ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
---|---|
管理番号 | 1298106 |
審判番号 | 不服2013-20110 |
総通号数 | 184 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-10-16 |
確定日 | 2015-03-05 |
事件の表示 | 特願2008-300945「録画制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月10日出願公開、特開2010-130169〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年11月26日の出願であって、平成25年7月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年10月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付で手続補正がなされた。 その後当審において、平成26年8月25日付けで最初の拒絶理由が通知されたが、それに応答して平成26年10月27日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成26年10月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。 (本願発明) 「通信回線を介してデータの送受信が可能な通信部と、 番組を受信する受信部と、 録画予約された番組の録画予約情報を格納する予約情報記憶部と、 当該予約情報記憶部に格納された前記録画予約情報に基づいて、前記受信部で受信して録画される番組を格納する番組記憶部と、 当該番組記憶部に前記録画予約された番組が正常に格納されなかった場合に、前記通信部を介して該番組を再放送リクエストし、前記通信部を介して当該再放送リクエストに対する応答情報を受信し、当該再放送リクエストに対する応答情報に基づいて番組を録画予約し、当該応答情報に基づいて録画予約した番組を前記受信部で受信して前記番組記憶部に格納するように制御する制御部と、 を備える録画制御装置。」 第3 当審の判断 1.刊行物の記載 当審における、平成26年8月25日付けの拒絶理由に引用された刊行物1である特開2000-41211号公報には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 (ア)「【0016】本発明は、このように従来の放送・受信システムでは、録画を失敗した番組については、再放送時に再度録画予約作業を行わなければならないという課題を考慮し、録画を失敗した番組であっても、その番組が再放送されるさいに、あらためてユーザからの録画予約指示を入力することなく、その番組が録画されるように制御する録画制御装置を提供することを目的とするものである。」 (イ)「【0036】(実施の形態1)本発明の実施の形態1の放送・受信システムの構成をその動作とともに述べる。 【0037】図1に、本発明の実施の形態1の放送・受信システムのブロック図を示す。図1に示すように、本発明の実施の形態1の放送・受信システムは、録画制御装置113と放送局101から構成される。その図1において、点線で囲まれている録画制御装置113のなかの、102は予約情報入力部、103は入力部、104は番組情報記憶部、105はEPG、106は表示制御部、107は再放送予約管理部、108は第1録画制御部、109は予約情報記憶部、110は再放送判定部、111は第2録画制御部、112は映像記憶部である。 【0038】放送局101は、番組を放送するとともに、その番組の番組情報を放送するものであり、録画制御装置113の入力部103は、放送局101からの番組を受信するとともに、その番組の番組情報を受信するものであって、番組を映像記憶部112に出力し、番組情報をEPG105に出力するものである。」 (ウ)「【0045】図2に、予約情報記憶部109が記憶する予約情報の例を示す。予約情報は、予約番号、日付、チャンネル、番組名、録画開始時刻、録画終了時刻、再放送時録画マークなどで構成される。また、予約情報には、録画状況も含まれ、予約情報記憶部109は、ユーザが予約した番組の録画状況を管理する。その録画状況とは、録画予約された番組が未録画、録画中、録画済み、エラーのいずれの状況であるのかということを示すものであり、それぞれに対して、未、録画中、済、エラー、それぞれが表示される。エラーとは、何らかの理由で録画することができなかったことを示し、エラーの場合には、その理由も同時に管理される。エラーの理由の一例として、ビデオテープ未挿入や残量不足というようなものがある。なお、ここまで述べたところでは、いくつかの番組が録画予約された後であって、それらがまだ放送されていないので、録画状況の欄には「未録画」を示すマークが書き込まれる。その後、録画予約された番組が放送されると、対応する番組の録画状況の欄に、「録画中」、「録画済」または「エラー」を示すマークが書き込まれることになる。また、図2に示した予約情報は1998年11月30日に作成されたものであるとする。」 (エ)「【0049】第1録画制御部108は、予約情報記憶部109に記憶されている予約情報の中から、現在時刻以降であって、現在時刻に最も近い予約情報を取り出し、取り出した予約情報に従って、その予約情報に対応する番組が映像記憶部112の記録媒体に録画されるように制御を行う。」 (オ)「【0051】録画が終了すると、第1録画制御部108は、映像記憶部112に、番組の録画状況を調べさせる。そして、第1録画制御部108は、記録媒体の記憶容量不足などで録画が中断したという報告を映像記憶部112から受けると、予約情報記憶部109に記憶されているその番組の予約情報に、再放送時録画マークと録画できている部分の情報を付加する。その情報とは、録画できている部分を特定するための情報であって、録画できている部分の録画開始時刻、録画終了時刻などで構成される。また、この場合の予約情報の録画状況の欄にはエラーが書き込まれる。それに対して、第1録画制御部108は、録画が正常に行われたという旨の報告を映像記憶部112から受けると、予約情報記憶部109に記憶されているその番組の予約情報に、「録画済」というマークを付加する。」 (カ)「【0057】そして、再放送判定部110は、入力された番組情報と同じ番組を表している予約情報を見つけた場合、入力された番組情報は再放送の番組情報であると判定し、その番組情報は再放送の番組であって、すでに録画予約をされていることと、対応する予約情報の予約番号を、EPG105に報告する。なお、再放送の番組情報には元番組に関する情報が記載されているので、再放送判定部110は、その元番組に関する情報を利用することによって、入力された番組情報は再放送の番組情報であると判定することができる。 【0058】再放送判定部110が入力された番組情報と同じ番組の番組情報を検出した場合、EPG105は、再放送判定部110からその旨の報告を受け、その番組情報を再放送の番組情報として、報告を受けた予約番号とともに、再放送予約管理部107に出力する。 【0059】再放送予約管理部107は、入力された予約番号の予約情報を予約情報記憶部109から取り出し、入力された再放送の番組情報を用いて更新して、再び、予約情報記憶部109に記憶させる。ここで行なわれる更新とは、前回放送時のチャンネル、放送時間などを再放送時のものに更新するということである。」 (キ)「【0066】第1録画制御部108は、現在時刻以降で現在時刻に最も近い予約情報を予約情報記憶部109から取り出す。取り出した予約情報が、本放送時未録画部分の予約情報である場合、第1録画制御部108は、その予約情報に関連している予約情報も取り出し、第2録画制御部111に出力する。つまり、第1録画制御部108は、図4に示す予約番号11の予約番号を取り出す場合、予約番号3の予約情報も取り出す。 【0067】そして、第2録画制御部111は、予約番号3と11の予約情報を入力し、予約番号3の番組の映像が映像記憶部112の記録媒体のどこに記憶されているのかを検出し、管理する。 【0068】図5に、第2録画制御部111が管理する記憶情報および予約情報の例を示す。記憶情報および予約情報は、日付、チャンネル、番組名、録画開始時刻、録画終了時刻、録画位置、予約番号などで構成される。録画位置とは、映像記憶部112の記録媒体に番組が実際に記憶されている物理的な位置のことである。図5には予約番号3によって録画された映像の記憶情報と、その予約番号3と関連する予約番号11の予約情報を示す。 【0069】そして、第2録画制御部111は、管理している記憶情報と予約情報より、映像記憶部112を制御し、予約番号3によって録画されている映像の後に、予約番号11に予約されている番組の未録画部分を継ぎ足して記録媒体に録画する。」 (ク)「【0072】ここまでは、既に一部が録画された番組が再放送されるときに、その番組の未録画部分を録画するさいの動作を示した。それに対して、図2および図3の予約番号2の番組が再放送されるときや、第1録画制御部108の制御かユーザの制御かを問わず、いずれであっても本放送時に全部が録画されなかった番組が再放送されるときの、その番組を録画するさいの動作も、上述した未録画部分を録画するさいの動作と同様である。 【0073】すなわち、第1録画制御部108が、予約情報記憶部109から再放送時録画マークだけが付加されている予約情報を取り出した場合、いいかえると、図2および図3の予約番号2の番組、さらにいうと既に放送された番組や、本放送時に全部が録画されなかった番組の予約情報が第1録画制御部108に取り出された場合、第2録画制御部111は、第1録画制御部108に取り出された予約情報にしたがって、再放送時に番組の全部が映像記憶部112の記録媒体に録画されるように制御する。」 (ケ)「【0096】(実施の形態3)本発明の実施の形態3の放送・受信システムの構成をその動作とともに述べる。 【0097】図9に、本発明の実施の形態3の放送・受信システムのブロック図を示す。図9に示すように、本発明の実施の形態3の放送・受信システムは、本発明の実施の形態1の放送・受信システムと同様に、放送局301と録画制御装置313から構成される。しかしながら、録画制御装置313は、本発明の実施の形態1の録画制御装置113とは異なり、その録画制御装置113が備えていた各構成部に加えてリクエスト送信部309を備えている。また、録画制御装置313が備える第1録画制御部308は、実施の形態1の録画制御装置113が備える第1録画制御部108とは異なる。したがって、実施の形態3では、本発明の実施の形態1の放送・受信システムとは異なる、放送局301、第1録画制御部308およびリクエスト送信部309の動作についてのみ述べる。 【0098】第1録画制御部308は、予約情報記憶部109に再放送時録画マークが付加された予約情報があるかどうかを調べ、再放送時録画マークが付加された予約情報がある場合、その予約情報に対応する番組が再放送されるようにリクエストするための再放送リクエスト情報を作成する。」 (コ)「【0100】その後、リクエスト送信部309は、第1録画制御部308によって作成された再放送リクエスト情報を、公衆電話回線網などを利用して放送局301に送信する。つまり、リクエスト送信部309は、それまでに全部または一部が録画されなかった番組、または既に一度放送された番組であって、予約情報記憶部109に再放送時録画マークが付加されている番組が再放送されるように、その番組の再放送リクエストを放送局301に送信する。」 (サ)「【0110】また、上述した放送局301は、再放送する番組の番組情報をFM文字多重放送、衛星放送を利用して、または公衆電話回線網を利用して、再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信するとしてもよい。そのためには、再放送リクエストを送る録画制御装置は、その録画制御装置の識別子を付加して再放送リクエストを放送局301に送信する必要があり、放送局301は、識別子を検出することによって再放送リクエストを送った録画制御装置を特定することになる。なお、放送局301は、再放送する番組の番組情報を、再放送リクエストを送った録画制御装置を指定してその録画制御装置に送信する場合、電子メールを利用してもよい。」 2.引用発明 ここで、上記刊行物1の記載について検討する。 (1)刊行物1の前掲(ア)の記載によれば、刊行物1には、録画を失敗した番組について、その番組が再放送される際に自動的に録画するという「録画制御装置」に関する発明が記載されている。 そして、刊行物1の記載から、前掲(ケ)及び図9等に示される「実施の形態3の録画制御装置」に対応する発明を特定する。 ただし、実施の形態3の構成の一部は前掲(イ)及び図1等に示される実施の形態1と共通するものであるので、共通する構成については実施の形態1を参照して実施の形態3に記載される発明を認定する。 以下、「録画制御装置」と記すものは、実施の形態3に対応する録画制御装置を示す。 (2)前掲(ケ),(イ)ないし(エ)及び図9,図3の記載によれば、録画制御装置は、実施の形態1と共通する「入力部」、「予約情報記憶部」、「映像記憶部」、「再放送判定部」、「再放送予約管理部」、「第2録画制御部」を有しており、そのうちの「入力部」、「予約情報記憶部」、「映像記憶部」は、それぞれ実施の形態1の説明を参照すると「放送局からの番組と番組情報を受信する入力部」、「ユーザが予約した番組の予約情報を記憶する予約情報記憶部」、「予約情報に対応する番組が録画される映像記憶部」というものである。 また、録画制御装置は、実施の形態1と一部動作が異なる「第1録画制御部」と実施の形態1には存在しない「リクエスト送信部」を有している。 (3)前掲(オ)の記載によれば、第1録画制御部は、実施の形態1と共通する機能として、番組の録画が終了したときに、映像記憶部から記録媒体の記憶容量不足などで案組の録画が中断したという報告を受けると、予約情報記憶部の予約情報に再放送時録画マークを付加する。 記憶容量不足などで番組の録画が中断したということは、番組が正常に録画されなかったということといえる。 前掲(ケ),(コ)の記載によれば、第1録画制御部は、実施の形態3の機能として、予約情報記憶部に再放送時録画マークが付加された予約情報がある場合、その予約情報に対応する番組の再放送リクエスト情報を作成し、リクエスト送信部が再放送リクエスト情報を公衆電話回線網を利用して放送局に送信する。 以上のことから、「第1録画制御部」は、「映像記憶部に予約された番組が正常に録画されなかった場合に、リクエスト送信部を介して該番組を再放送リクエストする」ものである。 また、「リクエスト送信部」は、「公衆電話回線網を介して再放送リクエスト情報を送信する」ものである。 (4)前掲(サ)の記載によれば、放送局は再放送する番組の番組情報を作成し、公衆回線網を利用して再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する。 録画制御装置の番組情報を受信する入力部は、公衆回線網を利用して番組情報を受信するものであるとは明記されていないものの、放送局が公衆回線網を利用し録画制御装置を指定して番組情報を送信するのであるから、指定された録画制御装置は、それを受信する機能を有していることは自明のことである。 よって、番組情報を受信する入力部が、公衆回線網を利用して番組情報を受信する機能を有しているものといえる。 したがって、「入力部」は、「放送局が公衆回線網を利用して再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する再放送する番組の番組情報を受信する機能を有し」ているものと認められる。 (5)前掲(イ),(カ)の記載によれば、再放送判定部は、実施の形態1と共通する機能として、入力部が放送局から受信した番組情報を受け、その番組情報と同じ番組を表している予約情報を見つけた場合、EPGがその番組情報を再放送予約管理部に出力し、予約情報記憶部を更新する。 この再放送判定部の実施の形態3における動作を検討すると、実施の形態3においては、再放送する番組の番組情報は、放送局から再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信されるものであるから、受信する番組情報は、自らが再放送をリクエストした番組の情報であることが特定されているものである。 よって、再放送する番組の番組情報を受信した場合には、その番組情報に対応する予約情報は予約情報記憶部に存在しているので、実施の形態3の再放送判定部の判定結果は、番組情報に対応する予約情報を必ず見つけ出し、再放送予約管理部は、その予約情報を再放送する番組の番組情報に更新することとなる。 すなわち、「再放送判定部及び再放送予約管理部」は、「再放送する番組の番組情報に基づいて予約情報記憶部の予約情報を再放送する番組の番組情報に更新する」ものといえる。 (6)前掲(キ),(ク)の記載によれば、第1録画制御部は、実施の形態1と共通する機能として、現在時刻に最も近い予約情報を取り出し、その予約情報が再放送での予約情報である場合にはその予約情報に関連する本放送時の予約情報も取り出し第2録画制御部へ出力するが、第2録画制御部は取り出された予約情報にしたがって再放送時に番組の全部を映像記憶部に録画する。 そして、再放送での予約情報は、上記(5)で認定したように再放送する番組の番組情報で更新された予約情報であるから、「第2録画制御部」は、「再放送する番組の番組情報で更新された予約情報にしたがって再放送の番組を映像記憶部に録画する」ものといえる。 (7)まとめ 上記(1)ないし(6)によれば、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「放送局からの番組と番組情報を受信する入力部と、 ユーザが予約した番組の予約情報を記憶する予約情報記憶部と、 予約情報に対応する番組が録画される映像記憶部と、 映像記憶部に予約された番組が正常に録画されなかった場合に、リクエスト送信部を介して該番組を再放送リクエストする第1録画制御部と、 公衆電話回線網を介して再放送リクエスト情報を送信するリクエスト送信部と、 入力部は、放送局が公衆回線網を利用して再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する再放送する番組の番組情報を受信する機能を有し、 再放送する番組の番組情報に基づいて予約情報記憶部の予約情報を再放送する番組の番組情報に更新する再放送判定部及び再放送予約管理部と、 再放送する番組の番組情報で更新された予約情報にしたがって番組を映像記憶部に録画する第2録画制御部と、 を備える録画制御装置。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると次のことが認められる。 (a)引用発明の「放送局からの番組と番組情報を受信する入力部」の機能のうちの番組を受信する機能である「放送局からの番組を受信する入力部」、「ユーザが予約した番組の予約情報を記憶する予約情報記憶部」、「予約情報に対応する番組が録画される映像記憶部」は、予約とは録画予約のことであるから、それぞれ本願発明の「番組を受信する受信部」、「録画予約された番組の録画予約情報を格納する予約情報記憶部」、「当該予約情報記憶部に格納された前記録画予約情報に基づいて、前記受信部で受信して録画される番組を格納する番組記憶部」に相当する。 (b)引用発明の「公衆電話回線網を介して再放送リクエスト情報を送信するリクエスト送信部」と、「放送局が公衆回線網を利用して再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する再放送する番組の番組情報を受信する機能」を有する「入力部」は、公衆電話回線は通信回線であり、「リクエスト送信部」が送信する再放送リクエスト情報、及び「入力部」が受信する番組情報は、回線を介して送信又は受信されるデータといえるから、本願発明の「通信回線を介してデータの送受信が可能な通信部」と「通信回線を介してデータの送受信が可能なデータ送受信手段」という点で一致するといえる。 ただし、この『データ送受信手段』が、本願発明ではデータの送受信が可能な「通信部」であるのに対し、引用発明では「再放送リクエスト情報を送信する「リクエスト送信部」及び「番組情報を受信する機能」を有する「入力部」からなる点において相違する。 (c)本願発明の「制御部」の各機能について検討する。 (c-1)本願発明の「制御部」の「当該番組記憶部に前記録画予約された番組が正常に格納されなかった場合に、前記通信部を介して該番組を再放送リクエストし」という動作と、引用発明の「映像記憶部に予約された番組が正常に録画されなかった場合に、リクエスト送信部を介して該番組を再放送リクエストする第1録画制御部」とを比較すると、引用発明の「第1録画制御部」の動作は、本願発明の「制御部」の上記動作に対応するものである。 (c-2)本願発明の「制御部」の「前記通信部を介して当該再放送リクエストに対する応答情報を受信し」という動作と、引用発明の「入力部」が有する「放送局が公衆回線網を利用して再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する再放送する番組の番組情報を受信する機能」とを比較する。 引用発明の「放送局が再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する再放送する番組の番組情報」は、録画制御装置が放送局に送信した再放送リクエストに『応答』して、該放送局が再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する、再放送を行うことを示す番組情報であるから、再放送リクエストに『応答』する番組情報であり、すなわち、再放送リクエストに対する『応答情報』といえる。 したがって、引用発明の「入力部」が有する「放送局が公衆回線網を利用して再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する再放送する番組の番組情報を受信する機能」は、本願発明の「制御部」の「前記通信部を介して当該再放送リクエストに対する応答情報を受信し」という動作に対応するものである。 (c-3)本願発明の「制御部」の「当該再放送リクエストに対する応答情報に基づいて番組を録画予約し」という動作と、引用発明の「再放送する番組の番組情報に基づいて予約情報記憶部の予約情報を再放送する番組の番組情報に更新する再放送判定部及び再放送予約管理部」とを比較すると、上記(C-2)において検討したように、引用発明の「再放送する番組の番組情報」は本願発明の「再放送リクエストに対する応答情報」に相当するものであるから、引用発明の「再放送判定部及び再放送予約管理部」の動作は、本願発明の「制御部」の上記動作に対応するものといえる。 (c-4)本願発明の「制御部」の「当該応答情報に基づいて録画予約した番組を前記受信部で受信して前記番組記憶部に格納する」という動作と、引用発明の「再放送する番組の番組情報で更新された予約情報にしたがって番組を映像記憶部に録画する第2録画制御部」とを比較すると、上記(C-2)において検討したように、引用発明の「再放送する番組の番組情報」は本願発明の「再放送リクエストに対する応答情報」に相当するものであるから、引用発明の「第2録画制御部」の動作は、本願発明の「制御部」の上記動作に対応するものといえる。 (c-5)上記(c-1)ないし(c-4)の対比検討によれば、引用発明の「第1録画制御部」、「入力部」が有する「放送局が公衆回線網を利用して再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する再放送する番組の番組情報を受信する機能」、「再放送判定部及び再放送予約管理部」及び「第2録画制御部」は、本願発明の「当該番組記憶部に前記録画予約された番組が正常に格納されなかった場合に、前記通信部を介して該番組を再放送リクエストし、前記通信部を介して当該再放送リクエストに対する応答情報を受信し、当該再放送リクエストに対する応答情報に基づいて番組を録画予約し、当該応答情報に基づいて録画予約した番組を前記受信部で受信して前記番組記憶部に格納するように制御する制御部」と、「当該番組記憶部に前記録画予約された番組が正常に格納されなかった場合に、前記通信部を介して該番組を再放送リクエストし、前記通信部を介して当該再放送リクエストに対する応答情報を受信し、当該再放送リクエストに対する応答情報に基づいて番組を録画予約し、当該応答情報に基づいて録画予約した番組を前記受信部で受信して前記番組記憶部に格納するように制御する再放送番組録画手段」という点で一致するといえる。 ただし、この『再放送番組録画手段』が、本願発明では「制御部」であるのに対し、引用発明では「第1録画制御部」、「入力部」が有する「放送局が公衆回線網を利用して再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する再放送する番組の番組情報を受信する機能」、「再放送判定部及び再放送予約管理部」及び「第2録画制御部」の構成からなる点において相違する。 4.一致点・相違点 以上の対比(a)ないし(c)の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次の通りである。 [一致点] 通信回線を介してデータの送受信が可能なデータ送受信手段と、 番組を受信する受信部と、 録画予約された番組の録画予約情報を格納する予約情報記憶部と、 当該予約情報記憶部に格納された前記録画予約情報に基づいて、前記受信部で受信して録画される番組を格納する番組記憶部と、 当該番組記憶部に前記録画予約された番組が正常に格納されなかった場合に、前記通信部を介して該番組を再放送リクエストし、前記通信部を介して当該再放送リクエストに対する応答情報を受信し、当該再放送リクエストに対する応答情報に基づいて番組を録画予約し、当該応答情報に基づいて録画予約した番組を前記受信部で受信して前記番組記憶部に格納するように制御する再放送番組録画手段と、 を備える録画制御装置。 [相違点1] 『データ送受信手段』が、本願発明ではデータの送受信が可能な「通信部」であるのに対し、引用発明では「再放送リクエスト情報を送信する「リクエスト送信部」及び「番組情報を受信する機能」を有する「入力部」からなる点。 [相違点2] 『再放送番組録画手段』が、本願発明では「制御部」であるのに対し、引用発明では「第1録画制御部」、「入力部」が有する「放送局が公衆回線網を利用して再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信する再放送する番組の番組情報を受信する機能」、「再放送判定部及び再放送予約管理部」及び「第2録画制御部」の構成からなる点。 5.判断 (1)相違点について 上記相違点1および2として認定したように、引用発明においては、本願発明の「通信部」及び「制御部」における処理が、「リクエスト送信部」と「入力部」、及び「第1録画制御部」、「入力部」、「再放送判定部及び再放送予約管理部」と「第2録画制御部」というように、複数の別個の機能部により処理されるものであり、それら複数の機能部の動作により本願発明と同様の処理が行われるものである。 そして、特定の処理の実行を、まとめて1つの機能部で処理する構成とするか、複数の機能部に分散して処理させる構成とするかは、当業者が適宜設計可能な事項であり、分散して処理していた複数の機能部を1つの機能部に集約することは当業者が容易になし得る事項である。 よって、引用発明の「リクエスト送信部」と「入力部」、及び「第1録画制御部」、「入力部」、「再放送判定部及び再放送予約管理部」と「第2録画制御部」を、本願発明のような「通信部」及び「制御部」とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。 (2)効果等について 本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。 (3)出願人の意見書の主張について 出願人は、平成26年10月27日付けの意見書において、引用発明をEPG等の放送系から再放送の番組情報を受信するものであって、通信系から再放送の番組情報を受信するものではないと認定し、それに起因して、本願発明は引用発明に比べ、EPG等の放送系のチェック処理に対する負荷をかけることなく録画できるという顕著な効果を奏すると主張する。 しかしながら、上述したように引用発明は公衆回線網を利用して番組情報を受信するものと認定できるから、通信系から再放送の番組情報を受信するものといる。そして、再放送する番組の番組情報は、再放送リクエストを送った録画制御装置を指定して送信されるものであり、応答情報といえるものであるから、EPG等の放送系のチェック処理に対する負荷も生じないといえる。 よって、出願人の上記主張は採用できない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のように、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-17 |
結審通知日 | 2015-01-06 |
審決日 | 2015-01-19 |
出願番号 | 特願2008-300945(P2008-300945) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村山 絢子 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
清水 正一 小池 正彦 |
発明の名称 | 録画制御装置 |
代理人 | 大倉 昭人 |
代理人 | 杉村 憲司 |