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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1299707
審判番号 不服2013-21736  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-06 
確定日 2015-04-16 
事件の表示 特願2010-168342「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 9日出願公開、特開2012- 24469〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年7月27日の出願であって、平成25年7月29日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされた後、当審において、平成26年11月17日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月14日に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成27年1月14日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「遊技領域の略中央にセンターケースを配置し、
発射手段によって前記遊技領域の上部側に打ち込まれた遊技球は前記センターケースの左側の左流下経路と右側の右流下経路との何れかを流下するように構成し、
特別図柄始動手段が遊技球を検出することに基づいて取得される判定乱数値に基づいて遊技図柄を変動表示する特別図柄表示手段と、
前記判定乱数値を前記特別図柄表示手段による図柄変動に供されるまで所定の上限個数を限度として記憶する乱数記憶手段と、
前記乱数記憶手段に記憶された前記判定乱数値が所定の判定値と一致し、前記特別図柄表示手段の変動後の停止図柄が予め定められた所定態様となった場合に、開閉入賞手段を一又は複数種類の開放パターンの何れかに従って開放する利益状態を発生させる利益状態発生手段と、
遊技球が前記左流下経路と前記右流下経路との何れか一方の特定流下経路側を流下する方が遊技者に有利な特定期間中であるか、他方の非特定流下経路側を流下する方が遊技者に有利な非特定期間中であるかに関する発射誘導情報を出力する発射誘導情報出力手段とを備え、
前記開閉入賞手段を前記特定流下経路上に配置した
弾球遊技機において、
前記発射誘導情報出力手段は、前記乱数記憶手段に記憶されている前記判定乱数値の中に前記判定値と一致するものが含まれていることを条件に、前記非特定期間中に前記非特定流下経路側への発射を誘導する前記発射誘導情報の出力を行わないように構成した
ことを特徴とする弾球遊技機。」

第3 刊行物
当審における拒絶の理由に引用した特開2010-119427号公報(以下「刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

1 「【0002】 従来、右打ち用の遊技領域と左打ち用の遊技領域との両方を有する遊技機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、大当りの権利発生時に打球を強打ち(右打ち)すべきことが報知される遊技機が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007-252630号公報
【特許文献2】特開平9-285631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】 しかしながら、上記した遊技機は、いずれの場合も、遊技領域右側に配設された変動入賞装置が開放するような大当りの終了後や時短状態終了後に右打ちから左打ちに戻しており、再度、当該変動入賞装置が開放するような大当りが発生した場合、左打ちに戻したばかりにも係わらず、すぐさま右打ちに変えなければならないという問題があった。
【0004】 本発明の目的は、大当りの発生前から右打ち指示を行うことのできる遊技機を提供することにある。」

2 「【請求項1】 遊技領域に複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを行う変動表示装置を配設し、始動口への入賞に基づいて前記変動表示ゲームを実行し、該変動表示ゲームが特定の結果態様を導出することに関連して変動入賞装置を遊技者に不利な状態から遊技者に有利な状態に変換する特別遊技状態を発生可能な遊技制御手段を備える遊技機において、
前記始動口は、
遊技領域左側を流下する球が入賞可能に配設した第1始動口と、
遊技領域右側に備えられ、少なくとも遊技領域右側に備えられる始動ゲートを遊技球が通過したことに基づき普図変動表示ゲームを開始し、特別の結果態様を導出することに関連して、遊技球が入賞しにくい若しくは入賞しない第1状態と、遊技球が前記第1状態よりも入賞しやすい第2状態と、に変換可能な第2始動口と、
を備え、
前記変動入賞装置は、少なくとも遊技領域右側を流下する球が入賞可能に遊技領域右側に配設した右側変動入賞装置を備え、
前記遊技制御手段は、
前記始動口に遊技球が入賞することで抽選が実行され、該抽選結果に基づいて遊技者に有利な特別遊技状態を複数段階に設定可能な特別遊技状態抽選手段と、
前記特別遊技状態抽選手段の当該抽選結果に基づいて、前記変動表示装置で表示するための変動パターンを設定する変動パターン設定手段と、
前記変動パターンの演出表示中に得た、新たな前記始動口への遊技球の入賞に基づき、始動記憶を所定の上限数まで保留する保留手段と、
前記保留手段で保留した始動記憶の抽選結果に基づく変動パターンでの演出表示の実行を順次指示する実行指示手段と、
前記変動パターンの演出表示中に前記始動口に遊技球が入賞し、その入賞するタイミングで大当り判定用カウンタ値を取得し、取得した当該大当り判定用カウンタ値と判定値とを比較判定し、当該入賞から当該入賞に基づく変動パターンの変動開始前までに当該比較判定結果に基づく状態を報知可能な抽選結果先読み手段と、
前記右側変動入賞装置が遊技者に有利な状態となる際に遊技領域右側に遊技球を発射することを指示する発射方向指示制御手段と、
を備え、
前記発射方向指示制御手段は、
前記抽選結果先読み手段に基づき、前記右側変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変換する当りがあると報知する場合は、前記右側変動入賞装置が遊技者に有利な状態となる前から右打ち指示を行うことを特徴とする遊技機。」

3 「【0029】 遊技盤1は、各種部材の取付ベースとなる平板状の遊技盤本体1b(木製もしくは合成樹脂製)を備え、該遊技盤本体1bの前面にガイドレール2で囲まれた遊技領域1aを有している。また、遊技盤本体1bの前面であってガイドレール2の外側には、前面構成部材が取り付けられている。そして、このガイドレール2で囲まれた遊技領域1a内に発射装置から遊技球(打球;遊技媒体)を発射して遊技を行うようになっている。
【0030】 遊技領域1aの略中央には、飾り特図変動表示ゲームの表示領域となる窓部22を形成するセンターケース20が取り付けられている。このセンターケース20に形成された窓部22の後方には、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを実行可能な変動表示装置としての表示装置43が配されるようになっている。この表示装置43は、例えば、液晶ディスプレイを備え、表示内容が変化可能な表示部43aがセンターケース20の窓部22を介して遊技盤1の前面側から視認可能となるように配されている。なお、表示装置43は、液晶ディスプレイを備えるものに限らず、EL、CRT等のディスプレイを備えるものであっても良い。」

4 「【0045】 また、右側変動入賞装置(変動入賞装置)としての第2変動入賞装置110は、第1変動入賞装置10と同様に、上端側が手前側に倒れる方向に回動して開放可能になっているアタッカ形式の開閉扉110aによって開閉される大入賞口を備えていて、特別遊技状態中は、大入賞口を閉じた状態から開いた状態に変換することにより大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせ、遊技者に所定の遊技価値(賞球)を付与するようになっている。なお、開閉扉110aは、例えば、駆動装置としてのソレノイド(第2大入賞口SOL110b、図3に図示)により駆動される。また、大入賞口の内部(入賞領域)には、該大入賞口に入った遊技球を検出する第2カウントSW110c(図3に図示)が配設されている。」

5 「【0050】 遊技用ワンチップマイコン31は、内部のCPU31aが制御部、演算部を備え、演算制御を行う他、各特図変動表示ゲームの大当り判定用カウンタ値(大当り判定用乱数値)などの各種乱数値なども生成している。」

6 「【0061】 また、第1始動入賞口13に備えられた第1始動口SW13aからの遊技球の検出信号の入力に基づき、第1特図変動表示ゲームの大当り判定用乱数値(大当り用カウンタ値)を抽出してRAM31cに第1始動記憶として記憶する処理を行う。すなわち、遊技制御装置30が所定の上限数までの第1開始条件が成立していない第1始動入賞口13への遊技球の入賞数と該入賞に対応した抽選結果を特定可能な第1保留記憶データを記憶する第1保留手段(保留手段)をなす。同様に、普通変動入賞装置7に備えられた第2始動口SW7dからの遊技球の検出信号の入力に基づき、第2特図変動表示ゲームの大当り判定用乱数値(大当り用カウンタ値)を抽出してRAM31cに第2始動記憶として記憶する処理を行う。すなわち、遊技制御装置30が所定の上限数までの第2開始条件が成立していない普通変動入賞装置7への遊技球の入賞数と該入賞に対応した抽選結果を特定可能な第2保留記憶データを記憶する第2保留手段(保留手段)をなす。
【0062】 また、第1始動入賞口13(第1始動口)への遊技球の入賞時に、第1始動記憶に記憶されている大当り判定用乱数値(大当り用カウンタ値)をROM31bに記憶されている第1特図変動表示ゲーム用の判定値(特定値)と比較し、第1特図変動表示ゲームの当り(確変大当り、通常大当り、突確大当り、突時大当り、突通大当り、小当り)・はずれを判定する処理を行う。同様に、普通変動入賞装置7(第2始動口)への遊技球の入賞時に、第2始動記憶に記憶されている大当り判定用乱数値(大当り用カウンタ値)をROM31bに記憶されている第2特図変動表示ゲーム用の判定値(特定値)と比較し、第2特図変動表示ゲームの当り(確変大当り、通常大当り、突確大当り、突時大当り、突通大当り、小当り)・はずれを判定する処理を行う。すなわち、遊技制御装置30は、始動口(第1始動入賞口13、普通変動入賞装置7)に遊技球が入賞することで抽選が実行され、該抽選結果に基づいて遊技者に有利な特別遊技状態を複数段階に設定可能な特別遊技状態抽選手段をなす。」

7 「【0080】 また、通常状態Kで、第2特図変動表示ゲームの結果が4R(ラウンド)当り態様で停止した場合は、4R当り状態Hに移行し、第2変動入賞装置110の大入賞口の開放から所定時間(例えば0.3秒)が経過するまで大入賞口を開放することを1ラウンドとし、これを所定ラウンド回数(4回)継続する(繰り返す)。そして、4R当り状態Bが終了すると、次回の大当りまで電サポ付きの確変状態Lに移行する。なお、図7(2)に示すように、第2特図変動表示ゲームにおいて、4R当り状態Hの終了後、次回の大当りまで電サポ付きの確変状態Lに移行する4R通常当りの当選率は40%に設定がなされている。なお、次回の大当りまで電サポ付きの確変状態Lでは、小当り状態G、4R当り状態H、16R当り(第2変動入賞装置開放)状態I、16R当り(第1変動入賞装置開放)状態Jの何れかが発生可能となっている。
【0081】 また、通常状態Kで、第2特図変動表示ゲームの結果が16R(ラウンド)当り態様で停止した場合は、16R当り(第2変動入賞装置開放)状態I又は16R当り(第1変動入賞装置開放)状態Jに移行する。なお、上述した4R当り状態H、16R当り(第2変動入賞装置開放)状態I又は16R当り(第1変動入賞装置開放)状態Jの何れかに移行する確率は10/316となっている。そして、この16R当り(第2変動入賞装置開放)状態Iでは、第2変動入賞装置110の大入賞口に所定個数(例えば10個)の遊技球が入賞するか、大入賞口の開放から所定時間(例えば25秒)が経過するかの何れかの条件が達成されるまで大入賞口を開放することを1ラウンドとし、これを所定ラウンド回数(例えば16回)継続する(繰り返す)。また、16R当り(第1変動入賞装置開放)状態Jでは、第1変動入賞装置10の大入賞口に所定個数(例えば10個)の遊技球が入賞するか、大入賞口の開放から所定時間(例えば25秒)が経過するかの何れかの条件が達成されるまで大入賞口を開放することを1ラウンドとし、これを所定ラウンド回数(例えば16回)継続する(繰り返す)。そして、16R当り(第2変動入賞装置開放)状態Iが終了すると、次回の大当りまで電サポ付きの確変状態Lに移行する。なお、図7(2)に示すように、第2特図変動表示ゲームにおいて、16R当り(第2変動入賞装置開放)状態Iの終了後、次回の大当りまで電サポ付きの確変状態Lに移行する16R確変当りの当選率は32%に設定がなされている。また、16R当り(第1変動入賞装置開放)状態Jが終了すると、次回の大当りまで電サポ付きの確変状態L、電サポ100回付き確変状態M、電サポ100回付き通常状態(時短状態)Nの何れかに移行する。なお、図7(2)に示すように、第2特図変動表示ゲームにおいて、16R当り(第1変動入賞装置開放)状態Jの終了後、次回の大当りまで電サポ付きの確変状態Lに移行する16R確変当りの当選率は5%、電サポ100回付き確変状態Mに移行する16R確変当りの当選率は5%、電サポ100回付き通常状態(時短状態)Nに移行する16R通常当りの当選率は18%に設定がなされている。なお、電サポ100回付き確変状態M、電サポ100回付き通常状態(時短状態)Nでは、それぞれ、小当り状態G、4R当り状態H、16R当り(第2変動入賞装置開放)状態I、16R当り(第1変動入賞装置開放)状態Jの何れかが発生可能となっている。」

8「【0127】 現在の遊技状態が時短動作状態であるか否かの判定(ステップS101)において、現在の遊技状態が時短動作状態でない場合(ステップS101;No)は、第2変動入賞装置110が開放状態であるか否かの判定(ステップS102)を行う。そして、この第2変動入賞装置110が開放状態であるか否かの判定(ステップS102)において、第2変動入賞装置110が開放状態である場合(ステップS102;Yes)は、右打ち継続報知フラグをリセットする処理(ステップS103)を行い、表示装置43に右打ち表示する処理(ステップS104)を行って、本処理を終了する。
【0128】 一方、この第2変動入賞装置110が開放状態であるか否かの判定(ステップS102)において、第2変動入賞装置110が開放状態でない場合(ステップS102;No)は、右打ち継続フラグがセットされているか否かの判定(ステップS105)を行う。
【0129】 この右打ち継続フラグがセットされているか否かの判定(ステップS105)において、右打ち継続フラグがセットされている場合(ステップS105;Yes)は、ステップS104へ移行し、表示装置43に右打ち表示する処理(ステップS104)を行って、本処理を終了する。一方、この右打ち継続フラグがセットされているか否かの判定(ステップS105)において、右打ち継続フラグがセットされていない場合(ステップS105;No)は、時短動作状態が終了したか否かの判定(ステップS106)を行う。
【0130】 この時短動作状態が終了したか否かの判定(ステップS106)において、時短動作状態が終了していない場合(ステップS106;No)は、本処理を終了する。一方、この時短動作状態が終了したか否かの判定(ステップS106)において、時短動作状態が終了した場合(ステップS106;Yes)は、第2始動記憶内に当りとなる大当り判定用カウンタ値が記憶されているか否かの判定(ステップS107)を行う。
【0131】 この第2始動記憶内に当りとなる大当り判定用カウンタ値が記憶されているか否かの判定(ステップS107)において、当りとなる大当り判定用カウンタ値が記憶されている場合(ステップS107;Yes)は、右打ち継続報知フラグをセットする処理(ステップS108)を行い、本処理を終了する。一方、この第2始動記憶内に当りとなる大当り判定用カウンタ値が記憶されているか否かの判定(ステップS107)において、当りとなる大当り判定用カウンタ値が記憶されていない場合(ステップS107;No)は、本処理を終了する。
【0132】 また、現在の遊技状態が時短動作状態であるか否かの判定(ステップS101)において、現在の遊技状態が時短動作状態である場合(ステップS101;Yes)は、第2始動記憶内に当りとなる大当り判定用カウンタ値が記憶されているか否かの判定(ステップS109)を行う。そして、この第2始動記憶内に当りとなる大当り判定用カウンタ値が記憶されているか否かの判定(ステップS109)において、当りとなる大当り判定用カウンタ値が記憶されている場合(ステップS109;Yes)は、当該当りとなる変動表示ゲームが開始されるまでの変動回数と当該当りの後の時短回数との合計値を表示する処理(ステップS110)を行い、ステップS104へ移行する。一方、この第2始動記憶内に当りとなる大当り判定用カウンタ値が記憶されているか否かの判定(ステップS109)において、当りとなる大当り判定用カウンタ値が記憶されていない場合(ステップS109;No)は、ステップS104へ移行する。」

9 図1は、次のものである。

10 上記摘記事項2及び3を踏まえて図1をみると、「遊技領域左側」はセンターケース20の左側に位置し、「遊技領域右側」はセンターケース20の右側に位置することがみてとれる。

11 上記摘記事項3を踏まえて図1をみると、遊技領域の上部側に発射装置から遊技球が発射されることがみてとれる。

上記1ないし11の事項を総合すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物発明」という。)。

「遊技領域に複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを行う変動表示装置を配設し、始動口への入賞に基づいて前記変動表示ゲームを実行し、該変動表示ゲームが特定の結果態様を導出することに関連して変動入賞装置を遊技者に不利な状態から遊技者に有利な状態に変換する特別遊技状態を発生可能な遊技制御手段を備える遊技機において、
遊技領域の上部側に発射装置から遊技球が発射され、
遊技領域の略中央にセンターケースが取り付けられ、
前記始動口は、
センターケースの左側に位置する遊技領域左側を流下する球が入賞可能に配設した第1始動口と、
センターケースの右側に位置する遊技領域右側に備えられ、少なくとも遊技領域右側に備えられる始動ゲートを遊技球が通過したことに基づき普図変動表示ゲームを開始し、特別の結果態様を導出することに関連して、遊技球が入賞しにくい若しくは入賞しない第1状態と、遊技球が前記第1状態よりも入賞しやすい第2状態と、に変換可能な第2始動口と、
を備え、
前記変動入賞装置は、少なくとも遊技領域右側を流下する球が入賞可能に遊技領域右側に配設した右側変動入賞装置を備え、
前記特別遊技状態のうち4R当り状態Hでは、前記右側変動入賞装置の大入賞口の開放を4回繰り返し、また、前記特別遊技状態のうち16R当り状態Iでは、前記右側変動入賞装置の大入賞口の開放を16回繰り返し、
前記遊技制御手段は、
前記始動口に遊技球が入賞することで大当り判定用乱数値を抽出し、特図変動表示ゲームの大当り判定値と比較して特図変動表示ゲームの当り・はずれを判定する抽選を実行し、該抽選結果に基づいて遊技者に有利な特別遊技状態を複数段階に設定可能な特別遊技状態抽選手段と、
前記特別遊技状態抽選手段の当該抽選結果に基づいて、前記変動表示装置で表示するための変動パターンを設定する変動パターン設定手段と、
前記変動パターンの演出表示中に得た、新たな前記始動口への遊技球の入賞に基づき、大当り判定用乱数値を始動記憶として所定の上限数まで保留する保留手段と、
前記保留手段で始動記憶として保留した大当り判定用乱数値の抽選結果に基づく変動パターンでの演出表示の実行を順次指示する実行指示手段と、
前記変動パターンの演出表示中に前記始動口に遊技球が入賞し、その入賞するタイミングで大当り判定用乱数値を取得し、取得した当該大当り判定用乱数値と判定値とを比較判定し、当該入賞から当該入賞に基づく変動パターンの変動開始前までに当該比較判定結果に基づく状態を報知可能な抽選結果先読み手段と、
前記右側変動入賞装置が遊技者に有利な状態となる際、及び、時短動作状態である場合に遊技領域右側に遊技球を発射することを指示する発射方向指示制御手段と、
を備え、
前記発射方向指示制御手段は、
前記抽選結果先読み手段に基づき、前記右側変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変換する当りがあると報知する場合は、前記右側変動入賞装置が遊技者に有利な状態となる前から右打ち指示を行う遊技機。」

第4 対比
本願発明と刊行物発明とを対比する。

1 刊行物発明における「センターケース」、「発射装置」、「始動口」、「変動表示装置」、「右側変動入賞装置」及び「遊技機」は、それぞれ、本願発明における「センターケース」、「発射手段」、「特別図柄始動手段」、「特別図柄表示手段」、「開閉入賞手段」及び「弾球遊技機」に相当する。

2 刊行物発明における「遊技領域の略中央にセンターケースが取り付けられ」ることは、本願発明における「遊技領域の略中央にセンターケースを配置」することに相当する。

3 刊行物発明では、「遊技領域の上部側に発射装置から」「発射」された「遊技球」が「センターケースの左側に位置する遊技領域左側」及び「センターケースの右側に位置する遊技領域右側」を「流下する」から、刊行物発明は、本願発明における「発射手段によって前記遊技領域の上部側に打ち込まれた遊技球は前記センターケースの左側の左流下経路と右側の右流下経路との何れかを流下するように構成」するとの構成を有する。

4 刊行物発明における「前記始動口に遊技球が入賞することで大当り判定用乱数値を抽出し、特図変動表示ゲームの大当り判定値と比較して特図変動表示ゲームの当り・はずれを判定する抽選を実行」する「特別遊技状態抽選手段」の「抽選結果に基づいて」「設定」された「変動パターン」を表示する「変動表示装置」は、本願発明における「特別図柄始動手段が遊技球を検出することに基づいて取得される判定乱数値に基づいて遊技図柄を変動表示する特別図柄表示手段」に相当する。

5 刊行物発明では「保留手段で始動記憶として保留した大当り判定用乱数値の抽選結果に基づく変動パターンでの演出表示の実行を順次指示」しているから、刊行物発明における「前記変動パターンの演出表示中に得た、新たな前記始動口への遊技球の入賞に基づき、始動記憶を所定の上限数まで保留する保留手段」は、本願発明における「前記判定乱数値を前記特別図柄表示手段による図柄変動に供されるまで所定の上限個数を限度として記憶する乱数記憶手段」に相当する。

6 刊行物発明における「保留手段で始動記憶として保留した大当り判定用乱数値」を「特図変動表示ゲームの大当り判定値と比較して特図変動表示ゲームの当り・はずれを判定する抽選を実行し」、「変動表示ゲームが特定の結果態様を導出することに関連して」、「右側変動入賞装置の大入賞口の開放」を「4回」または「16回」繰り返す「特別遊技状態を発生可能な遊技制御手段」は、本願発明における「前記乱数記憶手段に記憶された前記判定乱数値が所定の判定値と一致し、前記特別図柄表示手段の変動後の停止図柄が予め定められた所定態様となった場合に、開閉入賞手段を」「複数種類の開放パターンの何れかに従って開放する利益状態を発生させる利益状態発生手段」に相当する。

7 刊行物発明における「前記右側変動入賞装置が遊技者に有利な状態となる際、及び、時短動作状態である場合に遊技領域右側に遊技球を発射することを指示する発射方向指示制御手段」と、本願発明における「遊技球が前記左流下経路と前記右流下経路との何れか一方の特定流下経路側を流下する方が遊技者に有利な特定期間中であるか、他方の非特定流下経路側を流下する方が遊技者に有利な非特定期間中であるかに関する発射誘導情報を出力する発射誘導情報出力手段」とは、「遊技球が前記右流下経路である特定流下経路側を流下する方が遊技者に有利な特定期間中であるかに関する発射誘導情報を出力する発射誘導情報出力手段」で共通する。

8 刊行物発明における「右側変動入賞装置」を「遊技領域右側に配設した」ことは、本願発明における「前記開閉入賞手段を前記特定流下経路上に配置した」ことに相当する。

9 したがって、本願発明と刊行物発明とは、
「遊技領域の略中央にセンターケースを配置し、
発射手段によって前記遊技領域の上部側に打ち込まれた遊技球は前記センターケースの左側の左流下経路と右側の右流下経路との何れかを流下するように構成し、
特別図柄始動手段が遊技球を検出することに基づいて取得される判定乱数値に基づいて遊技図柄を変動表示する特別図柄表示手段と、
前記判定乱数値を前記特別図柄表示手段による図柄変動に供されるまで所定の上限個数を限度として記憶する乱数記憶手段と、
前記乱数記憶手段に記憶された前記判定乱数値が所定の判定値と一致し、前記特別図柄表示手段の変動後の停止図柄が予め定められた所定態様となった場合に、開閉入賞手段を複数種類の開放パターンに従って開放する利益状態を発生させる利益状態発生手段と、
遊技球が前記右流下経路である特定流下経路側を流下する方が遊技者に有利な特定期間中であるかに関する発射誘導情報を出力する発射誘導情報出力手段とを備え、
前記開閉入賞手段を前記特定流下経路上に配置した
弾球遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]:
本願発明は、「発射誘導情報出力手段」が「他方の非特定流下経路側を流下する方が遊技者に有利な非特定期間中であるかに関する発射誘導情報を出力」し、「前記乱数記憶手段に記憶されている前記判定乱数値の中に前記判定値と一致するものが含まれていることを条件に、前記非特定期間中に前記非特定流下経路側への発射を誘導する前記発射誘導情報の出力を行わない」のに対し、
刊行物発明は、「発射方向指示制御手段」が遊技領域左側を流下する方が遊技者に有利であるときに左打ち指示を行うか否かが特定されておらず、「前記抽選結果先読み手段に基づき、前記右側変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変換する当りがあると報知する場合は、前記右側変動入賞装置が遊技者に有利な状態となる前から右打ち指示を行う」点。

第5 判断
1 相違点について
(1)右流下経路と左流下経路とを有する遊技機において、右打ちが有利なときは右打ち指示を、左打ちが有利なときは左打ち指示を表示することは本願の出願日前において周知である(例えば、特開2009-261732号公報の段落【0069】?【0070】、図4?6には、確変状態において第1の抽選の結果に大当たりの結果が含まれた場合に、第2始動入賞口への入球を狙うべき旨の右打ち指示をし、確変状態の終了が近づいたときに第1始動入賞口への入球を狙うべき旨の左打ち指示をすることが開示されている。特開2007-89887号公報の段落【0115】?【0123】、図7には、確変状態あるいは時短状態で可変入球装置への遊技球の入球が検知されないときに右打ち指示をし、通常遊技状態で可変入球装置への遊技球の通過が検知されたときには左打ち指示をすることが開示されている。特開2008-43373号公報の段落【0093】?【0095】、【0102】、図5には、時短中に作動入球口を発射目標位置としていない場合に右打ち指示をし、時短でない時や時短ではない特別遊技中に作動入球口を発射目標位置としている場合に左打ち指示をすることが開示されている。)。

(2)刊行物発明においては、「前記右側変動入賞装置が遊技者に有利な状態となる際、及び、時短動作状態である場合」に該当しない場合は、遊技球が「遊技領域右側」を流下するよりも「遊技領域左側」を流下する方が遊技者に有利であると認められる(刊行物の段落【0037】を参照。)。
そして、刊行物発明において、遊技球が遊技領域左側を流下する方が有利なときに発射方向指示制御手段による指示を如何にするかは当業者が適宜決定し得る設計事項というべきところ、上記周知技術を適用し右打ち指示を行わない期間に左打ち指示を行うこと、すなわち、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。

2 本願発明が奏する効果について
本願発明によってもたらされる効果を全体としてみても、当業者が刊行物発明及び周知技術から当然に予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

3 請求人の主張について
請求人は、平成27年1月14日付けの意見書(段落(6))において、「本願発明は、…非特定期間中(例えば左打ち期間中)に非特定流下経路(例えば左流下経路)側への発射を誘導する発射誘導情報の出力を行わないように構成したものです。…これに対し、引用文献1には、短時間で打ち方を変更することは問題である旨の認識については記載されておりますが、その問題に対して示されている解決手段は本願発明とは明らかに相違します。即ち、引用文献1に記載の発明は、例えば右打ち期間が開始される前の「所定期間」については、左打ち期間であるにも拘わらず前もって遊技者を右打ちに誘導することにより、より大きな利益を遊技者に与えようとするものです。」と主張している。
しかし、本願発明は、「前記乱数記憶手段に記憶されている前記判定乱数値の中に前記判定値と一致するものが含まれていることを条件に、前記非特定期間中に前記非特定流下経路側への発射を誘導する前記発射誘導情報の出力を行わないように構成したこと」を特定するものであって、「「所定期間」については、左打ち期間であるにも拘わらず前もって遊技者を右打ちに誘導すること」が発明の技術的範囲に含まれないことを特定するものではないから、上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が刊行物発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-16 
結審通知日 2015-02-17 
審決日 2015-03-02 
出願番号 特願2010-168342(P2010-168342)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 長崎 洋一
村松 貴士
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 特許業務法人谷藤特許事務所  

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