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審決分類 |
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B30B 審判 全部無効 発明同一 B30B 審判 全部無効 2項進歩性 B30B |
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管理番号 | 1300252 |
審判番号 | 無効2014-800127 |
総通号数 | 186 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-06-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2014-07-25 |
確定日 | 2015-04-27 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5555538号発明「粉末圧縮成型品取出し装置及びこの装置を備えた回転式粉末圧縮成型装置」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第5555538号(以下,「本件特許」という。)についての手続の経緯は,おおむね次のとおりである。 平成22年 5月12日 本件特許に係る出願(特願2010-110455号) 平成26年 6月 6日 設定登録(特許第5555538号) 平成26年 7月25日 本件無効審判請求書提出(無効2014-800127号) 平成26年 8月14日付 手続補正指令 平成26年 9月17日 手続補正書提出(当該手続補正書により補正された審判請求書を,以下,単に「請求書」という。)) 平成26年11月21日 審判事件答弁書(以下、「答弁書」という。)提出 平成26年12月15日付 審理事項通知 平成27年 1月23日 (請求人)口頭審理陳述要領書(以下、「請求人要領書」という。)提出 平成27年 2月 9日 (被請求人)口頭審理陳述要領書(以下、「被請求人要領書」という。)提出 平成27年 2月16日 (請求人)上申書提出 平成27年 2月24日 口頭審理 第2.本件特許発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1から8までに係る発明は,本件特許の願書に添付された明細書(以下,「本件明細書」という。),特許請求の範囲及び図面(以下、「本件図面」という。)の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1から8までに記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その記載は以下のとおりである(以下,本件特許の特許請求の範囲に記載された発明を「本件特許発明」といい,各請求項に係る発明を「特許発明1」などという。)。 「 【請求項1】 回転盤の臼取付け部に取付けられた臼が有する臼孔の回転軌跡と交差するスクレーパ、及び成型品のうちで前記回転盤外に排出される不良品を受入れる不良品排出部を有し、前記臼から下杵で押出された成型品を前記スクレーパにより回転盤外に排出する排出導体と、 この排出導体の上流側でかつ前記回転軌跡の内側に設けられて前記不良品排出部の入口に向けて空気を噴射する不良品排出用のノズルと、 このノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部と前記スクレーパとの間を移動する前記下杵上に前記不良品が載っているか否かを前記スクレーパに前記下杵上の不良品が当たる前に検知する検知器と、 前記成型品の圧縮成型時に得られた成型情報を基に前記成型品の良否判定をし、不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているときに前記ノズルから空気を噴射させるとともに、不良と判定された成型品が前記下杵に載っていることを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させる制御装置と、 を具備することを特徴とする粉末圧縮成型品取出し装置。 【請求項2】 前記検知器が前記交差部と前記スクレーパとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の粉末圧縮成型品取出し装置。 【請求項3】 前記排出導体が、第1の取出し口及び第2の取出し口を有したシュートと、このシュートに設けられて通常は前記第1の取出し口から前記成型品を排出させる第1の位置に配置された状態に保持される切換え弁を備えており、この切換え弁が、前記シュートを通過しようとする前記成型品を前記第2の取出し口から排出させる第2の位置に前記不良品対策によって配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末圧縮成型品取出し装置。 【請求項4】 前記回転盤の回転が前記不良品対策によって停止されることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の粉末圧縮成型品取出し装置。 【請求項5】 不良と判定された成型品が前記下杵に載っていることが一定時間内で連続して又は断続して所定数前記検知器で検知されることに基づいて、前記制御装置により前記回転盤の回転が停止されることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の粉末圧縮成型品取出し装置。 【請求項6】 前記検知器が、投光器と、この投光器が発した光を受けて光電変換する受光器を有し、前記投光器と受光器のうちの一方が前記回転軌跡で囲まれる領域に配置され、他方が前記領域外に配置されていることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の粉末圧縮成型品取出し装置。 【請求項7】 前記排出導体が、前記不良品排出部の前記入口に対して回転方向下流側に設けられた第2の入口を有しこの第2の入口が前記回転軌跡と交差して開口された第2通路と、この第2通路と前記不良品排出部を仕切る隔壁とを有し、この隔壁と前記スクレーパとの間に前記第2通路が形成されているとともに、前記第2通路に臨んで前記検知器が取付けられていることを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の粉末圧縮成型品取出し装置。 【請求項8】 回転盤の臼取付け部に取付けられた複数の臼とこれら臼に対して上下動可能に設けられた上杵と下杵により前記臼内の粉末を圧縮成型し、圧縮された成型品が前記下杵により前記臼から押出される回転式粉末圧縮成型機と、 前記臼から押出された成型品を前記回転盤外に取出す前記請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の粉末圧縮成型品取出し装置と、 を具備することを特徴とする回転式粉末圧縮成型装置。」 第3.無効理由、無効理由に対する答弁及び証拠方法 1.請求人主張の無効理由 請求人は,請求書において,特許発明1から8までについての特許を無効とする,との審決を求めており,その無効理由は,平成27年2月24日の口頭審理において,以下の無効理由1から4までに整理された(第1回口頭審理調書の「審判長 1」欄)。 (1)無効理由1(進歩性) 特許発明1から8までに係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 (2)無効理由2(拡大先願) 特許発明1から8までに係る特許は,特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 (3)無効理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号に適合せず,その特許は,同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。 (4)無効理由4(明確性) 本件特許の請求項1から3までの記載は,特許法第36条第6項第2号に適合せず,それらの特許は,同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。 2.無効理由に対する被請求人の答弁 被請求人は,答弁書において,本件無効審判の請求は成り立たない,との審決を求めている。 3.証拠方法 請求人は,証拠方法として,請求書において,以下の甲第1号証から甲第7号証を提出し,請求人要領書において,以下の甲第8号証から甲第10号証までを提出した。なお,いずれの書証も「写し」であるので,その表記を省略する。 甲第1号証:実公平3-24313号公報 甲第2号証:特開平3-291534号公報 甲第3号証:特開2000-271794号公報 甲第4号証:特開2010-260100号公報(特願2010-59197号の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面の内容を掲載した公報) 甲第5号証:特許第5347149号公報(特願2010-59197号(甲第4号証に係る出願)の特許公報) 甲第6号証:特願2010-59197号(甲第4号証に係る出願)における拒絶査定不服審判事件(不服2013-4798号)の審判請求書 甲第7号証:本件特許に係る出願における平成25年11月25日付け意見書 甲第8号証:特開2012-6058号公報 甲第9号証:特開平10-263896号公報 甲第10号証:特表2001-511708号公報 また,被請求人は,証拠方法として,答弁書で,以下の乙第1号証を提出した。 乙第1号証:特願2010-59197号(甲第4号証に係る出願)における平成24年9月14日付け意見書 第4.当事者の主張 上記無効理由1から4までについて,請求人及び被請求人は以下のように主張している。 なお,以下で行数により記載箇所を特定する際には,空白行は含めず,請求書における記載箇所は,平成26年9月17日付け手続補正書により補正された箇所を含む。また,各甲号証や乙号証を「甲1」などという。 1.無効理由1(進歩性) [請求人] (1)特許発明1 ア.甲1に係る発明の課題は「下杵に対する成形品の離型性が悪い場合であっても、それに拘らず確実に不良成形品を排出できる回転式粉末圧縮成形機の不良品排出装置を得ることにある。」ということであり,甲2に係る発明の課題は「従来の重量選別装置では、例えば不良と判定した物品が完全に排除されず、選別コンベア8から搬出コンベア2へ搬出されても、この選別ミスを知ることができず、不良品を後続ラインへ何の警告もなしに送ってしまう。特に、簡単な構成で高速に物品の排除が可能な前述のエア排除式の選別駆動部7を有する重量選別装置では、物品の形状や姿勢によってこの選別ミスが発生しやすく、前段ラインに異常があって、不良品が続けて搬入され、このうちの多数の物品が選別ミスによって後段ライン側へ搬出されてしまっている状況が続いても気付かないという場合も起こり得る。本発明はこの課題を解決した重量選別装置を提供することを目的としている。」ということであるから,甲1及び甲2に係る発明は,いずれも不良品の排出を課題としており,課題が共通する。 よって,甲1の不良品排出装置に,甲2の重量選別装置を適用することは,当業者にとって容易に想到できるものであり,特許発明1は,甲1及び甲2により,いわゆる進歩性の要件を満たさない(請求書第2ページ第5行から第3ページ下から第8行まで,同第7ページ第4から20行まで,同第26ページ下から第12から8行まで,同第30ページ第4から15行まで,同第32ページ下から第7行から第39ページ第11行まで,請求人要領書第3ページ第4行から第6ページ第11行まで,第7ページ下から第8行から第8ページ第3行まで,同第11ページ第5から14行まで及び上申書第2ページ第12行から第5ページ下から第3行まで)。 イ.甲8は,本件発明の出願より1ヶ月ほど後願であるが,1ヶ月程度では技術常識に変化はなく,本件発明の出願時の技術常識を理解するのに役立つ。甲8の段落【0024】及び【0030】の記載から,「不良品が下杵上に必ずあるとはいえない」ことが理解でき,「不良品が下杵上に保持されて勝手に動くことがない状態で、不良品を検出器で検出するので、・・・簡単な構成で正確に不良品の有無を検出できる」という効果は生じない。(請求人要領書第6ページ第12行から第7ページ第19行まで)。 (2)特許発明2 特許発明2は,甲1及び甲2により,いわゆる進歩性の要件を満たさない(請求書第3ページ下から第7から最終行まで,同第7ページ下から第7行から第8ページ第8行まで,同第47ページ下から第11行から第48ページ第4行まで及び請求人要領書第8ページ第4から6行まで)。 (3)特許発明3から8まで 特許発明3,7及び8は,甲1,甲2及び甲3により,いわゆる進歩性の要件を満たさない。特許発明4から6までは,甲1,甲2,甲3及び周知技術・慣用技術により,いわゆる進歩性の要件を満たさない(請求書第4ページ第1行から第7ページ第2行まで,同第8ページ第9行から第11ページ第5行まで,同第49ページ第7から23行まで,同第50ページ下から第8から最終行まで,同第51ページ第13から25行まで,同第52ページ下から第9行から第53ページ第5行まで,同第53ページ下から第6行から第54ページ第12行まで,同第55ページ第7から19行まで及び請求人要領書8ページ第7行から第11ページ第4行まで)。 [被請求人] (1)特許発明1 甲1に記載された発明に甲2に記載された発明を適用するに際して,動機づけはない(答弁書第3ページ下から第6行から第15ページ第7行まで,同第18ページ第16行から第19ページ第3行まで,被請求人要領書第4ページ下から第7行から第9ページ下から第4行まで及び同第11ページ下から第6から3行まで)。 (2)特許発明2 特許発明2は,特許発明1に従属する(答弁書第15ページ第8から11行まで) (3)特許発明3から8まで 特許発明3から8までは,特許発明1に従属する(答弁書第15ページ第12行から第18ページ第14行まで,同第19ページ第4から11行まで及び被請求人要領書第9ページ下から第3行から第11ページ下から第7行まで)。 2.無効理由2(拡大先願) [請求人] (1)特許発明1 ア.特許発明1と甲4に係る発明とを対比すると,前者は「粉末圧縮成型品取出し装置」であるのに対して,後者は「回転式粉体圧縮成形機」であり相違するが,両者の発明の課題及び効果は共通するから,上記の相違は課題解決における具体的手段による微差であり,両者は実質的に同一である。(請求書第11ページ下から第10行から第12ページ下から第5行まで,同第15ページ下から第13行から第16ページ第4行まで,同第26ページ下から第7から最終行まで,同第30ページ下から第10行から第32ページ第8行まで,同第39ページ下から第15行から第44ページ下から第9行まで及び請求人要領書第11ページ下から第11行から第12ページ第9行まで)。 イ.甲4の図3では,通過センサ23は,指定成形品又は成形品が案内部材21に接触する前に指定成形品又は成形品の通過を検出している(請求書第44ページ第12から14行まで)。 (2)特許発明2から8まで 特許発明2から8までと甲4に係る発明は実質的に同一である(請求書第12ページ下から第4行から第15ページ第14行まで,同第16ページ第5行から第19ページ最終行まで,同第48ページ第5行から第49ページ第5行まで,同第49ページ下から第4行から第50ページ第18行まで,同第51ページ第1から11行まで,同第51ページ下から第2行から第52ページ下から第11行まで,同第53ページ第6から20行まで,同第54ページ第13行から第55ページ第5行まで,同第55ページ下から第8行から第56ページ第7行まで及び請求人要領書第12ページ第10行から第15ページ最終行まで)。 [被請求人] (1)特許発明1 特許発明1は,甲4に係る発明と同一ではない(答弁書第19ページ下から第4行から第30ページ第6行まで,同第32ページ第1行から第33ページ第1行まで及び被請求人要領書第11ページ下から第2行から第12ページ第16行まで)。 (2)特許発明2から8まで 特許発明2及び3並びに5から7までに係る構成について,甲4に何ら記載,開示はない。また,特許発明4及び8は,特許発明1を直接又は間接に引用するから,特許発明1と同様に甲4に係る発明と同一ではない(答弁書第30ページ第7行から第31ページ下から第2行まで,同第33ページ第2から15行まで及び被請求人要領書第12ページ下から第10行から第13ページ第3行まで)。 3.無効理由3(サポート要件) [請求人] ア.本件特許発明の課題は「回転盤から取出される良品に不良品が混入したか否かを検知できるとともに、不良品の混入に応じた不良品対策を実行可能な粉末圧縮成型品取出し装置及びこの装置を備えた回転式粉末圧縮成型装置を提供すること」(本件明細書段落【0011】)である。当該課題を解決するためには,どのように「良品に不良品が混入したか否かを検知」し,どのように「不良品の混入に応じた不良品対策を実行可能」とするかが必要であるところ,本件特許の請求項1にはそのような記載が一切なく,前記の課題を解決していない(請求書第24ページ下から第9行から第25ページ第5行まで及び同第57ページ下から第10行から第58ページ第4行まで)。 イ.本件特許の請求項1には,本件明細書段落【0058】から【0060】までに記載された不良品対策に関する内容が反映されていない(請求人要領書第2ページ第2行から第3ページ第3行まで及び同第17ページ第16から20行まで)。 ウ.被請求人は,被請求人要領書第3ページ第11から15行までにおいて,本件特許の請求項1においては,その不良品対策の個々の具体的な形態に係る内容を発明の直接の対象としているのではない,などと主張しているが,本件特許の請求項1において,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されているか否かの判断において,このような主張は一切関係がない。 また,同第3ページ第15から17行までにおいて,第1次及び第2次不良品対策は,本件特許の請求項3から5までに記載されている,と主張しているが,本件特許の請求項1において不良品対策に関する内容が反映されているか否かの解釈に関して,本件特許の請求項3から5までの記載は一切関係がない(上申書第1ページ下から第8行から第2ページ第11行まで)。 [被請求人] ア.請求人は,本件特許の請求項1には本件特許発明の課題を解決するための手段が一切ないとの主張を行っているが,何を根拠にどのような論理付けでこのような主張を行っているのか,不明である。本件特許の請求項1には,本件特許発明の課題を解決するための手段が明確に記載されている(答弁書第38ページ最終行から第39ページ第13行まで)。 イ.本件明細書段落【0058】から【0060】までに記載された不良品対策の個々の内容は,具体的な実施の形態に係るものである。本件特許の請求項1においては,不良品対策の具体的な形態に係る内容を発明の直接の対象としているのではなく,不良品対策を最終的に行うのに際して,その不良品対策に先立つ技術事項としての,検知器による検知,同検知をもとにした制御装置等に係る事項を特に発明の主要な構成要件としている。そして,不良品対策に係る具体的な内容に関しては,本件特許の請求項3から5までにおいて記載している(被請求人要領書第2ページ第12行から第4ページ下から第8行まで)。 4.無効理由4(明確性) [請求人] (1)特許発明1 ア.「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」について 本件特許の請求項1の「ノズルから噴射された空気」は目に見えるものではなく,噴射された空気は噴射口から離れるにつれて広がるため,臼孔の回転軌跡との交差部がどこになるか不明確である。 また,本件明細書等を参酌しても「ノズルから噴射された空気」の軌道について記載がなく,本件特許の請求項1の記載は不明確である。 さらに,ノズルから噴射された空気で不良品を排出した場合,噴射された空気が不良品に接触した段階で,空気は勢いをなくし,臼孔の回転軌跡と交差せず,本件特許の請求項1の記載は不明確である(請求書第24ページ第1から9行まで及び同第56ページ下から第6行から第57ページ第8行まで)。 答弁書第37ページ第9から15行までにおいて,交差部Cはノズル31から噴射された空気の気流方向を示す矢印の延長線と臼孔9aの回転軌跡の中心線Bとの交点である,と被請求人は主張するが,当該事項は,本件明細書に記載されていない。 また,目に見えない「空気」で物の位置関係を示しているため,検知器の位置関係が不明確である(請求人要領書第16ページ第1から24行まで)。 イ.「不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているとき」について 「向かい合う」とは,「互いに正面を向いて対する。向きあう。」ことであるが,不良と判定された成型品が,不良品排出部の入口に向かい合うことはなく,本件特許の請求項1の記載は不明確である。 また,本件明細書を参酌しても,「不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているとき」について説明がない(請求書第24ページ第10から18行まで及び同第57ページ第9から17行まで)。 「不良と判定された成型品」は,ノズルから空気が噴射される前において回転盤の回転軌跡上にあり,回転進行方向(接線方向)を向いており,「不良品排出部の入口」には向いていないから,「不良と判定された成型品」は,「不良品排出部の入口」と向かい合っていない(請求人要領書第16ページ下から第3行から第17ページ第15行まで)。 (2)特許発明2 上記(1)ア.に示すように,「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」の位置が不明確であるから,本件特許の請求項2の「前記交差部」の位置も不明確である(請求書第25ページ第10から16行まで及び同第58ページ第8から14行まで及び請求人要領書第17ページ下から第6から3行まで)。 (3)特許発明3 本件特許の請求項3に記載された「通常」とは,どの状態を通常というのか不明確である。 本件明細書を参酌しても「通常」の説明はない(請求書第25ページ下から第9から2行まで及び同第58ページ下から第11から4行まで及び請求人要領書第17ページ下から第2行から第18ページ第3行まで)。 [被請求人] (1)特許発明1 ア.「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」について 「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」とは,本件図面の図1に記載されたC点を意味する。 また,本件明細書段落【0041】に「臼孔9aの回転軌跡とノズル31から噴射された空気との交差部(図1に符号Cで代表的に示す。)」と明確に記載されている(答弁書第37ページ第1行から第38ページ第2行まで及び被請求人要領書第13ページ第4から9行まで)。 イ.「不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているとき」について 請求人は,どういう根拠で「向かい合っている」の記載が不明確であると主張しているのか,不明である(答弁書第38ページ第3から26行まで)。 請求人のいう「回転進行方向(接線方向)を向いており,『不良品排出部の入口』には向いていない」とは,何を意味しているのか不明である。本件特許の請求項1の記載は明確である(被請求人要領書第13ページ第10行から第14ページ第4行まで)。 (2)特許発明2 上記(1)ア.の反論がそのまま準用できる(答弁書第39ページ第14及び15行)。 (3)特許発明3 特許発明3を普通の日本語の文章として文理解釈すると,「通常」は「第1の取出し口から成型品を排出させる第1の位置に配置された状態に保持される」,「切換え弁を備えており」,「この切換え弁」が,「シュートを通過しようとする成型品を第2の取出し口から排出させる第2の位置に」,「不良品対策によって配置される」として,何の障害を伴うことなく違和感なく,その意味する内容を把握することができる。請求人が主張する,「不明確である」との根拠,論理づけが不明である(答弁書第39ページ第16行から第41ページ第3行まで)。 第5.無効理由についての当審の判断 1.各書証の記載事項,発明及び技術的事項 甲1から10まで及び乙1に記載された事項,発明及び技術的事項は,以下のとおりである。なお,記載事項における下線は,理解を容易にするために当審で付した。 (1)甲1の記載事項及び甲1発明 甲1は,本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項及び発明が記載されている。 ア.「本考案は、回転式粉末圧縮成形機において成形される成形品のうち、不良品と判定された成形品を空気圧を利用して回転盤外に排出する不良品排出装置に関する。」(第1欄第20から23行まで) イ.「〔考案が解決しようとする問題点〕 ところで、成形品はその圧縮成形によつて下杵の上面に付着しているから、従来の排出装置においては空気ノズルから噴射される高圧空気で、下杵上面からの不良成形品の剥離とともに、吹き飛ばすことを同時的に行わなければならない。 このため、付着性が少ない粉末を圧縮成形する場合には問題はないが、・・・・・要するに下杵に対する成形品の離型性の悪い成形条件においては、高圧空気の吹き付けのみでは、不良成形品を下杵から分離する信頼性が悪いという問題があつた。 本考案の目的は、下杵に対する成形品の離型性が悪い場合であつても、それに拘らず確実に不良成形品を排出できる回転式粉末圧縮成形機の不良品排出装置を得ることにある。」(第2欄第28行から第3欄第21行まで) ウ.「図中1は回転式粉末圧縮成形機の回転盤で、その同一円周上には多数の臼2が等間隔ごとに取付けられている。そして、回転盤1に設けた上杵案内孔3には臼2に下端部が挿脱される上杵4が上下方向に沿つて摺動自在に取付けられているとともに、回転盤1に設けた下杵案内孔5には上端部を臼2に挿入して下杵6が上下方向に摺動自在に取付けられている。 なお、回転盤1の臼取付け部1a上には図示しない粉末供給器が設置されているとともに、第1図中Xは回転盤1の回転方向を示している。また、上記粉末供給器から臼2内に供給された粉末は秤量された後に、圧縮成形位置において図示しない加圧ローラにより互いに接近する方向に移動される上杵4および下杵6により圧縮成形され、かつ成形された臼2内の成形品は下杵6により臼取付け部1a上に押出され、後述のスクレーパに当つて回転盤1外に取出されるようになつている。 ・・・・・ そして、成形品Aが回転盤1の臼取付け部1a上に下杵6で押出された位置から上記粉末供給器が設けられた位置に至るまでの間の位置、つまり成形品排出位置には排出導体7が設けられている。この排出導体7は、臼取付け部1aの上面に近接又は軽微に摺接する下面開口の回転盤重なり部8Aと、回転盤7の外側に位置する基部8Bとからなる合成樹脂製の導体ベース8の上面に、固定蓋9および可動蓋10を取付けて形成されている。 回転盤重なり部8Aは臼2の回転軌跡Bと交差して配置されるものであり、この重なり部8Aにおける上記粉末供給器側(第1図中上側)の壁部は、回転軌跡Bと斜めに交差するスクレーパ11として形成されている。そして、導体ベース8は、この内部を良品排出溝12と不良品排出溝13とに仕切る隔壁14を一体に有している。基部8Bには良品排出溝12に連通する良品排出口15が設けられ、これには図示しない良品受け容器に良成形品を案内するガイドチユーブ16が接続されている。さらに、基部8Bには不良品排出溝13に連通する不良品排出口17が設けられ、これには不良品受け容器18に不良成形品を案内するガイドチユーブ19が接続されている。」(第3欄42行から第5欄3行まで) エ.「さらに、端壁25には、回転盤1外に位置した基部8Bに向けて高圧空気を噴射する空気ノズル26が設けられている。さらに、端壁25には空気ノズル26を境にして上記通過部23と反対側に、換言すれば成形品Aの移動方向から見て空気ノズル26の手前側に成形品接触部27が、例えば空気ノズル26に近接して設けられている。この接触部27は下杵6により臼取付け部1a上に押出された成形品Aの移動軌跡C(第1図中2点鎖線で示す)内に僅かに突出する凸部により形成されている。」(第5欄第24から34行まで) オ.「また、空気ノズル26は電磁弁28を介して圧力タンクなどの空気供給源29に接続されている。電磁弁28は常に閉じ状態を保持するものであり、この常閉の電磁弁28は判定器30によつて開かれるように制御される。判定器30には目標値が予め設定されているとともに、上記ロードセルなどのセンサからの検出信号が入力され、この判定器30はその目標値と入力された検出信号とを比較して、成形品の良・否を判定するものである。さらに、判定器16は、その判定により不良成形品を判定した際に、判定した不良成形品が下杵6で臼取付け部1aの上面に押出されて丁度成形品取出し位置に到達した時期にタイミングを合せて、電磁弁28を所定時間の間開き動作させる制御信号を出力する構成である。 回転式粉末圧縮成形機の運転時には、判定器30が、それに設定された目標値と圧縮成形の都度入力されるセンサからの検出信号とを比較判定して、成形された成形品Aが良品であるか、不良品であるのかを判定する。 そして、不良成形品の判定をした場合において判定器30は制御信号を出力するから、それに基づいて電磁弁28が所定時間の間開かれる。そうすると、空気供給源29の高圧空気が電磁弁28を通して空気ノズル26に供給されて、この空気ノズル26から回転盤1の外方に向けて高圧空気が噴射される。このため、臼取付け部1a上に下杵6で押出されている不良成形品には、排出導体7の回転盤重なり部8A内において空気ノズル26からの高圧空気が吹き付けられる。」(第5欄第39行から第6欄第24行まで) カ.「ところで、成形品Aはそれが良品であつても不良品であつても、下杵6により臼取付け部1a上に押出されて、不良品排出装置7の回転盤重なり部8Aにおける導入部24に導入されると直ぐに、成形品接触部27に当接して、それに伴う衝撃を受ける。このため、離型性が良い成形品は勿論のこと、付着性が高かつたり、下杵6の上面に凹凸があつたり、或は臼孔と下杵6とのクリアランスにばりが形成される等により離型性が悪い成形品Aの場合にも、これらの成形品Aを下杵6の上面から強制的に剥離できる。 したがつて不良成形品は、下杵6に対して強制的な剥離作用を受けた直後に、空気ノズル26から高圧空気を吹き付けられるので、この空気で確実に不良品排出溝13内に不良成形品を吹き飛ばすことができる。なお、このようにして吹き飛ばされた不良成形品はガイドチユーブ19を介して不良品受け容器18に排出される。 また、上記判定器30が制御信号を出力しない場合には、以上の高圧空気による不良成形品の排出動作は行われない。したがつて、回転盤1の臼取付け部1a上に押出された良成形品は、回転盤1の回転に伴つて通過部23を通つてスクレーパ11に当接するから、これに沿つて臼取付け部1a上から導出され、良品排出溝12を通つて取出される。」(第6欄第25行から第7欄第6行まで) キ.「〔考案の効果〕 以上説明したように本考案の不良品排出装置においては、・・・・・下杵上面に付着された成形品を高圧空気で吹き飛ばす前に予め強制的に下杵から剥離できるから、空気ノズルから噴射される高圧空気で、下杵上面から不良成形品の剥離させる必要がなくなり、下杵に対して成形品の離型性が悪い場合であつても、それに拘らず確実に不良品を排出できる。」(第7欄第18行から第8欄第11行まで) ク.第1図 第1図には,「回転軌跡B」の記載及び「不良品排出口17」が「回転盤1」の外に設けられていることの記載がある。 ケ.甲1発明 上記エ.には「回転盤1外に位置した基部8Bに向けて高圧空気を噴射する空気ノズル26が設けられている」と記載されているところ,「基部8B」について,上記ウ.に「基部8Bには不良品排出溝13に連通する不良品排出口17が設けられ」と記載され,また,上記カ.に「不良成形品は、・・・・・空気ノズル26から高圧空気を吹き付けられるので、この空気で確実に不良品排出溝13内に不良成形品を吹き飛ばすことができる」と記載されていることからみて,空気ノズル26が,不良品排出溝13の内部に向けて空気を噴射すると理解できる。 また,上記ウ.の「粉末供給器から臼2内に供給された粉末」という記載からみて,臼2が臼孔を有することや,その回転軌跡が第1図の「回転軌跡B」と同じであることを理解できる。 以上の記載事項を,技術常識及び上記の理解をふまえて整理すると,甲1には以下の発明が記載されていると認められる。 「回転盤1の臼取付け部1aに取付けられた臼2が有する臼孔の回転軌跡Bと交差するスクレーパ11,及び成形品Aのうちで前記回転盤1外に排出される不良品を受入れる不良品排出溝13を有し,前記臼2から下杵6で押出された成形品Aをスクレーパ11により回転盤1外に排出する排出導体7と, この排出導体7の上流側でかつ前記回転軌跡Bの内側に設けられて前記不良品排出溝13の内部に向けて空気を噴射する空気ノズル26と, この空気ノズル26の手前側に近接して設けられた成形品接触部27と, 前記成形品Aの圧縮成形時に得られた検出信号を基に前記成形品Aの良否判定をし,不良と判定された成形品Aが成形品取出し位置に到達したときに前記空気ノズル26から空気を噴射させる判定器30と, を具備する回転式粉末圧縮成形機の不良品排出装置。」(以下、当該発明を「甲1発明」という。) (2)甲2の記載事項、及び甲2技術事項 甲2は,本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。 ア.「<本発明の産業上の利用分野> 本発明は物品の重量を搬送中に計量して、その重量の選別判定を行ない、物品をこの判定結果に応じた搬送経路に選別搬送する重量選別装置に関する。 <従来技術> 生産ラインでは、搬送物品をその重量によって選別するために第4図に示す重量選別装置が従来より用いられている。 ・・・ <解決すべき課題> しかしながら、このような従来の重量選別装置では、例えば不良と判定した物品が完全に排除されず、選別コンベア8から搬出コンベア2へ搬出されても、この選別ミスを知ることができず、不良品を後続ラインへ何の警告もなしに送ってしまう。 特に、簡単な構成で高速に物品の排除が可能な前述のエア排除式の選別駆動部7を有する重量選別装置では、物品の形状や姿勢によってこの選別ミスが発生しやすく、前段ラインに異常があって、不良品が続けて搬入され、このうちの多数の物品が選別ミスによって後段ライン側へ搬出されてしまっている状況が続いても気付かないという場合も起こり得る。 本発明はこの課題を解決した重量選別装置を提供することを目的としている。」(第1ページ右下欄下から第4行から第2ページ左下欄第7行まで) イ.「<作用> したがって、第1のコンベア上で重量の判定を受けた物品が第2のコンベアの選別位置に達すると、その物品の判定信号に応じた搬出路に振分けられる。 選別位置から所定の搬出位置に物品が到達するタイミングに、搬出センサからの信号と判定信号とによる選別の確認がなされ、選別ミスがあったと判定されたときには外部へ報知される。」(第2ページ右下欄最終行から第3頁左上欄第8行まで) ウ.「この測定タイミングにおける安定した計量信号は、スイッチ14を介して選別判定部15の重量算出手段16に入力され、搬入物品の重量値が平均演算等により算出される。 重量算出手段16からの算出重量は、判定手段17において予め設定された許容重量範囲との比較判定がなされ、その判定結果に対応した判定信号、例えばパス信号、オーバ信号、アンダ信号が出力される。」(第3ページ右上欄第3から11行まで) エ.「19は、第1の判定結果メモリ18とともに第1の判定結果遅延手段を構成する第1の遅延タイマであり、搬入センサ12からの物品搬入を示す信号を所定時間遅延して第1の判定結果メモリ18に出力する。・・・選別コンベア8の両側に設けられているエアノズル9a、9bのエア吹付けにより、物品が排除される」(第3ページ左下欄第5から16行まで) オ.「エア供給装置20は、判定信号の第2ビット目に“1”がある場合は一方のエアノズル9aに所定時間(物品長とコンベアスピードSで決まる時間)だけエアの供給を行ない、第3ビット目に“1”がある場合および第1、第4ビット目にともに“1”がある場合は他方のエアノズル9bに所定時間エア供給を行なう。」(第3ページ右下欄第7から13行まで) カ.「22は、第1の遅延タイマ19からの遅延信号をさらに所定時間Trだけ遅延して第2の判定結果メモリ21に出力する第2の遅延タイマであり、この第2の判定結果メモリ21とともに第2の判定結果遅延手段を構成する。」(第3ページ右下欄第18行から第4ページ左上欄第2行まで) キ.「23は、第2の判定結果メモリ21から読出される判定信号と、選別コンベア8の搬出位置Rに設けられた搬出センサ24からの物品搬出を示す信号とを受けて、搬出コンベア2に搬出されるべきでない不良物品が搬出されたり、搬出されるべき良品が搬出されなかったことを判定する選別ミス判定手段である。 25は、選別ミス判定手段23からの選別ミス信号を受けてアラーム音を発生するアラーム手段である。」(第4ページ左上欄第10から19行まで) ク.「以上のように構成された重量選別装置10の動作について説明する。 選別すべき物品W1W2、・・・・・・が搬入コンベア1より計量コンベア4に順次搬入されると、・・・搬入センサ12の検出信号が物品搬入に同期して出力される。 これらの物品重量が順次算出され、・・・その判定結果に応じた判定信号が第1の判定結果メモリ18に順番に記憶される。 第1の判定結果メモリ18に記憶された物品毎の判定信号は、・・・エア供給装置20および第2の判定結果メモリ21に記憶される。 ここで、例えば物品W1の次の物品W2、W3がともに不良であると判定されると、・・・対応するエアノズル(9a、9b)に対してエア供給がなされる。 物品はこのエアを物品のほぼ中央で効果的に受けることになり、選別コンベア8の側方へ排除される。 これにより、不良物品の排除がなされるが、重量による判定を受けた物品が選別コンベア8の搬出位置Rに達するタイミングで・・・判定信号は・・・選別ミス判定手段23に入力されて、選別ミスがあったか否かが判定される。 第3図の(e)と(f)に示したように、良品物品W1の判定信号H1に対して搬出センサ24の出力が“H”になれば良品物品が確実に搬出されたことが確認されるが、不良物品W3の判定信号H3に対して搬出センサ24の出力が“H”になると選別ミスがあったと判定され、第3図の(g)に示すような選別ミス信号が出力され、アラーム音が発生する。」(同4頁右上欄5行?右下欄2行) ケ.甲2技術事項 上記ウ.の「この測定タイミングにおける安定した計量信号は、スイッチ14を介して選別判定部15の重量算出手段16に入力され、搬入物品の重量値が平均演算等により算出される」という記載や,上記ク.の「選別すべき物品WIW2、・・・・・・が搬入コンベア1より計量コンベア4に順次搬入されると、・・・搬入センサ12の検出信号が物品搬入に同期して出力される。これらの物品重量が順次算出され」という記載からみて,重量算出手段16は,計量コンベア4の物品の重量を算出していると理解できる。 また,上記ク.の「例えば物品W1の次の物品W2、W3がともに不良であると判定されると、・・・対応するエアノズル(9a、9b)に対してエア供給がなされる。物品はこのエアを物品のほぼ中央で効果的に受けることになり、選別コンベア8の側方へ排除される。」という記載及び上記エ.の「選別コンベア8の両側に設けられているエアノズル9a、9bのエア吹付けにより、物品が排除される」という記載からみて,エアノズル9a,9bは,不良物品にエアを吹き付けて選別コンベア8の側方へ排除させていると理解できる。 また,上記キ.の「選別コンベア8の搬出位置Rに設けられた搬出センサ24からの物品搬出を示す信号」という記載からみて,搬出センサ24は,選別コンベア8からの物品の搬出を示す信号を出力していると理解できる。 さらに,上記ク.の「これらの物品重量が順次算出され、・・・その判定結果に応じた判定信号が第1の判定結果メモリ18に順番に記憶される」という記載からみて,甲2の装置は,重量算出手段16の算出重量を基に物品を判定していると理解でき,上記ク.の「第1の判定結果メモリ18に記憶された物品毎の判定信号は、・・・エア供給装置20および第2の判定結果メモリ21に記憶される。ここで、例えば物品W1の次の物品W2、W3がともに不良であると判定されると、・・・対応するエアノズル(9a、9b)に対してエア供給がなされる」という記載からみて,甲2の装置は,不良と判定された物品にエアノズル9a,9bからエアを吹き付けていると理解でき,上記ク.の「不良物品W3の判定信号H3に対して搬出センサ24の出力が“H”になると選別ミスがあったと判定され、第3図の(g)に示すような選別ミス信号が出力され、アラーム音が発生する」という記載からみて,甲2の装置は,不良物品が選別コンベア8から搬出されることを示す信号に基づいてアラーム音を発生していると理解できる。 以上の記載事項を,技術常識及び上記の理解をふまえて整理すると,甲2には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「計量コンベア4と選別コンベア8を設け, 計量コンベア4の物品の重量を算出する重量算出手段16と, 不良物品にエアを吹き付けて選別コンベア8の側方へ排除させるエアノズル9a,9bと, 選別コンベア8からの物品の搬出を示す信号を出力する搬出センサ24とを有し, 重量算出手段16の算出重量を基に物品を判定し,不良物品にエアノズル9a,9bからエアを吹き付けるとともに,不良物品が選別コンベア8から搬出されることを示す信号に基づいてアラーム音を発生する重量物選別装置。」(以下,当該技術的事項を「甲2技術事項」という。) (3)甲3の記載事項 甲3は,本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であって, 「【0016】前記第1受入れ溝31の下面から機外に向けて、落下した成形品Gを受けて、外部に排出する第1シュート33が設けられ、前記第2受入れ溝32の下面から機外に向けて、落下した成形品Gを受けて外部に排出する第2シュート34が設けられている。なお、第1シュート33と第2シュート34の途中には、互いのシュート33、34を区切る隔壁に開口を形成し、その開口を塞ぐ大きさのシュート板35を揺動自在に取付け、このシュート板35をエアーシリンダ36で隔壁を構成する通常位置(実線位置)と、第1シュート31側に押し出して開いた開放位置(点線位置)との間で切替え可能となっている。」 との記載がある。 (4)甲4の記載及び甲4明細書発明 甲4は,本願の出願日前の他の特許出願であって,その出願後に出願公開された,特願2010-59197号(以下,当該出願を「甲4出願」という。)の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面の内容を掲載した公報であって,以下の事項及び発明が記載されている。 ア.「【請求項1】 フレームと、 フレーム内に回転可能に設けられる回転軸と、 回転軸に取り付けられる回転盤と、 回転盤に周方向に所定間隔で設けられる複数の臼と、 各臼に対して、その上下位置に上下方向に移動可能に保持される上杵及び下杵と、 臼内に充填した粉体を圧縮するように杵先を臼内に挿入した上杵及び下杵を相互に近づく方向に付勢する上ロール及び下ロールと、 臼とその臼に組み合わされる上及び下杵との一組からなる成形部を指定する指定手段と、 指定手段が指定した成形部が所定位置に達したことを検出する位置検出手段と、 位置検出手段が出力する位置検出信号に基づき、指定手段が指定する成形部から排出される指定成形品を指定成形品以外の成形品の集荷から分離する分離手段と、 指定成形品の動きに基づいて分離手段の作動を確認する作動確認手段とを備えてなる回転式粉体圧縮成形機。 【請求項2】 作動確認手段が、分離手段が正常に作動しなかったことを確認した場合に、異常確認信号を出力する請求項1記載の回転式粉体圧縮成形機。」 イ.「【0011】 このような構成によれば、作動確認手段が、指定成形品の動きに基づいて、分離手段の作動が正常か否かを判断するので、分離手段の不具合を正確に判断することができる。 【0012】 分離手段に不具合を生じると、指定成形品を指定成形品以外の成形品から分離することができず、指定成形品の分離位置通過後の指定成形品の軌跡が、指定成形品以外の成形品の軌跡と同じになることから、作動確認手段により分離手段の作動が正常か否かを判断することができる。 【0013】 したがって、例えば、排出ノズルから圧縮空気が噴出されはしたが、指定成形品の軌跡が変化しなかった場合などの不具合の発生を検出することができ、上記の課題を解決する。」 ウ.「【0032】 この回転式粉体圧縮成形機は、図1に示すように、フレーム1内に、回転軸である立シャフト2を回転可能に配置し、その立シャフト2に回転盤3を取り付けている。回転盤3は、円板形状をしており、その外周の近傍部分に、周方向に所定間隔で複数の円筒形状の臼4が取り付けてある。回転盤3は、臼4が取り付けてある部分の上側に、上下方向に移動可能にそれぞれの臼4に対して設けられる上杵5を保持するとともに、臼4が取り付けてある部分の下側に、上下方向に移動可能にそれぞれの臼4に対して下杵6を保持している。すなわち、それぞれの臼4に対して、一対の上杵5及び下杵6を設けるものである。上杵5の杵先は、臼4に出入りし、下杵6の杵先は、常時臼4に挿入されている。成形部は、臼4とその臼4に組み合わされる上杵5及び下杵6との一組で構成される。」 エ.「【0037】 本圧上ロール15及び本圧下ロール16による加圧位置から回転盤3が進んだ位置には、製品排出部19が形成してある。この製品排出部19では、下杵6の先端が臼4の上端とほぼ一致するまで下杵6が上昇し、臼4内の成形品が臼4から排出されるものである。製品排出部19には、排出された成形品を集荷する成形品回収位置20に案内する案内部材21が設けてある。案内部材21は、その先端が臼4の軌跡より回転盤3の中心側に延びている。したがって、下杵6により臼4から押し出された成形品は、案内部材21に接触して、確実に成形品回収位置20に向かって移動する。この案内部材21の内部には、成形品の内、成形時の成形圧力が異常値を示した指定成形品を分離するための加圧空気が通る空気通路22が形成してあるとともに、空気通路22の先端22a近傍に、成形品の通過を検出し得る通過センサ23を設けている。」 オ.「【0039】 空気通路22は、指定成形品を分離する分離手段を構成するもので、案内部材21の取付端21a側から案内部材21の先端部21bまで延びており、先端部21bにおいて回転盤3の半径方向外側に向いて開口するものである。空気通路22の先端22aは、加圧空気の噴射ノズルとして機能し、指定成形品分離位置に対応しており、加圧空気を噴出する噴射部となる。指定成形品分離位置は、臼4から排出される成形品が最初に案内部材21に接触する位置に設定してある。指定成形品分離位置で半径方向外側には、分離される指定成形品を受ける指定成形品回収位置40が設けてある。」 カ.「【0043】 この通過センサ23は、案内部材21に案内されて成形品回収位置20に向かって移動する成形品の動きを検出するものであり、通過センサ23の位置は、空気通路22の先端22aの近傍で、かつ、成形品回収位置20寄りにある。また、発光素子23aの位置は、成形品回収位置20寄りにある。 【0044】 制御装置27は、図5に示すように、分離判定回路27aと分離タイミング回路27bと作動確認回路27cとを備えており、分離判定回路27aは、ロードセル18から出力される電気信号と、指定成形品を分離する基準を設定する分離設定値とを比較し、上杵5及び下杵6が本圧上ロール15及び本圧下ロール16の間を通過する際の粉体にかかる圧力が、異常圧力であることを検出する。ここで、異常圧力とは、粉体にかかる圧力が、あらかじめ設定した所定圧力により高い場合、又は、粉体にかかる圧力が、あらかじめ設定した所定圧力より低い場合の圧力のことである。」 キ.「【0055】 このような構成において、回転式粉体圧縮成形機を運転すると、検出された成形部が、本圧上ロール15と本圧下ロール16との間を通過する毎に、制御装置27の分離判定回路27aにロードセル18からの電気信号が入力される。分離判定回路27aは、入力された電気信号と上分離信号及び下分離信号とを比較し、電気信号が上分離信号を上回っている場合、又は、電気信号が下分離信号を下回っている場合に、分離タイミング回路27bと作動確認回路27cとに対して計数開始信号を出力する。分離タイミング回路27bは、計数開始信号を受信すると、入力されるパルスを計数し始める。そして、計数したパルスが所定数になった時点で、弁制御信号を所定時間だけ制御弁26に出力する。この時、指定成形品は、臼4から排出されて指定成形品分離位置に達しており、指定成形品が案内部材21に接触するのとほぼ同時に、分離タイミング回路27bの弁制御信号に基づいて、制御弁26が開く。その結果、空気供給源24から供給される加圧空気が、空気通路22の成形品分離位置側の端部、すなわち、先端22aから噴出し、分離すべき指定成形品を指定成形品回収位置40に吹き飛ばす。所定時間は、指定成形品を指定成形品回収位置40に吹き飛ばすに十分で、かつ、次の成形品が案内部材21に接触するまでの長さに設定する。」 ク.「【0059】 制御装置27の分離判定回路27aにロードセル18からの電気信号が入力され、電気信号が上述した上下分離信号で形成される信号の許容範囲からはずれている場合、分離判定回路27aは計数開始信号を出力する。そして、上述したように、分離タイミング回路27bから制御弁26に対して弁制御信号を出力するが、制御弁26が弁制御信号を受信したにもかかわらず、開かないことにより、指定成形品が分離されず案内部材21に沿って移動しようとする。 【0060】 作動確認回路27cは、分離判定回路27aから出力される計数開始信号を受信すると、その受信した時点、つまり、成形時の異常圧力が検出された時点からの経過時間を計測する。そして作動確認回路27cは、所定時間が経過した時点に、通過センサ23から出力される通過信号を受信すると、モータ8への通電を停止させる停止信号を出力する。具体的には、制御弁26が開かずに先端22aから加圧空気が噴出しないと、指定成形品は案内部材21に沿って指定成形品以外の成形品と同じ軌跡を辿ることになる。そして、通過センサ23の発光素子23aが射出した光が、指定成形品に反射して、受光素子23bに入射することで、通過センサ23により、その動きが検出され、通過センサ23は作動確認回路27cに通過信号を送信する。そして、作動確認回路27cは、分離判定回路27aから出力される計数開始信号を受信し、所定時間経過時点で通過センサ23から通過信号を受信することにより、制御弁26を含む分離手段の不具合、つまり、故障を確認する。」 ケ.「【0070】 このように、指定成形品の動きを観察して、制御弁26、ひいては、分離手段の不具合を間接的に検出しているので、例えば、制御弁26は開いているにもかかわらず、空気供給源24が故障していて指定成形品を分離し得ない、あるいは、空気通路22の先端22aに粉体が詰まっているなどの場合であっても、確実にモータ8、つまり、回転盤3を停止させることができる。 【0071】 したがって、分離手段の作動の不具合を確認するために、指定成形品の動きを観察する構成であるので、分離手段を構成する空気通路22、空気供給源24及び制御弁26を個々に観察する必要がない。そのため、作動確認手段の構成を簡素にすることができる。加えて、指定成形品(例えば、不良品)が成形品回収位置20に達することを未然に防ぐことで、指定成形品以外の成形品に指定成形品が混じることを防ぎ、それまでに集荷していた指定成形品以外の成形品(例えば、良品)を無駄にすることを防ぐことができ、歩留まりを向上させることができる。」 コ.図3 図3には,回転盤を中心とする平面構成の要部が示されている。 サ.甲4明細書発明 上記ウ.の「回転盤3は、円板形状をしており、その外周の近傍部分に、周方向に所定間隔で複数の円筒形状の臼4が取り付けてある」という記載からみて,回転盤3には,臼4を取り付けるための臼取付け部が存在することを理解できる。 以上の記載事項を,技術常識及び上記の理解をふまえて整理すると,甲4には以下の発明が記載されていると認められる。 「回転盤3の臼取付け部に取付けられた臼4の軌跡より前記回転盤3の中心側に延びる案内部材21,及び成形品のうちで指定成形品分離位置の半径方向外側に分離される指定成形品を受入れる指定成形品回収位置40を有し,前記臼4から下杵6で押出された成形品を成形品回収位置20に向かって移動させる案内部材21と, この案内部材21の先端部21bでかつ前記回転軌跡の内側に設けられて指定成形品分離位置に向けて空気を噴射する空気通路22の先端22aと, 前記案内部材21に案内されて前記成形品回収位置20に向かって移動する成形品の動きを検出する通過センサ23と, 前記成形品の圧縮成形時に得られたロードセル18からの電気信号を基に前記成形品の分離判定をし,不良品と判定された指定成形品が指定成形品分離位置に達したときに前記空気通路22の先端22aから空気を噴射させて分離するとともに,不良品と判定された指定成形品が前記案内部材21に案内されて前記成形品回収位置20に向かって移動する動きを前記通過センサ23が検知することに基づいて前記回転盤3を停止させる制御装置27と, を具備する回転式粉体圧縮成形機。」(以下,当該発明を「甲4明細書発明」という。) (5)甲5の記載事項 甲5は,甲4出願の特許公報であり,「回転式粉体圧縮成形機」に係る発明が記載されている。 (6)甲6の記載事項 甲6は,甲4出願における拒絶査定不服審判請求書であり, 「また、本願発明は、拒絶査定の通り、一見本願発明の課題が自明であると思えるかもしれないが、本願発明の粉体圧縮成形機において分離手段の作動を確認するということは、本願出願時において自明でなく、また、同業他社が同様の課題の発明を後願として出願していることからも本願出願時において自明でないことがわかる(特開2011-235332号(甲第3号証)3頁【0005】ないし【0011】及び特開2012-6058号(甲第4号証)3頁【0007】ないし【0009】参考)。」(第8ページ第13から19行) との記載がある。 (7)甲7の記載事項 甲7は,本件特許に係る出願における平成25年11月25日付意見書であり,意見の内容が記載されている。 (8)甲8の記載事項 甲8は,本件特許に係る出願後である平成24年1月12日に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。 ア.「【特許文献】 【0006】 【特許文献1】実開平06-077997号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 特許文献1が開示する不良品排出装置は、不良品を正しく吹き飛ばすことができず、そのまま成形品排出経路に至ってしまう虞をなくすこと、すなわち不良品を正常な成形品と別にかつ確実に排出することを目的としていた(特許文献1[0007])。これは、特許文献1が開示する不良品排出装置を適用したロータリプレスが、臼を保持した回転円盤を停止させないことを前提として不良品を選別するための手段である。回転円盤を停止させない場合、成形品と不良品とが混ざって排出されたことが外部から分からないため、万一不良品が正常な成形品に混ざって排出されると、もはや選別ができなくなるからである。」 イ.「【0024】 光学センサ32は、発光部321及び受光部322を兼ね備えた構成で、不良品排出装置2のエアノズル231より下流の円弧軌道112に直交する線状のセンサ光323(図1及び図2参照)を発光部321から照射する。後述するように、不良品排出装置2により不良品5がうまく排出できない場合、不良品5が円周軌道112からずれていることが多いので、前述のように円弧軌道112に直交する線状のセンサ光323を照射することにより、光学センサ32が確実に不良品5の有無を感知できるようにしている。」 ウ.「【0030】 ここで、監視部25が不良品5を発見し(図4参照)、噴射制御部21に作動信号を送ってエアバルブ22を開いたが、何らかの不具合(例えばエアノズル231が材料粉末により詰まっていた等)によって、図7に見られるように、うまく不良品5を排出できなかった場合が少なからず起きうる。この場合、圧縮空気24は、不良品5に全く当たらない又はかする程度であり、不良品5は、円周軌道112上又は円周軌道112近傍に残存すると考えられるので、不良品排出確認装置3の光学センサ32は、前記円周軌道112上又は円周軌道112近傍における不良品5の有無を監視する。」 (9)甲9の記載事項 甲9は,本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であって, 「【0089】増幅器58で増幅された第1成型圧力が入力されるピーク値ホールド回路59は、第1圧縮成型位置で予圧成型がされるたびに、検出される第1成型圧力のピーク値、及び予圧ロール25の変位量のピーク値を検出し、それを比較器60に供給する。この比較器60には操作盤により良品・不良品判別用の基準圧力の上限又は下限の値が予め設定されている。比較器60は入力されたピーク値が前記基準圧力の値を外れる場合に不良品排出のための前記開弁信号を出力する。それに基づいて前記不良品排出手段29の電磁弁33は、不良品排出位置に当該不良品が位置されるタイミングで開弁されるようになっている。 【0090】なお、本打錠装置は、前記開弁信号が一定数連続して発生する場合や、第1成型圧力が異常に大きく前記基準圧力から外れている場合、或いは定寸式重量制御手段4によるフィードバック制御が片側(錠重量を増加または減少させる方向)のみに実行されるような場合には、これらの現象の夫々に対応して比較器60に接続して設けた図示しない異常検出部での異常検出にしたがって本打錠装置の運転を停止するようになっている。」 との記載がある。 (10)甲10の記載事項 甲10は,本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であって, 「この移行導管70はシュート50の端部として作用し、受理されたタブレットを適当な捕集容器に搬送するのに役立つ(またもし所望ならば、移行導管70とタブレット捕集容器との間に金属探知装置を介在させる事もできる)。 図2と図2Aについて述べれば、導管ハウジング54はその下側面にアパチュア54Dを含み、このアパチュアは、導管ハウジング54の前端に最も近いその上縁にそって剛毛ブラシ54Eを取り付けられている。最も適当にはアパチュア54Dは導管ハウジング54の床面に正方形または長方形の開口を成し、この開口の中にゲートプレート56が枢転自在に取り付けられ、このゲートプレートは導管ハウジングの下側面と共面を成す平坦位置から上方に立ち上がった位置まで延在し、このゲートプレート56はその立ち上がった位置においてその上縁がプラスチックカバー54Bと接触しまたはほぼ接触して、導管52から受理されるタブレットをアパチュア54Aを通してそらせる。このようにして、ゲートプレート56は、導管ハウジング54の底面と共面を成すタブレット受理第1位置から、上方に立ち上がったタブレット廃棄第2位置まで枢転するように成される。」(第14ページ第10から23行まで) との記載がある。 (11)乙1の記載事項 乙1は,甲4出願における平成24年9月14日付け意見書であって,意見の内容が記載されている。 2.無効理由1(進歩性)について (1)特許発明1について ア.特許発明1と甲1発明との対比 特許発明1(上記第2.の【請求項1】)と甲1発明(上記第5.1.(1)ク.)とを対比すると,甲1発明の「回転盤1」が特許発明1の「回転盤」に相当することは明らかであり,以下同様に,「臼取付け部1a」が「臼取付け部」に相当し,「臼2」が「臼」に相当し,「回転軌跡B」が「回転軌跡」に相当し,「スクレーパ11」が「スクレーパ」に相当し,「成形品A」が「成型品」に相当し,「不良品排出溝13」が「不良品排出部」に相当し,「下杵6」が「下杵」に相当し,「排出導体7」が「排出導体」に相当し,「不良品排出溝13の内部に向けて空気を噴射する」ことが「不良品排出部の入口に向けて空気を噴射する」ことに相当し,「空気ノズル26」が「不良品排出用のノズル」に相当し,「検出信号」が「成型情報」に相当する。 また,甲1発明における「不良と判定された成形品Aが成形品取出し位置に到達したとき」は,不良と判定された成形品Aが空気を噴射されて,不良品排出溝13の入口を通過して内部に向けて吹き飛ばされるときであるから,特許発明1の「不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているとき」に相当するということができる。 そして,甲1発明の「前記成形品Aの圧縮成形時に得られた検出信号を基に前記成形品Aの良否判定をし,不良と判定された成形品Aが成形品取出し位置に到達したときに前記空気ノズル26から空気を噴射させる判定器30」と特許発明1の「前記成型品の圧縮成型時に得られた成型情報を基に前記成型品の良否判定をし、不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているときに前記ノズルから空気を噴射させるとともに、不良と判定された成型品が前記下杵に載っていることを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させる制御装置」とは,「前記成型品の圧縮成型時に得られた成型情報を基に前記成型品の良否判定をし、不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているときに前記ノズルから空気を噴射させる制御装置」という点で共通する。 以上から,両発明は,以下の点で一致及び相違する。 <一致点A> 両発明は, 「回転盤の臼取付け部に取付けられた臼が有する臼孔の回転軌跡と交差するスクレーパ,及び成型品のうちで前記回転盤外に排出される不良品を受入れる不良品排出部を有し,前記臼から下杵で押出された成型品を前記スクレーパにより回転盤外に排出する排出導体と, この排出導体の上流側でかつ前記回転軌跡の内側に設けられて前記不良品排出部の入口に向けて空気を噴射する不良品排出用のノズルと, 前記成型品の圧縮成型時に得られた成型情報を基に前記成型品の良否判定をし、不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているときに前記ノズルから空気を噴射させる制御装置と, を具備する粉末圧縮成型品取出し装置。」 である点。 <相違点1> 制御装置が,特許発明1では,「不良と判定された成型品が前記下杵に載っていることを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させる」という制御を行うものであるのに対して,甲1発明では,そのような制御を行うかどうか不明な点。 イ.相違点1の判断 (ア)甲2技術事項と特許発明1との対比 相違点1について検討するため,甲2技術事項(上記第5.1.(2)ケ.)を,特許発明1と対比すると,甲2技術事項の「物品」と特許発明1の「成型品」とは,「製品」という点で共通する。 また,甲2技術事項の「不良物品にエアを吹き付けて選別コンベア8の側方へ排除させるエアノズル9a,9b」と特許発明1の「この排出導体の上流側でかつ前記回転軌跡の内側に設けられて前記不良品排出部の入口に向けて空気を噴射する不良品排出用のノズル」とは,「不良製品を空気で排除させるノズル」という点で共通する。 また,甲2技術事項の「選別コンベア8からの物品の搬出を示す信号を出力する搬出センサ24」と特許発明1の「このノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部と前記スクレーパとの間を移動する前記下杵上に前記不良品が載っているか否かを前記スクレーパに前記下杵上の不良品が当たる前に検知する検知器」とは,「ノズルを通過した後の製品の存否を検知する検知器」という点で共通する。 また,甲2技術事項において「重量算出手段16の算出重量を基に物品を判定し,不良物品にエアノズル9a,9bからエアを吹き付けるとともに,不良物品が選別コンベア8から搬出されることを示す信号に基づいてアラーム音を発生する」ことと,特許発明1において「前記成型品の圧縮成型時に得られた成型情報を基に前記成型品の良否判定をし、不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているときに前記ノズルから空気を噴射させるとともに、不良と判定された成型品が前記下杵に載っていることを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させる」こととは,「製品に関する情報を基に製品を判定し,不良と判定された製品に前記ノズルから空気を噴射させるとともに,不良と判定された製品がノズルを通過した後に存在することを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させること」という点で共通する。 そうすると,甲2技術事項は, 「不良製品を空気で排除させるノズルと, ノズルを通過した後の製品の存否を検知する検知器とを有し, 製品に関する情報を基に製品を判定し,不良と判定された製品に前記ノズルから空気を噴射させるとともに,不良と判定された製品がノズルを通過した後に存在することを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させること」 と表現できる。 (イ)甲2技術事項を甲1発明に適用することの検討 まず,甲1発明と甲2技術事項が属する技術分野をみると,甲1発明は,「回転式粉末圧縮成形機の不良品排出装置」であるから,その技術分野は,「回転式粉末圧縮成形機」,すなわち粉末を圧縮して錠剤等を成形する成形機を前提として,その成形機で成形される不良品を排出する装置に関する技術分野(上記第5.1.(1)ア.)である。これに対して,甲2技術事項は,「重量物選別装置」であるから,その技術分野は,生産ライン等において,搬送中の物品を重量によって選別するための装置に関する技術分野(上記第5.1.(2)ア.)であって,甲1発明が属する技術分野と甲2技術事項が属する技術分野とは,異なることが明らかである。 次に,甲1発明と甲2技術事項が解決しようとする課題をみると,甲1発明の課題は,回転式粉末圧縮成形機の下杵に対する成形品の離型性が悪い場合に、高圧空気の吹き付けのみでは、不良成形品を下杵から分離する信頼性が悪いというものである(上記第5.1.(1)イ.)と理解できる。そして,甲1発明は,当該課題を解決するために,空気ノズルの手前側に近接して成形品接触部27を設けることで,下杵に押し出された成形品を成形品接触部27に接触させて,下杵の上面から強制的に剥離することで,空気ノズルから噴射される空気で確実に不良品を排出するというものである(上記第5.1.(1)エ.並びにカ.及びキ.)。 そうすると,甲1の記載に接した当業者であれば,甲1発明においては,空気ノズルから噴射される空気で確実に不良品が排出されることを理解するはずであり,空気ノズルから噴射される空気で不良品が排出されないことについては,到底,予測し得ないといわざるを得ない。 これに対して甲2技術事項が解決しようとする課題は,不良と判定した物品が完全に排除されず、選別コンベアから搬出されても、この選別ミスを知ることができなかったこと(上記第5.1.(2)ア.)であり,「不良物品が選別コンベア8から搬出されることを示す信号に基づいてアラーム音を発生する」(上記第5.1.(2)ケ.)ことにより,当該課題を解決している。 上記のとおり,甲1発明と甲2技術事項が属する技術分野は異なるし,甲1の記載に接した当業者であれば,甲1発明において,空気ノズルから噴射される空気で不良品が排出されないことについて,到底予測できないのであるから,不良品が完全に排除されないことを解決課題とする甲2技術事項を,甲1発明に適用しようなどと,試みるはずはない。 したがって,本願出願前に甲2技術事項が公知であるとしても,甲1発明に甲2技術事項を適用して,上記相違点1に係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たものということができない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は,甲1と甲2とはいずれも不良品の排出を課題としており,課題が共通する旨(上記第4.1.[請求人](1)ア.)を主張しているが,甲1発明の解決課題と,甲2技術事項の解決課題は,上記(イ)に説示するとおりであって,共通するとはいえない。したがって,請求人の当該主張は採用できない。 また,請求人は,甲8の記載から,「不良品が下杵上に必ずあるとはいえない」ことが技術常識である旨(上記第4.1.[請求人](1)イ.)を主張している。そもそも甲8は,本件特許に係る出願の出願日である平成22年5月12日(上記第1.)よりも後の平成24年1月12日(上記第5.1.(8))に頒布された刊行物であるから,甲8の記載のみに基づいて,「不良品が下杵上に必ずあるとはいえない」ことが,本件特許に係る出願の出願日前に技術常識であると認めることはできない。また,甲8に記載された装置は,甲1発明のように空気ノズルの手前側に近接して「成形品接触部27」を設けているわけではないから,仮に「不良品が下杵上に必ずあるとはいえない」ことが,本件特許に係る出願の出願日前に技術常識であるとしても,甲1発明において「不良品が下杵上に必ずあるとはいえない」とまではいうことができない。したがって,請求人の当該主張は採用できない。 さらに,甲8には,「特許文献1が開示する不良品排出装置は、不良品を正しく吹き飛ばすことができず、そのまま成形品排出経路に至ってしまう虞をなくすこと、すなわち不良品を正常な成形品と別にかつ確実に排出することを目的としていた」(上記第5.1.(8)ア.)という記載があるものの,上記のとおり,そもそも甲8は,本件特許に係る出願後に頒布された刊行物であるから,甲8に記載された課題が,本件特許に係る出願前に技術常識であると認めることはできないし,甲1発明において,甲8に記載された課題が内在するとまではいえない。 ウ.特許発明1についてのむすび 以上のとおりであるから,特許発明1が,甲1発明及び甲2技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)特許発明2について 特許発明2は,特許発明1を引用するものであって,特許発明1の発明特定事項を全て含み,さらに他の発明特定事項を限定しているものであるから,特許発明2において限定している発明特定事項について検討するまでもなく,特許発明2が,甲1発明及び甲2技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (3)特許発明3から8までについて 特許発明3から8までは,特許発明1を直接又は間接に引用するものであるから,特許発明3から8までにおいて限定している発明特定事項について検討するまでもなく,特許発明3,7及び8は,甲1発明,甲2技術事項及び甲3の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないし,特許発明4から6までは,甲1発明,甲2技術事項,甲3の記載事項及び周知技術・慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (4)無効理由1のむすび 特許発明1及び2が,甲1発明及び甲2技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないし,特許発明3,7及び8が,甲1発明,甲2技術事項及び甲3の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないし,特許発明4から6までが,甲1発明,甲2技術事項,甲3の記載事項及び周知技術・慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 3.無効理由2(拡大先願)について (1)特許発明1について ア.特許発明1と甲4明細書発明との対比 特許発明1と甲4明細書発明(上記第5.1.(4)サ.)とを対比すると,甲4明細書発明の「回転盤3」が特許発明1の「回転盤」に相当することは明らかであり,以下同様に,「臼4」が「臼」に相当し,「臼4の軌跡より前記回転盤3の中心側に延びる」ことが「臼が有する臼孔の回転軌跡と交差する」ことに相当し,「案内部材21」が「スクレーパ」及び「排出導体」に相当し,「成形品」が「成型品」に相当し,「指定成形品分離位置の半径方向外側に分離される」ことが「前記回転盤外に排出される」ことに相当し,「指定成形品」が「不良品」に相当し,「指定成形品回収位置40」が「不良品排出部」に相当し,「下杵6」が「下杵」に相当し,「成形品回収位置20に向かって移動させる」ことが「回転盤外に排出する」ことに相当し,「空気通路22の先端22a」が「不良品排出用のノズル」に相当し,「ロードセル18からの電気信号」が「成型情報」に相当し,「分離判定」が「良否判定」に相当する。 また,甲4明細書発明において「指定成形品分離位置に向けて空気を噴射する」ことは,その空気の噴射により指定成形品を指定成形品回収位置40に分離させるから,本件発明1において「前記不良品排出部の入口に向けて空気を噴射する」ことに相当する。 また,甲4明細書発明の「前記案内部材21に案内されて前記成形品回収位置20に向かって移動する成形品の動きを検出する通過センサ23」と特許発明1の「このノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部と前記スクレーパとの間を移動する前記下杵上に前記不良品が載っているか否かを前記スクレーパに前記下杵上の不良品が当たる前に検知する検知器」とは,「良品の移動位置に不良品が存在するか否かを検知する検知器」という点で共通する。 また,甲4明細書発明の「不良品と判定された指定成形品が指定成形品分離位置に達したときに前記空気通路22の先端22aから空気を噴射させて分離するとともに,不良品と判定された指定成形品が前記案内部材21に案内されて前記成形品回収位置20に向かって移動する動きを前記通過センサ23が検知することに基づいて前記回転盤3を停止させる制御装置27」と特許発明1の「不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているときに前記ノズルから空気を噴射させるとともに、不良と判定された成型品が前記下杵に載っていることを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させる制御装置」とは,「不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているときに前記ノズルから空気を噴射させるとともに,不良と判定された成型品が良品の移動位置に存在することを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させる制御装置」という点で共通する。 そして,甲4明細書発明の回転式粉体圧縮成形機は,指定成形品と,指定成形品以外の成形品とを分離して取り出しているから,「粉末圧縮成型品取出し装置」と表現することができる。 以上から,両発明は,以下の点で一致し,少なくとも形式的に相違する。 <一致点B> 両発明は, 「回転盤の臼取付け部に取付けられた臼が有する臼孔の回転軌跡と交差するスクレーパ,及び成型品のうちで前記回転盤外に排出される不良品を受入れる不良品排出部を有し,前記臼から下杵で押出された成型品を前記スクレーパにより回転盤外に排出する排出導体と, 前記回転軌跡の内側に設けられて前記不良品排出部の入口に向けて空気を噴射する不良品排出用のノズルと, 良品の移動位置に不良品が存在するか否かを検知する検知器と, 前記成型品の圧縮成型時に得られた成型情報を基に前記成型品の良否判定をし,不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているときに前記ノズルから空気を噴射させるとともに,不良と判定された成型品が良品の移動位置に存在することを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させる制御装置と, を具備することを特徴とする粉末圧縮成型品取出し装置」 である点。 <相違点2> 特許発明1の検知器は,「このノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部と前記スクレーパとの間を移動する前記下杵上に前記不良品が載っているか否かを前記スクレーパに前記下杵上の不良品が当たる前に検知する」ものであるのに対して,甲4明細書発明の検知器は,「前記案内部材21に案内されて前記成形品回収位置20に向かって移動する成形品の動きを検出する」ものである点。 <相違点3> ノズルが,特許発明1では「この排出導体の上流側」に設けられているのに対して,甲4明細書発明では「この案内部材21の先端部21b」に設けられている点。 イ.各相違点の判断 (ア)相違点2について 甲4には,相違点2に係る構成,すなわち「このノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部と前記スクレーパとの間を移動する前記下杵上に前記不良品が載っているか否かを前記スクレーパに前記下杵上の不良品が当たる前に検知する」ことについて,記載も示唆もない。 また,相違点2に係る構成は,自明な事項でもない。 請求人は,「甲4の図3では,通過センサ23は,指定成形品又は成形品が案内部材21に接触する前に指定成形品又は成形品の通過を検出している」旨(上記第4.2.[請求人](1)イ.)を主張しているが,甲4には,「通過センサ23は、案内部材21に案内されて成形品回収位置20に向かって移動する成形品の動きを検出するものであり」(上記第5.1.(4)カ.)と明確に記載されているし,図3を参照しても,通過センサ23が,指定成形品又は成形品が案内部材21に接触する前に指定成形品又は成形品の通過を検出しているかどうか,明らかではないから,請求人の主張は採用できない。 (イ)相違点3について 甲4明細書発明のノズルは「案内部材21の先端部21b」に設けられるものであり,「案内部材21」が特許発明1の「スクレーパ」及び「排出導体」に相当する以上,甲4発明のノズルを相違点3に係る構成のように「排出導体の上流側」に設けることにはならない。また,甲4明細書発明のノズルを「排出導体の上流側」に設けることについて,甲4には,記載も示唆もない。 また,相違点3に係る構成は,自明な事項でもない。 ウ.特許発明1についてのむすび 以上のとおり,特許発明1と甲4明細書発明とは,上記相違点2及び3において実質的に相違するから,特許発明1が,甲4出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された発明であるとすることはできない。 (2)特許発明2から8までについて 特許発明2から8までは,特許発明1を引用するものであって,特許発明1の発明特定事項を全て含み,さらに他の発明特定事項を限定しているものであるから,特許発明2から8までにおいて限定している発明特定事項について検討するまでもなく,特許発明2から8までが,甲4出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された発明であるとすることはできない。 (3)無効理由2のむすび 特許発明1から8までが,甲4出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された発明であるとすることはできないから,請求人の主張する無効理由2は成り立たない。 3.無効理由3(サポート要件)について 請求人は,本件特許の請求項1には,本件特許発明の課題を解決する手段が記載されていない旨を主張しているので検討する。 (1)本件明細書の記載 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 空気圧式の不良品排出装置は、回転盤に対して出し入れされる方向に移動される可動スクレーパで不良品を排出する構成に比較して、動作上の信頼性が高いので、回転盤が高速で回転される場合にも適している。 【0006】 しかし、下杵によって臼上に押上げられた不良品を、空気ノズルから噴射された空気の力で、下杵の上から確実に吹き飛ばすことは現状では保証できない。 【0007】 つまり、空気ノズルに高圧空気を送るエア機器及びエア経路などの不具合により不良品に吹き付けられる空気の圧力が消失し或いは低下することが考えられる他、空気の噴射が正常に行われる状態であっても、下杵に対する成型品の付着強度が過大に高まった場合、相対的に不良品に吹き付けられる空気の圧力が不足することがある。 【0008】 前記付着強度は、下杵の先端が荒れた場合、成型品に対する刻印付与のための凹凸が下杵の先端面に設けられている場合、成型される粉末の付着性が高い場合等に高められる。特に、付着性が高い原料を用いて成型をする場合、その成型品が不良品となる状態では異常な成型圧力が作用するのが普通であるので、なお更、下杵に対する成型品の付着強度が向上されることがある。したがって、このような場合には、空気ノズルから噴射される空気の圧力を高めても、不良品を下杵の上から完全に剥離して回転盤外に吹き飛ばし難くなる。 【0009】 以上のように噴射空気による不良品の取出し(排出)は完全な信頼性がない。そのため特許文献1,2の製品取出し装置で、以上のような不良品の排出不良が起こった場合、その不良品が、良品と同じくスクレーパによって回転盤外に取出され、良品に混じることは避けられない。 【0010】 こうしたことに加えて、特許文献1,2の製品取出し装置では、不良品が良品に混じったか否か知ることができないので、不良品が良品に混じることに対して何らの対策を講じることができない、という課題がある。特に、錠剤を圧縮成型する回転式打錠装置では、以上のような良品への不良品の混入は問題視され易く、こうした混入が絶対にないようにすることが要請されている。しかし、この要請を満足することは特許文献1,2の技術では不可能である。 【0011】 したがって、本発明の目的は、回転盤から取出される良品に不良品が混入したか否かを検知できるとともに、不良品の混入に応じた不良品対策を実行可能な粉末圧縮成型品取出し装置及びこの装置を備えた回転式粉末圧縮成型装置を提供することにある。」 「【0058】 前記不良品排出判断部での以上の判断に従い、その直後に、制御装置15は第1次不良品対策を実行する。この第1次不良品対策では、制御装置15が弁駆動部材29を動作させて、切換え弁21dを第2の位置に一定時間の間配置させる。そのため、良品Tbとともに不良品Taが、切換え弁21dによって第2の排出シュート21cの第2の排出口23に導かれて、補助シュート30の下側に配置された図示しない不良品受け容器に排出される。したがって、第1の取出し口21ceを通った良品Tbを受ける前記良品受け容器に不良品Taが混じることを防止できる。 【0059】 これとともに、制御装置15は第1次不良品対策として報知器41を動作させるので、不良品の排出が報知される。なお、前記一定時間の経過後には、制御装置15は切換え弁21dを第1の位置に戻すので、良品Tbの取出しが再開される。 【0060】 更に、下杵10の上に不良品Taが載っていることが規定時間内で連続して又は断続して検知器35により所定数検知された場合、言い換えれば、以上説明した第1次不良品対策が規定時間内に所定回数行われた場合、制御装置15は第2次不良品対策を実行する。第2次不良品対策では、制御装置15が回転盤駆動装置5の運転を停止させて、回転盤7の回転を停止させるとともに、報知器41を前記第1次不良品対策の場合とは異なる報知態様、例えば異なる音や異なる報知間隔などで動作させる。こうした第2次不良品対策により、不良品Taが継続して製造されることを防止できるとともに、不良品Taと共に無駄に排出される良品Tbの総量を減らすことができる。」 「【0063】 本発明は前記一実施形態には制約されない。例えば、空気による不良品Taの排出不良が検知される度に、制御装置15は、不良品対策として回転盤駆動装置5を制御して回転盤7の回転を停止させるとともに、回転盤7が停止されるまでの間、切換え弁21dを第1の位置から移動させて第2の位置に配置させるようにしてもよい。」 (2)本件特許発明の課題 本件明細書の段落【0005】から【0011】までの記載を総合すると,本件特許発明の課題は,おおむね次のように理解できる。 従来,空気圧式の不良品排出装置が存在したが,エア機器及びエア経路の不具合や,下杵に対する付着強度が高まることなどにより,下杵によって押し上げられた不良品を確実に吹き飛ばすという保証がなく,不良品の排出不良が起こった場合,不良品が良品に混入するという課題が生じ,当該混入が絶対に生じないようにすることが要請されていた。 (3)特許発明1について 本件特許の請求項1の記載は,上記第2.の【請求項1】に記載されたとおりであり,「このノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部と前記スクレーパとの間を移動する前記下杵上に前記不良品が載っているか否かを前記スクレーパに前記下杵上の不良品が当たる前に検知する検知器」や「不良と判定された成型品が前記下杵に載っていることを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させる制御装置」が記載されている。 そして,「このノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部と前記スクレーパとの間を移動する前記下杵上に前記不良品が載っているか否かを前記スクレーパに前記下杵上の不良品が当たる前に検知する検知器」により,上記の課題における「不良品の排出不良が起こった場合」を認識することができ,「不良と判定された成型品が前記下杵に載っていることを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させる制御装置」により,上記の課題における「混入が絶対に生じないようにすること」を実現できることは明らかであるから,本件特許の請求項1には,本件特許発明の課題を解決する手段が記載されているというほかはない。 (4)請求人の主張について 請求人は,本件特許の請求項1には,本件明細書段落【0058】から【0060】までに記載された不良品対策に関する内容が反映されていない旨(上記第4.3.[請求人]イ.)を主張しているので検討する。 本件明細書の段落【0058】から【0060】までには,「第1次不良品対策」すなわち製品の排出経路に切換え弁を設けて,良品と不良品との排出経路を切り換えるという対策を所定回数行った場合に,「第2次不良品対策」すなわち装置の運転を停止するという対策を行うことが示されている。また,段落【0063】には「排出不良が検知される度に、・・・・・回転盤7の回転を停止させる」こと,すなわち「第2次不良品対策」を優先して実行することが記載されている。そうすると,本件明細書には,「不良品対策」として,製品の排出経路を切り換えることや,装置の運転を停止することという複数種類の対策が記載されているから,本件特許の請求項1において,これらの複数種類の「不良品対策」を包含するように,「不良品対策を実行させる制御装置」と記載されているのであって,請求人が主張するように,本件特許の請求項1において,特定の不良品対策の内容を限定して記載しなければならないという理由はない。 したがって,請求人の上記の主張は採用できない。 (5)無効理由3のむすび 以上のとおり,本件特許の請求項1には,本件特許発明の課題を解決する手段が記載されているから,請求人の主張する無効理由3は成り立たない。 4.無効理由4(明確性)について 無効理由4は,本件特許の請求項1から3までの記載が明確でないというものであるところ,請求人の主張する具体的な理由ごとに,以下検討する。 (1)本件特許の請求項1の「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」という記載について 請求人は,本件特許の請求項1の「ノズルから噴射された空気」は目に見えるものではなく,噴射された空気は噴射口から離れるにつれて広がるため,臼孔の回転軌跡との交差部がどこになるか不明確である旨(上記第4.4.[請求人](1)ア.)を主張しているので,以下に検討する。 ア.本件明細書及び本件図面の記載 「【0041】 この検知器35は、臼孔9aの回転軌跡とノズル31から噴射された空気との交差部(図1に符号Cで代表的に示す。)とスクレーパ28との間、言い換えれば、前記交差部Cに対して回転盤7の回転方向下流側でかつスクレーパ28に対して回転盤7の回転方向上流側に配設されている。具体的には、前記隔壁26の第2通路Sbに臨んだ側面に検知器35が取付けられている。」 図1 イ.本件特許の請求項1の「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」とは,ノズルから噴射された空気の噴射方向と,臼孔の回転軌跡とが交差する部分を意味すると,文言上明確に理解できる。 また,念のため,本件明細書及び本件図面を参照すると,段落【0041】に「臼孔9aの回転軌跡とノズル31から噴射された空気との交差部(図1に符号Cで代表的に示す。)」という明確な記載があり,図1には,符号「C」で示される地点が記載され,ノズル31から噴射された空気の噴射方向を示す矢印も記載されているから,これらの記載に接した当業者であれば,特許発明1の「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」が,図1の符号Cで示された地点であることを明確に認識できるし,上記の理解とも何ら矛盾するところはない。 請求人は,「噴射された空気」は目に見えるものではないから明確でない旨,主張しているが,「噴射された空気」が直接には見えないとしても,物理的には存在し,可視化手段や,視覚以外の手段でも認識できるから,「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」という記載が明確でないという理由にはならない。 また,請求人は,噴射された空気は噴射口から離れるにつれて広がるから明確でない旨を主張しているが,噴射された空気が広がるとしても,噴射方向は一定であるし,「交差部」が非常に限定された領域でなくてはならない理由もないから,「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」という記載が明確でないとまでいうことはできない。 以上から,本件特許の請求項1の「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」という記載は明確である。 (2)本件特許の請求項1の「不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているとき」という記載について 請求人は,「向かい合う」とは,「互いに正面を向いて対する。向きあう。」ことであるが,「不良と判定された成型品」は,ノズルから空気が噴射される前において,回転進行方向(接線方向)を向いており,「不良品排出部の入口」には向いていないから,「不良と判定された成型品」は,「不良品排出部の入口」と向かい合っていない旨(上記第4.4.[請求人](1)イ.)を主張しているので,以下に検討する。 本件特許の請求項1の「この排出導体の上流側でかつ前記回転軌跡の内側に設けられて前記不良品排出部の入口に向けて空気を噴射する不良品排出用のノズル」という記載と,「不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているときに前記ノズルから空気を噴射させる」という記載を参照すれば,ノズルから噴射された空気により,「不良と判定された成型品」が「不良品排出部の入口」へと排出されることを,当業者であれば,当然に理解できる。 請求人の主張するとおり,「向かい合う」とは,「向きあう」ことを意味するところ,ノズルから噴射された空気により,「不良と判定された成型品」が「不良品排出部の入口」へと排出されるのであるから,ノズルと「不良品排出部の入口」とを結ぶ直線上に「不良と判定された成型品」が存在することになり,ノズルから噴射された空気を受けて移動する「不良と判定された成型品」にとって,「不良品排出部の入口」は,移動方向の前方に位置するのであるから,両者は「向きあっている」ということができ,本件特許の請求項1の当該記載は明確である。 請求人の上記の主張は,ノズルから空気が噴射される前における「不良と判定された成型品」の「回転進行方向(接線方向)」をいうものであるところ,本件特許の請求項1では,ノズルから空気が噴射される前における「不良と判定された成型品」の「回転進行方向(接線方向)」を特定しているわけではないから,請求人の主張は採用できない。 (3)本件特許の請求項2の「前記交差部」という記載について 請求人は,本件特許の請求項1の「ノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部」という記載が不明確であることを前提として,本件特許の請求項2の「前記交差部」という記載も不明確である旨(上記第4.4.[請求人](2))を主張しているが,上記(1)イ.に説示するように,本件特許の請求項1の当該記載は明確であるから,本件特許の請求項2の「前記交差部」という記載も明確である。 請求人の主張は,その前提において誤りがあるから,採用できない。 (4)本件特許の請求項3の「通常」という記載について 請求人は,本件特許の請求項3に記載された「通常」とは,どの状態を通常というのか不明確である旨(上記第4.4.[請求人](3))を主張しているので,以下に検討する。 一般に,「通常」とは,「普通であること。なみ。通例。」(広辞苑 第二版補訂版,昭和51年12月1日,株式会社岩波書店発行)を意味するところ,特許発明3の粉末圧縮成型品取出し装置が前提とする回転式粉末圧縮成型装置においては,良品を成型する場合と不良品を成型する場合とでは,前者の場合が多く後者の場合が少ないことが自明であるから,当業者であれば,良品を成型する場合が「普通であること」を当然に理解するはずである。 そして,本件特許の請求項3は,切換え弁について,「通常」すなわち良品を成型する場合に第1の位置に配置させて,良品としての成型品を第1の取出し口から排出させ,不良品対策によって切換え弁を第2の位置に配置させて,不良品としての成型品を第2の取出し口から排出させることを特定しており,その記載は明確である。 (5)無効理由4のむすび 以上のとおり,本件特許の請求項1から3までの記載は,いずれも明確であるから,請求人の主張する無効理由4は成り立たない。 第6.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、特許発明1から8までの特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2015-03-16 |
出願番号 | 特願2010-110455(P2010-110455) |
審決分類 |
P
1
113・
161-
Y
(B30B)
P 1 113・ 121- Y (B30B) P 1 113・ 537- Y (B30B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福島 和幸 |
特許庁審判長 |
長屋 陽二郎 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 久保 克彦 |
登録日 | 2014-06-06 |
登録番号 | 特許第5555538号(P5555538) |
発明の名称 | 粉末圧縮成型品取出し装置及びこの装置を備えた回転式粉末圧縮成型装置 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 特許業務法人スズエ国際特許事務所 |
代理人 | 山本 雄介 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 本田 史樹 |
代理人 | 赤堀 孝 |