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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1298802
審判番号 不服2014-1443  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-27 
確定日 2015-03-18 
事件の表示 特願2010-500839「液晶表示装置用スペーサの製造方法、これにより製造されたスペーサを含む液晶表示装置用基板、およびこれを含む液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月16日国際公開、WO2008/123719、平成22年 7月 8日国内公表、特表2010-522897〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件出願は、2008年4月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年4月6日、韓国)を国際出願日とする国際出願であって、平成24年4月18日付け、及び平成25年1月30日付けで手続補正がなされ、同年9月24日付けで拒絶の査定がなされ、平成26年1月27日に拒絶査定に対する審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。

2.平成26年1月27日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願の発明

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
平成25年1月30日付け手続補正書により補正された請求項1の
「a)基板本体上にスペーサ本体を形成するステップ;および
b)前記スペーサ本体上に保護膜(不動態皮膜)を形成するステップを含み、
前記スペーサ本体を形成するステップにおいて、前記スペーサ本体は、感光性物質を含むフォトスペーサ本体であり、
前記保護膜を形成するステップにおいて、前記保護膜は、前記スペーサ本体および前記スペーサ本体が形成された前記基板本体の両方を覆うことができるように形成され、
前記保護膜の厚さは0.05?2μmであり、
前記基板本体は、カラーフィルタ用基板本体または薄膜トランジスタ用基板本体である液晶表示装置用スペーサの製造方法。」
を、
「a)基板本体上にスペーサ本体を形成するステップ;および
b)前記スペーサ本体上に保護膜(不動態皮膜)を形成するステップを含み、
前記スペーサ本体を形成するステップにおいて、前記スペーサ本体は、感光性物質を含むフォトスペーサ本体であり、
前記保護膜を形成するステップにおいて、前記保護膜は、前記スペーサ本体および前記スペーサ本体が形成された前記基板本体の両方を覆うことができるように形成され、
前記保護膜の厚さは0.05?2μmであり、
前記基板本体は、カラーフィルタ用基板本体または薄膜トランジスタ用基板本体であり、
前記保護膜(不動態皮膜)の強度が、前記スペーサ本体の材料の強度の0.1?3倍である液晶表示装置用スペーサの製造方法。」
と補正された。(下線は審決にて付した。以下、同じ。)
そして、上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「保護膜(不動態皮膜)」と「スペーサ本体」に関し、「前記保護膜(不動態皮膜)の強度が、前記スペーサ本体の材料の強度の0.1?3倍である」と限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、前記に記載された事項により特定されるところ、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例

引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前である平成11年3月16日に頒布された「特開平11-72613号公報」(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、オーバーコート膜を有するカラーフィルターおよびかかるカラーフィルターを有する液晶表示装置に関する。」

イ 「【0019】本発明のオーバーコート膜は、具体的には、エポキシ膜、アクリルエポキシ膜、アクリル膜といったエポキシ系高分子膜やアクリル系高分子膜、シロキサンポリマ系の膜、ポリイミド膜やケイ素含有ポリイミド膜やポリイミドシロキサン膜といったポリイミド系高分子膜があげられる。これらのオーバーコート膜は平坦性、塗布性、耐熱性の点でよりすぐれているからである。なかでも、、ポリイミド膜、ケイ素含有ポリイミド膜、ポリイミドシロキサン膜等のポリイミド系高分子膜であることが耐薬品性の観点からより好ましい。また一方、エポキシ系高分子膜、アクリル系高分子膜は平坦性の点から好ましい。なおオーバーコート膜を構成する材料が感光性か非感光性かは制限されない。」

ウ 「【0033】こうして得られた、加熱硬化後のオーバーコートの厚みは、凹凸のある基板上に塗布された場合、オーバーコート剤のレベリング性により、凹部(周囲より低い部分)では厚く、凸部(周囲より高い部分)では薄くなる傾向がある。本発明においてのオーバーコートの厚みには、特に制限がないが、前述したオーバーコートの目的を達成し、かつ本発明によりクラックまたはシワの発生を低減させるためには、0.01?5μm、好ましくは0.03?4μm、さらに好ましくは0.04?3μmである。」

エ 「【0040】樹脂を染色、または樹脂中に染料あるいは顔料を分散させて得られた着色ペーストを基板上に塗布する方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバーによる方法などが好適に用いられ、この後、オーブンやホットプレートを用いて加熱乾燥(プリベーク)を行う。プリベーク条件は、使用する樹脂、溶媒、ペースト塗布量により異なるが、通常60?200℃で1?60分加熱することが好ましい。
【0041】こうして得られた着色ペースト膜は、通常、フォトリソグラフィーなどの方法を用いてパターン加工される。すなわち、樹脂が非感光性の樹脂である場合は、その上にフォトレジストの被膜を形成した後に、また、樹脂が感光性の樹脂である場合は、そのままかあるいは酸素遮断膜を形成した後に露光現像を行い所望のパターンにする。
【0042】必要に応じて、フォトレジストまたは酸素遮断膜を除去した後、また、加熱し硬化させる。加熱硬化条件は、樹脂により異なるが、前駆体からポリイミド系樹脂を得る場合には、通常200?300℃で1?60分加熱するのが一般的である。以上のプロセスにより、樹脂膜からなるブラックマトリクスや画素が、基板上に形成される。」

オ 「【0043】本発明においては、固定されたスペーサーの形成はオーバーコート膜の形成の前後どちらでも構わない。特にスペーサーの剥がれを防止するためには、基板上に画素および固定されたスペーサーを配した後、オーバーコート膜を形成してなるカラーフィルターであることがより好ましい。オーバーコートに感光性をもたせた場合には、オーバーコートと固定されたスペーサーを同時に形成することも可能である。この場合、例えば全面のフラッシュ露光と固定されたスペーサー部分のパターン露光とを組み合わせた2重露光を行うことで達成できる。固定されたスペーサーとは、図1、2、4、5、6に示されるように液晶表示装置用基板の特定の場所に固定され、液晶表示装置を作製した際に対向基板との間隔を支えるものである。これにより対向基板との間に、一定のギャップが保持される。このギャップに、液晶が注入される。固定されたスペーサーを配することにより、液晶表示装置の製造工程において球状スペーサーを散布する工程を省略することができる。」

カ 「【0046】本発明における固定されたスペーサーの構成には特に制限はない。画素を形成する着色材と異なる樹脂層の単層を含んでも良いし、画素を形成する着色材の積層または単層を含んでも良いが、製造の容易さから画素を形成する着色層の積層または単層を含むことが好ましい。特に、着色ペースト膜を塗布後にフォトリソグラフィーなどにより、画素とスペーサーの形成を同時に行うことが好ましい。固定されたスペーサーを有しないカラーフィルターと同工程数で、固定されたスペーサーをカラーフィルター上に形成することができるからである。」

キ 「【符号の説明】
1 青画素
2 緑画素
3 赤画素
4 ブラックマトリクス
5 透明基板
6 オーバーコート膜
7 ITO膜
8 固定されたスペーサー
・・・」

ケ 図1は次のものである。

コ 上記アから、引用例は、「液晶表示装置に関する」ものであると認められる。

サ 図1から、オーバーコート膜6は、固定されたスペーサー8とカラーフィルターの上面を覆っており、固定されたスペーサー8はブラックマトリクス4の上に形成されていることが看取される。

シ 上記イ?キの記載からみて、液晶表示装置のスペーサーの製造方法が記載されているといえる。

ス これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「樹脂を染色、または樹脂中に染料あるいは顔料を分散させて得られた着色ペーストを基板上に塗布し、樹脂が感光性の樹脂である場合は、そのままかあるいは酸素遮断膜を形成した後に露光現像を行い所望のパターンにし、加熱し硬化させて、画素が、基板上に形成され、基板上に画素およびブラックマトリクス上にスペーサーを配置した後、アクリル膜又はポリイミド膜からなり、スペーサーとカラーフィルターの上面を覆ったオーバーコート膜を形成してなるカラーフィルターにおいて、スペーサーの構成は、感光性のポリイミド系樹脂からなり画素を形成する着色層の積層または単層を含み、着色ペースト膜を塗布後にフォトリソグラフィーなどにより、画素とスペーサーの形成を同時に行い、オーバーコートの厚みは、0.04?3μmである液晶表示装置のスペーサーの製造方法。」

(3)対比

そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
後者における「感光性の樹脂」は、前者の「感光性物資」に相当し、以下同様に、「基板」は、「基板本体」に、「スペーサー」は「フォトスペーサ本体」に、「液晶表示装置のスペーサー」は「液晶表示装置用スペーサ」にそれぞれ相当する。
また、後者の「オーバーコート膜」は、「アクリル膜」又は「ポリイミド膜」からなるものであるのに対して、前者の「保護膜(不動態皮膜)」は、本願発明の詳細な説明「【0060】・・・前記保護膜は有機膜であり得る。・・・
【0061】
前記有機膜は熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を含むことができる。
【0062】
前記熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、ポリアミド酸樹脂、硬化剤を含むアクリル樹脂がその例として挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。・・・
【0065】
前記光硬化性樹脂の具体的な例としては、アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂およびポリイミド樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。」に記載されており、後者の「オーバーコート膜」は、前者のように不動態性を備えた「保護膜(不動態皮膜)」に相当するといえる。
また、後者における「基板」は、その上に「スペーサー」および「オーバーコート」を設けるものであるから、前者における、「スペーサ本体」および「保護膜(不動態皮膜)」を上に設ける「カラーフィルタ用基板本体」に相当するといえる。
また、後者は、基板上に、ブラックマトリクスを介して、スペーサを形成しているから、基板上にスペーサを形成しているといえる。

したがって、両者は、
「a)基板本体上にスペーサ本体を形成するステップ;および
b)前記スペーサ本体上に保護膜(不動態皮膜)を形成するステップを含み、
前記スペーサ本体を形成するステップにおいて、前記スペーサ本体は、感光性物質を含むフォトスペーサ本体であり、
前記保護膜を形成するステップにおいて、前記保護膜は、前記スペーサ本体および前記スペーサ本体が形成された前記基板本体の両方を覆うことができるように形成され、
前記基板本体は、カラーフィルタ用基板本体である、
液晶表示装置用スペーサの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明の「保護膜の厚さは0.05?2μm」の点に対し、引用発明は「オーバーコートの厚みは、0.04?3μm」であること。

[相違点2]本願補正発明の「前記保護膜(不動態皮膜)の強度が、前記スペーサ本体の材料の強度の0.1?3倍」の点が、引用発明には含まれていないこと。

(4)判断

ア 上記相違点1について以下検討する。
引用発明の「オーバーコートの厚みは、0.04?3μm」であり、本願補正発明の「保護膜の厚さは0.05?2μm」であるから、引用発明のオーバーコートの厚さは、本願補正発明の保護層の厚さを包含している。
また、一般に、保護膜の厚さをどの程度とするかは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項であり、また本願発明の詳細な説明をみてもオーバーコートの厚さを「0.05?2μm」とすることに格別の技術的意義はない。
してみると、引用発明は、本願補正発明の相違点1にかかる発明特定事項において差異がないか、引用発明において、相違点1に係る発明補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

イ 上記相違点2について以下検討する。
引用発明において、「オーバーコート膜」は、「アクリル膜」または「ポリイミド膜」からなり、「スペーサ」は「感光性のポリイミド系樹脂を含む」ものであるから、同類の材料からなる両者の強度はそれほどかけ離れたものではないものと解されることから、「オーバーコート層の強度が、スペーサーの材料の強度の0.1?3倍」の範囲内にある蓋然性が高いといえる。 また、一般に、「スペーサ」と「保護膜」の強度をどの程度とするかは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項であり、また本願発明の詳細な説明をみても本願補正発明の「前記保護膜(不動態皮膜)の強度が、前記スペーサ本体の材料の強度の0.1?3倍」であることに格別の技術的意義はない。
してみると、引用発明において、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得るものである。
そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願の発明について

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年1月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「a)基板本体上にスペーサ本体を形成するステップ;および
b)前記スペーサ本体上に保護膜(不動態皮膜)を形成するステップを含み、
前記スペーサ本体を形成するステップにおいて、前記スペーサ本体は、感光性物質を含むフォトスペーサ本体であり、
前記保護膜を形成するステップにおいて、前記保護膜は、前記スペーサ本体および前記スペーサ本体が形成された前記基板本体の両方を覆うことができるように形成され、
前記保護膜の厚さは0.05?2μmであり、
前記基板本体は、カラーフィルタ用基板本体または薄膜トランジスタ用基板本体である液晶表示装置用スペーサの製造方法。」

(1)引用例

原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載内容は、上記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。

(2)対比・判断

本願発明は、上記「2.(1)補正後の本願の発明」で検討したように、本願補正発明に関し、下記限定を省いたものである。
「保護膜(不動態皮膜)」と「スペーサ本体」に関し、「前記保護膜(不動態皮膜)の強度が、前記スペーサ本体の材料の強度の0.1?3倍である」との限定。

そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)対比」及び「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明と同一の発明であるか、あるいは引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび

以上のとおりであって、本願発明は、引用発明と実質的に同一の発明であるから、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものであるか、あるいは、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
 
審理終結日 2014-10-22 
結審通知日 2014-10-23 
審決日 2014-11-05 
出願番号 特願2010-500839(P2010-500839)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 537- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 知喜  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 畑井 順一
江成 克己
発明の名称 液晶表示装置用スペーサの製造方法、これにより製造されたスペーサを含む液晶表示装置用基板、およびこれを含む液晶表示装置  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  

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