• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G07D
管理番号 1298692
審判番号 不服2014-992  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-20 
確定日 2015-03-09 
事件の表示 特願2009-114416号「貨幣処理機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月18日出願公開、特開2010-262568号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年5月11日の出願であって、拒絶査定がなされ、これに対し、拒絶査定不服審判の請求がされ、その後当審より平成26年10月15日付けで拒絶理由が通知がなされ、これに対し、同年12月12日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年12月12日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
貨幣処理機であって、
筐体と、
前記筐体の外部から内部に貨幣を投入するための投入口と、
前記投入口に接続され、貨幣の搬送を行う搬送部と、
前記搬送部に接続され、搬送されてきた貨幣を収納する貨幣収納部と、
前記搬送部に接続され、搬送されてきた貨幣を収納するとともに、この収納した貨幣を前記搬送部に繰り出すリサイクル式貨幣収納繰出部と、
前記搬送部および前記リサイクル式貨幣収納繰出部の制御を行う制御部であって、前記リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている貨幣の貨幣量を、管理権限の異なる複数の区分の貨幣量を用いて管理する制御部と、
を備え、
前記リサイクル式貨幣収納繰出部に収納される貨幣は、店舗側に管理権限がある店舗金と、収集特定者側に管理権限が移されるべき売上金と、に分けて管理され、
前記リサイクル式貨幣収納繰出部から前記貨幣収納部に貨幣を送る引渡処理を行う際に、前記売上金に相当する貨幣が前記貨幣収納部に送られる
ことを特徴とする貨幣処理機。」

第3 引用刊行物とその記載事項
当審の拒絶の理由において引用された特開2003-141609号公報(以下、「引用刊行物」という。)には次のとおり記載されている。
(ア)「【請求項1】 現金を入金するための入金手段と、
前記入金手段により入金される金額に対して、入金後に取出しを行う可能性の有無を区分として指定する区分指定手段と、
前記区分指定手段により指定された区分に基づいて、前記入金手段により入金された金額についての金額データを管理する第1管理手段と、
前記入金手段により入金された現金を、入金した操作者が取出し可能に収納する第1収納部と、
前記第1収納部に収納された現金を所定の取出し指示に基づいて取出すための取出し手段と、
前記取出し手段により取出された金額についての金額データを管理する第2管理手段と、
現金を、入金した操作者が取出し不能に収納する第2収納部と、
前記第1収納部に収納された現金の少なくとも一部を所定の搬送指示に基づいて前記第2収納部に搬送する搬送手段とを備えてなる店舗用入出金装置。・・・」(【特許請求の範囲】)
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、店舗に設置され、店舗における売上金を入金し、また店舗における準備金等を取出すことができる店舗用入出金装置、店舗用入出金システム及び店舗用入出金管理方法に関するものである。」
(ウ)「【0005】本発明は、上述した事情に鑑みて成されたものであり、入金した金額を取出すすることができ、また現金回収業者により回収される現金を収納する収納部(金庫)が満杯になり難く、店舗側の入金管理が便利であり、また現金回収業者の現金回収作業が容易となる店舗用入出金装置、店舗用入出金システム及び店舗用入出金管理方法を提供することを目的としている。」
(エ)「【0006】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するため、本発明は、現金を入金するための入金手段と、前記入金手段により入金される金額に対して、入金後に取出しを行う可能性の有無を区分として指定する区分指定手段と、前記区分指定手段により指定された区分に基づいて、前記入金手段により入金された金額についての金額データを管理する第1管理手段と、前記入金手段により入金された現金を、入金した操作者が取出し可能に収納する第1収納部と、前記第1収納部に収納された現金を所定の取出し指示に基づいて取出すための取出し手段と、前記取出し手段により取出された金額についての金額データを管理する第2管理手段と、現金を、入金した操作者が取出し不能に収納する第2収納部と、前記第1収納部に収納された現金の少なくとも一部を所定の搬送指示に基づいて前記第2収納部に搬送する搬送手段とを備えてなるものである。
【0007】このような構成によれば、入金後に取出す可能性の有無に拘わらず、入金された現金は取り敢えず取出し可能な第1収納部に収納されるため、後で準備金として取出すことができる。この場合、区分に基づく金額データが第1管理手段により管理されると共に、取出された金額についての金額データが第2管理手段により管理されるため、店舗における入金、入金された現金の取出しの管理が一つの装置によって行われ、従って、例えば売上金、準備金の管理が容易となる。また、現金を入金後取出し不能に収納する第2収納部は、搬送指示に基づいて、第1収納部から搬送手段により搬送された現金を収納するため、例えば、指示された金額に対して額面の大きな金種で金額を構成して搬送することにより、第2収納部(金庫)が従来のように、直ぐに満杯になってしまうという不具合も解消し得る。
【0008】なお、本発明の実施の形態において、入金手段は入金口と入出金操作部と鑑別部と制御部により構成され、区分指定手段は入出金操作部と制御部により構成され、第1管理手段は制御部とカウンタにより構成され、第1収納部はリサイクル収納部により構成され、取出し手段は出金口と入出金操作部と鑑別部と制御部により構成され、第2管理手段は制御部とカウンタにより構成され、第2収納部はカセット収納部により構成され、搬送手段は制御部と鑑別部と搬送用の通路により構成される。また、所定の搬送指示は、入出金操作部により提供される入出金操作パネルから行われる。
【0009】また、本発明の店舗用入出金装置においては、前記第1管理手段と前記第2管理手段とにおける管理データと、前記搬送手段により搬送された金額データとに基づいて、前記第1収納部に収納されている金額と、前記第2収納部に収納されている金額データを管理する収納金額管理手段を備えていることを特徴とする。
【0010】このような構成によれば、第1収納部に収納されている現金と第2収納部に収納されている現金を容易に把握でき、現金の管理及び取り扱いが極めて容易に行い得る。なお、本発明の実施の形態においては、収納金額管理手段は、制御部とカウンタにより構成される。」
(オ)「【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本実施の形態においては、金融機関送金対象であり通常出金されることのない店舗売上金(以下売上金)及び金融機関送金対象外であり釣銭等のための出金されることがある店舗準備金(以下準備金)を区別して管理することが可能な店舗用入出金装置を例にとる。具体的には売上金と準備金を区別するための管理区分を設け、これら管理区分毎のカウンタを備えておき、入金操作を行う場合に管理区分を指定することにより区分毎の管理を可能とする。本実施の形態では管理区分1を売上金、管理区分2を準備金として管理する。なお、本実施の形態においては、店舗の操作者が一度入金した現金を取り出す動作を「出金」と呼称することとする。
【0028】更に、本実施の形態は、出金可能な収納部と出金不可能な収納部を設け、入金された売上金及び準備金は一旦出金可能な収納部に収納されて出金処理に利用され、出金することのない現金は所定の操作により出金可能な収納部から出金不可能な収納部に搬送される。出金不可能な収納部に収納された現金は、所定の時期に警備会社により回収される。」
(カ)「【0029】図1は、本実施の形態における店舗用入出金装置を示すブロック図である。図において店舗用入出金装置1は、現金の入出金の管理や収納処理やセキュリティ管理を行う制御部2と、入出金操作を行うための入出金操作部3と、店舗用入出金装置1内に収納された現金の回収を行うための回収操作部4と、店舗用入出金装置1における入出金状況及び収納状況を管理するカウンタ5と、現金を入金するための入金口10と、入出金される現金や店舗用入出金装置1内で搬送される現金の鑑別を行う鑑別部11とを備える。更に店舗用入出金装置1は、入金された現金を出金可能として収納しておくリサイクル収納部12と、リサイクル収納部12に収納された現金を出金するための出金口13と、入金された現金を出金不能に収納しておくカセット収納部14と、カセット収納部14に備えられ、カセット収納部14に収納された現金を回収する際に開閉される前扉15と、前扉15のロック制御を行うカセット収納部の前扉ロック16とから構成されてなる。
【0030】なお、カウンタ5は、入金された売上金を計数する売上金カウンタ(管理区分1カウンタ)6と、入金された準備金を計数する準備金カウンタ(管理区分2カウンタ)7と、リサイクル収納部12に収納される現金を計数するリサイクル収納部カウンタ8と、カセット収納部14に収納される現金を計数するカセット収納部カウンタ9の4つのカウンタから構成され、売上金と準備金の金額、及びリサイクル収納部とカセット収納部に収納された現金の金額が管理される。なお、図2に売上金カウンタ(管理区分1カウンタ)6と準備金カウンタ(管理区分2カウンタ)7の一例を示す。リサイクル収納部カウンタ8と、カセット収納部カウンタ9は図示しないが、常に在高管理データが格納されるものとする。」
(キ)「【0033】売上金を入金する場合には、「入金(売上金)」のLED部25を点灯させ、確定スイッチ22を押下する。その後、制御部2は管理区分1についての入金処理が行われるよう制御する。次に、ディスプレイ部27に操作者の管理番号を入力するようガイダンスが表示される。管理番号は予め操作者毎に与えられたIDであり、管理番号によりセキュリティを維持する。操作者は自分の管理番号をテンキー部26により入力する。なお、管理番号入力は、IDカード等のシステムを利用してもよい。
【0034】制御部2は入力された管理番号により入金操作の資格の有無を判断する。資格が無いと判断された場合には入金処理が中断される。資格が有ると判断された場合には、次に、入金モードがディスプレイ部27に表示される。例えば、(1)金額指定入金(金額を指定して入金する)(2)全金額入金(入金口に投入された全金額を入金する)という表示がされ、モードスイッチ21によりどちらかを選択し、確定スイッチ22を押下してモードを確定する。また、例えば入金額を1万5千円、投入額を2万円として、5千円のお釣りが出金されるようにする場合は(1)を選択すればよい。(1)の場合には、操作者は入金金額をテンキー部26により入力し、確定スイッチ22により金額を確定した後、入金口10に現金を投入する。
【0035】入金された現金は、鑑別部11により真贋判定及び金種の分別を行なった上でリサイクル収納部12に収納される。鑑別部11による金種分別データは制御部に伝達され、例えば入金額が1万5千円、実際の投入額が2万円である場合には、制御部2は鑑別部11を介して、既にリサイクル収納部12に収納されている現金のうち5千円分の現金をお釣りとして出金口13から出金する。このように(1)の場合には入金と出金が連動されて処理されることとなる。入金処理終了後は、制御部2により売上金カウンタ6及びリサイクル収納部カウンタ8が1万5千円カウントアップされる。
【0036】このように入金された売上金は、引渡処理が行われるまでリサイクル収納部12に収納されたままとなる。リサイクル収納部12には売上金及び準備金がまとまって収納されることとなるが、上述した売上金カウンタ6と準備金カウンタ7により金額データが管理されるため、不都合が生じることはない。
【0037】なお、準備金を入金する場合も、上述と同様に「補充(準備金)」モードを選択し、同様に入金処理する。」
(ク)「【0038】次に引渡処理について詳述する。引渡処理は出金されることが無い現金、すなわち売上金をカセット収納部14に収納する処理であり、リサイクル収納部12に収納されている売上金のうち回収されるべき金額を指定してカセット収納部14に収納するようにする。本実施の形態では、操作者が入出金操作パネル20にて任意のタイミングで引渡の指示をすることができる。
【0039】具体的なオペレーション及び店舗用入出金装置1での処理としては、まず、図3に示された入出金操作パネル20のモードスイッチ21を押下することにより「引渡」モードを選択する。次に上述と同様、操作者の管理番号を入力した後、引渡モードがディスプレイ部27に表示される。以下に、引渡モードの一例を示す。
(1)設定金額引渡モード:あらかじめ設定された金額(又は金種、枚数)をリサイクル収納部からカセット収納部に搬送する。
(2)全額引渡モード:リサイクル収納部に収納されている売上金全額をリサイクル収納部からカセット収納部に搬送する。
(3)紙幣全額引渡モード:リサイクル収納部の紙幣を全てカセット収納部に搬送する。
(4)硬貨全額引渡モード:リサイクル収納部の硬貨を全てカセット収納部に搬送する。
【0040】そして、希望する引渡モードが表示されるまでモードスイッチ21を押し続け、表示されたところで確定スイッチ22を押す。次に操作者の管理番号を入力する。制御部2は入力された管理番号により引渡処理の資格の有無を判断する。資格が無いと判断された場合には、引渡処理が中断される。資格が有ると判断した場合には、制御部2は、確定されたモードに応じて処理を行う。例えば、(1)の場合には、操作者は引渡金額をテンキー部26により入力し、確定スイッチ22で金額を確定すると、入力された金額分が鑑別部11により勘定され、制御部2によりカセット収納部14に搬送され収納される。(2)の場合には、自動的にリサイクル収納部12における売上金全額がカセット収納部14に搬送され収納される。この際、制御部2は、搬送されて収納される現金が最小構成枚数となるように金種構成を選択するよう鑑別部11を制御する。これにより、カセット収納部14に収納する現金の容積を少なくすることができる。また、従来に比して小銭等がリサイクル収納部12に多く残留する確率が高くなり、釣銭等を出金する場合には都合がよい。
【0041】引渡処理後には、(1)の場合には、制御部2により売上金カウンタ6及びリサイクル収納部カウンタ8が引渡分マイナスされ、カセット収納部カウンタ9は引渡分カウントアップされる。」
(ケ)「【0043】次に、釣銭出金処理(すなわち入金処理時に連動して行われる出金処理)とは別に、リサイクル収納部12に収納されている準備金を出金する場合におけるオペレーションと店舗用入出金装置1の処理について詳細に説明する。まず、モードスイッチ21により「出金」を選択し、確定スイッチ22を押す。次に、操作者の管理番号を入力する。制御部2は入力された管理番号により出金操作の資格の有無を判断する。資格が有ると判断された場合には、出金モードがディスプレイ部27に表示されるので、モードスイッチ21により希望するモードをディスプレイ部27に表示させ、確定スイッチ22を押す。
【0044】なお、出金モードの例を以下に示す。
(1)金額指定出金:金額を指定して出金する。
(2)全金額出金:リサイクル収納部の準備金の全金額を出金する。
【0045】(1)の場合には、操作者は出金金額をテンキー部26により入力し、確定スイッチ22により金額を確定する。制御部2は、入力された金額データに基づいて鑑別部11により現金を計数して、計数した現金を出金口13より出金する。(2)の場合には、準備金全額を鑑別部11で計数し、出金口13より出金する。出金後には、準備金カウンタ7及びリサイクル収納部カウンタ8から出金金額を減算する。」
(コ)「【0047】更にまた、本実施の形態においては、入金口10、出金口13、リサイクル収納部12、カセット収納部14及び鑑別部11のそれぞれの間には搬送用の通路が設けられており、上述した入出金処理及び引渡処理において現金を搬送する場合には該搬送用の通路が用いられることとする(図示せず)。」
(サ)「【0051】なお、リサイクル収納部12の現金の回収については、前述の出金処理により行う。また、カセット収納部14の現金を回収する権限と、リサイクル収納部12の現金を出金する権限をそれぞれ別の権限とすれば、セキュリティが格段に向上する。」
(シ)上記(カ)の「図1は、本実施の形態における店舗用入出金装置を示すブロック図である。図において店舗用入出金装置1は、・・・カセット収納部14に備えられ、カセット収納部14に収納された現金を回収する際に開閉される前扉15と、前扉15のロック制御を行うカセット収納部の前扉ロック16とから構成されてなる。・・・」の記載より、店舗用入出金装置は、筐体の前提となる前扉15を有するから、店舗用入出金装置は筐体を有するといえる。上記(カ)及び(コ)の記載より、店舗用入出金装置は、筐体と、筐体の外部から内部に現金を投入するための入金口10と、入金口10に接続され、現金の搬送を行う搬送用の通路とを備えるといえる。
(ス)上記(ア)の「・・・前記入金手段により入金された現金を、入金した操作者が取出し可能に収納する第1収納部と、
前記第1収納部に収納された現金を所定の取出し指示に基づいて取出すための取出し手段と、・・・」の記載、(カ)の「・・・更に店舗用入出金装置1は、入金された現金を出金可能として収納しておくリサイクル収納部12と、・・・入金された現金を出金不能に収納しておくカセット収納部14と、・・・」の記載及び(コ)の記載より、店舗用入出金装置は、搬送用の通路に接続され、搬送されてきた現金を収納するカセット収納部14と、搬送用の通路に接続され、搬送されてきた現金を収納するとともに、この収納した現金を搬送用の通路に取出されるリサイクル収納部12とを備えるといえる。
(セ)上記(エ)の「・・・なお、本発明の実施の形態において、入金手段は入金口と入出金操作部と鑑別部と制御部により構成され、区分指定手段は入出金操作部と制御部により構成され、第1管理手段は制御部とカウンタにより構成され、第1収納部はリサイクル収納部により構成され、取出し手段は出金口と入出金操作部と鑑別部と制御部により構成され、第2管理手段は制御部とカウンタにより構成され、第2収納部はカセット収納部により構成され、搬送手段は制御部と鑑別部と搬送用の通路により構成される。・・・」の記載、上記(カ)の「・・・図において店舗用入出金装置1は、現金の入出金の管理や収納処理やセキュリティ管理を行う制御部2と、・・・店舗用入出金装置1における入出金状況及び収納状況を管理するカウンタ5と、現金を入金するための入金口10と、・・・を備える。・・・」、(ク)の「・・・引渡処理後には、(1)の場合には、制御部2により売上金カウンタ6及びリサイクル収納部カウンタ8が引渡分マイナスされ、カセット収納部カウンタ9は引渡分カウントアップされる。・・・」及び(コ)の記載より、制御部2及びカウンタ5が、搬送用の通路および前記リサイクル収納部12の制御を行うといえる。
(ソ)上記(オ)の「・・・なお、本実施の形態においては、金融機関送金対象であり通常出金されることのない店舗売上金(以下売上金)及び金融機関送金対象外であり釣銭等のための出金されることがある店舗準備金(以下準備金)を区別して管理することが可能な店舗用入出金装置を例にとる。具体的には売上金と準備金を区別するための管理区分を設け、これら管理区分毎のカウンタを備えておき、入金操作を行う場合に管理区分を指定することにより区分毎の管理を可能とする。本実施の形態では管理区分1を売上金、管理区分2を準備金として管理する。・・・」の記載、(カ)の「・・・なお、カウンタ5は、入金された売上金を計数する売上金カウンタ(管理区分1カウンタ)6と、入金された準備金を計数する準備金カウンタ(管理区分2カウンタ)7と、リサイクル収納部12に収納される現金を計数するリサイクル収納部カウンタ8と、カセット収納部14に収納される現金を計数するカセット収納部カウンタ9の4つのカウンタから構成され、売上金と準備金の金額、及びリサイクル収納部とカセット収納部に収納された現金の金額が管理される。なお、図2に売上金カウンタ(管理区分1カウンタ)6と準備金カウンタ(管理区分2カウンタ)7の一例を示す。リサイクル収納部カウンタ8と、カセット収納部カウンタ9は図示しないが、常に在高管理データが格納されるものとする。」の記載、(ク)の「次に引渡処理について詳述する。引渡処理は出金されることが無い現金、すなわち売上金をカセット収納部14に収納する処理であり、リサイクル収納部12に収納されている売上金のうち回収されるべき金額を指定してカセット収納部14に収納するようにする。・・・(1)設定金額引渡モード:あらかじめ設定された金額(又は金種、枚数)をリサイクル収納部からカセット収納部に搬送する。
(2)全額引渡モード:リサイクル収納部に収納されている売上金全額をリサイクル収納部からカセット収納部に搬送する。・・・例えば、(1)の場合には、操作者は引渡金額をテンキー部26により入力し、確定スイッチ22で金額を確定すると、入力された金額分が鑑別部11により勘定され、制御部2によりカセット収納部14に搬送され収納される。(2)の場合には、自動的にリサイクル収納部12における売上金全額がカセット収納部14に搬送され収納される。・・・引渡処理後には、(1)の場合には、制御部2により売上金カウンタ6及びリサイクル収納部カウンタ8が引渡分マイナスされ、カセット収納部カウンタ9は引渡分カウントアップされる。」の記載及び図2より、リサイクル収納部12に収納されている現金の金額は、準備金の金額と売上金の金額との合計であるから、制御部2及びカウンタ5は、リサイクル収納部12に収納されている現金の金額を、複数の管理区分の金額を用いて管理するといえる。また、上記(オ)の「・・・なお、本実施の形態においては、金融機関送金対象であり通常出金されることのない店舗売上金(以下売上金)及び金融機関送金対象外であり釣銭等のための出金されることがある店舗準備金(以下準備金)を区別して管理することが可能な店舗用入出金装置を例にとる。具体的には売上金と準備金を区別するための管理区分を設け、これら管理区分毎のカウンタを備えておき、入金操作を行う場合に管理区分を指定することにより区分毎の管理を可能とする。本実施の形態では管理区分1を売上金、管理区分2を準備金として管理する。・・・」の記載より、準備金は、金融機関送金対象外であり釣銭等のための出金されることがある店舗準備金であり、準備金は店舗が管理するから、リサイクル収納部12に収納される現金は、店舗が管理する準備金と、売上金と、に分けて管理されるといえる。
(タ)上記(ク)の「・・・次に引渡処理について詳述する。引渡処理は出金されることが無い現金、すなわち売上金をカセット収納部14に収納する処理であり、リサイクル収納部12に収納されている売上金のうち回収されるべき金額を指定してカセット収納部14に収納するようにする。・・・ (2)全額引渡モード:リサイクル収納部に収納されている売上金全額をリサイクル収納部からカセット収納部に搬送する。・・・(2)の場合には、自動的にリサイクル収納部12における売上金全額がカセット収納部14に搬送され収納される。・・・」の記載より、引渡処理は出金されることが無い現金、すなわち売上金をカセット収納部14に収納する処理であるから、店舗用入出金装置は、リサイクル収納部12からカセット収納部14に現金を収納する引渡処理を行う際に、売上金に相当する現金がカセット収納部14に搬送されるといえる。

上記記載事項及び図示内容から、引用刊行物には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「店舗用入出金装置であって、
筐体と、
前記筐体の外部から内部に現金を投入するための入金口10と、
前記入金口10に接続され、現金の搬送を行う搬送用の通路と、
前記搬送用の通路に接続され、搬送されてきた現金を収納するカセット収納部14と、
前記搬送用の通路に接続され、搬送されてきた現金を収納するとともに、この収納した現金を前記搬送用の通路に取出されるリサイクル収納部12と、
前記搬送用の通路および前記リサイクル収納部12の制御を行う制御部2及びカウンタ5であって、前記リサイクル収納部12に収納されている現金の金額を、複数の管理区分の金額を用いて管理する制御部2及びカウンタ5と、を備え、
前記リサイクル収納部12に収納される現金は、店舗が管理する準備金と、売上金と、に分けて管理され、
前記リサイクル収納部12から前記カセット収納部14に現金を収納する引渡処理を行う際に、売上金に相当する現金が前記カセット収納部14に搬送される、店舗用入出金装置。」

第4 対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「店舗用入出金装置」、「筐体」、「現金」、「入金口10」、「搬送用の通路」、「カセット収納部14」、「リサイクル収納部12」、「金額」、は、本願発明の「貨幣処理機」、「筐体」、「貨幣」、「投入口」、「搬送部」、「貨幣収納部」、「リサイクル式貨幣収納繰出部」、「貨幣量」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「前記搬送用の通路に接続され、搬送されてきた現金を収納するとともに、この収納した現金を前記搬送用の通路に取出されるリサイクル収納部12」は、本願発明の「前記搬送部に接続され、搬送されてきた貨幣を収納するとともに、この収納した貨幣を前記搬送部に繰り出すリサイクル式貨幣収納繰出部」に相当する。
また、引用発明の「制御部2及びカウンタ5」は、搬送用の通路およびリサイクル収納部12の制御を行うものであるから、引用発明の「制御部2及びカウンタ5」は、本願発明の「制御部」に、相当する。
また、引用発明の「準備金」、「売上金」は、本件発明の「店舗金」、「売上金」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「前記リサイクル収納部12に収納されている現金の金額を、複数の管理区分の金額を用いて管理する制御部2及びカウンタ5」と、本願発明の「前記リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている貨幣の貨幣量を、管理権限の異なる複数の区分の貨幣量を用いて管理する制御部」とは、「前記リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている貨幣の貨幣量を、複数の区分の貨幣量を用いて管理する制御部」の点で共通する。
また、引用発明において、準備金を店舗が管理するので、準備金の管理権限は、店舗側にあるといえるので、引用発明の「前記リサイクル収納部12に収納される現金は、店舗が管理する準備金と、売上金と、に分けて管理され」と、本願発明の「前記リサイクル式貨幣収納繰出部に収納される貨幣は、店舗側に管理権限がある店舗金と、収集特定者側に管理権限が移されるべき売上金と、に分けて管理され」とは、「前記リサイクル式貨幣収納繰出部に収納される貨幣は、店舗側に管理権限がある店舗金と、売上金と、に分けて管理され」の点で共通する。

よって、両者は、
「貨幣処理機であって、
筐体と、
前記筐体の外部から内部に貨幣を投入するための投入口と、
前記投入口に接続され、貨幣の搬送を行う搬送部と、
前記搬送部に接続され、搬送されてきた貨幣を収納する貨幣収納部と、
前記搬送部に接続され、搬送されてきた貨幣を収納するとともに、この収納した貨幣を前記搬送部に繰り出すリサイクル式貨幣収納繰出部と、
前記搬送部および前記リサイクル式貨幣収納繰出部の制御を行う制御部であって、前記リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている貨幣の貨幣量を、複数の区分の貨幣量を用いて管理する制御部と、 を備え
前記リサイクル式貨幣収納繰出部に収納される貨幣は、店舗側に管理権限がある店舗金と、売上金と、に分けて管理され、
前記リサイクル式貨幣収納繰出部から前記貨幣収納部に貨幣を送る引渡処理を行う際に、前記売上金に相当する貨幣が前記貨幣収納部に送られる
貨幣処理機。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
制御部が、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている貨幣の貨幣量を管理することに関して、本願発明においては、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている貨幣の貨幣量を、管理権限の異なる複数の区分の貨幣量、すなわち、店舗側に管理権限がある店舗金と、収集特定者側に管理権限が移されるべき売上金を用いて管理するのに対し、引用発明においては、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている貨幣の貨幣量を、複数の区分の貨幣量を用いて管理するものの、準備金と売上金との管理権限が異なるかどうか、売上金の管理権限が誰にあるか、はっきりしない点で相違する。

イ 判断
相違点について検討する。
引用刊行物1の「【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本実施の形態においては、金融機関送金対象であり通常出金されることのない店舗売上金(以下売上金)及び金融機関送金対象外であり釣銭等のための出金されることがある店舗準備金(以下準備金)を区別して管理することが可能な店舗用入出金装置を例にとる。具体的には売上金と準備金を区別するための管理区分を設け、これら管理区分毎のカウンタを備えておき、入金操作を行う場合に管理区分を指定することにより区分毎の管理を可能とする。本実施の形態では管理区分1を売上金、管理区分2を準備金として管理する。・・・」の記載より、引用発明の「売上金」と「準備金」との管理区分は区別されており、「準備金」の管理権限は店舗側にあるが、「売上金」の管理権限は、店舗側あるいは金融機関(現金回収業者含む)側のどちらにあるかはっきりしないが、引用刊行物1の上記段落【0027】には、「売上金」については「金融機関送金対象であり通常出金されることのない店舗売上金(以下売上金)」、「準備金」(店舗金に相当)については「金融機関送金対象外であり釣銭等のための出金されることがある店舗準備金(以下準備金)」との記載があり、「売上金」と「準備金」とは、性質が異なる点が記載されている。このような両者の性質の違いに基づいて各々をより厳格に管理するために、性質の異なる「売上金」と「準備金」を管理権限の異なるようにすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。 その際、売上金は、「金融機関送金対象であり通常出金されることのない店舗売上金(以下売上金)」の性質に基づけば、通常金融機関から委託される、収集特定者側に管理権限が移されるべきものとして管理することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、本願発明の上記相違点に係る特定事項による効果も、引用発明から、当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易になし得たものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-14 
結審通知日 2015-01-16 
審決日 2015-01-27 
出願番号 特願2009-114416(P2009-114416)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 蓮井 雅之
関谷 一夫
発明の名称 貨幣処理機  
代理人 大野 浩之  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 磯貝 克臣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ