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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B66B
管理番号 1298124
審判番号 不服2014-6228  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-04 
確定日 2015-03-05 
事件の表示 特願2009- 75445「エレベータの安全装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月14日出願公開、特開2010-228829〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年3月26日の出願であって、平成25年5月22日付けで拒絶理由が通知され、平成25年7月16日に意見書および手続補正書が提出されたが、平成26年1月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年4月4日に拒絶査定不服の審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 平成26年4月4日付け手続補正についての補正の却下の決定
<補正の却下の決定の結論>
平成26年4月4日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

<理由>
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成25年7月16日付けで提出された手続補正書で補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載を、下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載へ補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
乗降口を開閉する左右一対のかごドアを具え、発光によって前記一対のかごドアが閉じることを報知する発光手段が配備されている、センターオープンタイプのエレベータの安全装置において、
乗降口の下方に配備されている敷居の上方空間を撮影領域とする撮像手段と、
前記一対のかごドアが閉じる過程で前記撮像手段から出力される撮影画像に基づいて前記敷居上に異物が存在するか否かを判断し、異物が存在すると判断した場合に異物検知信号を生成する異物検知手段
とを具え、前記発光手段は、前記一対のかごドアの閉方向端面にそれぞれ配備された発光部によって構成され、該発光部は、前記一対のかごドアが閉じる過程で点灯を維持して前記撮影領域を照明することを特徴とするエレベータの安全装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
乗降口を開閉する左右一対のかごドアと、乗降口の上方に配備されているフレームと、乗降口の下方に配備されている敷居とを具え、発光によって前記一対のかごドアが閉じることを報知する発光手段が配備されている、センターオープンタイプのエレベータの安全装置において、
前記フレームに、前記敷居へ撮影方向を向けて配備され、敷居の上方空間を撮影領域とする撮像手段と、
前記一対のかごドアが閉じる過程で前記撮像手段から出力される撮影画像に基づいて前記敷居上に異物が存在するか否かを判断し、異物が存在すると判断した場合に異物検知信号を生成する異物検知手段
とを具え、前記発光手段は、前記一対のかごドアの閉方向端面の上端と下端の中間位置にそれぞれ配備された発光部によって構成され、両発光部はそれぞれ、かごドアの閉方向に対して斜め下方に向けて配備され、前記一対のかごドアが閉じる過程で点灯を維持して前記撮影領域を照明することを特徴とするエレベータの安全装置。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 本件補正の適否
2-1 本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「エレベータ」に関して、「乗降口の上方に配備されているフレームと、乗降口の下方に配備されている敷居と」を備える旨の限定を加えたものといえ、また、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「上方空間を撮影領域とする撮像手段」に関して、「前記フレームに、前記敷居へ撮影方向を向けて配備され、敷居」という限定を加えたものといえ、さらに、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「発光部」の配備位置に関して、「上端と下端の中間位置」及び「両発光部はそれぞれ、かごドアの閉方向に対して斜め下方に向けて配備され」るという限定を加えたものといえる。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2-2 独立特許要件の検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。) が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうかを検討する。

(1)引用文献に記載された発明
(a-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-273709号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は、当審が付した。)。

ア.「【0001】
この発明は、かご出入口及び乗場出入口の少なくともいずれか一方の付近の乗客を検出し、乗客の有無に応じてエレベータドアの開閉動作を制御するエレベータ装置に関するものである。
・・・(中略)・・・
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータ装置の要部を示す構成図、図2は図1のII-II線に沿う断面図である。図において、かご1は、乗客を収容するかご室2と、かご室2を支持するかご枠(図示せず)とを有している。かご室2の前面には、かご出入口1aが設けられている。かご出入口1aは、エレベータドアである一対のかごドア3により開閉される。 【0009】
乗場4には、かご出入口1aに連通される乗場出入口4aが設けられている。乗場出入口4aは、エレベータドアである一対の乗場ドア5により開閉される。乗場ドア5は、かごドア3に係合されることにより、かごドア3と一体的に開閉される。
【0010】
かご1には、第1及び第2のカメラ6,7が搭載されている。第1及び第2のカメラ6,7は、かご室2内でかご出入口1aの上部に下向きに取り付けられている。また、第1及び第2のカメラ6,7は、かご出入口1aの幅方向(間口方向)に並べて配置されている。
【0011】
さらに、第1及び第2のカメラ6,7は、かご出入口1a及び乗場出入口4aの付近に予め設定された共通の検出領域の画像を同時に撮影する。この例では、乗場で待つ乗客を検出するための第1の検出領域8aと、かご出入口1aの幅方向の中央部に位置する第2の検出領域8bと、乗場出入口4aの幅方向の中央部に位置する第3の検出領域8cとが検出領域として設定されている。
【0012】
第1のカメラ6からの信号は、第1のカメラ映像入力部9に入力される。第2のカメラ7からの信号は、第2のカメラ映像入力部10に入力される。第1及び第2のカメラ映像入力部9,10からの信号は、距離情報演算部11に入力される。距離情報演算部11は、第1及び第2のカメラ6,7からの情報に基づいて、予め設定された基準位置から検出領域8a?8c内の物体までの距離を求める。
【0013】
具体的には、距離情報演算部11は、第1及び第2のカメラ6,7をステレオカメラとして用い、第1及び第2のカメラ6,7からの映像を解析して視差を計測し、三角測量の原理により検出領域8a?8c内に存在する物体までの距離を求める。
【0014】
距離情報演算部11で求められた距離の情報は、乗客検出部12に送られる。乗客検出部12には、ドア位置取得部13で取得されたかごドア3の開閉方向の位置情報も入力される。ドア位置取得部13は、例えばエレベータ制御装置からかごドア3の位置情報を取得する。即ち、ドア位置取得部13は、かごドア3の位置を乗客検出のために新たに検出するのではなく、別途検出されているかごドア3の位置情報をエレベータ制御装置から取得する。
【0015】
乗客検出部12は、かごドア3の開閉方向の位置情報に基づいてかごドア3及び乗場ドア5の影響を除外しつつ、距離情報演算部11により求めた距離に基づいて検出領域8a?8c内に乗客が存在するかどうかを判定する。【0016】
例えば、検出領域8a?8c内に乗客が存在しなければ、距離情報演算部11により求められる距離は、予め記憶されたかご床又は乗場床までの距離と等しくなる。これに対して、検出領域8a?8c内に乗客が存在すれば、距離情報演算部11により求められる距離は、かご床又は乗場床までの距離よりも小さくなる。このとき、かごドア3及び乗場ドア5の影響を除外することにより、開閉途中のかごドア3及び乗場ドア5が検出領域8a?8c内に位置しているときでも、これらを乗客と誤検出するのを防止できる。
【0017】
乗客検出部12からの情報は、ドア制御部14に送られる。ドア制御部14は、乗客検出部12からの情報に基づいてかごドア3及び乗場ドア5の開閉動作を制御する。例えば、所定の戸開時間(全戸開状態を保持する時間)を経過した後にも第1の検出領域8a内に乗客が検出された場合には、戸開時間を延長する。また、例えば、戸開時間が経過する前に第1の検出領域8a内に乗客が検出されなくなった場合には、戸開時間を短縮する。さらに、例えば、戸閉動作中に第2又は第3の検出領域8b,8c内に乗客が検出された場合には、かごドア3及び乗場ドア5を反転戸開させる。
【0018】
なお、第1及び第2のカメラ映像入力部9,10、距離情報演算部11、乗客検出部12、ドア位置取得部13及びドア制御部14の機能は、1つ又は複数のマイクロコンピュータにより実現可能である。
【0019】
このようなエレベータ装置では、第1及び第2のカメラ6,7からの情報に基づいて検出領域8a?8c内の物体までの距離を求め、かごドア3の開閉方向の位置情報に基づいてかごドア3及び乗場ドア5の影響を除外しつつ、距離情報演算部11により求めた距離に基づいて検出領域8a?8c内に乗客が存在するかどうかを判定するので、より簡単な処理により、かご出入口1a及び乗場出入口4a付近の乗客を精度良く検出することができる。」(段落【0001】ないし【0019】)

イ.「【0031】
実施の形態5.
次に、図8はこの発明の実施の形態5によるエレベータ装置の要部を示す平面図である。かご出入口1aの床部には、かご敷居21が設けられている。かご敷居21の上面には、かごドア3の下端部の移動を案内するかご敷居溝21aが設けられている。乗場出入口4aの床部には、乗場敷居22が設けられている。乗場敷居22の上面には、乗場ドア5の下端部の移動を案内する乗場敷居溝22aが設けられている。」(段落【0031】)

ウ.「【0036】
実施の形態6.
次に、図12はこの発明の実施の形態6によるエレベータ装置の要部を示す構成図である。図において、かご1には、光源31が搭載されている。光源31は、かご出入口1a及び乗場出入口4aの少なくともいずれか一方の付近に予め設定された検出領域32に、所定の形状に整形された光ビームを照射する。
【0037】
この例では、光源31は、所定の長さの細長い矩形状の光ビーム(スリット光)を照射する。また、検出領域32は、かご出入口1a及び乗場出入口4aの幅方向中央部で、かご室2内及び乗場4の両方に跨るようにかご出入口1a及び乗場出入口4aの幅方向に直角に設定されている。
【0038】
かご1には、検出領域32の画像を撮影するカメラ33が搭載されている。カメラ33は、かご室2内でかご出入口1aの上部に下向きに取り付けられている。また、光源31とカメラ33とは、かご出入口1aの幅方向に並べて配置されている。
【0039】
カメラ33からの信号は、カメラ映像入力部34に入力される。カメラ映像入力部34からの信号は、距離情報演算部11に入力される。距離情報演算部11は、カメラ33からの情報に基づいて検出領域32内の物体までの距離を求める。
【0040】
具体的には、距離情報演算部11は、検出領域32内で反射されたスリット光の位置により、予め設定された基準位置から、スリット光を反射した物体までの距離を求める。以下の処理は、実施の形態1と同様である。
【0041】
このようなエレベータ装置では、検出領域32にスリット光を照射するとともに、カメラ33からの情報に基づいて検出領域32内の物体までの距離を求め、かごドア3の開閉方向の位置情報に基づいてかごドア3及び乗場ドア5の影響を除外しつつ、距離情報演算部11により求めた距離に基づいて検出領域32内に乗客が存在するかどうかを判定するので、より簡単な処理により、かご出入口1a及び乗場出入口4a付近の乗客を精度良く検出することができる。
【0042】
なお、光ビームの形状はスリット状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
また、上記実施の形態6では、光源31及びカメラ33をかご室2内に配置したが、かご室2外に配置してもよい。
さらに、カメラ33によりかご出入口1aの縦柱17(図7)近傍の障害物を検出するようにしてもよい。
さらにまた、1台のカメラに対して複数の光源を設けてもよい。」(段落【0036】ないし【0042】)

(a-2)ここで、上記(a-1)のア.ないしウ.並びに図面(特に、ウ.及び【図12】における実施の形態6.に関する記載、また実施の形態1.及び実施の形態5.を援用している記載)から、次のことが分かる。

カ.上記ア.の段落【0008】において「かご出入口1aは、エレベータドアである一対のかごドア3により開閉される。」と記載されているので、実施の形態1においては「一対のかごドア3」が設けられており、実施の形態6における「かごドア3」も少なくとも「一対のかごドア3」を含むものであることが分かる。

キ.上記イ.の段落【0031】において「かご出入口1aの床部には、かご敷居21が設けられている。」と記載されているので、実施の形態5においては「かご敷居21」が設けられており、上記カ.のとおり実施の形態6においても「一対のかごドア3」を有しているので同様に「かご敷居21」が設けられていることが分かる。

ク.上記ウ.の段落【0037】及び【0038】並びに【図12】の記載から、カメラ33は、かご出入口1aの上部に、下向きに取り付けられ、かご出入口1a及び乗場出入口4aの幅方向中央部である検出領域32の画像を撮影することが分かる。

ケ.上記ウ.の段落【0040】の「以下の処理は、実施の形態1と同様である。」と記載されているので、上記ア.の段落【0015】ないし【0017】、上記ウ.の段落【0041】並びに【図12】の記載から、乗客検出部12及びドア制御部14は、カメラ33からの情報に基づいて検出領域32内の物体までの距離を求め、かごドア3の開閉方向の位置情報に基づいてかごドア3及び乗場ドア5の影響を除外しつつ、距離情報演算部11により求めた距離に基づいて検出領域32内に乗客が存在するかどうかを判定し、戸閉動作中に乗客が検出された場合には、かごドア3を反転戸開させることが分かる。

コ.上記ウ.の段落【0041】の記載から、光源31は発光部を有することは明らかであるので、光源31は、発光部によって構成され、一対のかごドア3が閉じる過程で検出領域32に光を照射することが分かる。

(a-3)上記(a-1)及び(a-2)より、引用文献1には、次の発明が記載されている。

「かご出入口1aを開閉する一対のかごドア3と、かご出入口1aの上部と、かご敷居21とを具え、光源31が配備されている、乗客の有無に応じてエレベータドアの開閉動作を制御するエレベータ装置において、
かご出入口1aの上部に、下向きに取り付けられ、かご出入口1a及び乗場出入口4aの幅方向中央部である検出領域32の画像を撮影するカメラ33と、
カメラ33からの情報に基づいて検出領域32内の物体までの距離を求め、かごドア3の開閉方向の位置情報に基づいてかごドア3及び乗場ドア5の影響を除外しつつ、距離情報演算部11により求めた距離に基づいて検出領域32内に乗客が存在するかどうかを判定し、戸閉動作中に乗客が検出された場合には、かごドア3を反転戸開させる乗客検出部12及びドア制御部14
とを具え、光源31は、発光部によって構成され、一対のかごドア3が閉じる過程で検出領域32に光を照射する、乗客の有無に応じてエレベータドアの開閉動作を制御するエレベータ装置。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

(b-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭63-212688号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

サ.「3.発明の詳細な説明
[発明の目的]
(産業上の利用分野)
この発明はエレベータドアの安全装置に関する。
(従来の技術)
一般にエレベータドアの安全装置では、エレベータドアにセフティシューが取付けられていて、ドアの閉動作時に乗客が乗込み、セフティシューに触れると、検出スイッチが働いてエレベータドアがリオープンし、乗客がドアに挾まれることがないようにしている。
(発明が解決しようとする問題点)
ところが、このような従来のエレベータドアの安全装置では、セフティシューが目立ちにくい黒色のような暗色で仕上げられているため、乗降客はセフティシューには気付かず、開閉するドアだけを見て急いで乗り降りし、セフティシューに接触する頻度が多く、それだけリオープン動作が頻繁に起り、故障の確率が高くなる問題点があった。
この発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたものであって、エレベータドアのセフティシューを目立たせることによって乗降客が接触する頻度を低減し、故障の発生する確率が少ない安全装置を提供することを目的とする。
[発明の構成]
(問題点を解決するための手段)
この発明のエレベータドアの安全装置は、エレベータの移動停止を検出する停止検出回路と、この停止検出回路の停止信号により点灯信号をする点灯回路と、エレベータドアのセフティシュー内に設けられ、前記点灯回路の点灯信号により点灯する光源とから成るものである。
(作用)
この発明のエレベータドアの安全装置では、エレベータが移動停止すると、点灯回路が光源を点灯させ、セフティシューを内側から明るく照らして目立たせ、乗降客にセフティシューの存在を気付かせることができる。
(実施例)
以下、この発明の実施例を図に基づいて詳説する。第1図はこの発明の一実施例を示している。エレベータ1は、図に示されていない制御回路により昇降動作を制御される。このエレベータ1のドア2の先端部にセフティシュー3が取付けられている。
このセフティシュー3は、第2図に示すようにドア2に取付けられるベース4と、このベース4に対して取外し可能に取付けられるセフティシュー本体5とで構成されている。そして、セフティシュー本体5は、光透過性をもつ材質のもので、例えば乳白色アクリルのような半透明プラスチック、透明、半透明ゴムその他のものが適宜に用いられる。 セフティシュー本体5内には、ベース4上に上下複数個所にランプ6が光源として設けられている。
このランプ6は、点灯回路7とケーブル8により接続されている。第2図に示すように、このケーブル8は、頻繁なドア開閉動作による屈曲に耐えられるようにスプライン状のスプリング9によって保護されている。」(第1ページ右欄第3行ないし第2ページ左下欄第5行)

シ.「乗降客の乗り降りが終了し、ドア2が閉じ始めると、開閉検出回路14が閉動作信号CLを出力する。そこで、点灯回路7は、-斉点滅回路10によりランプ6の全てを一斉に点滅させ、乗降客にドア2が閉じ始めたことを知らせ、セフティシュー3に挾まれないように注意を与える。」(第3ページ左上欄第3行ないし第8行)

ス.「この発明は上記の各実施例に限定されることはなく、単にドアの閉動作時にセフティシューを明るく照らすために光源が一斉に点灯し、あるいは-斉に点滅するだけのものであってもよい。」(第3ページ右下欄第3行ないし第7行)

(b-2)ここで、上記(b-1)サ.ないしス.並びに図面から、次のことが分かる。

タ.上記サ.ないしス.並びに第1図及び第2図の記載から、エレベータドアの安全装置において、光源は、一対のドア2の先端部にそれぞれ設けられたランプ6によって構成されていることが分かる。

チ.上記サ.ないしス.並びに第1図及び第2図の記載から、エレベータドアの安全装置において、点灯によって一対のドア2が閉じ始めたことを知らせる光源が配備されていることが分かる。

(b-3)上記(b-1)及び(b-2)より、引用文献2には、次の発明が記載されている。

「点灯によって一対のドア2が閉じ始めたことを知らせる光源が配備され、光源は、一対のドア2の先端部にそれぞれ設けられたランプ6によって構成されているエレベータドアの安全装置。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)

(2)対比
本願補正発明と引用文献1記載の発明を対比する。
引用文献1記載の発明における「かご出入口1a」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願補正発明における「乗降口」に相当し、以下同様に、「一対のかごドア3」は「左右一対のかごドア」に、「光源31」は「発光手段」に、「発光部」は「発光部」に、「一対のかごドア3が閉じる過程で検出領域32に光を照射する」は「一対のかごドアが閉じる過程で点灯を維持して前記撮影領域を照明する」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1記載の発明における「かご出入口1aの上部」は、かご出入り口を構成するかご枠体の上部を意味することは明らかであるので、本願補正発明における「乗降口の上方に配備されているフレーム」に相当し、引用文献1記載の発明における「かご敷居21」は、かご出入り口の下方に配備されていることは明らかであるので、本願補正発明における「乗降口の下方に配備されている敷居」に相当し、引用文献1記載の発明における「乗客の有無に応じてエレベータドアの開閉動作を制御するエレベータ装置」は、一対のかごドア3を有しているので、本願補正発明における「センターオープンタイプのエレベータの安全装置」及び「エレベータの安全装置」に相当する。

そして、引用文献1記載の発明における「かご出入口1aの上部に、下向きに取り付けられ、かご出入口1a及び乗場出入口4aの幅方向中央部である検出領域32の画像を撮影するカメラ33」は、検出領域32はかご敷居21を含みカメラ33はかご敷居31の上方を撮影しているので、本願補正発明における「フレームに、前記敷居へ撮影方向を向けて配備され、敷居の上方空間を撮影領域とする撮像手段」に相当する。
さらに、引用文献1記載の発明における「カメラ33からの情報に基づいて検出領域32内の物体までの距離を求め、かごドア3の開閉方向の位置情報に基づいてかごドア3及び乗場ドア5の影響を除外しつつ、距離情報演算部11により求めた距離に基づいて検出領域32内に乗客が存在するかどうかを判定し、戸閉動作中に乗客が検出された場合には、かごドア3を反転戸開させる乗客検出部12及びドア制御部14」は、乗客が存在するかどうかを判定しており、上記(1)(a-1)ア.の段落【0017】の記載からみて、判定に基づいた信号を生成していることは明らかであるので、本願補正発明における「一対のかごドアが閉じる過程で前記撮像手段から出力される撮影画像に基づいて前記敷居上に異物が存在するか否かを判断し、異物が存在すると判断した場合に異物検知信号を生成する異物検知手段」に相当する。

したがって、両者は、
「乗降口を開閉する左右一対のかごドアと、乗降口の上方に配備されているフレームと、乗降口の下方に配備されている敷居とを具え、発光手段が配備されている、センターオープンタイプのエレベータの安全装置において、
フレームに、敷居へ撮影方向を向けて配備され、敷居の上方空間を撮影領域とする撮像手段と、
一対のかごドアが閉じる過程で撮像手段から出力される撮影画像に基づいて敷居上に異物が存在するか否かを判断し、異物が存在すると判断した場合に異物検知信号を生成する異物検知手段
とを具え、発光手段は、発光部によって構成され、一対のかごドアが閉じる過程で点灯を維持して撮影領域を照明するエレベータの安全装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
「発光手段」に関して、本願補正発明においては、「発光によって前記一対のかごドアが閉じることを報知する」ものであり、「一対のかごドアの閉方向端面の上端と下端の中間位置にそれぞれ配備された発光部によって構成され、両発光部はそれぞれ、かごドアの閉方向に対して斜め下方に向けて配備され」ているのに対して、引用文献1記載の発明においては、「発光部によって構成され」ている点(以下、「相違点」という。)。

(3)相違点についての判断
そこで、上記相違点について、以下に検討する。
まず、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明、及び本願補正発明は、いずれも、エレベータの安全装置という技術分野に属するものである。
次に、本願補正発明と引用文献2記載の発明を対比すると、引用文献2記載の発明における「点灯によって一対のドア2が閉じ始めたことを知らせる光源」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願補正発明の「発光によって一対のかごドアが閉じることを報知する発光手段」に相当し、以下同様に、「光源は、一対のドア2の先端部にそれぞれ設けられたランプ6によって構成」は「発光手段は、一対のかごドアの閉方向端面にそれぞれ配備された発光部によって構成」に、「エレベータドアの安全装置」は「エレベータの安全装置」に、それぞれ相当するので、引用文献2記載の発明を本願補正発明の用語で表現すると、
「発光によって一対のかごドアが閉じることを報知する発光手段が配備され、発光手段は、一対のかごドアの閉方向端面にそれぞれ配備された発光部によって構成されたエレベータの安全装置」ということできる。
してみると、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項において、両発光部が、かごドアの閉方向端面の上端と下端の中間位置に配備され、かごドアの閉方向に対して斜め下方に向けて配備されていること以外は、すべて引用文献2記載の発明と一致する。
ここで、一般的にエレベータドアの安全装置において、発光装置が、かごドアの先端の上端と下端の中間位置に配備することは、本願出願前周知技術(例えば、特開2007-119137号公報の段落【0011】及び【図1】等の記載参照。以下、「周知技術」という。)であり、そして、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明は共に、エレベータの安全装置という技術分野に属し、引用文献1における上記(1)(a-1)ウ.の段落【0042】の記載からみて、引用文献1記載の発明における光源31の配置や個数等に関して特に限定されるものでないので、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に接した当業者であれば、引用文献1記載の発明における光源に換えて、引用文献2記載の発明における発光手段を適用し、その適用の際に上記周知技術を考慮し、発光部をかごドアの先端の上端と下端の中間位置に配備して相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、上記適用の際に発光部を照明すべき方向(敷居の方向)に向けて配備することは当然であるので、両発光部をかごドアの閉方向に対して斜め下方(敷居の方向)に向けて配備することは当業者が適宜なし得る設計事項である。

そして、本願補正発明が、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び周知技術からは予想しえない格別の効果を奏するものとも認められない。

2-3 むすび
したがって、本願補正発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記<補正の却下の決定の結論>のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成25年7月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 <理由>1(1)」のとおりである。

2 引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用した本願の出願前に日本国内において、頒布された特開2008-273709号公報(以下、上記「第2<理由>2 2-2(1)(a-1)と同様に「引用文献1」という。)には、上記「第2<理由>2 2-2(1)(a-1)」の通りの記載があり、該記載及び図面から、上記「第2<理由>2 2-2(1)(a-2)」のとおりのことが分かる。
そして、引用文献1には、上記「第2<理由>2 2-2(1)(a-3)」のとおりの発明(以下、上記「第2<理由>2 2-2(1)(a-3)と同様に「引用文献1記載の発明」という。)が記載されていると認める。
さらに、原査定の拒絶の理由で引用した本願の出願前に日本国内において、頒布された特開昭63-212688号公報以下、上記「第2<理由>2 2-2(1)(b-1)と同様に「引用文献2」という。)には、上記「第2<理由>2 2-2(1)(b-1)」の通りの記載があり、該記載及び図面から、上記「第2<理由>2 2-2(1)(b-2)」のとおりのことが分かる。
そして、引用文献2には、上記「第2<理由>2 2-2(1)(b-3)」のとおりの発明(以下、上記「第2<理由>2 2-2(1)(b-3)と同様に「引用文献2記載の発明」という。)が記載されていると認める。

3 対比・判断
上記「第2<理由>2 2-1」で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が、上記「第2<理由>2 2-2(2)及び(3)」のとおり、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、本願発明は、本願補正発明における、発光手段が、一対のかごドアの閉方向端面「の上端と下端の中間位置」に配備されたという限定がないので、上記周知技術を必要としない。

4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-22 
結審通知日 2015-01-06 
審決日 2015-01-19 
出願番号 特願2009-75445(P2009-75445)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B66B)
P 1 8・ 121- Z (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 勝見  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 林 茂樹
槙原 進
発明の名称 エレベータの安全装置  
代理人 丸山 敏之  
代理人 長塚 俊也  
代理人 西岡 伸泰  
代理人 久徳 高寛  
代理人 宮野 孝雄  

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