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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B26D
管理番号 1297620
審判番号 不服2013-24167  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-06 
確定日 2015-02-12 
事件の表示 特願2008-165369「カッティングプロッタおよびそれを用いた切削屑の清掃方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月14日出願公開、特開2010- 5715〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年6月25日の出願であって、平成25年1月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年4月5日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年9月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成25年4月5日付け手続補正書により補正された請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1には、次のとおり記載されている。

「被加工媒体を載置して保持する平板状に形成された媒体保持手段と、
前記被加工媒体の上方を前記被加工媒体に対して相対移動しながら前記被加工媒体を切削加工する切削手段と、
前記被加工媒体の上方を前記被加工媒体に対して相対移動しながら、前記切削手段が前記被加工媒体を切削加工したときに発生した切削屑を吸引除去する切削屑清掃手段と、
前記切削手段および前記切削屑清掃手段が取り付けられて前記媒体保持手段の上方を前記媒体保持手段に対して相対移動することによって、前記切削手段および前記切削屑清掃手段に前記被加工媒体の上方を前記被加工媒体に対して相対移動させるキャリッジとを有したカッティングプロッタにおいて、
前記切削手段により切削加工がなされた前記被加工媒体が前記媒体保持手段から取り除かれた後、前記切削屑清掃手段を前記媒体保持手段に対して相対移動させながら前記媒体保持手段の上面の切削屑を吸引除去するとき、前記切削屑清掃手段が前記媒体保持手段の上方を相対移動する相対移動範囲を設定する移動範囲設定手段を備え、
前記移動範囲設定手段は、前記切削手段が前記被加工媒体を切削加工するときに相対移動した加工移動範囲を基にして、前記加工移動範囲を含むように前記相対移動範囲を設定することを特徴とするカッティングプロッタ。」(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3.引用刊行物とその記載事項

原査定の拒絶の理由に第1引用例として引用され、本件出願日前に頒布された特開平6-190680号公報(以下「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)
「【発明の実施例】以下図示実施例に基づいて本発明を説明する。本発明のブリストルベッド・クリーナーは、固定式やコンベヤ式を含めた多様なブリストルベッドに広く適用できる。図1は本発明のクリーナーを適用可能な切削機とブリストルベッドの一例である。ここで図示されたベッドは米国特許No.4,205,835号に開示されたベッドに類似するものであり、切削機10はシート状の素材の裁断を目的としている。切断されるべきシート材は、布或は同様の素材の層を有するもので、テーブル12の上に載り非通気素材シート19で覆われている。垂直方向に往復運動をするナイフ22を有するカッターヘッド18は、カッターキャリッジ21に配置されており、カッターキャッリッジ21はメインキャッリッジ20の延長方向に移動する。
図1のテーブル12にはブリストルベッド26によって上向きに作業材を支える支持面24が配設されている。ブリストルベッドは、地面に対して水平に固定されていて、ほぼ垂直に上向きに植設されたブリストル(剛毛体群)28によって構成されており、支持面24はブリストルの上部自由端によって構成されている。ベッドの支持面24は、矢印Yと同方向の幅方向と、矢印Xと同方向の長手方向を有する矩形である。メインキャリッジ20は、支持面24の幅方向全長に渡る長さを有し、支持面24の上方を、支持面に平行にその長手方向に沿って移動可能である。
このメインキャリッジの両端は、レール30によって支えられている。レール30には、メインキャリッジの両端を支えるラックと案内面を有するレールが配設されており、メインキャリッジは、レールのラックに接続されたX軸方向駆動モーターのピニオンによって、レールに沿って移動する。カッターヘッドキャリッジ21は、Y軸方向駆動モーターによって、メインキャリッジの長手方向に沿って移動される。故にメインキャリッジ20のX方向の移動と、カッターヘッドキャリッジ21のY方向の移動との連動によって、カッターヘッドは、被切削材16を任意に切削できるようになる。キャリッジ20、21の運動とそれに関連するカッターヘッド18の作業は、従来どおりメインコントローラー32によって操作される。
米国特許No.4,205,835に開示されているように、ブリストルベッド26は、小さなブリストルユニットあるいはブリストルスクエアで構成されるのが好ましい。ブリストルは、例えば射出成型プラスチックで作られ、それぞれ底部とそこから上方に伸びるブリストル28を有する。ブリストル28は、多数のブリストルユニットからなり、これらのブリストルユニットは、グリッド33(格子枠)に支持されている。グリッド33の下方には真空室(負圧室)群があり、それぞれはブリストルベッドの幅方向に伸び、長手方向に並列に配置されている。各真空室は、バルブ操作部材36の操作で、メインエアダクト34に断接可能である。
メインエアダクト34は、選択弁38によって、エアポンプあるいはエアタービン44の真空ポート40あるいは圧力ポート42に接続可能である。各真空室は、エアダクト34が空気ポンプの真空ポート40に接続された状態で、関連する操作部材36が内側に押されると、負圧源に接続される。図1に示される通り、図示装置は、操作部材36を操作するメインキャリッジ20に保持されたカム46を有する。カッターヘッド18の下方あるいは近辺に位置する真空室には、カッターヘッド近傍の被切削材を下方に吸引保持するために、真空圧が掛けられる。操作部36の適切な部分を内側に押すことによって、空気管34がエアポンプ44の加圧空気孔に接続される場合は、圧縮空気がブリストルベッドに送られ、その結果、支持面24と被切削材との間にエアクッション(空気層)が形成され、支持面へ被切削材を積み降ろす際、被切削材を容易にスライドさせることができる。」(段落【0017】?【0021】)

(イ)
「本発明のブリストルベッドクリーナーは、切削機のカッターヘッドキャリッジに装着することが可能である。クリーナーはカッターヘッドに沿って配置されてもよいし、カッターヘッドと交換で装着されてもよい。図2では、図1の切削機10が図示されているが、図1のカッターヘッド18は取り外されてクリーナー50と交換されている。故に、コントローラー32の指示のもとで、メインキャリッジ20が支持面の長手方向に移動すると、クリーナー50は支持面24の長手方向に移動し、また、メインキャリッジ20の長手方向に沿ってカッターヘッドキャリッジ21が移動すると、支持面24の幅方向に移動する。そして、クリーナー50が、クリーニング操作時に、支持面24の長手方向に沿って矢印Bの方向に移動すると、ブリストルベッド26の全幅の何分の一かを清掃する。従って、ブリストルベッド全体を清掃するには、クリーナーは長手方向に往復運動し、その際、クリーナーは、往復運動の各軌跡の最後に支持面の幅方向に移動して、次の道筋で未だ清掃していない支持面と出合うことになる。
本発明によるクリーナーは、基準線に沿って互いに間隔を空けて固定されたブレード群を有する。ブレード群は、ブレードとブリストルベッドが、その基準線に直角に、また支持面に平行に、相互関係を持ちながら移動する際、ブリストルベッドに入り込み、ブリストル間を移動して、切り屑を除去する。これらのブレードは、基準線に対して回転可能でも回転不可能でもよい。またクリーナーは、除去した切り屑を捕捉し、収集する真空器具を内蔵しても内蔵しなくともよい。クリーナーはまた、ブレードに近接してブレードあるいはブリストルベッドを加振させる加振部を有しても、有さなくともよい。図3、4、5にも詳しいが、例えば、図2のクリーナー50は、切り屑を収集する真空捕捉器具、ブレードに近接したブリストルベッドを加振させる加振機を有する例である。」(段落【0022】?【0023】)

(ウ)
「図3に示されたように、清掃操作の際、クリーナー50は矢印Bの方向に左に移動する。各ブレード56は、各ブレードの底端からほぼ上方に、後方に向けて伸び、ブリストルベッド内での移動の際に接触する切り屑を取り除くために、前方あるいは前進端を持つように、形成、配置されている。しかし図1のブレードの形状及び配置は一例に過ぎず、本発明を逸脱することなく多様な形状及び配置が使用可能である。
ブレード56の移動によってブリストルベッドから除去され、取り除かれた切り屑は多様な方法で処分することができる。清掃操作の後、操作者の手でほうきや掃除機を使って除去してもよい。しかし図3、6、7に示されたようなクリーナー50は掃除機に類似し、除去された切り屑を収集する真空吸引装置64を内蔵する。この真空吸引装置64は、真空を作り出す動力ユニット66、ブレード56の直前に口を開けた吸入口68、切り屑収容器70を有する。故に、切り屑がブレード56で除去される際、吸入口68の口への空気の流れが切り屑を吸引し、空気と共に除去することになる。同時に、加圧空気がブリストルベッドに供給されるように、真空ポンプ44と図2の選択弁38が操作、作動される。加圧空気はブリストルの上部自由端に向かって流れ、切り屑の支持面への移動をさらに促す。そして、支持面の上に出た切り屑は、吸入口68によって収集されことになる。」(段落【0027】?【0028】)

上記記載事項(ア)?(ウ)及び当業者の技術常識によれば、上記刊行物には、以下の発明が記載されていると認められる。

「被切削材を載置して保持する平板状に形成されたテーブル12と、
前記被切削材の上方を前記被切削材に対して相対移動しながら前記被切削材を切削加工するカッターヘッド18と、
前記被切削材の上方を前記被切削材に対して相対移動しながら、前記カッターヘッド18が前記被切削材を切削加工したときに発生した切り屑を吸引除去するクリーナー50と、
前記カッターヘッド18または前記クリーナー50が取り付けられて前記テーブル12の上方を前記テーブル12に対して相対移動することによって、前記カッターヘッド18または前記クリーナー50に前記被切削材の上方を前記被切削材に対して相対移動させるメインキャリッジ20とを有した切削機10において、
前記カッターヘッド18により切削加工がなされた前記被切削材が前記テーブル12から取り除かれた後、前記クリーナー50を前記テーブル12に対して相対移動させながら前記テーブル12の上面の切削屑を吸引除去する切削機10。」(以下「引用発明」という。)

4.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用発明の「被切削材」、「テーブル12」、「カッターヘッド18」、「切り屑」、「クリーナー50」、「メインキャリッジ20」、「切削機10」は、それぞれ、本願発明の「被加工媒体」、「媒体保持手段」、「切削手段」、「切削屑」、「切削屑清掃手段」、「キャリッジ」、「カッティングプロッタ」に相当する。

そうすると、両者は、
「被加工媒体を載置して保持する平板状に形成された媒体保持手段と、
前記被加工媒体の上方を前記被加工媒体に対して相対移動しながら前記被加工媒体を切削加工する切削手段と、
前記被加工媒体の上方を前記被加工媒体に対して相対移動しながら、前記切削手段が前記被加工媒体を切削加工したときに発生した切削屑を吸引除去する切削屑清掃手段と、
前記切削手段または前記切削屑清掃手段の少なくとも一方が取り付けられて前記媒体保持手段の上方を前記媒体保持手段に対して相対移動することによって、前記切削手段または前記切削屑清掃手段の少なくとも一方に前記被加工媒体の上方を前記被加工媒体に対して相対移動させるキャリッジとを有したカッティングプロッタにおいて、
前記切削手段により切削加工がなされた前記被加工媒体が前記媒体保持手段から取り除かれた後、前記切削屑清掃手段を前記媒体保持手段に対して相対移動させながら前記媒体保持手段の上面の切削屑を吸引除去するカッティングプロッタ。」
の点で一致し、次の点で相違している。

〈相違点1〉
「キャリッジ」について、本願発明では「切削手段および切削屑清掃手段が取り付けられて」いるのに対して、引用発明では「切削手段または切削屑清掃手段が取り付けられて」いる点。

〈相違点2〉
本願発明では「切削屑清掃手段が媒体保持手段の上方を相対移動する相対移動範囲を設定する移動範囲設定手段を備え、前記移動範囲設定手段は、前記切削手段が前記被加工媒体を切削加工するときに相対移動した加工移動範囲を基にして、前記加工移動範囲を含むように前記相対移動範囲を設定する」のに対して、引用発明では、そのような構成を有しているかどうか不明である点。

5.相違点についての検討
〈相違点1について〉
上記刊行物には、「クリーナー110」(「切削屑清掃手段」に相当。以下同様。)について、以下のような記載がある。
「本発明のブリストルベッドクリーナーは、切削機のカッターヘッドキャリッジに装着することが可能である。クリーナーはカッターヘッドに沿って配置されてもよいし、カッターヘッドと交換で装着されてもよい。・・・」(段落【0022】)
「図17、18には、この欠点を解消するようなクリーナー110の実施例が示されている。このクリーナー110はメインキャリッジ20に装着されている。・・・」(段落【0041】)

また、刊行物に記載の図17を見ると、メインキャリッジ20(「キャリッジ」)に、カッターヘッド18(「切削手段」)およびクリーナー110(「切削屑清掃手段」)が取り付けられているのが見て取れる。
してみると、引用発明において、メインキャリッジ20(「キャリッジ」)に、カッターヘッド18(「切削手段」)またはクリーナー110(「切削屑清掃手段」)が取り付けられていることに代えて、メインキャリッジ20(「キャリッジ」)に、カッターヘッド18(「切削手段」)およびクリーナー110(「切削屑清掃手段」)を併せて取り付けることは、刊行物1に示唆されているといえる。
さらに、切削手段と切削屑清掃手段とを併せて同一部材に設けることは、従来周知である(必要であれば、特開平10-315093号公報等参照)。
以上のことからすると、引用発明において、上記相違点1に係る構成を採用することは、刊行物の記載事項及び従来周知の技術に基づいて当業者ならば必要に応じて適宜なし得るものに過ぎないものであり、格別の困難性はないものである。

〈相違点2について〉
引用発明は、カッターヘッド18(「切削手段」)により切削加工がなされた被切削材(「被加工媒体」)がテーブル12(「媒体保持手段」)から取り除かれた後、クリーナー50(「切削屑清掃手段」)を前記テーブル12(「媒体保持手段」)に対して相対移動させながら前記テーブル12(「媒体保持手段」)の上面の切り屑(「切削屑」)を吸引除去するものであるが、前記クリーナー50(「切削屑清掃手段」)は、前記テーブル12(「媒体保持手段」)の上面のどの範囲を清掃するのかは明確でない。
しかしながら、刊行物の上記記載事項(ア)には「・・・カッターヘッド18の下方あるいは近辺に位置する真空室には、カッターヘッド近傍の被切削材を下方に吸引保持するために、真空圧が掛けられる。・・・」(段落【0021】)との記載があり、被切削材(「被加工媒体」)はテーブル12(「媒体保持手段」)に吸引保持されていることが理解され、切削加工中に出た切り屑(「切削屑」)は、カッターヘッド18(「切削手段」)の加工移動範囲を含む領域に、テーブル12(「媒体保持手段」)上に下方に吸引保持されているものとみられる。そして、テーブル12(「媒体保持手段」)上の切り屑(「切削屑」)を回収するためには、カッターヘッド18(「切削手段」)の加工移動範囲を基としてより広範囲にクリーナー50(「切削屑清掃手段」)の移動範囲を設定すればよいことは技術常識からみて自明であり、そのように設定することに格別の困難性はない。
してみると、引用発明において、上記相違点2に係る構成を採用することは、刊行物の記載事項及び技術常識に基づいて当業者ならば必要に応じて適宜なし得るものに過ぎないものであり、格別の困難性はないものである。

そして、本願発明の効果も、当業者であれば、引用発明、刊行物の記載事項、従来周知の技術及び技術常識から予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物の記載事項、従来周知の技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

6.まとめ
以上、本願発明は、引用発明、刊行物の記載事項、従来周知の技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-05 
結審通知日 2014-12-09 
審決日 2014-12-24 
出願番号 特願2008-165369(P2008-165369)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B26D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西中村 健一大光 太朗  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 三澤 哲也
石川 好文
発明の名称 カッティングプロッタおよびそれを用いた切削屑の清掃方法  
代理人 原口 貴志  

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