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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1299674
審判番号 不服2012-2110  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-03 
確定日 2015-04-14 
事件の表示 特願2006-520406「制御された相分離により調製される小球状粒子の作製方法、使用および組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月21日国際公開、WO2005/035088、平成19年11月 8日国内公表、特表2007-531701〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は2004年7月19日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2003年7月18日 (US)米国)を国際出願日とする特許出願であって、出願後の経緯は以下のとおりである。
平成19年 6月20日 手続補正書の提出
平成22年 9月29日付け 拒絶理由通知
平成23年 4月12日 意見書及び手続補正書の提出
同年 9月29日付け 拒絶査定
平成24年 2月 3日 拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の 提出
同年 3月30日 手続補正書(審判請求書)の提出
同年 6月 6日付け 前置審査の結果の報告
平成25年 8月 7日 当審における審尋
平成26年 2月10日 回答書の提出
同年 4月17日付け 当審における拒絶理由通知
同年 10月20日 意見書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?75に係る発明(以下、「本願発明1?75」ともいう。)は、平成24年2月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?75に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
活性薬剤の小球状粒子を調製するための方法であって、該方法は、以下の工程:
活性薬剤、相分離促進剤および第1溶剤を含む単一液相状態の溶液を提供する工程;ならびに
該溶液を冷却してそれにより懸濁液を形成する工程であって、該懸濁液は液相中に該活性薬剤の固体小球状粒子を含み、該液相は該相分離促進剤および該溶剤を含み、該小球状粒子は実質的に球状である、工程、
を包含し、
ここで、該冷却工程は0.2℃/分から30℃/分までの制御された速度で行われる、方法。
【請求項2】
前記方法がさらに、以下:
前記活性薬剤の濃度を調整する工程;
前記相分離促進剤の濃度を調整する工程;
該溶液のイオン強度を調整する工程;
pHを調整する工程;および
該溶液の重量モル浸透圧濃度を調整する工程、
からなる群より選択される工程を前記冷却工程の前または間に包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性薬剤の濃度を変化させる工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記相分離促進剤の濃度を変化させる工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液が、相転移温度、第1温度および第2温度を有し、該溶液を冷却する工程は、該第1温度から該第2温度までの該溶液の冷却によるものであり、ここで、該第1温度は該溶液の相転移温度よりも高く、かつ該第2温度は該溶液の相転移温度よりも低い、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2温度が、前記溶液の凝固点よりも高い、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2温度が、前記溶液の凝固点よりも低い、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液を提供する工程が、以下の工程:
前記第1溶剤中に相分離促進剤を溶解して混合物を生成する工程;および
前記活性薬剤を該混合物に添加して溶液を形成する工程、
を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記活性薬剤を、前記第1溶剤または該第1溶剤と混和性の第2溶剤中に溶解し、その後に該活性薬剤を前記混合物に添加する工程をさらに包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液が、該溶液の凝固点を降下させるための凝固点降下剤をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記凝固点降下剤が、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記相分離促進剤が、水溶性または水混和性の薬剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記相分離促進剤が、直線状または分岐状ポリマー、炭水化物系ポリマー、ポリ脂肪族アルコール、ポリ(ビニル)ポリマー、ポリアクリル酸、ポリ有機酸、ポリアミノ酸、コポリマーおよびブロックコポリマー、ter-ポリマー、ポリエーテル、天然に存在するポリマー、ポリイミド、界面活性剤、ポリエステル、分岐状および環状ポリマー、ポリアルデヒド、デンプン、置換デンプン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポロクサマー、エタノール、アセトン、ならびにイソプロパノールからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記相分離促進剤が、ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記小球状粒子が、該小球状粒子の安定性を高めるために、該小球状粒子からの前記活性薬剤の徐放をもたらすために、または生物組織への該活性薬剤の浸透を高めるために、賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記賦形剤が、炭水化物、カチオン、アニオン、アミノ酸、脂質、脂肪酸、界面活性剤、トリグリセリド、胆汁酸またはそれらの塩、脂肪酸エステル、およびポリマーからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カチオンがZn^(2+)、Mg^(2+)、およびCa^(2+)からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記胆汁酸がコール酸またはその塩である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記小球状粒子を収集する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記小球状粒子を収集する工程が、前記活性薬剤が前記液体媒体において可溶性ではなく、かつ前記相分離促進剤が該液体媒体において可溶性である温度にて、該粒子を液体媒体で洗浄することによる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記洗浄工程が、ダイアフィルトレーションまたは遠心分離によるものである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記液体媒体が、水性または有機性である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記液体媒体が、超臨界流体または超臨界流体と超臨界流体混和性溶剤との混合物である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記有機性液体媒体が、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトレート(acetonitrate)、酢酸エチル、エタノール、およびペンタンからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記液体媒体が、該液体媒体中の活性薬剤の溶解度を低下させる薬剤をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記液体媒体中の活性薬剤の溶解度を低下させる薬剤が、錯イオンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記錯イオンが、Zn^(2+)、Ca^(2+)、Fe^(2+)、Mg^(2+)、Mn^(2+)、Na^(+)およびNH_(4)^(+)からなる群より選択されるカチオンである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記液体媒体を除去する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記液体媒体を除去する工程が、凍結乾燥、乾燥または蒸発による、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記液体媒体が、賦形剤をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記賦形剤が、前記小球状粒子の安定性を高めて、該小球状粒子からの前記活性薬剤の徐放をもたらすか、または、生物組織への該活性薬剤の浸透を高める、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記賦形剤が、炭水化物、カチオン、アニオン、アミノ酸、脂質、脂肪酸、界面活性剤、トリグリセリド、胆汁酸またはそれらの塩、脂肪酸エステル、およびポリマーからなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記カチオンが、Zn^(2+)、Mg^(2+)、およびCa^(2+)からなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記賦形剤がコール酸またはその塩である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記相分離促進剤がポロクサマー、ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記溶液が、水性または水混和性溶剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記水混和性溶剤が、N-メチル-2-ピロリジノン(N-メチル-2-ピロリドン)、2-ピロリジノン(2-ピロリドン)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、酢酸、乳酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、3-ペンタノール、n-プロパノール、ベンジルアルコール、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG-4、PEG-8、PEG-9、PEG-12、PEG-14、PEG-16、PEG-120、PEG-75、PEG-150、ポリエチレングリコールエステル、PEG-4ジラウレート、PEG-20ジラウレート、PEG-6イソステアレート、PEG-8パルミトステアレート、PEG-150パルミトステアレート、ポリエチレングリコールソルビタン、PEG-20ソルビタンイソステアレート、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、PEG-3ジメチルエーテル、PEG-4ジメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンアルギレート、PPG-10ブタンジオール、PPG-10メチルグルコースエーテル、PPG-20メチルグルコースエーテル、PPG-15ステアリルエーテル、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、プロピレングリコールラウレート、およびグリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)、またはこれらの組合せからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記活性薬剤が、薬学的に活性な物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記薬学的に活性な化合物が、治療剤、診断用薬、化粧品、栄養剤、および農薬からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記活性薬剤が高分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記高分子が、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、ウイルスおよび核酸からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記タンパク質が、血液凝固カスケードのタンパク質、VII因子、VIII因子、IX因子、サブチリシン、オボアルブミン、α-1-アンチトリプシン、DNAse、スーパーオキシドジスムターゼ、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、成長ホルモン、エリスロポエチン、インスリン様成長因子またはそれらのアナログ、インターフェロン、グラチラマー、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fabフラグメント、単鎖抗体、ペグ化タンパク質、グリコシル化または高グリコシル化タンパク質、デスモプレシン、LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニスト、バソプレッシン、シクロスポリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモンペプチドおよびインスリンからなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記粒子が、前記活性薬剤を必要とする被験体へのインビボ送達に適した、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記送達方法が、注射可能送達、吸入可能送達、非経口送達、局所送達、経口送達、直腸送達、経鼻送達、肺送達、膣送達、頬側送達、舌下送達、経皮送達、経粘膜送達、耳送達、眼球送達、眼球内送達および眼送達からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記送達方法が、肺送達によるものである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記粒子が、前記被験体の肺の中心エリアまたは末梢エリア中の沈積に適した、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記粒子が、乾燥粉末吸入器、定量噴霧式吸入器、および噴霧器からなる群より選択されるデバイスによって送達される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記粒子が、安定な液体懸濁液として送達される、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記粒子が、実質的に同じ粒子サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記粒子が、0.01μmから200μmまでの平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記粒子が、0.5μmから10μmまでの平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記活性薬剤が、前記粒子の0.1重量%から100重量%までである、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記活性薬剤が、前記粒子の75重量%から100重量%までである、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
前記活性薬剤が、前記粒子の90重量%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記小球状粒子が、狭いサイズ分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
前記小球状粒子の第90百分位数の体積粒径の第10百分位数の体積粒径に対する比が5以下である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記小球状粒子が、半晶質または非晶質である、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
活性薬剤の小球状粒子を調製する方法であって、該方法は、以下の工程:
該活性薬剤および相分離促進剤を水性または水混和性溶剤中に溶解して、単一連続相の溶液を形成する工程、および
該溶液を冷却してそれにより懸濁液を形成する工程であって、該懸濁液は、該相分離促進剤の液相中に該活性薬剤の固体小球状粒子を含む、工程
を包含し、
ここで、該冷却工程は0.2℃/分から30℃/分までの制御された速度で行われる、する、方法。
【請求項59】
前記溶液が、相転移温度、第1温度および第2温度を有し、該溶液を冷却する工程は、該溶液を該第1温度から該第2温度まで冷却することによるものであり、ここで、該第1温度は該溶液の該相転移温度よりも高く、かつ該第2温度は該溶液の該相転移温度よりも低い、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記溶液を冷却する工程が、前記溶液の凍結点より高い温度まで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項61】
前記制御された速度は、25.6℃/分よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項62】
前記相分離促進剤が、ポロクサマーとポリエチレングリコールとの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項63】
前記第一溶剤が水である、請求項1に記載の方法。
【請求項64】
前記出発溶液から前記粒子への活性薬剤の変換パーセンテージは、少なくとも90%である、請求項1に記載の方法。
【請求項65】
前記粒子から放出される活性薬剤は、特異的活性によって決定される場合に、前記出発溶液中での該活性薬剤の生物活性を保持している、請求項1に記載の方法。
【請求項66】
前記粒子から放出される活性薬剤は、円偏光分光光度計によって決定される場合に、前記出発溶液中での該活性薬剤の構造的完全性を保持している、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
前記小球状粒子は、2.5未満の幾何学的標準偏差を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項68】
前記幾何学的標準偏差は1.8未満であり、かつ前記小球状粒子の第90百分位数の体積粒径の第10百分位数の体積粒径に対する比が3未満である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
活性薬剤の固体小球状粒子を調製するための方法であって、該方法は、以下:
活性薬剤および相分離促進剤を含む、単一液相状態の水溶液を提供する工程;
該水溶液を冷却する工程;
それによって、液相に懸濁された、活性薬剤の固体小球状粒子を含む懸濁物を形成する工程であって、該液相は、相分離促進剤および水を含み、該固体小球状粒子は実質的に球状である、工程、
を包含し、
ここで、該冷却する工程は、0.2℃/分から30℃/分までの制御された速度で行われる、
方法。
【請求項70】
前記水溶液を冷却する工程は、一定速度または線形速度、非線形速度、断続的速度またはプログラム速度において実施される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記水溶液を冷却する工程は、前記活性薬剤の相転移温度より低い温度まで該溶液を冷却する工程を包含する、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記水溶液は、凍結点抑制剤をさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記水溶液を冷却する工程は、該溶液の凍結点より高い温度まで該溶液を冷却する工程を包含する、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記凍結点抑制剤はポリエチレングリコールを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
請求項42に記載の方法であって、ここで、前記LHRHアゴニストがロイプロリド、ゴセレリン、ナファレリンおよびブセレリンからなる群から選択される、方法。」

第3 特許法第29条第1項第3号(新規性)について

第3-1 引用例及び引用発明
当審における、平成26年4月17日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である
特開平11-302156号公報(原査定で引用された引用文献4。以下、「刊行物A」という。)及び
特開2002-293798号公報(原査定で引用された引用文献5。以下、「刊行物B」という。)
には、それぞれ以下の事項が記載されている。

(1)刊行物A
1-ア.「【請求項1】 ポリペプチドおよびポリエチレングリコールの混合水溶液を凍結乾燥し、得られた固形物に、ポリペプチドは溶解しえないがポリエチレングリコールは溶解しうる有機溶媒を添加することを特徴とするポリペプチドの微粒子化方法。」
1-イ.「近年、生理活性を有するポリペプチドが、ヒトまたは動物の種々の疾患の治療、予防に広く利用されている。」 (段落0002)
1-ウ.「ポリペプチドの具体例としては、例えばホルモン類、酵素類、サイトカイン類成長因子類などが挙げられる。より具体的には、例えば以下のポリペプチドが挙げられる。・・・ホルモン類としては、例えば・・・インスリン・・・などが挙げられる。
酵素類としては、例えば・・・スーパーオキシド・ディスムターゼ(SOD)・・・などが挙げられる。」(段落0017-0022)
1-エ.「本発明において用いられるポリエチレングリコールは、製剤技術の分野において通常用いられるものであれば特に限定されず、かかるポリエチレングリコールとしては、平均分子量が、400?500000のもの、好ましくは2000?100000のもの、とりわけ好ましくは6000?70000のものがあげられる。」(段落0026)
1-オ.「混合水溶液を凍結乾燥するにあたっては、まず混合水溶液を凍結させるが、凍結は、混合水溶液の温度が急激に降下するような条件よりも、徐々に降下するような条件が好ましい。このような条件は、設定温度が-20?-60℃の通常用いられる冷凍庫もしくは凍結乾燥機を用いて凍結させれば容易に達せられるが、より具体的にこのような条件を明示するとすれば、初期降温速度(冷却開始後1分当たりの混合水溶液の降下温度)が約2?40℃/分、好ましくは約10?30℃/分である。」(段落0031)
1-カ.「本発明においては、凍結乾燥工程の凍結過程において、混合水溶液中の水から最初に凝固を開始するため、非氷晶の部分においてポリペプチドおよびポリエチレングリコール濃度の濃縮が起こり、その結果、ポリペプチドに富んだ相とポリエチレングリコールに富んだ相との相分離が起こる。
この相分離現象は、ポリエチレングリコールに富んだ相の中にポリペプチドに富んだ相が微小液滴を形成する場合と、ポリペプチドに富んだ相の中にポリエチレングリコール相が微小液滴を形成する場合があり、どちらの相分離形態になるかは、混合水溶液中のポリエチレングリコール/ポリペプチドの濃度比率によって決定される。この濃度比率が、ポリペプチドの種類およびポリエチレングリコールの分子量により決定されるある一定値(転相比率と称す)以上であれば、ポリエチレングリコールに富んだ相の中にポリペプチドに富んだ相が微小液滴を形成することとなる。一般に、濃度比率を転相比率以上にすると、より粒子径の小さな球形の微粒子が得られ、濃度比率を転相比率以下にすると、粒子径がやや大きく、不定形な形状をした粒子が得られる。したがって、より粒子径の小さな微粒子、例えば、平均粒子径が10μm以下の微粒子を得るには、濃度比率を転相比率以上にすることが好ましい。」(段落0033-0034)
1-キ.「本発明においては、凍結乾燥により得られた固形物の段階で既にポリペプチドが微粒子としてポリエチレングリコール中に分散した状態となっているため、ポリエチレングリコールを有機溶媒を用いて溶解させるだけでポリペプチド微粒子が得られ、粉砕や超音波照射などの微細化手段は必要としない。」(段落0039)
1-ク.「実施例1
ウシ血清アルブミン(分子量67000、シグマ製)5%(w/v)の水溶液、ポリエチレングリコール6000(和光純薬製)5%(w/v)水溶液および精製水を適宜混合し、ウシ血清アルブミン濃度10mg/ml、ポリエチレングリコール濃度0?30mg/mlの水溶液(濃度比率0?3)をそれぞれ1mlずつ調製した。これら水溶液を-45℃で凍結させた後、凍結乾燥機(KYOWA VAC RLE-52ES:共和真空技術製)を用い凍結乾燥(真空度約0.02torr、-20℃3時間、20℃約12時間)し、得られた固形物に塩化メチレン2mlを添加してウシ血清アルブミン微粒子懸濁液を得た。・・・図2に示した通り、濃度比率0.5の場合には球形の微粒子である・・・痕跡であると思われる。」(段落0077-0080)
1-ケ.「実施例3
実施例1において、ウシ血清アルブミンにかえて、ゼラチンD(分子量3000、ニッピ製)、ゼラチンA(分子量7000、ニッピ製)、ボウマンバークインヒビター(分子量8000、シグマ製)、ダイズトリプシンインヒビター(分子量20100、シグマ製)、スーパーオキシドジスムターゼ(分子量32000、シグマ製)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(分子量40000、和光純薬製)を用いて同様の実験を行い・・・いずれのポリペプチドを用いた場合においても濃度比率を転相比率以上とすることにより、約10μm以下の微粒子が得られた。」(段落0085-0087)

(2)刊行物B
2-ア.「【請求項1】 ポリペプチドおよび相分離誘起剤を含有する水溶液の凍結物に、ポリペプチド非溶解性の水混和性有機溶媒を添加し、凍結物中の相分離誘起剤および氷を溶解することを特徴とするポリペプチド微粒子分散液の製法。」
2-イ.「近年、生理活性を有するポリペプチドが、ヒトまたは動物の種々の疾患に対する治療、予防に広く利用されている。」 (段落0002)
2-ウ.「ポリペプチドの具体例としては、例えばホルモン類、酵素類、サイトカイン類、成長因子類などが挙げられる。より具体的には、例えば以下のポリペプチドが挙げられる。
ホルモン類としては、例えば・・・インスリン・・・などが挙げられる。」(段落0022-0026)
2-エ.「本発明において用いられる相分離誘起剤としては、・・・例えば、非ペプチド性水溶性高分子があげられる。
非ペプチド性の水溶性高分子としては、平均分子量400?200000、好ましくは6000?70000のものが好適に使用でき、・・・具体例としては、ポリオキシエチレン類・・・などがあげられる。
ポリオキシエチレン類としては、ポリエチレングリコール・・・などがあげられる。」(段落0030-0032)
2-オ.「ポリペプチド-相分離誘起剤水溶液を凍結させるにあたっては、水溶液の温度が急激に降下するような条件よりも、徐々に降下するような条件が好ましい。このような条件は、設定温度が-80?-20℃の通常用いられる冷凍庫もしくは凍結乾燥機を用いて凍結させれば容易に達せられるが、より具体的にこのような条件を明示するとすれば、初期降温速度(冷却開始後1分当たりの水溶液の降下温度)が約2?40℃/分、好ましくは約10?30℃/分である。」(段落0042)
2-カ.「本発明方法の凍結過程においては、ポリペプチド-相分離誘起剤水溶液中の水から最初に凝固を開始するため、非氷晶の部分においてポリペプチドおよび相分離誘起剤濃度の濃縮が起こり、その結果、ポリペプチドに富んだ相と相分離誘起剤に富んだ相との相分離が起こる。
この相分離現象は、相分離誘起剤に富んだ相の中にポリペプチドに富んだ相が微小液滴を形成する場合と、ポリペプチドに富んだ相の中に相分離誘起剤に富んだ相が微小液滴を形成する場合があり、どちらの相分離形態になるかは、ポリペプチド-相分離誘起剤水溶液中の相分離誘起剤/ポリペプチドの濃度比率(以下、濃度比率と称す)によって決定される。この濃度比率が、ポリペプチド、相分離誘起剤の種類により決定されるある一定値(以下、転相比率と称す)以上であれば、相分離誘起剤に富んだ相の中にポリペプチドに富んだ相が微小液滴を形成することとなる。」(段落0043-0044)
2-キ.「本発明においては、ポリペプチド-相分離誘起剤水溶液を凍結させた段階で、ポリペプチド相が相分離誘起剤相中に分散した状態となっているため、凍結物中の氷および相分離誘起剤のみを溶解することにより、ポリペプチドが微粒子として得られる。」(段落0049)
2-ク.「実施例1
(1)BSA(ウシ血清アルブミン、分子量67000、シグマ製)濃度10mg/ml、PEG6000(ポリエチレングリコール6000、平均分子量7500、和光純薬製)濃度0?70mg/mlのBSA-PEG6000水溶液(PEG6000/BSAの濃度比率が0?7)をそれぞれ1mlずつ調製した。
(2)これら水溶液を-20℃で凍結させた後、-20℃で予め冷却しておいたアセトン5mlを添加し、室温においてタッチミキサーを用いて攪拌を行い、PEG6000および氷をアセトン中に溶解させ、BSA微粒子分散液を得た。遠心分離(2000rpm、5分間)を行い、上清を除去した後、アセトン2mlを添加しBSA微粒子分散液(PEG6000および水除去済)を得た。・・・BSA-PEG6000水溶液の濃度比率(PEG6000/BSA)が0.25以上において、平均粒子径が約10μm以下の微粒子が得られた。・・・本発明により得られたBSA微粒子は、球形であることがわかる。」(段落0081-0085)

(3)刊行物A及びBに記載された発明
上記摘示1-ア、1-オ、1-カ、1-ク、1-ケからみて、刊行物Aには、以下の発明(以下、「刊行物A発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ポリペプチドの球形微粒子を調製する方法であって、ポリペプチド及びポリエチレングリコールの水溶液を調製し、該溶液を初期降温速度が2?40℃/分で凍結させるに際し、ポリエチレングリコールに富んだ相の中にポリペプチドに富んだ相の微小液滴を形成する方法。」
また、上記摘示2-ア、2-オ、2-カ、2-クからみて、刊行物Bには、以下の発明(以下、「刊行物B発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ポリペプチドの球形微粒子を調製する方法であって、ポリペプチド及び相分離誘起剤の水溶液を調製し、該溶液を初期降温速度が2?40℃/分で凍結させるに際し、相分離誘起剤に富んだ相の中にポリペプチドに富んだ相の微小液滴を形成する方法。」

第3-2 対比・判断
(1)刊行物A発明との対比・判断
(1-1)本願発明58について
本願発明58と刊行物A発明とを対比する。刊行物A発明のポリペプチドは摘示1-イ、1-ウからみて、活性薬剤である。また、刊行物A発明の球形微粒子は小球状微粒子といえる。さらに、刊行物A発明のポリエチレングリコールについて、凍結過程においてポリエチレングリコールに富んだ相とポリペプチドに富んだ相との相分離が起こるものであり(摘示1-カ)、その分子量(摘示1-エ、1-ク)も本願発明58の相分離促進剤(本願明細書段落0025)と同程度であるから、該ポリエチレングリコールは本願発明58の相分離促進剤に相当する。そして、刊行物A発明におけるポリペプチド及びポリエチレングリコールの水溶液は単一連続相であり、さらに、溶液を降温により凍結することは冷却することを意味する。

したがって、両者は、
「活性薬剤の小球状粒子を調製する方法であって、該方法は、以下の工程:該活性薬剤および相分離促進剤を水性または水混和性溶剤中に溶解して、単一連続相の溶液を形成する工程、および該溶液を冷却する工程を包含する、方法。」である点で一致し、以下の点で一応相違するものと認められる。

相違点1:冷却する工程について、本願発明58は、「溶液を冷却してそれにより懸濁液を形成する工程であって、該懸濁液は、該相分離促進剤の液相中に該活性薬剤の固体小球状粒子を含む」と特定しているのに対し、刊行物A発明では、「ポリエチレングリコールに富んだ相の中にポリペプチドに富んだ相の微小液滴を形成する」とされている点。

相違点2:冷却の速度について、本願発明58は、「冷却工程は0.2℃/分から30℃/分までの制御された速度で行われる」と特定しているのに対し、刊行物A発明では、「初期降温速度が2?40℃/分で凍結させる」とされている点。

上記相違点について検討する。

<相違点1について>
摘示1-キにあるように、刊行物A発明では、凍結乾燥により得られた固形物の段階でポリペプチドが微粒子としてポリエチレングリコール中に分散した状態となっており、ポリエチレングリコールを有機溶媒を用いて溶解させるだけでポリペプチド微粒子が得られることから、分散媒であるポリエチレングリコールが凍結する以前にはポリペプチドがポリエチレングリコール中に固体の微粒子として分散しているものと考えられる。したがって、刊行物A発明においても、「溶液を冷却してそれにより懸濁液を形成する工程であって、該懸濁液は、該相分離促進剤の液相中に該活性薬剤の固体小球状粒子を含む」工程を経ていると認められるから、両発明はこの点で実質的に相違しない。

<相違点2について>
摘示1-オにあるように、初期降温速度とは冷却開始後1分当たりの混合水溶液の降下温度とされており、刊行物A発明の該速度は、本願発明58における速度とそのほとんどの範囲において重複しており、刊行物Aには、本願発明58の範囲よりも狭い範囲である、約10?30℃/分であることも記載されている。また、刊行物A発明において、該速度が制御されていることは明らかである。したがって、この点においても両発明は実質的に相違しない。

よって、両発明に異なるところはなく、本願発明58は、刊行物A発明と同一である。

(1-2)本願発明59について
本願発明59においては、溶液を冷却するのであるから、同発明の溶液の相転移とは、液相から固相への相転移であると認められるところ、刊行物A発明では、溶液を凍結させるのであるから、溶液の相転移温度よりも高い温度から相転移温度よりも低い温度へ冷却していることになる。したがって、本願請求項59において特定される事項は刊行物A発明との対比において新たな相違点を生ずるものではない。したがって、本願発明59は、本願発明58と同様、刊行物A発明と同一である。

(2)刊行物B発明との対比・判断
(2-1)本願発明58について
本願発明58と刊行物B発明とを対比する。刊行物B発明のポリペプチドは摘示2-イ、2-ウからみて、活性薬剤である。また、刊行物B発明の球形微粒子は小球状微粒子であるといえる。さらに、刊行物B発明の相分離誘起剤は、凍結過程においてポリペプチドに富んだ相と相分離誘起剤に富んだ相との相分離が起こるものであり(摘示2-カ)、その分子量(摘示2-エ、2-ク)も本願発明58の相分離促進剤(本願明細書段落0025)と同程度であるから、該相分離誘起剤は本願発明58の相分離促進剤に相当する。そして、刊行物B発明におけるポリペプチド及び相分離誘起剤の水溶液は単一連続相であり、溶液を降温により凍結することは冷却することを意味する。
したがって、両者は、
「活性薬剤の小球状粒子を調製する方法であって、該方法は、以下の工程:該活性薬剤および相分離促進剤を水性または水混和性溶剤中に溶解して、単一連続相の溶液を形成する工程、および該溶液を冷却する工程を包含する、方法。」である点で一致し、以下の点で一応相違するものと認められる。

相違点1:冷却する工程について、本願発明58は、「溶液を冷却してそれにより懸濁液を形成する工程であって、該懸濁液は、該相分離促進剤の液相中に該活性薬剤の固体小球状粒子を含む」と特定しているのに対し、刊行物B発明では、「相分離誘起剤に富んだ相の中にポリペプチドに富んだ相の微小液滴を形成する」とされている点。

相違点2:冷却の速度について、本願発明58は、「冷却工程は0.2℃/分から30℃/分までの制御された速度で行われる」と特定しているのに対し、刊行物A発明では、「初期降温速度が2?40℃/分で凍結させる」とされている点。

上記相違点について検討する。

<相違点1について>
摘示2-キにあるように、刊行物B発明では、ポリペプチド-相分離誘起剤水溶液を凍結させた段階で、ポリペプチド相が相分離誘起剤相中に分散した状態となっており、凍結物中の氷及び相分離誘起剤のみを溶解することで、ポリペプチドが微粒子として得られることから、分散媒である相分離誘起剤が凍結する以前にはポリペプチドが相分離誘起剤中に固体の微粒子として分散しているものと考えられる。したがって、刊行物B発明においても、「溶液を冷却してそれにより懸濁液を形成する工程であって、該懸濁液は、該相分離促進剤の液相中に該活性薬剤の固体小球状粒子を含む」工程を経ていると認められるから、両発明はこの点で実質的に相違しない。

<相違点2について>
摘示2-オにあるように、初期降温速度とは冷却開始後1分当たりの水溶液の降下温度とされており、刊行物B発明の該速度は、本願発明58における速度とそのほとんどの範囲において重複しており、刊行物Bには、本願発明58の範囲よりも狭い範囲である、約10?30℃/分であることも記載されている。また、刊行物B発明において、該速度が制御されていることは明らかである。したがって、この点においても両発明は実質的に相違しない。

よって、両発明に異なるところはなく、本願発明58は、刊行物B発明と同一である。

(2-2)本願発明59について
本願発明59においては、溶液を冷却するのであるから、同発明の溶液の相転移とは、液相から固相への相転移であると認められるところ、刊行物B発明では、溶液を凍結させるのであるから、溶液の相転移温度よりも高い温度から相転移温度よりも低い温度へ冷却していることになる。したがって、本願請求項59において特定される事項は刊行物B発明との対比において新たな相違点を生ずるものではない。したがって、本願発明59は、本願発明58と同様、刊行物B発明と同一である。

(3)まとめ
したがって、本願発明58及び59は刊行物A及びBに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許を受けることができない。

第4 特許法第36条第6項第2号(明確性)について

本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記A?Iの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

A)本願請求項5に、「前記溶液が、相転移温度、第1温度および第2温度を有し、・・・かつ該第2温度は該溶液の相転移温度よりも低い、請求項1に記載の方法。」と記載される一方、請求項6に、「前記第2温度が、前記溶液の凝固点よりも高い、請求項5に記載の方法。」と、請求項7に「前記第2温度が、前記溶液の凝固点よりも低い、請求項5に記載の方法。」と記載されているところ、前記溶液の相転移温度と前記溶液の凝固点がどのような関係にあるか不明確である。また、凝固点は、液相から固相へ相転移するときの温度であって、相転移温度であると認められるところ、請求項5で第2温度が該溶液の相転移温度よりも低いとされる一方、請求項6で第2温度が前記溶液の凝固点よりも高いとされ、互いに矛盾する事項を特定しており、不明確である。
B)請求項20に、「・・・前記液体媒体・・・請求項19に記載の方法。」と記載されているところ、請求項19及び請求項19が引用する請求項1に液体媒体なる記載は存在せず、不明確である。
C)請求項21に「前記洗浄工程が・・・請求項20に記載の方法。」と記載されているところ、請求項20に洗浄工程なる記載は存在せず、不明確である。
D)請求項39に、「前記薬学的に活性な化合物が・・・請求項38に記載の方法。」と記載されているところ、請求項38に薬学的に活性な化合物なる記載は存在せず、不明確である。
E)請求項44に、「前記送達方法が・・・請求項43に記載の方法。」と記載されているところ、請求項43に送達方法なる記載は存在せず、不明確である。
F)請求項58に「・・・行われる、する、方法。」と記載があるが、かかる記載により特定される発明が不明確である。
G)請求項64に、「前記出発溶液・・・請求項1に記載の方法。」と記載されているところ、請求項1に出発溶液なる記載は存在せず、不明確である。
H)請求項69に、「該水溶液を冷却する工程;それによって、・・・は実質的に球状である、工程」 と記載があるが、「それによって」の「それ」とは何を指すか不明確である。また、「水溶液を冷却する工程」と「それによって・・・工程」との関係が不明確である。
I)請求項72に「凍結点抑制剤」と、請求項73に「凍結点」と記載があるが、いずれもどのようなものであるか不明確であり、また、請求項10、11に記載の凝固点降下剤、凝固点との異同が不明確である。

第5 特許法第184の12第2項により読み替えて適用する同法第17条の2第3項(新規事項の追加)について

平成19年6月20日、平成23年4月12日、平成24年2月3日提出の手続補正書による補正は、下記A?Cの点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く)(以下、翻訳文等という)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第184条の12第2項により読み替えて適用する同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

A)上記補正は、「前記出発溶液から前記粒子への活性薬剤の変換パーセンテージは、少なくとも90%である、請求項1に記載の方法。」との記載を、平成19年6月20日提出の手続補正書(以下、「補正書1」という。)の請求項83として、平成23年4月12日提出の手続補正書(以下、「補正書2」という。)及び平成24年2月3日提出の手続補正書(以下、「補正書3」という。)の各々請求項64として、追加するものであるところ、かかる事項は上記翻訳文等に記載がなく、翻訳文等に記載された事項から自明の事項でもない。したがって、それら補正は新規事項の追加にあたる。
B)上記補正は、「前記粒子から放出される活性薬剤は、特異的活性によって決定される場合に、前記出発溶液中での該活性薬剤の生物活性を保持している、請求項1に記載の方法。」 との記載を、補正書1の請求項84として、補正書2及び補正書3の各々請求項65として追加するものであるところ、かかる事項は上記翻訳文等に記載がなく、翻訳文等に記載された事項から自明の事項でもない。したがって、それら補正は新規事項の追加にあたる。
C)上記補正は、「前記水溶液は、凍結点抑制剤をさらに含む、請求項・・・記載の方法。」、「前記水溶液を冷却する工程は、該溶液の凍結点より高い温度まで該溶液を冷却する工程を包含する、請求項・・・記載の方法。」、「前記凍結点抑制剤はポリエチレングリコールを含む、・・・記載の方法。」 との記載を、補正書1の請求項92-94として、補正書2及び補正書3の各々請求項72-74として追加するものであるところ、かかる事項は上記翻訳文等に記載がなく、翻訳文等に記載された事項から自明の事項でもない。したがって、それら補正は新規事項の追加にあたる。

第6 審判請求人の主張
上記第3?第5に示した新規性明確性新規事項の追加について、当審において、平成26年4月17日付けで拒絶の理由を通知したのに対し、審判請求人は意見書において、拒絶理由は解消されている旨主張するが、解消されている具体的な理由、根拠は示されておらず、拒絶理由が解消しているとはいえない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-19 
結審通知日 2014-11-20 
審決日 2014-12-03 
出願番号 特願2006-520406(P2006-520406)
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (A61K)
P 1 8・ 113- WZ (A61K)
P 1 8・ 537- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 直寛  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 小川 慶子
冨永 保
発明の名称 制御された相分離により調製される小球状粒子の作製方法、使用および組成物  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 安村 高明  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  

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