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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1299819
審判番号 不服2014-4998  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-14 
確定日 2015-04-09 
事件の表示 特願2009-187940「アンテナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月24日出願公開、特開2011- 41097〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成21年8月14日の出願であって、平成25年12月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年3月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成26年3月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成26年3月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された

「【請求項1】
誘電体基板の表面の矩形領域のうちの第1矩形領域内に形成されるアンテナエレメントと、前記矩形領域のうちの前記第1領域以外の領域である第2矩形領域内に形成され、前記第1矩形領域と前記第2矩形領域との境界線に沿って近接する近接辺を有するグランドエレメントとを含むアンテナ装置であって、
前記アンテナエレメントは、
前記グランドエレメントの前記近接辺の一端側に近接する給電部と、
前記給電部から前記第1領域の前記境界線の対向辺の近傍まで延伸する第1延伸部と、
前記第1延伸部の先端部から前記対向辺に沿う方向に延伸し、前記第1矩形領域の辺に沿って折れ曲がり、前記第1延伸部の延伸方向とは反対の方向に延伸して前記近接辺の前記一端側とは反対の他端側に近接する第2延伸部と、
前記第1延伸部の前記先端部から前記第1延伸部に対して前記第2延伸部とは逆方向に延伸するスタブ部と
を有する、アンテナ装置。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を

「【請求項1】
(第1領域を「第1矩形領域」と訂正致しました。)
誘電体基板の表面の矩形領域のうちの第1矩形領域内に形成されるアンテナエレメントと、前記矩形領域のうちの前記第1矩形領域以外の領域である第2矩形領域内に形成され、前記第1矩形領域と前記第2矩形領域との境界線に沿って近接する近接辺を有するグランドエレメントとを含むアンテナ装置であって、
前記アンテナエレメントは、
前記グランドエレメントの前記近接辺の一端側に近接する給電部と、
前記給電部から前記第1矩形領域の前記境界線の対向辺の近傍まで延伸する第1延伸部と、
前記第1延伸部の先端部から前記対向辺に沿う方向に延伸する第2延伸部と、
前記第1延伸部の前記先端部から前記第1延伸部に対して前記第2延伸部とは逆方向に延伸し、当該アンテナ装置の周波数帯域を広げるためのスタブ部とを有し、
前記アンテナエレメントとグランドエレメントとは、隔離されており、
前記第1延伸部にマッチング回路又はアッテネータを設けた、アンテナ装置。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2.補正の適否
(1)補正の目的要件
本件補正は、本願発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記第1延伸部の先端部から前記対向辺に沿う方向に延伸し、前記第1矩形領域の辺に沿って折れ曲がり、前記第1延伸部の延伸方向とは反対の方向に延伸して前記近接辺の前記一端側とは反対の他端側に近接する第2延伸部」を、「前記第1延伸部の先端部から前記対向辺に沿う方向に延伸する第2延伸部」として、「第2延伸部」に関する「前記第1矩形領域の辺に沿って折れ曲がり、前記第1延伸部の延伸方向とは反対の方向に延伸して前記近接辺の前記一端側とは反対の他端側に近接する」という発明特定事項を削除することを少なくとも含むものであり、特許請求の範囲の減縮には該当しない。また、請求項の削除、誤記の訂正または明りょうでない記載の釈明のいずれの事項を目的としていないことは明らかである。


3.結語
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成26年3月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.1.本願発明と補正後の発明」の項で、「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2006-319767号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審において付加した。)

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN(Local Area Network)を始めとする無線通信の無線通信端末に適用して好適な小型の平面アンテナに関する。」(2頁19?22行)

(イ)「【0022】
以下図1を参照して、本発明平面アンテナを実施するための最良の形態の例につき説明する。
図1A及びBにおいて、10はプリント基板を示し、本例による平面アンテナは、他の周辺回路パターン等が形成されるプリント基板10の端部において形成する。」(4頁22?26行)

(ウ)「【0023】
図1A及びBにおいて、11は所定範囲に亘って、このプリント基板10の表面上に形成された金属箔例えば銅箔パターンより成る接地導体部を示し、この接地導体部11の端辺11aと略並行に第1のアンテナ素子を構成する金属箔例えば銅箔パターンより成る第1の開放線路12を設ける。」(4頁27?31行)

(エ)「【0024】
この第1の開放線路12の一端を金属箔例えば銅箔パターンより成る給電線路13を介して給電点14に接続する。この第1の開放線路12の他端を何れにも接続しない開放端12aとし、この第1の開放線路を給電点14より不平衡型のアンテナとして励振する如くする。
【0025】
この第1の開放線路12の長さは使用周波数例えば2.4GHzの周波数の電波を放射する所定長さとし、本例においては、この第1の開放線路12をメアンダ状(蛇行パターン)に屈曲し、この所定長さの第1の開放線路12を給電線路13と直行する方向に伸延するのを抑制する。」(4頁32?41行)

(オ)「【0026】
本例においては、金属箔例えば銅箔パターンより成る短絡線路15を給電線路13より分岐して設けると共に接地導体部11とこの第1の開放線路12との間をこの第1の開放線路12の開放端12a方向に伸延し、端部を接地導体部11に接続し、接地点15aとする。
【0027】
この短絡線路15は、その長さによりこの平面アンテナの特性インピーダンスを決定し、この平面アンテナに接続される回路のインピーダンス50Ωにマッチングするよう調整される。本例においては、給電線路13と直行する方向へサイズが伸延するのを抑制する
目的で、この短絡線路15をメアンダ状に屈曲する。」(4頁42行?5頁1行)

(カ)「【0028】
また、本例においては、給電線路13の第1の開放線路12とは反対側に第2のアンテナ素子を構成する金属箔例えば銅箔パターンより成る第2の開放線路16を設ける。この第2の開放線路16の一端を何れにも接続しない開放端16aとし、この第2の開放線路16の他端を給電線路13に対し、第1の開放線路12の反対側に接続する。
【0029】
この第2の開放線路16の開放端16a側をこの給電線路13と平行になるように接地導体部11の方向に折り曲げ、この第2の開放線路16が給電線路13と直行する方向に伸延するのを抑制する。この第2の開放線路16の長さは使用周波数例えば5.2GHzの周波数の電波を放射する所定長とする。」(5頁2?11行)

(キ)「【0030】
本例は、上述の如く、第1の開放線路12と接地導体部11との間に、給電線路13から分岐し、接地導体部11に接続する短絡線路15を設けたので、逆F型アンテナの変形であり、良好な特性が得られると共にアンテナの長さを小さくできる。
【0031】
また、本例によれば、給電線路13の第1開放線路12の反対方向に第2の開放線路16を設けたので、複数の周波数に使用できる。」(5頁12?18行)


上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野の技術常識を考慮すると、

a.上記(ア)、(イ)の記載によれば、引用例には小型の平面アンテナが記載されている。

b.上記(イ)の記載によれば、プリント基板の端部に平面アンテナが形成されることが、また、上記(ウ)の記載によれば、プリント基板の所定範囲に亘って、表面上に金属箔で接地導体部が形成されることが、さらに、図1A、Bの記載によれば、プリント基板は長方形状を有しており、プリント基板の表面には、平面アンテナの接地導体部と接地導体部以外の平面アンテナの要素が形成されており、平面アンテナの接地導体部以外の要素が形成される領域は 長方形状を有しており、この長方形状の領域を「第1長方形領域」、平面アンテナの接地導体部以外の要素を「アンテナ要素」、長方形形状のプリント基板表面の全体の領域を「長方形領域」とよぶこととすると、プリント基板表面の「長方形領域」のうちの「第1長方形領域」内に「アンテナ要素」が形成されているといえる。
さらに、図1A、Bの記載によれば、プリント基板の「第1長方形領域」以外の範囲には接地導体部が形成されていることから、このプリント基板の「第1長方形領域」以外の範囲を「接地領域」とよぶこととすると、プリント基板の表面の「長方形領域」の「第1長方形領域」以外の範囲である「接地領域」内に接地導体部が形成されているといえる。
また、上記(ウ)の記載によれば、接地導体部には端辺があり、そして、図1Bの記載によれば、端辺は、「第1長方形領域」と「接地領域」の境界線に沿って近接していることから、接地導体部の端辺は、「第1長方形領域」と「接地領域」の境界線に沿って近接する辺といえる。

c.上記(エ)の段落【0024】の記載によれば、平面アンテナは、給電点を有することが、さらに、図1A、Bの記載によれば、給電点は第1長方形領域内の接地導体の端辺の近傍に設けられているといえる。

d.上記(エ)の段落【0024】の記載によれば、平面アンテナは、給電点に接続する給電線路を有することが、さらに、図1A、Bの記載によれば、給電線路は、第1長方形領域内で端辺の対向辺の近傍まで延伸しているといえる。

e.上記(ウ)、及び、図1A、Bの記載によれば、平面アンテナは、接地導体の端辺と略平行な第1の開放線路を有することが、そして、上記(エ)の段落【0024】の記載によれば、第1の開放線路と給電線路が接続されることが、さらに、図1A、Bの記載によれば、給電線路の延伸方向の先端と第1の開放線路の一端が接続しているといえ、また、上記(エ)の段落【0025】の記載によれば、第1の開放線路は、2.4GHzの周波数を電波を放射する所定長さのものであり、給電線路と直行する方向への伸延を抑制するためにメアンダ状(蛇行パターン)となっていることが記載されている。
したがって、引用例には、2.4GHzの周波数の電波を放射するための所定長さであり、前記給電線路の延伸方向の先端と接続され、前記給電線路と直行する方向への伸延を抑制するためにメアンダ状(蛇行パターン)となっている、前記接地導体の端辺と略平行な第1の開放線路が記載されているといえる。

f.上記(オ)の段落【0026】の記載によれば、平面アンテナは、給電線路より分岐して接地導体部に接続する短絡線路を有している。

g.上記(カ)の段落【0028】の記載によれば、平面アンテナは、給電線路の第1の開放線路とは反対側に第2の開放線路を有することが、さらに、図1A、Bの記載によれば、この第2の開放線路の一端を給電線路の延伸方向の先端に接続し、第2の開放線路の開放端側は給電線路と直行する方向に伸延しているといえ、また、段落【0029】の記載によれば、第2の開放線路は5.2GHzの周波数の電波を放射する所定長さのものであり、さらに、この第2の開放線路の開放端側は、第2の開放線路が給電線路と直行する方向に伸延するのを抑制するために、給電線路と平行になるように接地導体部の方向に折り曲げられていることが記載されている。
したがって、引用例には、5.2GHzの周波数の電波を放射するための所定長さであり、給電線路の第1の開放線路とは反対側に設けられ、一端が給電線路の延伸方向の先端と接続され、開放端側は給電線路と直行する方向に伸延した後に、開放端側が給電線路と直行する方向に伸延するのを抑制するために、給電線路と平行になるように接地導体部の方向に折り曲げられている第2の開放線路が記載されているといえる。

h.そして、図1A、Bの記載によれば、上記(c)の「給電点」、上記(d)の「給電線路」、上記(e)の「第1の開放線路」、上記(f)の「短絡線路」、及び、上記(g)の「第2の開放線路」は、プリント基板の第1長方形領域内に形成されるものであり、アンテナ要素といえる。

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「プリント基板の表面の長方形領域のうちの第1長方形領域内にアンテナ要素が形成され、長方形領域の第1長方形領域以外の領域である接地領域内に接地導体部が形成され、該接地導体部の端辺は、前記第1長方形領域と前記接地領域の境界線に沿って近接する、平面アンテナであって、
アンテナ要素は、
前記接地導体の端辺の近傍に設けられる給電点と、
第1長方形領域内で端辺の対向辺の近傍まで延伸する給電線路と
2.4GHzの周波数の電波を放射するための所定長さであり、前記給電線路の延伸方向の先端と接続され、前記給電線路と直行する方向への伸延を抑制するためにメアンダ状(蛇行パターン)となっている、前記接地導体の前記端辺と略平行な第1の開放線路と、
前記給電線路より分岐して接地導体部に接続する短絡線路と、
5.2GHzの周波数の電波を放射するための所定長さであり、給電線路の第1の開放線路とは反対側に設けられ、一端が給電線路の延伸方向の先端と接続され、開放端側は給電線路と直行する方向に伸延した後に、開放端側が給電線路と直行する方向に伸延するのを抑制するために、給電線路と平行になるように接地導体部の方向に折り曲げられている第2の開放線路と、
を有する、平面アンテナ。」


3.対比・判断

a)引用発明の「プリント基板」は、プリント基板が絶縁材料で構成され誘電体であることはあきらかであるから、本願発明の「誘電体基板」に相当する。

b)引用発明の「アンテナ要素」、「接地導体部」、及び「平面アンテナ」は、本案発明の「アンテナエレメント」、「グランドエレメント」、及び「アンテナ装置」に相当する。
また、引用発明の「長方形領域」、及び「第1長方形領域」は、本願発明の「矩形領域」、及び「第1矩形領域」に相当し、また、引用発明の「接地領域」は、「長方形領域の第1長方形領域以外の領域」であり「接地導体部が形成され」る領域であるから、引用発明の「接地領域」と、本願発明の「第2矩形領域」は、「グランド領域」で共通する。

c)引用発明の「接地導体部の端辺」は、「第1長方形領域と前記接地領域の境界線に沿って近接する」ものであり、本願発明の「近接辺」に相当する。

d)引用発明の「給電点」、及び「給電線路」は、本願発明の「給電部」、及び「第1延伸部」に相当する。

e)引用発明の「第1の開放線路」は、「給電線路の延伸方向の先端と接続され」るものであり、さらに、「前記接地導体の前記端辺と略平行」であり、ここで、「前記接地導体の前記端辺と略平行」な方向は、第1長方形領域の端辺に対向する辺に沿う方向であるから、「第1の開放線路」は給電線路の先端部から第1長方形領域の端辺に対向する辺に沿う方向に延伸しているものと認められ、引用発明の「2.4GHzの周波数の電波を放射するための所定長さであり、前記給電線路の延伸方向の先端と接続され、前記給電線路と直行する方向への伸延を抑制するためにメアンダ状(蛇行パターン)となっている、前記接地導体の前記端辺と略平行な第1の開放線路」と、本願発明の「第1延伸部の先端部から前記対向辺に沿う方向に延伸し、前記第1矩形領域の辺に沿って折れ曲がり、前記第1延伸部の延伸方向とは反対の方向に延伸して前記近接辺の前記一端側とは反対の他端側に近接する第2延伸部」は、「第1延伸部の先端部から前記対向辺に沿う方向に延伸する延伸部」の点で共通する。

f)引用発明の「第2の開放線路」は、「給電線路の第1の開放線路とは反対側に設けられ、一端が給電線路の延伸方向の先端と接続され」、「開放端側が給電線路と直行する方向に伸延する」ものであるから、「第2の開放線路」は給電線路の先端部から第1の開放線路の反対側の第1長方形領域の端辺に対向する辺に沿う方向に延伸していると認められ、引用発明の「5.2GHzの周波数の電波を放射するための所定長さであり、給電線路の第1の開放線路とは反対側に設けられ、一端が給電線路の延伸方向の先端と接続され、開放端側は給電線路と直行する方向に伸延した後に、開放端側が給電線路と直行する方向に伸延するのを抑制するために、給電線路と平行になるように接地導体部の方向に折り曲げられている第2の開放線路」と,本願発明の「第1延伸部の前記先端部から前記第1延伸部に対して前記第2延伸部とは逆方向に延伸するスタブ部」は、「第1延伸部の前記先端部から前記第1延伸部に対して前記第2延伸部とは逆方向に延伸する線路」の点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「誘電体基板の表面の矩形領域のうちの第1矩形領域内に形成されるアンテナエレメントと、前記矩形領域のうちの前記第1領域以外の領域であるグランド領域内に形成され、前記第1矩形領域と前記グランド領域との境界線に沿って近接する近接辺を有するグランドエレメントとを含むアンテナ装置であって、
前記アンテナエレメントは、
前記グランドエレメントの前記近接辺の一端側に近接する給電部と、
前記給電部から前記第1領域の前記境界線の対向辺の近傍まで延伸する第1延伸部と、
前記第1延伸部の先端部から前記対向辺に沿う方向に延伸する延伸部と、
前記第1延伸部の前記先端部から前記第1延伸部に対して前記第2延伸部とは逆方向に延伸する線路と
を有する、アンテナ装置。」

(相違点)

(相違点1)
グランド領域が、本願発明では、矩形の領域であるのに対して、引用発明では,矩形の領域であることは明示されていない点。

(相違点2)
グランドエレメントとアンテナエレメントは、本願発明では、短絡されていないが、引用発明では、短絡線路で接続されている点。

(相違点3)
延伸部の形状が、本願発明では、第1矩形領域の辺に沿って折れ曲がり、前記第1延伸部の延伸方向とは反対の方向に延伸して前記近接辺の前記一端側とは反対の他端側に近接するものであるの対して、引用発明の、第1の開放線路はメアンダ状である点。

(相違点4)
線路の形状が、本願発明では、第2延伸部とは逆方向のみに延伸するものであるのに対して、引用発明では、第2の開放線路は、逆方向に延伸した後に、給電線路と平行になるように接地導体部の方向に折り曲げられている点。


以下、上記相違点について検討する。
(相違点1)について
アンテナ装置におけるグランド部が形成される領域の形状をどのような形状とするかは、当業者が設計時に適宜選択なし得た事項に過ぎず、引用発明においても、グランド領域の形状を矩形とすることは、当業者が設計時にプリント基板の大きさ等を考慮して適宜選択なし得たものである。

(相違点2)について
引用発明は、グランドエレメントとアンテナエレメントが接続される、いわゆる逆F型のアンテナに関するものであるが、逆F型アンテナは逆L型アンテナを変形して、アンテナエレメントとグランドエレメントを短絡線路で接地させたものであって、逆F型アンテナも逆L型アンテナも、いずれも周知のアンテナ構造であるから、逆L型とするか逆F型とするかは当業者が設計時に適宜選択なし得ることである。
したがって、引用発明においても、逆L型アンテナの構造を採用し、短絡線路を無くすことは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点3)について
一般に、逆L型アンテナや逆F型アンテナの開放線路の長さは、使用する周波数に応じて決まるものであり、また、通常の逆L型アンテナや逆F型アンテナの開放線路の形状は対向辺に平行なものである。
そして、引用発明の第1の開放線路の長さに関しても、放射する電波の周波数に応じた長さとされているが、引用発明においては、開放線路の長さが長いと端辺に平行する方向の長さが長くなり過ぎるので、これを抑制するために開放線路の形状をメアンダ状として短くして第1長方形領域に納めている。
しかしながら、前述したように、通常の開放線路の形状は対向辺に平行なものであり、また、第1長方形領域に沿ってグランド側に折り曲げたものも周知の形状(例えば、原査定の拒絶の理由で引用した国際公開第2005/48404号(特に、第1図参照)、原査定で引用した特開2004-201278号公報(特に、段落【0096】-【0098】、図25等参照)参照)であり、さらに、使用する周波数としてどのような周波数を選択するか、及び、該選択された周波数に応じた開放線路の長さに対して、開放線路の形状としてどのようなものを選択するかは、当業者が設計時に開放線路の長さとアンテナエレメントが形成される第1長方形領域の大きさを考慮して適宜選択なし得るものであるから、引用発明における第1の開放線路に関しても、使用する周波数に応じた開放線路の長さと第1長方形領域の大きさに基づいて、メアンダ状に代え、第1矩形領域の辺に沿って折れ曲がり、前記第1延伸部の延伸方向とは反対の方向に延伸した形状とすることは、当業者が容易になし得ることである。
また、その際に、第1延伸部の延伸方向とは反対の方向に延伸する部分は、一般的に、プリント基板上にアンテナを形成する際には、その形成のための領域は制限されるものであり、この点を考慮すれば、近接辺の前記一端側とは反対の他端側に近接するものである。

(相違点4)について
同様に、引用発明の第2の開放線路の長さも、放射する電波の周波数に応じた長さであり、また、使用する周波数としてどのような周波数を選択するかは当業者が設計時に適宜選択なし得る事項であるから、引用発明における、第2の開放線路に関しても、通信帯域を広げる周波数を適宜選択し、第2の開放線路の長さに応じて、第2の開放線路の形状を、給電線路と平行になるように接地導体部の方向に折り曲げることに代え、逆方向のみに延伸することは、当業者が容易になし得ることでである。

そして、本願発明の効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-28 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-20 
出願番号 特願2009-187940(P2009-187940)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中木 努高橋 宣博  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 山本 章裕
山澤 宏
発明の名称 アンテナ装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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