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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E06B
管理番号 1297490
審判番号 不服2013-23889  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-04 
確定日 2015-03-03 
事件の表示 特願2011-523351「高速作動産業用昇降ドア」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月25日国際公開、WO2010/020419、平成24年 1月 5日国内公表、特表2012-500347、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年8月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年8月21日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年12月4日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。


第2 平成25年12月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「ドア開口部の両側にそれぞれ配置される2つのガイドトラック(31)と、閉鎖状態で前記ドア開口部を覆うためのセグメントアーマー(2)とを備える昇降ドア(1)、特に、高速産業用ドアであって、
前記セグメントアーマー(2)は、関節方式で相互接続され、ヒンジピン(23)を介して互いに一定の角度で配置されるヒンジリンク(22)を有するヒンジストラップ(21)備え、
前記ヒンジストラップ(21)は、ドア開口部の垂直間隔に相応する長さを有し、前記ガイドトラック(31)内で支持及び案内され、
前記セグメントアーマー(2)が前記ヒンジリンク(22)に設けられるスラット(24、24a)を備え、
隣接する2つのスラット(24、24a)の互いに対向する側方向境界部分(241、242)は、前記昇降ドア(1)が閉鎖された状態で互いに係合して曲折シールを形成するような相補的な方式で構成され、
熱の影響下で、隣接するスラット(24、24a)の前記側方向境界部分(241、242)間のギャップを閉鎖させるために膨張する材料の少なくとも2つの防火要素(28a)は、隣接するスラット(24、24a)に対向するスラット(24、24a)の少なくともいずれか1つの側方向境界部分(241、242)に設けられ、
少なくとも二つの防火要素(28a)は、突出部(243)の両側面に設けられ、セグメントアーマー(2)の主表面に対向することを特徴とする昇降ドア。」
とあるのを、
「ドア開口部の両側にそれぞれ配置される2つのガイドトラック(31)と、閉鎖状態で前記ドア開口部を覆うためのセグメントアーマー(2)とを備える高速作動産業用昇降ドア(1)であって、
前記セグメントアーマー(2)は、関節方式で相互接続され、ヒンジピン(23)を介して互いに一定の角度で配置されるヒンジリンク(22)を有するヒンジストラップ(21)を備え、
前記ヒンジストラップ(21)は、前記ドア開口部の垂直間隔に相応する長さを有し、前記ガイドトラック(31)内で支持及び案内され、
前記セグメントアーマー(2)が前記ヒンジリンク(22)に設けられるスラット(24、24a)を備え、
前記関連する隣接するスラット(24、24a)の互いに対向する側方向境界部分(241)は、側断面が凸字状の凸部(243)を持ち、
前記関連する隣接するスラット(24、24a)の互いに対向する側方向境界部分(242)は、中心部分で側断面が凹字状の凹部(244)を持ち、
前記昇降ドアが閉鎖状態のとき前記凸部(243)が前記凹部(244)に挿入され、
前記凸部(243)の頭頂部と前記凹部(244)の底部との間に前記ドア開口部の幅を実質的に超えて延びるシール部材(27)が介挿され、
前記凸部(243)の側壁と前記凹部(244)の側壁(245)との間の2つのギャップ(246)は、7ミリメートルの幅を持ち、
前記凸部(243)の側壁と前記凹部(244)の側壁(245)との間に前記2つのギャップ(246)を閉鎖させるために熱の影響下で膨張する2つの防火要素(28a)を備え、ていることを特徴とする高速作動産業用昇降ドア。」(下線部は補正事項を示す。)
とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。

2.補正の適否
本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「昇降ドア(1)」について「高速作業産業用」との限定を付加し、また、「スラット(24、24a)」について、「側断面が凸字状の凸部(243)を持ち、前記関連する隣接するスラット(24、24a)の互いに対向する側方向境界部分(242)は、中心部分で側断面が凹字状の凹部(244)を持ち、前記昇降ドアが閉鎖状態のとき前記凸部(243)が前記凹部(244)に挿入され、前記凸部(243)の頭頂部と前記凹部(244)の底部との間に前記ドア開口部の幅を実質的に超えて延びるシール部材(27)が介挿され、前記凸部(243)の側壁と前記凹部(244)の側壁(245)との間の2つのギャップ(246)は、7ミリメートルの幅を持ち、前記凸部(243)の側壁と前記凹部(244)の側壁(245)との間に前記2つのギャップ(246)を閉鎖させるために熱の影響下で膨張する2つの防火要素(28a)を備え」との限定を付加するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、上記補正事項1は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)刊行物の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用され本件優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第07/142079号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0006】
従って、巻上げシャッターのシャッターカーテンを軽量化するならば、それによって大きな利点が得られる。より具体的には、軽量化によって、より大寸法のシャッターカーテンを使用できるようになるため、天井が高く幅の広い開口部を巻上げシャッターで閉塞することが可能となり、それによって例えば、床面積が広く天井の高い大規模な工場の建屋などであっても、その建屋内に防火シャッターを設置することが可能になる。また、シャッターカーテンを高速で昇降させることができるため、頻繁に人や物品が通過する開口部にも、常時閉塞しておき人や物品の通過時のみ開放するような防火シャッターを設置することが可能になる。従来の巻上げシャッターでは、これらの用途に用いることは不可能または困難であった。」

(イ)「【0008】
かかる目的を達成するため、本発明に係る巻上げシャッターは、水平方向に延在する複数の金属製のスラットを上下に連結して構成したシャッターカーテンと、前記シャッターカーテンの巻取り及び巻戻しを行って該シャッターカーテンを昇降させる巻取り機構と、前記シャッターカーテンの昇降に際して該シャッターカーテンの両側縁を案内する一対のガイドレールとを備えた巻上げシャッターである。前記シャッターカーテンは、該シャッターカーテンの両側縁に沿って延在する一対の金属製のチェーンを備えており、各チェーンは、相互に枢動可能に直列に連結された複数の金属製のリンクにより構成されている。前記シャッターカーテンの各スラットは、前記一対のチェーンの当該スラットに対応したリンクに固定され、それによって複数の前記スラットが互いに連結されている。前記シャッターカーテンの各スラットは、一定の断面形状を有するアルミニウム合金製のプロファイル材から成り、該プロファイル材は、一対の側面壁と、前記一対の側面壁の上側の側縁部を相互接続する上縁部と、前記一対の側面壁の下側の側端縁を相互接続する下縁部とを有している。前記シャッターカーテンにおいて上下に隣り合った2本のスラットのうち、上側のスラットの下縁部と、下側のスラットの上縁部とによって、それら隣り合った2本のスラットの間にラビリンスが形成されている。更に、前記シャッターカーテンの各スラットの両側面間の温度差に因り発生する各スラットの曲がり変形量が、上下に隣り合った2本のスラットの間で異なるときに、その変形量の差のためにそれら2本のスラットの間に隙間が発生することが、それら隣り合った2本のスラットのうち、上側のスラットの下縁部と、下側のスラットの上縁部とが係合することによって防止されるようにしてある。」

(ウ)「【0028】
建物の火災発生時に、延焼を防止するべく、防火シャッターとして設置されている巻上げシャッター10を降ろして建物の開口部を閉塞したならば、火炎に曝されて高温となるスラット18は、その寸法が増大するばかりでなく、通常はスラット18の一方の側面のみが高温に曝されることから、上方から見て、長手方向中央部が高温側へ膨出するようにスラット18が弓なりの熱変形を生じることになる。そして、この巻上げシャッター10のスラット18は、既述のごとくアルミニウム合金製であり、鋼と比べて熱膨張率が大きいことから、その熱変形量も大きくなりがちである。これに関して、スラット18の補強壁44(図4参照)は、スラット18の強度を増大させる機能に加えて、スラット18の一対の側面壁39a、39bの間で熱を伝達させることによって、それら側面壁39a、39bの間の温度差を抑制し、もって、火炎に曝されたスラット18の弓なりの熱変形を抑制する機能も果たしている。この熱変形抑制機能は、スラット18の補強壁44の厚さ及び/または形成数を増すほど、強力なものとなる。」

(エ)「【0031】
次に図8のA及びBを参照して、図2のA及びBに示したシャッターカーテン12に代えて用いることのできる変更例に係るシャッターカーテン12’について説明する。図8のA及びBは、シャッターカーテン12’を構成するスラット18’の断面図であり、シャッターカーテン12’は、水平方向に延在する複数の金属製のスラット18’を上下に連結して構成されている。それら複数のスラット18’は、シャッターカーテン12’の両側縁に沿って延在する一対の金属製のチェーン22’を介して互いに連結されており、各チェーン22’は、相互に枢動可能に直列に連結された複数のアルミニウム合金製のリンク24’により構成されている。スラット18’は、図4のA及びBに示したスラット18と同様に、押出加工により製作した一定の断面形状を有するアルミニウム合金製のプロファイル材から成る。
【0032】
図8のAに示したように、スラット18’を形成しているプロファイル材は、一対の側面壁39a’、39b’と、それら側面壁39a’、39b’の上側の側縁部を相互接続する上縁部40’と、それら側面壁39a’、39b’の下側の側端縁を相互接続する下縁部42’と、上縁部40’と下縁部42’との間にあって水平方向に延在し一対の側面壁39a’、39b’を相互接続する少なくとも2つの補強壁44’とを有する。
【0033】
図8のBは、シャッターカーテン12’が降ろされた状態、即ち、巻取られていない状態にあるときの、シャッターカーテン12’において上下に隣り合った2本のスラット18’の夫々の一部分を示した図であり、上側のスラット18’の下縁部42’と、下側のスラット18’の上縁部40’とを示している。図中の点Pは、図示した2本のスラット18’が夫々に固定されているチェーン22’の2個のリンク24’を相互に枢着している鋼製シャフト26’の軸心位置を示しており、従って、シャッターカーテン12’が巻取られるときには、図示した2本のスラット18’がこの点Pを中心にして相対的に回転する。
【0034】
シャッターカーテン12’の各スラット18’は、図2のA及びBに示したシャッターカーテン12の各スラット18と同様に、一対のチェーン22’の当該スラット18’に対応したリンク24’にネジで固定されており、チェーン22’のリンク24’は、スラット18’の一対の側面壁39a’、39b’のうちの一方の側面壁の外面に取付けられている。そして、図2のA及びBに示したローラ30と同様に、ガイドレールに沿って転動するローラ30’が、チェーン22’のリンク24’どうしを連結している鋼製シャフト26’に回転可能に取付けられている。
【0035】
このシャッターカーテン12’が降ろされた状態にあるときには、図8のBに示したように、このシャッターカーテン12’において上下に隣り合った2本のスラットのうち、上側のスラット18’の下縁部42’と、下側のスラット18’の上縁部40’とによって、それら隣り合った2本のスラット18’の間にラビリンス50’が形成されている。また、このラビリンス50’を形成するために、スラット18’の下端部42’には凹溝52’を形成してあり、スラット18’の上縁部40’には凸条54’を形成してある。
【0036】
図9はスラット18’の上縁部40’の拡大断面図であり、同図に示したように、スラット18’の上縁部40’の凸条54’には、パッキング60’を取付けるための係止溝56’が形成されている。パッキング60’は、スラット18’の全長に亘って延在している。パッキング60’は、シャッターカーテンにおいて上下に隣り合った2本のスラット18’の間のラビリンス50’を通過してシャッターカーテンの一方の側から他方の側へ気体が吹き抜けるのを防止するために、それら隣り合った2本のスラットの間に介装された封止材である。パッキング60’の製作材料としては、シャッターカーテンが火災時の高温に曝露され、その高温がパッキング60’に伝達された際に、発火することなくパッキング60’の上下のスラット18’に固着するような、難燃性エラストマー材料が用いられる。そのような特性を有する好適な難燃性エラストマー材料としては、クロロブレンゴムや、シリコーンゴムがある。図8に示したスラット18’及びパッキング60’を備えたシャッターカーテンは、火災時の高温に曝露されたならば、そのパッキング60’が発火することなく上下のスラット18’に固着し、即ち膠着するため、それらスラット18’間のラビリンス50’が封止状態に維持され、火炎がラビリンス50’を吹き抜けることが防止される。
【0037】
従って、図4に示したラビリンス50は、上下に隣り合った2本のスラット18の間の隙間を通過してシャッターカーテン12の一方の側から他方の側へ吹き抜ける気体の流れに対して抵抗力が作用させて、その吹き抜けを抑制することを目的としたものであったのに対し、図8に示したラビリンス50’は、パッキング60’が火災時の火炎に直接曝露されるのを防止することを目的としたものであり、火災時の火炎の吹き抜けは、難燃性エラストマー材料で製作したパッキング60’によって防止されている。」

(オ)「【0042】
図11に示したのは、図9のA及びBのシャッターカーテン12”を案内するガイドレール16”を収容した支柱15”の断面平面図である。この図から明らかなように、ガイドレール16”及び支柱15”は、図3に示したガイドレール16及び支柱15と同様の構成とされている。特にガイドレール16”はガイドレール16と同じものであり、一対の互いに平行な内壁面から成る案内面34a”、34b”を有しており、ローラ30”の外周面がそれら案内面34a”、34b”に当接することによって、ローラ30”がガイドレール16”に沿って転動するようにしてある。また、案内面34a”、34b”の、ローラ30”の軸心方向の幅は、ローラ30”の幅よりも十分に大きくしてある。このようにしているのは、巻上げシャッターを設置した建物に火災が発生して、シャッターカーテン12”のスラット18”が、その長手方向(水平方向)に大きな熱膨張を生じたときに、ローラ30”がスラット18”の長手方向外方へ変位できるようにしつつ、ガイドレール16”がローラ30”を案内できるようにするためである。一対の案内面34a”、34b”の外側縁には、夫々に、凸条35a”、35b”が形成されており、それら凸条35a”、35b”によって、ローラ30”が案内面34a”、34b”から外れるのを防止している。」

(カ)シャッターカーテン12’は、図8を見るに、鋼製シャフト26’を介して互いに一定の角度で配置されるリンク24’を有するチェーン22’を備えることが見て取れる。

(キ)図1を見るに、チェーン22’は、開口部の垂直間隔に相応する長さを有することは明らかである。

(ク)上記(エ)の「チェーン22’のリンク24’は、スラット18’の一対の側面壁39a’、39b’のうちの一方の側面壁の外面に取付けられている。そして、図2のA及びBに示したローラ30と同様に、ガイドレールに沿って転動するローラ30’が、チェーン22’のリンク24’どうしを連結している鋼製シャフト26’に回転可能に取付けられている。」(【0034】)の記載と図8を併せ見れば、チェーン22’は、ガイドレール内で支持及び案内されることと解される。

(ケ)上記(エ)の「図8のBは、シャッターカーテン12’が降ろされた状態にあるとき」(【0032】)と図8Bを併せて見るに、シャッターカーテン12’が下ろされた状態にあるときは、凹溝52’には凸条54’が挿入されていることと解される。

(コ)上記(エ)の「図9はスラット18’の上縁部40’の拡大断面図であり、同図に示したように、スラット18’の上縁部40’の凸条54’には、パッキング60’を取付けるための係止溝56’が形成されている。パッキング60’は、シャッターカーテンにおいて上下に隣り合った2本のスラット18’の間のラビリンス50’を通過してシャッターカーテンの一方の側から他方の側へ気体が吹き抜けるのを防止するために、それら隣り合った2本のスラットの間に介装された封止材である。」(【0036】)の記載と、図9を併せ見ると、凸条54’の頭頂部と凹溝52’との間にパッキング60’が介装されていることが解される。

(サ)上記(オ)の「【0042】図11に示したのは、図9のA及びBのシャッターカーテン12”を案内するガイドレール16”を収容した支柱15”の断面平面図である。この図から明らかなように、ガイドレール16”及び支柱15”は、図3に示したガイドレール16及び支柱15と同様の構成とされている。」の記載と、図11を併せ見るに、スラット18’の全長は支柱15間の幅よりも長いことが見て取れ、開口部幅は一対の支柱間の幅であるから、スラット18’の全長は、開口部幅よりも長いものと解される。

(シ)図8の(B)と【0034】?【0036】の記載を併せ見ると、「ラビリンス50’」は、2本のスラット18’の間に形成されており、凸条54’の一方の側壁と対向する凹溝52’の側壁の間のラビリンス50’、凸条54’の他方の側壁と対向する凹溝52’の側壁の間、のラビリンス50’を有することが見て取れる。

上記(ア)?(シ)より、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「開口部にシャッターカーテン12’の両側縁を案内する一対のガイドレールとを備えた工場の建屋に設置することが可能で、シャッターカーテン12’を高速で昇降させることができる巻上げシャッターであって、
シャッターカーテン12’は、スラット18’を上下に連結して構成され、それら複数のスラット18’は、シャッターカーテン12’の両側縁に沿って延在する一対の金属製のチェーン22’を介して互いに連結されており、各チェーン22’は、相互に枢動可能に直列に連結された複数のリンク24’により構成され、鋼製シャフト26’を介して互いに一定の角度で配置されるリンク24’を有し、チェーン22’は、開口部の垂直間隔に相応する長さを有しており、ガイドレール内で支持及び案内され、
シャッターカーテン12’の各スラット18’は、一対のチェーン22’の当該スラット18’に対応したリンク24’にネジで固定されており、
スラット18’の下端部42’には凹溝52’を形成してあり、スラット18’の上縁部40’には凸条54’を形成してあり、
シャッターカーテン12’が下ろされた状態にあるときは、上下に隣り合った2本のスラットのうち、上側のスラット18’の下縁部42’の凹溝52’に、下側のスラット18’の上縁部40’の凸条54’が挿入されており、凸条54’の頭頂部と凹溝52’の底部との間にパッキング60’が介装され、パッキング60’は、スラット18’の全長に亘って延在し、
スラット18’の全長は、開口部幅よりも長く、
凸条54’の一方の側壁と対向する凹溝52’の側壁の間のラビリンス50’、凸条54’の他方の側壁と対向する凹溝52’の側壁の間、のラビリンス50’を有する、巻上げシャッター」

イ 原査定の拒絶の理由に引用され本件優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2006-328914号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0058】
本実施の形態では、当該溝130aは、突起部111cの蝶番120側とは反対側の脇に1本形成されている。第1の充填材130は、当該1本の溝130aに充填される。なお、溝130a及び第1の充填材130を複数備えていてもよい。すなわち、端面部111aのと凹状部111bに2本の溝130aを形成し、当該2本の溝130aの両方に第1の充填材130を充填してもよい。このようにすることで、例えば、火災等の際に炎をパネル組立体100の一方の面側(例えば、外表面材161側)から他方の面側(例えば、内表面材160側)に伝えやすくする危険性をより確実に減少させることができる。」

(イ)「【0060】
第1の充填材130は、加熱膨張性を有する材料、典型的には、膨張性耐火耐熱機能材によって形成される。本実施の形態では、第1の充填材130は、水不溶性で膨張性の鉱物粒と、ハロゲンを含まないバインダーであって熱可塑性又は熱硬化性であるバインダーと、リン含有難燃剤とを含む可撓性の固体防火シーリング組成物である。第1の充填材130は、典型的には、約0.01?約3.75mm程度の軟度を有する可撓性の固体防火シーリング組成物である。なお、固体防火シーリング組成物は、可撓性であるが少しの変形後に元に戻る明確な形を有することから、室温で柔軟で展性のパテ様材料とは区別できる。」

(ウ)「【0100】
さらに、以上で説明した本発明の実施の形態に係るパネル組立体100及びガレージドア200によれば、例えば、火災等の場合において熱によって生じるパネル110の端面部同士の隙間を、炎が通過する際に、炎が第1の充填材130に接することで、当該第1の充填材130は瞬時に膨張する。膨張した当該第1の充填材130は、熱によって生じる端面部同士の隙間を塞ぐため、炎がパネル組立体100の一方の面側(例えば、外表面材161側)から他方の面側(例えば、内表面材160側)に突き抜けることを防止することができる。したがって、優れた防火性能を発揮することのできるパネル組立体及びガレージドアを提供することができる。」

ウ 原査定の拒絶の理由に引用され本件優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2003-27652号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0007】
【発明の実施の形態】本発明の縁材の実施の形態を、図面の実施例に基づいて説明する。図1に、軒天井換気用見切り縁材に用いた例の断面図が示されている。見切り縁材1の材質は、ステンレス鋼板などの金属材製である。見切り縁材1には、換気口2が設けられていて、この換気口2は、図2に示されるように多数の細長い孔3で構成されている。また、この孔3は、両側縁に切込みを入れた押込み加工で形成されていて、火炎が一気に天井裏に吹き込まないように配慮されている。
【0008】4は目隠しと水返しとを兼ねた遮蔽板で、換気口2の後背位置に、適当な通気間隔を開けて設けられている。この遮蔽板4は片持状態で縁材本体に固定されていて、先端側には通気の為の間隙5ができるように配されている。また、遮蔽板4の先端部には、加熱膨張部材6が全長に互って取付けられている。この加熱膨張部材6は、一定の高温、例えば200℃以上に加熱されると、厚さ方向に数倍?数十倍に膨張するものであり、一般に市販提供されているものを用いる。例えば、合成樹脂基材にリン化合物、熱膨張性黒鉛などを含有させてなるものが市販提供されている。
【0009】7は補足の為に見切り縁材1の本体の側に設けられた加熱膨張部材であり、火災時には、前記の膨張部材6と共に、この膨張部材7が膨張し、換気口2の通気路を遮断する。また、見切り縁材1の一方の側縁には、軒天井板の端を嵌入結合させる為の溝部8が設けられていて、その溝底にも耐火性の加熱膨張部材9が取付けられている。
【0010】図3は見切り縁材1を軒天井の軒先の方に取付けた状態で、図中、11は軒天井板、12は野縁、13は鼻隠し、14は鼻隠し下地である。平常時には、加熱膨張部材6、7は薄くて、邪魔にならないので、図示の矢印Aのように、外気は換気口2及び間隙5を通って、屋根裏へと自由に流れ込むことができる。しかし、火災発生時には、膨張部材6、7が熱を受けて、図4のように膨張して、遮蔽板4と見切り縁材本体1との間の通気間隙を塞いでしまうので、図示の矢印Bのように火炎の侵入を遮断する。また、火災発生時には、加熱膨張部材9も同時に膨張して、軒天井板11と溝部8との間に発生した隙間を埋め、熱気が天井裏に伝わらないようにする。」

エ 原査定の拒絶の理由に引用され本件優先権主張日前に頒布された刊行物である実願平3-72432(実開平05-15962号公報)のCD-ROM(以下、「刊行物4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「 【0007】
【実施例】
図1および図2に、本考案の一実施例を示す。
同図において、1は防火ドア、2はドアを囲む壁体部、3はヒンジ部材である
。防火ドア1およびドアと取合う壁体部2の周面部には、火災発生時の熱で発泡し、膨張する熱膨張型耐火材4が埋設されている。」

(イ)「【0009】
上記防火ドア部構造においては、火災時の熱により熱膨張型耐火材4は発泡し、膨張する。このため膨張した耐火材により、防火ドア1と壁体部2との取合い部の隙間を塞ぎ、煙や火災の進入を完全に遮断する。平常時には、前記熱膨張型耐火材4は、ドアおよびドアと取合う壁の周面部から突出しておらず、周面内部に埋設されているので、ドアの開閉機能を損なうことはない。」

オ 原査定の拒絶の理由に引用され本件優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平07-229372号公報(以下、「刊行物5」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0012】
【作用】本発明の防火ガラス板の取付け構造によれば、火災等によって防火ガラス板の取付け部分が高温に曝されると、上記熱膨張性材料が膨張して、その膨張圧力により防火ガラス板を窓枠内に強力に保持する。このため、防火ガラス板が熱変形して窓枠から外れることを効果的に防止できる。」

(イ)「【0015】
【実施例】図1は、本発明の防火ガラス板の取付け構造の一実施例を示す。なお、図3の取付け構造と実質的に同一の部分には同符号を付してその説明を簡略化する。
【0016】この防火ガラス板の取付け構造は、図3に示した従来の取付け構造と同様に、窓枠2の取付け溝2aの底部にセッティングブロック3が配置され、周端縁をこのセッティングブロック3に当接させて、防火ガラス板1が前記取付け溝2aに嵌入されている。そして、防火ガラス板1と取付け溝2aの内壁面との間の隙間7a、7bに、熱膨張性充填材としてのセラミックファイバー及びひる石を含有した材料8が、熱膨張方向を防火ガラス板の面に垂直方向になるようにして充填されている点が、前記図3の取付け構造と異なっている。
【0017】なお、取付け溝2aの開口部には、防火シーラント6が充填されている。この熱膨張性充填材8の熱膨張方向は防火ガラス板1を窓枠2に保持する力の方向のみであり、セッティングブロック3と防火シーラント6の間を広げようとして、防火シーラント6を窓枠2から剥離しようとする力が働かないので最も好ましいが、その他、含水ケイ酸ソーダ系クロロプレンゴムを用いても、防火ガラス板1を窓枠2に保持する目的のためのみであれば、充分使用できる。」

カ 原査定の拒絶の理由に引用され本件優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平2-190590号公報(以下、「刊行物6」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
(1)ゲートリーフ内面(18)に近接した範囲に配置されているヒンジ軸(13)を備えたヒンジ継手(12)によりゲートリーフの運動方向で連続的に相互枢支された複数のパネル(4’),(4),(4”)を有するゲートリーフ(1)、特に屋根構成要素ゲートのゲートリーフであって、それぞれ隣接する2枚のパネル(4’),(4”)間に配置されたパネル(4)が、ゲートリーフ閉鎖状態(2)で一方の隣接パネル(4”)に面している一方の端面(8)にはヒンジ方向で見た断面でやや凸面状に弯曲して延びる表面範囲(10)を有し、また他方の隣接パネル(4’)に面している他方の端面(9)にはヒンジ方向で見た断面でやや凹面状に弯曲して延びる表面範囲(11)を有しており、これらの弯曲部が弧状とくに円弧状に且つ/またはその弧状経過をほぼ模写するような多角形状に延び、その単数または複数の円中心点が隣接のヒンジ軸内もしくはその近くに位置するか、或いはその単数または複数の多角形焦点がそれぞれ隣接のヒンジ軸(13)に向けられて位置しており、従つて、それぞれほぼ凸面状に弯曲した表面範囲(10)とほぼ凹面状に弯曲した表面範囲(11)とを有する互いに隣接配置された2枚のパネル(4),(4’)が、互いに向き合って位置し、これらのパネル(4),(4”)を相互枢支しているヒンジ継手(12)により固定されてその断面に応じて弧状または多角形状に縁取られ少なくともゲートリーフ外面(17)の各旋回位置に面した開口部範囲で指の介入しうるより狭い出来れば約4mm程度の寸法に設計された間隙範囲(15)を形成しており、互いに向き合った各端面(8),(9)が所属のヒンジ軸(13)を中心にしたその旋回運動の途上でゲートリーフ閉鎖状態(2)からゲートリーフ開放状態(3)への移行時に互いに擦れ違い、この場合、間隙範囲(15)が旋回角度の増大に伴って短縮されつつ全旋回角度行程の少なくとも大部分にわたり存続して、最大の旋回角度(16)においても指の介入を阻止するように構成されており、更にこの場合、ほぼ凸面状の表面範囲(10)とほぼ凹面状の表面範囲(11)とがそれぞれパネル(4)のゲートリーフ外面(17)からゲートリーフ内面(18)に向う方向でパネル厚さの一部にわたって延びており、ゲートリーフ内面(18)からほぼゲートリーフ外面(17)に向う方向で、ほぼ凸面状の表面範囲(10)を有する端面(8)にはパネル本体内に凹入した段部範囲(19)が形成され、ほぼ凹面状の表面範囲(11)を有する端面(9)にはパネル本体から突出した段部範囲(20)が形成されており、これらの段部範囲(19),(20)がゲートリーフ閉鎖状態(2)では互いに内外係合される形式のものにおいて、ゲートリーフ閉鎖状態(2)では所属のヒンジ継手(12)により各一対ごとに連続して相互枢支された両パネル(4),(4’)間で互いに向き合って位置する弯曲した表面範囲(10),(11)と段部範囲(19),(20)の面とによって制限されている間隙内に、1つの間隙区分(60)が形成されており、この間隙区分(60)では、当該パネル(4),(4’)における間隙を制限している端面(8),(9)が、間隙区分(60)に対応する端面範囲(61),(62);(63),(64)によってゲートリーフ閉鎖状態(2)における間隙間隔を遮断するように、この閉鎖位置に向けられる荷重成分下で相互支承可能に互いに係合していることを特徴とする、ゲートリーフ。」

キ 原査定の拒絶の理由に引用され本件優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2001-132363号公報(以下、「刊行物7」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0050】例えば、火災が発生すると、閉鎖シート体11および膨張体18がシート巻体10の巻き戻しにより下降し、重錘体20が床面4と接触し、被閉鎖部2が閉鎖される。
【0051】そして、火炎、煙等からの熱を受けて、膨張体18が加熱されて膨張温度に達すると、図4に示すように、膨張体18が膨張し、間隙13が埋められる。また、この膨張した膨張体18により、閉鎖シート体11の両側縁部がガイドレール3a,3bにて固定状態で支持される。
【0052】したがって、閉鎖シート体11が、火炎からの熱風による風圧等を受けた場合でも、膨張した膨張体18にて閉鎖シート体11がガイドレール3a,3bに固定されているので、閉鎖シート体11の両側縁部がガイドレール3a,3b内から抜け出ることがなく、膨張体18による簡単な構成で、気密性を適切に確保できる。
【0053】また、膨張した膨張体18にて間隙13が埋められているので、火災側からの火炎、煙等が間隙13を通過することがなく、膨張体18による簡単な構成で、閉鎖シート体11とガイドレール3a,3bとの間の気密性を適切に確保できる。」

(イ)「【0118】なお、上記第4の実施の形態における膨張体72とは異なる図32および図33に示す膨張体76を用いた構成でもよい。
【0119】この図32の閉鎖シート11の重錘体20の平面状の下面には、伸長可能な耐火性を有する細長シート片等の被包部材77が取り付けられて袋部78が下方に向って膨出状に形成され、この袋部78内に膨張体76が収容されている。この膨張体76全体は被包部材77にて被包されている。
【0120】この膨張体76は、加熱により所定の膨張温度、例えば150℃程度の温度に達すると膨張する粒状の膨張材にて形成され、この膨張材は特殊耐熱繊維と特殊グラファイトとを耐熱バインダで粒状に成形した柔軟性のあるもので、例えば珪酸ナトリウム系やグラファイト系の防火発泡材を用いたものである。
【0121】そして、この図32の膨張体76も、火炎、煙等からの熱で加熱されると、図33に示すように膨張し、図30および図31に示す膨張体72と同様の作用効果を奏する。また、膨張体76は被包部材77にて被包するので、膨張体76の保護が図られ、膨張体76の擦れ等を防止でき、また、火炎が膨張体76に直接あたらない。」

(2)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「一対のガイドレール」、「巻上げシャッター」は、補正発明の「2つのガイドトラック(31)」、「昇降ドア」に相当する。
引用発明の「開口部にシャッターカーテンの両側縁を案内する一対のガイドレールとを備えた工場の建屋に設置することが可能で、シャッターカーテンを高速で昇降させることができる巻上げシャッター」は、高速で昇降し工場の建屋で用いることから高速作動産業用の巻上げシャッターであるといえる。
そうすると、引用発明の「巻上げシャッター」の「開口部」は、補正発明の「ドア開口部」に相当し、引用発明の「開口部にシャッターカーテンの両側縁を案内する一対のガイドレールとを備えた工場の建屋に設置することが可能で、シャッターカーテンを高速で昇降させることができる巻上げシャッター」は、補正発明の「ドア開口部の両側にそれぞれ配置される2つのガイドトラック(31)と、閉鎖状態で前記ドア開口部を覆うためのセグメントアーマー(2)とを備える高速産業用昇降ドア」に相当する。
引用発明の「シャッターカーテン12’」は、複数のスラット18’を相互に枢動可能に直列に連結した構成であるので、複数のスラット18’が軸を中心に回動可能に相互接続されたものといえる。
そうすると、引用発明の「シャッターカーテン12’」が「相互に枢動可能に直列に連結した」構成は、補正発明の「セグメントアーマー(2)は、関節方式で相互接続され」に相当する。
引用発明の「鋼製シャフト26’を介して互いに一定の角度で配置されるリンク24’」は、補正発明の「ヒンジピン(23)を介して互いに一定の角度で配置されるヒンジリンク(22)を有するヒンジストラップ(21)」に相当する。
引用発明の「チェーン22’は、開口部の垂直間隔に相応する長さを有し、ガイドレール内で支持及び案内され」は、補正発明の「ヒンジストラップ(21)は、前記ドア開口部の垂直間隔に相応する長さを有し、前記ガイドトラック(31)内で支持及び案内され」に相当する。
引用発明の「チェーン22’」が「リンク24’に固定され」「スラット18’」を備える構成は、補正発明の「セグメントアーマー(2)が前記ヒンジリンク(22)に設けられるスラット(24、24a)を備え」た構成に相当する。
引用発明の「上側のスラット18’」と「下側のスラット18’」は、上下に隣り合っているので、補正発明の「関連する隣接するスラット(24、24a)」に相当する。
引用発明の「下側のスラット18’の上縁部40’」は、補正発明の「関連する隣接するスラット(24、24a)の互いに対向する側方向境界部分(241)」に相当する。また、引用発明の「上側のスラット18’の下縁部42’」は、「関連する隣接するスラット(24、24a)の互いに対向する側方向境界部分(242)」にそれぞれ相当する。
引用発明の「凸条54’」、「凹溝52’」は、補正発明の「側断面が凸字状の凸部(243)」、「中心部分で側断面が凹字状の凹部(244)」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明の「上側のスラット18’の下縁部42’」が「凸条54’」を備える構成は、補正発明の「関連する隣接するスラット(24、24a)の互いに対向する側方向境界部分(241)は、側断面が凸字状の凸部(243)を持ち」に相当し、引用発明の「下側のスラット18’の上縁部40’」が「凹溝52’」を備える構成は、補正発明の「関連する隣接するスラット(24、24a)の互いに対向する側方向境界部分(242)は、中心部分で側断面が凹字状の凹部(244)を持ち」に相当する。
引用発明の「シャッターカーテン12’が下ろされた状態にあるときは、凹溝52’には凸条54’が挿入され」は、補正発明の「昇降ドアが閉鎖状態のとき前記凸部(243)が前記凹部(244)に挿入され」に相当する。
引用発明の「パッキング60’」は、補正発明の「シール部材(27)」に相当する。
引用発明の「パッキング60’は、スラット18’の全長に亘って延在し」た構成は、スラット18’の全長は開口部幅よりも長いので、パッキン部60’は開口部幅よりも長いものといえる。
そうすると、引用発明の「凸条54’の頭頂部と凹溝52’の底部との間に」「スラット18’の全長に亘って延在し、スラット18’の全長は、開口部幅よりも長い」「パッキング60’が介装され」た構成は、補正発明の「前記凸部(243)の頭頂部と前記凹部(244)の底部との間に前記ドア開口部の幅を実質的に超えて延びるシール部材(27)が介挿され」に相当する。
引用発明の「凸条54’の一方の側壁と対向する凹溝52’の側壁の間のラビリンス50’と、凸条54’の他方の側壁と対向する凹溝52’の側壁の間のラビリンス50’を有する」構成は、凸条54’の一方の側壁と凹溝52’の側壁との間と、凸条54’の他方の側壁と凹溝52’の側壁の間に2つのラビリンス50’を有した構成であるので、凸条54’の側壁と凹溝52’の側壁との間に2つのラビリンス50’を有した構成といえる。
そうすると、引用発明の「凸条54’の一方の側壁と対向する凹溝52’の側壁の間のラビリンス50’と、凸条54’の他方の側壁と対向する凹溝52’の側壁の間のラビリンス50’を有する」構成と、補正発明の「前記凸部(243)の側壁と前記凹部(244)の側壁(245)との間の2つのギャップ(246)は、7ミリメートルの幅を持ち」とは、「凸部(243)の側壁と凹部(244)の側壁(245)との間の2つのギャップ(246)」の構成で共通する。

以上により、補正発明と引用発明は、
「ドア開口部の両側にそれぞれ配置される2つのガイドトラック(31)と、閉鎖状態で前記ドア開口部を覆うためのセグメントアーマー(2)とを備える高速作動産業用昇降ドア(1)であって、
前記セグメントアーマー(2)は、関節方式で相互接続され、ヒンジピン(23)を介して互いに一定の角度で配置されるヒンジリンク(22)を有するヒンジストラップ(21)を備え、
前記ヒンジストラップ(21)は、前記ドア開口部の垂直間隔に相応する長さを有し、前記ガイドトラック(31)内で支持及び案内され、
前記セグメントアーマー(2)が前記ヒンジリンク(22)に設けられるスラット(24、24a)を備え、
前記関連する隣接するスラット(24、24a)の互いに対向する側方向境界部分(241)は、側断面が凸字状の凸部(243)を持ち、
前記関連する隣接するスラット(24、24a)の互いに対向する側方向境界部分(242)は、中心部分で側断面が凹字状の凹部(244)を持ち、
前記昇降ドアが閉鎖状態のとき前記凸部(243)が前記凹部(244)に挿入され、
前記凸部(243)の頭頂部と前記凹部(244)の底部との間に前記ドア開口部の幅を実質的に超えて延びるシール部材(27)が介挿され、
前記凸部(243)の側壁と前記凹部(244)の側壁(245)との間の2つのギャップ(246)を備える高速作動産業用昇降ドア」

の点で一致している。

他方、補正発明と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
凸部(243)の側壁と凹部(244)の側壁(245)との間の2つのギャップ(246)に関して、補正発明は「7ミリメートルの幅を持」つのに対し、引用発明は寸法が不明である点。
(相違点2)
補正発明が「前記凸部(243)の側壁と前記凹部(244)の側壁(245)との間に前記2つのギャップ(246)を閉鎖させるために熱の影響下で膨張する2つの防火要素(28a)を備え」ているのに対し、引用発明はそのような構成がない点。

(3)当審の判断
ア 相違点1について検討する。
刊行物1の【0022】には「このようにラビリンス50が形成されていることから、上下に隣り合った2本のスラット18の間の隙間を通過してシャッターカーテン12の一方の側から他方の側へ吹き抜ける気体の流れに対して抵抗力が作用し、その吹き抜けが抑制される。このことは、巻上げシャッター10を防火シャッターとして使用する場合に、火災時の火炎の吹き抜けを抑制する上で重要なことである。この吹き抜け抑制機能は、ラビリンス50の通路幅を狭くするほど向上するが、その通路幅が狭すぎると、シャッターカーテン12を巻取る際に、隣り合った2本のスラット18の間の相対的な回転が円滑に行えなくなるおそれがある。そこで、ラビリンス50だけでは、十分な吹き抜け抑制機能が得られないと予期される場合には、図5のA?Eに示したような封止材60a、60c?60eを使用するとよく、スラット18の上縁部40及び下縁部42には、それら封止材を取付けるための係止溝56(図4B)が形成されている。」と記載されている。
引用発明の「ラビリンス50’」は、パッキング60’を備えることからすれば、シャッターカーテン12を巻取る際に、隣り合った2本のスラット18の間の相対的な回転が円滑に行うために、適宜設計し得るものといえる。そして、刊行物6に記載のように、一般的に4mm程度の幅を備えることからすれば、「凸部(243)の側壁と凹部(244)の側壁(245)との間の2つのギャップ(246)」を「7mm」のように好適な値に設定することは当業者が容易に設計し得る程度のものである。

イ 相違点2について検討する。
刊行物2には、パネル111の端面部111aの略全長にわたって形成される溝130aに充填される加熱膨張性を有する材料によって形成される第1の充填材130とを備え、当該第1の充填材130が熱によって瞬時に膨張することによって、熱によって生じる端面部同士の隙間を塞ぎ、炎がパネル組立体100の一方の面側から他方の面側に突き抜けることを防止することができるパネル組立体及びガレージドアが記載されている。
しかし、刊行物2には、「凸部(243)の側壁と凹部(244)の側壁(245)との間に前記2つのギャップ(246)を閉鎖させる」構成は記載されてない。
また、火災時等に通気路となる部位に複数の防火要素を設ける周知技術の例として挙げられた刊行物3?5、7や刊行物6においても相違点2に係る構成は記載されていない。
刊行物1には「図8に示したスラット18’及びパッキング60’を備えたシャッターカーテンは、火災時の高温に曝露されたならば、そのパッキング60’が発火することなく上下のスラット18’に固着し、即ち膠着するため、それらスラット18’間のラビリンス50’が封止状態に維持され、火炎がラビリンス50’を吹き抜けることが防止される。」(【0036】)「従って、図4に示したラビリンス50は、上下に隣り合った2本のスラット18の間の隙間を通過してシャッターカーテン12の一方の側から他方の側へ吹き抜ける気体の流れに対して抵抗力が作用させて、その吹き抜けを抑制することを目的としたものであったのに対し、図8に示したラビリンス50’は、パッキング60’が火災時の火炎に直接曝露されるのを防止することを目的としたものであり、火災時の火炎の吹き抜けは、難燃性エラストマー材料で製作したパッキング60’によって防止されている。」(【0037】)と記載されており、パッキング60’により、火災時の高温に曝露され封止状態となり、火災の吹き抜けが防止されている。
そうすると、火災の吹き抜けを防止するために刊行物2や刊行物3?5、7に記載の熱の影響下で膨張する防火要素を隙間に設けることが周知であったとしても、引用発明は、火災の吹き抜けを防止するために「パッキング60’」がすでに設けられているから、「熱の影響下で膨張する2つの防火要素」を設けることは動機付けに欠けるといえる。
そうすると、引用発明において「前記凸部(243)の側壁と前記凹部(244)の側壁(245)との間に前記2つのギャップ(246)を閉鎖させるために熱の影響下で膨張する2つの防火要素(28a)を備え」ることは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
したがって、補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび
以上により、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-02-17 
出願番号 特願2011-523351(P2011-523351)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E06B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 家田 政明  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 竹村 真一郎
住田 秀弘
発明の名称 高速作動産業用昇降ドア  
代理人 大川 宏  

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