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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L
管理番号 1299230
審判番号 不服2013-4563  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-08 
確定日 2015-04-02 
事件の表示 特願2010-132235「掃除機ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月24日出願公開、特開2010-284526〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年6月9日(パリ条約による優先権主張2009年6月9日(GB)英国)の出願であって、平成24年11月2日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年3月8日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。
その後、当審において平成26年4月16日付けで拒絶理由を通知したところ、同年10月21日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年10月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「真空掃除機のための回転可能ブラシバーであって、
第1の表面攪拌手段と、
前記第1の表面攪拌手段を超えて回転可能ブラシバーから外向きに延び、かつ該第1の表面攪拌手段よりも低い表面抵抗率を有する導電材料から形成され、前記第1の表面攪拌手段よりも相対的に長く、前記第1の表面攪拌手段から離間している、第2の表面攪拌手段と、を含み、
前記真空掃除機が硬質床面上を移動するときに、前記第1の表面攪拌手段の先端は、前記硬質床面と接触状態にならず、前記真空掃除機がカーペット敷き床面上を移動するときに、前記第1の表面攪拌手段の先端と前記第2の表面攪拌手段の先端の両方が、前記カーペット敷き床面と接触状態になる、
ことを特徴とする回転可能ブラシバー。」

第3 引用文献
1.当審の拒絶理由に引用した特開2000-60775号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。以下同様。)。

「【0015】
【実施例】以下、本発明の第1の実施例を、図1?3を用いて説明する。図1、2、3において、吸込具本体11は上部枠体12と下部枠体13にて構成されており、内部に集塵室14を有し、上記集塵室14の掃除面方向には下部枠体13に開口15が設けられている。そして、吸込具後部にはパイプ16を有し、上記パイプ16内部には前記集塵室14から吸引口17を介し電気掃除機本体32よりの吸引を伝達する通路18が設けられている。また、上記集塵室14内にアジテ-タ-19を内設し、上記アジテ-タ-19は、回転自在な回転子20と、上記回転子20の周囲の長手方向に連続した溝部21を複数設け、上記溝部21に突状帯22およびブラシ体23を嵌着して形成されている。上記ブラシ体23は、本発明では微細繊維のカットパイル状の紡績布から成る起毛布ブラシ体を用いており、突出代の異なる2種類のブラシ群から一体にて構成され、突出代の大きいブラシ群24の先端部は床面25と当接する長さに設定し、上記突状帯22の先端部と突出代の小さいブラシ群26先端部が絨毯面27に当接する長さに設定してある。
【0016】上記構成による動作、作用は以下の通りである。アジテ-タ-19は電動モ-タ-(図示せず)あるいは吸込風を利用したエアタ-ビン(図示せず)等の駆動源により回転する。突出代の大きいブラシ群24の先端部は床面25と当接するよう設定し、突状帯22と突出代の小さいブラシ群26先端部は絨毯面27に当接するよう設定してあるため、上記アジテ-タ-19の回転時、床面25上では突出代の大きいブラシ群24の毛先カット面が床面25をはきだすように相対的に移動することにより床面25に付着しているごみのかきあげを行う。また、絨毯面27においては、突状帯22の先端部と突出代の小さいブラシ群26の毛先カット面が絨毯面27をかきわけるように相対的に移動することで、絨毯面27に付着しているごみのかきあげが行え、床面25と絨毯面27のいずれの場合にもそれぞれ適した長さのブラシ群を一個のブラシ体に同時に設けたことにより、回転子へのブラシ体の挿入工数増加等のコストアップも生ずることなく、すべての掃除面を効率良く掃除できるものである。」

上記「突出代の大きいブラシ群24の先端部は床面25と当接する長さに設定し、上記突状帯22の先端部と突出代の小さいブラシ群26先端部が絨毯面27に当接する長さに設定してある。」との記載、及び、【図3】の記載より、突出代の大きいブラシ群24は、回転子20から外向きに延び、突状帯22よりも相対的に長く、突状帯22から離間していることが認められる。
以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電気掃除機のためのアジテーター(19)であって、
上記アジテーター(19)は、回転自在な回転子(20)と、上記回転子(20)の周囲の長手方向に連続した溝部(21)を複数設け、上記溝部(21)に突状帯(22)およびブラシ体(23)を嵌着して形成され、
上記ブラシ体(23)は、突出代の異なる2種類のブラシ群から一体にて構成され、
突出代の大きいブラシ群(24)は、回転子(20)から外向きに延び、突状帯22よりも相対的に長く、突状帯(22)から離間しており、
上記アジテーター(19)の回転時、
床面(25)上では突出代の大きいブラシ群(24)の毛先カット面が床面(25)をはきだすように相対的に移動することにより床面(25)に付着しているごみのかきあげを行い、
絨毯面(27)においては、突状帯(22)の先端部と突出代の小さいブラシ群(26)の毛先カット面が絨毯面(27)をかきわけるように相対的に移動することで、絨毯面(27)に付着しているごみのかきあげを行う
アジテーター(19)。」

2.当審の拒絶理由に引用した特開2003-52584号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電気掃除機の本体部内に塵埃を吸い込むためのヘッド内に配設され、絨毯、畳、フローリング等の床面から塵埃を掻き上げるための電気掃除機用の回転ブラシに関するものである。」

「(第2実施形態)以下、この発明の第2実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。・・・
【0035】図5に示すように、第2実施形態のベロア材35において、第1パイル列37は、基布33の表面からの高さが第2パイル列38の基布33の表面からの高さよりも高くなるように形成されている。
・・・
【0037】上記のように第1パイル列37及び第2パイル列38をそれぞれ異なる高さとする場合、第2パイル列38を形成する第2パイル糸38aは、第1パイル列37を形成する第1パイル糸37aよりも熱収縮率が高い高収縮糸で形成することが好ましい。」

「【0043】・・・
・ 各実施形態において、第1パイル糸37a及び第2パイル糸38aのうち少なくとも一方に導電性を有する導電性繊維を用いてもよい。・・・このように構成した場合、例えばカーペット等のように静電気を生じやすく、塵埃が吸着されやすい床面10に対し、その静電気を除電し、塵埃を掻き取りやすくすることができる。」

3.当審の拒絶理由に引用した特開平7-327885号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は掃除機等の床ノズルの回転ブラシに関し、特に回転ブラシで発生する静電気の除電に関する。」

「【0016】
【実施例】以下、本発明の第1の課題解決手段の実施例1である回転ブラシの構成を、図1に基づいて説明する。回転ブラシ1は、回転自在な円柱形状あるいは円筒形状のブラシホルダー2と、このブラシホルダー2の外周面に植毛したナイロンを主体とした集塵用ブラシ3と、回転ブラシ1の回転方向Aに対し後方に植毛した、導電性材料を主体とした除電用ブラシ4とから構成されている。
【0017】上記構成による作用は以下の通りである。除電用ブラシ4を集塵用ブラシと別に設けることにより、集塵用ブラシ3で発生した静電気を除電ブラシ4で、床面に接触直前と直後に床面にコロナ放電させ、接触時は中和作用で放電させると共に、空中にもコロナ放電をさせることにより、全体的に静電気の発生を防止できる。又除電用ブラシ4の材料として、絨毯等に色つきのない、導電性の高い材料が選択でき除電効果を従来より高くすることができる。又静電気発生源で除電できることから塵埃が静電気を帯びて再度絨毯に再付着することが防止でき、集塵性能の向上が図れる等の効果もある。」

4.当審の拒絶理由に引用した特開2002-136457号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0008】そこでこのような従来の問題点を解決するために、本発明は、室内の空気を汚すことなく掃除を行なうことができ、マットやフローリング表面に静電気によって吸着している髪の毛やペット毛等も確実に集塵する排気循環式掃除機を提供することを目的とする。」

「【0038】ところで、床面1にはフローリング、畳、絨毯、塩ビマット等、様々な種類があり、それに散在する塵埃も、砂や埃、人間やペット等の体毛、木綿や羊毛やアクリル等の化学繊維の糸屑、食物の欠片等、多種多様なものが存在する。これらの床面1と塵埃との組合せで、帯電系列の離れた、例えば塩ビマット上に人毛やペット毛、ポリプロピレン性の絨毯上にナイロンの糸屑等の組合せができ、しかも冬場の室内のような低温低湿度の環境であればあるほど、床面1と塵埃の間に摩擦帯電や剥離帯電による静電気が発生し、塵埃が床面1上に吸着された状態となり、掃除機で集塵することが非常に困難になってしまう。」

「【0045】次に本実施の形態2の排気循環式掃除機を用いて吸引する時の吸込ノズル2の動作、作用について説明する。・・・また回転ブラシ30のブラシ部を導電性材料で形成した場合は、床面1と接触する前後においてコロナ放電し、床面1の静電気除去性能がさらに向上する。」

「【0058】請求項8に記載の排気循環式掃除機は、回転ブラシのブラシ部材及び/または回転ブレードのブレード部材が導電性材料で形成されているので、回転ブラシ及び/または回転ブレードにも静電気除去能力を付加することで、更なる静電気除去能力の向上が可能となり、静電気の発生した掃除面での往復回数を減らし無駄のない掃除ができるため、省エネの掃除機にすることができる。」

第4 対比
引用発明の「電気掃除機」、「アジテーター(19)」、「突状帯(22)」は、それぞれ、本願発明の「真空掃除機」、「回転可能ブラシバー」、「第1の表面攪拌手段」に相当する。
引用発明の「回転子(20)から外向きに延び、突状帯22よりも相対的に長く、突状帯(22)から離間して」いる「突出代の大きいブラシ群(24)」と、本願発明の「前記第1の表面攪拌手段を超えて回転可能ブラシバーから外向きに延び、かつ該第1の表面攪拌手段よりも低い表面抵抗率を有する導電材料から形成され、前記第1の表面攪拌手段よりも相対的に長く、前記第1の表面攪拌手段から離間している、第2の表面攪拌手段」とは、「前記第1の表面攪拌手段を超えて回転可能ブラシバーから外向きに延び、前記第1の表面攪拌手段よりも相対的に長く、前記第1の表面攪拌手段から離間している、第2の表面攪拌手段」との限度で一致する。

引用発明が「床面(25)上では突出代の大きいブラシ群(24)の毛先カット面が床面(25)をはきだすように相対的に移動することにより床面(25)に付着しているごみのかきあげを行い」、「絨毯面(27)においては、突状帯(22)の先端部と突出代の小さいブラシ群(26)の毛先カット面が絨毯面(27)をかきわけるように相対的に移動することで、絨毯面(27)に付着しているごみのかきあげを行う」ことは、引用文献1の【図3】も参照すれば、「床面(25)」上では、「突出代の大きいブラシ群(24)」の先端が床面(25)に接触するが、「突状帯(22)」の先端は床面(25)に接触せず、「絨毯面(27)」においては、アジテーター(19)が絨毯面(27)にわずかに沈み込むことによって「突状帯(22)」の先端が絨毯面(27)に接触するとともに、「突出代の大きいブラシ群(24)」の先端も絨毯面(27)に接触することを意味している。
そうすると、引用発明の「床面(25)」は、「絨毯面(27)」よりも硬質であるといえるから、本願発明の「硬質床面」に相当し、引用発明の「絨毯面(27)」は、本願発明の「カーペット敷き床面」に相当し、引用発明の「床面(25)上では突出代の大きいブラシ群(24)の毛先カット面が床面(25)をはきだすように相対的に移動することにより床面(25)に付着しているごみのかきあげを行い」は、本願発明の「前記真空掃除機が硬質床面上を移動するときに、前記第1の表面攪拌手段の先端は、前記硬質床面と接触状態にならず」に相当し、引用発明の「絨毯面(27)においては、突状帯(22)の先端部と突出代の小さいブラシ群(26)の毛先カット面が絨毯面(27)をかきわけるように相対的に移動することで、絨毯面(27)に付着しているごみのかきあげを行う」は、本願発明の「前記真空掃除機がカーペット敷き床面上を移動するときに、前記第1の表面攪拌手段の先端と前記第2の表面攪拌手段の先端の両方が、前記カーペット敷き床面と接触状態になる」に相当する。
よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「真空掃除機のための回転可能ブラシバーであって、
第1の表面攪拌手段と、
前記第1の表面攪拌手段を超えて回転可能ブラシバーから外向きに延び、前記第1の表面攪拌手段よりも相対的に長く、前記第1の表面攪拌手段から離間している、第2の表面攪拌手段と、を含み、
前記真空掃除機が硬質床面上を移動するときに、前記第1の表面攪拌手段の先端は、前記硬質床面と接触状態にならず、前記真空掃除機がカーペット敷き床面上を移動するときに、前記第1の表面攪拌手段の先端と前記第2の表面攪拌手段の先端の両方が、前記カーペット敷き床面と接触状態になる、
回転可能ブラシバー。」

[相違点]
本願発明の「第2の表面攪拌手段」は、「第1の表面攪拌手段よりも低い表面抵抗率を有する導電材料から形成され」と特定されているのに対し、引用発明の「突出代の大きいブラシ群(24)」は、そのように特定されていない点。

第5 判断
電気掃除機の回転ブラシの技術分野において、導電材料から形成されたブラシを用いることにより、床面の静電気を除電し、塵埃を掻き取りやすくすることは、引用文献2(【0043】)、引用文献3(【0016】?【0017】)、引用文献4(【0045】、【0058】)に例示され、上記除電が、導電材料から形成されたブラシが床面と接触する前後でのコロナ放電によることは、引用文献3(【0017】)、引用文献4(【0045】)に例示されるように、いずれも周知技術である。
そして、引用文献4には、フローリングや塩ビマット等、様々な種類の床面において、静電気が発生し、塵埃が床面上に吸着された状態となり、掃除機での集塵が困難になる旨が記載されている(【0008】、【0038】)。
上記周知技術及び引用文献4に示される電気掃除機の技術課題を考慮すれば、引用発明においても、床面(25)や絨毯面(27)に静電気が発生して塵埃が吸着された状態となり、掃除機での集塵が困難になる課題を生じるといえるから、該課題を解決するために、導電材料から形成されたブラシを採用して、床面の静電気を除電することを、当業者は容易に想到し得たといえる。
そして、引用発明に、上記導電材料から形成されたブラシを採用して、床面の静電気を除電するにあたって、上記除電が、導電材料から形成されたブラシが床面と接触する前後でのコロナ放電によることを考慮すれば、引用発明の床面(25)及び絨毯面(27)の両方の静電気を除電できるように、床面(25)及び絨毯面(27)の両方に接触する「突出代の大きいブラシ群(24)」(「第2の表面攪拌手段」に相当)を導電材料で形成することは、当業者が容易に想到し得たことであり、また、引用文献2、引用発明3は全てのブラシを導電性とするものではない(引用文献2は、第1パイル糸37a及び第2パイル糸38aのうちいずれか一方を導電性とすればよく(【0043】)、引用文献3は、集塵用ブラシ3とは別の除電用ブラシ4のみを導電性材料で構成すればよいものである(【0016】)。)ことを考慮すれば、引用発明において、「突状帯(22)」を導電材料で形成することなく、「突出代の大きいブラシ群(24)」のみを導電材料で形成することも、当業者が容易に想到し得たことである。
「突状帯(22)」を導電材料で形成することなく、「突出代の大きいブラシ群(24)」のみを導電材料で形成すれば、「突出代の大きいブラシ群(24)」が、「突状帯(22)」よりも低い表面抵抗率を有する導電材料から形成されたものとなることは明らかである。
したがって、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明、周知技術及び引用文献4に示される技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の効果は、引用発明、周知技術及び引用文献4に示される技術事項から予測できる範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術及び引用文献4に示される技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-07 
結審通知日 2014-11-10 
審決日 2014-11-21 
出願番号 特願2010-132235(P2010-132235)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 貴志  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 紀本 孝
千壽 哲郎
発明の名称 掃除機ヘッド  
代理人 井野 砂里  
代理人 工藤 由里子  
代理人 松下 満  
代理人 辻居 幸一  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 弟子丸 健  

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