特許発明とイ号物件との相違は、少なくとも上記(1)ないし(2)の要件を満たさないから、他の要件を判断するまでもなく、イ号物件が本件特許発明の構成と均等なものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件を充足しないものであり、また、イ号物件が本件特許発明と均等なものでもないので、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2015-02-09 |
出願番号 | 特願2001-55901(P2001-55901) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 明 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
清水 正一 小池 正彦 |
登録日 | 2004-04-30 |
登録番号 | 特許第3549195号(P3549195) |
発明の名称 | 記録媒体再生装置、記録媒体再生方法、及び記録媒体 |
代理人 | 工藤 一郎 |
代理人 | 高崎 仁 |
代理人 | 酒匂 禎裕 |