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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1299158
審判番号 不服2013-25498  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-25 
確定日 2015-03-26 
事件の表示 特願2011-553624「冷凍サイクル装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月18日国際公開、WO2011/099067〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年2月10日を国際出願日とする出願であって、平成25年10月1日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月25日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年12月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「圧縮機と、第一の熱交換器と、絞り装置と、第二の熱交換器とが接続された冷媒回路を有し、前記冷媒回路内に超臨界状態に遷移する冷媒を流通させる冷凍サイクルを構成し、
前記第一の熱交換器に超臨界状態の前記冷媒を流通させて前記第一の熱交換器をガスクーラーとして、または、亜臨界状態の前記冷媒を流通させて凝縮器として動作させ、
前記第二の熱交換器に低圧二相状態の前記冷媒を流通させて蒸発器として動作させ、
前記第一の熱交換器の出口側から前記絞り装置の入口側に至る流路のいずれかの位置に前記冷媒を2つ以上の流路に分流する分流装置を備えた冷凍サイクル装置において、
前記冷媒回路内に、前記冷媒がその臨界圧力より低い圧力の状態である前記亜臨界状態において、ある温度以下では相溶性を示し、ある温度よりも高い温度では非相溶性あるいは難相溶性を示す冷凍機油が封入され、
前記分流装置は、
前記圧縮機から吐出される高圧側の前記冷媒が亜臨界状態となり、前記凝縮器として動作する前記第一の熱交換器の出口側が液冷媒となる運転状態が生じた場合に前記第一の熱交換器から流出した液冷媒を分岐する位置に設置されており、
前記冷媒が前記分流装置に流入する方向がほぼ水平方向またはほぼ鉛直上向き方向とされていることを特徴とする冷凍サイクル装置。」

第3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-101070号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、缶商品の自動販売機,空調装置,冷蔵ショーケースなどに適用する冷凍装置に関する。」

「【0002】
【従来の技術】まず、冷凍装置を適用する機器の一例としてホット/コールド自動販売機の構成を図5に示す。・・・
【0003】・・・次に、図5の自動販売機に搭載した冷凍装置の冷媒回路を図6に示す。図6において、コンデンシングユニット7は圧縮機(例えば密閉形のロータリー型,レシプロ型圧縮機)8,凝縮器9,凝縮器ファン10,ドライヤ・ストレーナ11からなる。また、蒸発器4A,4B,4Cの各基ごとに、その入口側には膨張弁の一種であるキャピラリチューブ12,および液電磁弁13が接続されており、コンデンシングユニット7から引出した高圧側液管14に通称「液ヘッダ」と呼ばれる冷媒分配器15を接続して凝縮器9で凝縮した高圧液冷媒を各基の蒸発器4A,4B,4Cに分配するようにしている。」

「【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記した圧縮式冷凍装置のように冷媒回路にオイルセパレータなどの付属機器を備えてない簡易構造のものでは、潤滑油として圧縮機の機内に封入した冷凍機油(一般には鉱油系の合成油が用いられている)の一部が冷媒ガスに随伴して圧縮機より吐き出され、冷媒とともに冷媒回路を一巡して圧縮機に還流する。
・・・
【0007】ところで、代替冷媒である前記冷媒HFC134a(R-134a)の性質は冷凍機油に対する相互溶解性が小さく、かつ冷凍機油は液冷媒に較べて比重が小さく,粘性が高い。このために冷媒ガスに随伴して圧縮機から吐き出された冷凍機油は冷媒回路を循環する過程で2相分離が生じ易く、特に前記した高圧液冷媒管に接続した冷媒分配器のように冷媒通路の断面が拡大する箇所では冷凍機油が液冷媒から分離,浮上して停滞し易くなる。」

「【0009】これに対して、冷媒分配器から引出した複数本の分配管を通じて液冷媒を下流側に接続したキャピラリチューブへ送り込む場合に、冷媒分配器の取付け姿勢が分配管の配列方向に傾いていたり、冷媒が上方から流入して下方から流出するような向きに取付けられていると、液冷媒に混在,ないし2相分離して凝縮器側から随伴してきた冷凍機油の影響で冷媒が各分配管に均等に流れなくなる現象が発生し、これにより冷凍機油が集中するキャピラリチューブを流れる液冷媒流量が減少したり、キャピラリチューブの内壁面には粘性の高い冷凍機油が多く付着して目詰まりに近い状態となる不具合を引き起こすことが発明者等の行った実験,考察から判明した。しかも、このような状態になると、キャピラリチューブの有効断面が変動して液冷媒の適正な流量制御が行えなくなり、このことが原因で蒸発器の冷凍能力が他の蒸発器(冷凍機油の流れ量が少ない)と較べて低下するような事態に発展する。
【0010】したがって、各蒸発器の相互間でバランスよく冷凍能力を発揮させるには、液冷媒に随伴する冷凍機油を含めて、凝縮器から冷媒分配器,キャピラリチューブを経て各基の蒸発器に流す液冷媒をできるだけ均等に分配することが必要である。本発明は上記の点にかんがみなされたものであり、前記した実験,考察の結果を基に、コンデンシングユニットから冷媒分配器を経由して複数基の蒸発器に液冷媒を供給する際に、各基の蒸発器の相互間でアンバランス無しに冷凍能力が十分発揮できるようにした、特に冷媒として代替フロンのHFC134a(R-134a)を使用するものに好適な冷凍装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明によれば、圧縮機,凝縮器を含むコンデンシングユニットに対して、複数基の蒸発器を個々に膨張弁を介して配管接続するとともに、凝縮器に通じる高圧側液管にマニホールド型冷媒分配器を接続し、該冷媒分配器を通じて液冷媒を各基の蒸発器へ分配するようにした冷凍装置において、前記冷媒分配器をその冷媒入口管が下側に,マニホールドから引出した冷媒分配管が上側を向くような取付け姿勢に設置するものとする。」

「【0013】冷媒分配器を上記のような取付け姿勢で高圧側液管に接続したことにより、凝縮器を経由して送液されて来た高圧液冷媒は、冷媒分配器へ下方側から流入するので、マニホールドの内部で2相分離した冷凍機油は、冷媒分配器の中で液冷媒との比重差から液冷媒の上に浮上し、ここから上方へ分岐して引出した分配管を通じて液冷媒と一緒に流出する。しかも、マニホールドの上部から引出した各冷媒分配管の開口端が高さを揃えて同じ水平レベルに並ぶような取付け姿勢にしておけば、冷凍機油の液面に対して各分配管の出口端が同じ高さに並ぶので、冷凍基油が一部の分配管へ偏って流れることがなく、各分配管にほぼ均等に分流して送出される。
【0014】これにより、冷媒分配器よりキャピラリチューブを経て各基の蒸発器に供給される冷媒流量が均等化され、しかも冷凍機油の集中的な通流,付着に起因してキャピラリチューブが目詰まりを引き起こすこともなく、これにより各蒸発器が所定通りの冷凍能力を十分に発揮するようになる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図1,図2に基づいて説明する。図1(a)?(c)において、冷媒分配器15は絞り加工されたシェル形のマニホールド15aに対して、その下端側には液冷媒の入口管19が接続され、上端側より3本の分配管20A,20B,20Cを左右一列に並べて引き出した構造である。そして、この冷媒分配器15を図6の冷凍装置に組み込む際には、図示のように入口管19が下側を向き、分配管20A,20B,20Cが上側を向くような姿勢とし、しかもマニホールド15aから上方に引出した分配管20A,20B,20Cの各開口端が水平レベルLに揃えて同じ高さに並ぶように定めて高圧側液管に接続して配置するものとする。また、ここで採用する冷媒としては、代替フロンであるHFC134a(R-134a)(冷凍機油に対する相互溶解性が小さい)を採用するものとする。
【0016】上記の構成において、コンデンシングユニット側から入口管19を通じて下側から冷媒分配器15のマニホールド15aに流入した液冷媒は、上方から引出した分配管20A,20B,20Cへ分流して後段のキャピラリチューブに分配供給される。一方、液冷媒に混在して流入する冷凍機油は液冷媒との比重差から冷媒分配器15の中で上方に浮上し、液冷媒とともに分配管20A,20B,20Cを通じて流出する。
【0017】しかも、分配管20A,20B,20Cはその開口端が同じ水平レベルLに並んでいるので、図6に示した液電磁弁13を全て閉じた運転停止状態で、図1(c)で表すように液冷媒Cに混在している冷凍機油Oが2相分離してマニホールド15aの上部に浮上して溜まった状態になっても、圧縮機の運転再開と同時に冷凍機油Oは冷媒分配器15から各分配管20A,20B,20Cを通じて偏りなく速やかに分流,流出する。」

「【0018】また、図2(a),(b)は図1の応用例を示すものであり、配管スペースの制約から冷媒分配器15自身は斜め姿勢に配管接続されている・・・」

【図1】 【図6】


上記【0015】及び図1に、冷媒分配器15を入口管19が下側を向く姿勢に設置することが記載されているところ、【0018】の記載を参酌すれば、図1の例における冷媒分配器15は、図2のような斜め姿勢ではなく、入口管19が鉛直方向で下側を向く姿勢に設置されると理解できる。
このことを踏まえると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「圧縮機、凝縮器を含むコンデンシングユニットに対して、複数基の蒸発器を個々に膨張弁を介して配管接続するとともに、凝縮器に通じる高圧側液管にマニホールド型冷媒分配器を接続し、該冷媒分配器を通じて液冷媒を複数基の各蒸発器へ分配するようにした冷凍装置において、
液冷媒に混在して流れる冷凍機油は、液冷媒との相互溶解性が小さいものであり、
前記冷媒分配器をその冷媒入口管が鉛直方向で下側を向き、マニホールドから引出した冷媒分配管が上側を向くような取付け姿勢に設置した冷凍装置。」

第4 対比
引用発明の「凝縮器」、「膨張弁」、「蒸発器」は、それぞれ、本願発明の「第一の熱交換器」、「絞り装置」、「第二の熱交換器」に相当する。
引用発明の「圧縮機、凝縮器を含むコンデンシングユニットに対して、複数基の蒸発器を個々に膨張弁を介して配管接続する」は、内部に冷媒を流通させて冷凍サイクルを構成することが明らかであるから、本願発明の「圧縮機と、第一の熱交換器と、絞り装置と、第二の熱交換器とが接続された冷媒回路を有し、前記冷媒回路内に」「冷媒を流通させる冷凍サイクルを構成し」に相当する。
引用発明の「蒸発器」の動作は、冷凍サイクルの技術常識を踏まえれば、本願発明の「前記第二の熱交換器に低圧二相状態の前記冷媒を流通させて蒸発器として動作させ」に相当する。
引用発明の「マニホールド型冷媒分配器」は、本願発明の「冷媒を2つ以上の流路に分流する分流装置」に相当する。そして、引用発明の「マニホールド型冷媒分配器」は、凝縮器(第一の熱交換器)に通じる高圧側液管に接続され、液冷媒を複数基の各蒸発器(第二の熱交換器)へ膨張弁(絞り装置)を介して分配するように配置されているから、その配置位置は、本願発明の「前記第一の熱交換器の出口側から前記絞り装置の入口側に至る流路のいずれかの位置」に相当するとともに、「前記第一の熱交換器から流出した液冷媒を分岐する位置」に相当する。
引用発明の「冷凍装置」は、本願発明の「冷凍サイクル装置」に相当する。
引用発明の「液冷媒に混在して流れる冷凍機油は、液冷媒との相互溶解性が小さいものであり」は、本願発明の「冷媒回路内に、」「非相溶性あるいは難相溶性を示す冷凍機油が封入され」に相当する。
引用発明の「前記冷媒分配器をその冷媒入口管が鉛直方向で下側を向き、マニホールドから引出した冷媒分配管が上側を向くような取付け姿勢に設置した」ことは、本願発明の「前記冷媒が前記分流装置に流入する方向が」「ほぼ鉛直上向き方向とされている」に相当する。
よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「圧縮機と、第一の熱交換器と、絞り装置と、第二の熱交換器とが接続された冷媒回路を有し、前記冷媒回路内に冷媒を流通させる冷凍サイクルを構成し、
前記第二の熱交換器に低圧二相状態の前記冷媒を流通させて蒸発器として動作させ、
前記第一の熱交換器の出口側から前記絞り装置の入口側に至る流路のいずれかの位置に前記冷媒を2つ以上の流路に分流する分流装置を備えた冷凍サイクル装置において、
前記冷媒回路内に、非相溶性あるいは難相溶性を示す冷凍機油が封入され、
前記分流装置は、
前記第一の熱交換器から流出した液冷媒を分岐する位置に設置されており、
前記冷媒が前記分流装置に流入する方向がほぼ水平方向またはほぼ鉛直上向き方向とされている冷凍サイクル装置。」

[相違点1]
本願発明は、「超臨界状態に遷移する冷媒」を用い、「前記第一の熱交換器に超臨界状態の前記冷媒を流通させて前記第一の熱交換器をガスクーラーとして、または、亜臨界状態の前記冷媒を流通させて凝縮器として動作させ」るものであって、分流装置の位置が、「前記圧縮機から吐出される高圧側の前記冷媒が亜臨界状態となり、前記凝縮器として動作する前記第一の熱交換器の出口側が液冷媒となる運転状態が生じた場合に前記第一の熱交換器から流出した液冷媒を分岐する位置」と特定されているのに対し、引用発明は、「超臨界状態に遷移する冷媒」を用いるものではなく、第一の熱交換器を「凝縮器として動作」させるものであって、分流装置の位置が、「前記第一の熱交換器から流出した液冷媒を分岐する位置」である点。

[相違点2]
本願発明の冷凍機油は、「前記冷媒がその臨界圧力より低い圧力の状態である前記亜臨界状態において、ある温度以下では相溶性を示し、ある温度よりも高い温度では非相溶性あるいは難相溶性を示す」ものであるのに対し、引用発明の冷凍機油は、「液冷媒との相互溶解性が小さいもの」である点。

第5 判断
(1)相違点1について
冷凍サイクル装置の冷媒として二酸化炭素を用いることは、例えば、
国際公開第2008/032568号(以下「周知例1」という。[0003]参照。)、
特開2006-275496号公報(以下「周知例2」という。【0026】参照。)、
特開2003-139420号公報(以下「周知例3」という。【請求項1】参照。)、
特開2006-300488号公報(以下「周知例4」という。【請求項1】参照。)、
特開2008-70029号公報(以下「周知例5」という。【請求項1】参照。)
に示すように周知である。
そして、二酸化炭素は、本願発明の「超臨界状態に遷移する冷媒」に相当する(周知例1[0003]、周知例2【0036】、周知例3【0002】、周知例4【請求項1】、周知例5【0004】参照。)。
ところで、二酸化炭素冷媒は、環境負荷が小さい等の観点から用いられており(周知例2【0026】、周知例4【0002】参照。)、冷媒の環境負荷を低減することは、冷凍サイクル装置における一般的な課題であるから、引用発明の冷凍サイクル装置においても、環境負荷を低減するとの観点から、周知の二酸化炭素冷媒を用いることは、当業者が容易に着想し得たことといえる。
そして、二酸化炭素冷媒を用いた場合には、運転条件に応じて、熱交換器に超臨界状態の冷媒が流通して該熱交換器がガスクーラーとして動作する場合と、熱交換器に亜臨界状態の冷媒が流通して該熱交換器が凝縮器として動作する場合とがあることは周知である(周知例1[0003]、周知例2【0028】【0036】参照。)。
そうすると、引用発明の冷凍サイクル装置において、周知の二酸化炭素冷媒を用いれば、引用発明の「凝縮器」が、二酸化炭素冷媒が超臨界状態のときはガスクーラーとして動作し、二酸化炭素冷媒が亜臨界状態のときは凝縮器として動作すること、すなわち、本願発明の「第一の熱交換器に超臨界状態の冷媒を流通させて前記第一の熱交換器をガスクーラーとして、または、亜臨界状態の冷媒を流通させて凝縮器として動作させ」る構成となることが明らかである。
更に、引用発明の冷凍サイクル装置において、周知の二酸化炭素冷媒を用いれば、引用発明の「マニホールド型冷媒分配器」の位置は、二酸化炭素冷媒が亜臨界状態の場合に「凝縮器」から流出した液冷媒を分岐する位置、すなわち、本願発明の「前記圧縮機から吐出される高圧側の前記冷媒が亜臨界状態となり、前記凝縮器として動作する前記第一の熱交換器の出口側が液冷媒となる運転状態が生じた場合に前記第一の熱交換器から流出した液冷媒を分岐する位置」となることも明らかである。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明の冷凍サイクル装置において、周知の二酸化炭素冷媒を用いることにより、当業者が容易に想到し得たものである。

(2)相違点2について
二酸化炭素冷媒と共に用いられる冷凍機油として、ポリオールエステルは周知のものである(周知例3【請求項1】【請求項6】、周知例4【0009】、周知例5【0004】参照。)。
そして、ポリオールエステルの特性として、二酸化炭素冷媒に対し、ある温度以下では相溶性を示し、ある温度よりも高い温度では非相溶性あるいは難相溶性を示すことが周知であり(周知例3【0098】【図5】、周知例4【0009】【図2】参照。)、また、ポリオールエステルは、本願発明の冷凍機油の具体例として本願明細書(【0086】?【0089】)に記載されているものでもある。
よって、上記周知のポリオールエステルは、本願発明の「前記冷媒がその臨界圧力より低い圧力の状態である前記亜臨界状態において、ある温度以下では相溶性を示し、ある温度よりも高い温度では非相溶性あるいは難相溶性を示す冷凍機油」に相当するといえる。
ところで、上記相違点1について検討したとおり、引用発明の冷凍サイクル装置において、周知の二酸化炭素冷媒を用いることは、当業者が容易に想到し得たところ、その際の冷凍機油を、二酸化炭素冷媒と共に用いられる周知の冷凍機油から適宜に選択することは、通常の設計事項である。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明の冷凍サイクル装置において、周知の二酸化炭素冷媒を用いるにあたり、冷凍機油として、周知のポリオールエステルを適宜に選択することにより、当業者が容易に想到し得たものである。

(3)効果について
引用発明は、液冷媒と冷凍機油の相互溶解性が小さく、2相分離しても、液冷媒及び冷凍機油を均等に分配するものである。そうすると、引用発明の冷凍サイクル装置において、周知の二酸化炭素冷媒と周知のポリオールエステル冷凍機油を用い、運転条件によって、液冷媒と冷凍機油の相互溶解性が小さく、2相分離する状態が生じても、液冷媒及び冷凍機油を均等に分配できることは明らかである。そうすると、本願発明の効果は、引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-21 
結審通知日 2015-01-27 
審決日 2015-02-09 
出願番号 特願2011-553624(P2011-553624)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 裕治朗仲村 靖  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 紀本 孝
佐々木 正章
発明の名称 冷凍サイクル装置  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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