• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23C
管理番号 1299081
審判番号 不服2012-5126  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-19 
確定日 2015-04-08 
事件の表示 特願2007-102608号「香気成分の制御方法及び散逸防止方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日出願公開、特開2007-300917号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年4月10日(優先権主張 平成18年4月10日)の出願であって、平成23年12月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年3月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成25年11月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成26年1月15日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし10に係る発明は、平成26年1月15日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されたとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
液状食品の気相と接する表面積で当該液状食品の体積を除した数値が1mm?120mmの範囲内で所定の値になるようにした液状食品の厚さを制御して真空脱気処理することにより、アルデヒド類及びケトン類の揮発性の香気成分の前記液状食品からの散逸量を制御することを特徴とする液状食品の香気成分の制御方法。
【請求項2】
液状食品の気相と接する表面積で当該液状食品の体積を除した数値が1mm?120mmの範囲内で所定の値になるようにした液状食品の粒径の大きさを制御して真空脱気処理することにより、アルデヒド類及びケトン類の揮発性の香気成分の前記液状食品からの散逸量を制御することを特徴とする液状食品の香気成分の制御方法。」

3.当審の拒絶理由
当審において、平成25年11月14日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
3-1.理由1
この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項第1、2号の規定する要件を満たしていない。

(1)<省略>
(2)請求項2について
「液状食品の気相と接する表面積で当該液状食品の体積を除した数値が1mm?120mmになるように微粒子化した液状食品」と記載されているが、液状食品を「微粒子化」した実施例は発明の詳細な説明に記載はなく、また、「微粒子」が球形と仮定すると、その粒径は6mm?720mmとなり、通常では考えられない大きな粒径の「微粒子」が含まれることより、請求項2に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものとは認められず、また、発明の詳細な説明は発明を当業者が実施できる程度に記載したものとも認められない。
(3)<省略>

3-2.理由2
この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2003-164706号公報 (以下「引用例1」という。)
2.特開2005-304390号公報 (以下「引用例2」という。)
3.特開平5-103646号公報 (以下「引用例3」という。)

4.当審の判断
4-1.理由1について
本願発明2は、「液状食品の気相と接する表面積で当該液状食品の体積を除した数値が1mm?120mmの範囲内で所定の値になるようにした液状食品の粒径の大きさを制御」するものであり、ここで、「液状食品の粒径」とあることから、真空脱気処理する際に液状食品は「粒子」とされるものと認められるところ、その「粒子」が球形と仮定すると、上記数値範囲から算出される粒径は6mm?720mmとなる。
一方、発明の詳細な説明に、「微粒化した液状食品の大きさ(粒径)を様々に変え」ることは記載されている(段落【0023】等)ものの、具体的な実施例としては、本願発明1に係る「液状食品の厚さを制御」したもののみで、本願発明2に係る具体的な実施例は記載されていない。

ア.そこで、液状食品の粒径を上記6mm?720mmの大きさに制御することについて検討すると、発明の詳細な説明の段落【0006】に従来技術として挙げられている引用例2に記載されているように、一般的な真空脱気操作で用いられる加圧噴霧においては、せいぜい1mm(1000μm)程度に微粒子化するものであり(下記の記載事項(2b)参照)、どのような手段を用いれば上記のような大きな粒径となるように液状食品を制御し得るのか明確でなく、また、引用例2では、平均粒子径が1mm(1000μm)を超えると、効率良く溶存酸素を除去することができなくなる(下記の記載事項(2c)参照)とされていることなどからみて、本願発明2に規定されているような液状食品の粒径において、実用的な真空脱気処理がどのようにして行えるのか明確でない。
よって、発明の詳細な説明は、本願発明2を当業者が実施できる程度に記載したものとも認められない。

イ.上記した液状食品の粒径についての6mm?720mmの範囲は、発明の詳細な説明に記載されている「微粒化」から当業者が認識し得る粒径の範囲を超えた大きさである。また、上記したように本願発明2に係る具体的な実施例は、発明の詳細な説明に記載されていない。
さらに、本願発明2は、「液状食品の厚さを制御」した本願発明1に係る実施例とは、真空脱気処理における処理時間等の条件が異なる(例えば、段落【0092】及び【0101】に記載されているように「30分間保持」しているが、液状食品を粒子のままで圧力容器内において「30分間保持」することは通常行い得ない。)ことから、本願発明1に係る実施例を参酌しても、本願における課題を解決できると当業者が認識し得るものではない。
よって、本願発明2は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

4-2.理由2について
4-2-1.引用例
当審で通知した拒絶理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である引用例1?3には、それぞれ以下の各事項が記載されている。

[引用例1について]
(1a)「【請求項1】 減圧状態にした減圧容器の上部に設けられた開口部から原水を噴射して前記原水中の気泡を除去し、前記気泡が除去されて前記減圧容器の下部に溜まった製品を払い出す脱気装置において、
前記開口部に設けられ、弁体が前記開口部に対して上方に凸の円錐形状をなし、前記原水を前記減圧容器の内壁面に向けて薄膜状に噴射させるカスケードバルブを備えたことを特徴とする脱気装置。」

(1b)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたもので、固形小粒子を含む原水の脱気を可能とすると共に原水の香気成分の損失を防止し、更に脱気後の製品の泡立ちを抑えることを可能とした脱気装置を提供することを目的とする。」

(1c)「【0008】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を図面により詳細に説明する。図1は、本発明に係る脱気装置の実施形態を示し、脱気装置1は、縦長の円筒形状の減圧容器(タンク)2、減圧容器2内に原水を供給する原水供給通路3、原水供給通路3の減圧容器2内の開口部に設けられたカスケードバルブ4、減圧容器2内の空気を吸引して大気に排気し、減圧容器2内を減圧状態にする真空ポンプ5、減圧容器2の下部に溜まった製品を払い出す製品払出ポンプ6、脱気の際に原水から蒸発した香気成分を回収して製品に再添加する香気成分回収機構7、及びこれらを接続する通路8?12等により構成されている。減圧容器内の減圧度(絶対圧力)は原水の種類によって通常1,000Pa以上10,000Pa以下の範囲から適宜選択でき、牛乳のときは1,000Pa?2,000Pa、果汁のときは10,000Pa?50,000Pa、茶類のときは25,000Pa?80,000Pa、及び清涼飲料のときは10,000?60,000Paが好ましい。
【0009】原水供給通路3は、一側3aが略L形に折曲されて減圧容器2の上面中央を液密に貫通され、当該減圧容器2内に突出して下方に開口され、他側が不図示の原水供給タンクに接続されている。カスケードバルブ4は、減圧容器2内に原水を薄膜状に噴射させるためのもので、図2に示すように円錐状の弁体15が原水供給通路3の開口部3bに設けられている。弁体15は、頂角が大きく、外径が開口部3bよりも大径をなし、円錐面をなす弁面15aが開口部3b側に凸(上方に凸)とされ、頂部が開口部3bの中心に位置して配置されている。弁軸16は、原水供給通路3の一側3aの中心を遊貫し、一端が弁体15の頂部に固定され、他端が一側3aの折曲部から液密、且つ軸方向に摺動可能に外部に突出して弁制御装置例えば、ソレノイド17に連結されている。
【0010】ソレノイド17は、通電量に応じて弁体15を駆動して開弁制御する。即ち、ソレノイド17は、通電されていないときには、内蔵するスプリングのばね力により、弁体15を開口部3bに圧接させて閉弁し、通電されると、通電量に応じて前記スプリングのばね力に抗して弁体15を押し出して開弁させる。」

(1d)「【0015】以下に作用を説明する。図1に示すように減圧容器2は、内部の空気が真空ポンプ5により吸引されて減圧状態とされ、カスケードバルブ4は、所定の開弁位置に制御されて弁体15が開口部3bから僅かに離隔している。原水供給通路3に供給された原水20は、図2及び図3に矢印で示すように開口部3bから弁体15の円錐面をなす弁面(上面)15aに沿って斜め下方に放射状に滝のように噴射され、開弁量に応じた厚みdの薄膜状(以下「薄膜状の原水21」という)をなして減圧容器2の垂直な内壁面2aに至る。カスケードバルブ4は、弁体15と開口端3bとが環状の僅かな隙間を存して開弁していることで、原水20中に小繊維、茶葉等の固形小粒子22等が混入している場合でも目詰まりを起こすことがない。これにより、小繊維、果実分、粒子、固形分等を含む製品や高粘度性液の脱気が可能となる。
【0016】また、原水20が薄膜状をなして減圧容器2内に噴射されるために従来のスプレーノズルのような粒子破壊が防止され、香気成分の放出が大幅に減少し、従って、香気成分が吸引側に同伴することを防ぐことができる。更に、原水20が薄膜状の原水21となって噴射するために図3に示すように内部の気泡23が表面まで移動する距離が短くなり、脱気性が大幅に向上する。
【0017】また、原水20中に含まれる香気成分は、蒸発点が低いために気化しやすく、一部が気化して減圧容器2内に浮遊する。この浮遊する香気成分は、真空ポンプ5により脱気された空気と共に吸気通路8に吸引されて垂直部8aを下方に移動する。・・・」

以上の記載において、カスケードバルブの制御方法に着目すると、引用例1には、
「減圧状態にした減圧容器の上部に設けられた開口部から蒸発点が低いために気化しやす香気成分を含む原水を噴射し、前記原水中の気泡を除去する脱気装置の前記開口部に設けられたカスケードバルブの制御方法において、
前記カスケードバルブは、弁体が前記開口部に対して上方に凸の円錐形状をなし、所定の開弁位置に制御されて弁体が開口部から僅かに離隔し、原水供給通路に供給された原水は、開口部から弁体の円錐面をなす弁面(上面)に沿って斜め下方に放射状に滝のように噴射され、開弁量に応じた厚みdの薄膜状をなして減圧容器の垂直な内壁面に至るようにされたカスケードバルブの制御方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用例2について]
(2a)「【請求項1】
飲料を微粒子化し減圧雰囲気に曝すことにより、前記飲料中の溶存酸素濃度を低下させる装置であって、
前記飲料の微粒子化は、前記飲料を加圧噴霧させることにより平均粒子径50μm以上1000μm以下の微粒子とすることを特徴とする、飲料中の溶存酸素濃度を低下させる装置。」

(2b)「【0023】
<飲料の微粒子化>
上記飲料の微粒子化は、該飲料を加圧噴霧させることにより平均粒子径50μm以上1000μm以下の微粒子とすることにより行なわれる。処理される飲料の粒子径をこのような特定範囲のものとすることにより、他の不都合を伴うことなく飲料中の溶存酸素濃度を非常に効率良く低下させることが可能となる。」

(2c)「【0024】
飲料の粒子径が小さくなればなる程、同一質量当たりの表面積は大きくなるため、理論上、飲料中に含まれている溶存酸素は除去されやすくなるものと考えられる。しかし、平均粒子径が50μm未満となる場合には、香味成分や風味成分の逸散が顕著になるという不都合を伴う。・・・
・・・
【0027】
一方、平均粒子径が1000μmを超えると、飲料中に含まれている溶存酸素にとって、飲料微粒子の界面に到達するまでの距離が長くなることから、効率良く溶存酸素を除去することができなくなる。この結果、所期の目的を達成することができなくなってしまう。」

[引用例3について]
(3a)「【0007】前記密閉容器(1) には、真空ポンプ(5) を挿入して成る真空脱気ライン(6) を接続してあり、真空ポンプの作用により密閉容器(1) 内を真空状態に維持するようにしている。又、前記密閉容器(1) 対する真空脱気ライン(6) の接続部には、膜フィルタ(2) を設けてあり、真空脱気する際、食品原料中の水分及び有価成分(特に香気成分等の揮発成分)は、この膜フィルタで分離し、その損失を防止するようにしている。前記膜フィルタ(2) は、食品原料の種類に応じて、即ち分離すべき有価成分の種類に応じて、適宜、膜フィルタを選択する。例えば、牛乳、茶・香料抽出溶液などであれば主として香気成分を、アルコール飲料(ワイン等)であれば香気成分とアルコール成分の両方を分離し、アミノ酸・タンパク質等の分子量10000前後の高分子体は限外濾過膜を用い、アルコール・アルデヒド等の低分子体は逆浸透膜を用い、窒素・酸素・炭酸ガス・水素等の気体成分は気体分離膜を用いるようにする。」

4-2-2.対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比すると、
引用発明の「原水」は、牛乳等である(記載事項(1c)参照)ので、本願発明1の「液状食品」に相当し、
引用発明の「原水」は、減圧状態にした減圧容器で脱気されるものであるから、本願発明1の「真空脱気処理」されるものといえ、
引用発明の「香気成分」は、蒸発点が低いために気化しやすいことから、本願発明1でいう「揮発性」であり、また、引用発明の「原水」と本願発明1の「液状食品」とは、「揮発性の香気成分を含む」限りにおいて一致し、
そして、引用発明は、カスケードバルブの弁体の開弁位置を制御することにより、放射状に滝のように噴射される原水の「厚みd」を開弁量に応じて制御するものであること及び、本願発明1の「液状食品の気相と接する表面積で当該液状食品の体積を除した数値」とは、膜状の物質においては厚さに相当する数値と認められることから、引用発明と本願発明1とは、「液状食品の気相と接する表面積で当該液状食品の体積を除した数値が所定の値になるようにした液状食品の厚さを制御」する限りにおいて一致する。
よって、両者は、
「揮発性の香気成分を含む液状食品の気相と接する表面積で当該液状食品の体積を除した数値が所定の値になるようにした液状食品の厚さを制御して真空脱気処理する制御方法。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;揮発性の香気成分が、本願発明1では、アルデヒド類及びケトン類であるのに対し、引用発明では、特定されていない点。

相違点2;本願発明1は、液状食品の気相と接する表面積で当該液状食品の体積を除した数値の所定の値が、1mm?120mmの範囲内であり、また、揮発性の香気成分の液状食品からの散逸量を制御するものであるのに対し、引用発明は、カスケードバルブから噴射される原水の「厚みd」の具体的な値は特定されておらず、また、蒸発点が低いために気化しやす香気成分の原水からの散逸量を制御するものとはされていない点。

上記各相違点について検討すると、
・相違点1について
引用文献3には、牛乳等の飲料の香気成分に「アルデヒド」があることが記載され(記載事項(3a)参照)、また、それ以外にも「ケトン」は飲料の揮発性の香気成分として良く知られている周知の成分であり、それらは飲料の香気成分に一般的に含まれているものと認められることより、
引用発明の原水として、香気成分にアルデヒド類及びケトン類が含まれるものを選択することは、当業者が容易になし得たことである。

・相違点2について
引用発明は、カスケードバルブの開弁量を制御し、カスケードバルブから噴射される原水を、開弁量に応じた「厚みd」の薄膜状となすものである。ここで、上記「厚みd」を小さくすれば、同一体積あたりの表面積が大きくなり、「香気成分」の原水からの散逸量も大きくなることは、当業者にとって明らかである。そうすると、引用発明において、カスケードバルブの開弁量を制御して上記「厚みd」を変化させることは、「香気成分」の原水からの散逸量を変化させることといえる。
そして、引用発明は「原水の脱気を可能とすると共に原水の香気成分の損失を防止」(記載事項(1b)参照)することを課題とするものであること及び、引用例2には、飲料を微粒子化した粒子径に係るものではあるが、飲料中の溶存酸素濃度を低下させる装置において、香味成分や風味成分の逸散が顕著にならないような上記粒子径とすることが記載され(記載事項(2c)参照)、これは同一体積あたりの表面積を変化させて「香気成分」の散逸量を制御するものと理解できることから、引用発明においても、「香気成分」の原水からの散逸量を所望される値にするために、カスケードバルブの開弁量を制御することにより、上記「香気成分」の原水からの散逸量を変化させている「厚さd」を制御することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
また、引用発明において、脱気される量及び香気成分の散逸量は、上記「厚さd」以外にも、脱気の際の減圧度、温度及び脱気時間等にも依存するものであることから、脱気される量及び香気成分の散逸量は、上記「厚さd」の制御に加え、脱気の際の減圧度、温度及び脱気時間等も適宜に調整することにより、当業者が容易に制御し得るものと認められる。
そして、本願発明1の1mm?120mmの範囲内の上限値である「120mm」は、薄膜状とはいえず、引用発明の対象とはならないとしても、下限値の「1mm」は、薄膜状の液体の厚さとして格別な値とは認められず、当該範囲内に引用発明の「厚さd」を設定することも、実験等を通じて当業者が適宜になし得たことである。
よって、引用発明において、「香気成分」の原水からの散逸量を所望される値にするために、カスケードバルブから噴射される原水の「厚みd」を1mm?120mmの範囲内になすことは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願発明1は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、この出願は、特許法第36条第4項及び第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもあるから、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-05 
結審通知日 2014-02-18 
審決日 2014-03-03 
出願番号 特願2007-102608(P2007-102608)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A23C)
P 1 8・ 121- WZ (A23C)
P 1 8・ 537- WZ (A23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 英雄  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 山崎 勝司
平上 悦司
発明の名称 香気成分の制御方法及び散逸防止方法  
代理人 涌井 謙一  
代理人 山本 典弘  
代理人 鈴木 一永  
代理人 鈴木 正次  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ