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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1299817
審判番号 不服2014-3275  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-21 
確定日 2015-04-09 
事件の表示 特願2009- 29309「制御装置、ストレージ装置、制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月26日出願公開、特開2010-186285〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯

本願は,平成21年2月12日の出願(特願2009-29309号)であって,手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成24年 9月 6日(起案日)
意見書 :平成24年11月12日
手続補正 :平成24年11月12日
最後の拒絶理由通知 :平成25年 2月18日(起案日)
意見書 :平成25年 4月30日
手続補正 :平成25年 4月30日
補正却下の決定 :平成25年11月20日(起案日)
拒絶査定 :平成25年11月20日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成26年 2月21日
手続補正 :平成26年 2月21日
前置審査報告 :平成26年 3月14日(起案日)

【第2】補正の却下の決定(当審の判断)
平成26年2月21日付けの補正(以下,「(本件の)請求時補正」ともいう。)について次のとおり決定する。

《結論》
平成26年2月21日付けの補正を却下する。

《理由》

[1]特許請求の範囲の記載(本件の請求時補正の補正前と補正後)
本件の請求時補正は特許請求の範囲についてする補正を含み,請求時補正の前後の特許請求の範囲は下記のとおりである(補正部分をアンダーラインで示す。なお,平成25年4月30日付け補正は却下されているから,補正前請求項は,平成24年11月12日付け補正によるものである。)

記(補正前,平成24年11月12日付け補正によるもの)
【請求項1】
第1の記憶装置と第2の記憶装置とによるデータの冗長化を行う制御装置であって,
前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれを,所定の順序で前記第2の記憶装置にコピーする第1制御部と,
前記第1制御部による前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれのコピーを実行中に,データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置に対するリード要求があったときは,前記第1の記憶装置に記憶されたデータであって,前記リード要求に対応するデータを,前記所定の順序に基づくことなく前記第2の記憶装置にコピーする第2制御部と,
前記第2制御部による前記リード要求に対応するデータのコピー後に,前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求に対応するデータの読み出しを実行する読み出し処理部と,を備え,
前記読み出し処理部は,前記読み出し処理がエラーとなる場合,前記第2の記憶装置にコピーされた前記リード要求に対応するデータの読み出し処理を,前記第2の記憶装置から行うことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において,
前記読み出し処理部は,さらに,前記リード要求に対応する領域のデータを前記第2の記憶装置へコピーするときに行う前記領域への読み出し処理でエラーが発生した場合,前記第1の記憶装置が使用不可の状態となるよう制御し,また前記第2の記憶装置が前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置において,
前記第1制御部は,さらに,該第1制御部によるコピー処理中に,前記情報処理装置から前記第1の記憶装置または前記第2の記憶装置へのライト要求が発生し,前記第1の記憶装置または前記第2の記憶装置のうちいずれかにライトエラーが発生した場合,該ライトエラーが前記第1の記憶装置で発生した場合に該第1の記憶装置が使用不可の状態となるよう制御し,また前記第2の記憶装置が前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置において,
前記第2制御部は,前記リード要求が前記第1制御部によるコピー処理が済んでいない領域に対するリード要求である場合のみ,該領域のデータを前記第2の記憶装置へコピーすることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
第1の記憶装置及び第2の記憶装置と,
前記第1の記憶装置と前記第2の記憶装置とによるデータの冗長化を行う制御装置とを備え,
該制御装置は,
前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれを,所定の順序で前記第2の記憶装置にコピーする第1制御部と,
前記第1制御部による前記第1の制御装置に記憶されたデータそれぞれのコピーを実行中に,データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置に対するリード要求があったときは,前記第1の記憶装置に記憶されたデータであって,前記リード要求に対応するデータを,前記所定の順序に基づくことなく前記第2の記憶装置にコピーする第2制御部と,
前記第2制御部による前記リード要求に対応するデータのコピー後に,前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求に対応するデータ読み出しを実行する読み出し処理部とを備え,
前記読み出し制御部は,前記読み出し処理がエラーとなる場合,前記第2の記憶装置にコピーされた前記リード要求に対応するデータの読み出し処理を,前記第2の記憶装置から行うことを特徴とするストレージ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のストレージ装置において,
前記読み出し制御部は,さらに,前記リード要求に対応する領域のデータを前記第2の記憶装置へコピーするときに行う前記領域への読み出し処理でエラーが発生した場合,前記第1の記憶装置が使用不可の状態となるよう制御し,また前記第2の記憶装置のうち少なくとも一つが前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とするストレージ装置。
【請求項7】
第1の記憶装置と第2の記憶装置とによるデータの冗長化を行う制御方法であって,
前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれを,所定の順序で前記第2の記憶装置にコピーし,
前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれのコピーを実行中に,データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置に対するリード要求があったときは,前記第1の記憶装置に記憶されたデータであって,前記リード要求に対応するデータを,前記所定の順序に基づくことなく前記第2の記憶装置にコピーし,
前記リード要求に対応するデータのコピー後に,前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求に対応するデータの読み出しを実行し,
前記読み出しの実行がエラーとなる場合,前記第2の記憶装置にコピーされた前記リード要求に対応するデータの読み出しを,前記第2の記憶装置から行うことを特徴とする制御方法。

記(補正後,補正箇所を下線で示す。)
【請求項1】
第1の記憶装置と第2の記憶装置とによるデータの冗長化を行う制御装置であって,
前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれを,所定の順序で前記第2の記憶装置にコピーする第1制御部と,
前記第1制御部による前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれのコピーを実行中に,データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置の領域のうち前記第1制御部によるコピー処理が済んでいない領域に対するリード要求があったときは,前記第1の記憶装置に記憶されたデータであって,前記リード要求に対応するデータを,前記所定の順序に基づくことなく前記第2の記憶装置にコピーする第2制御部と,
前記第2制御部による前記リード要求に対応するデータのコピー前に,前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求に対応するデータの読み出しを実行する読み出し処理部と,を備え,
前記読み出し処理部は,前記読み出し処理がエラーとなる場合,前記第1の記憶装置が使用不可の状態となるように制御し,また,前記第2の記憶装置が前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において,
前記読み出し処理部は,さらに,前記リード要求に対応する領域のデータを前記第2の
記憶装置へコピーするときに行う前記領域への読み出し処理でエラーが発生した場合,前
記第1の記憶装置が使用不可の状態となるよう制御し,また前記第2の記憶装置が前記情
報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴
とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置において,
前記第1制御部は,さらに,該第1制御部によるコピー処理中に,前記情報処理装置から前記第1の記憶装置または前記第2の記憶装置へのライト要求が発生し,前記第1の記憶装置または前記第2の記憶装置のうちいずれかにライトエラーが発生した場合,該ライトエラーが前記第1の記憶装置で発生した場合に該第1の記憶装置が使用不可の状態となるよう制御し,また前記第2の記憶装置が前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
第1の記憶装置及び第2の記憶装置と,
前記第1の記憶装置と前記第2の記憶装置とによるデータの冗長化を行う制御装置とを備え,
該制御装置は,
前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれを,所定の順序で前記第2の記憶装置にコピーする第1制御部と,
前記第1制御部による前記第1の制御装置に記憶されたデータそれぞれのコピーを実行中に,データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置の領域のうち前記第1制御部によるコピー処理が済んでいない領域に対するリード要求があったときは,前記第1の記憶装置に記憶されたデータであって,前記リード要求に対応するデータを,前記所定の順序に基づくことなく前記第2の記憶装置にコピーする第2制御部と,
前記第2制御部による前記リード要求に対応するデータのコピー前に,前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求に対応するデータ読み出しを実行する読み出し処理部とを備え,
前記読み出し制御部は,前記読み出し処理がエラーとなる場合,前記第1の記憶装置が使用不可の状態となるように制御し,また,前記第2の記憶装置が前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とするストレージ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のストレージ装置において,
前記読み出し制御部は,さらに,前記リード要求に対応する領域のデータを前記第2の記憶装置へコピーするときに行う前記領域への読み出し処理でエラーが発生した場合,前記第1の記憶装置が使用不可の状態となるよう制御し,また前記第2の記憶装置のうち少なくとも一つが前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とするストレージ装置。
【請求項6】
第1の記憶装置と第2の記憶装置とによるデータの冗長化を行う制御方法であって,
前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれを,所定の順序で前記第2の記憶装置にコピーし,
前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれのコピーを実行中に,データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置の領域のうち前記所定の順序での前記第2の記憶装置へのコピー処理が済んでいない領域に対するリード要求があったときは,前記第1の記憶装置に記憶されたデータであって,前記リード要求に対応するデータを,前記所定の順序に基づくことなく前記第2の記憶装置にコピーし,
前記リード要求に対応するデータのコピー前に,前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求に対応するデータの読み出しを実行し,
前記読み出しの実行がエラーとなる場合,前記第1の記憶装置が使用不可の状態となるように制御し,また,前記第2の記憶装置が前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とする制御方法。

[2]請求時補正の適合性(目的;第17条の2第5項第1号?第4号)

(1)補正前請求項(以下,「旧請求項」という)と,補正後請求項(以下,「新請求項」という)との対応
請求時補正は,請求人が審判請求理由で説明するとおり,旧請求項1,2,3,5,6,7を,それぞれ,新請求項1,2,3,4,5,6とし,旧請求項4を削除する補正と認められるところ,
このうち,旧請求項1についてする「旧請求項1を新請求項1とする補正」について,以下検討する。

(2)補正内容,旧請求項1,新請求項1の分説等
新旧の請求項1は,下記のとおり分説することができる(同じ特定要件には同じ記号を付した。)ところ,旧請求項1についてする補正は,
ア 特定事項CをC’とする補正と,
イ 特定事項D1・D2を,D1’・D2’とする補正
とからなる。

記 旧請求項1(分説)
A :第1の記憶装置と第2の記憶装置とによるデータの冗長化を行う制御装置であって,
B :前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれを,所定の順序で前記第2の記憶装置にコピーする第1制御部と,
C :前記第1制御部による前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれのコピーを実行中に,データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置に対するリード要求があったときは,前記第1の記憶装置に記憶されたデータであって,前記リード要求に対応するデータを,前記所定の順序に基づくことなく前記第2の記憶装置にコピーする第2制御部と,
D1:前記第2制御部による前記リード要求に対応するデータのコピー後に,前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求に対応するデータの読み出しを実行する読み出し処理部と,を備え,
D2:前記読み出し処理部は,前記読み出し処理がエラーとなる場合,前記第2の記憶装置にコピーされた前記リード要求に対応するデータの読み出し処理を,前記第2の記憶装置から行うこと
A :を特徴とする制御装置。

記 新請求項1(分説)
A :第1の記憶装置と第2の記憶装置とによるデータの冗長化を行う制御装置であって,
B :前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれを,所定の順序で前記第2の記憶装置にコピーする第1制御部と,
C’:前記第1制御部による前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれのコピーを実行中に,データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置の領域のうち前記第1制御部によるコピー処理が済んでいない領域に対するリード要求があったときは,前記第1の記憶装置に記憶されたデータであって,前記リード要求に対応するデータを,前記所定の順序に基づくことなく前記第2の記憶装置にコピーする第2制御部と,
D1’:前記第2制御部による前記リード要求に対応するデータのコピー前に,前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求に対応するデータの読み出しを実行する読み出し処理部と,を備え,
D2’:前記読み出し処理部は,前記読み出し処理がエラーとなる場合,前記第1の記憶装置が使用不可の状態となるように制御し,また,前記第2の記憶装置が前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御すること
A :を特徴とする制御装置。

(3)補正の目的についての判断

ア 特定事項C,及びC’は共に「第2制御部」について特定するもので,特定事項CをC’とする請求時補正は,
請求時補正前に記載のあったCの「前記第1制御部による前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれのコピーを実行中に,データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置に対するリード要求があったときは,前記第1の記憶装置に記憶されたデータであって,前記リード要求に対応するデータを,前記所定の順序に基づくことなく前記第2の記憶装置にコピーする第2制御部」の「データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置に対するリード要求があったとき」を,「データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置の領域のうち前記第1制御部によるコピー処理が済んでいない領域に対するリード要求があったとき」とするものであって,
「リード要求」の対象である領域である「前記第1の記憶装置」を「前記第1の記憶装置の領域のうち前記第1制御部によるコピー処理が済んでいない領域」と限定するものであるから,旧請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものといえ,特許法第17条の2第5項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 特定事項D1・D2,及びD1’・D2’は,共に「読み出し処理部」について特定するものであることろ,
特定事項D1・D2を,D1’・D2’とする請求時補正は,以下でみるとおり,旧請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく,特許法第17条の2第5項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。

イ-1 旧請求項1のD1・D2が特定する技術内容
旧請求項1のD1・D2が「読み出し処理部」について特定する技術内容は,
・D1で「リード要求に対応するデータのコピー後に,・・・リード要求に対応するデータの読み出しを実行する」とすること,
・そのコピーとは(要件Bから)「第1の記憶装置」から「第2の記憶装置」へのコピーであること,
・D2の「前記読み出し処理」は,D1の「データの読み出し」を指すことは明らかであるから,
少なくとも,
○「リード要求に対応するデータ」を第1の記憶装置から第2の記憶装置へコピーした後に,第1の記憶装置に記憶された前記「リード要求に対応するデータ」の読み出しを実行すること,
○その読み出し処理が,エラーとなる場合,第2の記憶装置にコピーされた前記「リード要求に対応するデータ」の読み出し処理を,前記第2の記憶装置から行うこと,
を特定していることは明らかである。

要すれば,旧請求項1のD1・D2は,「読み出し処理部」について,
少なくとも,『コピーが実行されること,及び,コピー実行後の第1の記憶装置からの読み出し処理がエラーとなる場合,第2の記憶装置にコピーされたデータを第2の記憶装置から読み出すこと』を特定することをその内容とするものである。

このことは,旧請求項1が特定する技術事項について,請求人の,平成25年4月30日付け意見書中の「4.理由第2について」における
「これにより,例えば,第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれが第2の記憶装置に所定の順序でコピーがされる間に,第1の記憶装置に記憶された,所定の順序でのコピーにおいてコピーが済んでいないデータに対するリード要求があり,リード要求に対する第1の記憶装置からのデータの読み出しがエラーとなった場合でも,リード要求に対応するデータは,所定の順序によらず,読み出しの前に第2の記憶装置にコピーされます。したがって,リード要求に対応するデータを第2の記憶装置から読み出すことができ,このとき,読み出されるデータが第1の記憶装置と第2の記憶装置とで一致しなくなることを抑止できる,という構成の差異による特有の効果を有します。」との説明からも明らかである。

イ-2 新請求項1のD1’・D2’が特定する技術内容
これに対して,新請求項1のD1’・D2’が「読み出し処理部」について特定する技術内容は,
・D1’で「リード要求に対応するデータのコピー前に,・・・リード要求に対応するデータの読み出しを実行する」とすること,
・そのコピーとは(要件Bから)「第1の記憶装置」から「第2の記憶装置」へのコピーであること,
・D2’の「前記読み出し処理」は,D1’の「データの読み出し」を指すことが明らかであることから,コピーに際してのコピー前の第1の記憶装置に記憶された「データの読み出し」を指すことが明らかであること,及び,したがって,「前記読み出し処理」がエラーとならない場合にコピーが実行されることは明らかである。
したがって,少なくとも,
○(「リード要求に対応するデータ」を第1の記憶装置から第2の記憶装置へコピーする前に)第1の記憶装置に記憶された前記「リード要求に対応するデータ」の読み出しを実行すること,
○その読み出し処理が,エラーとなる場合,「前記第1の記憶装置が使用不可の状態となるように制御し,また,前記第2の記憶装置が前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御すること」,
○その読み出し処理が,エラーとならない場合,「リード要求に対応するデータ」を第1の記憶装置から第2の記憶装置へコピーすること
を特定していることは明らかである。

要すれば,新請求項1のD1’・D2’は,「読み出し処理部」について,
少なくとも,『第1の記憶装置からの読み出し処理がエラーとならない場合にコピーは実行されること,及び,読み出し処理がエラーとなる場合には,前記第1の記憶装置が使用不可の状態となるように制御し,また,前記第2の記憶装置が前記情報処理装置からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御すること』を特定することをその内容とするものである。

イ-3 判断
上記イ-1,イ-2によれば,新請求項1のD1’・D2’が特定する技術内容は,旧請求項1のD1・D2が特定する技術内容とは全く異なるものであって,旧請求項1のD1・D2が特定する技術内容を含んでいない。
つまり,特定事項D1・D2を,D1’・D2’とする請求時補正は,旧請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものとはいえず,したがって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。

ウ まとめ
上記旧請求項1を新請求項1とする補正は,上記のとおり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
そして,上記旧請求項1を新請求項1とする補正が,請求項の削除,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明を目的とするものということもできないことは明らかである。

本件の請求時補正(平成26年2月21日付けの補正)は特許請求の範囲についてする補正を含むところ,その補正は,特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするもののいずれにも該当しない。
したがって,本件の請求時補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反しているものであるから,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【第3】査定の検討(当審の判断)

平成26年2月21日付けの補正は上記のとおり却下するから,平成24年11月12日付けの手続補正が最新の補正となる。

《原査定の理由の概略》
原査定の理由の概略は、平成24年11月12日付けでした手続補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものであり、
補正後請求項1,5の「前記リード要求に対応するデータのコピー後に,前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求に対応するデータの読み出しを実行する」ことと,「コピー」する「データ」に対応する「リード要求」であって「前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求」に対応する「前記読み出し処理がエラーとなる場合,前記第2の記憶装置にコピーされた前記リード要求に対応するデータの読み出し処理」を行うことは,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,図面に記載されていない。
補正後請求項7についても同様である。
と指摘している。

《原査定の検討》
以下、原査定について検討する。

[1]平成24年11月12日付けの手続補正
平成24年11月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は,本願の特許請求の範囲についてする補正を含み,本件補正後の特許請求の範囲は,【第2】[1]で前記したとおりであり,その請求項1について分説すれば下記(再掲)の通りである(以下,請求項1記載の発明を「(本件)補正後発明」ともいう。)

記 請求項1(補正後発明,分説,再掲)
A :第1の記憶装置と第2の記憶装置とによるデータの冗長化を行う制御装置であって,
B :前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれを,所定の順序で前記第2の記憶装置にコピーする第1制御部と,
C :前記第1制御部による前記第1の記憶装置に記憶されたデータそれぞれのコピーを実行中に,データの読み出しを行う情報処理装置から前記第1の記憶装置に対するリード要求があったときは,前記第1の記憶装置に記憶されたデータであって,前記リード要求に対応するデータを,前記所定の順序に基づくことなく前記第2の記憶装置にコピーする第2制御部と,
D1:前記第2制御部による前記リード要求に対応するデータのコピー後に,前記第1の記憶装置に記憶された前記リード要求に対応するデータの読み出しを実行する読み出し処理部と,を備え,
D2:前記読み出し処理部は,前記読み出し処理がエラーとなる場合,前記第2の記憶装置にコピーされた前記リード要求に対応するデータの読み出し処理を,前記第2の記憶装置から行うこと
A :を特徴とする制御装置。


[2]補正の範囲(第17条の2第3項)について

本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項(以下,「出願当初の明細書等」ともいう。)の範囲内においてするものではない。

その理由の詳細は,以下のとおりである。

ア 補正後発明が特定する技術事項
本件補正後の請求項1の記載からみて,その要件D1・D2は,「読み出し処理部」について,
少なくとも,『コピーが実行されること,及び,コピー実行後の第1の記憶装置からの読み出し処理がエラーとなる場合,第2の記憶装置にコピーされたデータを第2の記憶装置から読み出すこと』(以下,「技術事項X」という。)を特定しているといい得ることは,既に前記【第2】[2](3)イ-1でみたとおりである(補正後発明についての平成25年4月30日付け意見書中における請求人の説明からみてもそのようにいうことができることも前記に示したとおりである。)。

イ 上記「技術事項X」が,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「出願当初の明細書等」と略す。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かについて検討する。

イ-1 出願当初の明細書等には,「読み出し処理がエラーとなる場合」に関連する記載として,下記の記載が認められる(特に注目する箇所に下線を施した。)。

記(「読み出し処理がエラーとなる場合」に関連する記載

【請求項1】
複数の記憶装置によるデータの冗長化を維持するミラーリング制御装置であって,
前記複数の記憶装置のうちから1つの記憶装置をコピー元記憶装置として選択し,該コピー元記憶装置内のデータを,前記複数の記憶装置同士のデータを等価状態にするために,前記コピー元記憶装置とは異なる記憶装置であって前記複数の記憶装置内の記憶装置である少なくとも一つのコピー先記憶装置へコピーするコピー制御部と,
前記コピー制御部によるコピー処理中に,上位層からの前記コピー元記憶装置へのリード要求がある場合,該リード要求に対応する領域のデータを前記コピー先記憶装置へコピーするI/Oミラーリング制御部と,を備え,
前記コピー制御部は,さらに,該コピー制御部によるコピー処理中に,前記上位層からの前記コピー元記憶装置へのリード要求に対する処理が前記コピー元記憶装置でエラーとなる場合,前記コピー元記憶装置が使用不可の状態となるよう制御し,また前記コピー先記憶装置のうち少なくとも一つが前記上位層からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とするミラーリング制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミラーリング制御装置において,
前記I/Oミラーリング制御部は,さらに,前記リード要求に対応する領域のデータを前記コピー先記憶装置へコピーするときに行う前記領域へのリード処理でエラーが発生した場合,前記コピー元記憶装置が使用不可の状態となるよう制御し,また前記コピー先記憶装置のうち少なくとも一つが前記上位層からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とするミラーリング制御装置。

【課題を解決するための手段】
【0011】
ミラーリング制御装置は,複数の記憶装置によるデータの冗長化を維持するミラーリング制御装置であって,前記複数の記憶装置のうちから1つの記憶装置をコピー元記憶装置として選択し,該コピー元記憶装置内のデータを,前記複数の記憶装置同士のデータを等価状態にするために,前記コピー元記憶装置とは異なる記憶装置であって前記複数の記憶装置内の記憶装置である少なくとも一つのコピー先記憶装置へコピーするコピー制御部と,前記コピー制御部によるコピー処理中に発生した,上位層からの前記コピー元記憶装置へのリード要求が,前記コピー制御部によるコピー処理が済んでいない領域に対するリード要求である場合,該領域のデータを前記コピー先記憶装置へコピーするI/Oミラーリング制御部と,を備え,前記コピー制御部は,さらに,該コピー制御部によるコピー処理中に,前記上位層からの前記コピー元記憶装置へのリード要求に対する処理が前記コピー元記憶装置でエラーとなる場合,前記コピー元記憶装置が使用不可の状態となるよう制御し,また前記コピー先記憶装置のうち少なくとも一つが前記上位層からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御することを特徴とする。

【0021】
I/Oミラーリング制御部1は,ホストコンピュータで動作するアプリケーションソフトウェア300(上位層)から発行されるディスクへのI/O要求を複製し,複数のミラーディスク21に発行することで,ディスクミラーリングを実現する。
【0022】
また,コピー制御部2がシステムダウン後のディスクミラーリング状態を復旧するためのコピー処理を実行している間,I/Oミラーリング制御部1は,アプリケーションソフトウェア300からの要求がリード要求である場合,コピー元ディスク内のリード要求に対応する領域に保持されているデータをコピー先ディスクへコピーする。
【0023】
また,I/Oミラーリング制御部1は,さらに,アプリケーションプログラム300からリード要求された領域のデータをコピー先ディスクへコピーするときに行うその領域へのリード処理でエラーが発生した場合,コピー元ディスクを切り離し(使用不可)の状態となるよう制御し,またコピー先ディスクをアプリケーションソフトウェア300からのリード要求およびライト要求に対する処理を行う動作ディスクとなるよう制御する。
【0024】
コピー制御部2は,何らかの不測のトラブルによってシステムがダウンした後,ミラーディスク21間でデータコピー処理を行い,ミラーディスク21のミラーリング状態を復旧する。すなわちコピー制御部2は,複数のミラーディスク21同士のデータを等価状態にするために,複数のミラーディスク21のうちから1つをコピー元ディスクとして選択し,コピー元ディスク内のデータを,その他のコピー先ディスクへコピーする。
【0025】
またコピー制御部2は,さらに,コピー制御部2によるコピー処理中に,I/Oミラーリング制御部1によって受付けられたリード要求またはライト要求の処理がコピー元ディスクでエラーとなる場合,コピー元ディスクを切り離しの状態となるよう制御し,またコピー先ディスクが動作ディスクになるよう制御する。

【0033】
次に,ディスクミラーリング制御装置100の動作内容について説明する。
【0034】
まず,ディスクミラーリング制御装置100は,コピー元ディスクに不具合が発生したときに,代わりにコピー先ディスクを使用できるようにする。その前提として,コピー開始前のコピー元ディスクとコピー先ディスクとではデータが一致しない箇所があるが,どちらのデータも使用できる正当なデータであるものとする。
【0035】
ディスクミラーリング制御装置100は,システムダウン後のディスクミラーリング状態を復旧するためのコピー処理を実行している間,コピー元ディスクにリード要求があった場合,まずその領域をコピー先ディスクにコピーしてからリード結果をアプリケーションソフトウェア300へ返す。尚,ディスクミラーリング制御装置100は,コピー済領域/未コピー領域の区別なくコピーする方式と,未コピー領域の場合だけコピーする方式のどちらでも適用可能である。
【0036】
また,システムダウン後,ディスクミラーリング状態を復旧するためのデータコピー処理中にコピー元ディスクでエラーが発生した場合,コピー元ディスクの方をミラーリングから切り離し,コピー先ディスクを動作ディスクにする。ミラーリングしていたディスクが3つ以上の場合は,複数のコピー先ディスクのうち1つを動作ディスクとし,動作ディスクを新たなコピー元ディスクとして他のコピー先ディスクへのコピー処理を行う。
【0037】
ディスクミラーリング制御装置100の上述の動作内容を,図2に示す。従来の技術では,コピー先ディスクの未コピー領域のデータがコピー元ディスクと一致しない可能性があるため,動作ディスクの変更ができなかった。この問題を,以下の方法で解決する。尚,図2(A),図2(B)の説明は図12(A),図12(B)と同様であるため,説明を割愛する。
・ディスクミラーリング状態を復旧するためのデータコピー処理中に,コピー対象領域に対してアプリケーションソフトウェア300からリード要求があった場合で,かつコピー元ディスクのリードが成功した場合,その領域をコピー先ディスクへコピーしてから,リード結果をアプリケーションソフトウェア300に返す(図2(C)参照)。
・ディスクミラーリング状態を復旧するためのデータコピー処理中に,コピー対象領域に対してアプリケーションソフトウェア300からリード要求があった場合で,かつコピー元ディスクのリードが失敗した場合,コピー先ディスクを新たな動作ディスク(かつコピー元ディスク)とし,新たな動作ディスクのリード結果を上位層に返す(図2(D)参照)。
これにより,コピー元ディスクとコピー先ディスクでデータが一致しない可能性がある領域は以下の条件をすべて満たすため,データが一致していなくても問題ない。
・システムダウン発生時にライト処理実行中(ライト未完了)だったため,ライト前のデータであるかライト後のデータであるかどちらであっても良い。
・システムダウン後,まだ一度もリードされていないため,コピー先ディスクのデータがコピー元ディスクと一致している必要がない。
・未コピー領域であるため,コピー先ディスクが複数ある場合は,そのうちの1つを新たな動作ディスク(コピー元ディスク)にした後,残りのコピー先ディスクにデータがコピーされ,コピーが済めばデータが一致する。

【0063】
また,従来のディスクミラーリング制御装置は,コピー処理のためのコピー元ディスクのリードが失敗した場合,全コピー先ディスクをミラーリングから切り離し(状態をINVALIDに変更),コピー処理を終了している。一方,本実施の形態に係るディスクミラーリング制御装置100は,コピー処理のためのコピー元ディスクのリードが失敗した場合,コピー先ディスクのうち1つを新たな動作ディスク(すなわちコピー元ディスク)に変更し,コピー処理を継続する。

【0066】
コピー制御部2は,取得したビットが1である場合(S36,Y),コピー元ディスクの該当領域をリードする(S37)。ここでリードエラーでない場合(S38,N),コピー制御部2は,コピー先ディスクへのコピー処理を実行する(S39)。コピー制御部2は,S39のコピー処理が成功したか否かを判定する(S40)。ここでS39のコピー処理が失敗である場合(S40,N),処理は終了する。一方,S39のコピー処理が成功である場合(S40,Y),コピー制御部2は,コピー処理が成功した領域に対応するコピー管理テーブル12内のビットを0に変更する(S41)。その後,コピー管理テーブルの次のビットを参照し(S42),ループの先頭であるS36へ戻る。
【0067】
尚,S38でリードエラーが発生していると判定された場合(S38,Y),コピー制御部2は,動作ディスクの変更処理を実行する(S44)。動作ディスクの変更処理が成功であった場合(S45,N),コピー制御部2は,処理をS37に戻し,エラーであった場合(S45,Y),処理は終了する。

イ-2
上記イ-1に摘示した記載(「読み出し処理がエラーとなる場合」に関連する記載)には,
「コピー先記憶装置へコピーするときに行う前記領域へのリード処理でエラーが発生した場合,前記コピー元記憶装置が使用不可の状態となるよう制御し,また前記コピー先記憶装置のうち少なくとも一つが前記上位層からのリード要求に対する処理を行う記憶装置となるよう制御すること」を内容とする技術事項が記載されているに止まり,
上記「技術事項X」,すなわち,『コピーが実行されること,及び,コピー実行後の第1の記憶装置からの読み出し処理がエラーとなる場合,第2の記憶装置にコピーされたデータを第2の記憶装置から読み出すこと』が記載されているとはいえないし,
上記記載から上記「技術事項X」を把握することもできない。

また,「出願当初の明細書等」の上記イ-1に摘示した記載以外の箇所のどこにも上記「技術事項X」は記載されていないし,そのどこからも上記「技術事項X」を把握することはできない。

したがって,上記「技術事項X」は,出願当初の特許請求の範囲,明細書又は図面に記載した事項であるとはいえないし,出願当初の特許請求の範囲,明細書又は図面から導くことのできる技術思想ともいえない。

イ-3 まとめ
以上のとおりであるから,上記「技術事項X」が出願当初の特許請求の範囲,明細書又は図面に記載した事項であるとはいえず,新たな技術事項である。

[3]本件補正の適法性
以上のとおりであるから,上記請求項1とする補正を含む本件補正は,出願当初の特許請求の範囲,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないもの,ではない。
したがって,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

【第4】むすび
以上,平成24年11月12日付けの手続補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
したがって,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-03 
結審通知日 2015-02-10 
審決日 2015-02-24 
出願番号 特願2009-29309(P2009-29309)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横山 佳弘篠原 功一  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 乾 雅浩
千葉 輝久
発明の名称 制御装置、ストレージ装置、制御方法  
代理人 赤澤 日出夫  
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