• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1299161
審判番号 不服2014-1071  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-21 
確定日 2015-03-26 
事件の表示 特願2011-265292「携帯端末装置および携帯端末装置における操作キー群のレイアウト方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日出願公開,特開2012- 80568〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成18年10月30日を出願日とする特願2006-294066号(以下「原出願」という。)の一部を平成23年12月2日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成23年12月 6日 審査請求
平成25年 1月31日 拒絶理由通知
平成25年 4月 1日 意見書・手続補正書
平成25年10月15日 拒絶査定
平成26年 1月21日 審判請求・手続補正書
平成26年10月16日 拒絶理由通知
平成26年12月19日 意見書・手続補正書

第2 当審による拒絶理由通知の概要
審判合議体が平成26年10月16日付けで通知した拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)における,特許法第29条第2項の判断(本願に係る発明の容易想到性の判断)の概要は次のとおりである。
平成26年1月21日付け手続補正書により補正された,本願の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は,特開平10-55467号公報(以下「引用文献1」という。)記載の発明において,特開2000-231428号公報(以下「引用文献2」という。)記載の発明,並びに特開平11-353070号公報(以下「引用文献3」という。)及び米国特許出願公開第2004/0183834号明細書(以下「引用文献4」という。)にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 本願発明の容易想到性について
1 本願発明
本願の請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成26年12月19日付け手続補正書により補正された,特許請求の範囲の請求項5に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項5】
操作キー群を表示部に表示して,タッチパネルを介して入力操作するようにした携帯端末装置における操作キー群のレイアウト方法であって,
タッチパネル上に線図を描くユーザ操作の軌跡に基づいてユーザの入力操作が右手操作によるものか左手操作によるものかを決定し,該決定に基づいて操作キー群を前記表示部に表示する携帯端末装置における操作キー群レイアウト方法。」

2 引用文献の記載と引用発明及び周知技術
(1)引用文献1の記載と引用発明1
ア 引用文献1
当審拒絶理由通知で引用された,原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1には,図面とともに,次の記載がある。(当審注.下線は当審において付加した。以下同じ。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,例えば銀行等の金融機関で用いられ,不特定多数の利用者により操作される現金自動預出金機等において,特に利用者の利き腕に応じて操作しやすい入力画面を表示する入力装置,及びこの入力装置を用いて利用者の操作により現金の取引を自動的に行う自動取引装置に関する。
・・・
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし,従来の装置によれば,取引に関する種々の情報入力を行う前に,さらに利用者により利き腕を入力するという入力動作が加わるため,入力数が多くなり,利用者にとって取引がより煩雑になるという問題がある。また,利用者により入力される入力領域が必ずしも利き腕側の入力領域とは限らず,即ち右利きの利用者が必ずしも右側の入力領域を接触するとは限らず,左利きの利用者が必ずしも左側の入力領域を接触するとは限らず,誤った判断を誘発する恐れがあるという問題がある。
【0007】そこで本発明は,上記欠点を除去し,利用者の利き腕を正確かつ迅速に判断でき,利用者が右利きあるいは左利きであっても操作しやすい入力装置及び自動取引装置を提供することを目的とする。」
(イ)「【0014】
【発明の実施の形態】以下,本発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。まず,図2を参照して本実施の形態に係る自動取引装置(たとえば,現金自動預出金機)1の外観構成を説明する。図2に示す自動取引装置1は,箱型状の筐体1Aの前面部側に,略L字形状の接客操作領域2を設けている。・・・
・・・
【0016】また,接客操作領域2の水平面には,透明なタッチセンサパネル5a及びカラーCRT5bを組み合わせた入力手段,表示手段としての入力装置の機能を有する操作部5を設けている。操作部5のタッチセンサパネル5aは,カラーCRT5bの表示画面上に重ねて用いられる,例えば透明なタッチスクリーンであり,利用者によって指等でタッチされた当該パネル上の位置を,例えば静電容量の変化等によって検知するものである。尚,カラーCRT5bの下に置いて動力の変化を検知し,タッチされた位置を所定の計算によって割り出すものでも良い。
【0017】カラーCRT5bは,操作手順,その他の情報を文字,文言,イラストあるいは画像情報によって画面にカラーで表示し,利用者の操作を誘導案内するようになっている。また,取引に必要な各種情報を入力するための数字,カタカナ,アルファベット,確認や取消し等の各種操作キーを表示し,この表示された操作キーに対応するタッチセンサパネル5aのセグメント部位を指で触れることにより,所望の情報の入力を行なうことができるようになっている。」
(ウ)「【0034】次に,図4に示すフローチャートを用いて自動取引装置1の利き腕認識処理を説明する。まず,自動取引装置1の主制御部32は,操作パネル5のカラーCRT5bに,図5に示すように,お引き出し51,通帳記入52,残高照会53,お預け入れ54,お振込・お振替55,定期お預け入れ56から成る利用者待ち画面50の初期画面を表示している(ST10)。
【0035】最初に利用者は,自動取引装置1のカラーCRT5bに表示されている利用者待ち画面50の取引項目から希望する取引の表示に対応するタッチセンサパネル5aの部位を指で触れて,取引を入力(選択)する(ST11)。ここで,利用者が取引を入力(選択)するとタッチセンサパネル5aにて利用者の指がタッチした位置を検知し,入力制御部41にて利用者にタッチされた位置が入力領域であるかを判定する(ST12)。このST12で入力領域内であると判定されると,入力制御部41はタッチされた位置の位置情報を位置入力部42へ送り,位置入力部42では入力された位置情報をバッファに格納し,利き腕認識部44を起動する。
【0036】起動された利き腕認識部44では,位置入力部42にて取り込まれた位置情報に対して細線化処理を行い,得られた線を直線に近似して予め設定された水平直線に対して何度の角度を成しているかを算出し,この算出角度から利用者の利き腕を認識する。(ST14?ST24)・・・
・・・
【0038】この様に,利き腕認識部44にて利き腕が認識されると,対話管理部48へ認識結果を送り,対話管理部48ではこの認識結果に基づいて画面表示の選択,切換を行う。つまり,認識結果が左利きの場合には対話管理部48では図7に示すような左側に入力領域60a,60bを設けた左利き用の各種入力画面の切換表示を行い,認識結果が右利きの場合には対話管理部48では図8に示すような右側に入力領域70a,70bを設けた右利き用の各種入力画面の切換表示を行い,主制御部32にて取引処理を行うようになっている(ST26,ST28)。」
イ 引用発明1
(ア)上記ア(ア)及び(イ)によれば,引用文献1には,各種操作キーをカラーCRT5bに表示して,タッチセンサパネル5aを指で触れることにより,所望の情報の入力を行なうようにした入力装置が記載されている。
そして,上記ア(ウ)によれば,入力領域60a,60b及び70a,70bの画面表示の選択,切換を行うことが記載され,図7及び図8を参酌すれば,入力領域60a,60b及び70a,70bは,取引に必要な各種情報を入力するための数字,カタカナ,アルファベット,確認や取消し等の各種操作キーで構成されるものである。
そうすると,上記ア(ア)ないし(ウ)より,引用文献1には,各種操作キーをカラーCRT5bに表示して,タッチセンサパネル5aを指で触れることにより,所望の情報の入力を行なうようにした入力装置における各種操作キーの画面表示の選択,切換方法が記載されていると認められる。
(イ)上記ア(ウ)によれば,引用文献1には,タッチセンサパネル5aにて利用者の指がタッチした位置の位置情報に対して細線化処理を行い,予め設定された水平直線に対して何度の角度を成しているかを算出し,この算出角度から利用者の利き腕を認識し,認識結果が左利きの場合には左側に入力領域60a,60bを設けた左利き用の各種入力画面の切換表示を行い,認識結果が右利きの場合には右側に入力領域70a,70bを設けた右利き用の各種入力画面の切換表示を行うことが記載されている。
そうすると,上記ア(ウ)より,引用文献1には,タッチセンサパネル5aにて利用者の指がタッチした位置の位置情報に基づいて利用者の利き腕を認識し,該認識結果に基づいて入力領域60a,60b及び70a,70b,すなわち各種操作キーをCRT5bに表示することが記載されていると認められる。
(ウ)以上によれば,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「各種操作キーをカラーCRT5bに表示して,タッチセンサパネル5aを指で触れることにより,所望の情報の入力を行なうようにした入力装置における各種操作キーの画面表示の選択,切換方法であって,
タッチセンサパネル5aにて利用者の指がタッチした位置の位置情報に基づいて利用者の利き腕を認識し,該認識結果に基づいて各種操作キーをCRT5bに表示する入力装置における各種操作キーの画面表示の選択,切換方法。」

(2)引用文献2ないし4の記載と引用発明2及び周知技術
ア 引用文献2の記載と引用発明2
(ア)当審拒絶理由通知で引用された,原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献2には,図面とともに,次の記載がある。
a「【0017】次に図3を参照すると,本発明が実現され得るデータ処理システムのブロック図が示される。データ処理システム300は,クライアント・コンピュータの例である。・・・」
b「【0044】図6乃至図11を参照すると,グラフィカル・ユーザ・インタフェース・ウィンドウは,データ処理システム300がユーザに,カストマイズ化適応入力プロファイル470を構成するための,自動構成ユーティリティを実行する能力を提供する一般的な態様を示す。自動構成ユーティリティの実行の間,図5に関連して前述したように,ユーザは構成されるべき1つまたは複数の入力装置を選択し,次に,様々な入力装置を操作または使用するための,ユーザの身体機能またはユーザの経験レベルを学習するために,様々な入力活動を通じて指導される。
【0045】図6は,ユーザが構成しようとする入力装置を指定するためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース・ウィンドウ600を示す。ユーザは適切なデフォルト指定の入力装置をポインティング機構として使用することにより,意図した装置を選択する。グラフィカル・ユーザ・インタフェース・ウィンドウ600をユーザに表示する前に,自動構成ユーティリティは使用可能且つ構成可能な入力装置を検出するか,オペレーティング・システム400に使用可能且つ構成可能な入力装置に関する情報を問い合わせる。グラフィカル・ユーザ・インタフェース・ウィンドウ600は,事前に使用可能且つ構成可能であると判断された次の入力装置,すなわちタッチスクリーン601,キーボード602,マウス603,電子ペンまたはスタイラス604,マイクロフォン605,ジョイスティック606,タッチパッド607,トラックボール608,バーチャル・リアリティーまたはVRグローブ609を示す。・・・」
c「【0046】図7は,アイコン621乃至628を表すグラフィカル・ユーザ・インタフェース・ウィンドウ620を示す。グラフィカル・ユーザ・インタフェース・ウィンドウ620内に示されるように,ユーザはユーザに表示されるアイコンをクリックするように指示される。個々のアイコン621乃至628の各々は,ユーザがクリックすべきアイコンを示すように順次的に強調表示されるか,アイコン621乃至628の各々が,ウィンドウ620の様々な領域に個々に順次的に表示され,ユーザに入力装置を移動し,個々のアイコンが現れる新たに指定された領域をクリックするように要求する。このように,自動構成ユーティリティは,入力装置を移動し,ウィンドウ620の様々な領域に達するためのユーザの経験レベルまたは能力を審査する。ユーザはまた,現入力装置上のボタンまたは他のセレクタをクリック,ダブル・クリック,またはトリプル・クリックするように指示される。この場合,自動構成ユーティリティは,ユーザが入力装置ボタンまたは他の選択機構をクリックするスピードを測定する。
【0047】移動の様々なスピード及び選択機構の使用が,ユーザの身体能力により制限されるが,自動構成ユーティリティにより行われる様々な測定は単に,入力装置を操作するユーザの嗜好を測定するものであってもよい。入力装置の一時的ユーザは,熟練のユーザ同様,身体的に入力装置を操作できるかもしれないが,入力装置をゆっくり操作するように選択するかもしれない。いずれの場合にも,自動構成ユーティリティは,特定ユーザが入力装置を操作する様子を審査し,適切なユーザ・パラメータを生成し,それに従い,特定のユーザのカストマイズ化適応入力プロファイル470を作成または変更する。同様に,2つ以上のボタンを有する装置のためのマウス構成は,現在右利き用または左利き用として,手動式にセットされなければならない。多くの左利きの人が右利き用マウス構成を使用している。この設定は,図7におけるアイコン・クリック活動の間に,自動的にセットされる。
【0048】図8は,ユーザが線631乃至636を引くように指示されるグラフィカル・ユーザ・インタフェース・ウィンドウ630を示す。図9のグラフィカル・ユーザ・インタフェース・ウィンドウ640は,ユーザに円641を描くように指示する例を示す。図10のグラフィカル・ユーザ・インタフェース・ウィンドウ650は,ユーザに矩形651を描くように指示する例を示す。図11のグラフィカル・ユーザ・インタフェース・ウィンドウ660は,ユーザに楕円661を描くように指示する例を示す。図8乃至図11に示される例の各々において,自動構成ユーティリティはユーザの動作時間,及び入力装置を操作する意思を追跡する。これらの例は網羅的ではなく,例証的なものに過ぎず,従って本発明はここで示される特定の例に限定されるものではない。
【0049】ユーザ入力データが捕獲されるとき,自動構成ユーティリティは,様々な幾何学図形をトレースするユーザの能力を分析し,それをユーザが幾何学図形に最も近づくことを可能にする適切な設定,パラメータ,及びアルゴリズムに変換する。例えば,筋肉の震えを有するユーザは,まっすぐな線ではなく,ぎざぎざの線を作成し得る。自動構成ユーティリティは,幾何学図形をたどるように,入力装置を操作するユーザの不能を感知する。自動構成ユーティリティは次に,適切な設定,パラメータまたはアルゴリズムを作成する。そしてこれらが適応入力フィルタ440により,ユーザにより生成される入力データに適用されるとき,入力データがマッサージングまたはフィルタリングされ,あたかもユーザが幾何学図形を近似するように入力装置を操作したかのように,処理後の入力データがオペレーティング・システム400を介して,アプリケーション410に提供される。
【0050】このように,データ処理システム300は,特定ユーザの嗜好及び身体条件を補償するように訓練され,ユーザが様々な入力タスクを完了する支援をする。適応入力プロファイル470は,特定ユーザの能力が変化するとき,事前設定または再訓練されるように変更され得る。身体障害者のために,適応入力フィルタ440はカストマイズ化された物理ハードウェアの必要性を除去し得る。別の極端でない状況では,適応入力フィルタ440は単に特定ユーザの利き手を補償し得る。例えば,左利きのユーザが,右利きの人用に特定的に設計されたVRグローブを使用するかもしれない。VRグローブは左利きの人にとって,データを不適切に生成し得るので,カストマイズ化適応入力プロファイル470が作成され,左利きの人により生成される不整合な入力を補償する。この場合,左利きの人及び右利きの人用に,別々のVRグローブは要求されない。
d「【0051】適応入力フィルタ440が特定ユーザの利き手を補償するために,適応入力フィルタ440は,カストマイズ化適応入力プロファイル470内の利き手パラメータを要求する。利き手パラメータは様々な態様でセットされ得る。例えば,自動構成ユーティリティが,図7に示されるカストマイズ化プロセスの一部の間に,利き手を検出する。前述のように,図7はユーザに表示されるアイコンをクリックするように指示する。アイコンを選択またはクリックするユーザの方法を分析することにより,自動構成ユーティリティは,入力装置上の選択機構に対するユーザの嗜好を判断し,それに従いパラメータをセットする。」
(イ)上記(ア)a及びbより,引用文献2には,グラフィカル・ユーザ・インタフェースを備えたコンピュータ・システムであるデータ処理システム300において,ユーザが様々な入力装置を操作または使用するための,ユーザの身体機能を学習すること,及びユーザは,上記入力装置としてタッチスクリーンを選択できることが記載されていると認められる。
また,上記(ア)cより,引用文献2には,タッチスクリーンを入力装置として使用可能な上記データ処理システム300において,表示されるアイコンを選択又はクリックするようにユーザに要求して,入力装置を操作するユーザの嗜好を測定すること,線,円,矩形,楕円といった様々な幾何学図形を描くようにユーザに要求して,ユーザの身体能力を測定すること,これらによって,適切なユーザ・パラメータを生成し,特定のユーザのカストマイズ化適応入力プロファイル470を作成または変更すること,及び上記カストマイズ化適応入力プロファイル470により,特定ユーザの利き手を補償することが記載されていると認められる。
そして,上記(ア)dより,引用文献2には,上記カストマイズ化適応入力プロファイル470を作成または変更するカストマイズ化プロセスの一部の間に,利き手を検出すること,及び上記カストマイズ化適応入力プロファイル470内にセットされる利き手パラメータが,様々な態様でセットされ得ることが記載されていると認められる。
ところで,幾何学図形を右手で描く場合と左手で描く場合とで,その軌跡に差異が生じることは,原出願の出願日前,よく知られていたもので,常識といえる事項であり,このことは,例えば,原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,万井正人,谷口豊子,伊藤一生,菊池邦雄”人の作業特性としての右利き,左利きの研究”,人間工学,一般社団法人 日本人間工学会,Vol.7,No.2(1971年)の次の記載によっても裏付けられる。
「以上のことから,器用さを要しない比較的単純な動作では左右の差が小さく,多くの筋肉群の逐次的な協応や時間的調整を要する作業動作(器用さ)では,その差が大きくなる傾向をもつものと思われる。
この傾向は指尖の運動軌跡を画いたchronocyclegraphにもみられる。図5a,5bは8の字と渦巻を画いたもので,規則性の点で右手は左手より明らかに秀れている(被検者は右利き)。」(105頁左欄5ないし12行)


そうすると,引用文献2の記載において,表示されるアイコンを選択又はクリックするユーザの方法を分析することに限らず,線,円,矩形,楕円といった様々な幾何学図形の線図を描くユーザの軌跡を分析することによっても,ユーザの利き手を検出できることは,原出願の出願日前,常識といえる上記の事項に照らせば,引用文献2の記載から明白であり,引用文献2記載されているに等しい事項と認められる。
以上から,引用文献2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「グラフィカル・ユーザ・インタフェースを備えたコンピュータ・システムであるデータ処理システムにおいて,入力装置であるタッチスクリーン上に線図を描くユーザ操作の軌跡に基づいて,ユーザの利き手を検出すること。」
イ 引用文献3及び4の記載と周知技術
(ア)当審拒絶理由通知で引用された,原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献3には,図面とともに,次の記載がある。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,データ入力装置に係り,詳細には,データの入力領域の表示パターン制御を行うデータ入力装置,およびその処理プログラムを格納した記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近時,PDA(Personal Digital Assistant)などの小型携帯用端末装置が急速に普及している。PDAの中には,タッチパネルなどの入力部に対して,備え付けの入力用ペンなどで直接手書きの文字を入力することによりデータの入力を行うものがある。そして,入力された手書き文字は,手書き文字入力認識装置により文字コードに変換され,該変換結果の文字コードは,データとして所定の入力フィールドへ出力される。」
・「【0017】この図1において,データ入力装置1は,CPU(Central Processing Unit)2,入力装置3,RAM(Random Access Memory)4,表示装置5,タブレット6,タブレット検出部7,記憶装置8,および記憶媒体9によって構成されており,記憶媒体9を除く各部はバス10によって接続されている。
・・・
【0019】また,CPU2は,記憶媒体9からRAM4にロードされたプログラムのコードにしたがい,後述する,表示装置5の表示画面上に右利き用手書きペンパッド(図4参照)若しくは左利き用手書きペンパッド(図5参照)を表示する右利き用手書きペンパッド/左利き用手書きペンパッド表示処理を行う。
・・・
【0023】表示装置5は,液晶表示パネルなどにより構成され,CPU2に制御され,各種表示データを表示する。また,この表示装置5は,タブレット6と一体となっており,データを入力する領域を示す右利き用手書きペンパッドなどを表示する。
【0024】タブレット6は,一定の面積を持った平面状の入力部であり,このタブレット6は透明感圧式で,表示装置5と一体になっている。
・・・
【0034】図4に一例を示した右利き用手書きペンパッド40では,キー領域42,モード操作領域43,認識候補表示部操作領域45,手書き入力領域47の各入力領域は,右利き用手書きペンパッド40内の右側に配置され,手書き入力領域47では,画面左から右方向へ,手書き入力される。
・・・
【0039】図5に一例を示した左利き用手書きペンパッド50では,キー領域52,モード操作領域53,認識候補表示部操作領域55,手書き入力領域57の各入力領域は,左利き用手書きペンパッド50内の左側に配置され,手書き入力領域57では,画面右から左方向へ,手書き入力される。」
(イ)当審拒絶理由通知で引用された,原出願の出願日前に米国内において頒布された刊行物である引用文献4には,図面とともに,次の記載がある。
・「[0001] The present invention is generally directed to electronic input devices and, is more particularly directed to software implemented input applications.
・・・
[0002] The advent of touch screen technology laid the foundation for "soft" input devices. Soft input devices, such as keypads, keyboards, and the like, are generally input devices that are implemented in software and are the interface between the computer functionality and typically a touch screen operable by the user. ・・」
(当審訳: [0001]この発明は一般に,電子入力デバイスに関し,そして,特にソフトウェア実行された入力アプリケーションに関します。
・・・
[0002]タッチスクリーン技術の出現は,”ソフト”入力デバイスの基盤を築きました。例えばキーパッド,キーボード,などの,ソフト入力デバイスは,通常,ソフトウェアで実現される入力デバイスであり,また,コンピュータ機能とユーザーによって操作可能な典型的にはタッチスクリーンとの間のインターフェースです。・・・)
・「[0018] FIG. 1 is a diagram illustrating personal data assistant (PDA) 10 configured with stationary soft keyboard 100 . ・・・
[0019] The problems in the current embodiments of soft keyboards is that the manufacturers have generally created a single, static keyboard configuration for user input. In PDA#s, the soft keyboard has typically been placed at the very bottom of the display screen. The early models of tablet PC also have placed the soft keyboard at the foot of the tablet. While these locations are generally acceptable for the majority of users, they do not support visually impaired individuals, or individuals that require different keyboard configurations, or individuals who simply desire to customize their workspace. Furthermore, left-handed individuals may experience difficulties entering information in keyboards situated and configured for the right-handed world.
・・・
[0021] FIG. 2 is a diagram illustrating PDA 20 with user-configurable software keyboard 200 implemented according to the teachings of representative embodiments of the present invention. In order to overcome the limitations of the stationary soft keypads, PDA 20 includes user-configurable software keyboard 200 which is rendered with the appropriate graphical data into an independent free-floating window on display 202 . By actuating locking key 201 , the user can change the visual attributes and appearance by re-sizing and/or moving software keyboard 200 to any part of display 202 . ・・・
・・・
[0023] In addition to a user changing the size of software keyboard 200 , if the user is manipulating or entering text on the upper portion of display 202 , he or she may wish to move the entire keyboard from its first position 203 , at the bottom of display 202 , to position 204 just below the top and to the left side of display 202 by changing the positioning data used to render display 202 . By moving software keyboard 200 to position 204 , the user decreases the distance for typing and watching the input, and for manipulating data. Also, left-handed users may desire to move the position of software keyboard 200 to better facilitate data entry for those users. Allowing software keyboard 200 to be moved and customized by the user at runtime, the ergonomics of the data entry may be increased. ・・・」
(当審訳: [0018]図1は,固定されたソフトウェア・キーボード100が設定されたPDA10を示す図です。・・・
[0019]この例示したソフトウェア・キーボードにおける問題は,製造者が,ユーザー入力のために,単一の固定されたキーボードの設定しかしていなかった点にあります。PDAでは,ソフトウェア・キーボードは,概して,表示画面の最下部に置かれていました。タブレット型PCの初期モデルでも,ソフトウェア・キーボードを,タブレットの最下部に置いていました。このような配置は,大多数のユーザーには受け容れられる一方で,視覚障害のある人たち,異なるキーボードの設定を必要とする人たち,ただ単に,作業領域のカスタマイズをしたい人たちはサポートしていません。さらに,左利きの人々は,右利き用に配置され設定されたキーボードで情報を入力することの困難さを経験しているかもしれません。
・・・
[0021]図2は,この発明の代表的実施例の教えによって実施された,ユーザー設定できるソフトウェア・キーボード200を有するPDA20を例示している図です。据え付けのソフト・キーパッドの限界を克服するために,PDA20は,ディスプレイ202上の独立した浮動性のウインドウに適切なグラフィック・データで描かれる,ユーザー設定できるソフトウェア・キーボード200を有します。ロック用キー201を作動させることによって,ユーザーは,ソフトウェア・キーボード200のディスプレイ202上の如何なる部分の方への大きさの変更および/または移動によって,視覚上の特質と外観を変えることができます。・・・
・・・
[0023]ソフトウェア・キーボード200の寸法を変えているユーザーに加えて,ユーザーがディスプレイ202の上部でテキストを操作しているまたは入力しているならば,彼または彼女は,ディスプレイ202の底部であるその最初の位置203から,ちょうど頂点部の下である位置204へ,そして,ディスプレイ202の左側へ,描画ディスプレイ202により使用される位置決めデータの変更により,全てのキーボードを動かしたいかもしれません。ソフトウェア・キーボード200を位置204へ動かすことによって,ユーザーは,入力をタイプしそして見るための,また,データを操作するための距離を減少させます。また,左利きのユーザーは,それらのユーザーのためにデータ入力をより容易にするためにソフトウェア・キーボード200の位置を動かすことを望むかもしれません。実行時に,ソフトウェア・キーボード200がユーザーによって動かされ,カスタマイズされるのを許可することは,データ入力の使い勝手を増加させるかもしれません。・・・」
(ウ)上記(ア)及び(イ)より,操作キー群を表示する表示部と,上記操作キー群に対する入力操作を受け付けるタッチパネルとを備える携帯端末装置は,引用文献3及び4にみられるように,原出願の出願日前,当業者には周知の技術(以下「周知技術」という。)と認められる。
そして,上記(ア)及び(イ)より,携帯端末装置において,グラフィカル・ユーザ・インタフェースを,ユーザの利き手に応じて変更することが望ましいことは,引用文献3及び4にみられるように,原出願の出願日前,当業者にはよく知られた事項と認められる。

3 本願発明と引用発明との対比
(1)対比
ア 本願発明の「携帯端末装置」と引用発明1の「入力装置」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「装置」である点で共通し,引用発明1における「各種操作キー」,「カラーCRT5b」,「タッチセンサパネル5a」,「タッチセンサパネル5aを指で触れることにより,所望の情報の入力を行なう」,及び「各種操作キーの画面表示の選択,切換方法」は,それぞれ,本願発明の「操作キー群」,「表示部」,「タッチパネル」,「タッチパネルを介して入力操作する」,及び「操作キー群レイアウト方法」に相当するといえる。
そうすると,後述する相違点に係る構成を除き,本願発明と引用発明とは,「操作キー群を表示部に表示して,タッチパネルを介して入力操作するようにした装置における操作キー群のレイアウト方法」である点で共通するということができる。
イ 引用発明1における「利用者の利き腕を認識」することは,本願発明の「ユーザの入力操作が右手操作によるものか左手操作によるものかを決定」することに相当するといえる。また,引用発明1における「該認識結果に基づいて各種操作キーをCRT5bに表示する」ことは,本願発明の「該決定に基づいて操作キー群を前記表示部に表示する」ことに相当するといえる。
そうすると,後述する相違点に係る構成を除き,本願発明と引用発明とは,「ユーザの入力操作が右手操作によるものか左手操作によるものかを決定し,該決定に基づいて操作キー群を前記表示部に表示する」点で共通するということができる。

(2)一致点及び相違点
上記(1)から,本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は,それぞれ以下のとおりであると認められる。
ア 一致点
「操作キー群を表示部に表示して,タッチパネルを介して入力操作するようにした装置における操作キー群のレイアウト方法であって,
ユーザの入力操作が右手操作によるものか左手操作によるものかを決定し,該決定に基づいて操作キー群を前記表示部に表示する装置における操作キー群レイアウト方法。」
イ 相違点
・相違点1
一致点における「ユーザの入力操作が右手操作によるものか左手操作によるものかを決定」するとの構成について,本願発明は,「タッチパネル上に線図を描くユーザ操作の軌跡に基づいて」上記の決定をするのに対し,引用発明1は,タッチセンサパネル5a(本願発明の「タッチパネル」に相当。)にて利用者の指がタッチした位置の位置情報に基づいて上記の決定をするものである点。
・相違点2
一致点における「装置」との構成について,本願発明は「携帯端末装置」であるのに対し,引用発明1は,現金自動預出金機等で用いられることが例示されている「入力装置」である点。

4 相違点についての検討
(1)相違点1について
上記2(2)アのとおり,引用文献2には,グラフィカル・ユーザ・インタフェースを備えたコンピュータ・システムであるデータ処理システムにおいて,入力装置であるタッチスクリーン上に線図を描くユーザ操作の軌跡に基づいて,ユーザの利き手を検出すること(引用発明2)が記載されている。
そして,引用発明1は,利用者が,タッチセンサパネル5aを指で触れることにより,所望の情報が入力されるとともに,上記タッチセンサパネル5aに対する接触から利用者の利き腕を認識する入力装置に関するものであるから,引用発明1と引用発明2は,技術分野及び作用・機能の点で共通するといえる。
そうすると,引用発明1において利用者の利き腕を認識するにあたり,利用者の利き腕を,上記タッチセンサパネル5aにて利用者の指がタッチした位置の位置情報に基づいて決定することに代えて,上記タッチパネル5a上に線図を描くユーザ操作の軌跡に基づいて決定するようにすること(相違点1に係る構成とすること)は,引用発明2を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものということができる。
以上から,相違点1に係る構成は,引用発明1において,引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

(2)相違点2について
上記2(2)イのとおり,操作キー群を表示する表示部と,上記操作キー群に対する入力操作を受け付けるタッチパネルとを備える携帯端末装置は,原出願の出願日前,周知技術であり,また,携帯端末装置において,グラフィカル・ユーザ・インタフェースを,ユーザの利き手に応じて変更することが望ましいことも,原出願の出願日前,当業者にはよく知られた事項と認められる。
そうすると,これらの点に鑑みれば,引用発明1に,引用文献2記載の発明を適用して得られた入力装置を,いかなる装置に用いるかは,単なる用途の限定であって,携帯端末装置に用いることは,当業者が適宜選択し得るものであり,また,それに応じて,上記入力装置の構成を適宜変更することも,当業者であれば普通に行い得るものである。
以上から,相違点2に係る構成は,引用発明1に引用文献2記載の発明を適用する際に,当業者が適宜なし得たものである。

5 本願発明の作用効果について
本願明細書の記載によれば,本願発明は,タッチパネル上に表示される操作キー群のレイアウトをユーザに応じて設定することができ,使い勝手を向上できる,携帯端末装置における操作キー群のレイアウト方法を提供することを目的とし,これを達成した(段落【0009】及び【0015】)ものである
他方,上記2(1)ア(イ)によれば,引用発明1は,利用者の利き腕を正確かつ迅速に判断でき,利用者が右利きあるいは左利きであっても操作しやすい入力装置を提供することを目的としたもので,上記2(1)アより,引用発明1は,タッチセンサパネル5aにて利用者の指がタッチした位置の位置情報に基づいて利用者の利き腕を認識し,該認識結果に基づいて各種操作キーをCRT5bに表示することで,上記の目的を達成したものと認められる。
そうすると,引用発明1は,本願発明と同様の作用効果を奏するものと認められ,両者の間に,作用効果の点で格別の相違があるとはいえない。
以上から,本願発明の上記の目的及び効果は,格別のものとはいえない。

6 小括
したがって,本願の請求項5に係る発明(本願発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明1),引用文献2記載の発明(引用発明2),並びに引用文献3及び4にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第3 結言

以上検討したとおり,本願の請求項5に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-20 
結審通知日 2015-01-27 
審決日 2015-02-09 
出願番号 特願2011-265292(P2011-265292)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸次 一夫  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 高野 美帆子
河口 雅英
発明の名称 携帯端末装置および携帯端末装置における操作キー群のレイアウト方法  
代理人 杉村 憲司  
代理人 大倉 昭人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ