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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A23L |
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管理番号 | 1298222 |
判定請求番号 | 判定2014-600042 |
総通号数 | 184 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2015-04-24 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2014-09-04 |
確定日 | 2015-03-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5308372号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号製品は、特許第5308372号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、被請求人が販売している野菜飲料「野菜一日これ一本」シリーズ(「野菜一日これ一杯」も含む。以下纏めて「イ号製品」という。)は、特許第5308372号の請求項1ないし請求項3に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 2.本件特許発明 (1)本件特許の請求項1ないし請求項3に係る発明は、特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、構成要件ごとに分説すると次のとおりである。また、以下特許第5308372号の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という。 本件特許発明1 「A.βカロテンと、ビタミンAと、ビタミンCとを含有し、 B.前記ビタミンAの配合量が200?800μg/100gとなるように、かつ、 C.前記βカロテンの配合量が前記ビタミンAの配合量に対し2.5?15倍量となるように、前記βカロテンと前記ビタミンAとが配合されてなることを特徴とする D.ビタミンA含有飲料。」 本件特許発明2 「E. 前記飲料が、野菜汁及び/又は果汁を含有する飲料であって、 F. 前記βカロテンが、前記野菜汁及び/又は果汁に由来するものであることを特徴とする 請求項1に記載のビタミンA含有飲料。」 本件特許発明3 「G.前記飲料が、透明容器又は半透明容器に充填されていることを特徴とする 請求項1又は2に記載のビタミンA含有飲料。」 (2)本件特許発明における「ビタミンA」について ア 本件特許発明1は、「βカロテンと、ビタミンAと、ビタミンCとを含有し、 前記ビタミンAの配合量が200?800μg/100gとなるように、かつ、 前記βカロテンの配合量が前記ビタミンAの配合量に対し2.5?15倍量となるように、前記βカロテンと前記ビタミンAとが配合されてなる」というものであり、「ビタミンA」と「βカロテン」は、それぞれ「配合され」るものであるから、これらは区別して特定されている。 イ 本件特許明細書には、「ビタミンA」に関し、以下の記載がある。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、ビタミンA含有飲料及びそれを製造する方法、並びにビタミンA含有飲料の劣化を抑制する方法に関するものである。」(下線は、当審で付与したものである。以下同様。) (イ)「【背景技術】 【0002】 ビタミンA(レチノール)は、ヒト等の生体における必須栄養素の一つであって、ビタミンAの血中濃度が低下すると、ビタミンA欠乏症を呈するようになる。そこで、従来、手軽にビタミンAを補給すべく、多数のビタミンA含有飲料が市販されている。」 (ウ)「【0003】 しかしながら、ビタミンAは、光により劣化(分解)してしまうため、ビタミンAを配合してビタミンA含有飲料を製造し、当該飲料を光透過性を有する透明容器に充填すると、摂飲時までには当該飲料中のビタミンA含有量が激減してしまい、十分量のビタミンAを摂取し得ないという問題があった。そのため、従来、ビタミンAが分解されてしまうことを考慮して、予め飲料にビタミンAを多量に配合しておく必要があった。」 (エ)「【0004】 一方で、ビタミンAを過剰に摂取すると、急性中毒症、頭痛、疲労感、吐き気、睡眠障害、食欲不振、皮膚の荒れ等の副作用を呈することが知られているため、一日の摂取許容上限量が定められている(非特許文献1参照)。また、飲料中にビタミンAを多量に配合すると、当該飲料の風味・呈味が悪化してしまうという問題もある。」 (オ)「【0011】 上記発明(発明1)によれば、ビタミンAの配合量に対して2.5倍量以上のβカロテンを飲料中に配合することで、ビタミンAの光照射による劣化(分解)を抑制することができる。また、ビタミンAの前駆体であるβカロテンは、過剰に摂取されると生体内に蓄積されるが、必要時に、蓄積されたβカロテンが必要量のビタミンAに変換されるため、過剰摂取の心配もなく、さらに光による劣化(分解)もほとんど起こらない。したがって、上記発明(発明1)に係るビタミンA含有飲料を摂飲することで、十分量のビタミンAを摂取することができる。」 (カ)「【0012】 上記発明(発明1)においては、前記βカロテンの配合量が、前記ビタミンAの配合量に対し2.5?15倍量であるのが好ましい(発明2)。かかる発明(発明2)によれば、ビタミンA含有飲料中のビタミンAの光照射による劣化を抑制することができるとともに、当該飲料の風味・呈味を良好にすることができる。」 (キ)「【0015】 上記発明(発明1?4)においては、前記飲料が、透明容器又は半透明容器に充填されているのが好ましい(発明5)。透明容器、半透明容器等の光透過性を有する容器にビタミンAを含有する飲料を充填すると、流通時、保管時等に当該飲料が光に晒されることで、飲料中のビタミンAが劣化(分解)してしまうおそれがあるが、かかる発明(発明5)によれば、ビタミンA含有飲料が光透過性を有する透明容器、半透明容器等に充填されていたとしても、飲料中のビタミンAの劣化(分解)が抑制されるため、ビタミンAを多量に配合しなくても、十分量のビタミンAを飲料中に含有せしめることができる。」 (ク)「【0025】 本実施形態に係るビタミンA含有飲料中に含まれるビタミンAとしては、飲料に添加物として配合することの可能なビタミンAを強化し得る添加物等を例示することができ、具体的には、レチノール、レチノール脂肪酸エステル等を例示することができる。」 (ケ)「【0028】 本実施形態に係るビタミンA含有飲料におけるビタミンAの配合量は、飲料100gあたり200?800μgであるのが好ましく、350?800μgであるのが特に好ましい。ビタミンA配合量が200μg未満であると、ビタミンAに基づく効果が不十分となるおそれがあり、800μgを超えると、ビタミンA含有飲料の風味・呈味を損なうおそれがある。」 (コ)「【0036】 本実施形態に係るビタミンA含有飲料は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、まず、市水、井水、イオン交換水、脱気水等の飲用に適した水にビタミンA(ビタミンAを強化し得る添加物)及びβカロテン(βカロテンを含む野菜汁及び/又は果汁)、並びに必要に応じてビタミンCを、それらの濃度が上述した範囲に含まれるように添加し、所望によりその他の飲料原料等をさらに添加して攪拌し、飲料原液を調製する。」 (サ)「【0041】 〔製造例1〕ビタミンA含有飲料の調製 飲料100g当たりのビタミンA配合量(μg)、βカロテン配合量(μg)及びビタミンC配合量(mg)が下記表1に示す配合量となるように、イオン交換水にビタミンA(理研ビタミン社製)、βカロテン(三栄源エフエフアイ社製)及び所望によりビタミンC(扶桑化学社製)を溶解させた後、200gに定量した。少なくともビタミンA及びβカロテンが溶解したイオン交換水を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、ビタミンA含有飲料を得た(試料1?36)。」 ウ 以上の記載によれば、本件特許発明における「ビタミンA」は、飲料に配合されるものであって、その配合されたビタミンAは、光により劣化、分解するものであるが(上記記載事項(ア)、(ウ)、(キ))、本件特許発明においては、「B.前記ビタミンAの配合量が200?800μg/100gとなるように、かつ、 C.前記βカロテンの配合量が前記ビタミンAの配合量に対し2.5?15倍量となるように、前記βカロテンと前記ビタミンAとが配合」されることによって、ビタミンA含有飲料の風味・呈味を損なうことなく、ビタミンAの劣化、分解を抑制するものである(上記記載事項(エ)、(オ)、(カ)、(ケ))。 また、本件特許明細書には、ビタミンAとして、ビタミンAそのものである「レチノール」があげられている(上記記載事項(イ)、(ク))。なお、ビタミンAが、通常、レチノールそのものを意味することも、技術常識である(ビタミンAの説明として「⇒レチノール」(標準化学用語辞典第2版)及び「一般に、ビタミンAという場合にはこの中のアルコール体( レチノール)を指しています。」(一般社団法人日本ビタミン学会,”やさしいビタミンの話”のビタミンAの項,インターネット<URL:http://web.kyoto-inet.or.jp/people/vsojkn/kaisetu/kaisetu-1.html>参照。))。 さらに、本件特許発明のビタミンA含有飲料の製造方法においては、ビタミンAは、βカロテン及びビタミンCと区別されて、並列に添加されている(上記記載事項(コ)、(サ))。 本件特許発明の「ビタミンA」は、上記のとおり、光により劣化、分解するものであるが、βカロテンは、光による劣化、分解がほとんど起こらないものである(上記記載事項(オ))。また、βカロテンは、ビタミンAの前駆体であり、生体内でビタミンAに変換されるものである(上記記載事項(オ))。 エ 以上のとおり、本件特許発明における「ビタミンA」は、その前駆体である「βカロテン」とは性質が異なり、両者は区別されるものであるから、本件特許発明における「ビタミンA」は、「βカロテン」を含むものではなく、「ビタミンA」そのものを意味すると認められる。 なお、食品中のビタミンA含量について、食事摂取基準の数値を、レチノール当量(retinol equivalents:RE)として、換算式「レチノール当量(μgRE)=レチノール(μg)+β-カロテン(μg)×1/12+α-カロテン(μg)×1/24+β-クリプトキサンチン(μg)×1/24+その他のプロビタミンA カロテノイド(μg)×1/24」によりを表示することがあることは、技術常識であるが(厚生労働省,”日本人の食事摂取基準(2010年版)”の「5.1.1ビタミンA」の項,インターネット<URL:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4i.pdf>参照。)、本件特許発明における「ビタミンA」は、「βカロテン」を含むものではない以上、レチノール当量として表されるような意味でのビタミンAを意味するものでないことは、明らかである。 3 当事者の主張 (1)請求人 ア イ号製品 判定請求書の「6.請求の理由(4)イ号製品の説明」(判定請求書第4頁3?11行)において、イ号製品についての分析試験報告書(甲3号証)における「VA」は「ビタミンA」を意味するとして、イ号製品を次のとおり特定している。 商品名:野菜一日これ一本、野菜一日これ一杯 内容量:190g,200mL(野菜一日これ一本) 920g,1000mL(野菜一日これ一杯) 構成: a.βカロテンと、ビタミンAと、ビタミンCとを含有し、 b.前記ビタミンAの配合量が300μg/100gとなるように、かつ、 c.前記βカロテンの配合量が前記ビタミンAの配合量に対し12倍量となるように、前記βカロテンと前記ビタミンAとが配合されてなることを特徴とする d.ビタミンA含有飲料、 であって、さらに、 e.前記飲料が、野菜汁を含有する飲料であって、 f. 前記βカロテンが、前記野菜汁に由来するものである。 また、さらに、内容量が920gの製品は、 g.透明ペットボトル容器に充填されている また、平成26年12月9日付け判定請求弁駁書において、「本件特許明細書において、『ビタミンA』がレチノールのみに限定解釈されるような記載はない。」(判定請求弁駁書第2ページ8?9行)、「ビタミンAをレチノール当量として計算することは本件特許出願日当時より当業者にとって通常の用法であった。」(判定請求弁駁書第2ページ16?17行)」、「イ号製品中のビタミンA量を測定するためにレチノール当量を測定し、これをビタミンAの量とすることは通常の用法」(判定請求弁駁書第2ページ24?25行)であるとしている。 イ 充足性 イ号製品の構成aは本件特許発明の構成要件Aを充足し、以下同様に、構成bは構成要件Bを、構成cは構成要件Cを、構成dは構成要件Dを、構成eは構成要件Eを、構成fは構成要件Fを及び構成gは構成要件Gを充足する。 (2)被請求人 ア イ号製品 請求人の主張するイ号製品の説明は適切ではなく、その結果、本件発明の技術的範囲とイ号製品との対比も適切でなく、イ号製品は、本件発明の技術的範囲に属するものではない。 乙第1号証によると、請求人の主張する甲第3号証で示された商品は、甲第1号証及び甲第2号証で示された商品の配合を変更したものであり、甲第3号証で示された商品を「イ号製品」とする(判定請求答弁書第2頁21?26行)。 また、イ号製品におけるビタミンAの取り扱いについて、イ号製品が含有するのは、ビタミンAではなく、α-カロテン及びβ-カロテンである。請求人の甲第3号証において「VA」と表記があるのは、ビタミンAではなく、計算式「レチノール当量」(μg)=「レチノール」(μg)+1/24「α-カロテン」(μg)+1/12「β-カロテン」(μg)+1/24「クリプトキサンチン」(μg)で求められる「レチノール当量」であり、また、乙第7号証によると、イ号製品は、レチノール当量ではない本来の意味のビタミンAは非検出であり、イ号製品は、正しくは次のとおりである(判定請求答弁書第2頁下から第3行?第5頁下から第3行)。 「(a)β-カロテンと、α-カロテンと、L-アスコルビン酸とを含有し、 (b)ビタミンAの配合量が検出されず、β-カロテンの配合量及びα-カロテンの配合量から算出される総レチノール当量が289?518μg/100gであり、かつ、 (c)β-カロテンの配合量が総レチノール当量の9.48?9.96倍であるように、β-カロテンと、α-カロテンとが配合されてなる、 (d)ビタミンAの配合量が検出されない野菜飲料、 であって、さらに、 (e)ビタミンAの配合量が検出されない野菜飲料が、野菜汁を含有する飲料であって、 (f)β-カロテンが、野菜汁に由来するものであり、 さらに、内容量が900ml及び720mlのビタミンAの配合量が検出されない野菜飲料は、 (g)透明ペットボトル容器に充填されている。」 イ 充足性 本件特許発明の「ビタミンA」からは、ビタミンAの前駆体(プロビタミンA)は除外されている。この解釈にあたり考慮したことは、本件特許発明1の記載において、「ビタミンA」と「βカロテン」とは、互いに区別して使用されていて、明細書の段落【0011】、【0036】及び【0041】の記載においても、同様に区別して用いられている。また、明細書の段落【0002】ないし【0005】、【0025】、【0036】並びに【0041】の記載によれば、「ビタミンA」とは、飲料中で既に「ビタミンA(レチノール)」の構造をとるものである。 したがって、イ号製品において、ビタミンAは配合されていないから、イ号製品は、本件特許発明の構成要件 A、B、C、D、E及びGを充足しない。 4 当審の判断 (1)イ号製品 ア 甲第1号証、甲第2号証、乙第1号証及び乙第2号証によれば、被請求人は野菜飲料「野菜一日これ一本」シリーズを販売しており、甲第3号証の「野菜一日これ一本紙200 14.2.27」(以下「甲3製品」という。)は、そのシリーズの製品の一つであると認められる(この点について当事者間の争いはない。)。そして、判定請求人がイ号製品を特定するために提出した甲第1号証ないし甲第3号証のうち、成分が立証されているのは甲3製品のみなので、以下においては、判定の対象として甲3製品を特定する。 イ 前記2(2)で認定した技術常識を踏まえて、甲3製品を特定する。 甲3製品は、βカロテンと、αカロテン及びL-アスコルビン酸が含まれているが、一般にビタミンAと解されるレチノールは含まれていない。甲第3号証の「VA」なる標記については、説明がないから、具体的に何を意味しているのか不明である。 この点について、請求人は、「VA」は「ビタミンA」を意味すると主張するが、甲3製品には、一般にビタミンAと解されるレチノールは含まれていないから、「VA」がビタミンAそのものを意味するとはいえない。むしろ、前記2(2)エの食品中のビタミンA含量についての技術常識と被請求人の計算(判定請求答弁書第4ページ下の「計算結果」を示す表参照。)からすれば、レチノール当量として表されるビタミンAを意味すると解される。このことは、被請求人が提出した乙第7号証の一般財団法人「日本食品分析センター」による「野菜一日これ一本賞味期限2013.11.30」の分析試験結果に、ビタミンAそのものが検出されていないこと、請求人が提出した平成26年12月9日付け判定請求弁駁書において「イ号製品中のビタミンA量を測定するためにレチノール当量を測定し、これをビタミンAの量とすることは通常の用法」であるとの主張とも整合する。 ウ 以上によれば、甲3製品は、以下のとおり特定される。 「a.βカロテンと、αカロテンと、L-アスコルビン酸とを含有し、 b.レチノール当量が300μg/100gであり、かつ、 c.αカロテンの配合量が1480μg/100gであり、βカロテンの配合量が3610μg/100gである、 d.ビタミンAの配合量が検出されない飲料、 であって、さらに、 e.前記飲料が、野菜汁を含有し、 f.βカロテンが、前記野菜汁に由来し、 また、さらに g.内容物が200mlであり、紙容器に充填されている。」 なお、甲第3号証において示された、レチノール、α-カロテン及びβ-カロテンの各配合量から、上記「3(2)ア」のレチノール当量を求める計算式に基づいて、レチノール当量を計算すると、「超濃縮野菜一日これ一本紙125 14.2.14」は、518μg/100g、「超濃縮野菜一日これ一本紙125鉄分ミックス14.1.18」は、289μg/100g及び「超濃縮野菜一日これ一本紙125青汁ミックス14.1.31」は、309μg/100gとなり、VAとして示された520μg/100g、290μg/100g及び310μg/100gの各数値と、それぞれほぼ一致するが、「野菜一日これ一本紙200 14.2.27」は363μg/100gとなり、上記300μg/100gと整合しない点はあるものの、上記イのとおり、「VA」はレチノール当量を意味すると解されるから、甲3製品を上記のとおり特定することとする。 (2)甲3製品の充足性 ア 本件特許発明1と甲3製品とを対比すると、甲3製品の「L-アスコルビン酸」は、本件特許発明1の「ビタミンC」に相当する。 そして、甲3製品が本件特許発明1に係る前記分説した各構成要件A?Dを充足するか否かについて、以下に対比・判断をする。 (ア)構成要件Aの充足性について 甲3製品の構成aは、上記(1)で検討したとおり本件特許発明1の構成要件AのビタミンA、すわなちビタミンAそのものを含んでいないので、構成要件Aを充足しない。 (イ)構成要件Bの充足性について 甲3製品の構成bの「300μg/100g」はレチノール当量であって、ビタミンAそのものの配合量ではない。甲3製品は、本件特許発明1の構成要件Bの「ビタミンA」の配合量を検出しないので、構成要件Bを充足しない。 (ウ)構成要件Cの充足性について 甲3製品の構成cの「αカロテンの配合量が1480μg/100gであり、βカロテンの配合量が3610μg/100gである」ことは、ビタミンAそのものは配合されておらず、本件特許発明1の構成要件Cの「前記βカロテンの配合量が前記ビタミンAの配合量に対し2.5?15倍量となるように、前記βカロテンと前記ビタミンAとが配合」されていないので、構成要件Cを充足しない。 (エ)構成要件Dの充足性について 甲3製品の構成dは、「ビタミンAの配合量が検出されない飲料」であり、本件特許発明1の構成要件Dの「ビタミンA含有飲料」といえないので、構成要件Dを充足しない。 イ 以上のとおりであるから、甲3製品の構成が、本件特許発明1の構成要件を充足しないから、文言上、甲3製品が本件特許発明1の技術的範囲に属しない。 また、上記充足しないとした各構成要件は、発明の本質的な部分であるので、均等論を適用する余地はない。 ウ 本件特許発明2及び本件特許発明3と甲3製品の対比について 上記のとおり、甲3製品が本件特許発明1の技術的範囲に属しないので、甲3製品が、文言上、本件特許発明1を引用する本件特許発明2及び3の技術的範囲に属しない。 (3)甲3製品以外のシリーズ全て(イ号製品)の充足性 甲3製品以外のシリーズ全て(イ号製品)は、成分につき立証されていないから、イ号製品の成分は不明であり、本件特許発明の技術的範囲に属しているということはできない。 5.むすび 以上のとおり、イ号製品は本件特許発明の構成要件A、B、C及びDを充足しないから、イ号製品は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2015-02-20 |
出願番号 | 特願2010-35354(P2010-35354) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(A23L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤井 美穂 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 佐々木 正章 |
登録日 | 2013-07-05 |
登録番号 | 特許第5308372号(P5308372) |
発明の名称 | ビタミンA含有飲料及びその製造方法、並びにビタミンA含有飲料の劣化抑制方法 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 北谷 賢次 |
代理人 | 稲葉 良幸 |