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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1298889
審判番号 不服2013-3792  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-27 
確定日 2015-03-19 
事件の表示 特願2007-121738「油性毛髪化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月13日出願公開、特開2008-273902〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成19年5月2日の出願であって、平成24年5月10日付けの拒絶理由通知に対して、同年7月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成25年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年4月11日に手続補正書(審判請求書)が提出され、平成26年5月29日付けの審尋に対する回答がなされなかったものである。

第2 平成25年2月27日付け手続補正の却下の決定について
[補正却下の決定の結論]
平成25年2月27日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成25年2月27日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1である、
「次の成分(A)?(C);
(A)揮発性炭化水素油
(B)植物油
(C)25℃における粘度が1万mPa・s以上、かつ、500万mPa・s以下のジメチコノール
(D)25℃における粘度が200mPa・s以下のシリコーン
を配合したことを特徴とする油性毛髪化粧料であって、
成分(A)の配合量が20?80質量%であり、連続相が油性成分である油性毛髪化粧料。」
を、
「次の成分(A)?(C);
(A)揮発性炭化水素油
(B)植物油
(C)25℃における粘度が1万mPa・s以上、かつ、500万mPa・s以下のジメチコノール
(D)25℃における粘度が200mPa・s以下のシリコーン
を配合したことを特徴とする油性毛髪化粧料であって、
成分(A)の配合量が20?80質量%であり、成分(B)の配合量が0.1?10質量%であり、成分(C)の配合量が1?20質量%であり、かつ連続相が油性成分である油性毛髪化粧料。」
とする補正を含むものであって、特許請求の範囲の請求項1について、次の補正事項を含むものである。

補正事項:補正前の
「…
(B)植物油
(C)25℃における粘度が1万mPa・s以上、かつ、500万mPa・s以下のジメチコノール
…を配合したことを特徴とする油性毛髪化粧料であって、…」
を、
「…
(B)植物油
(C)25℃における粘度が1万mPa・s以上、かつ、500万mPa・s以下のジメチコノール
…を配合したことを特徴とする油性毛髪化粧料であって、…成分(B)の配合量が0.1?10質量%であり、成分(C)の配合量が1?20質量%であり…」
とする補正事項。

2.補正の目的要件
補正事項は、補正前の請求項1が「(B)植物油、(C)25℃における粘度が1万mPa・s以上、かつ、500万mPa・s以下のジメチコノールを配合したこと」と「成分(B)、(C)を配合したこと」を発明特定事項とするものであったところを、配合量についての条件を付加することによって、「成分(B)、(C)を配合したこと」との事項を、そのような配合量での態様のみに限定するものである。
そして、補正事項は、発明の属する技術分野、及び、解決すべき課題を変更するものではない。
よって、補正事項に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、補正の目的要件を満たすものである。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。また、本件補正によって補正された本願の明細書を「本願補正明細書」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するものであるか否か。)について検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、平成25年2月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「次の成分(A)?(C);
(A)揮発性炭化水素油
(B)植物油
(C)25℃における粘度が1万mPa・s以上、かつ、500万mPa・s以下のジメチコノール
(D)25℃における粘度が200mPa・s以下のシリコーン
を配合したことを特徴とする油性毛髪化粧料であって、
成分(A)の配合量が20?80質量%であり、成分(B)の配合量が0.1?10質量%であり、成分(C)の配合量が1?20質量%であり、かつ連続相が油性成分である油性毛髪化粧料。」

(2)刊行物等、及び、刊行物等に記載された事項
(2-1)刊行物等
刊行物1:特開2005-206467号公報

周知例1:特開2006-28113号公報

(刊行物1は平成24年11月19日付け拒絶査定における引用文献5であり、周知例1は当該拒絶査定において周知例としてあげられた文献である。)

(2-2)刊行物等に記載された事項
[刊行物1]
1a「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)?(D)を含有し、非水系であることを特徴とする毛髪化粧料。
(A)一般式:
【化1】

[式中、R^(1)はメチル基または一部がフェニル基を表し、R^(2)はR^(3)と同一またはメチル基または水酸基を表し、R^(3)は式R^(4)Z{R^(4)は3?6の炭素原子を有する2価のアルキレン基を表し、Zは-NR^(5)_(2)、-N^(+)R^(5)_(3)A^(-)、-NR^(5)(CH_(2)NR^(5)_(2)、-NR^(5)(CH_(2))_(a)N^(+)R^(5)_(3)A^(-)および-NR^(5)(CH_(2))_(a)N(R^(5))C=O(R^(6))(R^(5))は水素または1?4の炭素原子を有するアルキル基を表し、R^(6)は1から4の炭素原子を有するアルキル基を表し、Aは塩素、ヨウ素または臭素原子を表し、aは2?6の整数である)からなる群から選ばれる1価の基を表す。}で表し、m+nは500?2,500の整数を表す。]で表される高分子シリコーン、
(B)一般式:
【化2】

(R^(7)はメチル基または一部がフェニル基を表し、R^(8)はメチル基または水酸基を表し、pは10?100の整数を表す。)で表される低分子シリコーン、
(C)沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素、珪素数が2?8の揮発性シリコーン、メチルトリストリメチルシロキシシランからなる群より選ばれた一種類以上、
(D)ヨウ素価が120以下の植物油。」

1b「【背景技術】
【0002】
…これらの毛髪化粧料は一般にシリコーン油、エステル油、炭化水素油などの油分や、被膜形成能を有する高分子化合物を可溶化、分散または乳化して配合しているのが一般的で、特に艶の付与をする目的で、シリコーン油に代表される液状油分が汎用されいる。例えば、高分子シリコーンと低沸点シリコーン油を配合することによって、髪のなめらかさやセット保持力を有する毛髪化粧料(特許文献1参照。)、高分子量ジメチルポリシロキサンと非水系溶剤と噴射剤を含むエアゾールスプレー組成物によって、光沢や滑らかな感触を付与する毛髪非水系エアゾールスプレー組成物(特許文献2参照。)が開示されている。…これらの毛髪においては、上記従来の組成物では、なめらかな手触りや髪のまとまり、落ち着きなど自然な仕上がりなどを付与することは不十分であった。そのため、自然な光沢を与え、しかもべたつきがなく、滑らかな感触、優れたコンディショニング効果を付与できる毛髪化粧料が強く求められている。
【0003】
【特許文献1】特開昭63-183517号公報
【特許文献2】特開平4-128213号公報」

1c「【0005】
本発明者等は、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の高分子シリコーン、特定の低分子シリコーン、揮発性油剤、特定の植物油を組み合わせて配合することにより、自然な光沢を与え、しかもべたつきがなく、滑らかな感触、優れたコンディショニング効果を付与し、かつ安定性に優れていることを見出して本発明を完成するに至った。」

1d「【発明の効果】
【0008】
本発明により、毛髪に対し、自然な光沢を与え、しかもべたつきがなく、滑らかな感触、優れたコンディショニング効果を付与る毛髪化粧料を提供することができる。」

1e「【0010】
本発明で使用する一般式1で示される高分子シリコーンは、R^(1)はメチル基または一部がフェニル基を表し、R^(2)はR^(3)と同一またはメチル基または水酸基を表し、R^(3)は式R^(4)Z{R^(4)は3?6の炭素原子を有する2価のアルキレン基を表し、Zは-NR^(5)_(2)、-N^(+)R^(5)_(3)A^(-)、-NR^(5)(CH_(2)NR^(5)_(2)、-NR^(5)(CH_(2))_(a)N^(+)R^(5)_(3)A^(-)および-NR^(5)(CH_(2))_(a)N(R^(5))C=O(R^(6))(R^(5))は水素または1?4の炭素原子を有するアルキル基を表し、R^(6)は1から4の炭素原子を有するアルキル基を表し、Aは塩素、ヨウ素または臭素原子を表し、aは2?6の整数である)からなる群から選ばれる1価の基を表す。}で表し、m+nは500?2,500の整数を表す。}で表し、m+nは500?2,500の整数で表される高分子量のものであり、分子量としては、約2万?20万程度であり、性状は常温で軟質ゴム状にまで至らない流動性のある粘性で、25℃において1万?500万mm^(2)/sの粘度を示すものである。具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチコノール、末端水酸基メチルフェニルポリシロキサン、アミノ基またはアンモニウム基変性シリコーンなどがあげられる。これら高分子シリコーンは市販されており、それらを例示すると、信越化学工業社製のKF-96H(1万cs?100万cs)、KF-8015、KF-8017、KF-8020、東レダウコーニングシリコーン社製のSH200C(10,000cs?350万cs)、GE東芝シリコーン社製のTSF-451(6,000cs?100万cs)、TSF4707、TSF4705等があげられる。
【0011】
本発明において高分子シリコーンの配合量は、毛髪化粧料の総量を基準として通常1?30質量%(以下、%とする)であり、好ましくは、5?20%である。1%未満では十分な効果が得られない場合があり、30%を超えると毛髪へ不均一に付着してかえってごわつき等を生じる場合があり好ましくない。」

1f「【0012】
本発明で使用する一般式2で示される低分子シリコーンは、R^(7)はメチル基または一部がフェニル基を表し、R^(8)はメチル基または水酸基を表し、pは10?100の整数である低分子タイプのものであり、分子量としては、約500?8,000程度であり、性状は常温で流動性のある液状で、25℃において6?300mm^(2)/sの粘度を示すものである。具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどがあげられる。これら低分子シリコーンは市販されており、それらを例示すると、信越化学工業社製のKF-96A(10cs?300cs)、KF-50(100cs?300cs)、KF-53、KF-54、KF-56、東レダウコーニングシリコーン社製のSH200C(10cs?300cs)、SH-556、GE東芝シリコーン社製のTSF-451(6cs?300cs)、TSF431、TSF433、TSF437、SF1550、TSF484等があげられる。
【0013】
本発明において低分子シリコーンの配合量は、毛髪化粧料の総量を基準として通常0.5?50%であり、好ましくは、1?40%である。0.5%未満ではしなやかさ等の効果が不十分な場合があり、50%を超えると目的とする自然な艶が得られない場合があり好ましくない。」

1g「【0014】
本発明で使用する揮発性油としては、沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素、珪素数が2?8の揮発性シリコーン、メチルトリストリメチルシロキシシランがあげられる。沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素は、イソブテンとn-ブテンを共重合したものを水素添加して得られる炭素数12?28の軽質流動イソパラフィン、石油から精製して得られる揮発性の炭化水素混合物である炭素数6?30の軽質流動パラフィンがあげられ、例えば、日本油脂社製のNAS-3、NAS-4、NAS-5、エクソン社製のアイソパーC、同D、同E、同E、同G、同H、同K、同L、同M、シェル社製のシェルゾール71、日本石油化学社製の日石アイメゾール300、同400、フィリップ社製のソルトロール100、同130、同22等があげられる。…
【0015】
本発明においては、これら揮発性油の中から、一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。これら、揮発性油の配合量は、毛髪化粧料の総量を基準として通常30?95%であり、好ましくは、40?90%である。30%未満では、毛髪に強いべたつきを生じる場合があり、また95%を超えると、目的とする効果が不十分となる場合があるため好ましくない。」

1h「【0016】
本発明に使用される植物油は、不乾性植物油および半乾性植物油に分類される植物油であり、主成分のトリグリセライドを構成する脂肪酸として、リノール酸やリノレイン酸含有量が少なく、化粧品原料基準・一般試験法・ヨウ素価測定法によって試験を行ったとき、その値が120以下の植物油である。ヨウ素価が120を超える植物油の場合、非水系の毛髪化粧料に配合したとき、保存安定性が悪く、濁りや沈殿を生じ、また日光暴露によっても変質して析出する等好ましくない。ヨウ素値が120以下の植物油を例示すると、サザンカ油、ツバキ油、落花生油、ヒマシ油、オリーブ油、小麦胚芽油、ゴマ油、綿実油、ナタネ油、とうもろこし油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、ブドウ種子油、アボガド油、アーモンド油、コメヌカ油、米油、ダイズ油、パーシック油、杏仁油、シアバター、マカデミアナッツ油、メドフォーム油等の植物性油、ホホバ油等の植物性エステル、植物性スクワラン等の植物性炭化水素などがあげられる。
【0017】
本発明においては、これらの植物油の中から、一種又は二種以上を適宜選択して用いることができ、その配合量は、毛髪化粧料の総量を基準として通常0.1?10%であり、好ましくは、0.2?5%である。0.1%未満では、毛髪にしなやかな感触を与えることができない場合があり、また10%を超えると、べたつき等を生じる場合があるため好ましくない。」

1i「【0019】
本発明の毛髪化粧料は、水を含有しない非水系であり、水を配合することにより濁りや各種油剤の分離や沈殿を生じて好ましくない。また本発明の毛髪化粧料は、種々の形態で用いることができ、例えば、ヘアーオイル、ヘアーローションなどの液状形態、ヘアースプレー、グロースプレーなどのエアゾール形態など毛髪に塗布する剤形に配合し、常法に従い製造することができる。」

1j「【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。尚、実施例に記載の官能試験(自然な光沢、べたつき、なめらかさ、まとまり)、安定性試験に関する試験法を下記に示す。
【0022】
(1)官能試験
20名の専門パネルを対象に実施例および比較例の毛髪化粧料を使用してもらい、毛髪上での自然な光沢、べたつき、なめらかさ、まとまりの各項目について官能試験を行い、下記に示す判定基準により評価を行った。
【0023】
判定基準
(1)自然な光沢
◎:パネルの15名以上が自然な光沢であると判断
○:パネルの10名以上15名未満が自然な光沢であると判断
△:パネルの5名以上10名未満が自然な光沢であると判断
×:パネルの15名以上が自然な光沢でないと判断
(2)べたつき
◎:パネルの15名以上がべたつきがないと判断
○:パネルの10名以上15名未満がべたつきがないと判断
△:パネルの5名以上10名未満がべたつきがないと判断
×:パネルの15名以上がべたつくと判断
(3)なめらかさ
◎:パネルの15名以上がなめらかであると判断
○:パネルの10名以上15名未満がなめらかであると判断
△:パネルの5名以上10名未満がなめらかであると判断
×:パネルの15名以上がなめらかでないと判断
(4)まとまり
◎:パネルの15名以上がまとまりが良いと判断
○:パネルの10名以上15名未満がまとまりが良いと判断
△:パネルの5名以上10名未満がまとまりが良いと判断
×:パネルの15名以上がまとまりが悪いと判断

【0025】
実施例1?10、比較例1?3
表1に示す処方の毛髪化粧料を常法に従って作成し、前記の諸試験を実施して評価を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から明らかなように、本発明の毛髪化粧料は、比較例と比べて明らかに官能試験(自然な光沢、べたつき、なめらかさ、まとまり)、安定性試験に関する試験のいずれの評価においても優れていた。
【0028】
以下、本発明毛髪化粧料のその他の処方例を実施例として挙げる。なお、これらの実施例の毛髪化粧料についても、上記の官能試験(自然な光沢、べたつき、なめらかさ、まとまり)、安定性試験を検討したところ、いずれの実施例においても、優れた特性を有しており良好であった。

【0033】
実施例8
配合量(%)
(1)高分子シリコーン
(GE東芝シリコーン社製、X-21-5613) 20.0
(2)低分子シリコーン
(日本ユニカー社製、L-45-10cs) 30.0
(3)軽質流動イソパラフィン
(日本油脂社製、パールリーム4) 45.0
(4)オリーブ油 1.0
(5)ホホバ油 1.0
(6)オリーブスクワラン 1.0
(7)パラメトキシケイ皮酸オクチル 0.1
(8)セバシン酸ジエチル 0.4
(9)イソノナン酸イソノニル 0.1
(10)油溶性ノバラエキス 0.5
(11)N-ラウロイル-L-グルタミン酸
ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル) 0.5
(12)香料 0.4
【0034】
(製法)(1)?(12)を常法により均一に混合溶解し、透明液状の毛髪化粧料を得た。」

[周知例1]
周1「【0035】
実施例14 ヘアコンディショナー
配合量(%)
(1)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 3.0
(2)塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.5
(3)1,3-ブチレングリコール 2.0
(4)(加水分解シルク/PG-pロピルメチルシランジオール)
クロスポリマー
(PROTESIL LH、成和化学社製) 3.0
(5)ジメチコノール(100万CS)
(X-21-5613、信越化学社製) 4.0
(6)セチルアルコール 5.0
(7)アルギニン誘導体(アミセーフLMA-60、味の素社製)1.0
(8)加水分解コムギ 1.0
(9)法定色素 微 量
(10)メチルパラベン 0.2
(11)香料 微 量
(12)精製水 バランス」

(3)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、【化1】で表される高分子シリコーンである成分(A)、【化2】で表される低分子シリコーンである成分(B)、沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素等の成分(C)、ヨウ素価が120以下の植物油である成分(D)を含有し、非水系である毛髪化粧料が記載され(摘示1a、1e?1i)、当該毛髪化粧料の実施例として次の配合組成からなる毛髪化粧料が記載されている(摘示1jの実施例8)。
「 配合量(%)
(1)高分子シリコーン
(GE東芝シリコーン社製、X-21-5613) 20.0
(2)低分子シリコーン
(日本ユニカー社製、L-45-10cs) 30.0
(3)軽質流動イソパラフィン
(日本油脂社製、パールリーム4) 45.0
(4)オリーブ油 1.0
(5)ホホバ油 1.0
(6)オリーブスクワラン 1.0
(7)パラメトキシケイ皮酸オクチル 0.1
(8)セバシン酸ジエチル 0.4
(9)イソノナン酸イソノニル 0.1
(10)油溶性ノバラエキス 0.5
(11)N-ラウロイル-L-グルタミン酸
ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル) 0.5
(12)香料 0.4」

そして、「【0011】本発明において…1?30質量%(以下、%とする)…」(摘示1e)との記載からみて、当該実施例における「配合量(%)」は、質量%を意味するものと認められる。

よって、摘示1jの実施例8を中心にして以上の事項を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「(1)高分子シリコーン
(GE東芝シリコーン社製、X-21-5613) 20.0質量%
(2)低分子シリコーン
(日本ユニカー社製、L-45-10cs) 30.0質量%
(3)軽質流動イソパラフィン
(日本油脂社製、パールリーム4) 45.0質量%
(4)オリーブ油 1.0質量%
(5)ホホバ油 1.0質量%
(6)オリーブスクワラン 1.0質量%
(7)パラメトキシケイ皮酸オクチル 0.1質量%
(8)セバシン酸ジエチル 0.4質量%
(9)イソノナン酸イソノニル 0.1質量%
(10)油溶性ノバラエキス 0.5質量%
(11)N-ラウロイル-L-グルタミン酸
ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル) 0.5質量%
(12)香料 0.4質量%
を含有し、非水系である毛髪化粧料。」

(4)本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「(2)低分子シリコーン…」は、ジメチルポリシロキサン等が例示されるものであるところ(摘示1f)、本件補正発明の成分(D)であるシリコーンもジメチルポリシロキサン等が例示されるものであること(本件補正明細書の発明の詳細な説明の「成分(D)のシリコーンとしては、…好ましい例として、ジメチルポリシロキサン、…等が挙げられる。」(段落【0013】)及び段落【0019】の【表1】参照。)等からみて、本件補正発明の「(D)…シリコーン」に相当する。

また、引用発明の「(3)軽質流動イソパラフィン(日本油脂社製、パールリーム4)」は、刊行物1の「本発明で使用する揮発性油としては、沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素…」(摘示1g)及び本件補正明細書の発明の詳細な説明の「本発明の油性毛髪化粧料に用いられる成分(A)の揮発性炭化水素油は…こうした揮発性炭化水素油としては沸点が300℃以下の揮発性イソパラフィン系炭化水素…等が挙げられる。」(段落【0007】)との記載等からみて、本件補正発明の「(A)揮発性炭化水素油」に相当する。

また、本件補正発明の「(4)オリーブ油…(5)ホホバ油…」、「非水系である毛髪化粧料。」は、順に、本件補正発明の「(B)植物油」、「連続相が油性成分である油性毛髪化粧料。」に相当する。

また、引用発明の「(6)オリーブスクワラン1.0質量%、(7)パラメトキシケイ皮酸オクチル0.1質量%、(8)セバシン酸ジエチル0.4質量%、(9)イソノナン酸イソノニル0.1質量%、(10)油溶性ノバラエキス0.5質量%、(11)N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)0.5質量%、(12)香料0.4質量%」は、本件補正明細書の発明の詳細な説明の「本発明の油性毛髪化粧料は、…上記成分(A)?(D)の他に、本発明の効果を損なわない質的量的範囲で、通常の毛髪化粧料に用いられる成分を水性、非水性の区別なく配合しても良い。例えば、成分(C)、成分(D)以外のシリコーン、成分(A)以外の炭化水素油、エステル油、動物油、鉱物油等の油性成分、界面活性剤、多価アルコール、キレート化剤、殺菌剤、酸化防止剤、粘度調整剤、収斂剤、抗フケ剤、紫外線吸収剤、染料・色素等の着色剤、香料、ビタミン等の美容成分、エアゾール噴射剤等を適宜配合することができる。」(段落【0015】)等の記載からみて、本件補正発明は発明特定事項とされた成分以外の他の成分を使用してよいものであるから、本件特許発明との相違点とならないものである。

以上を総合すると、両者は、
「次の成分(A)?(C);
(A)揮発性炭化水素油
(B)植物油

(D)…シリコーン
を配合したことを特徴とする油性毛髪化粧料であって、…連続相が油性成分である油性毛髪化粧料。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件補正発明は、成分(C)として「25℃における粘度が1万mPa・s以上、かつ、500万mPa・s以下のジメチコノール」を配合するものであるのに対して、引用発明は「(1)高分子シリコーン(GE東芝シリコーン社製、X-21-5613)」を配合するものである点。

相違点2:成分(D)のシリコーンに関し、本件補正発明は「25℃における粘度が200mPa・s以下」のものであるのに対して、引用発明は「(2)低分子シリコーン(日本ユニカー社製、L-45-10cs)」である点。

相違点3:本件補正発明は「成分(A)の配合量が20?80質量%であり、成分(B)の配合量が0.1?10質量%であり、成分(C)の配合量が1?20質量%」であるのに対して、引用発明は成分(A)?(C)に相当する成分の配合量を発明特定事項としない点。

(5)相違点の検討
(5-1)相違点1について
引用発明は、高分子シリコーンとして、製品名がX-21-5613のものを用いるものであるが、X-21-5613がジメチコノールを含有することは周知の技術的事項と認められる(例えば、摘示周1には、信越化学社製ではあるものの、X-21-5613がジメチコノールであることが記載されている。なお、刊行物1には「…高分子シリコーンは…具体的には、…ジメチコノール…などがあげられる。」(摘示1e)と高分子シリコーンとしてジメチコノールがあげられており、摘示1jの実施例8は高分子シリコーンとしてジメチコノールを用いた例といえる。)。
また、刊行物1には、X-21-5613(高分子シリコーン)の粘性については明記されていないものの、「…高分子シリコーンは…性状は常温で軟質ゴム状にまで至らない流動性のある粘性で、25℃において1万?500万mm^(2)/sの粘度を示すものである。」(摘示1e)等の記載があること、及び、摘示周1に、信越化学社製ではあるものの、X-21-5613が100万CS(センチストークスの意味と解される。)、即ち、100万mm^(2)/sの粘性を有することが記載されていることからみて、引用発明で用いるX-21-5613(高分子シリコーン)は、25℃において1万?500万mm^(2)/sの粘性の条件を満たし、100万mm^(2)/s程度の粘性を有するものと認められる(なお、平成22年5月31日付け刊行物等提出書に添付された参考資料1には、X-21-5613に関し、ジメチコノール20%とジメチコン80%とからなるものの粘度が5000mPa・sであることが記載されているが、当該記載における5000mPa・sとの粘度はジメチコノール自体ではなくジメチコン80%による希釈物の粘度と解されるものである。)。
そして、粘度(mPa/s)と動粘度(mm^(2)/s)との間に動粘度ν(mm^(2)/s)=粘度η(mPa/s)/密度ρ(g/cm^(3))の関係があることは技術常識であり、また、シリコーン等の有機ケイ素化合物の密度(比重)は、水素に置換してハロゲン等の重い基が導入される場合にはその数によって1g/cm^(3)を超える場合もあるが、そのようなものでない場合の密度(比重)は、通常、1g/cm^(3)弱程度であり、0.6g/cm^(3)を少なくとも下回るものでないことは周知の技術的事項と認められること(例えば、「化学大辞典2 縮刷版」化学大辞典編集委員会編(共立出版)、昭和53年9月10日発行、第188?192頁の有機ケイ素化合物表I?V参照。これらの表に掲載された種々の有機ケイ素化合物の比重(d^(25)_(4))を見ると、ハロゲン等の重い基が導入されたものでは1g/cm^(3)を超えるものもあるが、そのようなものでないものの密度(比重)は概ね1g/cm^(3)未満程度であり、最小のものは0.62g/cm^(3)(メチルシラン)であって、有機ケイ素化合物の比重は、重合していない低分子量のものでさえ、0.6g/cm^(3)を超えるものと認められる。)を踏まえると、粘性が100万mm^(2)/sのX-21-5613は、粘度が1万?500万mPa・sの条件を満たすものといえる(例えば、密度が1g/cm^(3)程度であれば、その粘度は100万mPa・s程度であり、密度が0.6g/cm^(3)であったとしても、その粘度は60万mPa・s(=100万×0.6)である。)。

また、仮に、X-21-5613が25℃において100万mm^(2)/sの粘性を有するものでなかったとしても、「…高分子シリコーンは…性状は常温で軟質ゴム状にまで至らない流動性のある粘性で、25℃において1万?500万mm^(2)/sの粘度を示すものである。」(摘示1e)等の記載があることからみて、X-21-5613(高分子シリコーン)は、25℃において1万?500万mm^(2)/sの粘性の条件を満たすものと認められるし、上記のとおりシリコーン等の有機ケイ素化合物の密度(比重)が、通常、1g/cm^(3)弱程度であり、0.6g/cm^(3)を下回るものでないことを踏まえると、その粘度は6000?500万(=1万×0.6?500万×1)mPa・s程度であって、斯かる事項を考慮して、引用発明において、粘度が1万?500万mPa・sのジメチコノールを用いることは、当業者が通常の創作能力の範囲内で適宜なし得たことと認められる。
そして、本願補正明細書の発明の詳細な説明の記載をみても、成分(C)のジメチコノールの粘度を1万?500万mPa・sとすることによって、引用発明に比して顕著な効果が奏されるものとは認められない(【表1】には、「ジメチコノール1000mPa・s」ないし「ジメチコノールガム状」を使用した比較例3、4について、べたつきのなさ、仕上がりの軽さ、ツヤ感、ハリ・コシ感のいずれかが良好でないことが開示されているが、上記のとおり、引用発明は周知の技術的事項を踏まえると粘度が6000?500万mPa・s程度のものであって、「ジメチコノール1000mPa・s」よりもはるかに大きく「ジメチコノールガム状」よりもはるかに小さい粘度のものであるから、【表1】に開示された比較例等を考慮しても、成分(C)のジメチコノールの粘度を1万?500万mPa・sとする本件補正発明によって、その粘度が6000?500万mPa・s程度である引用発明に比して顕著な効果が奏されることが確認できるものとはいえない。)。

そもそも、25℃における粘度が1万?500万mPa・s程度の範囲にあるジメチコノールは、毛髪化粧料において普通に知られたものに過ぎない(この点について例示すれば、例えば、特開2006-282518号公報には、「…(a1)25℃における粘度が100?50,000Pa・sの末端ジオルガノヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン…含有する…エマルジョン。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)と、粘度(25℃)が10万?5,000万mPa・sの範囲の末端ジオルガノヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン(ジメチコノール)を含有する毛髪化粧料組成物に用いるエマルジョンが記載されている。)。

以上のとおりであって、相違点1に係る本件補正発明の構成の点は、引用発明との相違点とはいえないものであるか、仮にそうでないとしても、刊行物1に記載された摘示1e等の技術的記載事項、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものといえる。

(5-2)相違点2について
引用発明は、低分子シリコーンとして、製品名がL-45-10csのものを用いるものであるところ、刊行物1には、低分子シリコーン(L-45-10cs)の粘性については明記されていないものの、「…低分子シリコーンは…性状は常温で流動性のある液状で、25℃において6?300mm^(2)/sの粘度を示すものである。」(摘示1f)等の記載があること、及び、引用発明のL-45-10csは、その名称からみて、10cs(センチストークス)、即ち、10mm^(2)/sの粘性のものと解されることからみて、引用発明で用いる低分子シリコーン(L-45-10cs)は、25℃において6?300mm^(2)/sの粘性の条件を満たし、10mm^(2)/s程度の粘性を有するものと認められる。
そして、前記(5-1)に記載したとおり、粘度(mPa/s)と動粘度(mm^(2)/s)との間に動粘度ν(mm^(2)/s)=粘度η(mPa/s)/密度ρ(g/cm^(3))の関係があることは技術常識であり、また、シリコーン等の有機ケイ素化合物の密度(比重)は、通常、1g/cm^(3)弱程度であり、0.6g/cm^(3)を下回るものでないことは周知の技術的事項と認められることを踏まえると、粘性が10mm^(2)/sのL-45-10csは、粘度が200mPa・s以下の条件を満たすものといえる(例えば、密度が1g/cm^(3)程度であれば、その粘度は10mPa・s程度であり、密度が0.6g/cm^(3)であったとしても、その粘度は6mPa・s(=10×0.6)である。)。

また、仮に、L-45-10csが25℃において10mm^(2)/sの粘性を有するものでなかったとしても、「…低分子シリコーンは…性状は常温で流動性のある液状で、25℃において6?300mm^(2)/sの粘度を示すものである。」(摘示1f)等の記載があることからみて、L-45-10csは、25℃において6?300mm^(2)/sの粘性の条件を満たすものと認められるし、上記のとおりシリコーン等の有機ケイ素化合物の密度(比重)が、通常、1g/cm^(3)弱程度であり、0.6g/cm^(3)を少なくとも下回るものでないことを踏まえると、その粘度は3.6?300(=6×0.6?300×1)mPa・s程度であって、斯かる事項を考慮して、引用発明において、粘度が200mPa・s以下のシリコーンを用いることは、当業者が通常の創作能力の範囲内で適宜なし得たことと認められる。
そして、本願補正明細書の発明の詳細な説明の記載をみても、成分(D)のシリコーンの粘度を200mPa・s以下とすることによって、引用発明に比して顕著な効果が奏されるものとは認められない(【表1】には、「ジメチルポリシロキサン100万mPa・s」を使用した比較例5について、べたつきのなさ、仕上がりの軽さが良好でないことが開示されているが、上記のとおり、引用発明は周知の技術的事項を踏まえると粘度が3.6?300mPa・s程度のものであって、「ジメチルポリシロキサン100万mPa・s」よりもはるかに小さい粘度のものであるから、【表1】に開示された比較例等を考慮しても、成分(D)のシリコーンの粘度を200mPa・s以下とすることによって、引用発明に比して顕著な効果が奏されることが確認できるものとはいえない。)。

以上のとおりであって、相違点2に係る本件補正発明の構成の点は、引用発明との相違点とはいえないものであるか、仮にそうでないとしても、刊行物1に記載された摘示1f等の技術的記載事項に基づいて、当業者が容易になし得たものといえる。

(5-3)相違点3について
引用発明は、成分(A)、(B)、(C)に相当する成分(順に、「(3)軽質流動イソパラフィン(日本油脂社製、パールリーム4)」、「(4)オリーブ油、(5)ホホバ油」、「(1)高分子シリコーン(GE東芝シリコーン社製、X-21-5613)」)をそれぞれ本件補正発明の配合量の条件を満たす条件で配合するものである。

さらにまた、刊行物1には、成分(A)(揮発性炭化水素油)、成分(B)(植物油)、成分(C)(ジメチコノール)に相当する成分の配合量を、順に「30?95質量%」(摘示1g)、「0.1?10質量%」(摘示1h)、「1?30質量%」(摘示1e)とすることも開示されており、刊行物1に開示された配合量の数値範囲を考慮して、引用発明が毛髪化粧料として適当な性質のものとなるように、配合成分の適当な配合量を設定することは、当業者が通常の創作能力の範囲内で容易になし得たことと認められる。
(なお、刊行物1には、「自然な光沢」、「べたつき」、「感触」、「コンディショニング効果」等の性質を適当なものとすること(摘示1b?1d)が記載されており、これらの性質のうち、「自然な光沢」は使用後のツヤ感等、「べたつき」、「コンディショニング効果」はべたつき、仕上がりの軽さ等、「感触」は「はり」「こし」等の性質に関連するものと推認される。
また、例えば、「化粧品の有用性 -評価技術の進歩と将来展望-」武田克之他監修(薬事日報社)、2001年3月31日発行、第374?383頁「第6節 コンディショニング・整髪剤」に、「…ここでは,人が知覚する「つや」「うるおい」「くし通り・なめらかさ」「柔軟性」「セット力」に関し,…有用性について述べる。」(第375頁左欄第29?32行)、「…特に,頭髪の「しなやかさ」「はり」「こし」等の柔軟性や弾力性にかかわる力学的な風合い評価については,より客観的で精度の高い方法が期待されるところである。」(第382頁右欄第19?22行)と記載されるように、毛髪化粧料の有用性に係る性質として、はり、こし等の性質があることは周知の技術的事項と認められる。
以上を踏まえると、引用発明において、べたつき、仕上がりの軽さ、使用後のツヤ感、ハリ・コシ感等の性質が適当なものとなるように配合成分の適当な配合量を設定することは当業者が、刊行物1の技術的記載事項、周知の技術等を考慮して通常の創作能力の範囲内で容易になし得たことと認められる。)

そして、本件補正発明において、成分(A)の配合量を20?80質量%、(B)の配合量を0.1?10質量%、(C)の配合量を1?20質量%とすることによって、当業者が予測し得ない効果が奏されるものとは認められない(後記(6)参照。)。

よって、相違点3に係る本件補正発明の構成の点は、刊行物1に記載された技術的事項を考慮して、当業者が容易になし得たものと認められる。

(6)本件補正発明の効果について
本件補正明細書の「本発明の油性毛髪化粧料は、べたつきが抑えられ軽い仕上がりで、髮へのツヤ、ハリ・コシ感の付与効果に非常に優れている。」(段落【0006】)との記載等からみて、本件補正発明は「べたつきが抑えられ軽い仕上がりで、髮へのツヤ、ハリ・コシ感の付与効果に非常に優れている」等の効果を奏するものと認められる。

そこで、刊行物1の技術的記載事項をみると、刊行物1には、
・成分(A)に相当する成分が少ないと「べたつき」が生じ、多いと「目的とする効果」(摘示1d等からみて「毛髪に対し、自然な光沢を与え、しかもべたつきがなく、滑らかな感触、優れたコンディショニング効果を付与する」ことと認められる。)が不十分となることがあること。(摘示1g)、
・成分(B)に相当する成分が少ないと「しなやかな感触」が与えられず、多いと「べたつき」等を生じる場合があること。(摘示1h)、
・成分(C)に相当する成分が少ないと「十分な効果」(「毛髪に対し、自然な光沢を与え、しかもべたつきがなく、滑らかな感触、優れたコンディショニング効果を付与する」こと)が得られない場合があり、多いと「ごわつき」が生じる場合があること。(摘示1e)、
等が記載されていると認められる。
そして、これらの記載事項からみて、刊行物1には、成分(A)、(B)、(C)に相当する成分の所定量での配合によって、「毛髪に対し、自然な光沢を与え、しかもべたつきがなく、滑らかな感触、優れたコンディショニング効果を付与する」こと、「しなやかな感触」、「ごわつきの防止」等の性質が付与されること等が記載されているものと認められるところ、これらの性質のうち、
・「自然な光沢を与え」る点は、「ツヤ」等に関連し、
・「べたつきがなく」、「優れたコンディショニング効果」、「ごわつきの防止」の点は、「べたつきが抑えられ軽い仕上がり」である等に関連し、
・「しなやかな感触」、「滑らかな感触」の点は、「ハリ・コシ感」等に関連する(なお、前記「化粧品の有用性 -評価技術の進歩と将来展望-」の「…頭髪の「しなやかさ」「はり」「こし」等の柔軟性や弾力性にかかわる力学的な風合い評価…」(第382頁右欄第19?22行)との記載等からみて、「ハリ・コシ感」は頭髪のしなやかさ等の力学的な性質に関連するものと解される。)、
と認められることを考慮すると、本件補正発明の「べたつきが抑えられ軽い仕上がりで、髮へのツヤ、ハリ・コシ感の付与効果に非常に優れている」等の効果が奏されることは、当業者が刊行物1に記載された技術事項、周知技術から予測し得ない程のものとはいえない。
そもそも、前記「(5)(5-3)」に記載したように、引用発明は本件補正発明の配合量の条件を満たすものであることからみて、本件補正発明が引用発明に比べて顕著な効果を奏するものとは認められない。

また、本件補正明細書に記載された実施例のデータをみると、本件補正発明の実施例(本発明品1?4)は「べたつきのなさ」、「仕上がりの軽さ」、「ツヤ感」、「ハリ・コシ感」が良好なものであるのに対して、
・成分(A)を配合しない比較例(比較品1)は、「べたつきのなさ」、「仕上がりの軽さ」が不良であり、
・成分(B)を配合しない比較例(比較品2)は、「ツヤ感」、「ハリ・コシ感」が不良であり、
・成分(C)を配合しない比較例(比較品3?5)は、「べたつきのなさ」、「仕上がりの軽さ」、「ツヤ感」、「ハリ・コシ感」のいずれかが不良である、
ことが開示されているが、これらのことが刊行物1に記載された技術的事項、周知技術から当業者が予測し得ない程のものとは認められない。
(刊行物1には、成分(A)に相当する成分が少ないと「べたつき」が生じること(摘示1g)、成分(B)に相当する成分が少ないと「しなやかな感触」が与えられないこと(摘示1h)、成分(C)に相当する成分が少ないと「毛髪に対し、自然な光沢を与え、しかもべたつきがなく、滑らかな感触、優れたコンディショニング効果を付与する」ことが得られない場合があること(摘示1e)等が記載されている。)

さらに、請求人は、平成25年4月11日付けの手続補正書(審判請求書)において、実験データを提出し(次表参照。なお、当該表の「ジメチルポリシロキサン」は成分(D)と認められる。)、
「No.2?8の比較から明らかであるように、成分(A)(水添ポリイソブテン)に関しては、20%未満になるとべたつきのなさおよび仕上がりの軽さにおいて急激に評価が劣り…80%を超えるとツヤ感、ハリ・コシ感において評価が急激に劣る…。
また、No.9?13の比較から明らかであるように、成分(B)(ツバキ油)に関しては、0.1%未満になるとツヤ感、ハリ・コシ感において評価が急激に劣り…10%を超えると、仕上がりの軽さにおいて評価が急激に劣る…。
さらに、No.14?18の比較から明らかであるように、成分(C)(ジメチコノール 100万mPa・s)に関しては、10%未満となるとツヤ感において急激に評価が劣り…20%を超えるとツヤ感において評価が急激に劣る…。

すなわち、本願発明において、成分(A)が20?80%で配合され、成分(B)が0.1?10質量%で配合され、かつ成分(C)が1?20質量%で配合される点には技術的な意義がある」
との主張をしている。

しかしながら、刊行物1には、
・成分(A)に相当する成分が少ないと「べたつき」が生じ、多いと「目的とする効果」(「毛髪に対し、自然な光沢を与え、しかもべたつきがなく、滑らかな感触、優れたコンディショニング効果を付与する」ことと認められる。)が不十分となることがあること(摘示1g)、
・成分(B)に相当する成分が少ないと「しなやかな感触」が与えられず、多いと「べたつき」等を生じる場合があること(摘示1h)、
・成分(C)に相当する成分が少ないと「十分な効果」(「毛髪に対し、自然な光沢を与え、しかもべたつきがなく、滑らかな感触、優れたコンディショニング効果を付与する」こと)が得られない場合があり、多いと「ごわつき」が生じる場合があること(摘示1e)、
・成分(D)に相当する成分が少ないと「しなやかさ」が不十分な場合があり、多いと「自然な艶」が得られないこと(摘示1f)、
が記載されていること等からみて、
・成分(A)が少ないNo2でべたつきのなさおよび仕上がりの軽さ等が劣り、成分(A)が多い(成分(D)が少ない)No8でハリ・コシ感等(「しなやかさ」と関連すると認められる。)が劣ること、
・成分(B)が少ないNo9でハリ・コシ感等(「しなやかな感触」と関連すると認められる。)が劣り、成分(B)が多いNo13で仕上がりの軽さ等(「べたつき」と関連すると認められる。)が劣ること、
・成分(C)が少ないNo14でツヤ感等(「自然な光沢」と関連すると認められる。)が劣り、成分(C)が多いNo18でもツヤ感等(「ごわつき」が生じれば、軽い仕上がりが得られないのみならず、「ツヤ感」も良好とはならないものと認められる。)が劣ること、
は、刊行物1に記載された技術的事項、周知技術から当業者が予測し得ない程のものとは認められない。
そうすると、当該実験成績の実験データを考慮しても、本件補正発明によって当業者が刊行物1に記載された技術的事項及び周知技術から予測し得ない程の効果が奏されるものとは認められない。

以上のとおりであるから、本件補正発明によって奏される効果は、刊行物1に記載された技術的事項及び周知技術から当業者が予測し得た範囲内のものであり、本件補正発明が引用発明に比べて顕著な効果が奏するものとは認められない。

(7)独立特許要件のまとめ
よって、本件補正発明は、その出願前に頒布された刊行物1に記載された発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

4.補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとはいえないから、上記補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件出願に係る発明
本件出願に係る発明は、平成24年7月17日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「次の成分(A)?(C);
(A)揮発性炭化水素油
(B)植物油
(C)25℃における粘度が1万mPa・s以上、かつ、500万mPa・s以下のジメチコノール
(D)25℃における粘度が200mPa・s以下のシリコーン
を配合したことを特徴とする油性毛髪化粧料であって、
成分(A)の配合量が20?80質量%であり、連続相が油性成分である油性毛髪化粧料。」

第4 原査定の理由
原査定の理由は、「この出願については、平成24年5月10日付け拒絶理由通知書に記載した…「理由2-その4」(特許法第29条第2項)によって、拒絶をすべきものです」というものであり、平成24年5月10日付け拒絶理由通知書によると次の理由によるものである。
「…
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

<理由2-その4>
・請求項:1?3
・引用文献:5

引 用 文 献 等 一 覧

5.特開2005-206467号公報
…」

第5 当審の判断
当審は、原査定の理由のとおり、本願発明はその出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると判断する。

1.引用文献の記載事項、及び、引用文献に記載された発明
引用文献5は、前記「第2 3.(2)(2-1)」で引用した刊行物1と同じものであり、前記「第2 3.(2)(2-2)[刊行物1]」に記載したとおりの事項が記載されている。
そして、引用文献5には、「第2 3.(3)」に記載したとおりの発明(以下、同様に、「引用発明」という。)が記載されている。

2.本願発明と引用発明との対比
本願発明は、前記「第2 3.(1)」に記載した本件補正発明において、「成分(B)の配合量が0.1?10質量%であり、成分(C)の配合量が1?20質量%であり」との特定事項が除かれたものである。

そこで、斯かる本願発明と引用発明とを、前記「第2 3.(4)」において本件補正発明と引用発明とを対比したのと同様に対比すると、両者は、
「次の成分(A)?(C);
(A)揮発性炭化水素油
(B)植物油

(D)…シリコーン
を配合したことを特徴とする油性毛髪化粧料であって、…連続相が油性成分である油性毛髪化粧料。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1’:本願発明は、成分(C)として「25℃における粘度が1万mPa・s以上、かつ、500万mPa・s以下のジメチコノール」を配合するものであるのに対して、引用発明は「(1)高分子シリコーン(GE東芝シリコーン社製、X-21-5613)」を配合するものである点。

相違点2’:成分(D)のシリコーンに関し、本願発明は「25℃における粘度が200mPa・s以下」のものであるのに対して、引用発明は「(2)低分子シリコーン(日本ユニカー社製、L-45-10cs)」である点。

相違点3’:本願発明は「成分(A)の配合量が20?80質量%」のものであるのに対して、引用発明は成分(A)に相当する成分の配合量を発明特定事項としないものである点。

3.検討
(1)相違点1’、2’
相違点1’、2’は、前記「第2 3.(4)」に本件補正発明について記載した相違点1、2と同様の相違点であり、「第2 3.(5)(5-1)、(5-2)」に相違点1、2について記載した理由と同様の理由によって、引用発明との相違点とはいえないものであるか、仮にそうでないとしても、引用文献5に記載された技術的記載事項に基づいて、当業者が容易になし得たものと認められる。

(2)相違点3’
引用発明は、成分(A)に相当する成分(「(3)軽質流動イソパラフィン(日本油脂社製、パールリーム4)」)を、「45.0質量%」配合するものであり、本願発明の配合量の条件を満たすものである。

さらにまた、引用文献5には、成分(A)(揮発性炭化水素油)に相当する成分の配合量を「30?95質量%」(摘示1g)とすることも開示されており、引用文献5に開示された配合量の数値範囲を考慮して、引用発明が毛髪化粧料として適当な性質のものとなるように、配合成分の適当な配合量を設定することは、当業者が通常の創作能力の範囲内で容易になし得たことと認められる。
(なお、引用文献5には、「自然な光沢」、「べたつき」、「感触」、「コンディショニング効果」等の性質を適当なものとすること(摘示1b?1d)が記載されており、これらの性質のうち、「自然な光沢」は使用後のツヤ感等、「べたつき」、「コンディショニング効果」はべたつき、仕上がりの軽さ等、「感触」は「はり」「こし」等の性質に関連するものと推認される。
また、「第2 3.(5)(5-3)」において、「化粧品の有用性 -評価技術の進歩と将来展望-」武田克之他監修(薬事日報社)、2001年3月31日発行、第374?383頁「第6節 コンディショニング・整髪剤」を例示として記載したように、毛髪化粧料の有用性に係る性質として、はり、こし等の性質があることは周知の技術的事項と認められる。
以上を踏まえると、引用発明において、べたつき、仕上がりの軽さ、使用後のツヤ感、ハリ・コシ感等の性質が適当なものとなるように配合成分の適当な配合量を設定することは当業者が、引用文献5の技術的記載事項、周知の技術等を考慮して通常の創作能力の範囲内で容易になし得たことと認められる。

そして、本願発明において、成分(A)の配合量を20?80質量%とすることによって、当業者が予測し得ない程の効果が奏されるものとは認められない(前記「第2 3.(6)」の記載(成分(B)、(C)についての記載を除く)参照。)。
よって、相違点3に係る本願発明の構成の点は、引用文献5に記載された技術的事項を考慮して、当業者が容易になし得たものと認められる。

(3)本願発明の効果について
本願発明は、前記「第2 3.(6)」に本件補正発明について記載した効果と同様の効果を奏するものと認められる。
そして、本願発明によって奏される効果については、前記「第2 3.(6)」に本件補正発明によって奏される効果について記載した理由と同様の理由(成分(B)、(C)についての記載を除く)により、引用文献5に記載された技術的事項及び周知技術から当業者が予測し得た範囲内のものであり、本願発明が引用発明に比べて顕著な効果が奏するものとは認められない(そもそも、前記「(2)」に記載したように、引用発明は本願発明の配合量の条件を満たすものであることからみて、本願発明が引用発明に比べて顕著な効果を奏するものとは認められない。)。

4.まとめ
よって、本願発明は、その出願前に頒布された引用文献5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の点について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-14 
結審通知日 2015-01-20 
審決日 2015-02-03 
出願番号 特願2007-121738(P2007-121738)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 弘實 謙二  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 松浦 新司
関 美祝
発明の名称 油性毛髪化粧料  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
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