• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B05C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05C
管理番号 1300310
審判番号 不服2014-10214  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-02 
確定日 2015-04-30 
事件の表示 特願2010- 12208「液体定量吐出装置の液体吐出構造」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月 4日出願公開、特開2011-147900〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年1月22日を出願日とする出願であって、平成25年10月28日付けで拒絶理由が通知され、平成25年12月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年2月27日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、平成26年6月2日に拒絶査定不服の審判請求がされると同時に手続補正書が提出され、さらに平成26年9月5日に上申書が提出されたものである。


第2 平成26年6月2日付け手続補正についての補正の却下の決定
<補正の却下の決定の結論>
平成26年6月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

<理由>
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成25年12月24日付けで提出された手続補正書で補正された)下記(1)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載へ補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
液体貯留室の液体を吐出ヘッドの吐出口から高圧で吐出してワークに前記液体を塗布する液体定量吐出装置の液体吐出構造において、
前記吐出口から前記液体を高圧で吐出させる装置としてギヤポンプを使用し、当該ギヤポンプを前記吐出ヘッドに一体に組み込み、減圧されたエアが前記吐出ヘッドに供給されており、
前記吐出ヘッドは、前記吐出ヘッドのエア供給口から前記エアを噴出しながら前記液体を高圧吐出するスプレー塗布を少なくとも実行可能である
ことを特徴とする液体定量吐出装置の液体吐出構造。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
液体貯留室の液体を吐出ヘッドの吐出口から高圧で吐出してワークに前記液体を塗布する液体定量吐出装置の液体吐出構造において、
前記吐出口から前記液体を高圧で吐出させる装置として、駆動源により自ら作動するギヤポンプを使用し、当該ギヤポンプを前記吐出ヘッドに一体に組み込み、減圧されたエアが前記吐出ヘッドに供給されており、
前記吐出ヘッドは、前記吐出ヘッドのエア供給口から前記エアを噴出しながら前記液体を高圧吐出するスプレー塗布を少なくとも実行可能である
ことを特徴とする液体定量吐出装置の液体吐出構造。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 本件補正の適否
2-1 本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、補正前の「ギヤポンプ」という記載を補正後の「駆動源により自ら作動するギヤポンプ」という記載に補正するものであるところ、補正により下線部の記載を付け加えることで、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項であるギヤポンプに関して限定を加えたものといえる。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2-2 独立特許要件の検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。) が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうかを検討する。

(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-239433号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある。 なお、下線は、理解の一助とするため当審で付したものである

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高粘性流体塗布装置に関するものであり、特に、塗布量の制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高粘性流体塗布装置には、例えば、特許第2863475号公報に記載されているように、高粘性流体の一種である接着剤を回路基材の一種であるプリント板たるプリント配線板に塗布する接着剤塗布装置がある。この接着剤塗布装置においては、接着剤がシリンジに収容されるとともに、シリンジ内に供給される圧縮空気により押し出され、プリント配線板の予め設定された塗布箇所に設定量塗布されるようにされている。塗布量は、圧縮空気の供給時間あるいは圧力を調節することにより変えられる。そのため、上記公報に記載の装置においては、プリント配線板に塗布された接着剤を撮像装置により撮像し、その撮像データに基づいて塗布量を求め、基準量と比較して圧縮空気の供給時間あるいは圧力を調節するようにされている。塗布量が基準量より設定量を超えて少なければ、圧縮空気の供給時間を長くし、あるいは圧力を高くし、塗布量が基準量より設定量を超えて多ければ、圧縮空気の供給時間を短くし、あるいは圧力を低くして、設定量の接着剤がプリント配線板に塗布されるようにされているのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】しかしながら、空気には圧縮性があるため、圧縮空気の供給時間あるいは圧力を調節しても、接着剤の塗布量を精度良く制御することが困難である。空気が圧縮される分、接着剤の塗布量が、圧縮空気の供給時間あるいは圧力の変更量に精度良く対応して変化しないからである。特に、シリンジ内の接着剤の量が少なくなり、圧縮空気の量が増大するほど、制御が困難になる。
【0004】本発明は、以上の事情を背景とし、接着剤等の高粘性流体の塗布量を精度良く制御することができる高粘性流体塗布装置を提供することを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様の高粘性流体塗布装置が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0005】(1)高粘性流体を供給する供給装置と、高粘性流体を吐出する吐出ノズルと、それら供給装置と吐出ノズルとの間に設けられ、供給装置から供給される高粘性流体を吐出ノズルへ送るポンプと、そのポンプを制御することによって前記吐出ノズルからの高粘性流体の吐出量を制御するポンプ制御装置とを含む高粘性流体塗布装置(請求項1)。高粘性流体塗布装置により塗布される高粘性流体には、接着剤,半田付け用ペースト,クリーム状半田等がある。また、ポンプとしては、スクリュポンプ,ギヤポンプ等が採用可能である。供給装置から供給される高粘性流体はポンプにより吐出ノズルへ送られ、塗布対象材に塗布される。このポンプによって吐出ノズルへ送られる高粘性流体の量は、圧縮空気によって送られる場合のように、空気の圧縮性の影響を受けず、ポンプの作動量にほぼ比例するため、ポンプ制御装置によりポンプを制御することによって吐出量を精度良く制御することができる。
(2)前記ポンプが、断面形状が円形のスクリュ室を備えたポンプハウジングと、そのポンプハウジング内にほぼ気密にかつ相対回転可能に配設されたスクリュとを含み、前記ポンプ制御装置が、ポンプハウジングとスクリュとを相対回転させるポンプ駆動装置を含む(1) 項に記載の高粘性流体塗布装置(請求項2)。ポンプ駆動装置によってポンプハウジングとスクリュとが相対回転させられれば、スクリュ室内の高粘性流体が吐出ノズルを通って吐出される。高粘性流体は粘度が高く、ポンプハウジングとスクリュとが相対回転させられれば、スクリュの螺旋に沿って送られる。スクリュはスクリュ室にほぼ気密に配設されているため、高粘性流体がスクリュとポンプハウジングのスクリュ室を形成する面との間の隙間を通って逆流することが殆どなく、高粘性流体はポンプハウジングとスクリュとの相対回転角度にほぼ比例した量だけ前方へ送られる。したがって両者の相対回転角度の制御により塗布量を精度良く制御することができる。また、スクリュポンプは細く構成することが容易であるため、吐出ノズルの近傍に配設することが容易である。
(3)前記ポンプが、前記ポンプハウジングが固定で、前記スクリュが前記ポンプ駆動装置によりポンプハウジング内で回転させられるものである(2) 記載の高粘性流体塗布装置。
(4)前記ポンプが、前記スクリュが固定で、前記ポンプハウジングが前記ポンプ駆動装置によりスクリュのまわりを回転させられるものである(2) 記載の高粘性流体塗布装置(請求項3)。
(5)前記吐出ノズルが前記スクリュポンプの一端から同軸に延び出させられた(2) 項ないし(4) 項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置(請求項4)。本態様によれば、スクリュポンプにより、スクリュポンプの軸方向に平行な方向へ送られた高粘性流体が、方向を変えることなく、吐出ノズルへ送られて吐出される。そのため、高粘性流体に、方向変換による移動抵抗が生じず、高粘性流体がスクリュポンプから吐出ノズルへスムーズに送られ、予定された量の高粘性流体が正確に対象材に塗布される。
(6)前記供給装置が、前記高粘性流体を加圧して前記スクリュポンプに供給する加圧式供給装置である (1)項ないし(5)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置(請求項5)。供給装置は、スクリュポンプおよびそれに連通する供給通路に高粘性流体を充満させた状態で、すなわち空隙のない状態で供給し得るものであることが望ましい。供給装置は、高粘性流体を収容する収容器とその収容器とスクリュポンプとを連通させる供給通路とを備えた単純なものでもよいが、その場合には、収容器をスクリュポンプより高い位置に配設することが必要である。また、高粘性流体の粘度が高い場合には、高粘性流体を加圧して供給する加圧式とすることが望ましい。本態様によれば、収容器がスクリュポンプより低い位置にあっても、また、高粘性流体の粘性が高くても、スクリュポンプおよびそれに連通する供給通路に高粘性流体を充満した状態で塗布を行うことができ、スクリュの回転角度にほぼ比例した量の高粘性流体を塗布対象材に塗布することができる。
(7)前記加圧式供給装置が、前記高粘性流体を収容する収容器と、その収容器の上方空間に加圧空気を供給する加圧空気供給装置と、前記収容器の下部から延び出して、前記スクリュポンプの前記吐出ノズルに連なる側の端部である第一端部とは反対側の端部である第二端部に連通する供給通路とを含む(6)項に記載の高粘性流体塗布装置。
(8)前記スクリュの一端から同軸に延び、前記スクリュ回転装置の回転をスクリュに伝達する回転軸と前記ポンプハウジングとの間に設けられ、回転軸の回転を許容しつつポンプハウジングと回転軸との液密を保持するシール装置を含む (1)項ないし (5)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置。(5)項に記載の供給通路は、ポンプハウジングのシール装置より吐出ノズル側の空間に連通させられる。回転軸とポンプハウジングの内周面との間の環状の空間が供給通路の一部を構成する状態とすることも、実施形態におけるように、スクリュポンプの一端部の内周面に開口する状態とすることも可能である。シール装置が設けられているため、回転軸とポンプハウジングの内周面との間から高粘性流体がスクリュ回転装置側へ逆流することがなく、スクリュの回転角度にほぼ比例した量の高粘性流体が対象材に塗布される。
(9)前記供給装置が前記高粘性流体を収容し、供給口から供給する収容器を備え、その収容器の供給口に前記スクリュが固定された(4)項に記載の高粘性流体塗布装置(請求項6)。
(10)前記供給口が前記収容器の一端から延び出た筒状部により構成されており、前記スクリュの基端部が前記筒状部に嵌合して固定されるとともに、筒状部のスクリュの基端部が嵌合された部分より収容器側の部分に開口が形成された(9)項に記載の高粘性流体塗布装置。
(11)当該高粘性流体塗布装置の本体に、前記ポンプハウジングが回転可能かつ軸方向に移動不能に保持されており、前記収容器が前記本体に着脱可能であって、収容器の本体への取り付けに伴って前記スクリュが前記ポンプハウジング内に嵌入し、収容器の本体からの取り外しに伴ってスクリュがポンプハウジングから離脱する(9)項または(10)項に記載の高粘性流体塗布装置(請求項7)。
(12)当該高粘性流体塗布装置の本体に前記吐出ノズルが回転可能に保持された(9)項ないし(11)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置。
(13)当該高粘性流体塗布装置の本体に前記ポンプハウジングと前記吐出ノズルとが回転可能に保持されており、かつ、ポンプハウジングが吐出ノズル内に相対回転可能に嵌合された(9)項ないし(11)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置。
(14)前記吐出ノズルを前記収容器および前記本体に対して回転させるノズル回転装置を含む(12)項または(13)項に記載の高粘性流体塗布装置(請求項8)。
(15)前記吐出ノズルから吐出されて対象材に塗布された前記高粘性流体の塗布量を検出する塗布量検出装置を含み、前記ポンプ制御装置が、その塗布量検出装置により検出された塗布量が目標塗布量に近づくように前記ポンプの作動量を制御する (1)項ないし(14)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置(請求項9)。塗布量は、例えば、塗布された高粘性流体の外径(円形に塗布される場合),底面積,高さ,容積あるいはそれらの2つ以上の組み合わせによって検出される。容積によるのが最も正確であるが、塗布された高粘性流体の形状が一定している場合には、外径,底面積,高さの少なくとも一つを検出し、それから容積を推定することも可能であり、また、その少なくとも一つ自体を塗布量制御の対象値とすることも可能である。また、検出装置としては撮像装置が好適であるが、レーザビーム,超音波等による高さ検出装置等の採用も可能である。撮像装置による場合には、塗布された高粘性流体の平面像を撮像したり、例えば、まだ、未公開であるが、本出願人に係る特願2000-238131の出願に記載されているように、平板状の照明光を放射する照明装置と撮像装置とを互いの光軸を交差する状態に配設し、複数の切断平面の集合として高粘性流体の3次元形状を取得したりすることができる。本態様によれば、高粘性流体の塗布量が自動的に制御され、正確な量の高粘性流体が塗布される。
(16)前記吐出ノズルに近接するとともに先端が吐出ノズルの先端より前方へ突出した状態で吐出ノズルと相対移動不能に設けられ、前記高粘性流体が塗布される対象材に当接して吐出ノズルの先端と対象材との間隙を規定する間隙規定部を含む (1)項ないし(15)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置。例えば、吐出ノズルをノズル本体とそのノズル本体から延び出させられた吐出管とを備えたものとし、ノズル本体から吐出管に平行に延び出たピンを設けて、そのピンを間隙規定部とすることができる。吐出管の曲げ剛性が高い場合には、吐出管自体にL字形,U字形等の間隙規定部材を固定することもできる。L字の一方のアーム部やU字の底部を吐出管が貫通する状態で、間隙規定部材を吐出管に固定するのである。間隙規定部は、吐出ノズルとは別体に設けてもよい。間隙規定部は、高粘性流体の塗布時に、例えば、吐出ノズルがホルダに着脱可能に保持されるのであれば、そのホルダに設けてもよく、あるいは、塗布時に吐出ノズルが、対象材の表面に直角な方向に移動させられるのであれば、吐出ノズルを支持して移動する移動体に設けてもよい。吐出ノズルの先端と対象材との間隙が規定され、その状態で高粘性流体が吐出ノズルから吐出され、対象材に塗布されれば、高粘性流体が常にほぼ同じ3次元形状で対象材に塗布される。また、間隙規定部は吐出ノズルと対象材との、対象材の表面に直角な方向における相対移動を規定するストッパとしても機能し、吐出ノズルが対象材に当接せず、例えば、細い吐出ノズルが当接時の衝撃により曲がることが良好に防止される。
(17)少なくとも前記吐出ノズルおよび間隙規定部が、当該高粘性流体塗布装置の本体に対して吐出ノズルの軸方向に相対移動可能とされるとともに、付勢装置により吐出ノズルの基端側から先端側に向かって付勢され、かつ、その付勢装置の付勢力に基づく前進限度がストッパにより規定された(16)項に記載の高粘性流体塗布装置。本態様によれば、間隙規定部が対象材に当接した状態から、吐出ノズルおよび間隙規定部を高粘性流体塗布装置の本体に対して小距離相対移動させることができ、それにより、間隙規定部を確実に対象材に当接させ、吐出ノズルの先端と対象材との間に一定の間隙を確保することができる。また、付勢装置により、間隙規定部が対象材に当接する際の衝撃が緩和され、間隙規定部と対象材との少なくとも一方が破損することが回避される。
(18)前記ポンプハウジングと前記吐出ノズルとが相対移動不能であり、それらポンプハウジングと吐出ノズルとが前記本体に対して吐出ノズルの軸方向に相対移動可能である(17)項に記載の高粘性流体塗布装置。吐出ノズルが高粘性流体塗布装置の本体に対して相対移動させられるとき、ポンプハウジングも共に相対移動させられ、吐出ノズルに高粘性流体を送る状態に保たれる。
(19)前記高粘性流体の、少なくとも前記吐出ノズルから吐出される部分の温度を制御する温度制御装置を含む (1)項ないし(18)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置。本態様によれば、例えば、高粘性流体の温度を塗布に適した温度に制御することができ、それにより、例えば、高粘性流体の粘度を塗布に適した粘度に制御し、高粘性流体の塗布量をより精度良く制御することができる。
(20)前記温度制御装置が、少なくとも前記ポンプハウジングの前記スクリュを囲む部分との間で熱の授受を行い得る状態で気体の流れを案内する気体通路と、その気体通路に供給される気体の温度を制御する気体温度制御装置とを含む(19)項に記載の高粘性流体塗布装置。気体通路は、ポンプハウジングのスクリュを囲む部分に直接接触する状態で気体の流れを案内するようにしてもよく、あるいは他部材を介して間接に接触する状態で気体の流れを案内するようにしてもよい。間接に接触させる場合でも、熱伝導により熱が伝達されるようにすることが望ましい。気体温度制御装置は、例えば、気体を加熱する加熱装置および冷却する冷却装置を含んで構成される。気体温度は、高粘性流体の目標温度と同じ高さに制御してもよく、目標温度より高くあるいは低く制御してもよい。気体通路内の気体により、高粘性流体が温められ、あるいは冷やされて塗布に適した温度に保たれる。
(21)前記吐出ノズルが互いに平行な複数本の吐出管を有する (1)項ないし(20)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置。本態様によれば、スクリュの作動に基づく高粘性流体の1回の塗布により、対象材の複数箇所に同時に高粘性流体を塗布することができる。
(22)前記吐出ノズルを前記吐出管の軸方向と平行な回転軸線まわりに回転させるノズル回転装置を含む(21)項に記載の高粘性流体塗布装置。本態様によれば、吐出ノズルの回転軸線まわりにおける高粘性流体の塗布位置を変えることができる。
(23)予め定められたプログラムに従って前記ノズル回転装置を制御するノズル回転装置制御装置を含む(22)項に記載の高粘性流体塗布装置。
(24)当該高粘性流体塗布装置の本体と前記高粘性流体が塗布される対象材とを、対象材の表面に平行な方向と直角な方向とに相対移動させる相対移動装置を含む (1)項ないし(23)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置。
(25)前記供給装置が、前記高粘性流体を加圧して前記スクリュポンプに供給する加圧式供給装置であり、かつ、当該高粘性流体塗布装置が、前記ポンプを作動させる際に前記加圧式供給装置も作動させる同期的制御装置を含む(1)項ないし(24)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置(請求項10)。
(26)前記ポンプ制御装置が、前記ポンプを停止させる際にそれまでとは逆方向に予め定められた量回転させる逆回転部を備えた(1)項ないし(25)項のいずれか一つに記載の高粘性流体塗布装置(請求項11)。」(段落【0001】ないし【0005】)

イ.「【0009】塗布ユニット30を説明する。塗布ユニット30は、前記Y軸スライド52上において昇降させられ、プリント配線板16に接近,離間させられる。そのため、Y軸スライド52には、図示しない一対の案内部材たるガイドレールが上下方向に設けられるとともに、Z軸スライド70が図示しないガイドブロックにおいて摺動可能に嵌合されており、Z軸スライド駆動装置72により昇降させられる。Z軸スライド駆動装置72は、本実施形態においては、流体圧アクチュエータの一種である流体圧シリンダたるエアシリンダ74を駆動源とし、そのZ軸スライド70に連結されたピストンロッド76が伸縮させられることにより、Z軸スライド70が昇降させられ、Z軸スライド70上に設けられた塗布ユニット30がプリント配線板16の塗布面32に直角な方向に移動させられる。本実施形態においてエアシリンダ74は、ピストンがストロークエンド近傍へ移動した状態においてエア室へのエアの供給量を絞る絞り機構を備えており、Z軸スライド70は減速しつつ、衝撃少なく停止させられる。Z軸スライド70およびZ軸スライド駆動装置72は、塗布ユニット30と塗布対象材とを、塗布面32に直角な方向に相対移動させる相対移動装置たる塗布ユニット昇降装置78を構成している。また、塗布ユニット昇降装置78は、塗布ユニット30の構成要素である吐出ノズルを昇降させる吐出ノズル昇降装置でもあり、XYロボット60は吐出ノズルをプリント配線板16の表面に平行な方向に移動させる吐出ノズル移動装置でもある。本実施形態においては、Z軸スライド70は接着剤塗布装置14の装置本体を構成し、XYロボット60およびZ軸スライド駆動装置72が、Z軸スライド70とプリント配線板16とを、プリント配線板16の表面に平行方向と直角な方向に相対移動させる相対移動装置を構成している。なお、塗布ユニット昇降装置78は、電動モータの一種であるサーボモータを駆動源とする装置とし、塗布ユニット30を、上下方向の任意の位置へ移動させるようにしてもよい。
【0010】上記塗布ユニット30は、図3に示すように、吐出ノズル90,ノズル回転装置92,スクリュポンプ94,スクリュ回転装置96および高粘性流体供給装置たる接着剤供給装置98等を備えている。吐出ノズル90を説明する。吐出ノズル90は、ノズル本体104と1本の吐出管106とを備えている。ノズル本体104は断面形状が円形を成し、内部に通路108が同心にかつ軸線方向に貫通して形成されており、通路108の一端部に吐出管106が嵌合されている。吐出管106は、本実施形態では、ノズル本体104と同心にもうけられ、ノズル本体104から延び出させられているのである。通路108の他端部は、吐出管106から離れるほど直径が直線的に増大するテーパ通路109とされている。
【0011】ノズル本体104にはまた、吐出管106から半径方向に離れた位置にピン110が吐出管106と平行に嵌合され、間隙規定部を構成している。ピン110は、吐出ノズル90と一体であって、吐出ノズル90に近接して設けられているのである。ピン110はノズル本体104に、軸方向においても半径方向においても相対移動不能に嵌合されており、ノズル本体104から吐出管106と平行に延び出させられ、先端は、吐出ノズル90の先端である吐出管106の先端より前方へ突出させられている。
【0012】吐出ノズル90はノズル回転装置92により、本実施形態では、自身の軸線、すなわちノズル本体104の軸線まわりに回転させられる。ノズル回転装置92は、本実施形態においては、電動モータの一種であるノズル回転用モータ114を駆動源とする。ノズル回転用モータ114はサーボモータにより構成され、その回転は、継手116,駆動ギヤ118,従動ギヤ120,リング状部材122を介してスリーブ124に伝達される。吐出ノズル90はスリーブ124に着脱可能に固定されており、スリーブ124が回転させられることにより、吐出ノズル90が回転させられる。また、それと共にピン110が吐出ノズル90の軸線まわりに旋回させられ、軸線まわりの位置が変えられる。
【0013】駆動ギヤ118は、前記Z軸スライド70により軸受126を介して一軸線、本実施形態においては垂直軸線まわりに回転可能に支持され、従動ギヤ120はZ軸スライド70により軸受128を介して垂直軸線まわりに回転可能に支持されて、駆動ギヤ118と噛み合わされており、リング状部材122は従動ギヤ120に同心に固定されている。スリーブ124は円筒状を成し、リング状部材122内を通り、従動ギヤ120内に軸方向に貫通して形成された貫通孔130に軸方向に相対移動可能に嵌合されている。スリーブ124は、軸方向の中間部に設けられた半径方向外向きのフランジ部134において、リング状部材122に設けられた半径方向内向きのフランジ部136により下方から支持され、脱落が防止されている。また、フランジ部134は、フランジ部136に軸線方向に平行に嵌合されたピン138に嵌合され、軸方向の相対移動を許容されつつ、相対回転を阻止されている。ピン138が相対回転阻止装置ないし回転伝達装置を構成している。
【0014】上記スリーブ124内に、前記吐出ノズル90のノズル本体104の軸線方向の一端部が同心に嵌合されている。ノズル本体104の嵌合限度は、ノズル本体104の、軸線方向の中間部に設けられた半径方向外向きのフランジ部140が、スリーブ124の一端面である下端面に当接することにより規定され、その状態でナット142が、スリーブ124の一端部である下端部であって、リング状部材122から下方へ突出させられた突出端部に設けられた雄ねじ部144に螺合されることにより、吐出ノズル90がスリーブ124に着脱可能に固定されている。吐出ノズル90はスリーブ124等によりZ軸スライド70に取り付けられているのである。本実施形態においてナット142は有底円筒状の袋状を成し、その円筒状部に雌ねじが形成され、底部に設けられた開口146においてノズル本体104に嵌合され、スリーブ124との間にフランジ部140を挟んで吐出ノズル90をスリーブ124に固定している。したがって、スリーブ124が回転させられれば、吐出ノズル90がノズル本体104の軸線であって、垂直な軸線まわりに回転させられる。また、スリーブ124は従動ギヤ120に軸方向に相対移動可能に嵌合されており、吐出ノズル90およびピン110は、Z軸スライド70に対して吐出ノズル90の軸方向に相対移動可能である。
【0015】このようにノズル回転装置92には吐出ノズル90が着脱可能に固定されるようにされており、ノズル回転装置92はノズル保持装置であるいうことができ、ノズル回転装置92には、複数種類の吐出ノズルが選択的に固定される。例えば、図4に示す吐出ノズル160のように、吐出管162を複数、例えば2つ備えた吐出ノズルがノズル回転装置92に取り付けられて、プリント配線板16に接着剤を塗布する。これら2つの吐出管162は、ノズル本体164の軸線を中心とする一円周上であって、直径方向に隔たった2箇所にそれぞれ設けられている。ノズル本体164には、その軸線に平行に一対の通路166が設けられるとともに、それら通路166の各一端部にそれぞれ、吐出管162が嵌合されている。2本の吐出管162は、本実施形態では同じものとされており、互いに平行に設けられ、同量の接着剤を吐出し、プリント配線板16に塗布する。一対の通路166の各他端部は、吐出管162から離れるほど直径が直線的に増大するテーパ状通路168とされるとともに、ノズル本体164に同心に設けられた大径で共通の通路170に連通させられている。また、ノズル本体164には、その軸線上にピン172が嵌合されるとともに、その先端は2つの吐出管162の先端より前方へ突出させられている。ピン172は吐出管162と平行に設けられ、間隙規定部を構成している。
【0016】前記スクリュポンプ94およびスクリュ回転装置96を説明する。スクリュポンプ94のポンプハウジング180は、本実施形態においては、断面形状が円形の段付状を成し、Z軸スライド70により、自身の軸線に平行な方向であって、垂直方向に相対移動可能かつ相対回転不能に支持されている。ポンプハウジング180は、その一端部である上端部において、Z軸スライド70に固定のガイド部材182に軸方向に相対移動可能かつ相対回転不能に嵌合されている。ガイド部材182は、Z軸スライド70の、前記従動ギヤ120より上方の位置に固定されており、固定後はZ軸スライド70として機能する。ポンプハウジング180の上端部には、上面および外周面に開口し、軸線に平行な方向に延びる溝186が設けられるとともに、ガイド部材182に突設されたピン188が溝186に、溝186の長手方向に相対移動可能に嵌合されており、それによりポンプハウジング180のZ軸スライド70に対する相対回転が阻止されている。ピン188により構成される係合突部ないし回転阻止部材および溝186により構成される係合凹部が、相対回転阻止装置190を構成している。
【0017】ポンプハウジング180の他端部である下端部は、前記従動ギヤ120内に形成された貫通孔130およびスリーブ124を通り、前記吐出ノズル90のノズル本体104に形成された有底の嵌合穴194に同心であって、軸方向に相対移動可能かつ相対回転可能に嵌合されている。吐出ノズル90は、スクリュポンプ94の一端から同軸に延び出させられているのであり、ポンプハウジング180の下端部の嵌合穴194との間の部分に設けられたシール部材たるOリング196により液密を保持されている。
【0018】ポンプハウジング180の上端部には、円筒状のばね受け198が嵌合されるとともに、ばね受け198と前記ガイド部材182との間に配設された付勢装置の一種である弾性部材たる圧縮コイルスプリング(以下、スプリングと略称する)200により、ポンプハウジング180は吐出ノズル90に向かって付勢されている。ポンプハウジング180の下端部は、スプリング200の付勢により嵌合穴194の底面に当接させられ、吐出ノズル90はポンプハウジング180を介してスプリング200により、その基端側から先端側、本実施形態においては上端側から下端側に向かって付勢されている。スプリング200の付勢力に基づく吐出ノズル90の前進限度は、前記スリーブ124に設けられたフランジ部134がリング状部材122に設けられたフランジ部136に当接することにより規定される。フランジ部136がストッパを構成し、フランジ部134がストッパに当接して移動を阻止される係合部を構成している。したがって、ポンプハウジング180,ばね受け198および吐出ノズル90は、Z軸スライド70に対して吐出ノズル90の軸方向に平行な方向に一体的に移動する。フランジ部136が設けられたリング状部材122は、吐出ノズル90を下方から支持し、落下を防止する支持部材ないし落下防止部材を構成している。なお、ポンプハウジング180がZ軸スライド70から取り外された状態において、ばね受け198の落下が、ガイド部材182に設けられた半径方向内向きのフランジ部202によって防止される。ガイド部材182は、ポンプハウジング180の軸方向の移動を案内するとともに、ばね受け198の抜出しを防止する抜止めを構成している。ポンプハウジング180がZ軸スライド70に取り付けられ、フランジ部136によって吐出ノズル90の前進限度が規定された状態では、ばね受け198は、図3に示すように、その上端部がガイド部材182のフランジ部202から離れ、スプリング200の付勢力がポンプハウジング180および吐出ノズル90に作用する状態が得られる。
【0019】ポンプハウジング180内には、スクリュ室210が設けられている。スクリュ室210は、断面形状が円形を成し、ポンプハウジング180に同心に、かつポンプハウジング180の軸線方向の一端面である下面212に開口して形成されており、スクリュ214が回転可能に嵌合されている。スクリュ214は短い円柱状の基端部216と、その基端部216から同心に延び出させられた螺旋状部218とを有する。螺旋状部218には、ねじ山が螺旋状に形成されており、スクリュ214は基端部216の外周面および螺旋状部218のねじ山の外周面においてスクリュ室210に、スクリュ214の回転を許容する極く僅かな隙間を残してほぼ気密にかつ回転可能に嵌合されている。
【0020】スクリュ室210のポンプハウジング180の下面212への開口が吐出口222を構成し、吐出ノズル90のノズル本体104に設けられた前記通路108は吐出口222に連通させられている。前述のように、ポンプハウジング180の下端部は吐出ノズル90の嵌合穴194に嵌合されるとともに、スプリング200の付勢により嵌合穴194の底面に当接させられており、通路108は吐出口222に連通させられているのである。通路108の吐出管106が嵌合された側とは反対側に設けられた前記テーパ状通路109の最大直径は、吐出口222の直径と同じ大きさとされ、吐出ノズル90はノズル回転装置92に保持された状態では、吐出口222に連通させられる。吐出ノズル160についても同様であり、通路170の直径は吐出口222の直径と等しく、吐出ノズル160は、ノズル回転装置92に保持された状態では、吐出口222に連通させられる。
【0021】スクリュ214の一端である上端ないし基端部216から回転軸230が同軸に延び出させられている。回転軸230は断面形状が円形を成し、本実施形態では、スクリュ214より大径であり、ポンプハウジング180にスクリュ室210と同心に設けられた軸孔232に相対回転可能に嵌合されている。また、回転軸230のスクリュ214側の端部にはOリング234が設けられており、回転軸230の回転を許容しつつポンプハウジング180と回転軸230との液密を保持する。本実施形態においては、Oリング234がシール装置を構成している。
【0022】回転軸230は、スクリュ回転装置96により回転させられ、スクリュ回転装置96の回転をスクリュ214に伝達する。スクリュ回転装置96は、本実施形態においては、前記Z軸スライド70に垂直に、かつ下向きに設けられたスクリュ駆動モータ240を駆動源とする。本実施形態においてスクリュ駆動モータ240は、電動モータの一種である電動回転モータたるサーボモータにより構成されている。スクリュ駆動モータ240の回転は、継手242により回転軸230に伝達され、回転軸230が自身の軸線であって、垂直な軸線まわりに回転させられ、スクリュ214が回転させられる。
【0023】スクリュポンプ94には、接着剤供給装置98によって接着剤が供給される。接着剤供給装置98は、接着剤が収容された収容器250を有する。収容器250はZ軸スライド70のスクリュ室210より上方の部分に、垂直方向に相対移動可能に、かつ下向きに設けられるとともに、接続部材252によりポンプハウジング180に接続されている。接続部材252は、本実施形態では水平に配設され、一端部に設けられた円形断面の突状を成す接続部254において、ポンプハウジング180の前記スクリュ室210が設けられた部分より上側の部分に、スクリュ214の軸線と直角に嵌合されている。接続部254のポンプハウジング180に対する液密は、ポンプハウジング180に設けられたシール装置たるOリング256により保持されている。
【0024】接続部材252内には、供給通路260が形成されている。供給通路260は、収容器250の下部から垂直に延び出させられた後、水平に曲げられ、その収容器250に連通させられた側の端部とは反対側の端部である他端部は、接続部254の突出端に開口させられるとともに、ポンプハウジング180内に形成された供給通路262に連通させられている。供給通路262は、ポンプハウジング180の軸線に平行に、すなわち上下方向に形成され、供給通路260は、供給通路262の上端部に連通させられている。供給通路262の下端部は、スクリュ室210の上端部の内周面に開口させられており、吐出ノズル90に連なる。スクリュポンプ94の吐出ノズル90に連なる端部が第一端部であり、スクリュ室210の供給通路262に連通させられた側の端部がスクリュポンプ94の第二端部であり、供給通路260は第二端部に供給通路260を介して連通させられている。供給通路260および供給通路262が共同して、加圧式供給装置の供給通路を構成していると考えてもよい。
【0025】収容器250の上方空間には、加圧空気供給装置270によって加圧された空気である圧縮空気が供給される。接着剤供給装置98は、加圧式供給装置なのである。加圧空気供給装置270は、本実施形態においては、圧縮空気供給源272を有する。圧縮空気供給源272と収容器250とを接続する通路の途中には、空気圧調節装置273および電磁制御弁たる電磁開閉弁274が直列に設けられている。空気圧調節装置273は、圧縮空気供給源272から供給される加圧空気である圧縮空気の圧力を、収容器250内の接着剤の加圧に適した高さに制御して収容器250に供給する。
【0026】電磁開閉弁274は、本実施形態においては、常閉弁とされており、電磁開閉弁274が閉状態に切り換えられた状態では、収容器250の上方空間に圧縮空気は供給されず、開状態に切り換えられれば、圧縮空気が供給されて収容器250内の接着剤が加圧される。それにより、供給通路260,262,スクリュ室210に接着剤が充満させられ、空隙のない状態でスクリュポンプ94に供給される。接着剤の粘度は高いが、供給通路260等に接着剤が充満した状態が確実に得られるのである。なお、接着剤供給装置98とノズル回転装置92とは、吸着ノズル90の軸線まわりにおいて異なる位置に設けられており、互いに干渉することはない。
【0027】本実施形態においては、スクリュ室210内の接着剤および吐出ノズル90内の接着剤の温度は、温度制御装置290により、塗布に適した温度に制御される。接着剤の温度を制御することは、例えば、特開平10-99756号公報に記載されているように既に知られており、簡単に図示および説明する。
【0028】Z軸スライド70には、気体供給体たる空気供給体292が位置を固定して設けられている。空気供給体292は、前記スリーブ124およびナット142の、ポンプハウジング180のスクリュ214が嵌合された部分を囲む部分のまわりに、その部分を囲む状態で設けられている。空気供給体292内には、環状の気体通路たる空気通路294が設けられている。空気通路294は、スリーブ124側に開口させられており、スリーブ124およびナット142を介して、ポンプハウジング180のスクリュ214を囲む部分に間接に接触する状態で気体の一種である空気の流れを案内する。
【0029】空気通路294は、前記圧縮空気供給源272に接続されており、空気通路294と圧縮空気供給源272とを接続する通路に、加熱装置296,冷却装置298,空気圧調節装置300および電磁開閉弁302が直列に設けられている。空気圧調節装置300は、圧縮空気供給源272の圧縮空気の圧力を、接着剤の温度調節に適した高さに制御して加熱装置296および冷却装置298に供給し、それら装置296,298によって温度が適切な高さに制御された空気が空気通路294に供給され、スリーブ124およびナット142に向かって吹き付けられる。ポンプハウジング180のスクリュ214が嵌合された部分は吐出ノズル90のノズル本体104に嵌合されてノズル本体104に接触させられ、ノズル本体104はスリーブ124およびナット142に嵌合され、あるいは挟まれてそれらに接触させられており、空気通路294内を流れる空気とポンプハウジング180のスクリュ214を囲む部分との間で、スリーブ124およびナット142を介して間接に、熱伝導により熱の授受が行われ、スクリュ室210および吐出ノズル90内の接着剤が暖められ、あるいは冷やされて塗布に適した温度である推奨作業温度に制御される。
【0030】空気通路294には温度センサ302が設けられ、空気通路294内の空気の温度が検出される。空気通路294内の空気の温度は、接着剤を推奨作業温度に保つ高さに制御され、本実施形態においては、作業推奨温度と同じ高さに制御される。そのため、本実施形態においては、空気通路294の温度が推奨作業温度より設定値を超えて低ければ、加熱装置296が作動させられ、圧縮空気を加熱して空気通路294に供給する。この際、冷却装置298は作動させられず、空気の通過を許容する。また、空気通路294の温度が推奨作業温度より設定値を超えて高ければ、冷却装置298が作動させられ、圧縮空気を冷却して空気通路294に供給する。この際、圧縮空気は作業推奨温度より設定値以上、低い温度に冷却され、加熱装置296により、作業推奨温度になるように加熱されて空気通路294に供給される。なお、空気通路294内の空気の温度は、推奨作業温度と異なっていてもよく、それより高くてもよく、低くてもよい。」(段落【0009】ないし【0030】)

ウ.「【0057】本実施形態においては、少なくとも吐出ノズル90がプリント配線板16に接着剤を塗布する際には、電磁開閉弁274が開状態に切り換えられ、収容器250に圧縮空気が供給されて収容器250内の接着剤が加圧されている。そのため、供給通路260,262およびスクリュ214とスクリュ室210の内周面との間の螺旋状の空間には、接着剤が空隙なく充満しており、スクリュ214が回転させられれば、接着剤は螺旋状部218に沿って吐出口222側へ送られ、吐出口222からノズル本体104内のテーパ状通路109へ進入する。そして、通路108内の接着剤が吐出管106を通って押し出され、プリント配線板16に塗布される。接着剤は粘性が高く、スクリュ214の回転により吐出口222側へ送られ、スクリュ214の回転角度に対応した量の接着剤がプリント配線板16に塗布される。
【0058】スクリュ214はスクリュ室210にほぼ気密に嵌合されているため、スクリュ214が回転させられるとき、接着剤が、スクリュ214とポンプハウジング180との間の隙間を通って、接着剤供給装置98側へ逆流することがなく、設定量の接着剤が確実に吐出ノズル90へ送られ、プリント配線板16に塗布される。また、回転軸230はOリング234によりポンプハウジング180との間の液密が保持されており、スクリュ駆動用モータ240側へ接着剤が漏れることもない。このようにスクリュ214の回転角度に対応した量の接着剤がプリント配線板16に塗布されるため、スクリュ214の回転角度の設定により、接着剤の塗布量を変えることができる。
【0059】また、接着剤の温度は温度制御装置290により推奨作業温度に保たれ、接着剤の粘度は塗布に適した高さに設定されており、それによっても塗布量が設定量に保たれる。また、吐出管106の先端面とプリント配線板16との間の間隙がピン110によって一定に保たれるとともに、接着剤の温度制御が為されることにより、接着剤は常に安定した3次元形状で塗布される。
【0060】なお、短時間の間に次々と塗布が行われる間は、加圧空気供給装置270による収容器250への加圧空気の供給が継続されるが、それによって吐出管106から接着剤が吐出されることはない。また、回転を停止しているスクリュ214が、加圧による接着剤の吐出ノズル90側への移動を妨げる役割を果たすため、一層確実に吐出が防止される。」(段落【0057】ないし【0060】)

エ.「【0089】上記各実施形態においてポンプはスクリュポンプとされていたが、スクリュポンプに限らず、例えば、ギヤポンプとしてもよい。その例を図20に基づいて簡単に説明する。
【0090】本実施形態においてギヤポンプ550は、ポンプハウジング552内に、2個のギヤ554,556が互いに噛み合わされ、回転可能に配設されたものである。ギヤ554,556のギヤ軸558,560の一方が電動モータの一種であるサーボモータ562を駆動源とするポンプ回転装置564により回転駆動されることによってギヤ554,556が回転させられ、接着剤供給装置に接続された吸入通路566から接着剤を吸入し、吐出通路568から吐出ノズルへ吐出する。サーボモータ562の回転は、図示しない制御装置により制御され、ギヤ554,556は、プリント配線板16に設定量の接着剤を塗布するのに要する角度、回転させられる。
【0091】ポンプハウジング552とギヤ554,556との間の空間,吸入通路566および吐出通路568には、接着剤が空隙なく充満しており、ギヤ554,556が回転させられれば、その回転角度に応じた量の接着剤が吐出ノズルへ送られて吐出管から押し出され、プリント配線板16に塗布される。したがって、差562を制御し、ギヤ554,556の回転角度を制御することにより、所望量の接着剤をプリント配線板16に塗布することができ、上記実施形態におけると同様に、塗布された接着剤を撮像し、塗布量を検出し、目標塗布量の設定範囲から外れていれば、その過不足に応じてサーボモータ562の回転角度を補正し、ギヤ554,556の回転角度を補正する。本実施形態においては、ポンプ回転装置564およびコンピュータのサーボモータ562の回転を制御する部分がポンプ制御装置を構成している。」(段落【0089】ないし【0091】)

(2)ここで、上記(1)のア.ないしエ.並びに図面から、次のことが分かる。

カ.上記ア.段落【0005】、イ.の段落【0009】、【0010】及びウ.の段落【0057】ないし【0059】並びに【図3】の記載から、引用文献に記載された塗布ユニット30は、収容器250の流体を吐出ノズル90の吐出管106の先端面から高圧で吐出してプリント配線板16に流体を塗布する構造を有していることが分かる。なお、特に、ウ.の段落【0059】の「そして、通路108内の接着剤が吐出管106を通って押し出され、プリント配線板16に塗布される。」という記載から、流体が吐出管106の先端面から高圧で吐出していることは明らかである。

キ.上記エ.の段落【0089】ないし【0091】並びに【図3】及び【図20】の記載を上記カ.とあわせてみると、引用文献に記載された塗布ユニット30は、吐出管106の先端面から流体を高圧で吐出させる装置として、サーボモータ562により自ら作動するギヤポンプ550を使用し、ギヤポンプ550を吐出ノズル90に一体に組み込まれていることが分かる。

ク.上記イ.の段落【0029】及び【図3】の記載から、空気が吐出ノズル90に供給されていることが分かる。

ケ.上記カ.及びキ.の記載から、吐出ノズル90は、流体を高圧吐出する塗布を実行可能であることが分かる。

(3)上記(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明が記載されている。

「収容器250の流体を吐出ノズル90の吐出管106の先端面から高圧で吐出してプリント配線板16に流体を塗布する塗布ユニット30の構造において、
吐出管106の先端面から流体を高圧で吐出させる装置として、サーボモータ562により自ら作動するギヤポンプ550を使用し、ギヤポンプ550を吐出ノズル90に一体に組み込み、空気が吐出ノズル90に供給されており、
吐出ノズル90は、流体を高圧吐出する塗布を実行可能である
塗布ユニット30の構造。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

(2)対比
本願補正発明と引用文献記載の発明を対比する。
引用文献記載の発明における「収容器250」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願補正発明における「液体貯留室」に相当し、以下同様に、「流体」は「液体」に、「吐出ノズル90」は「吐出ヘッド」に、「吐出管106の先端面」は「吐出口」に、「プリント配線板16」は「ワーク」に、「塗布ユニット30」は「液体定量吐出装置」に、「構造」は「液体吐出構造」に、「サーボモータ562」は「駆動源」に、「ギヤポンプ550」は「ギヤポンプ」に、それぞれ相当する。

また、引用文献記載の発明における 「空気」と、本願補正発明における「減圧されたエア」は、「エア」という限りにおいて一致するので、引用文献記載の発明における「空気が吐出ノズル90に供給されており、吐出ノズル90は、流体を高圧吐出する塗布を実行可能である」と、本願補正発明における「減圧されたエアが前記吐出ヘッドに供給されており、前記吐出ヘッドは、前記吐出ヘッドのエア供給口から前記エアを噴出しながら前記液体を高圧吐出するスプレー塗布を少なくとも実行可能である」は、「エアが前記吐出ヘッドに供給されており、前記吐出ヘッドは、前記液体を高圧吐出する塗布を少なくとも実行可能である」という限りにおいて一致する

したがって、両者は、
「液体貯留室の液体を吐出ヘッドの吐出口から高圧で吐出してワークに前記液体を塗布する液体定量吐出装置の液体吐出構造において、
前記吐出口から前記液体を高圧で吐出させる装置として、駆動源により自ら作動するギヤポンプを使用し、当該ギヤポンプを前記吐出ヘッドに一体に組み込み、エアが前記吐出ヘッドに供給されており、
前記吐出ヘッドは、前記液体を高圧吐出する塗布を少なくとも実行可能である
液体定量吐出装置の液体吐出構造。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
「エアが前記吐出ヘッドに供給されており、前記吐出ヘッドは、前記液体を高圧吐出する塗布を少なくとも実行可能である」ことに関して、本願補正発明においては、「減圧されたエアが前記吐出ヘッドに供給されており、前記吐出ヘッドは、前記吐出ヘッドのエア供給口から前記エアを噴出しながら前記液体を高圧吐出するスプレー塗布を少なくとも実行可能である」のに対して、引用文献記載の発明においては、「空気が吐出ノズル90に供給されており、吐出ノズル90は、流体を高圧吐出する塗布を実行可能である」点(以下、「相違点」という。)。

(3)相違点についての判断
そこで、上記各相違点について、以下に検討する。
引用文献の上記2-2(1)イ.の段落【0029】の記載、特に「空気圧調節装置300は、圧縮空気供給源272の圧縮空気の圧力を、接着剤の温度調節に適した高さに制御して加熱装置296および冷却装置298に供給し」ているという記載及び技術常識に鑑みれば、空気圧調節装置300は、圧縮空気供給源の圧縮空気の圧力を接着剤の温度調節に適した圧力に減圧していると解するのが自然である。
仮に、引用文献記載の発明において、空気が減圧されていないとしても、圧縮空気供給源の高圧空気をレギュレータ(減圧弁)等で減圧して、流体の噴霧等に使用することは周知の技術(例えば、下記周知例1(特開2000-197835号公報)の段落【0032】ないし【0035】並びに【図3】及び【図5】参照。以下、「周知技術1」という。)である。
また、吐出ヘッドのエア供給口からエアを噴出しながら接着剤等の液体を高圧吐出するスプレー塗布が実行可能な吐出装置は周知の技術(例えば、下記周知例1(特開2000-197835号公報)の段落【0032】ないし【0035】並びに【図3】及び【図5】、周知例2(特開平11-319674号公報)の段落【0006】ないし【0011】及び【図1】ないし【図10】、周知例3(特開2000-70818号公報)の段落【0015】及び【0016】並びに【図1】及び【図2】、周知例4(特開2005-28204号公報)の段落【0031】及び【0032】並びに【図2】参照。以下、「周知技術2」という。)である。
してみると、接着剤等の流体の塗布において、引用文献記載の発明の実施形態のようなエアが吐出ヘッドに供給され、接着剤の加熱等に使用することのみならず、周知技術1にように減圧されたエアが吐出ヘッドに供給され、流体の噴霧に使用することも通常行われており、また、引用文献記載の発明の実施形態のような点塗布のみならず、周知技術2のようなスプレー塗布も通常行われており、さらに、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2は、共に接着剤等の流体を塗布する吐出装置という技術分野において共通するので、引用文献記載の発明において、周知技術1及び2を適用して、上記相違点に係る本願補正発明における発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願補正発明が、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2からは予想しえない格別の効果を奏するものとも認められない。

・周知例1(特開2000-197835号公報)
「【0032】また、接着剤流路26を形成する内筒33と、内筒33の周囲に間隙を介して配設された外筒34との間には、霧化用空気供給管22に連通する霧化用空気流路35が形成されている。霧化用空気流路35は、接着剤流路26に沿うように先端側が漏斗状に形成されており、噴出口26aの周囲に霧化用空気流路35の吹出口35aが位置している。この吹出口35aから噴出する空気は、液状の接着剤Sを噴出孔26a外に吸出すと同時に接着剤Sを霧状に微粒化する。つまり、作動用空気及び霧化用空気がともに供給されることにより、霧状の接着剤Sが噴出孔26aから噴霧される。なお、噴霧された接着剤Sは、噴出孔26aから遠ざかるほど噴霧面積が大きくなるように、徐々に広がっていく。
・・・
【0034】スプレーガン12へ空気を供給するエアー供給機構13は、図5に示すように、電磁弁38と、空気作動弁39と、レギュレータ40と、圧力計41と、前述した霧化用空気供給管22、遮蔽用空気供給管24、及び作動用空気供給管25とを備えている。具体的には、作動用空気供給管25には、第1電磁弁42が介在し、第1電磁弁42の開弁動作によりスプレーガン12へ作動用空気を供給する。・・・また、霧化用空気供給管22には、第2レギュレータ47、第2圧力計48、及び第2空気作動弁49が上流側より順に配設されており、第2空気作動弁49に第3電磁弁50が接続されている。第3電磁弁50の開弁動作により、第2空気作動弁49が開弁し、第2レギュレータ47で所定の空気圧に調圧された霧化用空気をスプレーガン12へ供給する。
【0035】スプレーガン12へ液状の接着剤Sを供給する接着剤供給機構14は、圧送用空気供給管51、第3レギュレータ52、第3圧力計53、圧送タンク54、及び接着剤供給管23から構成されている。圧送タンク54には、液状の接着剤Sが収容されており、また第3レギュレータ52を介して圧送用空気供給管51から所定の空気圧に調圧された圧縮空気が供給されているため、圧送タンク54内の圧力は大気圧より高い圧力となっている。・・・なお、電磁弁38やレギュレータ40の上流側には、コンプレッサ及びエアーフィルタ(いずれも図示しない)が配設されており、このコンプレッサにより圧縮空気が供給される。」

・周知例2(特開平11-319674号公報)
「【0006】
【実施の態様】ノズル装置Aを図1ないし図10を参照して説明する。ノズル装置Aは、ノズルベース1と円錐台2とノズル突起3とより構成されている。ノズルベース1は、中心に接着剤孔11と、該接着剤孔11に対し同心配置した複数個の加圧空気孔12が形成されている。前記複数個の加圧空気孔12は、ノズルベース1に傾斜角αでかつ回転角(偏心角)βで形成されている。・・・
【0011】本発明は、接着剤スプレー塗布に際しては、複数個の加圧空気孔よりの加圧空気流は加圧空気孔が偏心していることで旋回流となって円錐状突起に沿って旋回流下し、ノズルの接着剤孔より吐出された糸状溶融接着剤ビートに作用して、螺旋状の接着剤ファイバーが形成される。この際、加圧空気流は、円錐状突起の接着剤露出面で流下中の溶融接着剤に接触して、溶融接着剤に延伸作用を与える。その結果、螺旋状の接着剤ファイバーを高速に旋回させる。円錐状突起に沿って旋回流下する加圧空気流が加圧空気流接触面に接触することで、加圧空気流の旋回方向を偏向させることで、旋回加圧空気流を断面楕円形となし、接着剤ファイバーの螺旋状スプレーパターンを断面楕円形とする。かくして、接着剤は細い糸状となりながら高速に旋回して本質的に楕円状に堆積する。従って被塗布物を低速で移動させても塗布幅の両端部と中央部との塗布量に差が著しく小さくなる。また、従来のノズルと比較して接着剤が延伸し易くなるためより高速で旋回させることが可能となる。更に、接着剤の粘度と旋回延伸のための気体の圧力を整えるとノズル先端で接着剤が2つに分流し、より細い糸状となって楕円状に旋回する。従って被塗布物を高速で移動してもきめの細かい塗布が可能となる。」

・周知例3(特開2000-70818号公報)
「【0015】図1の実施例では、加熱金属母体1の加熱とホットエヤーの発生とを同時に行い。図2の実施例では、本発明によるホットエヤーの発生に加えて、加熱金属母体1を単独加熱するヒーター13および温度センサー14が別に設けら、いづれもホットメルト接着剤スプレー塗布装置のノズルユニットBへ加熱溶融ホットメルト接着剤Hおよび加熱加圧エヤーPを供給している。加熱溶融材(加熱溶融ホットメルト接着剤)の溶融温度を管理するとともに、焼結金属多孔エレメントを通過する流体(加圧エヤー)の温度を管理を行うものである。
【0016】ノズルユニットBは、公知のホットメルト接着剤スプレー塗布装置におけるノズルユニットと同様の構造であり、ノズルヘッド21、ホットメルト供給弁22、弁操作機構23より構成し、ノズルヘッド21はホットメルト供給孔24を中心として複数個の加圧空気孔25によりノズルヘッド21の先端より加熱溶融ホットメルト接着剤Hと加熱加圧エヤーPを吐出させ螺旋状スプレー塗布するものであり、ホットメルト供給孔24と加熱溶融材通路(加熱溶融ホットメルト接着剤通路)11とを連通するホットメルト接着剤通路26、および加圧空気孔25と加圧空気供給路10とを連通する加圧空気通路27が形成されている。」

・周知例4(特開2005-28204号公報)
「【0031】
図2に示しているように、スプレーノズル14はガン本体12から外パイプ18及び中パイプ20を延び出させて構成してあり、その先端にプロテクタ22が装着されている。
ここでプロテクタ22は、その先端において周方向3箇所で爪24が内向きに突き出しており、それら爪24によって中パイプ20を把持する状態に取り付けられている。
【0032】
スプレーノズル14において、中パイプ20はその内部に接着剤を供給する液剤通路26を形成しており、また外パイプ18はその内部且つ中パイプ20周りに、霧化エアを供給する主エア通路28を形成している。
これら液剤通路26及び主エア通路28の先端は、それぞれ液剤噴出口30及び霧化エア噴出口32とされている。」

2-3 むすび
したがって、本願補正発明は、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記<補正の却下の決定の結論>のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成25年12月24日付け手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 <理由>1(1)」のとおりである。

2 引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用した本願の出願前に日本国内において、頒布された特開2002-239433号公報(以下、上記「第2<理由>2 2-2(1)と同様に「引用文献」という。)には、上記「第2<理由>2 2-2(1)」の通りの記載があり、該記載及び図面から、上記「第2<理由>2 2-2(2)」のとおりのことが分かる。
そして、引用文献には、上記「第2<理由>2 2-2(3)」のとおりの発明(以下、上記「第2<理由>2 2-2(3)と同様に「引用文献記載の発明」という。)が記載されていると認める。

3 対比・判断
上記「第2<理由>2 2-1」で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が、上記「第2<理由>2 2-2(2)及び(3)」のとおり、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-27 
結審通知日 2015-03-03 
審決日 2015-03-16 
出願番号 特願2010-12208(P2010-12208)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05C)
P 1 8・ 575- Z (B05C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大谷 光司石川 太郎  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 林 茂樹
金澤 俊郎
発明の名称 液体定量吐出装置の液体吐出構造  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ