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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05B
管理番号 1299035
審判番号 不服2013-24532  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-13 
確定日 2015-03-25 
事件の表示 特願2010-202926「内部ライナを有する、圧力に支援される液体供給カップを備えるスプレーガン」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月13日出願公開、特開2011- 5496〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願は、2003年10月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年10月24日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2004-546808号の一部を、平成22年9月10日に新たに外国語書面出願としたものであって、平成22年10月7日に外国語明細書、外国語特許請求の範囲、外国語要約書及び外国語図面の翻訳文、上申書及び手続補正書が提出され、平成24年10月23日付けで拒絶理由が通知され、平成25年1月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年8月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年12月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成26年2月5日に手続補正書(方式)が提出されたものである。

2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項2は、上記平成25年12月13日に提出された手続補正書に記載された、以下のとおりのものであって、上記平成25年1月24日に提出された手続補正書に記載された内容と変わるものではない。
なお、この請求項2に係る発明を、以下、「本願発明」という。
「【請求項2】
入口部を備えた重力供給式液体噴霧デバイス(11)及び液体供給組立品の組合せであって、前記液体供給組立品は、
第1端(14)および第2端(15)を有する側壁(13)、前記側壁(13)の第2端(15)を横切って延在する底壁(16)、並びに内部に空洞を画定する内面(19)を有し、前記側壁(13)の前記第1端(14)が前記空洞への開口を画定する、硬質材料からなる容器(12)と、
前記容器(12)の前記内面(19)と形状が一致する外面、内部に空洞を画定する内面、および前記側壁(13)の前記第1端(14)に沿って形成され該空洞への開口を画定する環状へり(22)を有し、前記容器(12)の空洞内に配置される可撓性ライナ(20)と、
前記液体噴霧デバイス(11)の入口部と係合する貫通開口(46)を備えた中央部分(44)、前記可撓性ライナ(20)内に係合し前記容器(12)の前記第1端(14)に隣接する周辺部(50)を含む横部分(48)、および前記可撓性ライナ(20)を前記周辺部(50)の周りで密封するための手段を有し、前記容器(12)および前記可撓性ライナ(20)を前記液体噴霧デバイス(11)の上方に配置するためのアダプタ組立品(40、54)と、
前記可撓性ライナ(20)の外面と前記容器(12)の前記内面(19)との間に加圧空気を供給するために、前記容器(12)に接続された空気供給組立品(90)と、
を備え、
液体噴霧デバイスを動作させるために使用される調整された空気圧力の同じ供給源から、別個の空気圧力調整器を経由して加圧空気が供給される、
重力供給式液体噴霧デバイスおよび液体供給組立品の組合せ。」

3 引用文献
(1)引用文献1
本件出願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特表2001-508698号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「図1は、重力供給タイプの代表的な先行技術の塗料スプレーガン1を示す。ガン1は、本体2と、本体の後端から下方に延在するハンドル3と、本体の前端にあるスプレーノズル4とを備える。このガンは、ガンの側部に枢着されるトリガー5により手動操作される。ガンにより射出される塗料または類似材料を収容する塗料タンクつまり塗料ポット6は本体2の上部に配置して、ハンドル3の下端のコネクタ7からノズル4までガンを貫通して延在する圧縮空気用の内部通路(図示しない)と連通する。使用中、コネクタ7は圧縮空気源(図示しない)に接続し、その結果、ユーザがトリガー5を引っ張ると、圧縮空気はガンを貫通してノズル4に供給され、ポット6から重力下で供給される塗料を引き込んで噴霧する。塗料は、次に、圧縮空気とともにスプレーとしてノズル4から射出される。」(12ページ21行ないし13ページ2行)

イ 「図2は、図1のガンまたは任意の類似ガンにポット6の代わりに使用できる代替形態の塗料ポット11の構成部品を示す。代替形態の塗料ポット11は、図3および図4(断面)に組み立てた状態を示す。
塗料ポット11は、開放収納容器12を備え、この収納容器12は、携帯スプレーガンの従来の塗料ポットに匹敵するサイズを有するとともにその基部に空気孔12Aを有し、使い捨てライナー13が装備される。ライナー13は、収納容器12の内部の形状に対応して密接に適合し、収納容器の上縁部に着座する開放端部に細いリム14を有する。収納容器12は、ライナー13の開放端部に押込嵌合する使い捨て蓋15をさらに備える。蓋15は、接続管17が延在する中央開口部16(図4)を備え、その端部には、差込接続部の一部を形成する外側延長部分18を備える。開口部16は、開口部に押込嵌合するかまたは蓋15の一体部分になるフィルタメッシュ19により覆われる。蓋15は、蓋に接するように収納容器12上にねじ込まれる環状カラー20により収納容器12上の所定の位置にしっかり保持される。
塗料ポット11は、図3および図4(断面)に塗料ポットから分離して示されているアダプタ21を使用して、スプレーガン1に取り付けられる。アダプタ21は、一方の端部22の内部に、塗料ポット11の接続管17に取り付けられる差込接続部の他方の部分が形成されている環状構成部品である。アダプタの他方の端部23は、スプレーガンの塗料ポットの標準的な取付部(一般にねじ山)に適合するように賦形される。
塗料ポット11のライナー13は、上記のとおり、形状が収納容器12の内部に対応し、収納容器の上縁部に着座する開放端部に細いリム14を有する。以下のとおり、ライナーは自立するが崩壊可能でもあり、比較的剛性がある基部13Aおよび比較的薄い側壁13Bを有し、崩壊する場合、基部ではなく側壁によって長手方向に崩壊する。さらに、ライナー13には襞、波、継ぎ目、接合部またはガセットがなく、側壁13Bと基部13Aとの内部接続部には溝もない。」(13ページ14行ないし14ページ10行)

ウ 「塗料ポット11を使用するには、アダプタ21を端部23においてスプレーガンに取り付けて、その状態にしておく、次に、塗料ポット11を図2に示すように分解して、ライナー13を収納容器12の内側に押す。次に塗料を収納容器内に押し入れて、カラー20をしっかりねじ込んで蓋を所定の位置に保持する。次に、図4に示すように、ライナー13の上部を蓋15と収納容器12との間に閉じ込め、ライナーのリム14を収納容器上縁部とカラー20との間に閉じ込める。蓋15には、ライナーの上部に係合してライナーを保持するように、その表面に刺(見えない)を成形すると有利である。次に、スプレーガン1を正規の操作位置から逆転させて、接続管17の端部を図5に示すようにアダプタ21に取り付けることができるようにする。その後、ガンを図6に示すように正規の位置に戻すと、通常の方法で使用することができる。塗料をライナー13の内部から除去すると、ライナーの側部は、ライナー内の減圧によって崩壊する。ライナーの基部は比較的剛性がありその形状を保つので、ライナーは、横断方向ではなく長手方向に崩壊し、塗料のポケットがライナー内に閉じ込められる可能性が少なくなる。」(14ページ23行ないし15ページ7行)

エ 「ライナー13は、上記のとおり、収納容器12の内側に正確に適合し、滑らかな内面を有するので、別個の容器の中ではなく、収納容器12自体の中で塗料を混合することができる。」(15ページ下から4行目ないし下から2行目)

オ 「図2?図4の蓋15とライナー13との間にさらに確実な係合が必要な場合、蓋は、図示の押込嵌合ではなく、ライナーにスナップ嵌合すると良い。たとえば、ライナーに内周リブを配置して、蓋の隣接表面の対応する溝に係合するようにしても良い。」(17ページ3ないし6行)

カ 「ポット30は、ライナー13を収納容器12内に押し入れて組み立てられ、塗料を収納容器内に入れた後、収納容器の上部にフィルタ31を配置し、蓋33をねじ込むことによってフィルタ31を所定の位置に固定する。これで、ライナー13のリム14およびフィルタ31の密閉ガスケット32は、図11に示すように蓋33と収納容器12との間に一緒に閉じ込められて、ポットをスプレーガンに固定して逆転させて使用するときに、この位置で塗料がポット30から漏れるのを防ぐ。
アダプタ21は、収納容器11、30の蓋の管状部分17、34の端部にねじ山を形成することにより不要になり、収納容器はスプレーガン1の標準塗料ポット取付部に直接係合することができる。」(17ページ下から2行目ないし18ページ8行)

キ 「吸込供給ガンのタンクは、重力供給ガンのように使用時に逆転されないので、タンクとガンとの間の連通により空気がタンクとライナーとの間の空間に入ることができれば、タンク内の空気孔は省略して良い。
次に、図2の塗料ポット11に戻り、ライナー13について、その製造方法とともにさらに詳しく説明する。図19および図20に分離して示されているライナーは透明であって、1個のプラスチック材料、できればポリエチレンまたはポリプロピレンから熱成形することが好ましい。ライナーの形状は、収納容器12内部の形状により必然的に決まる。比較的剛性がある基部13Aは円形であり、ライナー13は、収納容器12の内部と同様にほぼ円筒形だが、口から基部13Aに向かってわずかに内側にテーパーが付いている。リム部分14は、基部と同様に比較的剛性があるが、側壁13Bは可撓性であり、既に述べたように崩壊させることができる。にも関わらず、ライナー13は、支持しなくても、図19に示すように側壁13Bが延在して直立した状態で基部13Aで立つことができる。ライナー13が崩壊する場合、比較的剛性がある基部13Aはその形状を保つが、側壁13Bが崩壊すると、図20に示すようにライナーのリム部分14方向に移動する。側壁13Bは、プラスチックの袋と同様の状態で崩壊し、たとえば割れるか、裂けるかまたは亀裂が生じたりして破壊することはない。」(23ページ1ないし17行)

(2)引用文献1に記載された事項及び発明
ア 上記(1)イ及びキにおける「側壁13B」及び「基部13A」を備える「ライナー13」、上記(1)イにおける「ライナー13は、収納容器12の内部の形状に対応して密接に適合し」という記載、上記(1)エにおける「ライナー13は、上記のとおり、収納容器12の内側に正確に適合し」という記載、上記(1)キにおける「ライナーの形状は、収納容器12内部の形状により必然的に決まる。比較的剛性がある基部13Aは円形であり、ライナー13は、収納容器12の内部と同様にほぼ円筒形」という記載、及び図2ないし4の記載から、収納容器12は、ライナー13の形状と同様に「側壁」及び「基部」を備えるものであるし、側壁が第1端および第2端を有すること、基部が側壁の第2端を横切って延在するものであること、及び、内部に空洞を画定する内面を有し側壁の第1端が空洞への開口を画定することのそれぞれは、引用文献1に記載されていることである。また、側壁13Bの可撓性により崩壊するライナー13(上記(1)キ)に対して、収納容器12が、硬質材料であることは自明である。

イ 上記(2)ア、並びに図2ないし4の記載から、ライナー13は、収納容器12の内面の形状に対応して密接に適合する外面、内部に空洞を画定する内面、および側壁の第1端に沿って形成され該空洞への開口を画定するリム14を有し、収納容器12の空洞内に配置されるものであることが分かる。

ウ 上記(1)カにおける「アダプタ21は、収納容器11、30の蓋の管状部分17、34の端部にねじ山を形成することにより不要になり、収納容器はスプレーガン1の標準塗料ポット取付部に直接係合することができる。」という記載から、スプレーガンの塗料ポット取付部は、(アダプタ21を要することなしに、)蓋15の接続管17と係合するものであることが分かる。

エ 上記(1)ウにおける「図4に示すように、ライナー13の上部を蓋15と収納容器12との間に閉じ込め」という記載、上記(1)オにおける「図2?図4の蓋15とライナー13との間にさらに確実な係合が必要な場合、蓋は、図示の押込嵌合ではなく、ライナーにスナップ嵌合すると良い。」(当審注:下線は当審で付した。)という記載から、蓋15はライナー13内に押込嵌合されるものであり、さらに、上記(2)ア及びイ並びに図2ないし4の記載をあわせると、蓋15は、収納容器12の第1端に隣接する周辺部を含む横部分を有するものであることが分かる。

オ 上記(1)イにおける「収納容器12は、携帯スプレーガンの従来の塗料ポットに匹敵するサイズを有するとともにその基部に空気孔12Aを有し」という記載及び図2ないし4におけるライナー13の配置態様及び図7におけるライナー13の崩壊態様からみて、収納容器12の基部に設けられた空気孔12Aを介して、ライナー13の外面と収納容器12の内面との間に、空気が流入可能であることが分かる。

カ 上記(1)アないしキ、上記(2)アないしオ、及び図1ないし7の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「塗料ポット取付部を備えた重力供給タイプのスプレーガン及び塗料ポット11の組合せであって、塗料ポット11は、
第1端および第2端を有する側壁、側壁の第2端を横切って延在する基部、並びに内部に空洞を画定する内面を有し、側壁の第1端が空洞への開口を画定する、硬質材料からなる収納容器12と、
収納容器12の内面の形状に対応して密接に適合する外面、内部に空洞を画定する内面、および側壁の第1端に沿って形成され該空洞への開口を画定するリム14を有し、収納容器12の空洞内に配置されるライナー13と、
スプレーガンの塗料ポット取付部と係合する接続管17、ライナー13内に押込嵌合し収納容器12の第1端に隣接する周辺部を含む横部分を有し、
収納容器12およびライナー13を前記スプレーガンの上方に配置するための蓋15と、
収納容器12の基部に空気孔12Aを設け、該空気孔12Aを介して、ライナー13の外面と収納容器12の内面との間に、空気が流入可能である、
重力供給タイプのスプレーガンおよび塗料ポット11の組合せ。」

(3)引用文献2
本件出願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特開平11-347462号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗料をスプレーガンに着脱自在のカートリッジを通じて供給することのできる塗料カートリッジと、それを取り付けたスプレーガンに関する。」(段落【0001】)

イ 「【0020】・・・尚、スプレーガン本体にスプレーガン使用時に使用する圧縮エアーの一部を利用して圧力コントローラにより塗料供給圧を一定に保ち塗料の供給をスムーズに行う加圧機構を設けるようにしても良い。というのは、塗料の粘性が大きい場合には、塗料が塗料カートリッジからスプレーガン本体側へスムーズに行かない場合があり、その場合、塗装がきちんとできないので、一定の圧力をかけて塗料のスムーズな供給が確保できるようにすることが必要であるからである。具体的には、塗料の噴出に使用する圧縮エアーの経路に加圧用エアーを横取りする経路を付加し、その経路に圧力コントローラを設け、該圧力コントローラにより圧力コントロールされたエアーを塗料カートリッジ内部にその開放端から加え、可動栓を介して塗料を加圧するのである。そのようにすると、塗料はスプレーガン使用時には常に圧力コントローラによってコントロールされた圧力を可動栓にて受け塗料排出口からスプレーガン本体へスムーズに供給され得る。」(段落【0020】)

ウ 「【0031】図3は本発明スプレーガンの第2の実施例の概略を示す側面図である。本実施例は、塗料12の粘性が高くても塗料カートリッジ1側からスプレーガン本体15側への供給がスムーズに為されるようにしたものである。24は圧力コントローラで、図示しないエアーコンプレッサから供給される圧縮エアーの一部を取り出し、その圧縮エアーの圧力を調整操作に応じた値にして出力するようにされている。25はホースで、該ホース25を介して圧力コントローラ24がスプレーガン本体15に連結されており、また、圧力コントローラ24はホース25を介して圧力蓋26に連結されている。圧力蓋26はシリンダ2の開放端に取り付けられ、圧力コントローラ24により圧力コントロールされた圧縮エアーを塗料カートリッジ1内の塗料12に可動栓3を介して加えることができるようにする役割を果たす。
【0032】この図3に示すスプレーガンによれば、引き金18を引いて塗装をしているときは必ず圧力コントローラ24によりコントロールされた圧力を可動栓3を介して塗料12にかけることができ、塗料12の粘性が高くてもそのコントロールされた圧力により塗料12をスムーズにスプレーガン本体15側に供給し続けることができる。この場合には、可動栓3にはピンホールを形成する必要がなく、ピンホールを形成しないまま使用する。」(段落【0031】及び【0032】)

(4)引用文献2に記載された事項及び技術
ア 圧縮エアーの供給源であるエアーコンプレッサから供給される圧縮エアーは、スプレーガンの作動に適する調整されたものであることは技術常識である。

イ 上記(4)アに加え、上記(3)ウ及び図3の記載から、スプレーガン本体を動作させるために使用される調整された圧縮エアーの同じ供給源から、別個の圧力コントローラを経由して加圧空気が供給されることが分かる。

ウ 上記(3)及び(4)を総合すると引用文献2には、次の技術(以下、「引用技術」という。)が記載されていると認める。
「圧縮エアーの圧力を、塗料カートリッジの可動栓を介して塗料にかけるために、塗料カートリッジに接続されたホース及び圧力コントローラと、
スプレーガン本体を動作させるために使用される調整された圧縮エアーの同じ供給源から、別個の圧力コントローラを経由して加圧空気が供給される、スプレーガン本体及び塗料カートリッジの組合せ。」

4 対比、判断
(1)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「塗料ポット取付部」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「入口部」に相当し、以下同様に、「重力供給タイプのスプレーガン」は「重力供給式液体噴霧デバイス(11)」に、「塗料ポット11」は「液体供給組立品」に、「第1端および第2端を有する側壁」は「第1端(14)および第2端(15)を有する側壁(13)」に、「側壁の第2端を横切って延在する基部」は「前記側壁(13)の第2端(15)を横切って延在する底壁(16)」に、「内部に空洞を画定する内面を有し、側壁の第1端が空洞への開口を画定する、硬質材料からなる収納容器12」は「内部に空洞を画定する内面(19)を有し、前記側壁(13)の前記第1端(14)が前記空洞への開口を画定する、硬質材料からなる容器(12)」に、「収納容器12の内面の形状に対応して密接に適合する外面、内部に空洞を画定する内面、および側壁の第1端に沿って形成され該空洞への開口を画定するリム14を有し」は「前記容器(12)の前記内面(19)と形状が一致する外面、内部に空洞を画定する内面、および前記側壁(13)の前記第1端(14)に沿って形成され該空洞への開口を画定する環状へり(22)を有し」に、「収納容器12の空洞内に配置されるライナー13」は「前記容器(12)の空洞内に配置される可撓性ライナ(20)」に、「接続管17」は「貫通開口(46)を備えた中央部分(44)」に、「周辺部を含む横部分」は「周辺部(50)を含む横部分(48)」に、「スプレーガンの上方に配置するための蓋15」は「液体噴霧デバイス(11)の上方に配置するためのアダプタ組立品(40、54)」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明における「スプレーガンの塗料ポット取付部と係合する接続管17、ライナー13内に押込嵌合し収納容器12の前記第1端に隣接する周辺部を含む横部分を有し、収納容器12およびライナー13を前記スプレーガンの上方に配置するための蓋15」は、「液体噴霧デバイスの入口部と係合する貫通開口を備えた中央部分、可撓性ライナ内に係合し容器の第1端に隣接する周辺部を含む横部分を有し、容器および可撓性ライナを液体噴霧デバイスの上方に配置するためのアダプタ組立品」という限りにおいて、本願発明における「前記液体噴霧デバイス(11)の入口部と係合する貫通開口(46)を備えた中央部分(44)、前記可撓性ライナ(20)内に係合し前記容器(12)の前記第1端(14)に隣接する周辺部(50)を含む横部分(48)、および前記可撓性ライナ(20)を前記周辺部(50)の周りで密封するための手段を有し、前記容器(12)および前記可撓性ライナ(20)を前記液体噴霧デバイス(11)の上方に配置するためのアダプタ組立品(40、54)」に相当する。

ウ したがって、本願発明と引用発明は、
「入口部を備えた重力供給式液体噴霧デバイス及び液体供給組立品の組合せであって、前記液体供給組立品は、
第1端および第2端を有する側壁、前記側壁の第2端を横切って延在する底壁、並びに内部に空洞を画定する内面を有し、前記側壁の前記第1端が前記空洞への開口を画定する、硬質材料からなる容器と、
前記容器の前記内面と形状が一致する外面、内部に空洞を画定する内面、および前記側壁の前記第1端に沿って形成され該空洞への開口を画定する環状へりを有し、前記容器の空洞内に配置される可撓性ライナと、
液体噴霧デバイスの入口部と係合する貫通開口を備えた中央部分、可撓性ライナ内に係合し容器の第1端に隣接する周辺部を含む横部分を有し、容器および可撓性ライナを液体噴霧デバイスの上方に配置するためのアダプタ組立品と、
を備えた重力供給式液体噴霧デバイスおよび液体供給組立品の組合せ。」の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
「液体噴霧デバイスの入口部と係合する貫通開口を備えた中央部分、可撓性ライナ内に係合し容器の第1端に隣接する周辺部を含む横部分を有し、容器および可撓性ライナを液体噴霧デバイスの上方に配置するためのアダプタ組立品」に関して、本願発明においては、「前記液体噴霧デバイス(11)の入口部と係合する貫通開口(46)を備えた中央部分(44)、前記可撓性ライナ(20)内に係合し前記容器(12)の前記第1端(14)に隣接する周辺部(50)を含む横部分(48)、および前記可撓性ライナ(20)を前記周辺部(50)の周りで密封するための手段を有し、前記容器(12)および前記可撓性ライナ(20)を前記液体噴霧デバイス(11)の上方に配置するためのアダプタ組立品(40、54)」であるのに対し、引用発明においては、「スプレーガンの塗料ポット取付部と係合する接続管17、ライナー13内に押込嵌合し収納容器12の第1端に隣接する周辺部を含む横部分を有し、収納容器12およびライナー13を前記スプレーガンの上方に配置するための蓋15」であり、密封するための手段について明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。
(相違点2)
本願発明においては、「前記可撓性ライナ(20)の外面と前記容器(12)の前記内面(19)との間に加圧空気を供給するために、前記容器(12)に接続された空気供給組立品(90)と、を備え、液体噴霧デバイスを動作させるために使用される調整された空気圧力の同じ供給源から、別個の空気圧力調整器を経由して加圧空気が供給される」のに対し、引用発明においては、「収納容器12の基部に空気孔12Aを設け、該空気孔12Aを介して、ライナー13の外面と収納容器12の内面との間に、空気が流入可能である」点(以下、「相違点2」という。)。

(2)判断
ア 相違点1について
引用発明における「ライナー13内に押込嵌合し収納容器12の第1端に隣接する周辺部を含む横部分」を有する「蓋15」については、上記3(2)エにおいて述べたように、「図4に示すように、ライナー13の上部を蓋15と収納容器12との間に閉じ込め」るために、「蓋15」は「ライナー13内」に「押込嵌合」されるものであり、「蓋15」は、ライナー13を周辺部の周りで密封するための手段を実質的に備えるものといえるから、相違点1は実質的な相違点ではない。
また、仮に相違点1が実質的なものであったとしても、引用文献1において、「ポットをスプレーガンに固定して逆転させて使用するときに、この位置で塗料がポット30から漏れるのを防ぐ。」(上記3(1)カ)と記載されるように、容器等から塗料の漏れを防止することは、普遍的な技術課題であるから、引用発明において、ライナー13を周辺部の周りで密封するための手段を設けることは、当業者が容易になし得る設計事項である。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではないか、又は、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に基づき当業者が容易になし得ることである。

イ 相違点2について
引用発明における「スプレーガン」は、圧縮空気源の圧縮空気により動作するものであり(上記3(1)ア)、同発明における「塗料ポット11」は、スプレーガンに対し着脱自在である。他方、引用技術における「スプレーガン本体」は、エアーコンプレッサから供給される圧縮エアーにより動作するものであり(上記3(3)ウ)、同技術における「塗料カートリッジ」はスプレーガン本体に対し着脱自在であるから(上記3(3)ア)、引用発明及び引用技術は、本願発明と同様の液体噴霧デバイスに供給される液体供給組立品という同一の技術分野に属するものであり、塗料容器(ポット、カートリッジ)がスプレーガンに対して着脱自在であること及びスプレーガンが塗料容器を取り付けて圧縮空気源の圧縮空気により動作するという機能においても共通するものである。これより、引用発明の「スプレーガン」及び「塗料ポット11」において、引用技術の「スプレーガン本体」及び「塗料カートリッジ」に係る上記技術の適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮である。
さらに、引用文献2における「塗料の粘性が大きい場合には、塗料が塗料カートリッジからスプレーガン本体側へスムーズに行かない場合があり、その場合、塗装がきちんとできないので、一定の圧力をかけて塗料のスムーズな供給が確保できるようにすることが必要であるからである。」(上記3(3)イ)と記載されるように、塗料のスムーズな供給が確保できるようにすることは、液体(塗料)の噴霧装置の技術分野における普遍的な技術課題であり、引用文献1においても内在する技術課題である。
また、引用発明の「塗料ポット11」は、「空気孔12Aを介して、ライナー13の外面と収納容器12の内面との間に、空気が流入可能である」ことから、空気孔12Aを介して大気圧といった正の圧力がライナー13の外面にかかっていることは自明である。
したがって、上記普遍的な技術課題を解決するために、引用発明の塗料ポット11の大気圧がかかるライナー13の外面側に、引用技術に基づき、スプレーガンの圧縮空気を供給すべく構成することに、当業者の格別の創意は要しない。
以上によれば、引用発明及び引用技術に基づき、相違点2に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得ることである。

なお、引用発明におけるライナー13の崩壊態様(塗料流出態様)に関して付言すると、引用文献1には、「ライナーは自立するが崩壊可能でもあり、比較的剛性がある基部13Aおよび比較的薄い側壁13Bを有し、崩壊する場合、基部ではなく側壁によって長手方向に崩壊する。」(上記3(1)イ)、「ライナーの基部は比較的剛性がありその形状を保つので、ライナーは、横断方向ではなく長手方向に崩壊し、塗料のポケットがライナー内に閉じ込められる可能性が少なくなる。」(上記3(1)ウ)及び「ライナー13が崩壊する場合、比較的剛性がある基部13Aはその形状を保つが、側壁13Bが崩壊すると、図20に示すようにライナーのリム部分14方向に移動する。」(上記3(1)キ)と説明されており、塗料ポット11の収容容器12内におけるライナー13の崩壊態様とは、ライナー13の比較的剛性のある基部が収容容器12内で下方へ移動するものである。これは、引用文献2に記載されたシリンダ2内の可動栓3における下方への移動態様と酷似するものであり、引用発明への引用技術の適用は、装置の格別の変更を伴うことなしに、なし得ることであるから、この点からも上記適用に困難性はない。

ウ そして、本願発明を全体として検討しても、その奏する効果は、引用発明及び引用技術から、当業者が予測することができる以上の格別顕著なものではない。
なお、請求人は、審判請求書において「(4-3)このような状態で液体噴霧デバイスを使用する場合、容器内の塗料は基本的には自重によって上記貫通開口から液体噴霧デバイスの入口部に流入し、かつ塗料の減少に伴い可撓性ライナは下方に向けて徐々に圧潰していくので、原則的には、可撓性ライナの外面と容器の内面との間に加圧空気を供給する必要はない。しかし本願発明では、敢えて可撓性ライナの外面と容器の内面との間に加圧空気を供給することにより、液体噴霧デバイスの姿勢が変化しても均一な噴霧パターンが得られ、さらに容器内の液体が高粘度であっても安定した噴霧が可能となる等の顕著な作用効果が得られる。」と主張している。しかしながら、引用文献2は、塗料の粘性が大きい場合においても塗料のスムーズな供給が確保できるようにするものである(上記3(3)イ)。また、引用文献1は、逆転させて使用することを想定しており(上記3(1)カ及びキ)、引用発明のライナ13の外面において、引用技術に基づき大気圧に加えて更に空気圧力を付与する噴霧装置が、逆転使用時において均一且つ安定した噴霧となることは、当業者が予測可能な範囲の作用効果である。また、内袋体へ圧力を付与することにより逆転使用可能とすることについては、例えば、実願昭63-157854号(実開平2-81649号)のマイクロフィルムに記載されているように(特に明細書12ページ5ないし7行及び第1図参照。)、従来から適宜採用されてきた技術である。 したがって、上記請求人の主張は採用できない。

エ よって、本願発明は、引用発明及び引用技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用技術に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-23 
結審通知日 2014-10-28 
審決日 2014-11-10 
出願番号 特願2010-202926(P2010-202926)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日下部 由泰  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 槙原 進
藤原 直欣
発明の名称 内部ライナを有する、圧力に支援される液体供給カップを備えるスプレーガン  
代理人 島田 哲郎  
代理人 青木 篤  
代理人 前島 一夫  
代理人 三橋 真二  
代理人 田原 正宏  
代理人 廣瀬 繁樹  

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