• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1299975
審判番号 不服2013-20471  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-22 
確定日 2015-04-23 
事件の表示 特願2012-109867「肝機能改善剤」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日出願公開、特開2013-241340〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年5月11日を出願日とする出願であって、平成25年7月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年10月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、平成26年1月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成26年3月19日に意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年10月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
ニンニクと梅と牡蠣との組合せを含有し、肝機能マーカーの検査値(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT、ALP、LD(LDH)、LAP)を低下させることができる肝機能改善剤。」

3.引用例に記載された事項
1)平成26年1月14日付け拒絶理由に引用された、本願出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、肝パワーEプラス・・・肝臓・血圧の悩み解消,2011年 1月,URL,http://blog.livedoor.jp/hisayutake-kanpower/archives/2011-01.html(以下、「引用例1」という)、同拒絶理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である、穂苅厚史 他,多施設共同研究による青梅加熱濃縮液ミサトールの肝機能障害に対する有効性及び安全性の検討,日本消化器病学会雑誌 ,2010年,Vol.107,臨時増刊号,Page.A369(以下、「引用例2」という)、特開2011-201841号公報(以下、「引用例3」という)、ZENG Tao et al,The protective effects of garlic oil on acute ethanol-induced oxidative stress in the liver of mice ,J Sci Food Agric,2008年,Vol.88,No.13,Page.2238-2243(以下、「引用例4」という)、出戸端佳 他,牡蠣エキスおよびヒバマタ海藻エキス摂取による肝機能保護作用の解明 ,日本栄養・食糧学会大会講演要旨集,2008年,Vol.62nd,Page.184(以下、「引用例5」という)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。
引用例1
(1a)「肝パワーEプラス・・・肝臓・血圧の悩み解消
肝パワーEプラスは、肝臓・血圧の悩みを解消してくれる大ヒットサプリメントです。」

(1b)「●肝パワーEプラスが大ヒットの理由
1.健康数値が正常をキープ
2.疲労の回復が実感できる
3.悪酔いをしない etc
など、ご利用頂いております、多くのお客様の口コミです」

(1c)「●肝パワーEプラスの成分に秘密がありました
・長野県産のにんにくを、1粒に100mg配合
・広島産牡蠣の濃縮エキス(タウリン・亜鉛)
・紀州の南高梅(クエン酸・アミノ酸)
を配合しております。」

(1d)「商品到着後、15日間の御利用で、ご満足頂けない場合は、1箱分の商品代金を返金致します。」

引用例2
(2a)「青梅加熱濃縮液ミサトールの肝機能障害に対する有効性及び安全性の検討」(タイトル)

(2b)「現治療においてALTが80IU/ml以上を示す症例に対し、ミサトールMEを1日2包12週間飲用してもらい、飲用前後における肝機能を含む臨床検査値の変化を検討する対照群なしの前向き多施設共同臨床試験を実施した。・・ALT値は試験開始時113±64,飲用終了時75±43で有意な低下が認められた(p<0.001)。また、AST値でも試験開始時103±60,飲用終了時68±3で有意な低下が認められた(p<0.001)。・・・脂肪性肝障害例では13例中5例(13%)が改善例であり、γGTPも有意に低下した(p<0.01)。・・【結論】C型慢性肝炎及び脂肪性肝障害に対するミサトールMEの肝機能障害改善効果が示唆された。」(方法、結果の欄)

引用例3
(3a)
「<試験例1>
実施例2で調製した梅肉エキスの中和処理物1gと糖類5.5gを混合したものを1回量とし、試験対象の患者に対して、朝晩の1日2回投与した。12週間投与を続けながら、各評価項目について評価を行った。試験対象は、C型慢性肝炎の患者であり、6ヶ月以上肝臓に炎症が持続している病態の患者とした。また、20歳未満の患者、76歳以上の患者、肝硬変、肝癌、その他の悪性腫瘍に罹患している患者、強力ミノファーゲンCを投与中の患者、およびインターフェロンを投与中の患者は、試験対象から除外した。
・・・
【0027】
図1は、試験対象患者のALT値の変化を示す図である。図1から、試験対象患者のALT値が低下したことが分かる。
【0028】
図2は、試験対象患者のAST値の変化を示す図である。図2から、試験対象患者のAST値が低下したことが分かる。
【0029】
図3は、試験対象患者のγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γGTP)値の変化を示す図である。γGTPは、肝臓が傷害を受けると血中濃度が高値になることが知られている酵素である。図3から、試験対象患者のγGTPが低下したことが分かる。
【0030】
図4は、試験対象患者の血清乳酸脱水素酵素(LDH)値の変化を示す図である。LDHは、肝臓に病変が生じると血中に遊離し、血中濃度が高値になることが知られている酵素である。図4から、試験対象患者のLDH値に低下傾向が見られた。
【0031】
図5は、試験対象患者のアルカリホスファターゼ(ALP)値の変化を示す図である。ALPは、肝臓に病変が生じると血中に遊離し、血中濃度が高値になることが知られている酵素である。図5から、試験対象患者のALP値が低下したことが分かる。」(【0024】?【0031】)

引用例4
(4a)「ニンニク油による前処置は、用量依存的に、エタノール誘導性のALT、AST、TG・・の急速な増加を阻害し・・」(AbstractのRESULTS 1?2行)

引用例5
(5a)「本研究では、実験動物に牡蠣エキス(Oy)並びに亜鉛リッチヒバマタ由来海草エキス(Zn)を混合あるいは各々単独摂取させた後、CCl4投与による肝障害誘発をどの程度抑制するのか、また、そのメカニズムを検討した。【方法】6週齢ICRマウスに、Oy、Zn、Oy+Znを各々0.475%、0.025%、0.5%含むAIN93G純化飼料(対照は無添加)を12日間投与し、飼育終了後、CCl4(40μl/kg体重)を腹腔内投与して肝障害を誘発させた。投与6時間後にエーテル麻酔下で腹部静脈より採血死させ、血清および肝臓を採取し、肝機能、抗酸化諸パラメーターを測定した。・・【結果と考察】対照群と比較して、Oy、Zn、Oy+Zn添加飼料摂取群のGOT、GPT、およびLDH活性は低く・・・」(4?15行)

2)記載事項(1a)によれば、引用例1には、肝パワーEプラスが肝臓の悩みを解消するサプリメントであることが、(1b)によれば、肝パワーEプラスには、にんにく、牡蠣、梅成分が配合されていることが記載されている。
そうすると、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「にんにく、梅、牡蠣成分を含有し、肝臓の悩みを解消するサプリメント」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「ニンニクと梅と牡蠣との組合せを含有するもの」である点で一致し、以下の点で一見相違する。
・本願発明は「肝機能マーカーの検査値(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT、ALP、LD(LDH)、LAP)を低下させることができる肝機能改善剤」であるのに対し、引用発明は「肝臓の悩みを解消するサプリメント」である点(以下、「相違点」という)

5.判断
上記相違点について検討する。
1)引用発明のサプリメントは、本願発明と同様に、ニンニク、梅、牡蠣が配合されているものである。そうすると、本願発明と引用発明は同じ成分を有するものであるから、引用発明のサプリメントは、「肝機能マーカーの検査値(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT、ALP、LD(LDH)、LAP)を低下させることができる」という、本願発明に規定されている特性も、本願発明同様に有すると認められる。また「疲労の回復が実感でき」「悪酔いしない」ようになり、「肝臓の悩みを解消」するものは、「肝機能を改善」しているものであるといえ、また、本願発明の「肝機能改善剤」は肝臓に良いとされる食材を継続して摂取させる剤を意味しているところ(【0036】)、記載事項(1d)によれば、引用発明は少なくとも15日間は継続して摂取することが推奨されているため、引用発明の「サプリメント」は「剤」の一種といえる。
そうすると、上記相違点は、実質上相違点ではない。
したがって、本願発明は引用例1に記載された発明であり、特許法第29条第1第3号に該当し、特許を受けることができない。

2)また、仮に上記相違点において両者が相違していたとしても、記載事項(2a)、(2b)によれば、引用例2には、梅によりAST、ALT、γGTP(本願発明のγGT)が低下することが記載されており、記載事項(3a)によれば、引用例3には、梅によりALT、AST、γGTP(本願発明のγGT)、LDH、ALPが低下することが記載されており、記載事項(4a)によれば、引用例4には、ニンニク油によりALT、ASTが低下することが記載されており、記載事項(5a)によれば、引用例5には、牡蠣エキスによりGOT(本願発明のAST)、GPT(本願発明のALT)が低下することが記載されている。
これら引用例2?5の記載事項を総合すると、ニンニク、梅、牡蠣を配合したものは、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT、ALP、LD(LDH)(以下、まとめて「ASTなど」という)を低下させる能力を有するといえる。ASTなどはごく一般的に用いられている肝機能マーカーであり(必要であれば、入戸野博ら、「肝機能検査の読みかた、診断の進めかた」、小児科診療、2007年、第70巻6号、1012-1019頁の1012頁右欄-1013頁右欄、特開2007-151549号公報【0058】、特開2004-191129号公報【0020】、特開平10-330284号公報【0010】等参照)、ASTなどの低下は、即ち、肝機能の改善を意味する。そして、LAPもASTなどと同様にごく一般的に用いられる肝機能マーカーである(必要であれば、上記ASTなどについての文献を参照)。そうすると、ニンニク、梅、牡蠣の配合物がASTなどを下げる、即ち肝機能を改善させること、そして、肝機能の改善により他の肝機能マーカーであるLAPも低下させることは、当業者が容易に想到しうることである。また、「自覚症状が改善された」ことは引用例1の「疲労の回復が実感できる」(1b)との記載から予測可能であり、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT、ALP、LD(LDH)、LAPが低下したことは引用例2?5から予測可能であるため、本願明細書中には、ニンニク、梅、牡蠣を組み合わせたことによって格別な効果が得られたと認められる記載もない。
よって、本願発明は引用例1?5記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1記載の発明であるから、特許法第29条第1第3号に該当し、特許を受けることができず、本願発明は引用例1?5記載の発明から容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-19 
結審通知日 2015-02-24 
審決日 2015-03-09 
出願番号 特願2012-109867(P2012-109867)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
P 1 8・ 113- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鶴見 秀紀  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 増山 淳子
前田 佳与子
発明の名称 肝機能改善剤  
代理人 内野 美洋  
代理人 内野 美洋  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ