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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1299746
審判番号 不服2013-20505  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-22 
確定日 2015-04-08 
事件の表示 特願2012-277640「基板を処理するクラスタツールアーキテクチャ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月16日出願公開、特開2013- 93597〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年12月21日を国際出願日とする出願である特願2007-548551号(優先権主張2004年12月22日、アメリカ合衆国)の一部を、平成23年10月11日に分割して新たな特許出願とした特願2011-224043号の一部を、さらに平成24年12月20日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成25年1月15日に手続補正書が提出され、平成25年2月14日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年5月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年6月21日付けで拒絶の査定がされた。当該査定を不服として、平成25年10月22日付け本件審判が請求され同時に手続補正書が提出され、平成25年12月24日付けの当審の審尋に対して、平成26年5月7日に回答書が提出された。

第2 平成25年10月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年10月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1. 補正の内容
本件補正は、平成25年5月27日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する補正を含むところ、補正前後の請求項1の記載は、補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

(1) 補正前
「【請求項1】
第1方向に移動可能な第1及び第2垂直動作アセンブリと、
第1端と第2端とを有する水平動作アセンブリであって、前記第1端において前記第1垂直動作アセンブリと結合され、前記第2端において前記第2垂直動作アセンブリと結合され、且つ前記第1方向とほぼ直交する第2方向に前記第1及び第2垂直動作アセンブリに対して移動可能な水平動作アセンブリと、
を備えたロボットアセンブリであって、前記ロボットアセンブリはさらに、
前記第1及び第2垂直動作アセンブリ並びに水平動作アセンブリの一方に収容されたエンクロージャと、
前記エンクロージャ内にあるアクチュエータと、
前記エンクロージャ内で前記エンクロージャの外側の圧力よりも低い圧力を生成するように構成された、前記エンクロージャ上に配置されたファンアセンブリと、
を備えている、前記ロボットアセンブリ。」

(2) 補正後
「【請求項1】
第1方向に移動可能な第1及び第2垂直動作アセンブリと、
第1端と第2端とを有する水平動作アセンブリであって、前記第1端において前記第1垂直動作アセンブリと結合され、前記第2端において前記第2垂直動作アセンブリと結合され、且つ前記第1方向とほぼ直交する第2方向に前記第1及び第2垂直動作アセンブリに対して移動可能な水平動作アセンブリと、
を備えたロボットアセンブリであって、前記ロボットアセンブリはさらに、
前記第1及び第2垂直動作アセンブリ並びに水平動作アセンブリの一方に設けられた筐体と、
前記筐体内にあるアクチュエータと、
前記筐体内で前記筐体の外側の圧力よりも低い圧力を生成するように構成された、前記筐体上に配置されたファンユニットと、
を備え、
前記筐体と前記ファンユニットとは、前記第1及び第2垂直動作アセンブリ並びに水平動作アセンブリの一方から生成される粒子を除去するように構成されている、前記ロボットアセンブリ。」

2. 補正の適否
本件補正のうち請求項1に関するものは、以下の補正事項1ないし4からなるものである。

・補正事項1
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件補正前の請求項1の6箇所に記載された「エンクロージャ」を「筺体」とした点。

・補正事項2
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件補正前の「前記第1及び第2垂直動作アセンブリ並びに水平動作アセンブリの一方に収容されたエンクロージャ」の「一方に収容されたエンクロージャ」との記載を、「一方に設けられた筺体」と、上記補正事項1と整合をとりつつ、さらに補正した点。

・補正事項3
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件補正前の「ファンアセンブリ」を「ファンユニット」と補正した点。

・補正事項4
特許請求の範囲の減縮を目的として、本件補正前の「エンクロージャ」と「ファンアセンブリ」が、「前記第1及び第2垂直動作アセンブリ並びに水平動作アセンブリの一方から生成される粒子を除去するように構成されている」ものであると、上記補正事項1及び3と整合をとりつつ、限定的に減縮した点。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて以下に検討する。

(1) 補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める(以下「補正発明」という。)。

(2) 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である、特開2001-77176号公報(以下、「引用文献」という。)には、それぞれ図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の便のため当審で付した。)。

ア. 引用文献の記載

(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウエハ等の基板に各種処理を施す基板処理装置、例えば、基板にレジスト液を塗布し、露光後の基板を現像する基板処理装置に関する。」

(イ)
「【0020】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の基板処理装置の一実施形態に係るレジスト塗布現像処理システムを示す概略平面図、図2はその正面図、図3はその背面図である。
【0021】このレジスト塗布現像処理システム1は、搬送ステーションであるカセットステーション10と、複数の処理ユニットを有する処理ステーション11と、処理ステーション11と隣接して設けられる露光装置(図示せず)との間でウエハWを受け渡すためのインターフェイス部12とを具備している。
【0022】上記カセットステーション10は、被処理体としての半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wを複数枚例えば25枚単位でウエハカセットCRに搭載された状態で他のシステムからこのシステムへ搬入またはこのシステムから他のシステムへ搬出したり、ウエハカセットCRと処理ステーション11との間でウエハWの搬送を行うためのものである。
【0023】このカセットステーション10においては、図1に示すように、カセット載置台20上に図中X方向に沿って複数(図では4個)の位置決め突起20aが形成されており、この突起20aの位置にウエハカセットCRがそれぞれのウエハ出入口を処理ステーション11側に向けて一列に載置可能となっている。ウエハカセットCRにおいてはウエハWが垂直方向(Z方向)に配列されている。また、カセットステーション10には、カセット載置台20と処理ステーション11との間に位置する従ウエハ搬送装置21が設けられている。」

(ウ)
「【0036】カセットステーション10の従ウエハ搬送装置21は、カセット配列方向(X方向)および垂直方向(Z方向)および前後方向に移動可能であり、しかもθ方向に回転可能なウエハ保持部材21aを有しており、このウエハ保持部材21aがいずれかのウエハカセットCRに対して選択的にアクセス可能となっている。また、ウエハ保持部材21aは、その状態からθ方向に回転し、かつZ方向に移動することにより、処理ステーション11の第3の処理ユニット群G3に属する各ユニットにもアクセスできるようになっている。したがって、従ウエハ搬送装置21は、ウエハカセットCRに対するウエハWの受け渡しおよび処理ステーション11へのウエハWの搬入の他、後述するように主ウエハ搬送装置46の補助を行うことが可能となっている。具体的には、図3に示すように、従ウエハ搬送装置21において、ウエハ保持部材21aは、ベース部材51に前後動可能に支持されており、ベース部材51は昇降部材52に旋回可能に支持されている。昇降部材52は、ガイド部材53にガイドされて昇降されるようになっている。ガイド部材53は走行部54から上方に延びており、走行部54はカセットCRの配列方向に沿って設けられたレール55上を走行するようになっている。なお従ウエハ搬送装置21のウエハ保持部材21aは、第1の処理ユニット群G1に属する各処理ユニットにもアクセスできるように構成することもできる。
【0037】インターフェイス部12の従ウエハ搬送装置24は、X方向、Z方向に移動可能であり、しかもθ方向に回転可能なウエハ保持部材24aを有しており、このウエハ保持部材24aがカセットCR,BR、周辺露光装置23および露光装置側のウエハ受け渡し台(図示せず)へアクセス可能となっている。また、ウエハ保持部材24aは、θ方向に回転し、かつZ方向に移動することにより、処理ステーション11の第4の処理ユニット群G4に属する各ユニットにもアクセスできるようになっている。したがって、従ウエハ搬送装置24は、処理ステーション11と露光装置との間のウエハWの搬送の他、後述するように主ウエハ搬送装置46の補助を行うことが可能となっている。具体的には、図3に示すように、従ウエハ搬送装置24において、ウエハ保持部材24aは、ベース部材61に前後移動可能に支持されており、ベース部材61は昇降部材62に旋回可能に支持されている。昇降部材62は、ガイド部材63にガイドされて昇降されるようになっている。ガイド部材63は走行部64から上方に延びており、走行部64はX方向に沿って設けられたレール65上を走行するようになっている。なお、従搬送装置24のウエハ保持部材24aは、第2の処理ユニット群G2に属する各処理ユニットにもアクセスできるように構成することもできる。
【0038】このように構成されるレジスト塗布現像処理システム1においては、まず、カセットステーション10において、従ウエハ搬送装置21のウエハ保持部材21aがカセット載置台20上の未処理のウエハWを収容しているウエハカセットCRにアクセスして、そのウエハカセットCRから一枚のウエハWを取り出し、第3の処理ユニット群G3のエクステンションユニット(EXT)に搬送する。」

(エ)
「【0050】一方、カセットステーション10内の従ウエハ搬送装置21は通常搬送時には、ウエハ保持部材21aによりカセットCRからウエハWを取り出して、ウエハ保持部材21aを水平方向(X方向)に移動させ、所定高さの範囲内で上下方向(Z方向)に移動させ、θ方向に回転させて、処理ステーション11内の第3の処理ユニット群G3のエクステンションユニット(EXT)やアライメントユニット(ALIM)にウエハWを受け渡す。また、従ウエハ搬送装置21は、ウエハ保持部材21aにより一連の処理が終了したウエハWを第3処理ユニット群G3のエクステンションユニット(EXT)で受け取り、ウエハ保持部材21aを水平方向(X方向)に移動させ、所定高さの範囲内で上下方向(Z方向)に昇降させ、θ方向に回転させて、所定のカセットCRに収容する。」

(オ)
【図1】、【図3】
【図1】記載のXが付された矢印から、「ウエハ保持部材21a」が、「レール55」に沿って、「水平方向(X軸方向)」に移動可能であると認められる。また、【図3】記載のZが付された矢印から、「ガイド部材(53)」にガイドされる方向が、「垂直方向(Z方向)」であると認められる。



(カ)
上記摘記事項(ウ)には、「ウエハ保持部材21aは、ベース部材51に前後動可能に支持されており、ベース部材51は昇降部材52に旋回可能に支持されている。昇降部材52は、ガイド部材53にガイドされて昇降されるようになっている。」(段落【0036】)と記載されているから、「昇降部材(52)」と「ガイド部材(53)」とは、昇降のためのアセンブリを構成し、かつ、上記認定事項(オ)から、「ガイド部材(53)」にガイドされる方向は、「垂直方向(Z方向)」であるから、引用文献1には、Z方向に移動可能な昇降アセンブリが記載されているということができる。また、上記摘記事項(ウ)には、「ガイド部材53は走行部54から上方に延びており、走行部54はカセットCRの配列方向に沿って設けられたレール55上を走行するようになっている。」(段落【0036】)と記載され、かつ、上記摘記事項(エ)には「水平方向(X方向)」との記載及び上記認定事項(オ)から、引用文献1には、水平アセンブリが記載されているということができる。ここで、「垂直方向(Z方向)」と「水平方向(X方向)」が直交することは、当業者にとって自明である。

(キ)
上記摘記事項(ウ)から、上記「昇降部材(52)」は昇降動作をし、上記「走行部(54)」が「レール55上」を走行動作するから、それら動作の源となるアクチュエータを有することが、当業者にとって自明である。

イ. 引用文献記載発明
上記摘記事項(ア)ないし(エ)、上記認定事項(オ)ないし(キ)から、引用文献に記載の事項を技術常識を考慮しながら、補正発明に照らして整理すると、引用文献には以下の発明(以下、「引用文献記載発明」という。)が記載されている。

「垂直方向に移動可能な昇降アセンブリと、
垂直方向と直交する水平方向に移動可能な水平アセンブリと、
を備えた搬送装置であって、前記搬送装置はさらに、
アクチュエータを備えた搬送装置」

(3) 対比
補正発明と引用文献記載発明とを対比する。
引用文献記載発明の「昇降アセンブリ」は、垂直方向への移動を可能とするものであるから、補正発明の「垂直動作アセンブリ」に相当する。
補正発明は、「第1方向」に移動可能なアセンブリを「垂直動作アセンブリ」としていることから、引用文献記載発明の「垂直方向」は補正発明の「第1方向」に相当する。同様に、補正発明は、「第2方向」に移動可能なアセンブリを「水平動作アセンブリ」としていることから、引用文献記載発明の「水平方向」は補正発明の「第2方向」に相当する。
引用文献記載発明の「直交」は、補正発明の「ほぼ直交」に包含される。
また、引用文献記載発明の「搬送装置」は、補正発明の「ロボットアセンブリ」に相当する。

そうすると、補正発明と引用文献記載発明とは、以下の点で一致し、かつ、相違する。

ア. 一致点
「第1方向に移動可能な垂直動作アセンブリと
第1方向と直交する第2方向に移動可能な水平動作アセンブリと、
を備えたロボットアセンブリであって、前記ロボットアセンブリはさらに
アクチュエータを備えたロボットアセンブリ。」

イ. 相違点

(ア) 相違点1
補正発明の「ロボットアセンブリ」における「垂直動作アセンブリ」と「水平動作アセンブリ」は、「垂直動作アセンブリ」を「第1及び第2垂直アセンブリ」とから構成し、「水平動作アセンブリ」が、「第1端と第2端」とを有し、当該「第1端」において「第1垂直動作アセンブリ」と結合され、「第2端」において「第2垂直動作アセンブリ」と結合され、且つ第1及び第2垂直動作アセンブリに対して移動可能であるのに対し、引用文献記載発明の「搬送装置」における「垂直動作アセンブリ」と「水平動作アセンブリ」は、そのようなものではない点。

(イ) 相違点2
補正発明の「第1及び第2垂直動作アセンブリ」と「水平動作アセンブリ」は、の一方に設けられた「筺体」と、「筺体」内にあるアクチュエータと、「筺体」内で「筺体」の外側の圧力よりも低い圧力を生成するように構成された、前記「筺体」上に配置された「ファンユニット」を備え、前記「筺体」と前記「ファンユニット」とは、「第1及び第2垂直動作アセンブリ」及び「水平動作アセンブリ」の一方から生成される粒子を除去するように構成されているものであるのに対し、引用文献記載発明の「垂直動作アセンブリ」及び「水平動作アセンブリ」が、「筺体」が設けられたものであるか、ひいては「筺体」上に「ファンユニット」を備え、「筺体」内の圧力を外側より低くするものであるかが、不明である点。

(4) 判断

ア. 相違点1について
搬送装置において、二本の垂直動作可能なアセンブリと水平動作可能なアセンブリとから構成し、水平動作可能なアセンブリの二つの端部のそれぞれにおいて、当該二本の垂直動作アセンブリのそれぞれに対して結合され、かつ水平動作可能なアセンブリを前記二本の垂直動作可能なアセンブリに対して移動可能とすることは、従来周知(例えば原審の拒絶査定において例示した米国特許第6,533,531号明細書のFIG.5及び8欄63行ないし9欄8行に、二本の垂直な「vertical members 530」(垂直メンバ 530)とそれに対して両端がそれぞれ「vertical members 530」(垂直メンバ 530)に摺動可能に結合された「horizontal member 520」(水平メンバ 520)と、「horizontal member 520」(水平メンバ 520)に取り付けられた「base 510」(基台 510)が記載されている。なお、()内の仮訳は当審で付した)である。引用文献記載発明の「垂直動作アセンブリ」と「水平動作アセンブリ」において、上記相違点1に係る構成とすることは、上記従来周知の事項を適用することで、当業者が容易になし得たものである。

イ. 相違点2について
搬送装置を構成する垂直動作可能なアセンブリあるいは水平動作可能なアセンブリにおいて、「筺体」を設け、「筺体」内に駆動源を配置して、「筺体」の外側の圧力よりも低い圧力を生成するように、「筺体」上に「ファンユニット」を備えて、垂直動作可能なアセンブリあるいは水平動作可能なアセンブリから生成される粒子を除去するようにすることは、例えば以下に例示されるように、従来周知の事項である。

・特開平2-232194号公報(原査定の拒絶の理由の引用文献3)
垂直動作可能な「ボールネジ(5)」、「プーリ(6)」、「モータ(7)」、「ベルト車(8)」、「ベルト(9)」及び「昇降体(10)」とからなるアセンブリを、筺体状の「フレーム(1)」内に駆動源である「モータ(7)」を含めて配置し、上記「アセンブリ」に対して外側の位置で「フレーム(1)」上に、ユニット状の「ファン(13)」が取り付けられている点(第4図)及び「フレーム内に発生する塵はフレーム内の空気とともにファン(13)に吸引され、フィルタ(12)に濾過された後に排気口(11)から外部に排出される。そしてファン(13)の吸引による負圧作用により外部の汚染されていない空気は溝孔(2)を経てフレーム内部に導入される。」(2ページ右上欄1ないし7行)と記載されている。
・特開平10-157847号公報
垂直動作可能なアセンブリである「垂直軸移動機構」を筺体状の「垂直ハウジング(10)」内に駆動源である「モータ(14)」を含めて配置する点(【図2】)、ユニット状の「水平ハウジング20内を強制排気する排気手段であるファン16」(段落【0030】)が「水平ハウジング(20)」上に取り付けられている点(【図2】)、水平動作可能なアセンブリである「水平軸移動機構」を筺体状の「水平ハウジング(20)」内に駆動源である「駆動部(24)」を含めて配置する点(【図3】)及び「垂直ハウジング10の内部は、排気口10gに接続された真空ポンプ等によって排気され、水平ハウジング20の内部もファン16によって強制排気される。・・・水平ハウジング20内と垂直ハウジング10内を周囲の雰囲気の圧力より低い減圧状態に維持する。上記の垂直軸移動機構や後述する水平軸移動機構は、モータやかさ歯車機構等から微細な浮遊ゴミ等を発生して、周囲の雰囲気を汚染するおそれがあるため、これらを垂直ハウジング10や水平ハウジング20内に収納して内部を減圧状態に保ち、上記の浮遊ゴミ等が各シールドフイルム17a,17b,18a,18b等と開口10i,10j等の間の隙間から流出するのを防ぐものである。」(段落【0038】、【0039】)と記載されている。

機械的な動作に付随して、当該機械から粒子が生成されることは、例えば上記特開平10-157847号に「垂直軸移動機構や後述する水平軸移動機構は、モータやかさ歯車機構等から微細な浮遊ゴミ等を発生して、周囲の雰囲気を汚染するおそれがある」(段落【0039】)と記載されているように、技術常識である。ここで、引用文献記載発明の搬送装置は、高度に清浄な空間が求められる「半導体ウエハ等の基板に各種処理を施す基板処理装置」(上記(2)ア.摘記事項(ア))において用いられるのだから、引用文献記載発明において、「垂直動作アセンブリ」や「水平動作アセンブリ」の動作に伴って、粒子が生じ、かつ当該粒子の基板が搬送される空間への排出されることを防止する必要のあることは、当業者にとって自明な課題である。そうすると、引用文献記載発明の「アクチュエータを搬送装置」における「昇降アセンブリ」及び「水平アセンブリ」を、上記相違点2に係る構成を備えたものとすることは、上記自明な課題を解決しようとして、上記従来周知のアセンブリから生成される粒子を除去する手段を採用することで、当業者が容易になし得た事項である。

(5) 小結
以上のとおりであるから、補正発明は、引用文献記載発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、かつ、作用及び効果の点で格別なものを奏するとは認められない。
したがって、補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3. むすび
上記2.で検討したとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明

1. 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし17に係る発明は、平成25年5月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1.(1)の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

2. 対比及び判断
本願発明は、補正発明の発明特定事項から、上記第2の2.で述べたところの技術的限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する補正発明が、上記第2の2.(4)で検討したとおり、引用文献記載発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3. むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用文献記載発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-07 
結審通知日 2014-11-11 
審決日 2014-11-25 
出願番号 特願2012-277640(P2012-277640)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 落合 弘之金丸 治之  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 基板を処理するクラスタツールアーキテクチャ  
代理人 小林 義教  
代理人 園田 吉隆  
代理人 小林 義教  
代理人 園田 吉隆  

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