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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05C
管理番号 1297755
審判番号 不服2014-4312  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-05 
確定日 2015-02-19 
事件の表示 特願2009-153230「グラビア版、及びそれを用いた転写箔」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月13日出願公開、特開2011- 5454〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年6月29日の出願であって、平成25年8月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成25年10月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年12月2日付けで拒絶査定がされ、平成26年3月5日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成25年10月24日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面からみてその特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおり(以下、「本願発明」という。)である。

「 【請求項1】
連続して搬送される長尺帯状のフィルムの一方の面へ、前記フィルムの搬送方向と逆方向に回転するグラビア版を用いて、液状インキを塗布するリバースグラビアコーティング方式におけるグラビア版であって、
前記グラビア版が螺旋状に凹部が形成されてなる斜線グラビア版で、
該斜線グラビア版に所望幅で所望深さの凹部からなる絵柄部が形成され、
該絵柄部の端部から版外側に向かう10?30mm幅のグラデーション部が両側に形成され、
前記グラデーション部の凹部深さが、絵柄部の凹部深さを100%としたときに、版外側へ向かって100?1%へ階段的に浅く形成され、
かつ、前記斜線グラビア版の絵柄部と両側のグラデーション部を含めた巾が前記フィルム巾より狭いことからなり、これにより前記フィルムの両端部にインキ層のない部分を設けること
を特徴とするグラビア版。」


第3 引用文献に記載された発明
(1)本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭59-159485号(実開昭61-75870号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある。なお、下線は当審が付したものである。

ア.「(考案の技術分野)
本考案はリバースグラビアコーティング方式による塗工において使用されるリバースグラビアコーティング用版に関する。
(考案の従来技術およびその問題点)
従来から平滑な塗工面を得るための塗工方法として、螺旋状の凹部をシリンダー周面に形成したコーティング用版を用い、版の回転方向と被塗工基材の搬送方向が逆になるようにして途工(審決注:「途工」は「塗工」の明らかな誤記と認める。)するリバースグラビアコーティング方式が採用されている。この方法は通常のグラビア印刷と同様にシリンダー周面の全面に途工剤(審決注:「途工剤」は「塗工剤」の明らかな誤記と認める。)を収納するための凹部を形成したコーティング用版と、それよりも巾の狭いインプレッションロール(ゴムロール)の組合せによるものが一般的である。しかしながら、この方法によれば、塗工剤(インキや接着剤等)が版の回転軸に対して斜に形成してある螺旋状の凹部に沿って片側へ流動する結果、塗工量が被塗工基材の片側の端部のみに多くなり、被塗工基材の巻取に際して巻取りの片側だけ径が大きくなるいわゆる耳高現象を避け得なかった。このために、シリンダー周面の全面に凹部を施さず、シリンダー周面の両端近辺を除いた部分に塗工剤を収納するための凹部を螺旋状に形成したコーティング用斜線版に採用した塗工が行われているが、この方法でも上記欠陥を完全に避けることができない。」(明細書第1ページ第10行ないし第2ページ第15行)

イ.「(考案の目的)
本考案は以上の事情に鑑み成されたものであり、リバースグラビアコーティングにおいて、被塗工基材への塗工量が片側の端部のみで多くならないように均一に塗工できるようなリバースグラビアコーティング用斜線版の提供を目的とする。」(明細書第2ページ第16行ないし第3ページ第1行)

ウ.「(考案の詳述)
以下、図面を参照にして本考案を詳細に説明する。第1図は本考案に係るリバースグラビアコーティング用斜線版(1)の概略断面説明図であり、(2)は凹部、(4),(4)は非凹部形成区域、(5)は凹部形成区域をそれぞれ示している。
凹部(2)はリバースグラビアコーティング用斜線版(1)の本体を構成するシリンダ(6)周面の非凹部形成区域(4),(4)を除いた凹部形成区域(5)に螺旋状に形成してあり、かつその深さは端部(7),(7)において非凹部形成区域(4),(4)に向かうに従って段階的に浅くなっている。要するに、このリバースグラビアコーティング用斜線版(1)は従来から使用されているリバースグラビアコーティング用斜線版と比較して凹部(2)の深さが端部(7),(7)において段階的に浅くなっている以外は同一構成となっている。このような構成にしておくと、塗工中に塗工剤が凹部に沿って片側に流れていっても端部(7),(7)における塗工量の増加が見掛け上認められなくなる。従って、この版(1)を使用した塗工においては、被塗工基材への塗工量が片側の端部のみで多くならないように塗工でき、更には従来の構成よりなるリバースグラビアコーティング用版を使用したコーティング用版を使用したコーティングにおいて発生する巻取の耳高もなくなる。
図示の実施例においては、深さが漸次浅くなっている部分が両端に設けてある場合を示しているが、本考案はこれに限定されるものではなく、深さが漸次浅くなっている部分は少なくとも一方の端部に設けてあればよい。要するに、この深さが漸次浅くなっている部分は塗工中に塗工剤が流れていく側に設けておけばよい。
第1図のように両端に設けてある場合は、どの方向に回転して塗工を行っても所期の効果を奏するようになる。」(明細書第3ページ第2行ないし第4ページ第16行)

エ.「(考案の効果)
本考案は以上のような構成であるので、被塗工基材の端部において塗工剤の塗工量が増加することがなくなり、延いては被塗工基材の巻取に際して巻取りの片側だけ径が大きくなるいわゆる耳高を防止できる。特に被塗工基材が薄手であったり、剛性の少ないものである場合は耳高の防止効果が顕著となる。」(明細書第4ページ第17行ないし第5ページ第4行)

(2)ここで、上記(1)ア.ないしエ.及び図面から、次のことが分かる。

カ.上記ア.ないしエ.並びに第1図の記載から、引用文献に記載された発明は、連続して搬送される被塗工基材の一方の面へ、前記被塗工基材の搬送方向と逆方向に回転するコーティング用版を用いて、塗工剤(インキや接着剤等)を塗布するリバースグラビアコーティング方式におけるコーティング用版であることが分かる。

キ.上記ア.ないしエ.並びに第1図の記載から、リバースグラビアコーティング用斜線版の凹部形成区域は、凹部形成区域から凹部の深さが段階的に浅くなっている端部を除いた部分(以下、「凹部形成区域の中央部」という。)と凹部の深さが段階的に浅くなっている端部(以下、「凹部形成区域の端部」という。)から構成されていることが分かる。

ク.上記ア.ないしエ.並びに第1図の記載から、リバースグラビアコーティング用斜線版において、凹部形成区域の中央部は、所望幅で所望深さの凹部が形成されていることが分かる。

ケ.上記ア.ないしエ.並びに第1図の記載から、該凹部形成区域の中央部の端部から版外側に向かう凹部形成区域の端部が両側に形成されていることが分かる。

コ.上記ア.ないしエ.並びに第1図の記載から、凹部形成区域の端部の凹部の深さが、版外側へ向かって階段的に浅く形成されていることが分かる。

(3)上記(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されている。

「連続して搬送される被塗工基材の一方の面へ、前記被塗工基材の搬送方向と逆方向に回転するコーティング用版を用いて、塗工剤(インキや接着剤等)を塗布するリバースグラビアコーティング方式におけるコーティング用版であって、
前記コーティング用版が螺旋状に凹部が形成されてなるリバースグラビアコーティング用斜線版で、
該リバースグラビアコーティング用斜線版に所望幅で所望深さの凹部からなる凹部形成区域の中央部が形成され、
該凹部形成区域の中央部の端部から版外側に向かう凹部形成区域の端部が両側に形成され、
前記凹部形成区域の端部の凹部の深さが、版外側へ向かって階段的に浅く形成されたコーティング用版。」


第4 対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比する。
引用文献記載の発明における「コーティング用版」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願発明における「グラビア版」に相当し、以下同様に、「塗工剤(インキや接着剤等)」は「液状インキ」に、「リバースグラビアコーティング方式」は「リバースグラビアコーティング方式」に、「螺旋状」は「螺旋状」に、「凹部」は「凹部」に、「リバースグラビアコーティング用斜線版」は「斜線グラビア版」に、「凹部形成区域の中央部」は「絵柄部」に、「凹部形成区域の端部」は「グラデーション部」に、「凹部形成区域の端部の凹部の深さ」は「グラデーション部の凹部深さ」に、それぞれ相当する。

また、引用文献記載の発明における「被塗工基材」と、本願発明における「長尺帯状のフィルム」及び「フィルム」は、「被塗工基材」という限りにおいて一致する。
さらに、引用文献記載の発明における「前記凹部形成区域の端部の凹部の深さが、版外側へ向かって階段的に浅く形成され」と、本願発明における「前記グラデーション部の凹部深さが、絵柄部の凹部深さを100%としたときに、版外側へ向かって100?1%へ階段的に浅く形成され」は、「前記グラデーション部の凹部深さが、版外側へ向かって階段的に浅く形成され」という限りにおいて一致する。

1 一致点について
したがって、両者は、
「連続して搬送される被塗工基材の一方の面へ、前記被塗工基材の搬送方向と逆方向に回転するグラビア版を用いて、液状インキを塗布するリバースグラビアコーティング方式におけるグラビア版であって、
前記グラビア版が螺旋状に凹部が形成されてなる斜線グラビア版で、
該斜線グラビア版に所望幅で所望深さの凹部からなる絵柄部が形成され、
該絵柄部の端部から版外側に向かうグラデーション部が両側に形成され、
前記グラデーション部の凹部深さが、版外側へ向かって階段的に浅く形成された
グラビア版。」である点で一致し、以下の点で相違する。

2 相違点について
(1)「被塗工基材」に関して、本願発明においては、「長尺帯状のフィルム」又は「フィルム」であるのに対し、引用文献記載の発明においては、「被塗工基材」である点(以下、「相違点1」という。)。

(2)「グラデーション部」及び「前記グラデーション部の凹部深さが、版外側へ向かって階段的に浅く形成され」に関して、本願発明においては、「10?30mm幅のグラデーション部」であり、「前記グラデーション部の凹部深さが、絵柄部の凹部深さを100%としたときに、版外側へ向かって100?1%へ階段的に浅く形成され」ているのに対し、引用文献記載の発明においては、「凹部形成区域の端部」の幅については不明であり、「前記凹部形成区域の端部の凹部の深さが、版外側へ向かって階段的に浅く形成され」ている点(以下、「相違点2」という。)。

(3)本願発明においては、「かつ、前記斜線グラビア版の絵柄部と両側のグラデーション部を含めた巾が前記フィルム巾より狭いことからなり、これにより前記フィルムの両端部にインキ層のない部分を設ける」のに対し、引用文献記載の発明においては、そのような限定がない点(以下、「相違点3」という。)。


第5 相違点の検討
そこで、上記相違点1ないし3について、以下に検討する。

1 相違点1について
リバースグラビアコーティング方式による塗工において使用される被塗工基材として長尺帯状のフィルムを採用することは本願出願前周知技術(例えば、特開平11-5052号公報の段落【0019】及び【0020】等参照。以下、「周知技術1」という。)であり、引用文献記載の発明及び周知技術1はともにリバースグラビアコーディング方式に関する技術分野に属するものであるという点で共通するので、引用文献記載の発明に周知技術1の長尺帯状のフィルムを採用し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
本願発明において、グラデーション部の幅は、溝の形状、ロールの直径及び幅、液状インキの粘度等に応じて、膜厚が均一となるよう当業者が適宜設計すべき事項であり、グラデーション部を10?30mm幅とすることに、格別な臨界的意義は見出せないし、明細書にも明示されていない。
そして、ロール表面に溝が形成された塗布用ロールにおいて、膜厚が均一になるように溝の深さが他の部分より浅く形成された両端部分を有し、その幅が5cm以内とすることは本願出願前周知技術(例えば、特開2001-121053号公報の段落【0012】ないし【0014】、段落【0021】ないし【0024】及び【図1】等参照。以下、「周知技術2」という。)である。
さらに、引用文献の第1図の記載からみて、引用文献記載の発明では、凹部形成区域の端部の凹部の深さが、凹部形成区域の中央部の凹部の深さを100%としたときに、版外側へ向かって100%から段階的に浅く形成されていることは明らかである。ここで、引用文献記載の発明において、最も浅い凹部の深さが何%であるかは不明であるが、何%まで浅くするかについては、当業者が適宜設計すべき事項である。さらに言えば、本願発明において、段階的に浅くなる溝の一番浅い部分の溝の深さについて、絵柄部の凹部深さの1%という値を採用した点に、格別な臨界的意義を見出すこともできないし、明細書にも明示されていない。
以上のとおりであるから、引用文献記載の発明及び周知技術2はともに塗布用ロールに関する技術分野に属するものであるという点で共通するので、引用文献記載の発明において周知技術2の幅寸法を考慮しつつ、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3 相違点3について
塗工巾がベースフィルムより狭くして、ベースフィルムの両端部に未塗工部分を設けることは、本願出願前周知技術(例えば、実願昭59-158638号(実開昭61-75871号)のマイクロフィルムの明細書第1ページ第20行ないし第3ページ第19行、第4図等参照。以下、「周知技術3」という。)であり、引用文献記載の発明及び周知技術3はともにリバースグラビアコーディング方式に関する技術分野に属するものであるという点で共通するので、引用文献記載の発明に当該周知技術3を適用して、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

4 本願発明の効果について
そして、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

5 したがって、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-11 
結審通知日 2014-12-16 
審決日 2015-01-05 
出願番号 特願2009-153230(P2009-153230)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 太郎  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 林 茂樹
金澤 俊郎
発明の名称 グラビア版、及びそれを用いた転写箔  
代理人 藤枡 裕実  
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