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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1297781
審判番号 不服2014-5444  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-24 
確定日 2015-02-20 
事件の表示 特願2009-216589「エンジン制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月31日出願公開、特開2011- 64159〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年9月18日の出願であって、平成25年2月25日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成25年5月7日に意見書及び補正書が提出され、平成25年8月19日付けで再度拒絶理由が通知されたのに対し、平成25年10月18日に意見書及び補正書が提出されたが、平成25年12月19日付けで拒絶査定がされ、平成26年3月24日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に、明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2.平成26年3月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年3月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
(1)本件補正の内容
平成26年3月24日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成25年10月18日提出の手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(ア)の記載を、下記(イ)の記載へと補正するものである。

(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
エンジンと、前記エンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記エンジンの駆動状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出情報と予め書き込まれた前記エンジン固有の出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置の作動を制御するECUとを備えているエンジン制御装置であって、
前記ECUが、前記エンジンを搭載する作業車両の車種や当該作業車両に装着される作業機毎に設定されるとともに前記燃料噴射装置の作動を修正するための修正特性データを有するデータ提供手段と接続可能に構成され、
前記作業車両に前記エンジンが搭載される際に前記データ提供手段と接続した前記ECUは、前記エンジン作動中は常に、前記データ提供手段から前記修正特性データを取得して、前記出力特性データと前記修正特性データとを参照して、前記検出手段の検出情報から制限トルク値を演算し、前記制限トルク値に応じて前記燃料噴射装置を作動させるように構成されている、
エンジン制御装置。」

(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
エンジンと、前記エンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記エンジンの駆動状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出情報と予め書き込まれた前記エンジン固有の出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置の作動を制御するECUとを備えているエンジン制御装置であって、
前記ECUが、前記エンジンを搭載する作業車両の車種や当該作業車両に装着される作業機毎に設定されるとともに前記燃料噴射装置の作動を修正するための修正特性データを有するデータ提供手段と接続可能に構成され、
前記作業車両に前記エンジンが搭載される際に前記データ提供手段と接続した前記ECUは、前記エンジン作動中は常に、前記データ提供手段から前記修正特性データを取得して、前記出力特性データと前記修正特性データとを参照して、前記検出手段の検出情報から制限トルク値を演算し、前記制限トルク値に応じて前記燃料噴射装置を作動させるように構成されており、
前記出力特性データは、前記エンジンにおける回転速度とトルクとの関係を示すデータであり、前記修正特性データは、前記エンジンにおける回転速度の制限値であり、
前記データ提供手段は、前記エンジンの前記ECUとは別のデータ用ECU、メモリといった外部記憶手段、又は、手動操作にて可変調節可能な信号補正回路にて構成されている、
エンジン制御装置。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の発明特定事項である「出力特性データ」、「修正特性データ」及び「データ提供手段」に関し、「エンジンにおける回転速度とトルクとの関係を示すデータであ」る旨、「エンジンにおける回転速度の制限値であ」る旨及び「エンジンのECUとは別のデータ用ECU、メモリといった外部記憶手段、又は、手動操作にて可変調節可能な信号補正回路にて構成されている」旨をそれぞれ限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.-1 引用文献
(1)引用文献の記載
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-159599号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種作業機を接続可能なトラクタや乗用田植機、また、高地での作業が要求されるようなローントラクタ等、電子ガバナ付ディーゼルエンジン搭載型作業車輌における電子ガバナ制御機構に関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0002】
【従来の技術】まず、電子ガバナ付ディーゼルエンジン搭載型の作業車輌において、作業モードと非作業モード(路上走行モード)の二種類の回転数及び出力トルク特性データ(以後、「出力特性データ」と言う。)を電子ガバナ制御部に記憶しておき、これらのデータの中から一つを選択するように切換スイッチを設け、作業・非作業の各場合に応じて、切換スイッチにてデータ選択操作を行えるようにしたものが、特公平6-10434にて公知となっている。…(後略)…」
(段落【0002】)

(ウ)「【0014】
【発明の実施の形態】本発明の電子ガバナ制御機構の実施の形態を添付の図面より説明する。図1は作業機毎の識別コード送信を行う電子ガバナ制御機構を採用するトラクタの側面略図、図2はROM式識別コード送信タイプの電子ガバナ制御機構ブロック図、図3は図2図示の電子ガバナ制御機構におけるエンジン制御フローチャート図、図4は抵抗式識別コード送信タイプの電子ガバナ制御機構ブロック図、図5は図4図示の電子ガバナ制御機構におけるエンジン制御フローチャート図、図6は作業機毎の出力特性データ送信を行う電子ガバナ制御機構を採用するトラクタの側面略図、図7は出力特性データ送信式電子ガバナ制御機構ブロック図、図8は図7図示の電子ガバナ制御機構におけるエンジン制御フローチャート図、図9は電子ガバナ制御式ディーゼルエンジンを搭載するローントラクタの側面図、図10は高度対応スイッチSW2を設けた電子ガバナ制御機構ブロック図、図11はアイソクロナス制御かドループ制御かを選択可能とするディーゼルエンジン出力特性マップ図、図12は高度による出力ダウン率の変化を示す図、図13は複数の高度対応出力特性を加味したディーゼルエンジン出力特性マップ図、図14はベルト式無段変速装置を具備し、電子ガバナ制御式ディーゼルエンジンを搭載する乗用田植機の側面図、図15は図14図示の乗用田植機における電子ガバナ制御機構ブロック図、図16は微速走行域にて等速制御を採用する電子ガバナ制御式ディーゼルエンジン出力特性マップ図である。
【0015】まず、各種作業機を接続可能とする作業車輌として、トラクタを例に、作業機を接続すると、自動的にその作業機接続時に対応する出力特性データを選択されて電子ガバナ制御される構造について、図1乃至図8より説明する。まず、図1乃至図5図示の電子ガバナ制御機構について説明する。図1の如く、トラクタ本体の後部にロータリー作業機等の各種の作業機を接続可能とする構造において、トラクタにはエンジン(ディーゼルエンジン)が搭載されており、この出力を制御すべく電子ガバナ装置が内蔵されており、一方、作業機には識別コード記憶装置が内蔵されており、作業機をトラクタに接続すると、トラクタの電子ガバナ装置と作業機の識別コード記憶装置とが通信線Lを介して接続される。
【0016】トラクタの電子ガバナ装置は、図2の如く、ガバナ部とコントローラ部(制御部)とよりなる。ガバナ部では、回転数センサと燃料噴射ポンプの燃料噴射量調整用ラックアクチュエータ(燃料ポンプラックアクチュエータ)が設けられている。コントローラ部においては、各種入力値を基に該ラックアクチュエーターへの出力値を演算するマイクロコンピュータ(マイコン)が内蔵されていて、入力用インターフェイス(I/F)を介してガバナ部の回転数センサより入力信号が入力され、出力用インターフェイス(I/F)を介してラックアクチュエーターに出力信号が送信される。また、各種の作業機接続時に対応する複数の出力特性データを記憶するためのROM(作業機別出力特性データ記憶部)と、識別コード受信回路(識別コード受信部)が設けられている。出力特性データとは、設定しうる全アクセル設定回転数につき、負荷の増減に対して、回転数及び出力をどのように増減させるか、また、その場合の限界出力をどう設定するかについてのマップ(出力特性マップ)を書き込んだデータであり、接続する作業機によって負荷のかかり具合やその作業機の耐久度等も異なるので、個々に対応する出力特性マップが必要なのである。
【0017】各種作業機における識別コード記憶装置には、ROM(識別コード記憶部)と識別コード送信回路(識別コード送信部)とが設けられており、作業機をトラクタに接続した場合の通信線Lは、該送信回路と該受信回路とを接続するものとなる。識別コード記憶部である該ROMには、その作業機の識別コードを記憶してあり、作業機をトラクタに接続すると、識別コード送信回路より識別コード受信回路に対し通信線Lを介して識別コードが送信される。トラクタの電子ガバナ装置におけるコントローラ部では、識別コード受信部にて受信した識別コードがマイコンに入力され、マイコンでは、この識別コードに対応して、作業機別出力特性データ記憶部であるROMより、接続した作業機に対応する出力特性データをピックアップし、該データと、ガバナ部の回転数センサからの入力値とを照合して、ラックアクチュエーターへの出力値の演算を行うのである。」(段落【0014】ないし【0017】)

(エ)「【0020】次に、図6乃至図8図示の電子ガバナ制御機構について説明する。なお、図2や図4と同一表示のものは、同一の構造であり、特に説明しない。図6及び図7の如く、トラクタに搭載する電子ガバナ装置において、コントローラ部には、電子ガバナにて行うべき制御内容を記憶したROMが設けられているが、これには図2や図5のように各種作業機接続時に対応する複数の出力特性データは記憶しない。そして、データ受信回路(データ受信部)を設けている。一方、各種作業機には、データ記憶装置を設けており、該データ記憶装置には、その作業機の接続時にトラクタ本体のエンジンに要求される出力特性データを記憶しておくROM、マイクロコンピュータ(マイコン)、及びデータ送信回路(データ送信部)とを内蔵し、該ROM内のデータをマイコンがピックアップしてデータ送信回路に送るようになっている。
【0021】作業機をトラクタ本体に接続すると、図7の如く、データ受信回路とデータ送信回路とが通信線Lにて接続され、それに伴い、図8の如く、トラクタ本体に電源投入されると作業機にも電源が投入され、該通信線Lを介して、データ送信回路よりデータ受信回路に作業機別の出力特性データが送信され、電子ガバナ装置のコントローラ部では、データ受信回路にて受信した出力特性データを基にしてエンジンの電子ガバナ制御がなされる。
【0022】図6乃至図8図示の電子ガバナ制御機構では、電子ガバナ制御に必要な各種作業機接続時に対応する出力特性データを、各種作業機側から得るので、電子ガバナ装置のコントローラ部内におけるROMには、複数の出力特性データを記憶する必要がない。従って、図1乃至図5図示の場合に発生するような、該コントローラ部内におけるROMの容量が限られている場合に記憶される出力特性データ数が限定されるという問題がなく、無制限に、接続する作業機毎に対応した出力特性を引き出すことができる。
【0023】次に、各種高度での作業に対応可能な電子ガバナ制御機構について、図9乃至図13にて説明する。この電子ガバナ制御機構を有する作業車輌の実施例として図9図示のローントラクタ(芝刈機)がある。これは、トラクタ本体1の腹部にモア装置2を垂設し、モア装置にはモアカッター3及びブロア4を設けていて、ブロア4からはトラクタ本体T後部に具備する刈屑収納ケース6に刈屑を送り込む刈屑通路5が介設されている。トラクタ本体Tにはディーゼルエンジン(エンジン)Eが搭載されていて、エンジン出力軸よりモアカッター1の駆動軸及びブロア4に動力が伝達され、モアカッター3にて芝を刈り、刈り取った刈屑をブロア4が吸引して、刈屑通路5を介して、刈屑収納ケース6に収納する一連の作業を行う。そして、該エンジンE付設の燃料噴射ポンプFPを電子ガバナ装置が出力制御するものとなっている。
【0024】図10にてこの電子ガバナ制御機構について説明する。燃料噴射ポンプFPにガバナ部Gが付設されており、該ガバナ部Gには、燃料噴射ポンプFPの燃料噴射量調整用ラックアクチュエータ、ラック位置センサー、エンジン回転数を検出する回転センサー、LO(潤滑油)温度センサが内設されており、一方、電子ガバナのコントローラに対し、該ガバナ部のラック位置センサー、回転センサー、LO温度センサーから入力値が入力され、更に、エンジンにおける冷却水温センサー、アクセルセンサーの各入力値が入力され、これらの入力値を基に、ガバナ部のラックアクチュエータに出力信号が発信されて、ラックアクチュエータが駆動し、エンジン出力制御がなされる。
【0025】なお、従来よりローントラクタには、図10の如く、定回転スイッチSW1が設けられ、このON・OFF信号を該コントローラに入力できるようになっている。これについて、図11のトルク及び出力特性マップより説明する。実線部分は、各アクチュエーター設定回転数N(rpm)における最大エンジントルクT(Nm)と最大出力P(ps)を示す。本ローントラクタにおいては、ブロア2において、刈る対象の芝の種類や状態により、吸収負荷が変動することから、図11の如く、アイソクロナス制御(一点鎖線)とドループ制御(点線)の二種類の出力特性データを電子ガバナコントローラに記憶している。アイソクロナス制御は、作業負荷の変化にかかわらず、燃料噴射量の調整により、エンジン回転数を設定回転数に保持するものであり、その設定回転数における限界出力を高く取ることができる。従って、吸収負荷が高く負荷変動が大きい場合には、これで対応するのがよい。対して、ドループ制御は、各設定回転数においての負荷の増加に対し、燃料噴射量の増加とともに、エンジン回転数の低減で対処して出力を確保するものであり、その設定回転数での限界出力は、アイソクロナス制御の時よりも劣る。吸収負荷が低く負荷変動が少ない場合には、この制御を用いれば、燃料噴射量を低く抑えて、低コストの作業ができる。なお、アイソクロナス制御でも低回転時には限界出力が低くなるので、一部、逆ドループ制御を採り入れて、回転数の増加により限界出力の増加を図っている。
【0026】ローントラクタにて作業をするに当たって、芝の種類や状態から、吸収負荷が高いと見られる場合には、前記の定回転スイッチSW1をONすることにより、定回転作業、即ちアイソクロナス制御を選択するものとなっており、このON信号が、図10の電子ガバナ機構において、コントローラに入力されて、アイソクロナス制御が選択され、この制御マップを基にして、ラックアクチュエータの制御を行うのである。定回転スイッチSW1をOFFした場合には、ドループ制御が選択され、これに基づいて電子ガバナ制御がなされる。
【0027】また、アイソクロナス制御とドループ制御の二種類の制御に加え、モア装置2の非駆動時には、限界出力をアップしても、モア装置2(のモアカッター3やブロア4)に支障を来すことはないから、図11中の二点鎖線の如く、制御マップにおけるトルク及び出力の限界値をアップすることもできる。この制御の選択手段については、図10には図示していないが、モア装置2の非駆動を検出することで、自動的にトルク及び出力の限界値をアップした出力特性で電子ガバナ制御を行うようにすればよい。」(段落【0020】ないし【0027】)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)並びに図6ないし図8の記載から、引用文献には次の事項が記載されていることが分かる。

(オ)上記(1)(ア)ないし(エ)及び図6ないし図8の記載から、引用文献には、電子ガバナ制御機構を有するトラクタが記載されていることが分かる。

(カ)上記(1)(ウ)及び(エ)並びに図6ないし図8の記載から、引用文献に記載された電子ガバナ制御機構を有するトラクタは、ディーゼルエンジンEを搭載するものであり、電子ガバナ制御機構は、ガバナ部Gが付設された燃料噴射ポンプFPを備えるものであることが分かる。

(キ)上記(1)(イ)の従来の技術の項に、電子ガバナ付ディーゼルエンジン搭載型の作業車輌において、作業モードと非作業モード(路上走行モード)の二種類の回転数及び出力トルク特性データ(出力特性データ)を電子ガバナ制御部に記憶しておくものが記載されていること、及び、通常、トラクタ等の作業車輌は、作業機を接続しない状態でも路上走行を行うことから、引用文献に記載された電子ガバナ制御機構は、そのコントローラ部に、非作業モード(路上走行モード)の出力特性データを記憶しており、該非作業モード(路上走行モード)の出力特性データは回転数及び出力トルク特性のデータであることが分かる。

(ク)上記(1)(ウ)及び(エ)並びに図6ないし図8の記載から、引用文献に記載された電子ガバナ制御機構のコントローラ部は、回転センサー、冷却水温センサー及びアクセルセンサー等のセンサーと、各センサー入力値と非作業モード(路上走行モード)の出力特性データを基にしてエンジンの電子ガバナ制御を行うものであることが分かる。

(ケ)上記(1)(ウ)及び(エ)並びに図7の記載から、引用文献に記載された電子ガバナ制御機構のコントローラ部は、ディーゼルエンジンEを搭載するトラクタに接続する作業機の個々に対応するとともに、電子ガバナ制御を行う出力特性データを有するデータ記憶装置と、通信線Lにて接続されるものであることが分かる。

(ケ)上記(1)(ウ)及び(エ)並びに図7の記載から、引用文献に記載された電子ガバナ制御機構のコントローラ部において、作業機をトラクタに接続すると、コントローラ部では、データ記憶装置から出力特性データを受信して、該出力特性データを基にしてエンジンの電子ガバナ制御を行うものであることが分かる。

(コ)上記(1)(ウ)及び(エ)並びに図7の記載において、電子ガバナ制御機構のコントローラ部で例えばアイソクロナス制御を行ったときに燃料噴射量の調整をすることにより、トルクの制限値を演算するものであるから、引用文献に記載された電子ガバナ制御機構のコントローラ部が行う電子ガバナ制御は、回転センサー等のセンサーのセンサー入力値からトルクの制限値を演算し、該トルクの制限値に応じてガバナ部Gを作動させるものであることが分かる。

(サ)上記(1)(ウ)の記載から、引用文献に記載された電子ガバナ制御機構において、出力特性データは、設定しうる全アクセル設定回転数につき、負荷の増減に対して、回転数及び出力をどのように増減させるか、また、その場合の限界出力をどう設定するかについてのマップ(出力特性マップ)を書き込んだデータであることが分かる。

(シ)上記(1)(エ)及び図7の記載から、引用文献に記載された電子ガバナ制御機構において、データ記憶装置は、コントローラ部とは別のROMを内蔵するものであることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図6ないし図8の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 ディーゼルエンジンEを搭載したトラクタに設けられ、ガバナ部Gが付設された燃料噴射ポンプFPと、回転センサー、冷却水温センサー及びアクセルセンサー等のセンサーと、各センサー入力値と非作業モード(路上走行モード)の出力特性データを基にしてエンジンの電子ガバナ制御を行うコントローラ部とを備えている電子ガバナ制御機構であって、
コントローラ部は、ディーゼルエンジンEを搭載するトラクタに接続する作業機の個々に対応するとともに、電子ガバナ制御を行う出力特性データを有するデータ記憶装置と、通信線Lにて接続されるものであり、
作業機をトラクタに接続すると、コントローラ部では、データ記憶装置から出力特性データを受信して、該出力特性データを基にしてエンジンの電子ガバナ制御を行うものであり、
コントローラ部が行う電子ガバナ制御は、回転センサー等のセンサーのセンサー入力値からトルクの制限値を演算し、該トルクの制限値に応じてガバナ部Gを作動させるものであり、
非作業モード(路上走行モード)の出力特性データは回転数及び出力トルク特性のデータであり、出力特性データは、設定しうる全アクセル設定回転数につき、負荷の増減に対して、回転数及び出力をどのように増減させるか、また、その場合の限界出力をどう設定するかについてのマップ(出力特性マップ)を書き込んだデータであり、
データ記憶装置は、コントローラ部とは別のROMを内蔵するものである電子ガバナ制御機構。」

2.-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ディーゼルエンジンE」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「エンジン」に相当し、以下同様に、「ガバナ部Gが付設された燃料噴射ポンプFP」は「エンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置」及び「燃料噴射装置」に、「回転センサー、冷却水温センサー及びアクセルセンサー等のセンサー」は「エンジンの駆動状態を検出する検出手段」及び「検出手段」に、「センサー入力値」は「検出手段の検出情報」に、それぞれ相当する。
また、通常、作業車輌における非作業モード(路上走行モード)の出力特性データとは、エンジン固有の出力特性データであり、本願の明細書にも「出力特性データとは、エンジンが搭載される車両に対応したものであり、通常、ECUに1種類又は限られた種類だけ記憶させている。」(段落【0004】)と記載されているから、引用発明における「非作業モード(路上走行モード)の出力特性データ」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「予め書き込まれたエンジン固有の出力特性データ」に相当する。
そして、引用発明において「エンジンの電子ガバナ制御を行う」ことは、その技術的意義からみて、本願補正発明において「燃料噴射装置の作動を制御する」ことに相当し、引用発明における「コントローラ部」は本願補正発明における「ECU」に相当するから、引用発明において「ディーゼルエンジンE」と「電子ガバナ制御機構」とを合わせたものは、その構成からみて、本願補正発明における「エンジン制御装置」に相当する。
さらに、引用発明における「トラクタ」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「作業車輌」に相当し、以下同様に、「接続する」は「装着される」に、「作業機の個々に対応する」は「作業機毎に設定される」に、「電子ガバナ制御を行う」は「燃料噴射装置の作動を修正する」に、「ディーゼルエンジンEを搭載するトラクタに接続する作業機の個々に対応するとともに、電子ガバナ制御を行う出力特性データ」及び「出力特性データ」は「修正特性データ」に、「データ記憶装置」は「データ提供手段」に、「通信線Lにて接続され」は「接続可能に構成され」に、それぞれ相当する。
また、「データ提供手段から修正特性データを取得して、少なくとも修正特性データを参照して、検出手段の検出情報から制限トルク値を演算し、制限トルク値に応じて燃料噴射装置を作動させる」という限りにおいて、引用発明における「作業機をトラクタに接続すると、コントローラ部では、データ記憶装置から出力特性データを受信して、該出力特性データを基にしてエンジンの電子ガバナ制御を行」い、「コントローラ部が行う電子ガバナ制御は、回転センサー等のセンサーのセンサー入力値からトルクの制限値を演算し、該トルクの制限値に応じてガバナ部Gを作動させる」は、本願補正発明における「作業車両にエンジンが搭載される際にデータ提供手段と接続したECUは、エンジン作動中は常に、データ提供手段から修正特性データを取得して、出力特性データと修正特性データとを参照して、検出手段の検出情報から制限トルク値を演算し、制限トルク値に応じて燃料噴射装置を作動させる」に相当する。
そして、引用発明における「回転数及び出力トルク特性のデータ」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「エンジンにおける回転速度とトルクとの関係を示すデータ」に相当し、引用発明において「データ記憶装置は、コントローラ部とは別のROMを内蔵する」ことは、本願補正発明において「データ提供手段は、エンジンのECUとは別のデータ用ECU、メモリといった外部記憶装置、又は、手動操作にて可変調節可能な信号補正回路にて構成されている」ことに相当する。

以上から、本願補正発明と引用発明は、
「 エンジンと、前記エンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記エンジンの駆動状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出情報と予め書き込まれた前記エンジン固有の出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置の作動を制御するECUとを備えているエンジン制御装置であって、
前記ECUが、前記エンジンを搭載する作業車両の車種や当該作業車両に装着される作業機毎に設定されるとともに前記燃料噴射装置の作動を修正するための修正特性データを有するデータ提供手段と接続可能に構成され、
データ提供手段から修正特性データを取得して、少なくとも修正特性データを参照して、検出手段の検出情報から制限トルク値を演算し、制限トルク値に応じて燃料噴射装置を作動させるように構成されており、
前記出力特性データは、前記エンジンにおける回転速度とトルクとの関係を示すデータであり、
前記データ提供手段は、前記エンジンの前記ECUとは別のデータ用ECU、メモリといった外部記憶手段、又は、手動操作にて可変調節可能な信号補正回路にて構成されている、
エンジン制御装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

〈相違点〉
(a)「データ提供手段から修正特性データを取得して、少なくとも修正特性データを参照して、検出手段の検出情報から制限トルク値を演算し、制限トルク値に応じて燃料噴射装置を作動させる」ことに関し、本願補正発明においては、「作業車両にエンジンが搭載される際にデータ提供手段と接続したECUは、エンジン作動中は常に、データ提供手段から修正特性データを取得して、出力特性データと修正特性データとを参照して、検出手段の検出情報から制限トルク値を演算し、制限トルク値に応じて燃料噴射装置を作動させる」のに対し、引用発明においては「作業機をトラクタに接続すると、コントローラ部では、データ記憶装置から出力特性データを受信して、該出力特性データを基にしてエンジンの電子ガバナ制御を行」い、「コントローラ部が行う電子ガバナ制御は、回転センサー等のセンサーのセンサー入力値からトルクの制限値を演算し、該トルクの制限値に応じてガバナ部Gを作動させる」点(以下、「相違点1」という。)。
(b)本願補正発明においては、修正特性データは、エンジンにおける回転速度の制限値であるのに対し、引用発明においては、出力特性データは、設定しうる全アクセル設定回転数につき、負荷の増減に対して、回転数及び出力をどのように増減させるか、また、その場合の限界出力をどう設定するかについてのマップ(出力特性マップ)を書き込んだデータである点(以下、「相違点2」という。)。

2.-3 判断
まず、相違点1について検討する。
一般に、作業車輌の組立てにおいて、部品間の配線接続をどのタイミングで行うかは、当該部品の配置や組立ての作業性等を考慮して決定される事項である。したがって、引用発明において、トラクタにディーゼルエンジンEが搭載される際にデータ記憶装置とコントローラ部とを接続することは、トラクタの装置設計や組立て時の段取りとして適宜定められる程度の事項にすぎない。
また、通信線で連結されたマイクロコンピュータの間で、データをどのように分担して記憶するか、及びどのタイミングでデータをやりとりするかということは、普通、効率やスピード等を考えて適宜決められる事項である。したがって、引用発明において、コントローラ部が、作業機をトラクタに接続したときのみデータ記憶装置から出力特性データを受信するか、或いはエンジン作動中は常にデータ記憶装置から出力特性データを受信するかという点、及びトルクの制限値の演算に際し、出力特性データだけに基づいて行うか、或いは非作業モード(路上走行モード)の出力特性データをも用いて行うかという点は、いずれもコントローラ部及びデータ記憶装置の装置設計において適宜定められる程度の事項である。
以上から、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

次に、相違点2について検討する。
「作業車輌において、作業内容に応じてエンジンにおける回転速度の制限値を設けること」は、周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開平7-180576号公報(特に【請求項1】)、特開2000-226183号公報(特に段落【0010】)、特開2006-299902号公報(特に【請求項1】及び段落【0001】)等参照。)である。そして、引用発明は、データ記憶装置に出力特性データとして、設定しうる全アクセル設定回転数につき、限界出力をどう設定するかについてのマップ(出力特性マップ)を有するものであるから、作業内容に応じて回転速度の制限値を設け、それを出力特性データとすることにより、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。

以上から、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
前記のとおり、平成26年3月24日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成25年10月18日提出の手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項1】のとおりのものである。

2.引用発明
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開平10-159599号公報)記載の発明(引用発明)は、前記第2.の[理由]2.-1の(3)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は上記相違点1で相違し、その余の点で一致する。
そして、前記第2.の[理由]2.-3に記載した理由と同様の理由により、本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4.むすび
上記第3.のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-18 
結審通知日 2014-12-24 
審決日 2015-01-07 
出願番号 特願2009-216589(P2009-216589)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02D)
P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 恭司  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 金澤 俊郎
中村 達之
発明の名称 エンジン制御装置  
代理人 渡辺 隆一  
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