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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 F03G |
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管理番号 | 1300281 |
審判番号 | 不服2014-10963 |
総通号数 | 186 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-26 |
確定日 | 2015-04-27 |
事件の表示 | 特願2013-110334「重力の落下力で発電機を回す構造を有する装置。」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月30日出願公開、特開2014-206151〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年4月15日の出願であって、平成25年8月29日付けで拒絶理由が通知され、同年9月17日(書類に記載された提出日:同年9月14日)に意見書が提出され、同年12月11日付けで再度拒絶理由が通知され、平成26年1月28日(書類に記載された提出日:同年1月27日)に意見書が提出されたが、同年4月17日付けで拒絶査定がされ、同年5月26日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。 第2 請求項1に係る発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「請求項1に係る発明」という。)は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認められる。 「【請求項1】 発明の目的は重力の落下力を利用し回転エネルギーに転換させ電気を得るための発明である。 大きさや重さに関しては限定せず、其の理由として大きく重い大車輪の方がより安定した回転力を得られるためである、比の構造の主に使用しているものに大車輪(両輪)小車(両輪)大車輪軸に備えたベアリング両輪内側、其の下にジャッキ(油圧式)1、発電機1器が組み合わされた構造と成っている。 大車輪の重さは(両輪、車軸含む)600キロ(目安数字)とする、直経2メートル(目安数字)外輪の幅150ミリとする、両輪を固定している車軸にベアリングを備えること、其の位置は大両車輪の内側とすること、比のベアリングが接触している位置は全ての構造を支えている骨組の垂直面に接触している、比のベアリングの働く役目は骨組の垂直面と接触しているのでベアリングを備えた大車輪及び車軸が垂直に落下する誘導役と成っている。 大車輪の外輪は滑り止め加工した金属製とすること。両ベアリングの直下に油圧ジャッキを備えること、比のジャッキとベアリングは常時上下に離された位置に設置され其の間隔は45ミリであること、大車輪の重さを支えている小車(両輪)の大きさ400ミリ幅200ミリ、外輪はゴム製でゴムの厚さは50ミリとする、大車輪の重さが比のゴム製の小車に乗り回転し続けるとすり減ってくる、45ミリ迄すり減ると大車輪軸に備えたベアリングも下落しジャッキの上に乗ることと成り、大車輪の回転か停止する、比の時点で小車のゴム輪交換とするが其の時にベアリングを上昇させるため油圧ジャッキを備えた。 小車のゴム輪交換後ジャッキをゆるめると大車輪は小車に加重し回転する。 小車のゴム部は総ゴムでも空気入りのタイヤでも可とするが300キロ以上の重量に耐えるものであること。 ブイベルト用プーリーを大車輪軸に取り付けブイベルトは2本以上とすること、大車輪と小車の接触点は斜度50度とすること、比の50度の角度で小車との接触点では40度弱の急坂を下る車両を再現させ大車輪及ひ車軸に回転力を与え発電機を回し電気を得る組み合せ構造である。 大車輪と小車との接触点にはもう一方の働きがある、比の接触点を境に垂直に上に線を引くと大車輪の重さ割合が左と右に分けることが出来て左側が圧倒的に重く成っている、比の場合シーソー(梃子)の原理が働いて軽い右側が跳ね上がり重い左側が下落する、これは水車の回るのと類似条件と成る。 大車輪が回転する要因に大車輪軸に備えたベアリングと構造支え骨格の垂直面と横に接触している、大車輪は角度50度で小車に全重量を乗せているため自然的に大車輪は左側に落下(倒れる)比れを止めると同時にベアリングの横面接触が小車を右側に弾き飛ばす力が発生するため比の効果で大車輪は左回り小車は右回りと成る。 小車のゴム部は両面を固定すること、発電機のブイベルトはチェーンとしても可とする。油圧ジャッキの外に手動ジャッキでも可とする、但し600キロ以上の重さを上昇させるに耐えること。」 第3 原査定の拒絶理由等 1 原査定の拒絶理由 原査定の拒絶理由の概要は、次のとおりである。 「この出願については、平成25年12月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 出願人は上記意見書にて、「明細書には大車輪の下方移動で回転力を得る構成ではありません。水車も同様に中心点の移動させなくとも回転している」と主張しているが、水車は片方に水を注入してその重さにより回転力を得るものであるのに対し、本願発明の大車輪は片方の重さが変化するものではないので、水車と同様に回転力を得ることはできないと考えられるので、上記出願人の主張は採用できない。そして、先の拒絶理由において説示したとおり、大車輪(1)は、車軸(4)に備えられたベアリング(3)の骨組みの垂直面への接触及び、小車(ゴム製車輪(9))との接触により、設置台(5)に対して上下左右に移動しない構成となっているので、大車輪(1)は設置台(5)に対して落下することはなく(落下力が生じない)、その結果、大車輪は回転することはできず、発電機を回転させることもできないと考えられる。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないので、特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができない。」 2 平成25年12月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由 平成25年12月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、次のとおりである。 「この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 発明の詳細な説明の段落【0007】、【0010】-【0014】には、大車輪軸中心点の垂直下に当る大車輪の最下部が着地しようとする力が継続的に働き落下現象が発生するので、大車輪の落下力を回転力に転換させ発電機を回転させて電気を得るものである、旨記載されているが、大車輪(1)は、車軸(4)に備えられたベアリング(3)の骨組みの垂直面への接触及び、小車(ゴム製車輪(9))との接触により、設置台(5)に対して上下左右に移動しない構成となっているので、大車輪(1)は設置台(5)に対して落下することはなく(落下力が生じない)、その結果、大車輪は回転することはできず、発電機を回転させることもできないと考えられる。これは、大車輪が重力により回転するためには、大車輪の重心(中心点)が、重力により下方に移動することが必要であるからである。 出願人は、意見書等において、「小車か支点と成って梃子の原理を発生させ、左側が極度に重く右側が軽く成っている、梃子(シーソー)は重い方が下落し軽い方が跳ね上がるとした当り前の現象を取り入れている、又、大車輪が急坂を下るさまも再現させている。」と主張しているが、大車輪が急坂を下る際に回転するのは、大車輪の重心(中心点)が重力により下方に移動することで、大車輪が接地面との抵抗により回転運動するものであり、本願発明のように、大車輪の重心(中心点)が移動しない形態では、大車輪は回転運動しないと考えられる。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」 第4 審判請求書の概要 審判請求書の概要は、次のとおりである。 「拒絶査定、発送番号233037、比の内容文によると平成25年12月11日、発送番号817029の拒絶文が拒絶査定理由と成っているがこの拒絶は無効であり速やかに特許とすべきである。 1.本願に対する審査は正常な審査ではありません、〔0012〕に、ベアリングの横面接触が小車(9)を右側に弾き飛すような力が発生して・・・・・この部分が審査から外れて居り最も重要な部分であります。 審査に於いて出願(明細書)の見落しは重大なミスであります。 2.設置台(5)に対して上下左右に移動しない・・・・・とありますがどうして設置台(5)に対して移動と考えたのか不明である、大車輪及び車輪軸も一切設置台に接触すら無く回転力が発生している部分は外輪である、0004に参考にして頂くために水車を記載しています、 3.大車輪(1)は設置台に(5)に対して落下することはなく、とあります 0013、に(9)のゴム輪がすり減って(45ミリ減)其の状態で初めてベアリングかジャッキの上に乗るので大車輪は台に落下しません、車輪軸に備えたベアリングがジャッキの上に乗り上がる・・・・と記載、比の部分も見落しと成って居り明細書に記載されていない形態を付け足している。 4.大車輪の重心(中心点)が、重力により下方に移動することが必要・・・とあります、このために水車を参考に見てくれるように記載しています、水車全体は下方に移動することなく回転している。 5.大車輪が急坂を下るさまを再現04に記載しているが車輪(外輪)が回転すると(9)も其れと連動して回る、つまり次々と同し条件が継続して発生するとことを表現している。 急坂を下るとは一種の落下である、本発明は1と9の接触点から左側に全く1の重さを支える備えが無いため左側に強力な落下力が発生し特に1の軸(4)の中心点から左側に落下力が強いので比れを利用している。 6.1と9が回転する要因3件有る、0010、0011、0012、に記載しているが要約すると、1は直経2メートル、重さ300キロ(いずれも目安)比の重さ全てを支えているのは(9)である。 1と9の接触点は4から斜下50度の位置で接触している。 接触点は1の4垂直下点から右側寄りで離れているため1を9に乗せると左側に転り落ちる。比れを止めるのが4に備えたベアリング(3)である、比のベアリングは設置台(5)の垂直面に接触させることで転り落ちるのを止めると合せて梃子の原理を発生させた。 0007に1が垂直落下に誘導する役目と記載しているが、1が落下する、した、とは書いていない、拒絶書、発送番号817029に1の重心(中心点)が、重力により下方に移動することが必要・・・・・との内容である、前記(1)に記載した・・・9を右側に弾き飛す・・・・この部分の見落しによる誤認であります。 1、9、の組合せが最も重要点である、・・・・・弾き飛ばす、比の表現は1の重さを利用して9、を回し続けることである、例として人に重い荷物を背負わせ(発明では4の中心点の左側約150キロ)、滑い安い壁に寄りかかり(発明ではベアリングで滑り安い)、履物はローラースケート、(発明では9で回り安い)、足の角度は50度と壁から離れた状態とする、この状態で立ちつくすことは不可で有る。 本発明は自然法則に逆らわず、自然法則を其のまま利用したものである。 要因1、300キロの1を9で受け止めていること。 要因2、(1)だけでは当然左側に転落する、これを止めながら3、で転落を止めながら結果的には梃子の原理を発生させたこと。 要因3、(1)と(2)の組合せによって3が9を弾く(回す)力を発生させていること。」 第5 当審の判断 そこで、原査定の拒絶理由が解消しているかどうかについて、検討する。 1 請求項1に「発明の目的は重力の落下力を利用し回転エネルギーに転換させ電気を得るための発明である。」及び「ブイベルト用プーリーを大車輪軸に取り付けブイベルトは2本以上とすること、大車輪と小車の接触点は斜度50度とすること、比の50度の角度で小車との接触点では40度弱の急坂を下る車両を再現させ大車輪及ひ車軸に回転力を与え発電機を回し電気を得る組み合せ構造である。」と記載されており、本願明細書の段落【0004】に「次に自動車や自転車が斜度40度の急坂を下るさまを再現組み合せている。 其の再現とは、通常車輪軸の中心点の垂直下が着地しているものである、急坂と車輪の着地点を見ると車軸中心点の垂直下より上部が着地しているため車軸垂直下と地表とは離れ、空白が出来るため一種の落下が起こる。 比の落下現象こそが急坂を下るさまを再現し、あえて車輪の継続回転を発生させ其の回転力で発電機を回す仕組みである。」と記載されていることから、請求項1に係る発明は、「重力の落下力を利用し回転エネルギーに転換させ電気を得るための」発明であって、「大車輪と小車の接触点は斜度50度とすること、比の50度の角度で小車との接触点では40度弱の急坂を下る車両を再現させ大車輪及ひ車軸に回転力を与え発電機を回し電気を得る組み合せ構造である」とする発明であり、「一種の落下が起こる」という現象を利用するとした発明であるといえる。 他方、本願明細書の段落【0010】ないし【0014】に「【0010】 図1に基ずいて説明する。 比の発明は重い大車輪の落下力を車輪及び車軸を回転力に転換させ発電機を回転させて電気を得るものである。 重要な要点は大車輪と小車の接触部で大車輪軸中心点と小車軸(接触部含む)との接触角度は50度と成っている、比の50度を直角90度で線を引くと大車輪は40度の急坂に置かれているのと同じ条件である、大車輪の重さを支えているのは小車だけで斜下50度と40度の交わった位置が大車輪の接触点であり大車輪の重さの中心点である大車輪軸直下は空白である、従って大車輪軸中心点の垂直下に当る大車輪の最下部が着地しようとする力が継続的に働き落下現象が発生する、比の場合の落下現象とは大車輪が急坂を下るさまを構造で再現させたものである。 【0011】 大車輪が回転する要因は外に小車に対する大車輪の持つ重力である。 ここでは梃子(シーソーと同じ)の原理が働いている、3点支である梃子は支点を中心に左右重い方が下落し軽い方が跳ね上る、比れと同等の現象を構造を通して再現させた。 大車輪と小車の接触点から垂直に上に線を引く、左と右に分けることが出来る、図1で見ても圧倒的に左側の重さが勝っている、比れは水車と類似した条件と成って大車輪が回り続ける要因でも有る。 【0012】 大車輪が回転する要因に大車輪軸に備えたベアリングが有る。 比のベアリングは構造を支えている骨格の中心部にある垂直面と接触している、重い大車輪を支えている小車だけでは大車輪は左側に落下して回転力が得られないため其の落下を止めると同時にベアリングの横面接触が小車を右側に弾き飛ばすような力が発生している、比の効果で大車輪は左回り、小車は右回りと成る。 【0013】 両大輪の内側に備えている前記のベアリング設置真下に油圧ジャッキを備えた、ベアリングとジャッキは通常接触して居らず上下間45ミリの間隔を有している、比れは小車のゴム輪が50ミリとしたためゴムがすり減って45ミリ迄すり減った時点でベアリングがジャッキの上に乗り上がり大車輪の回転も止まり小車のゴム部交換となる、比の時にジャッキで大車輪を上昇させゴム部交換後ジャッキとベアリング間のすき間を45ミリに調整すると大車輪と小車が接触し再び回転する。 【0014】 発電機との接続は大車輪軸に備えりブイベルト用プーリーと接続し大車輪の回転力を得て発電させる、ブイベルトは2本でも3本用でも可とする、尚、ブイベルトの代りにチエーンでも可とする、前記のベアリングが45ミリ下落するが45ミリ程度の下落では間題は発生しない、仮に大車輪軸と発電機のプーリー中心点間が400有ったとすればベルトの引き合う幅はわすかである。」と記載され、審判請求書に「3.大車輪(1)は設置台に(5)に対して落下することはなく、とあります 0013、に(9)のゴム輪がすり減って(45ミリ減)其の状態で初めてベアリングかジャッキの上に乗るので大車輪は台に落下しません、車輪軸に備えたベアリングがジャッキの上に乗り上がる・・・・と記載、比の部分も見落しと成って居り明細書に記載されていない形態を付け足している。」と記載されているように、本願明細書において説明された装置における「大車輪」は、「ベアリング」によってその落下を止められているため、「一種の落下が起こる」ことはないし、「小車のゴム輪」のゴムがすり減ることによって、「ベアリング」が「構造を支えている骨格の中心部にある垂直面」に沿って徐々にずれ落ちるのに合わせて、「大車輪」が徐々に下方に落ちるという現象が起きたとしても(なお、そもそも、「大車輪」は回転しないので、「小車のゴム輪」のゴムがすり減ることはなく、このような現象は起きない。)、「40度弱の急坂を下る車両」のような落下をするものではない。 したがって、本願明細書において説明された装置では、「一種の落下が起こる」ことはなく、そのため、「大車輪及ひ車軸に回転力を与え」ることはできず、「発電機を回し電気を得る」ことはできない。 よって、発明の詳細な説明に、当業者が請求項1に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 2 また、本願明細書において説明された装置には、重力以外には何ら力が作用しておらず、重力は、「大車輪」の各部分に等しく作用し、「大車輪」の回転軸の左右に作用する力は釣り合うため、「大車輪」を回転させる力とはならないので、そもそも、「大車輪」が回転することはない(仮に、「大車輪」が回転するとすれば、本願明細書において説明された装置は、「永久機関」であり、自然法則に反するものである。)。 したがって、本願明細書において説明された装置では、「大車輪及ひ車軸に回転力を与え」ることはできず、「発電機を回し電気を得る」ことはできない。 よって、発明の詳細な説明に、当業者が請求項1に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 3 請求人は、審判請求書において、「1.本願に対する審査は正常な審査ではありません、〔0012〕に、ベアリングの横面接触が小車(9)を右側に弾き飛すような力が発生して・・・・・この部分が審査から外れて居り最も重要な部分であります。 審査に於いて出願(明細書)の見落しは重大なミスであります。」及び「6.1と9が回転する要因3件有る、0010、0011、0012、に記載しているが要約すると、1は直経2メートル、重さ300キロ(いずれも目安)比の重さ全てを支えているのは(9)である。 1と9の接触点は4から斜下50度の位置で接触している。 接触点は1の4垂直下点から右側寄りで離れているため1を9に乗せると左側に転り落ちる。比れを止めるのが4に備えたベアリング(3)である、比のベアリングは設置台(5)の垂直面に接触させることで転り落ちるのを止めると合せて梃子の原理を発生させた。 0007に1が垂直落下に誘導する役目と記載しているが、1が落下する、した、とは書いていない、拒絶書、発送番号817029に1の重心(中心点)が、重力により下方に移動することが必要・・・・・との内容である、前記(1)に記載した・・・9を右側に弾き飛す・・・・この部分の見落しによる誤認であります。」と主張する。 そこで、上記主張について検討するに、本願明細書の段落【0012】に「大車輪が回転する要因に大車輪軸に備えたベアリングが有る。 比のベアリングは構造を支えている骨格の中心部にある垂直面と接触している、重い大車輪を支えている小車だけでは大車輪は左側に落下して回転力が得られないため其の落下を止めると同時にベアリングの横面接触が小車を右側に弾き飛ばすような力が発生している、比の効果で大車輪は左回り、小車は右回りと成る。」と記載されているが、「ベアリングの横面接触が小車を右側に弾き飛ばすような力」が「大車輪」から「小車」に向かって発生しているとしても、作用反作用の法則により、同じ大きさの力が反対向き、即ち「小車」から「大車輪」に向かって、「大車輪」を左斜め上側に押す力が発生し、且つこの力の鉛直方向成分は「大車輪」に作用する重力と釣り合うためため、「大車輪は左回り、小車は右回りと成る」ことはなく、「大車輪」に「一種の落下が起こる」こともない。 よって、請求人の上記主張では、請求項1に係る発明が実施できることを説明できない。 4 請求人は、審判請求書において、「2.設置台(5)に対して上下左右に移動しない・・・・・とありますがどうして設置台(5)に対して移動と考えたのか不明である、大車輪及び車輪軸も一切設置台に接触すら無く回転力が発生している部分は外輪である、0004に参考にして頂くために水車を記載しています、」及び「4.大車輪の重心(中心点)が、重力により下方に移動することが必要・・・とあります、このために水車を参考に見てくれるように記載しています、水車全体は下方に移動することなく回転している。」と主張する。 そこで、上記主張について検討するに、水車が回転する理由は、水車の外周面に設けられた羽根状部材により、羽根状部材に衝突する水流という物から、水流が持つエネルギーの一部を水車を回転させる力として取り出すことによるものである。 他方、請求項1に係る発明は、上記第5 1のとおり、「重力の落下力を利用し回転エネルギーに転換させ電気を得るための」発明であって、「大車輪と小車の接触点は斜度50度とすること、比の50度の角度で小車との接触点では40度弱の急坂を下る車両を再現させ大車輪及ひ車軸に回転力を与え発電機を回し電気を得る組み合せ構造である」とする発明であり、「一種の落下が起こる」という現象を利用するとした発明であるので、水車における水流のような、「大車輪」に衝突する物を利用するものではない。 したがって、請求項1に係る発明と水車とは、原理が全く異なるものであり、水車が回転するからといって、請求項1に係る発明における「大車輪」が回転するとはいえない。 よって、請求人の上記主張では、請求項1に係る発明が実施できることを説明できない。 5 請求人は、審判請求書において、「例として人に重い荷物を背負わせ(発明では4の中心点の左側約150キロ)、滑り安い壁に寄りかかり(発明ではベアリングで滑り安い)、履物はローラースケート、(発明では9で回り安い)、足の角度は50度と壁から離れた状態とする、この状態で立ちつくすことは不可で有る。」と主張するが、「この状態で立ちつくすことは不可で有る」とすれば、請求人が審判請求書において「3.大車輪(1)は設置台(5)に対して落下することなく、とあります」と主張する請求項1に係る発明とは異なるし、「この状態で立ちつくすことは不可で有る」とすれば、重い荷物を背負った人は「滑り安い壁」を滑って地面に横になってしまい、横になったままで人も重い荷物も回転することはないので、請求人の主張する例は、請求項1に係る発明を説明する例となっていない。 そうすると、原査定の拒絶理由は解消していない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものである。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-02-17 |
結審通知日 | 2015-02-24 |
審決日 | 2015-03-09 |
出願番号 | 特願2013-110334(P2013-110334) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(F03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川口 真一 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 槙原 進 |
発明の名称 | 重力の落下力で発電機を回す構造を有する装置。 |