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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F |
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管理番号 | 1298186 |
審判番号 | 不服2013-25034 |
総通号数 | 184 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-12-20 |
確定日 | 2015-03-06 |
事件の表示 | 特願2010- 25号「プレート熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月14日出願公開、特開2011-137621号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年1月4日の出願(特願2010-000025号)であって、平成25年7月30日付けで拒絶理由が通知され、同年9月25日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年10月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 なお、平成25年12月20日付けの手続補正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、特許法第17条の2第5項の規定を満たしている。 第2.本願発明について 1.本願発明 本願の請求項1にかかる発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年12月20日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 間隙を保ってプレートを積層し、これらのプレートの間隙を加熱流体と被加熱流体が交互に流れ、被加熱流体が加熱されるように加熱流体通路と被加熱流体通路とを構成した熱交換器において、一方の流体通路の少なくとも一部を、両端が開口した扁平な略箱体に予め形成することにより、間隙を保って積層する2枚のプレートに相当する部分を形成し、これらの略箱体を略箱体外の積層用スペーサを介して積層したことを特徴とするプレート熱交換器。」 2.引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭61-128606号(実開昭63-036857号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (なお、下記「(2) 引用例1に記載された発明の認定」に直接関与する記載に当審で下線を付した。) (1a)第1頁16行?18行 「本考案は、地下水や河川水、温排水など熱源水を利用して空気の冷暖房を行う熱交換器に関するものである。」 (1b)第5頁16行?18行 「この熱交換エレメント7は、複数枚の熱交換板4…が、上下両側に水平に設けた間隔片5…を介して複数枚積層されている。 (1c)第5頁19行?第6頁4行 前記熱交換板4は、2枚の側板1、1の間に所定のピツチで仕切壁2を設けて、上下方向に貫通する複数個の通水路6…を直列に形成して中空平板状をなすものである。この熱交換板4は、例えばポリプロピレンやナイロンなどの合成樹脂で押出し成型し、」 (1d)第7頁2行?11行 「この通水路6を流下するとき、通水路6は仕切壁2…により細かく仕切られているので、各通水路6…の上部から流入した地下水13はそのまま流下し、第3図に示すように熱交換板4の内面に均一な水膜14を形成し、側板1、1を加熱する。一方、地下水13の流下方向に直交して水平方向に、吸引フィルター11を通つて風胴部3…を流れる空気は、加熱された側板1と接触して加熱され、暖つた空気は送風フアン12を通つて排出される。」 (1e)第2図 (1f)第3図 (2) 引用例1に記載された発明の認定 引用例1の第2図及び第3図の記載(上記記載事項(1e),(1f)参照)から、「熱交換エレメント7」において、全体として1枚とみなされる「熱交換板4」につき2枚設けられている「側板1」が、同じ「熱交換板4」を構成する「側板1」との間も、別の「熱交換板4」を構成する「側板1」との間も、それぞれ、間隙を保つように積層されており、これら「側板1」の間隙を、交互に「通水路6」と「風胴部3」として用いられていることが看取できる。 上記記載事項(1a)?(1f)を総合すると、引用例1には、 「側板1が、間隙を保って積層されており、これら側板1の間隙が、交互に通水路6と風胴部3として用いられており、 通水路6に地下水13が流れ、地下水13が側板1を加熱し、 風胴部3に空気が流れ、空気が側板1と接触して加熱される、 熱交換エレメント7であって、 2枚の側板1の間に通水路6を形成して中空平板状の熱交換板4をなし、 この熱交換板4は、例えば押出し成型で形成され、 複数枚の熱交換板4が、上下両側に設けた間隔片5を介して複数枚積層されている熱交換エレメント7。」の発明(以下「引用発明」という)が記載されているといえる。 3.本願発明と引用発明との対比 (1) 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア.引用発明の「側板1」、「地下水13」、「空気」及び「熱交換エレメント7」は、それぞれ、本願発明の「プレート」、「加熱流体」、「被加熱流体」及び「プレート熱交換器」に相当する。 引用発明の「通水路6」には加熱流体が流れ、「風胴部3」には被加熱流体が流れることから、引用発明の「側板1が、間隙を保って積層されており、これら側板1の間隙を、交互に通水路6と風胴部3として用いられ」ることは本願発明の「間隙を保ってプレートを積層し、これらのプレートの間隙を加熱流体と被加熱流体が交互に流れ」ることに相当する。 引用発明の空気は、「側板1」を介して「地下水13」により加熱されているから、引用発明の「通水路6に地下水13が流れ、地下水13が側板1を加熱し、風胴部3に空気が流れ、空気が側板1と接触して加熱される、熱交換エレメント7」は、本願発明の「被加熱流体が加熱されるように加熱流体通路と被加熱流体通路とを構成した熱交換器」に相当する。 イ.引用発明の「熱交換板4」はその内側が「通水路6」であるから「両端」が「開口」するものであり、「中空平板状」であるから「扁平な略箱体」であるといえる。 したがって、引用発明の「2枚の側板1の間に通水路6を形成して中空平板状の熱交換板4をなし、この熱交換板4は、例えば押出し成型で形成」することと、本願発明の「一方の流体通路の少なくとも一部を、両端が開口した扁平な略箱体に予め形成することにより、間隙を保って積層する2枚のプレートに相当する部分を形成」することとは、 「一方の流体通路の少なくとも一部を、両端が開口した扁平な略箱体に形成することにより、間隙を保って積層する2枚のプレートに相当する部分を形成」することの限りにおいて共通する。 ウ.引用発明の「間隔片5」は「積層用スペーサ」に相当し、引用発明の「複数枚の熱交換板4が、上下両側に設けた間隔片5を介して複数枚積層」することは、本願発明の「これらの略箱体を略箱体外の積層用スペーサを介して積層」することに相当する。 (2) 一致点 よって、本願補正発明と引用発明は、 「間隙を保ってプレートを積層し、これらのプレートの間隙を加熱流体と被加熱流体が交互に流れ、被加熱流体が加熱されるように加熱流体通路と被加熱流体通路とを構成した熱交換器において、一方の流体通路の少なくとも一部を、両端が開口した扁平な略箱体に形成することにより、間隙を保って積層する2枚のプレートに相当する部分を形成し、これらの略箱体を略箱体外の積層用スペーサを介して積層したプレート熱交換器。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。 (3) 相違点 略箱体が、積層用スペーサを介して積層される際に、本願発明では「予め」形成されるのに対し、引用発明では、「予め」形成されるかは明らかでない点。 4.当審の判断 (1) 上記の相違点について検討する。 引用発明において「複数枚の熱交換板」を「複数枚積層」することから、1枚の「熱交換板4」を1つの部材とする思想を有しており、しかも、引用発明の「熱交換板4」の成形において、異形断面の断面形状の部材を成形可能な加工技術として慣用されている「押出し成型」を例示しており、「熱交換板4」を「予め」成形することは十分に示唆されている。 なお、請求人は審判請求書において引用発明に対し「熱交換板4が2枚の側板1の間に所定のピッチで仕切壁2を設けた複雑な構成であり、予め形成した略箱体等はどこにも存在せず、略箱体等をスペーサ等を介して積層するだけで熱交換エレメントを製作できるという構成ではないので、」と主張するが、「押出し成型」は、「仕切壁」があっても同時に成形可能な加工技術であり、「仕切壁」の存在が、引用発明の「熱交換板」を予め成形することを阻害することもない。 よって、引用発明に基いて、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者において容易に想到し得たことである。 (2) 本願発明の奏する作用効果 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものである。 第3.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-11-12 |
結審通知日 | 2014-12-09 |
審決日 | 2014-12-24 |
出願番号 | 特願2010-25(P2010-25) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F28F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関 裕治朗、仲村 靖 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 森本 康正 |
発明の名称 | プレート熱交換器 |
代理人 | 塩出 真一 |