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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1299877
審判番号 不服2013-6884  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-15 
確定日 2015-04-08 
事件の表示 特願2009-546567「フォールト・トレラント発光体、フォールト・トレラント発光体を含むシステムおよびフォールト・トレラント発光体を作製する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月31日国際公開、WO2008/091837、平成22年 5月20日国内公表、特表2010-517273〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
平成20年 1月22日 国際出願(パリ条約による優先権主張2007 年1月22日、2007年11月9日、何れも 米国)
平成21年 9月15日 手続補正書
平成24年 3月 6日 拒絶理由通知(同年3月9日発送)
平成24年 9月10日 意見書・手続補正書
平成24年12月10日 拒絶査定(同年12月14日送達)
平成25年 4月15日 審判請求書・手続補正書
平成25年 7月 8日 審尋(同年7月9日発送)
平成26年 1月 9日 回答書
平成26年 3月 4日 拒絶理由通知(同年3月7日発送。
以下「当審拒絶理由通知」という。)
平成26年 9月 8日 意見書・手続補正書

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成26年9月8日付け手続補正により補正された請求項1-15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は以下のとおりである。
「発光体であって、
その上に発光デバイスを形成する共通基板によって相互接続された少なくとも6個の発光デバイスを含み、
前記発光デバイスは、前記共通基板上で電気的に相互接続されて、並列接続された発光デバイスのサブセットを少なくとも2つ直列に接続されたアレイを提供し、各サブセットは少なくとも3つの発光デバイスを含み、前記発光体両端の電圧降下が前記発光デバイスの1つの両端の電圧降下の少なくとも3倍である
発光体。」(以下「本願発明」という。)

3 当審拒絶理由通知
当審拒絶理由通知で通知した拒絶理由の概要は、本願の請求項1?15に係る発明は、その最先の優先日(2007年1月22日)前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。



・特開2004-6582号公報(以下「刊行物1」という。)
・特開2001-307506号公報(以下「刊行物2」という。)
・特開2000-101136号公報(以下「刊行物3」という。)
・特開2006-222412号公報(以下「刊行物4」という。)
・国際公開第2006/025497号(以下「刊行物5」という。)

4 引用発明
(1)記載事項
当審拒絶理由通知で引用した刊行物1(特開2004-6582号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている(当審注:下線は、引用発明の認定と特に関連する箇所に当審が付加した下線である。)。

ア 「【請求項1】
絶縁基板上に複数の発光素子が形成され、前記複数の発光素子がモノリシックに直列接続されることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記複数の発光素子は、前記基板上に二次元配置されていることを特徴とする発光装置。
…」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に複数の発光素子が形成された発光装置に関する。」

ウ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
LEDを照明用光源として使用する場合には、電源として交流を使用し、100V以上の駆動電圧で使用できることが便利である。また、同じ電力を投入して同じ発光出力を得るのであれば、低い電流値を保ちながら高い電圧を印加した方が電力損失を小さくすることができる。しかし、従来のLEDでは、必ずしも十分に駆動電圧を高くすることはできなかった。
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高い駆動電圧で動作できる発光装置を提供することにある。」

エ 「【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、絶縁基板上に複数の発光素子が形成され、前記複数の発光素子がモノリシックに直列接続されることを特徴とする。
【0006】
ここで、前記複数の発光素子は、前記基板上に二次元配置されていることが好適である。」

オ 「【0022】
図2には、発光装置の等価回路図が示されている。図2において、2次元アレイ状に形成された発光素子群は同数(図では4個)ずつ2組に分けられ、各組のLED1はそれぞれ直列接続され、2組のLED列は電極(駆動電極)に対して逆極性となるように並列接続される。このようにLED列が直列接続されることにより、各々の駆動電圧が加算された高い電圧でLED1を駆動することができる。…」

カ 「【0046】
図18には、合計4個のLEDを二次元配列した例が示されており、図19にはその回路図が示されている。図16のLED1を2個に分割し、それぞれを並列に接続したものである。2個のLEDからなるLEDアレイを2組並列に順方向接続したと云うこともできる。LED1aと1bで一つのLEDアレイを構成し、LED1cと1dでもう一つのLEDアレイを構成する。LED1aとLED1cはp電極22及びn電極24を共有し、LED1bとLED1dもp電極22及びn電極24を共有する。この構成によれば、図16に比べて電流が均一化する効果がある。」

キ 「【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。特に、複数の発光素子(LED等)を二次元配置する場合のパターンは上述したパターン以外にも可能である。この場合、隣接する発光素子間で電極を共有して配線を少なくすること、全体形状を正方形あるいは長方形とすること、複数組の発光素子アレイを電極に並列接続すること、交流駆動の場合に複数組の発光素子アレイを互い逆極性とすること、複数組の発光素子アレイをそれぞれジグザグ状に屈曲させて組み合わせること、等が好適である。」

ク 図18、図19は、以下のものである。
図18

図19


ケ 上記カの記載を踏まえて図18、図19を見れば、以下の事項が理解である。
発光素子(LED1a)と発光素子(LED1b)で構成される発光素子(LED)アレイと、発光素子(LED1c)と発光素子(LED1d)で構成される発光素子(LED)アレイを並列に順方向接続し、発光素子(LED1a)と発光素子(LED1c)はp電極及びn電極を共有し、発光素子(LED1b)と発光素子(LED1d)もp電極及びn電極を共有する接続した4個の発光素子、
言い換えると、
並列に接続した2個の発光素子(LED1a)と発光素子(LED1c)、並列に接続した2個の発光素子(LED1b)と発光素子(LED1d)を直列に接続した4個の発光素子。

(2)引用発明
上記(1)によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「絶縁基板上に複数の発光素子が形成され、前記複数の発光素子がモノリシックに直列接続される発光装置であって、
前記複数の発光素子は、前記基板上に二次元配置され、
前記二次元配置した発光素子は、発光素子(LED1a)と発光素子(LED1b)で構成される発光素子(LED)アレイと、発光素子(LED1c)と発光素子(LED1d)で構成される発光素子(LED)アレイを並列に順方向接続し、発光素子(LED1a)と発光素子(LED1c)はp電極及びn電極を共有し、発光素子(LED1b)と発光素子(LED1d)もp電極及びn電極を共有する接続した4個の発光素子、言い換えると、並列に接続した2個の発光素子(LED1a)と発光素子(LED1c)、並列に接続した2個の発光素子(LED1b)と発光素子(LED1d)を直列に接続した4個の発光素子である、
発光装置。」(以下「引用発明」という。)

5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明の「発光体」と、引用発明の「発光装置」を対比すると、両者は相当関係にある。

(2)本願発明の「その上に発光デバイスを形成する共通基板によって相互接続された少なくとも6個の発光デバイス」と、引用発明の「絶縁基板上に複数の発光素子が形成され、前記複数の発光素子がモノリシックに直列接続される発光装置であって、前記複数の発光素子は、前記基板上に二次元配置され、前記二次元配置した発光素子は、…並列に接続した2個の発光素子(LED1a)と発光素子(LED1c)、並列に接続した2個の発光素子(LED1b)と発光素子(LED1d)を直列に接続した4個の発光素子」であることを対比する。
引用発明の「発光素子」は本願発明の「発光デバイス」に相当し、引用発明の「絶縁基板」は本願発明の「共通基板」に相当する。また、引用発明の「4個」と本願発明の「少なくとも6個」は、複数個の点で一致する。
してみると、両者は、「その上に発光デバイスを形成する共通基板によって相互接続された複数個の発光デバイス」の点で一致する。

(3)本願発明の「前記発光デバイスは、前記共通基板上で電気的に相互接続されて、並列接続された発光デバイスのサブセットを少なくとも2つ直列に接続されたアレイを提供」することと、引用発明の「前記二次元配置した発光素子は、…、並列に接続した2個の発光素子(LED1a)と発光素子(LED1c)、並列に接続した2個の発光素子(LED1b)と発光素子(LED1d)を直列に接続した4個の発光素子である」ことを対比する。
引用発明の「前記基板」は「絶縁基板」を指すから本願発明の「共通基板」に相当する。また、引用発明における「前記二次元配置した発光素子は、…、並列に接続した2個の発光素子(LED1a)と発光素子(LED1c)、並列に接続した2個の発光素子(LED1b)と発光素子(LED1d)を直列に接続した4個の発光素子」であることは、本願発明の「並列接続された発光デバイスのサブセットを少なくとも2つ直列に接続されたアレイ」に相当する。
してみると、両者は、相当関係にある。

(4)以上のことから、本願発明と引用発明は、
「発光体であって、
その上に発光デバイスを形成する共通基板によって相互接続された複数個の発光デバイスを含み、
前記発光デバイスは、前記共通基板上で電気的に相互接続されて、並列接続された発光デバイスのサブセットを少なくとも2つ直列に接続されたアレイを提供する、
発光体。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:各サブセットが含む発光デバイスが、本願発明では「少なくとも3つ」であるのに対し、引用発明では2個であり、
発光体両端の電圧降下が、本願発明では、「発光デバイスの1つの両端の電圧降下の少なくとも3倍」であるのに対し、引用発明では、並列接続された発光素子を直列に接続しているから発光素子の1つの両端の電圧降下の「2倍」であり、
共通基板によって相互接続された複数個の発光デバイスが、本願発明では、「少なくとも6個」であるのに対し、引用発明では「4個」である点。

6 判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)上記4(1)ウ、エの記載によれば、刊行物1に記載されたものは、高い駆動電圧で動作させることを課題とし、複数の発光素子をモノリシックに直列接続することを解決手段とするものである。ここで、上記(1)オには、「LED列が直列接続されることにより、各々の駆動電圧が加算された高い電圧でLED1を駆動することができる。」との記載があるように、直列接続されるLEDの数に応じた高い電圧で駆動できるものである。そして、刊行物1には直列接続する発光素子の数として、3個の例(図9参照)、4個の例(図2参照)等が開示されている。
そうすると、引用発明において、高い駆動電圧で動作するようにLEDアレイを構成するLEDの数を3以上とすること、言い換えると、直列に接続する発光素子の数を3以上とすることに困難性は無い。

(2)次に、上記4(1)キの記載によれば、「複数組の発光素子アレイを電極に並列接続すること」は、種々の変更の1つである。ここで、前記記載は、2組のアレイを並列接続する実施形態を踏まえて変更例として記載されたものであるから、「複数組」は3以上の組を含むものである。そうすると、引用発明において、並列に順方向接続するアレイの数を3以上とすること、言い換えると、並列に接続する発光素子の数を3以上とすることに困難性は無い。

(3)上記(1)、(2)によれば、引用発明において「二次元配置した発光素子」として、3個以上の発光素子を並列接続し、3個以上直列に接続した9個(=3×3)以上の発光素子とすることに困難性は無い。そして、3個以上の発光素子を並列接続し、3個以上直列に接続した9個以上の発光素子である「二次元配置した発光素子」は、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を充足するものである。すなわち、
ア 各サブセットが含む発光デバイスの数として3以上は、本願発明の「少なくとも3つ」に相当し、
イ 発光体両端の電圧降下が、発光デバイスの1つの両端の電圧降下の3倍以上(3個以上直列に接続している)は、本願発明の「発光デバイスの1つの両端の電圧降下の少なくとも3倍」に相当し、
ウ 共通基板によって相互接続された複数個の発光デバイスが9個以上であることは、本願発明の「少なくとも6個」と対比して、「少なくとも9個」の点で一致する。

(4)従って、引用発明において、直列に接続する発光素子の数を3以上、並列に接続する発光素子の数を3以上と為し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項と為すことに困難性は無い。

(5)作用効果について
本願発明が奏する作用効果は、引用発明においても奏するものであり、また、格別顕著なものとも認められない。

(6)小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明と刊行物1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と刊行物1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-06 
結審通知日 2014-11-07 
審決日 2014-11-27 
出願番号 特願2009-546567(P2009-546567)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 畑井 順一
星野 浩一
発明の名称 フォールト・トレラント発光体、フォールト・トレラント発光体を含むシステムおよびフォールト・トレラント発光体を作製する方法  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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