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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1299244
審判番号 不服2014-975  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-20 
確定日 2015-04-02 
事件の表示 特願2012-141667号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年3月6日出願公開、特開2014-39572号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成24年6月25日の出願であって、平成25年7月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月27日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月15日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月22日)、それに対し、平成26年1月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。

第2 平成26年1月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年1月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「始動条件の成立を契機として判定情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報に基づいて遊技の進行に関わる所定の判定を行う判定手段と、
前記判定情報取得手段により取得される前記判定情報と前記判定手段による判定結果の種類とを対応付けた対応データを記憶する対応データ記憶手段と、を備え、
前記対応データ記憶手段に記憶された前記対応データは、
前記判定情報取得手段により取得され得る個々の前記判定情報に対応付けられたセルに、前記判定手段による判定結果の種類を特定する特定情報を格納したテーブルであって、
前記判定手段による判定結果の種類ごとに、当該判定手段の判定により当該種類の判定結果が得られる確率に対応する割合となるように、前記特定情報が前記セルに格納されること、
を特徴とする、遊技機。」
から
「始動条件の成立を契機として判定情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報に基づいて遊技の進行に関わる所定の判定を行う判定手段と、
前記判定情報取得手段により取得される前記判定情報と前記判定手段による判定結果の種類とを対応付けたテーブルを記憶するテーブル記憶手段と、を備え、
前記テーブル記憶手段に記憶された前記テーブルは、
前記判定情報取得手段により取得され得る個々の前記判定情報に個別に対応付けられたセルを有し、
各セルに前記判定手段による判定結果の種類を特定する特定情報を格納し、
セルの全体数に対する、各判定結果の種類に対応する前記特定情報がそれぞれ格納されたセルの数の割合が、当該判定手段の判定により当該種類の判定結果が得られる確率に対応する割合であること、
を特徴とする、遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である記憶手段に関して、「前記判定情報と前記判定手段による判定結果の種類とを対応付けた対応データを記憶する対応データ記憶手段」とあったものを「前記判定情報取得手段により取得される前記判定情報と前記判定手段による判定結果の種類とを対応付けたテーブルを記憶するテーブル記憶手段」と限定し、さらに、「個々の前記判定情報に対応付けられたセル」とあったものを「個々の前記判定情報に個別に対応付けられたセル」と限定することを含むものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-212337号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決で付与した。以下同じ。)。

(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱数値を所定の範囲で繰り返し更新する乱数カウンタと、
その乱数カウンタで更新される乱数値に対する所定のデータを、その乱数値に関するアドレスに記憶する記憶手段と、
前記乱数値に関するアドレスを前記記憶手段へ出力してその記憶手段に記憶される前記所定のデータを読み出す読出手段と、
その読出手段によって読み出されたデータに基づいて、遊技者に対し所定の遊技価値を付与するか否かを判定する判定手段とを備えていることを特徴とする遊技機の制御装置。」

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、パチンコ遊技機などに代表される弾球遊技機の制御装置に関し、特に、遊技の制御に支障を来すことなく、乱数値の更新範囲を広げることができる遊技機の制御装置に関するものである。」

(c)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、従来通りの大当たりの発生確率を維持するためには、乱数カウンタの更新範囲を広げた分、大当たりを発生させる乱数値の数を増やさなければならない。例えば、乱数値の更新範囲が「0?346」で大当たりを発生させる乱数値が1個である場合、乱数値の更新範囲を略189倍の「0?65535」にすると、大当たりを発生させる乱数値の数も189倍の189個にしなければならない。このため、取得した乱数値が大当たりを発生させるものであるか否かの判定時間が増大して、パチンコ遊技機の遊技の制御に支障を来してしまうという問題点がある。・・・
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、遊技の制御に支障を来すことなく、乱数値の更新範囲を広げることができる遊技機の制御装置を提供することを目的としている。」

(d)「【0014】
図2は、かかるパチンコ遊技機Pの電気的構成を示したブロック図である。パチンコ遊技機Pの主制御基板Cは、8.192MHzの動作クロック11aに基づいて動作するMPU11と、そのMPU11によって実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶したROM12と、制御プログラムの実行時に各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリであるRAM13と、7.15909MHzのクロック14aから出力されるクロックパルスの立ち下がり毎にカウントアップを行う16ビットの乱数カウンタ14と、入出力ポート16と、乱数カウンタ14でカウントされる乱数値に対する所定のデータ、即ちその乱数値が大当たりであるか否か等のデータを記憶する比較ROM17とを備えている。なお、図5のフローチャートに示すプログラムは、制御プログラムの一部としてROM12内に記憶されている。」

(e)「【0019】
比較ROM17は、乱数カウンタ14で更新される乱数値に対する所定のデータ、即ち、その乱数値が大当たりであるか否か等のデータを乱数値毎に記憶するメモリであり、乱数カウンタ14の更新範囲分の64Kバイトのサイズを備えている。乱数値に対するデータは、各乱数値に対して1バイトずつ設けられており、乱数値が示す比較ROMのアドレスに記憶されている。このため、比較ROM17は「0000h?0FFFFh」の大きなアドレス空間を専有するが、メモリアドレス上ではなく、I/Oアドレス上の「000Eh」及び「000Fh」のアドレスに配置されているので、比較ROM17が64Kバイトの大きなサイズを有していても、その比較ROM17で64Kバイトのメモリ空間を専有することがなく、メモリ空間を有効に使用することができる。なお、比較ROM17がI/Oアドレス上に配置されることにより、その比較ROM17へのアクセスは、入出力ポート16を介して行われる。
【0020】
図3(a)は、比較ROM17の1バイトのデータの構成をビット毎に示した図である。図3(a)に示すように、比較ROM17の0ビット目は大当たりビットx(17a)、1ビット目は高確率大当たりビットy(17b)、2ビット目は素数ビットz(17c)に割り当てられている。これら各ビット17a,17bの状態により、図3(b)に示すように大当たりが判定される。即ち、大当たりビットx(17a)が「0」である場合には、高確率大当たりビットy(17b)の状態に拘わらず、ハズレである(17d)。大当たりビットx(17a)が「0」である場合に、高確率大当たりビットy(17b)が「1」という設定は存在しない(17e)。一方、大当たりビットx(17a)が「1」である場合には、高確率大当たりビットy(17b)が「0」であれば大当たりであり(17f)、高確率大当たりビットy(17b)が「1」であれば高確率大当たりである(17g)。」

(f)「【0029】
S1の処理において電源投入後2回目以降に実行されたリセット割込処理であると判断された場合には(S1:No)、S3?S11の各処理によってパチンコ遊技機Pの遊技の制御が行われる。遊技の制御では、まず、球が第1種始動口(図柄作動口)4を通過したか否かを調べ(S3)、球が第1種始動口(図柄作動口)4を通過していれば(S3:Yes)、大当たりか否かの判定を行うために、S4?S10の各処理を実行する。
【0030】
まず、MPU11によって乱数カウンタ14の値(乱数値)をリードし(図4の41)、そのリードした値をMPU11の内部レジスタであるBCレジスタへ書き込む(S4)。次に、BCレジスタの値を比較ROM17のI/Oアドレスである「000Eh」及び「000Fh」へ出力する(S5,図4の42)。図4を参照して説明したように、このS5の処理によって、BCレジスタの値(乱数値)は、一旦、入出力ポート16の入力用ラッチレジスタ16aにラッチされた後に、入出力ポート16から比較ROM17へアドレスとして出力される(図4の43)。比較ROM17のリード信号は常時アクティブにされているので(図4の44)、入出力ポート16から出力されたアドレスが安定すると、乱数値が示すアドレスに記憶される比較ROM17のデータ、即ち乱数値に対するデータが比較ROM17から読み出され、入出力ポート16へ出力される(図4の45)。比較ROM17から入出力ポート16へ出力されたデータは、入出力ポート16の出力用バッファ16bへ入力される。」

(g)「【0045】
具体的には、大当たりは乱数値が素数である場合にのみ発生するものとし、且つ、ROM12内に、乱数値の更新範囲に対応するサイズの比較ROM17と同様な大当たり判定テーブル(図示せず)を設ける。そして、大当たりの判定は、比較ROM17から読み出した乱数値に対するデータの素数ビットz(17c)が「1」である場合にのみ、ROM12内の大当たり判定テーブルを更に参照し、その大当たり判定テーブルの乱数値に対するデータの大当たりビットz(17a)及び高確率大当たりビットy(17b)の状態により行うのである。なお、前記した通り、素数ビットz(17c)は対象となる乱数値が素数である場合にのみ「1」となっている。以下、前記した第1実施例と同一の部分には同一の符号を付してその説明は省略し、第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。」

(h)「【0053】
例えば、本実施例では、乱数値に対する大当たり等のデータを記憶する比較ROMはMPU11と別体に構成されたが、この比較ROM17をMPU11と一体に、即ち、MPU11に内蔵しても良い。比較ROM17をMPU11に内蔵すれば、比較ROM17を不正に交換することができなくなるので、不正行為の防止効果を一層向上することができる。
【0054】
以下に本発明の変形例を示す。請求項1記載の遊技機の制御装置において、前記記憶手段はI/Oアドレス上に配置されていることを特徴とする遊技機の制御装置1。乱数値に対応して所定のデータ(例えば、大当たり等のデータ)を記憶する記憶手段を、メモリアドレス上では無く、I/Oアドレス上に配置することにより、メモリアドレスを有効に使用することができる。例えば、乱数カウンタを16ビットカウンタで構成し、記憶手段をメモリアドレス上へ配置すると、0000?0FFFFhのメモリ空間をすべて記憶手段に専有されてしまう。しかし、記憶手段をI/Oアドレス上に配置することにより、0000?0FFFFhのメモリ空間を記憶手段以外のアドレスとして有効に使用することができるのである。
【0055】
請求項1記載の遊技機の制御装置、又は、遊技機の制御装置1において、遊技の制御を行うMPUを備え、前記記憶手段は、そのMPUに内蔵されていることを特徴とする遊技機の制御装置2。記憶手段をMPUに内蔵することにより、所定の遊技価値(例えば、大当たり)を不当に発生させるために、その記憶手段を不正なものに交換する行為を防止することができる。」

(i)上記d及びeの記載によると、比較ROM17が、大当たりであるか否か等のデータを(大当たりビットx、高確率大当たりビットy)のデータ構成で記憶し、具体的には、大当たりの場合、(1、0)のデータ構成とし、高確率大当たりの場合、(1、1)のデータ構成としたことが認められる。

上記a?hの記載、上記iの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「遊技の制御を行うMPU11と、
乱数値をカウントする乱数カウンタ14と、
MPU11に内蔵され、乱数値に対する大当たりであるか否か等のデータを記憶する比較ROM17と
を主制御基板Cに備えているパチンコ遊技機Pにおいて、
MPU11は、
球が第1種始動口4を通過していれば(S3:Yes)、乱数カウンタ14の値(乱数値)をリード(S4)し、
乱数値に関するアドレスを比較ROM17へ出力してその比較ROM17に記憶される大当たりであるか否か等のデータを読み出し、その読み出されたデータに基づいて、遊技者に対し所定の遊技価値を付与するか否かを判定し、
比較ROM17は、乱数値が大当たりであるか否か等のデータを(大当たりビットx、高確率大当たりビットy)のデータ構成で、乱数値が示すアドレスに乱数値毎に記憶するメモリであり、具体的には、大当たりの場合、(1、0)のデータ構成とし、高確率大当たりの場合、(1、1)のデータ構成とした
パチンコ遊技機P。」

(2)対比
刊行物発明(以下「前者」という。)と本願補正発明(以下「後者」という。)とを対比する。
ア 前者における「球が第1種始動口4を通過していれば(S3:Yes)、乱数カウンタ14の値(乱数値)をリード(S4)」する「MPU11」と、後者における「始動条件の成立を契機として判定情報を取得する判定情報取得手段」とを対比する。
後者における「判定情報を取得する判定情報取得手段」に関して、本願明細書の課題を解決するための手段の項に「判定情報を取得する判定情報取得手段231」(【0008】)と記載され、さらに、本願明細書の発明を実施するための形態の項に「特別図柄抽選部231は、第1始動口121や第2始動口122に遊技球が入賞した場合に、特別図柄の抽選を行う。具体的には、判定情報として、所定の範囲の数値の中から一つの数値(乱数値)が選択(取得)されて、特別図柄抽選結果判定部234による判定のために付与される。」(【0044】)と記載されている。このことから、後者における「判定情報取得手段」は、乱数値を取得するものである。
してみると、前者における「球が第1種始動口4を通過していれば(S3:Yes)、乱数カウンタ14の値(乱数値)をリード(S4)」する「MPU11」は、後者における「始動条件の成立を契機として判定情報を取得する判定情報取得手段」に相当する。

イ 前者における「乱数値に関するアドレスを比較ROM17へ出力してその比較ROM17に記憶される大当たりであるか否か等のデータを読み出し、その読み出されたデータに基づいて、遊技者に対し所定の遊技価値を付与するか否かを判定」する「MPU11」は、「大当たりであるか否か等のデータ」が、乱数値が示すアドレスに基づいて比較ROM17から読み出されるものであるから、後者における「判定情報取得手段により取得された判定情報に基づいて遊技の進行に関わる所定の判定を行う判定手段」に相当する。

ウ 前者における「乱数値が大当たりであるか否か等のデータを(大当たりビットx、高確率大当たりビットy)のデータ構成で、乱数値が示すアドレスに乱数値毎に記憶するメモリであり、具体的には、大当たりの場合、(1、0)のデータ構成とし、高確率大当たりの場合、(1、1)のデータ構成とした」とした「比較ROM17」と、後者における「判定情報取得手段により取得される判定情報と判定手段による判定結果の種類とを対応付けたテーブルを記憶するテーブル記憶手段」とを対比する。
前者において、(1、0)のデータ構成を有することは、大当たりであるとの判定結果を記憶することに対応し、(1、1)のデータ構成を有することは、高確率大当たりであるとの判定結果を記憶することに対応するものであるから、前者における(1、0)のデータ構成を有すること、及び、(1、1)のデータ構成を有することは、後者における「判定結果の種類」を記憶することに相当する。
また、前者における「比較ROM17」に関して、刊行物には、「比較ROM17」が大当たり判定テーブルであること(上記(1)g)が記載されている。
してみると、前者において、「比較ROM17」に、判定情報である乱数値に関するアドレスと、判定結果の種類(大当たり、高確率大当たり等)とを対応付けた大当たり判定テーブルが記憶されているといえる。
したがって、前者における「乱数値が大当たりであるか否か等のデータを(大当たりビットx、高確率大当たりビットy)のデータ構成で、乱数値が示すアドレスに乱数値毎に記憶するメモリであり、具体的には、大当たりの場合、(1、0)のデータ構成とし、高確率大当たりの場合、(1、1)のデータ構成とした」とした「比較ROM17」は、後者における「判定情報取得手段により取得される判定情報と判定手段による判定結果の種類とを対応付けたテーブルを記憶するテーブル記憶手段」に相当する。

エ 前者における「比較ROM17」と、後者における「テーブル記憶手段に記憶されたテーブルは、判定情報取得手段により取得され得る個々の判定情報に個別に対応付けられたセルを有し、各セルに判定手段による判定結果の種類を特定する特定情報を格納」することとを対比する。
前者において、データを「(大当たりビットx、高確率大当たりビットy)のデータ構成で」、乱数値が示すアドレスに乱数値毎に記憶するメモリの単位は、後者における「判定情報取得手段により取得され得る個々の判定情報に個別に対応付けられたセル」に相当する。
また、前者における「(1、0)のデータ」、「(1、1)のデータ」は、後者における「判定手段による判定結果の種類を特定する特定情報」に相当する。
してみると、前者における「比較ROM17」は、後者における「テーブル記憶手段に記憶されたテーブルは、判定情報取得手段により取得され得る個々の判定情報に個別に対応付けられたセルを有し、各セルに判定手段による判定結果の種類を特定する特定情報を格納」することに相当する構成を有するものである。

オ 前者において、乱数カウンタ14によりカウントされる乱数値が取り得る範囲、すなわち、アドレスの総数のうち、(1、0)データ、あるいは、(1、1)データが記憶されているアドレスの合計の割合が、それぞれの判定結果(大当たり、高確率大当たり等)が得られる確率に対応する割合となるように設定することは、刊行物の発明が解決しようとする課題の項(上記(1)c)に、「例えば、乱数値の更新範囲が「0?346」で大当たりを発生させる乱数値が1個である場合、乱数値の更新範囲を略189倍の「0?65535」にすると、大当たりを発生させる乱数値の数も189倍の189個にしなければならない。」と記載されているように、パチンコ遊技機の技術分野における技術常識を参酌することにより、当業者が導き出せるものである。
したがって、前者における比較ROM17に対する、乱数値が示すアドレスに乱数値毎に記憶されるデータの設定は、後者における「セルの全体数に対する、各判定結果の種類に対応する前記特定情報がそれぞれ格納されたセルの数の割合が、当該判定手段の判定により当該種類の判定結果が得られる確率に対応する割合」となるように設定されるものであることは、当業者にとって明らかである。

カ 上記アないしオから、本願補正発明と刊行物に記載された発明とは、
「始動条件の成立を契機として判定情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報に基づいて遊技の進行に関わる所定の判定を行う判定手段と、
前記判定情報取得手段により取得される前記判定情報と前記判定手段による判定結果の種類とを対応付けたテーブルを記憶するテーブル記憶手段と、を備え、
前記テーブル記憶手段に記憶された前記テーブルは、
前記判定情報取得手段により取得され得る個々の前記判定情報に個別に対応付けられたセルを有し、
各セルに前記判定手段による判定結果の種類を特定する特定情報を格納し、
セルの全体数に対する、各判定結果の種類に対応する前記特定情報がそれぞれ格納されたセルの数の割合が、当該判定手段の判定により当該種類の判定結果が得られる確率に対応する割合であること、
を特徴とする、遊技機。」
の点で一致し、相違点はない。

(3)当審の判断
上記(2)において検討したとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明である。

なお、請求人は、刊行物に記載された発明に関して、審判請求書において、「引用文献1の技術では、乱数カウンタにより特定され得る乱数値を比較ROMのI/Oアドレスとし、各I/OアドレスにそのI/Oアドレスの乱数値に対するデータを格納する。
したがって、引用文献1の技術によっては、乱数カウンタにより特定され得る乱数値の範囲は、比較ROMの記憶容量およびシステムが使用し得るI/Oアドレスのアドレス空間の範囲に依存する。
また、遊技状態に応じて乱数値と乱数値に対するデータとの対応関係を切り替えるとすると、複数の対応関係を設定するために複数の比較ROMが必要となり、複数の比較ROMのために必要なI/Oアドレスの範囲も増える。そして、使用する比較ROMが切り替わると、その比較ROMのI/Oアドレスの範囲もことなるため、乱数カウンタが扱う乱数値の範囲も変更することになる。」(第5頁第9?19行)と主張する。
しかしながら、本願補正発明では、刊行物に記載された発明の「比較ROM17」に相当する「テーブル記憶手段」について、その設けられる箇所を特定するものではない。そのうえ、審決では、刊行物発明を、比較ROM17がMPU11に内蔵された態様のパチンコ遊技機として認定しているのに対して、請求人の上記主張は、比較ROM17がI/Oアドレス上に配置された態様であることを前提とするものである。
したがって、請求人の上記主張は失当である。

ゆえに、本願補正発明は、刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

よって、本願補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年9月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、特に、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「始動条件の成立を契機として判定情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報に基づいて遊技の進行に関わる所定の判定を行う判定手段と、
前記判定情報取得手段により取得される前記判定情報と前記判定手段による判定結果の種類とを対応付けた対応データを記憶する対応データ記憶手段と、を備え、
前記対応データ記憶手段に記憶された前記対応データは、
前記判定情報取得手段により取得され得る個々の前記判定情報に対応付けられたセルに、前記判定手段による判定結果の種類を特定する特定情報を格納したテーブルであって、
前記判定手段による判定結果の種類ごとに、当該判定手段の判定により当該種類の判定結果が得られる確率に対応する割合となるように、前記特定情報が前記セルに格納されること、
を特徴とする、遊技機。」

2 刊行物
刊行物及びその記載事項並びに刊行物に記載された発明は、上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2」において検討した本願補正発明から、記憶手段に関して、「前記判定情報取得手段により取得される前記判定情報と前記判定手段による判定結果の種類とを対応付けたテーブルを記憶するテーブル記憶手段」とあったものを「前記判定情報と前記判定手段による判定結果の種類とを対応付けた対応データを記憶する対応データ記憶手段」とその限定を省き、さらに、「個々の前記判定情報に個別に対応付けられたセル」とあったものを「個々の前記判定情報に対応付けられたセル」とその限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2」に記載したとおり、刊行物に記載された発明であるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物に記載された発明である。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-27 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-17 
出願番号 特願2012-141667(P2012-141667)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 正樹  
特許庁審判長 杉浦 淳
特許庁審判官 長崎 洋一
瀬津 太朗
発明の名称 遊技機  
代理人 古部 次郎  
代理人 尾形 文雄  
代理人 伊與田 幸穂  

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