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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1299253
審判番号 不服2014-8623  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-09 
確定日 2015-04-02 
事件の表示 特願2012- 766「制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月18日出願公開、特開2013-139225〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成24年1月5日の出願であって、平成25年6月11日付けで拒絶理由が通知され、平成25年8月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年2月5日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年5月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

2 本件補正の適否
(1)本件補正の内容
平成26年5月9日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成25年8月6日に提出された手続補正書で補正された)下記アの記載を、下記イの記載へ補正するものであり、明細書については、本件補正により補正される前の下記ウの記載を、下記エの記載へ補正するものである。

ア 本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
車両の制御装置であって、
前記車両は、エンジンと、前記エンジンが停止した状態で前記車両を駆動可能なモータと、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備え、
前記車両の走行中に前記車両システムを停止させる操作がされた後において、前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされた場合に、走行可能な状態に移行する際に、前記エンジンを始動させるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記車両の走行中に前記車両システムを停止させる操作がされた後において、前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされた場合に、前記モータの動力のみにより前記車両を駆動可能な状態であっても、前記エンジンを始動させるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置において、
前記車両の走行中に前記車両システムを停止させる操作がされた場合に、前記車両システムの少なくとも一部を終了させ、その後において前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされた場合に、前記エンジンを始動させるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置において、
前記車両システムの少なくとも一部には、前記エンジンへの燃料の供給が含まれることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1つに記載の制御装置において、
前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされることにより前記エンジンを始動させる際の第1始動時パラメータは、前記エンジンを通常時に始動させる際の第2始動時パラメータと異なることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御装置において、
前記第1始動時パラメータは、前記第2始動時パラメータに比べて、前記エンジンの回転速度が大きくなるように設定されていることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の制御装置において、
前記第1始動時パラメータは、前記第2始動時パラメータに比べて、前記エンジンの動力が小さくなるように設定されていることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか1つに記載の制御装置において、
前記車両は、駆動輪に出力される動力のうち、前記エンジンからの動力と前記モータからの動力との割合を制御可能に構成され、
前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされることにより、前記エンジンを始動させる場合には、前記エンジンを通常時に始動させる場合に比べて、前記エンジンから前記駆動輪に伝達される動力の割合を小さくするように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項9】
請求項1?8のいずれか1つに記載の制御装置において、
前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされることにより、前記エンジンを始動させた後に、予め設定された時間が経過したときに、前記エンジンへの燃料の供給を停止可能となるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか1つに記載の制御装置において、
前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされることにより、前記エンジンを始動させた後に、シフト操作がされた場合に、前記エンジンへの燃料の供給を停止可能となるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項11】
車両の制御装置であって、
前記車両は、エンジンと、前記エンジンが停止した状態で前記車両を駆動可能なモータと、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備え、
前記車両の走行中に搭乗者が前記操作部を用いて前記車両システムを停止させる操作を行った後において、前記車両が停止する前に前記搭乗者が前記操作部を用いて前記車両システムを起動させる操作を行った場合に、走行可能な状態に移行する際に、前記エンジンを始動させるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項12】
車両の制御装置であって、
前記車両は、エンジンと、前記エンジンが停止した状態で前記車両を駆動可能なモータと、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備え、
前記車両の走行中に前記操作部から前記車両システムを停止させる信号を受信した後において、前記車両が停止する前に前記操作部から前記車両システムを起動させる信号を受信した場合に、走行可能な状態に移行する際に、前記エンジンを始動させるように構成されていることを特徴とする制御装置。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
車両の制御装置であって、
前記車両は、エンジンと、前記エンジンが停止した状態で前記車両を駆動可能なモータと、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備え、
前記車両の走行中に前記車両システムを停止させる操作がされた後において、前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされた場合に、Ready-On状態に移行する際に、前記エンジンを始動させるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記車両の走行中に前記車両システムを停止させる操作がされた後において、前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされた場合に、前記モータの動力のみにより前記車両を駆動可能な状態であっても、前記エンジンを始動させるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置において、
前記車両の走行中に前記車両システムを停止させる操作がされた場合に、前記車両システムの少なくとも一部を終了させ、その後において前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされた場合に、前記エンジンを始動させるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置において、
前記車両システムの少なくとも一部には、前記エンジンへの燃料の供給が含まれることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1つに記載の制御装置において、
前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされることにより前記エンジンを始動させる際の第1始動時パラメータは、前記エンジンを通常時に始動させる際の第2始動時パラメータと異なることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御装置において、
前記第1始動時パラメータは、前記第2始動時パラメータに比べて、前記エンジンの回転速度が大きくなるように設定されていることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の制御装置において、
前記第1始動時パラメータは、前記第2始動時パラメータに比べて、前記エンジンの動力が小さくなるように設定されていることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか1つに記載の制御装置において、
前記車両は、駆動輪に出力される動力のうち、前記エンジンからの動力と前記モータからの動力との割合を制御可能に構成され、
前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされることにより、前記エンジンを始動させる場合には、前記エンジンを通常時に始動させる場合に比べて、前記エンジンから前記駆動輪に伝達される動力の割合を小さくするように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項9】
請求項1?8のいずれか1つに記載の制御装置において、
前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされることにより、前記エンジンを始動させた後に、予め設定された時間が経過したときに、前記エンジンへの燃料の供給を停止可能となるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか1つに記載の制御装置において、
前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされることにより、前記エンジンを始動させた後に、シフト操作がされた場合に、前記エンジンへの燃料の供給を停止可能となるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項11】
車両の制御装置であって、
前記車両は、エンジンと、前記エンジンが停止した状態で前記車両を駆動可能なモータと、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備え、
前記車両の走行中に搭乗者が前記操作部を用いて前記車両システムを停止させる操作を行った後において、前記車両が停止する前に前記搭乗者が前記操作部を用いて前記車両システムを起動させる操作を行った場合に、Ready-On状態に移行する際に、前記エンジンを始動させるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項12】
車両の制御装置であって、
前記車両は、エンジンと、前記エンジンが停止した状態で前記車両を駆動可能なモータと、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備え、
前記車両の走行中に前記操作部から前記車両システムを停止させる信号を受信した後において、前記車両が停止する前に前記操作部から前記車両システムを起動させる信号を受信した場合に、Ready-On状態に移行する際に、前記エンジンを始動させるように構成されていることを特徴とする制御装置。」(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

ウ 「【0009】
本発明による車両は、エンジンと、エンジンをクランキング可能に構成された第1電動機と、第1電動機を駆動するために設けられた第1インバータと、第1インバータを制御する制御装置と、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備える。そして、制御装置は、シフトポジションがニュートラルポジションである場合に、第1インバータを停止するように構成されている。また、制御装置は、走行中に車両システムを停止させる操作がされた後において、走行が停止する前に車両システムを起動させる操作がされた場合に、走行可能な状態に移行する際に、第1インバータを動作させるように構成されている。」、
「【0017】
また、本発明による車両は、エンジンと、エンジンをクランキング可能に構成された第1電動機と、第1電動機を駆動するために設けられた第1インバータと、第1インバータを制御する制御装置と、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備える。そして、制御装置は、シフトポジションがニュートラルポジションである場合に、第1インバータを停止するように構成されている。また、制御装置は、走行中に搭乗者が操作部を用いて車両システムを停止させる操作を行った後において、走行が停止する前に搭乗者が操作部を用いて車両システムを起動させる操作を行った場合に、走行可能な状態に移行する際に、第1インバータを動作させるように構成されている。」及び
「【0019】
また、本発明による車両は、エンジンと、エンジンをクランキング可能に構成された第1電動機と、第1電動機を駆動するために設けられた第1インバータと、第1インバータを制御する制御装置と、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備える。そして、制御装置は、シフトポジションがニュートラルポジションである場合に、第1インバータを停止するように構成されている。また、制御装置は、走行中に操作部から車両システムを停止させる信号を受信した後において、走行が停止する前に操作部から車両システムを起動させる信号を受信した場合に、走行可能な状態に移行する際に、第1インバータを動作させるように構成されている。」

エ 「【0009】
本発明による車両は、エンジンと、エンジンをクランキング可能に構成された第1電動機と、第1電動機を駆動するために設けられた第1インバータと、第1インバータを制御する制御装置と、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備える。そして、制御装置は、シフトポジションがニュートラルポジションである場合に、第1インバータを停止するように構成されている。また、制御装置は、走行中に車両システムを停止させる操作がされた後において、走行が停止する前に車両システムを起動させる操作がされた場合に、Ready-On状態に移行する際に、第1インバータを動作させるように構成されている。」、
「【0017】
また、本発明による車両は、エンジンと、エンジンをクランキング可能に構成された第1電動機と、第1電動機を駆動するために設けられた第1インバータと、第1インバータを制御する制御装置と、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備える。そして、制御装置は、シフトポジションがニュートラルポジションである場合に、第1インバータを停止するように構成されている。また、制御装置は、走行中に搭乗者が操作部を用いて車両システムを停止させる操作を行った後において、走行が停止する前に搭乗者が操作部を用いて車両システムを起動させる操作を行った場合に、Ready-On状態に移行する際に、第1インバータを動作させるように構成されている。」及び
「【0019】
また、本発明による車両は、エンジンと、エンジンをクランキング可能に構成された第1電動機と、第1電動機を駆動するために設けられた第1インバータと、第1インバータを制御する制御装置と、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備える。そして、制御装置は、シフトポジションがニュートラルポジションである場合に、第1インバータを停止するように構成されている。また、制御装置は、走行中に操作部から車両システムを停止させる信号を受信した後において、走行が停止する前に操作部から車両システムを起動させる信号を受信した場合に、Ready-On状態に移行する際に、第1インバータを動作させるように構成されている。」
(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の目的
本件補正における請求項1、11及び12について、請求人は審判請求書において、「審判の請求と同時に行う今回の補正では、請求項1、11および12における「走行可能な状態」との記載を「Ready-On状態」に変更しました。これにより、拒絶査定謄本において付言された記載不備には該当しないものになっています。」(審判請求書の3.(2)補正について)と説明するように、本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、明細書についてする本件補正は、特許請求の範囲を補正したことに伴い、対応する明細書の記載を補正したものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(3)まとめ
したがって、本件補正は、適法にされたものである。

3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年5月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに願書に最初に添付した図面からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記2(1)イのとおりのものである。

4 引用文献
(1)引用文献
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特開2003-134605号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0002】
【従来の技術】エンジンおよび駆動用モータの少なくともいずれか一方を走行駆動源とするハイブリッド車両が知られている。このハイブリッド車両では、エンジンおよび/または駆動用モータの駆動力を、無断変速機(以下、CVTと呼ぶ)等の変速機を介して駆動輪に伝達することにより、駆動することができる(例えば、特開平11-332011号公報)。」(段落【0002】)

イ 「【0009】
【発明の実施の形態】図1は、本発明によるモータ制御装置が搭載されたハイブリッド車両の一実施の形態の構成を示す図である。エンジン2と駆動用モータ4とを動力源とするハイブリッド車両は、電磁クラッチ3の切断、接続制御により、エンジン2による走行、駆動用モータ4による走行、エンジン2と駆動用モータ4を併用しての走行のいずれかのモードで走行する。電磁クラッチ3の制御は、クラッチコントローラ27により行われる。
・・・
【0015】モータコントローラ(M/C)17は、ハイブリッドコントロールモジュール16またはCVTコントローラ21からの信号に基づいて、各モータ1,4,10の回転速度や出力トルクなどの制御を行うために、各インバータ11,12,13を制御する。エンジンコントロールモジュール(ECM)18は、エンジン2の回転速度や出力トルクなど、エンジン2の制御を行う。エンジンコントロールモジュール18は、ハイブリッドコントロールモジュール(HCM)16と接続されている。
【0016】ハイブリッドコントロールモジュール16は、モータコントローラ17、エンジンコントロールモジュール18、CVTコントローラ21からの信号に基づいて、ハイブリッド車両をどのように走行させるかについての制御演算を行う。さらに、演算結果に基づいてエンジン2、各モータ1,4,10、CVT5の制御方法について決定し、制御指令値をモータコントローラ17、エンジンコントロールモジュール18、CVTコントローラ21にそれぞれ出力する。また、ハイブリッドコントロールモジュール16には、強電ライン28の電圧を検出する電圧センサ26、車両の異常を乗員に報知するスピーカ30とディスプレイ31、車速を検出する車速センサ32が接続されている。
【0017】インバータ11,12,13とバッテリ15との間に設けられているジャンクションボックス(J/B)19は、リレーコイル22、リレースイッチ23、ヒューズ24を備える。不図示の補助バッテリ(例えば12V)からリレーコイル22に電流が流れることにより、リレースイッチ23が閉じてバッテリ15の電力がインバータ11,12,13に供給される。リレースイッチ23は、車両の走行中にドライバが誤ってイグニッションスイッチ(不図示)をオフにした場合や、車両の異常を検知したハイブリッドコントロールモジュール16からの信号に基づいて、オフとなる。すなわち、スイッチ29が開いて、不図示の補助バッテリからリレーコイル22に流れる電流が遮断されることにより、リレースイッチ23がオフとなる。リレースイッチ23がオフになると、バッテリ15の電力が各インバータ11,12,13に供給されないので、各モータ1,4,10を駆動することができなくなる。
【0018】なお、インバータ11,12,13は、不図示のインバータケースで覆われている。インバータ11には高圧・高電流が流れているので、インバータケースに設けられたスイッチ25は、ケースが開けられると強制的に接続を絶つようにする。また、インバータ内部の詳細については、図1に示すように、インバータ12についてのみ詳しく描き、インバータ11とインバータ13の内部構成についての詳細図は省略する。
【0019】図2は、車両走行中にリレースイッチ23がオフとなった場合に、本発明によるモータ制御装置により行われる一実施の形態の制御を示すフローチャートである。この制御は、ハイブリッドコントロールモジュール16により行われる。
【0020】ステップS10では、不図示のイグニッションスイッチがオンされたか否かを判定する。オンされたと判定するとステップS20に進み、オンされていないと判定すると、オンされるまでステップS10で待機する。ステップS20では、強電ライン28が断線したか否かを判定する。この判定は、電圧センサ26により強電ライン28の電圧を検出することにより行われる。電圧センサ26により検出した電圧がハイブリッドコントロールモジュール16に送信されて、断線が生じていないと判定するとステップS30に進む。強電ライン28に断線が生じていると判定するとステップS40に進む。
【0021】ステップS30では、不図示のイグニッションスイッチがオフとなったか否かを判定する。イグニッションスイッチ(不図示)がオフとなるのは、上述したように、ドライバが誤って不図示のイグニッションスイッチをオフにする場合や、車両の異常等により、ドライバが不図示のイグニッションスイッチを操作しないにも関わらず、イグニッションスイッチ(不図示)がオフとなる場合等である。イグニッションスイッチ(不図示)がオフとなっていると判定するとステップS40に進み、オフになっていないと判定すると、ステップS20に戻る。ステップS30からステップS20に戻るのは、強電ライン28に断線が生じておらず、かつ、不図示のイグニッションスイッチがオンとなっている正常の状態の時である。一方、ステップS40に進むのは、強電ライン28に断線が生じているか、不図示のイグニッションスイッチがオフとなっている場合である。
【0022】ステップS40では、リレースイッチ23をオフにしてステップS50に進む。リレースイッチ23がオフとなることにより、バッテリ15の電力は各インバータ11,12,13に供給されなくなる。従って、ステップS50では、強電ライン28に断線が生じているか、ドライバの意思に反してイグニッションスイッチがオフとなっているので、スピーカ30および/またはディスプレイ31により、車両に異常が発生していることをドライバに報知する。
【0023】ステップS60では、車速センサ32で検出した車速を、ハイブリッドコントロールモジュール16に読み込む。次のステップS70では、ステップS60で検出した車速が0(km/h)であるか否かを判定する。車速が0(km/h)であると判定するとステップS140に進む。車速が0(km/h)でない、すなわち、車両が走行中であると判定するとステップS80に進む。車両が走行中の場合、ステップS40でリレースイッチ23をオフとしたので、バッテリ15の電力がオイルポンプ駆動用モータ10に供給されておらず、上述したように、このままの状態ではCVT5に圧油が供給されない状態が継続してしまう。従って、ステップS80以降では、オイルポンプ駆動用モータ10に電力を供給するための制御を行う。
【0024】ステップS80では、エンジンコントロールモジュール18およびモータコントローラ17からの信号に基づいて、エンジン2または発電用モータ1に異常が発生していないか否かを判定する。エンジン2または発電用モータ1に異常が発生していると判定するとステップS120に進む。エンジン2と発電用モータ1がともに正常であると判定するとステップS90に進む。
【0025】ステップS90では、ハイブリッドコントロールモジュール16がエンジンコントロールモジュール18に送信しているエンジン制御データに基づいて、エンジンが停止しているか否かを判定する。すなわち、ハイブリッドコントロールモジュール16がエンジン2を停止する制御データをエンジンコントロールモジュール18に送信していれば、エンジン2は停止していると判定する。エンジン2が停止していると判定するとステップS100に進み、エンジン2が停止していないと判定するとステップS110に進む。
【0026】ステップS100では、エンジン2には異常が発生しておらず、例えばドライバが誤ってキースイッチ(不図示)をオフしてしまったために、エンジン2が停止してしまっているので、エンジン2を始動する制御データをエンジンコントロールモジュール18に送信する。エンジンコントロールモジュール18は、この制御データに基づいてエンジン2を始動させる。エンジンが始動するとステップS110に進む。ステップS110では、発電用モータ1に発電を行わせるための制御データをモータコントローラ17に送信する。モータコントローラ17は、この制御データに基づいて発電用モータ1に発電を行わせる。発電用モータ1により発電された電力は、オイルポンプ駆動用モータ10に直接供給される。」(段落【0009】ないし【0026】)

(2)引用文献に記載された事項
ア 上記(1)ア及び上記(1)イの段落【0009】の記載から、ハイブリッド車両は、エンジンが停止した状態で車両を駆動可能な駆動用モータを備えるものであることが分かる。

イ 上記(1)イの「【0017】・・・リレースイッチ23は、車両の走行中にドライバが誤ってイグニッションスイッチ(不図示)をオフにした場合や、車両の異常を検知したハイブリッドコントロールモジュール16からの信号に基づいて、オフとなる。すなわち、スイッチ29が開いて、不図示の補助バッテリからリレーコイル22に流れる電流が遮断されることにより、リレースイッチ23がオフとなる。リレースイッチ23がオフになると、バッテリ15の電力が各インバータ11,12,13に供給されないので、各モータ1,4,10を駆動することができなくなる。」との記載、同イの「【0022】・・・ステップS50では、強電ライン28に断線が生じているか、ドライバの意思に反してイグニッションスイッチがオフとなっているので、スピーカ30および/またはディスプレイ31により、車両に異常が発生していることをドライバに報知する。」との記載、及び、同イの「【0026】ステップS100では、エンジン2には異常が発生しておらず、例えばドライバが誤ってキースイッチ(不図示)をオフしてしまったために、エンジン2が停止してしまっている」との記載、並びに、上記(1)イの段落【0015】ないし【0018】及び図1に記載された制御装置の構成から、イグニッションスイッチが、車両システム及びエンジンを停止させる操作を受け付けるものであることが分かり、停止操作と同様にイグニッションスイッチが、車両システムの起動及びエンジンを始動させる操作を受け付けるものであることは明らかである。

(3)引用文献に記載された発明
上記(1)及び(2)並びに図1及び2の記載を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「ハイブリッド車両の制御装置であって、
ハイブリッド車両は、エンジンと、エンジンが停止した状態で車両を駆動可能な駆動用モータと、車両システムを起動および停止させる操作を受け付けるイグニッションスイッチとを備え、
ハイブリッド車両の走行中にドライバが誤ってイグニッションスイッチをオフとした場合に、ドライバの意思に反してイグニッションスイッチがオフとなっているので、スピーカおよび/またはディスプレイにより、車両に異常が発生していることをドライバに報知し、エンジンを始動させる制御装置。」

5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ハイブリッド車両」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「車両」に相当し、以下同様に、「制御装置」は「制御装置」に、「エンジン」は「エンジン」に、「エンジンが停止した状態で車両を駆動可能な駆動用モータ」は「前記エンジンが停止した状態で前記車両を駆動可能なモータ」に、「ハイブリッド車両の走行中にドライバが誤ってイグニッションスイッチをオフとした場合に」は「前記車両の走行中に前記車両システムを停止させる操作がされた後において」に、「エンジンを始動させる」は「前記エンジンを始動させる」にそれぞれ相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、
「車両の制御装置であって、
前記車両は、エンジンと、前記エンジンが停止した状態で前記車両を駆動可能なモータと、車両システムを起動および停止させる操作を受け付ける操作部とを備え、
前記車両の走行中に前記車両システムを停止させる操作がされた後において、前記エンジンを始動させる制御装置。」の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
車両の走行中に車両システムを停止させる操作がされた後において、エンジンを始動させることに関して、
本願発明においては、「前記車両の走行中に前記車両システムを停止させる操作がされた後において、前記車両が停止する前に前記車両システムを起動させる操作がされた場合に、Ready-On状態に移行する際に、前記エンジンを始動させるように構成されている」のに対し、
引用発明においては、「ハイブリッド車両の走行中にドライバが誤ってイグニッションスイッチをオフとした場合に、ドライバの意思に反してイグニッションスイッチがオフとなっているので、スピーカおよび/またはディスプレイにより、車両に異常が発生していることをドライバに報知し、エンジンを始動させる」点(以下、「相違点」という。)。

6 判断
引用発明の「ハイブリッド車両の走行中にドライバが誤ってイグニッションスイッチをオフとした場合に、ドライバの意思に反してイグニッションスイッチがオフとなっているので、スピーカおよび/またはディスプレイにより、車両に異常が発生していることをドライバに報知」された際に、その異常発生を解消するためのその後の操作として、イグニッションスイッチを直ちにオンとすることは、ドライバにおける当然の欲求である。そして、直ちにオンとする操作が、走行中で車両が停止する前に車両システムを起動させる操作を意味することは明らかである。そして、イグニッションスイッチのオンは、その記載のとおり、エンジンの点火スイッチのオンすなわちエンジンを始動させることであるから、引用発明は、ハイブリッド車両の走行中に車両システムを停止させる操作がされた後において、車両が停止する前に車両システムを起動させる操作がされた場合に、エンジンを始動させるように構成されているものといえる。そして、イグニッションスイッチのオンによりエンジンが始動して走行可能な状態に移行することは明らかであるから、走行可能な状態いわゆるReady-On状態等に移行する際にエンジンを始動させるようにすることに、当業者の格別の創意は要しない。
したがって、引用発明に基づき、相違点に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得ることである。

また、仮に、引用発明におけるイグニッションスイッチのオンが、エンジンを始動させないとしても、イグニッションスイッチのオンによりエンジンが始動となることは、車両一般において慣用技術であるから(以下、「慣用技術」という。)、上記したとおり、引用発明において、ドライバが異常発生を解消すべく、イグニッションスイッチを直ちにオンとした際に、エンジン始動とすることは、当業者の格別の創意工夫なしに成し得ることである。
したがって、引用発明及び慣用技術に基づき、相違点に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明は、全体として検討しても、引用発明、又は、引用発明及び慣用技術から、当業者が予測することができる以上の格別顕著な作用効果を奏するものではない。
なお、請求人は、審判請求書において、「そして、請求項1に係る発明では、上記した構成により、車両の走行中に車両システムの停止操作がされた後に、車両が停止する前に車両システムの起動操作がされた場合に、Ready-On状態に移行する際に、エンジンの始動による音や振動が発生するので、起動操作が受け付けられたことがドライバに認識されやすくなる、という特有の効果を奏します。したがって、走行中に誤って車両システムの停止操作をしてしまったドライバが、走行中に車両システムの起動操作および停止操作を繰り返し行ったとしても、エンジンの運転状態からReady-On状態であるか否かを見分けることができる、という特有の効果を奏します。」(審判請求書の3.(4))と主張しているが、走行中に誤って車両システムの停止操作をすることは、引用発明においても同様であるし、エンジンの始動により音や振動が発生し、それをドライバが認識することは、当業者が予測可能な範囲内の作用効果である。また、ハイブリッド車両において、ドライバによる始動操作に対してエンジンを反応すなわち始動させることにより、ドライバに違和感を与えないことも従来からなされてきたことである(例えば、特開2003-227366号公報の段落【0004】「運転者が始動操作を行ったときにもエンジンが回転されないため、運転者に違和感を覚えさせる場合がある。具体的には、運転者は自己が行った始動操作に対してエンジンが反応しないことから、再度の始動操作を試みたり、あるいは車両故障等のトラブルが生じたものと誤認したりする可能性がある。」及び段落【0009】「より実用的には、上述の制御手段は運転者によりパワートレインに対する始動操作が行われたとき、エンジンの出力が発生しない程度に燃料を噴射・・・とすることができる(請求項3)。この場合、特に運転者が始動操作を行った場合、エンジンの始動を確実に認識することができる。」を参照のこと。)。したがって、請求人の上記主張は採用できない。

よって、本願発明は、引用発明に基づき、又は、引用発明及び慣用技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づき、又は、引用発明及び慣用技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-22 
結審通知日 2015-01-27 
審決日 2015-02-16 
出願番号 特願2012-766(P2012-766)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
P 1 8・ 574- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 将一山村 和人  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 金澤 俊郎
藤原 直欣
発明の名称 制御装置  
代理人 特許業務法人あーく特許事務所  
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