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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1299165 |
審判番号 | 不服2014-2046 |
総通号数 | 185 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-02-04 |
確定日 | 2015-03-26 |
事件の表示 | 特願2012-141918「撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日出願公開、特開2012-249298〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 経緯 1.手続 本件出願は、平成20年8月13日に出願した特願2008-208497号の一部を平成24年6月25日に新たな特許出願としたものであって、手続の概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成25年 4月 5日(起案日) 手続補正 :平成25年 6月 5日 拒絶理由通知《最後》 :平成25年 7月 8日(起案日) 手続補正 :平成25年 9月17日 補正却下 :平成25年10月28日 拒絶査定 :平成25年10月28日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成26年 2月 4日 手続補正 :平成26年 2月 4日 前置審査報告 :平成26年 2月26日 2.査定 原査定の理由は、概略、以下のとおりである。 本願の請求項1ないし請求項5に係る発明(平成25年6月5日付け手続き補正後)は、いずれも、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の各刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記(刊行物) 刊行物イ:特開2005-159708号公報 刊行物ロ:特開2005-175684号公報 刊行物ハ:特開2003-244620号公報 刊行物ニ:特開2008-118289号公報 刊行物ホ:特開2007-208922号公報 第2 補正の却下の決定 平成26年2月4日付けの手続補正について次のとおり決定する。 《結論》 平成26年2月4日付けの手続補正を却下する。 《理由》 1.補正の内容 平成26年2月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする下記の補正事項を含むものである(アンダーラインは補正箇所)。 (補正事項) 請求項1について 「被写体に関する情報を取得する情報取得部と、 前記情報に基づいて、人物以外を対象にした撮影モードを、人物を撮影するのに適した撮影モードに切り替える使用モード切り替え制御を行う制御部とを備え、 前記情報取得部は、被写体における顔検出を行い、被写体における顔の位置、又は顔と判断された領域の占める割合を取得し、 前記制御部は、前記位置が被写体の中心付近に存在する場合、又は被写体において前記領域が占める割合が大きい場合に、前記使用モード切り替え制御を行うことを特徴とする撮像装置。」(補正前) とあるのを、 「画像データを出力する撮像素子と、 前記画像データから被写体に関する情報を取得する情報取得部と、 前記情報に基づいて、人物以外を対象にした撮影モードを、人物を撮影するのに適した撮影モードに切り替える使用モード切り替え制御を行う制御部と、 前記画像データをスルー画像として表示する表示部とを備え、 前記情報取得部は、前記表示部が前記スルー画像を表示している期間に、前記画像データに基づいて被写体における顔検出を行って顔と判断された領域の占める割合を取得し、 前記制御部は、被写体において前記領域が占める割合が大きい場合に、前記使用モード切り替え制御を行うことを特徴とする撮像装置。」(補正後) と補正する。 2.本件補正の適合性 (2-1)補正の範囲 上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書の記載(段落【0015】,【0017】,【0019】-【0021】,【0028】)に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。 (2-2)補正の目的 上記補正事項は、「撮像装置」が「撮像素子」及び「表示部」を備えることを限定し、さらに「情報取得部」及び「制御部」の内容を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2-3)独立特許要件 上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、以下、独立特許要件について検討する。 ア.補正後の請求項1に係る発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、下記のとおりである。 【請求項1】 画像データを出力する撮像素子と、 前記画像データから被写体に関する情報を取得する情報取得部と、 前記情報に基づいて、人物以外を対象にした撮影モードを、人物を撮影するのに適した撮影モードに切り替える使用モード切り替え制御を行う制御部と、 前記画像データをスルー画像として表示する表示部とを備え、 前記情報取得部は、前記表示部が前記スルー画像を表示している期間に、前記画像データに基づいて被写体における顔検出を行って顔と判断された領域の占める割合を取得し、 前記制御部は、被写体において前記領域が占める割合が大きい場合に、前記使用モード切り替え制御を行うことを特徴とする撮像装置。 イ.引用例の記載 (a)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物イである特開2005-159708号公報(以下「引用例1」という。)には、「デジタルカメラ及び画像処理装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 《技術分野》 「【0001】 本発明は、画像データから顔検出を行う機能を有するデジタルカメラ及び画像処理装置に関する。」 《背景技術》 「【0002】 デジタルカメラは、人物モード、風景モード、及び夜景モード等、撮影する被写体や撮影状況に応じて複数の撮影モードが設定可能であり、撮影したい被写体に応じた撮影モードを設定することで、最適な画像を得ることができるようになっている。例えば、人物を撮影するときは人物撮影に最適な撮影条件が設定される人物モードで撮影することで、最適な画像を得ることができる。従来、撮影する場所や被写体に応じて、特定の撮影モードが自動的に設定されるデジタルカメラが知られている(特許文献1参照)。 【0003】 【特許文献1】特開平7-13225号公報」 《発明が解決しようとする課題》 「【0004】 複数の撮影モードが設定可能なデジタルカメラでは、例えば、人物モードに設定しているのにも関わらず風景を撮影したり、風景モードに設定しているのにも関わらず人物を撮影したりすると、撮影によって得られる画像が撮影者の意図したものとは異なってしまうという問題がある。」 「【0006】 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撮影画像データに基づく画像が、撮影者の意図しない画像となってしまうのを防ぐことが可能なデジタルカメラ及び画像処理装置を提供することを目的とする。」 《課題を解決するための手段》 「【0007】 本発明のデジタルカメラは、被写体を撮影する撮影手段と、前記撮影手段の撮影準備動作時に前記被写体を撮影して得られる画像データから前記被写体に顔が含まれているか否かを判定する顔判定手段と、前記撮影手段の撮影モードと前記顔判定手段による判定結果とに応じて、前記撮影モードが最適でないことを通知するための通知情報を出力する出力手段とを備える。 又、本発明のデジタルカメラは、前記撮影モードが人物モードを含み、前記出力手段が、前記撮影モードが前記人物モードであり、前記顔判定手段により前記被写体に顔が含まれていないと判定された場合に、前記通知情報を出力するものである。 【0008】 この構成により、撮影手段の撮影モードが人物モードになっているにも関わらず、被写体に顔が含まれていない場合、人物モードが最適でないことを通知するための通知情報を出力する。このため、被写体に適さない撮影モードでその被写体を撮影してしまうのを防ぐことができ、撮影した画像が使用者の意図しないものとなってしまうことを防ぐことができる。 【0009】 又、本発明のデジタルカメラは、前記撮影モードが風景モードを含み、前記出力手段が、前記撮影モードが前記風景モードであり、前記顔判定手段により前記被写体に顔が含まれていると判定された場合に、前記通知情報を出力するものである。 【0010】 この構成により、撮影手段の撮影モードが風景モードになっているにも関わらず、被写体に顔が含まれている場合、風景モードが最適でないことを通知するための通知情報を出力する。このため、被写体に適さない撮影モードでその被写体を撮影してしまうのを防ぐことができ、撮影した画像が使用者の意図しないものとなってしまうことを防ぐことができる。 【0011】 又、本発明のデジタルカメラは、前記顔判定手段が、前記撮影モードが前記風景モードである場合、前記被写体の中心付近を対象に前記顔が含まれているか否かの判定を行うものである。 【0012】 この構成により、撮影手段の撮影モードが風景モードになっており且つ被写体の中心付近に顔がある場合に、通知情報を出力する。被写体に顔が含まれていても、例えば、被写体の中心付近以外に顔が含まれている場合等は、人物がメインの被写体とは考えにくい。そこで、上記のように、被写体の中心付近を顔判定手段の判定対象とすることで、より正確に通知を行うことができる。 【0013】 又、本発明のデジタルカメラは、前記出力手段が、前記通知情報と共に、前記撮影モードを他の撮影モードに切り替えるよう促す情報を出力するものである。 【0014】 この構成により、例えば、現在の撮影モードを最適な撮影モードに切り替えるよう促す情報を出力することで、使用者は、どの撮影モードが最適かを簡単に知ることができ、撮影時の利便性を向上させることができる。 【0015】 又、本発明のデジタルカメラは、前記出力手段による前記通知情報の出力後、前記撮影モードを他の撮影モードに切り替えるモード切り替え手段を備える。」 《発明の効果》 「【0022】 本発明によれば、撮影画像データに基づく画像が、撮影者の意図しない画像となってしまうのを防ぐことが可能なデジタルカメラ及び画像処理装置を提供することができる。」 《発明を実施するための最良の形態》 「【0023】 (第一実施形態) 図1は、本発明の第一実施形態を説明するためのデジタルカメラの概略構成を示す図である。 図1のデジタルカメラ100は、撮像部1と、アナログ信号処理部2と、A/D変換部3と、駆動部4と、デジタル信号処理部6と、圧縮/伸張処理部7と、表示部8と、システム制御部9と、内部メモリ10と、メディアインタフェース11と、記録メディア12と、操作部13とを備える。デジタル信号処理部6、圧縮/伸張処理部7、表示部8、システム制御部9、内部メモリ10、及びメディアインタフェース11は、システムバス14に接続されている。 【0024】 撮像部1は、撮影レンズ等の光学系、絞り、及びCCDイメージセンサ等の撮像素子によって被写体の撮影を行うものであり、アナログの撮像信号を出力する。撮像部1は、システム制御部9で決定された撮影条件(撮影レンズ位置、絞り値、シャッタ速度等)にしたがって撮影を行う。 【0025】 アナログ信号処理部2は、撮像部1で得られた撮像信号に所定のアナログ信号処理を施す。A/D変換部3は、アナログ信号処理部2で処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換部3の出力は、いわゆるRAW画像データとしてデジタル信号処理部6に送られる。 【0026】 撮影に際しては、駆動部4を介して撮像部1の制御が行われる。撮像素子として利用されるCCDイメージセンサ等の固体撮像素子は入射光に対しアナログ電圧信号を出力する。固体撮像素子は、操作部13の一部であるレリーズボタン(図示せず)の操作によるレリーズスイッチ(図示せず)オンを契機として、所定のタイミングで、駆動部4に含まれるタイミングジェネレータ(図1ではTGと記載)からの駆動信号によって駆動される。駆動部4は、システム制御部9によって所定の駆動信号を出力する。 【0027】 デジタル信号処理部6は、A/D変換部3からのデジタル画像データに対して、操作部13によって設定された動作モードに応じたデジタル信号処理を行う。デジタル信号処理には、ホワイトバランス調整処理やガンマ補正処理等が含まれる。 【0028】 圧縮/伸張処理部7は、デジタル信号処理部6で得られたY/Cデータに対して圧縮処理を施すとともに、記録メディア12から得られた圧縮画像データに対して伸張処理を施す。 【0029】 表示部8は、例えばLCD表示装置を含んで構成され、撮影されてデジタル信号処理を経た画像データに基づく画像を表示する。記録メディア12に記録された圧縮画像データを伸張処理して得た画像データに基づく画像の表示も行う。また、撮影時のスルー画像、デジタルカメラの各種状態、操作に関する情報の表示等も可能である。 【0030】 内部メモリ10は、例えばDRAMであり、デジタル信号処理部6やシステム制御部9のワークメモリとして利用される他、記録メディアに12に記録される画像データを一時的に記憶するバッファメモリや表示部8への表示画像データのバッファメモリとしても利用される。メディアインタフェース11は、メモリカード等の記録メディア12との間のデータの入出力を行うものである。 【0031】 操作部13は、デジタルカメラ使用時の各種操作を行うものであり、レリーズボタンも含まれる。 【0032】 システム制御部9は、所定のプログラムによって動作するプロセッサを主体に構成され、撮影動作を含むデジタルカメラ100全体の制御を行う。 【0033】 システム制御部9は、撮像部1の撮影準備動作時に、撮像部1により被写体を撮影して得られる画像データから、被写体に顔が含まれているか否かを判定する。システム制御部9は、上記画像データから顔検出処理により顔エリアを検出し、検出した顔エリアについて、顔らしさの度合いが閾値を越えているものがあった場合に、被写体に顔が含まれていると判定し、閾値を越えているものがなかった場合に、被写体に顔が含まれていないと判定する。顔検出処理は、テンプレートマッチング処理等の公知の技術により行うことができる。 【0034】 撮影準備動作時とは、例えば、レリーズボタンが半押しされて、システム制御部9が撮像部1からの画像信号により撮像部1の撮影条件を決定する時や、使用者により所定の撮影モードが設定された後に表示部8にスルー画像が表示されている間のことを示す。つまり、システム制御部9は、レリーズボタンが半押しされた時点で上記判定を行うか、又は、スルー画像が表示されている間、常に上記判定を行う。 【0035】 システム制御部9は、撮像部1に設定されている撮影モードを判別する。デジタルカメラ100で設定可能な撮影モードは、人物を撮影するのに最適な人物モード、風景を撮影するのに最適な風景モード、夜景を撮影するのに最適な夜景モード、スポーツシーンを撮影するのに最適なスポーツモード、及びカメラ任せの全自動モード等が含まれる。デジタルカメラ100では、これらの撮影モード毎に撮影条件が異なるものとなっている。 【0036】 システム制御部9は、被写体に顔が含まれているか否かの判定結果と上記判別した撮影モードとに応じて、現在設定されている撮影モードが最適ではないことを通知するための通知情報を表示部8に出力する。システム制御部9は、通知情報を生成して表示部8に出力するようにしても良いし、内部メモリ10に記憶しておいた通知情報を読み出して表示部8に出力するようにしても良い。 【0037】 システム制御部9は、通知情報の出力後、設定されている撮影モードを他の撮影モードに切り替える。 【0038】 以下、デジタルカメラ100の動作について説明する。 図2は、本発明の第一実施形態を説明するためのデジタルカメラの動作フローを示す図である。 使用者によりいずれかの撮影モードが設定され(S201)、撮影準備動作を開始するためにレリーズボタンが半押しされると(S202)、デジタルカメラ100は、S201で設定された撮影モードを判別する。 【0039】 撮影モードが人物モードであった場合(S203:YES)、デジタルカメラ100は、撮像部1により撮影中の被写体に顔が含まれるか否かを判定する。被写体に顔が含まれていない場合(S204:NO)、デジタルカメラ100のシステム制御部9は通知情報を表示部8に出力する。これにより、表示部8に通知情報に基づくメッセージが表示される(S205)。このときの表示部8の画面表示例を図3に示す。 【0040】 図3に示すように、表示部8には、「人物モードになっています。このモードは最適ではありません」といった内容のメッセージが表示される。 【0041】 図3に示すメッセージを表示させた後、デジタルカメラ100は、S201で設定された人物モードを風景モードに切り替える(S206)。そしてレリーズボタンが全押しされると、風景モードに応じた撮影条件で被写体を撮影し、撮影により得られた画像データを記録メディア12に記録して、撮影動作を終了する。 【0042】 一方、S203において、撮影モードが人物モードでなく(S203:NO)、風景モードであった場合(S207:YES)、デジタルカメラ100は、撮像部1により撮影中の被写体に顔が含まれるか否かを判定する。被写体に顔が含まれている場合(S208:YES)、デジタルカメラ100のシステム制御部9は通知情報を表示部8に出力する。これにより、表示部8に通知情報に基づくメッセージが表示される(S209)。ここで表示されるメッセージは、例えば「風景モードになっています。このモードは最適ではありません」といった内容のものである。 【0043】 メッセージを表示させた後、デジタルカメラ100は、S201で設定された風景モードを人物モードに切り替える(S210)。そしてレリーズボタンが全押しされると、人物モードに応じた撮影条件で被写体を撮影し、撮影により得られた画像データを記録メディア12に記録して、撮影動作を終了する。 【0044】 以上のようにデジタルカメラ100によれば、人物モードに設定されているにも関わらず、被写体に顔が含まれていない(人物がいない)場合には、人物モードが最適な撮影モードではないことを使用者に通知した上で、人物モードを風景モードに切り替える。このため、人物モードが設定されたときの撮影条件で風景を撮影してしまうといったことをなくすことができ、撮影した画像が、使用者の意図しないものとなってしまうのを防ぐことができる。 【0045】 又、デジタルカメラ100によれば、風景モードに設定されているにも関わらず、被写体に顔が含まれている(人物がいる)場合には、風景モードが最適な撮影モードではないことを使用者に通知した上で、風景モードを人物モードに切り替える。このため、風景モードが設定されたときの撮影条件で人物を撮影してしまうといったことをなくすことができ、撮影した画像が、使用者の意図しないものとなってしまうのを防ぐことができる。 【0046】 尚、本実施形態では、図2のS206において、人物モードを風景モードに切り替える例を説明したが、人物モードを風景モード以外の撮影モードに切り替えても良い。S210においても同様に、風景モードを人物モード以外の撮影モードに切り替えても良い。切り替え先の撮影モードは、システム制御部9が被写体に応じて決めても良いし、使用者が設定可能としても良い。 【0047】 又、本実施形態では、撮影モードを強制的に切り替えるようにしたが、使用者による指示があってから、撮影モードを切り替えるようにしても良い。この場合は、S204:NOの場合に、人物モードを風景モードに切り替えるよう促す情報をシステム制御部9により生成し、生成した情報を、通知情報と共に表示部8に出力するようにする。この場合の表示部8の画面表示例を図4に示す。 【0048】 この場合、図4に示すように、表示部8には、「人物モードになっています。このモードは最適ではありません。風景モードに切り替えますか?」といった内容のメッセージが表示される。そして、使用者により画面上のアイコンが操作され、YESが選択されたときのみ、システム制御部9が、撮影モードを切り替えるようにする。これにより、使用者の意図に応じた処理を行うことができる。 【0049】 又、本実施形態において、図2のS204又はS208で顔検出処理を行った結果、顔らしさが閾値を超えた顔エリアを示す枠を、表示部8に表示させているスルー画像上に表示させるようにしても良い。この場合の表示部8の画面表示例を図5に示す。これにより、システム制御部9が、人の顔でないものを顔であると誤判定していた場合等に、そのことを確認することが可能となる。 【0050】 又、本実施形態では、システム制御部9が、S208で判定を行う際、撮像部1で撮影中の被写体の中心付近のみを対象に、顔が含まれているか否かの判定を行うようにするのが好ましい。風景モードに設定されている状態で、被写体に顔が含まれていても、その顔がメインの被写体でない場合には、撮影モードを風景モードから人物モードに切り替えてしまうのは好ましくない。その顔がメインの被写体かどうかは、その顔が被写体の中心付近にあるかどうかで判断できるため、上記のように中心付近のみを対象に、顔があるかどうかの判定を行うことで、使用者に対する通知をより正確に行うことができるようになる。 【0051】 又、本実施形態において、システム制御部9が行う顔検出処理を、デジタル信号処理部6が行うようにしても良い。」 (引用例1の記載、以上) (b)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物ロである特開2005-175684号公報(以下「引用例2」という。)には、「デジタルカメラおよびデジタルカメラの画像取得方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「【0028】 ステップS80において、制御部16は、ステップS40で内部メモリ22に格納された撮影画像に対して、人物の特徴量を解析する人物抽出を実施する。例えば、制御部16は、肌色抽出を実施することにより、撮影画像における人物の顔の大きさおよび位置を特定する。この後、処理はステップS90に移行する。 ステップS90において、制御部16は、撮影モードがオートモードであるか否かを判定する。撮影モードがオートモードである場合、処理はステップS100に移行する。撮影モードがオートモード以外である場合、処理はステップS110に移行する。 【0029】 ステップS100において、制御部16は、ステップS60、S80で実施された画像解析の結果に基づいて被写体の種別を、人物、風景および人物+風景のいずれかに判別する。制御部16は、判別した被写体の種別に対応する人物モード、風景モードおよび人物+風景モードのいずれかを選択する。この後、処理はステップS110に移行する。 なお、本実施形態のデジタルカメラ10は、人物モード、風景モード、人物+風景モードおよびオートモードを有するが、例えば、デジタルカメラ10が人物モード、風景モードおよびオートモードのみを有する(すなわち、人物+風景モードを有していない)場合には、制御部16は、ステップS60、S80で実施された画像解析の結果に基づいて被写体の種別を、人物および風景のいずれかに判別する。制御部16は、判別した被写体の種別に対応する人物モードおよび風景モードのいずれかを選択する。」 (引用例2の記載、以上) (c)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物ハである特開2003-244620号公報(以下「引用例3」という。)には、「画像処理方法および装置並びにプログラム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「【0029】主要部情報取得手段22は、画像データS0により表される画像における人物の顔の有無を判定し、判定結果を主要部情報Mに含める。具体的には、画像データS0から肌色の領域を抽出し、この肌色の領域の面積が予め定められた所定のしきい値Th0以上となる場合に、画像に顔が含まれると判定する。さらに、画像に顔が含まれると判定された場合には、楕円形となる肌色部分の面積を求め、求められた面積を所定のしきい値Th0とは異なる別のしきい値Th1と比較して面積の大小を表す情報すなわち顔のサイズの大小を表す情報を得、これを主要部情報Mに含めてもよい。 【0030】シーン推定手段23は、主要部情報Mおよび撮影情報Tに基づいて、撮影シーンを推定する。主要部情報Mおよび撮影情報Tに応じた撮影シーンを示すテーブルを図2に示す。図2に示すテーブルTはシーン推定手段23に記憶されており、シーン推定手段23はこのテーブルTを参照してシーンを推定する。具体的には、主要部情報Mに含まれる顔の有無を表す情報、撮影情報Tに含まれるフラッシュ情報、被写体距離、撮影倍率およびその他の情報に基づいて、シーンを推定する。なお、その他の情報としては、被写体輝度(BV値)の高低を表す情報を用いるものとする。また、主要部情報Mに顔のサイズを表す情報が含まれている場合には、その情報を用いてもよい。」 「【0032】シーン推定手段23は、テーブルTを参照し、例えば、主要部情報Mに含まれる顔の有無を表す情報が「有」であり、顔のサイズが「大」であり、フラッシュ情報が「Off」である場合には、撮影シーンはNo.1のポートレートのシーンであると推定する。また、主要部情報Mに含まれる顔の有無を表す情報が「有」であり、フラッシュ情報が「On」であり、被写体距離が「近」である場合には、撮影シーンはNo.8の近接ストロボ撮影のシーンであると推定する。そして、推定されたシーンを表すシーン情報Hを階調処理条件設定手段25へ出力する。」 「【0057】また、上記各実施形態においては、主要部情報Mとして顔の有無、顔のサイズを用いているが、顔のような主要部は画像の中央部に存在することが多いため、画像データS0により表される画像の中央部における濃度や色を主要部情報Mとして用いてもよい。また、画像処理条件Gに含まれる濃度変換条件は、主要部の濃度が適切な濃度となるように画像データS0を変換する条件である。したがって、濃度変換条件により画像に含まれる主要部の濃度の状態を把握することができるため、濃度変換条件を主要部情報Mとして用いてもよい。」 (引用例3の記載、以上) ウ.引用例1に記載された発明 (ア)引用例1の前掲段落【0001】、【0023】などの記載によれば、引用例1に記載された発明は、「デジタルカメラ」に関する発明であるといえる。 (イ)引用例1の前掲段落【0024】-【0026】の記載によれば、引用例1のデジタルカメラは、CCDイメージセンサ等の撮像素子によって被写体の撮影を行いアナログの撮像信号を出力する撮像部1、撮像部1で得られた撮像信号に所定のアナログ信号処理を施すアナログ信号処理部2、アナログ信号処理部2で処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換しRAW画像データを出力するA/D変換部3を有しているといえる。すなわち、CCDイメージセンサ等の撮像素子から出力される撮像信号はデジタル変換される前の画像データといえるから、引用例1のデジタルカメラは画像データを出力する撮像素子を有している。 (ウ)引用例1の前掲段落【0029】,【0034】の記載によれば、引用発明は、「撮影時のスルー画像」を表示する「表示部」を有する。 (エ)引用例1の前掲段落【0032】-【0034】、【0050】、【0051】の記載によれば、引用例1のデジタルカメラは、以下の顔検出処理を行う手段を有している。 まず、【0033】の記載によれば、システム制御部9は、撮像部1により被写体を撮影して得られる画像データから、顔検出処理により顔エリアを検出し、検出した顔エリアについて、顔らしさの度合いが閾値を越えているものがあった場合に、被写体に顔が含まれていると判定し、閾値を越えているものがなかった場合に、被写体に顔が含まれていないと判定している。 ここで【0033】には、「顔検出処理は、テンプレートマッチング処理等の公知の技術により行うことができる。」とあるから、上記顔検出処理は、撮像部により撮影された画像データから、テンプレートマッチング処理をおこない、顔エリアを検出し、顔らしさの度合いを得ることであるといえる。 また、【0051】に「本実施形態において、システム制御部9が行う顔検出処理を、デジタル信号処理部6が行うようにしても良い。」とあるから、引用例1のデジタルカメラは、撮像部により撮影された画像データから、テンプレートマッチング処理をおこない、顔エリアを検出し、顔らしさの度合いを得るデジタル信号処理部を備えているといえる。 さらに、上記顔検出処理について、【0033】には「システム制御部9は、撮像部1の撮影準備動作時に、撮像部1により被写体を撮影して得られる画像データから、被写体に顔が含まれているか否かを判定する。」とあり、【0034】には「撮影準備動作時とは、・・・使用者により所定の撮影モードが設定された後に表示部8にスルー画像が表示されている間のことを示す。つまり、システム制御部9は、・・・スルー画像が表示されている間、常に上記判定を行う。」とあるから、スルー画像が表示されている間、常に顔検出処理を行っているといえる。 また、【0050】には「システム制御部9が、S208で判定を行う際、撮像部1で撮影中の被写体の中心付近のみを対象に、顔が含まれているか否かの判定を行うようにするのが好ましい。・・・中心付近のみを対象に、顔があるかどうかの判定を行うことで、使用者に対する通知をより正確に行うことができるようになる。」とあるから、上記顔検出処理は、被写体の中心付近のみを対象に行われているといえる。 以上まとめると、引用例1のデジタルカメラは、撮像部により撮影された画像データから、テンプレートマッチング処理をおこない、顔エリアを検出し、顔らしさの度合いを得るデジタル信号処理部を備え、デジタル信号処理部は、スルー画像が表示されている間、常に、被写体の中心付近のみを対象に上記顔検出処理を行っているといえる。 (オ)引用例1の前掲段落【0035】-【0038】、【0042】-【0044】、【0047】の記載によれば、引用例1のデジタルカメラは、以下のモード切り替えを行うシステム制御部を有している。 すなわち、撮影モードが風景モードであった場合、被写体に顔が含まれるか否かを判定し、被写体に顔が含まれている場合、風景モードを人物モードに切り替えるシステム制御部(【0042】、【0043】)を備えているといえる。 ここで上記被写体に顔が含まれるか否かを判定し、被写体に顔が含まれている場合とは、【0033】の記載によれば、上記画像データから顔検出処理により顔エリアを検出し、検出した顔エリアについて、顔らしさの度合いが閾値を越えている場合といえ、顔らしさの度合いは、デジタル信号処理部により得ているから、上記デジタル信号処理部からの顔らしさの度合いに基づいて、風景モードを人物モードに切り替えるシステム制御部を備えているといえる。 そして、システム制御部は、撮影モードが風景モードであった場合、上記顔らしさの度合いが閾値を越えている場合、風景モードを人物モードに切り替えを行っているといえる。 以上まとめると引用例1のデジタルカメラは、上記デジタル信号処理部からの顔らしさの度合いに基づいて、風景モードを人物モードに切り替えるシステム制御部を備え、システム制御部は、撮影モードが風景モードであった場合、上記顔らしさの度合いが閾値を越えている場合、風景モードを人物モードに切り替えを行っているといえる。 (カ)まとめ 以上(ア)ないし(オ)の記載事項をまとめると、引用例1には以下の発明(以下、引用発明という。)が開示されているといえる。 画像データを出力する撮像素子と、 撮影時のスルー画像を表示する表示部と、 撮像部により撮影された画像データから、テンプレートマッチング処理をおこない、顔エリアを検出し、顔らしさの度合いを得るデジタル信号処理部を備え、デジタル信号処理部は、スルー画像が表示されている間、常に、被写体の中心付近のみを対象に上記顔検出処理を行い、 上記デジタル信号処理部からの顔らしさの度合いに基づいて、風景モードを人物モードに切り替えるシステム制御部を備え、システム制御部は、撮影モードが風景モードであった場合、上記顔らしさの度合いが閾値を越えている場合、風景モードを人物モードに切り替えを行う、 デジタルカメラ。 エ.対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「画像データを出力する撮像素子」は、本件補正発明の「画像データを出力する撮像素子」と相違がない。 (イ)引用発明の「撮像部により撮影された画像データから、テンプレートマッチング処理をおこない、顔エリアを検出し、顔らしさの度合いを得るデジタル信号処理部」の「撮像部により撮影された画像データ」は、撮像素子が出力した画像データであるから、前記画像データである。 また、引用発明の顔エリアを検出して得る「顔らしさの度合い」は被写体に関する情報といえるから、引用発明は、本件補正発明の「前記画像データから被写体に関する情報を取得する情報取得部」を備えているといえる。 (ウ)引用発明の「上記デジタル信号処理部からの顔らしさの度合いに基づいて、風景モードを人物モードに切り替えるシステム制御部」の「上記デジタル信号処理部からの顔らしさの度合い」は、前記情報といえ、引用発明の「風景モード」、「人物モード」は、それぞれ、「人物以外を対象にした撮影モード」、「人物を撮影するのに適した撮影モード」といえるから、引用発明は、本件補正発明の「前記情報に基づいて、人物以外を対象にした撮影モードを、人物を撮影するのに適した撮影モードに切り替える使用モード切り替え制御を行う制御部」を備えているといえる。 (エ)引用発明の「撮影時のスルー画像を表示する表示部」が表示する撮影時のスルー画像は、画像データを出力する撮像素子から得られた画像データであることは明白であるから、前記画像データである。 したがって、引用発明は、本件補正発明の「前記画像データをスルー画像として表示する表示部」を備えているといえる。 (オ)引用発明の「デジタル信号処理部」が本件補正発明の「情報取得部」に相当することは、上記(イ)のとおりであるから、引用発明の「デジタル信号処理部は、スルー画像が表示されている間、常に、被写体の中心付近のみを対象に上記顔検出処理を行」うことは、本件補正発明の「前記情報取得部は、前記表示部が前記スルー画像を表示している期間に、前記画像データに基づいて被写体における顔検出を行」うことに相当することは明らかである。 引用発明の顔検出処理は、上記(イ)で検討したように「顔エリアを検出し、顔らしさの度合いを得る」ことであるから、顔と判断された領域の占める割合を取得していない。 したがって、「顔検出を行」うことに関して、本件補正発明では、「顔検出を行って顔と判断された領域の占める割合を取得し」ているのに対し、引用発明では、「被写体の中心付近のみを対象に顔エリアを検出し、顔らしさの度合いを得る」点で相違する。 (カ)引用発明のシステム制御部は、「撮影モードが風景モードであった場合、上記顔らしさの度合いが閾値を越えている場合、風景モードを人物モードに切り替えを行」っている。 本件補正発明の「被写体において前記領域が占める割合が大きい場合」とは、被写体において顔の占める割合が大きい場合であって、このことは、被写体として顔を撮影することを目的としている場合であるといえる。 この点について、引用発明でも「被写体の中心付近のみを対象に顔エリアを検出し、顔らしさの度合いを得」ていることは、上記(オ)で検討したとおりであるが、被写体の中心付近のみを対象とするのは、引用例1の【0050】に「又、本実施形態では、システム制御部9が、S208で判定を行う際、撮像部1で撮影中の被写体の中心付近のみを対象に、顔が含まれているか否かの判定を行うようにするのが好ましい。風景モードに設定されている状態で、被写体に顔が含まれていても、その顔がメインの被写体でない場合には、撮影モードを風景モードから人物モードに切り替えてしまうのは好ましくない。その顔がメインの被写体かどうかは、その顔が被写体の中心付近にあるかどうかで判断できるため、上記のように中心付近のみを対象に、顔があるかどうかの判定を行うことで、使用者に対する通知をより正確に行うことができるようになる。」とあるように、被写体として顔を撮影することを目的としている場合であることを判定しているといえる。 したがって、引用発明の上記切り替えを行うことは、本件補正発明の「被写体において前記領域が占める割合が大きい場合に、前記使用モード切り替え制御を行うこと」と対比して、「被写体として顔を撮影することを目的としている場合に、前記使用モード切り替え制御を行」っている点で本件補正発明と相違がない。 もっとも、「被写体として顔を撮影することを目的としている場合」が、本件補正発明では、「被写体において前記領域が占める割合が大きい場合」であるのに対し、引用発明では、「上記顔らしさの度合いが閾値を越えている場合」である点で相違する。 (キ)引用発明のデジタルカメラは、本件補正発明の撮像装置といえることは明らかである。 (ク)まとめ(一致点・相違点) 以上まとめると、本件補正発明と引用発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。 (一致点) 画像データを出力する撮像素子と、 前記画像データから被写体に関する情報を取得する情報取得部と、 前記情報に基づいて、人物以外を対象にした撮影モードを、人物を撮影するのに適した撮影モードに切り替える使用モード切り替え制御を行う制御部と、 前記画像データをスルー画像として表示する表示部とを備え、 前記情報取得部は、前記表示部が前記スルー画像を表示している期間に、前記画像データに基づいて被写体における顔検出を行い、 前記制御部は、被写体として顔を撮影することを目的としている場合、前記使用モード切り替え制御を行うことを特徴とする撮像装置。 (相違点) 相違点1 「顔検出を行」うことに関して、本件補正発明では、「顔検出を行って顔と判断された領域の占める割合を取得し」ているのに対し、引用発明では、「被写体の中心付近のみを対象に顔エリアを検出し、顔らしさの度合いを得」ている点。 相違点2 「被写体として顔を撮影することを目的としている場合」が、本件補正発明では、「被写体において前記領域が占める割合が大きい場合」であるのに対し、引用発明では、「上記顔らしさの度合いが閾値を越えている場合」である点。 オ.判断 相違点1、相違点2について 上記イ.(b)で摘記したとおり、引用例2には、撮影画像に対して、肌色抽出を実施することにより、撮影画像における人物の顔の大きさおよび位置を特定し(ステップ80)、その画像解析の結果に基づいて被写体の種別を、人物や風景などのいずれであるか判別し、判別した種別に対応する撮影モードを選択する(ステップ100)技術が記載されており(引用例2の前掲段落【0028】,【0029】,図4)、その撮影画像における顔の大きさを肌色抽出によって特定することは、すなわち撮影画像における顔の肌色領域の占める割合を抽出することであるといえる。 つまり、引用例2には、撮影画像における顔の領域の占める割合を取得し、被写体において顔の領域の占める割合が大きい場合に、被写体の種別を人物と判別して、対応する撮影モードを決定する技術が示されている。 また、上記イ.(c)において摘記したとおり、引用例3には、画像データS0から肌色の領域を抽出し、この肌色の領域の面積が所定のしきい値Th0以上となる場合に、画像に顔が含まれると判定し、撮影シーンがポートレートのシーンであることを特定する技術が記載されており(引用例3の前掲段落【0029】,【0032】,図2)、この引用例3にも、撮影画像における顔領域の占める割合を取得し、被写体において顔領域の占める割合が大きい場合には、撮影シーンがポートレートであるとして撮影種別を決定する技術が示されている。 以上の記載からみて、顔領域の面積が占める割合が大きいとき、人物を撮影するのに適した撮影モードに切り換えることは、本願出願前周知の技術事項であるといえる。 さらに、引用例3の【0057】には「上記各実施形態においては、主要部情報Mとして顔の有無、顔のサイズを用いているが、顔のような主要部は画像の中央部に存在することが多いため、画像データS0により表される画像の中央部における濃度や色を主要部情報Mとして用いてもよい。」と記載されており、撮影の対象が顔であるか否かを判定するのに、顔のサイズを用いることと、顔が画像(被写体)の中央部にあることを検出することは置き換え可能であることが示唆されていることから、引用発明の「被写体の中心付近のみを対象に顔エリアを検出し、顔らしさの度合いを得」て「上記顔らしさの度合いが閾値を越えている場合」に「被写体として顔を撮影することを目的としている」と判定する構成を、本件補正発明の「顔検出を行って顔と判断された領域の占める割合を取得し」、「被写体において前記領域が占める割合が大きい場合」に「被写体として顔を撮影することを目的としている」と判定する構成とすることは当業者が容易になしえたことであるといえる。 カ.効果 以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、補正後発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。 キ.まとめ(独立特許要件) 以上、本件補正発明は、引用例1に記載の発明及び引用例2、3に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (2-4)むすび(補正却下) したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり、決定する。 第3 本願発明について 平成26年2月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項5に係る発明は、明細書及び図面(平成25年6月5日付けの手続補正書により補正された明細書)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのである。 【請求項1】 被写体に関する情報を取得する情報取得部と、 前記情報に基づいて、人物以外を対象にした撮影モードを、人物を撮影するのに適した撮影モードに切り替える使用モード切り替え制御を行う制御部とを備え、 前記情報取得部は、被写体における顔検出を行い、被写体における顔の位置、又は顔と判断された領域の占める割合を取得し、 前記制御部は、前記位置が被写体の中心付近に存在する場合、又は被写体において前記領域が占める割合が大きい場合に、前記使用モード切り替え制御を行うことを特徴とする撮像装置。 第4 検討 1.引用例の記載 (a)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物イである特開2005-159708号公報(以下「引用例1」という。)には、上記「第2 2.(2-3)イ.引用例の記載(a)」で述べたとおりの記載、及び上記「第2 2.(2-3)ウ.引用発明(引用例1記載の発明)」で述べたとおりの引用発明が記載されている。 (b)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物ロである特開2005-175684号公報(以下「引用例2」という。)には、上記「第2 2.(2-3)イ.引用例の記載(b)」で述べたとおりの記載がある。 (c)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物ハである特開2003-244620号公報(以下「引用例3」という。)には、上記「第2 2.(2-3)イ.引用例の記載(c)」で述べたとおりの記載がある。 2.対比・判断 本件補正発明は、本願発明に、上記「第2 1.」の補正事項の補正をしたものである。 したがって、本願発明は、本件補正発明から上記補正事項の補正を戻す関係にあり、その内容は、「撮像装置」から「撮像素子」及び「表示部」を削除し、「情報取得部」及び「制御部」に関する限定事項を削除する関係にある。 そして、本願発明と引用発明との対比は上記「第2 2.(2-3)エ.対比」と、上記削除される構成を除いて同様に対比される。 そうすると、本願発明の特定事項の全てを含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が上記「第2 2.(2-3)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び引用例2,3に示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び引用例2,3に示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のように、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2,3に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、残る請求項2ないし請求項5に係る発明について特に検討をするまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-01-21 |
結審通知日 | 2015-01-27 |
審決日 | 2015-02-09 |
出願番号 | 特願2012-141918(P2012-141918) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮下 誠 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
渡邊 聡 豊島 洋介 |
発明の名称 | 撮像装置 |
代理人 | 小倉 洋樹 |
代理人 | 藤 拓也 |
代理人 | 松浦 孝 |