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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02P
管理番号 1298684
審判番号 不服2013-4265  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-05 
確定日 2015-03-10 
事件の表示 特願2011- 48806「ガスエンジンのための点火装置及びガスエンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月16日出願公開、特開2011-117457〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年4月11日(パリ条約による優先権主張2007年4月27日、ドイツ連邦共和国)に出願した特願2008-103797号の一部を平成23年3月7日に新たな出願としたものであって、平成24年3月15日付けで拒絶理由が通知され、同年6月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月2日付けで拒絶査定がされ、平成25年3月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、同年4月18日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出され、その後、当審において、同年6月11日付けで書面による審尋がされ、同年12月18日に回答書が提出され、平成26年2月3日付けで拒絶理由が通知され、同年8月11日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成26年8月11日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
オットー・ガスエンジン用の、燃料空気混合気を点火するための点火装置であって、該点火装置には点火源として機能する加熱装置が備わっており、また、それぞれの加熱装置はスリーブ状収容装置により点火対象の燃料空気混合物から分離されており、また、該加熱装置により、点火対象の燃料空気混合物に接するそれぞれの収容装置の一部分は、収容装置における点火対象の燃料空気混合物に接する部分が、燃料空気混合物の点火に必要な温度を呈するように加熱される、前記点火装置において、
加熱装置(12)及び収容装置(13)の寸法及び熱膨張係数が、燃料空気混合物を点火するために加熱装置(12)がオンの状態において、及び、燃料空気混合物が点火されて加熱装置(12)がオフの状態においても、加熱装置(12)と収容装置(13)との間に一つの隙間ばめが形成されるように構成されていることを特徴とする点火装置。」

第3 引用刊行物
1 引用文献に記載された事項
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭54-67136号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、例えば、以下のような事項が記載されている(なお、下線は当審で付したものである。)。

ア 「2.特許請求の範囲
1.点火部の範囲内に螺旋形の帯コイルを加熱体として有する内燃機関用の棒状グロープラグにおいて、加熱体(15)が点火部側の閉塞されたグロー管(10)の内室(11)中で電気絶縁性の熱を良好に伝導する材料(19)に埋設されていることを特徴とする内燃機関用の棒状グロープラグ
(中略)
6.加熱体(15)の輪郭がグロー管(10)の内側輪郭にできるだけ隣接して存在する、特許請求の範囲第1項乃至第6項記載のグロープラグ
(後略)」(特許請求の範囲の第1項ないし第8項)

イ 「 本発明は、グロー管の点火部の範囲の内室に螺旋形帯コイルを加熱体として有する内燃機関用グロープラグに関する。この加熱体はグロー管の底部に隣接して配置され、高いエネルギー密度を有する。」(第1ページ右下欄第16ないし20行)

ウ 「 これに反して、加熱体が点火部側の閉塞されたグロー管の内室中で電気絶縁性の熱を良好に伝導する材料に埋設されていることを特徴とする本発明によるグロープラグは、加熱体に使用される材料が内燃機関の高い温度に直接さらされず、燃焼ガスに対して安定である必要もなし、利点を有する。本明細書の従属請求項に記載した方法によつて請求項に記載したグロープラグのさらにすぐれた他の実施形及び改良が可能である。」(第2ページ左上欄第9ないし18行)

エ 「 本発明によるグロープラグの発熱部はグロー管10を有し、内室11の接続側部分に接続用ボルト12が突入している。グロー管10の点火側端部は薄い壁の底部13によつて閉塞され、該底部に支えボルト14の端部が密接かつ不動に熔接されている。この支えボルト14上にグロー管底部13から僅かな距離で螺旋形の帯コイルが加熱体15として巻かれ、その個々の巻きは図示されていない絶縁層によつて互いに分離され;このような発熱体のすぐれた実施形の場合に個々の互いに絶縁された巻きは不動に重なり合つて巻かれ、加熱体15の輪郭はグロー管10の内側輪郭に隣接して存在する。」(第2ページ右上欄第8ないし20行)

オ 「帯状加熱体15の外側に存在する端部は、接続導体17が固定されている接続端子16を備える。この接続導体17はもう一方の端部が接続用ボルト12に固定され、数巻きの熱膨張補償部18を有し;該導体は大きい正の抵抗温度係数を有する材料から成り、それは加熱体の迅速な加熱に役立ち、該加熱体の過熱及びそれに伴う事故破壊の危険が除去される。内室11の記載された個々の部材によつて占められない部分は公知方法で電気絶縁性の熱を良好に伝導する例えば酸化マグネシウムのような材料19で充填され、グロー管10の接続側端部は接続用ボルト12の他にパツキンリング20によって閉塞され;材料19を圧縮するには、このように組み立てた状態のグロー管10を公知方法でハンマー、ローラー又は類似物によつて発熱部を半径方向に絞り、こうして材料19を圧縮し、それによつて改良された熱伝導性を得る。グロー管10の接続側端部は、フランジによつてパツキンリング20に圧入される。」(第2ページ右上欄第20行ないし左下欄第20行)

カ 「 接続導体17は接続用ボルト12ならびに接続端子16に有利に熔接によつて固定されていることを明らかにする。接続端子16は加熱体15を形成する材料から一緒に成形することによつて形成されるが、該端子は加熱体15の外側にある端部を曲げることによつても形成することができる。加熱体15の電気抵抗は有利に0.3?0.5オームの間に存在するが、使用する場合に応じて0.1?1オームの間に存在することもできる。」(第2ページ右下欄第1ないし11行)

キ 「4.図面の簡単な説明
図面は本発明により拡大して表わしたグロープラグの発熱部の断面部を示す。
10…グロー管、11…内室、12…接続用ボルト、13…底部、14…支えボルト、15…加熱体、16…接続端子、17…接続導体、18…熱膨張補償部、19…絶縁材料、20…パツキンリング」(第2ページ右下欄第11ないし18行)


2 上記1 アないしキ及び図面の記載からから分かること

ク 上記1 アないしキ及び図面の記載から、引用文献には、内燃機関用の点火用のグロープラグが記載されていることが分かる。このような点火用のグロープラグが燃料空気混合気に点火するためのものであることは、当業者にとり明らかである。

ケ 上記1 ア及びイ並びに図面の記載から、引用文献に記載された内燃機関用の点火用のグロープラグにおいては、グロー管10の点火部の範囲の内室に加熱体15を有することから、グロー管10の加熱体15の近傍部位が「点火部」であることが分かる。

コ 上記1 ウ及び図面の記載から、引用文献に記載された内燃機関用の点火用のグロープラグは、加熱体に使用される材料が内燃機関の高い温度に直接さらされないという利点を有することが分かる。

サ 上記1 ア、イ及びエ並びに図面の記載から、引用文献に記載された内燃機関用の点火用のグロープラグにおいては、加熱体15の輪郭が、グロー管10の内側輪郭に隣接して存在するように構成されていることが分かる。

3 引用発明

上記1及び2並びに図面の記載から、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「内燃機関用の、燃料空気混合気を点火するためのグロープラグであって、該グロープラグには点火源として機能する加熱体15が備わっており、また、加熱体15はグロー管10により点火対象の燃料空気混合物から分離されており、また、加熱体15により、点火対象の燃料空気混合物に接するそれぞれのグロー管10の点火部は、グロー管10における点火対象の燃料空気混合物に接する部分が、燃料空気混合物の点火に必要な温度を呈するように加熱される、グロープラグにおいて、
加熱体15及びグロー管10の寸法が、加熱体15の輪郭がグロー管10の内側輪郭に隣接して存在するように構成されている、グロープラグ。」

第4 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明における「グロープラグ」は、その技術的意義又は構成からみて、本願発明における「点火装置」に相当し、以下同様に、「加熱体15」は「加熱装置」に、「グロー管10」は「スリーブ状収容装置」及び「収容装置」に、「(グロー管の)点火部」は「(収容装置の)一部分」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「内燃機関」は、本願発明における「オットー・ガスエンジン」に、「内燃機関」という限りにおいて相当する。
また、引用発明における「加熱体15及びグロー管10の寸法が、加熱体15の輪郭がグロー管10の内側輪郭に隣接して存在するように構成されている」は、本願発明における「加熱装置及び収容装置の寸法及び熱膨張係数が、燃料空気混合物を点火するために加熱装置がオンの状態において、及び、燃料空気混合物が点火されて加熱装置がオフの状態においても、加熱装置と収容装置との間に一つの隙間ばめが形成されるように構成されている」に、「加熱装置及び収容装置の寸法が、加熱装置と収容装置との間に隙間が形成されるように構成されている」という限りにおいて相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
「内燃機関用の、燃料空気混合気を点火するための点火装置であって、該点火装置には点火源として機能する加熱装置が備わっており、また、加熱装置はスリーブ状収容装置により点火対象の燃料空気混合物から分離されており、また、加熱装置により、点火対象の燃料空気混合物に接するそれぞれの収容装置の一部分は、収容装置における点火対象の燃料空気混合物に接する部分が、燃料空気混合物の点火に必要な温度を呈するように加熱される、点火装置において、
加熱装置及び収容装置の寸法が、加熱装置と収容装置との間に隙間が形成されるように構成されている、点火装置。」

そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点>
(1)「内燃機関」について、本願発明においては、「オットー・ガスエンジン」と特定されているのに対し、引用発明においては、そのように特定されていない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)「加熱装置及び収容装置の寸法が、加熱装置と収容装置との間に隙間が形成されるように構成されている」について、本願発明においては「加熱装置及び収容装置の寸法及び熱膨張係数が、燃料空気混合物を点火するために加熱装置がオンの状態において、及び、燃料空気混合物が点火されて加熱装置がオフの状態においても、加熱装置と収容装置との間に一つの隙間ばめが形成されるように構成されている」のに対し、引用発明においては、「加熱体15及びグロー管10の寸法が、加熱体15の輪郭がグロー管10の内側輪郭に隣接して存在するように構成されている」点(以下、「相違点2」という。)。

第5 判断
相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明は、グロープラグにより点火する内燃機関に対して適用できるものである。
そして、グロープラグにより点火するオットー・ガスエンジンは、本願の優先日前の周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開平2-23270号公報[例えば、特許請求の範囲を参照。]、特開平9-72269号公報[例えば、特許請求の範囲の請求項1ないし4を参照。]等の記載を参照。)である。
してみれば、引用発明において、周知技術1を適用し、内燃機関として、オットー・ガスエンジンを選択することによって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
本願発明における「加熱装置及び収容装置の寸法及び熱膨張係数が、燃料空気混合物を点火するために加熱装置がオンの状態において、及び、燃料空気混合物が点火されて加熱装置がオフの状態においても、加熱装置と収容装置との間に一つの隙間ばめが形成されるように構成されている」に関して、本願の明細書には「代替的に、燃料空気混合物を点火するために加熱装置12がオンの場合において、及び、燃料空気混合物が点火された状態及び加熱装置12がオフの状態において、加熱装置12と収容装置13との間に隙間ばめが形成されるように、加熱装置12及び収容装置13の寸法及び熱膨張係数を構成することが可能である。」(段落【0025】)と記載されている以外に何も説明がなく、それによる作用効果も明らかでない。また、本願の明細書中には、「加熱装置及び収容装置の寸法及び熱膨張係数」についての具体的な数値も記載されていないことから、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、要するに、エンジン運転中の高温状態において、加熱装置と収容装置との間に「隙間ばめ」程度のわずかな隙間があるということを述べたものと認められる。
一方、引用発明においては、「加熱体15及びグロー管10の寸法が、加熱体15の輪郭がグロー管10の内側輪郭に隣接して存在するように構成されている」というものであり、図面を参酌すると、加熱体15とグロー管10との間には隙間がある。
また、加熱装置の熱膨張係数と収容装置の熱膨張係数の差があるために、高温において加熱装置と収容装置との間に隙間が生じることは、周知技術(以下、「周知技術2」という。例えば、国際公開第2005/080877号[例えば、段落【0003】の記載を参照。]、特開2005-190948号公報[例えば、段落【0023】の記載を参照。]、特開平9-303773号公報[例えば、段落【0010】の記載を参照。]等を参照。)である。
してみれば、引用発明において、周知技術2を適用して、エンジン運転中の高温状態において、加熱装置と収容装置との間に「隙間ばめ」程度のわずかな隙間が生じるようにすることにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明は、全体構成でみても、引用発明並びに周知技術1及び2から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものでもない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-08 
結審通知日 2014-10-14 
審決日 2014-10-27 
出願番号 特願2011-48806(P2011-48806)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石黒 雄一  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 加藤 友也
金澤 俊郎
発明の名称 ガスエンジンのための点火装置及びガスエンジン  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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