ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02B |
---|---|
管理番号 | 1297731 |
審判番号 | 不服2013-19010 |
総通号数 | 184 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-10-01 |
確定日 | 2015-02-19 |
事件の表示 | 特願2009- 61115「動力発生システムおよびその発生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月30日出願公開、特開2010-216274〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成21年3月13日の出願であって、平成25年1月16日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成25年3月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年6月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成25年10月1日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。 そして当審において、平成26年6月20日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成26年8月8日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年9月9日付けで再度の拒絶理由が通知され、これに対し平成26年11月11日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成26年11月11日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「 【請求項1】 アンモニアを燃料とする動力発生装置であって、助燃材としてアンモニアを接触分解して得られた水素を用いると共に、前記燃料であるアンモニアの一部を前記動力発生装置に導入する前に別途燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用い、当該アンモニアの一部を別途燃焼させる反応が触媒上で行われ、前記アンモニアの燃焼に用いられる触媒と、前記アンモニアの接触分解に用いられる触媒とにおいて、その組成が同一であることを特徴とする動力発生システム。」 3.引用文献 3.-1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 本願の出願前に頒布され、当審が平成26年9月9日付けで通知した拒絶理由で引用された刊行物である特開平5-332152号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はアンモニアガスを燃焼させて駆動力を得るアンモニア燃焼エンジンに関する。」(段落【0001】) (イ)「【0012】 【実施例】図1には本発明が適応されたアンモニア燃焼エンジン10が示されている。このアンモニア燃焼エンジン10では吸気弁12を介して連通される吸気管14の図示しない先端はフィルター等を介して大気に開放され、中間部には第1配管16の一端が連通されている。この第1配管16の他端は開閉弁18を介してアンモニアタンク22へ連通されている。したがってアンモニアタンク22内の液化アンモニアはこの第1配管16で気化し吸気管14内の空気と混合された後に燃焼室24へ供給されるようになっている。アンモニアタンク22にはタンク圧センサ23が、また第1配管16の中間部には供給アンモニア量を制御するための制御弁26が設けられている。このタンク圧センサ23は検出信号を制御手段28へと送り、制御弁26は制御手段28によってその開閉量が制御される。なお吸気管14にはエンジンへの供給空気流量を検出するための流量センサ32、吸気圧を検出するための吸気圧センサ34が設けられており、それぞれ制御手段28へ検出信号を送るようになっている。 【0013】アンモニアタンク22の開閉弁18からは第2配管36が連通され、アンモニア分解反応器38の熱交換パイプ42へと連通されている。このアンモニア分解反応器38はアンモニア燃焼エンジン10における排気管44の中間部に設けられ、排気弁46を介して燃焼室24からの燃焼後の排気ガスが導かれている。熱交換パイプ42の他端は切換弁48へ導かれている。したがってこのアンモニア分解反応器38ではアンモニアタンク22から導かれたアンモニアガスがエンジンの排気ガス熱を吸収する吸熱反応によって水素(H_(2) )と窒素(N_(2) )とに吸熱分解反応をなすように構成されている。 【0014】 【数1】…(中略)… なお排気ガス熱が低い場合に効果的に熱交換パイプ42を加熱するために補助ヒータ52が設けられる。この補助ヒータ52は一例として赤外線ヒータが適用可能であり、制御手段28によってその加熱開始、停止が制御される。なお排気管44には排気ガス熱の温度を検出するための温度センサ54が設けられ、検出信号を制御手段28へと送るようになっている。また第2配管36の中間部には流量制御弁56が介在されて制御手段28により制御されるようになっている。 【0015】切換弁48は制御手段28によって制御され、熱交換パイプ42からの分解ガスを水素吸蔵手段58へ導く分岐配管62及び燃焼室24の副燃焼室64へ導く分岐配管66が連通されている。水素吸蔵手段58は内部にFeTi系,LaNi系などの水素吸蔵合金がタンク内に設けられ、分岐配管62からの水素(H_(2) )及び窒素(N_(2) )の供給によってこのうちの水素(H_(2) )のみを放熱反応によって吸蔵し、窒素(N_(2) )を排出管68から排出させるようになっている。また水素吸蔵時に放熱反応を促進するため冷却水を供給する冷却水配管69が設けられている。またこの水素吸蔵手段58は加熱により貯蔵した水素を放出するので、この水素を取出すための水素取出配管71が設けられており、制御手段28によって制御される開閉弁72が介在されている。水素放出時の熱媒は冷却水配管69を用いるが、別個に温水配管や補助ヒータ52と同様のヒータを用いてもよい。また水素吸蔵手段68での水素貯留量を検出するための圧力センサ70がタンク内に設けられ、検出信号を制御手段28へと送るようになっている。 【0016】一方、切換弁48から分岐された分岐配管66は燃焼室24の副燃焼室64へ発生した水素ガス(H_(2) )を窒素ガス(N_(2) )と共に供給し、副燃焼室64内に設けられる点火プラグ73によって燃焼工程の初期に水素ガスを効果的に燃焼させて燃焼速度を増し、この火炎伝播によって燃焼室24内の広範囲に渡ってアンモニアガスを燃焼させるようになっている。アンモニアガスの燃焼によって往復動するピストン74はクランク75の回転運動として駆動力を伝え、このクランク回転数がエンジン回転数として回転センサ76から検出されて制御手段28と検出信号を伝達するようになっている。 【0017】なお制御手段28はエンジンのスロットル開度センサ77及びエンジンの冷却水温度を検出する冷却水温度センサ78等からの信号をも必要に応じて制御情報として受けるようになっている。またエンジン10の吸気弁12及び排気弁46は一般のガソリンエンジンと同様に開閉制御される。 【0018】次の本実施例の作用を説明する。アンモニアタンク22内にはアンモニアガスが加圧され液化状態で貯留されている。一例としてアンモニアガスの液化圧力は温度30°Cで12気圧、40°Cで16気圧程度である。このアンモニアタンク22の開閉弁18を開放すると気化したアンモニアガスは第1配管16を介して吸気管14内の空気と混合して燃焼室24へと導かれる。一方アンモニアガスは第2配管36を介してアンモニア分解反応器38へと導かれる。燃焼室24ではアンモニアガスが燃焼しにくいため、副燃焼室64内へ水素ガス等の燃焼容易なガスを導いて初期燃焼を行わせ、これによって燃焼室24内の全域に渡ってアンモニアガスを効果的に燃焼させる。必要であれば副燃焼室64内へは水素吸蔵手段58の吸蔵水素を分岐配管62、分岐配管66を介して供給させることができるが、補助ヒータを別個設けたり、他種の燃焼容易なガスを導いてもよい。 【0019】燃焼室24の燃焼初期はアンモニア分解反応器38へ導かれる排気ガス温度も低いので制御手段28はこれを温度センサ54からの検出信号によって検知し、補助ヒータ52を発熱させることによって熱交換パイプ42を効果的に加熱させ、アルミナ担持のNi系触媒あるいはPt系触媒等のアンモニア分解に効果のある触媒の作用の下でアンモニアガスを窒素と水素とに分解して分岐配管62、分岐配管66へと導く。切換弁48の開閉度合いによって燃焼室24へ必要量の水素ガスを供給し、残りは水素吸蔵手段58へ送り込んで水素を吸蔵させる。さらにアンモニア燃焼エンジン10の始動時に限らず急加速時等の燃焼室24における水素必要量が多い場合に熱交換パイプ42で分解された水素の大部分を副燃焼室64へ供給してもよく、これによってもさらに水素供給量が不足する場合には水素吸蔵手段58で貯留された水素をも副燃焼室64へ供給することができる。 【0020】なおアンモニア燃焼エンジン10へ供給するアンモニア量はエンジンスロットル開度やエンジン負荷に応じて、さらには流量センサ32、吸気圧センサ34からの検出信号によって制御する。 【0021】アンモニア分解反応器38におけるアンモニアガスの分解反応 【0022】 【数2】…(中略)… は吸熱反応であるため、燃焼室24から大気へ放出される排気ガス内の熱エネルギーを化学エネルギーとして効果的に回収するため、従来の熱効率(約28%)を最大でさらに7%程度向上させることが可能となる。」(段落【0012】ないし【0022】) (2)引用文献1記載の事項 上記(1)(ア)及び(イ)並びに図1の記載から、以下の事項が分かる。 (ウ)上記(1)(ア)の記載において、エンジンがアンモニアガスを燃焼させて駆動力を得るということは、アンモニアを燃料とすることにほかならないから、引用文献1には、アンモニアを燃料とするエンジンが記載されていることが分かる。 (エ)上記(1)(イ)の段落【0018】には、「燃焼室24ではアンモニアガスが燃焼しにくいため、副燃焼室64内へ水素ガス等の燃焼容易なガスを導いて初期燃焼を行わせ、これによって燃焼室24内の全域に渡ってアンモニアガスを効果的に燃焼させる。」と記載されているから、引用文献1に記載されたアンモニアを燃料とするエンジンは、初期燃焼を行わせるための燃焼容易なガスとして水素を用いるものであることが分かる。 (オ)上記(1)(イ)の段落【0012】及び【0013】並びに図1の記載から、引用文献1に記載されたアンモニアを燃料とするエンジンは、アンモニアタンク22から供給されるアンモニアを、吸気管14内の空気と混合し、燃焼室24で燃焼させ、燃焼後の排気ガスをアンモニア分解反応器38に導いてアンモニアを分解して水素を得るものであることが分かる(以下、アンモニアタンク22、吸気管14、エンジン10及びアンモニア分解反応器38とを総合して、便宜上、「エンジンシステム」という。)。 (カ)上記(1)(イ)の段落【0019】には、「燃焼室24の燃焼初期は…(中略)…アルミナ担持のNi系触媒あるいはPt系触媒等のアンモニア分解に効果のある触媒の作用の下でアンモニアガスを窒素と水素とに分解して分岐配管62、分岐配管66へと導く。」と記載されているところ、該「アンモニア分解に効果のある触媒」は、当然に、エンジンでアンモニアを燃焼させて得られた熱も、アンモニアの分解に用いることは明らかであるから、引用文献に記載されたアンモニアを燃料とするエンジンは、アンモニア分解に効果のある触媒の作用の下でアンモニアタンク22から導かれたアンモニアを接触分解して得られた水素を用いると共に、アンモニアをエンジンで燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用いるものであることが分かる。 (3)引用発明 上記(1)、(2)及び図1の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「アンモニアを燃料とするエンジンであって、初期燃焼を行わせるための燃焼容易なガスとしてアンモニアを接触分解して得られた水素を用いると共に、アンモニアをエンジン10で燃焼させて得られた熱を用いたアンモニアの接触分解が、アンモニア分解に効果のある触媒の作用の下で行われるエンジンシステム。」 3.-2 引用文献2 (1)引用文献2の記載 本願の出願前に頒布され、当審が平成26年9月9日付けで通知した拒絶理由で引用された刊行物である劉 社田,外2名,”Hydrogen production by oxidative decomposition of ammonia on Ru/Al_(2)O_(3)”,第98回触媒討論会 討論会A予稿集,触媒学会,平成18年9月26日,p.145(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 (ア)「1. Introduction CO_(X)-free hydorogen production … and shifting the thermodynamic equilibrium of the reaction.」(左欄第9ないし21行) 〈当審仮訳〉「燃料電池に使用するために、アンモニアの分解(DeA、NH_(3)⇔1.5H_(2)+0.5N_(2) ΔH=45.9kJ/mol)によるCO_(X)を排出しない水素生産が最近注目を集めている。高温と低いガス空間速度(GHSV)がほぼ完全な分解(>99.9%)に通常用いられる。アンモニアの発熱酸化(NH_(3)+0.75O_(2)→0.5N_(2)+1.5H_(2)O ΔH=-382.9kJ/mol)とDeAとの組み合わせによるアンモニアの酸化分解(ODeA)が、熱伝導を高め、熱力学的な反応の均衡へ変位することにより、発熱分解を加速する契機を与える。」 (イ)「2. Experimental The ODeA and DeA reactions … by an on-line GC analysis system.」(左欄第22ないし29行) 〈当審仮訳〉「ODeAとDeA反応は、固定床石英反応器を用い、250?900℃、20,000?100,000h^(-1)のガス空間速度(GHSV)、O_(2)/NH_(3)の分子比を0.0?0.5、含浸により準備されたRu/Al_(2)O_(3)とRu-K/Al_(2)O_(3)が、反応に用いられた。流出反応ガスが分離され、オンラインガスクロマトグラフィー分析システムによって解析された。」 (ウ)「3. Results and Discussion The results indicated … both the DeA and ODeA reactions.」(左欄第30ないし32行) 〈当審仮訳〉「結果は、Ru/Al_(2)O_(3)がDeAとODeAの両反応ともとても活発であることを示した。 (2)引用文献2記載の技術 上記(1)から、引用文献2には次の発明(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。 「アンモニアを発熱酸化させて得られた熱をアンモニアの分解に用い、アンモニアの発熱酸化を触媒上で行い、アンモニアの発熱酸化に用いられる触媒とアンモニアの分解に用いられる触媒をRu/Al_(2)O_(3)とする技術。」 3.-3 引用文献3 (1)引用文献3の記載 本願の出願前に頒布され、当審が平成26年9月9日付けで通知した拒絶理由で引用された刊行物である特開2003-40602号公報(以下、「引用文献3」という。)には図面とともに次の記載がある。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は燃料電池へ供給される水素を製造する装置に関し、詳しくは燃料電池自動車用に最適な水素製造装置に関する。」(段落【0001】) (イ)「【0039】ところで燃料電池からの排ガスのみでは、例えば始動時や、燃料電池の出力が低から高に急変したような場合など、燃焼器で生成する熱量が分解器での分解反応に不足する場合がある。このような場合には、燃焼器に燃料であるアンモニアの一部を供給して燃焼させることができる。この場合でも、空気供給手段を制御することで最適な空気量を供給することができ、窒素酸化物の生成を防止することができる。」(段落【0039】) (ウ)「【0045】燃焼器3には、燃料電池4の排ガスがバルブ30を介して燃焼器3に供給されるように構成されている。また空気供給手段5からの空気も燃焼器3に供給される。これにより燃料電池4の排ガス中の水素及びアンモニアが燃焼器3で燃焼される。またバルブ11がバルブ30に連結され、供給器10から気化したアンモニアの一部も燃焼器3に供給可能となっている。 【0046】燃焼器3は分解器2と一体的に形成され、燃焼器3の燃焼熱が分解器2に伝達されるように構成されている。図2に分解器2及び燃焼器3の詳細を示す。分解器2は複数の分解流路20をもち、分解流路20にはアルミナ・ジルコニア混合物を焼結形成した多孔質担体にRu及びPtが各 0.2, 0.8重量%担持されてなるペレット触媒21が充填されている。それぞれの分解流路20は末端で一つになり、分解ガスが出口22から燃焼電池4に供給される。また燃焼器3は複数の燃焼流路31をもち、燃焼流路31にはアルミナ,セリアを20:1の割合で混合した酸化物多孔質担体にPt及びRhが各 0.8, 0.2重量%担持されてなるペレット触媒32が充填されている。それぞれの燃焼流路31の端末は図示しない連通路により互いに連通され、出口33から排気されるように構成されている。」(段落【0045】及び【0046】) (2)引用文献3記載の技術 上記(1)から、引用文献3には次の発明(以下、「引用文献3記載の技術」という。)が記載されているといえる。 「自動車技術の分野において、供給器10から気化したアンモニアの一部を燃焼器3に供給し、ペレット触媒32が充填された燃焼器3の燃焼熱が、ペレット触媒21が充填された分解器2に伝達される技術。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「エンジン」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「動力発生装置」に相当し、以下同様に、「初期燃焼を行わせるための燃焼容易なガス」は「助燃材」に、「アンモニア分解に効果のある触媒」は「アンモニアの接触分解に用いられる触媒」に、それぞれ相当する。 また、本願の明細書の段落【0018】の記載からみて、本願発明の「動力発生システム」が、アンモニア供給装置、空気供給装置、アンモニア分解装置、動力発生装置から構成されると認められるところ、引用発明において、アンモニアタンク22、吸気管14、エンジン10及びアンモニア分解反応器38を総合した「エンジンシステム」は、その構成から、本願発明における「動力発生システム」に相当する。 そして、引用発明において「アンモニアをエンジン10で燃焼させて得られた熱を用い」て「アンモニアの接触分解」を行うことは、その技術的意義からみて、本願発明において「燃料であるアンモニアの一部を」「燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用いる」ことに相当する。 したがって、燃料であるアンモニアの一部を燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用いるという限りにおいて、引用発明において「アンモニアをエンジン10で燃焼させて得られた熱を用いたアンモニアの接触分解が、アンモニア分解に効果のある触媒の作用の下で行われる」ことは、本願発明において「燃料であるアンモニアの一部を動力発生装置に導入する前に別途燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用い、アンモニアの一部を別途燃焼させる反応が触媒上で行われ、アンモニアの燃焼に用いられる触媒と、アンモニアの接触分解に用いられる触媒とにおいて、その組成が同一である」ことに相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、 「 アンモニアを燃料とする動力発生装置であって、助燃材としてアンモニアを接触分解して得られた水素を用いると共に、燃料であるアンモニアの一部を燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用いる動力発生システム。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 燃料であるアンモニアの一部を燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用いることに関し、本願発明においては、「燃料であるアンモニアの一部を動力発生装置に導入する前に別途燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用い、アンモニアの一部を別途燃焼させる反応が触媒上で行われ、アンモニアの燃焼に用いられる触媒と、アンモニアの接触分解に用いられる触媒とにおいて、その組成が同一である」のに対して、引用発明においては、「アンモニアをエンジン10で燃焼させて得られた熱を用いたアンモニアの接触分解が、アンモニア分解に効果のある触媒の作用の下で行われる」ものである点(以下、「相違点」という。)。 5.判断 上記相違点に係る本願発明の発明特定事項について検討するために、引用文献2記載の技術と本願発明とを対比すると、引用文献2記載の技術における「発熱酸化」及び「分解」は、その技術的意義からみて、それぞれ本願発明における「燃焼」及び「接触分解」に相当し、引用文献2記載の技術において「アンモニアの発熱酸化に用いられる触媒とアンモニアの分解に用いられる触媒をRu/Al_(2)O_(3)とする」ことは、本願発明において「アンモニアの燃焼に用いられる触媒と、アンモニアの接触分解に用いられる触媒とにおいて、その組成が同一である」ことに相当するから、引用文献2記載の技術は本願発明の用語を用いて次のように表すことができる。 「アンモニアを燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用い、アンモニアの燃焼を触媒上で行い、アンモニアの燃焼に用いられる触媒と、アンモニアの接触分解に用いられる触媒とにおいて、その組成を同一とする技術。」 また、同様に引用文献3記載の技術と本願発明とを対比すると、引用文献3記載の技術において「供給器10から気化したアンモニアの一部を燃焼器3に供給」することは、その技術的意義からみて、本願発明において「燃料であるアンモニアの一部を」「別途燃焼させ」ることに相当し、同様に、「ペレット触媒32が充填された燃焼器3の燃焼熱が、ペレット触媒21が充填された分解器2に伝達される」ことは、「燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用い」ることに相当するから、引用文献3記載の技術は本願発明の用語を用いて次のように表すことができる。 「自動車技術の分野において、燃料であるアンモニアの一部を別途燃焼させ、燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用いる技術。」 そして、引用発明は、「アンモニアをエンジン10で燃焼させて得られた熱」という廃熱を利用して、アンモニアの接触分解を行うことにより、熱効率を向上させるものであるところ(上記3.-1(1)(イ)の段落【0022】参照。)、その廃熱利用をやめて、燃料であるアンモニアの一部を燃焼させ、その熱を利用してアンモニアの接触分解を行うようにすることは、単に、引用発明よりも前の技術に戻ったということにすぎない。 したがって、引用発明において、引用文献3記載の技術を参酌して、燃料であるアンモニアの一部を動力発生装置に導入する前に別途燃焼させて得られた熱をアンモニアの接触分解に用いるとともに、引用文献2記載の技術を適用することにより、アンモニアの燃焼に用いられる触媒と、アンモニアの接触分解に用いられる触媒とにおいて、その組成を同一とすることにより、上記相違点に係る本願発明の特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明は、全体構成でみても、引用発明、引用文献2記載の技術及び引用文献3記載の技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものでもない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び引用文献3記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-12 |
結審通知日 | 2014-12-16 |
審決日 | 2015-01-05 |
出願番号 | 特願2009-61115(P2009-61115) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F02B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 しのぶ |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 中村 達之 |
発明の名称 | 動力発生システムおよびその発生方法 |
代理人 | 植木 久彦 |
代理人 | 植木 久一 |
代理人 | 菅河 忠志 |
代理人 | 柴田 有佳理 |
代理人 | 柴田 有佳理 |
代理人 | 菅河 忠志 |
代理人 | 伊藤 浩彰 |
代理人 | 植木 久一 |
代理人 | 伊藤 浩彰 |
代理人 | 植木 久彦 |