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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1300497
審判番号 不服2014-5225  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-19 
確定日 2015-05-07 
事件の表示 特願2010-522859「軸受、及び該軸受の取り扱い方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月 5日国際公開、WO2009/029018、平成22年12月 9日国内公表、特表2010-538217〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年8月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2007年8月31日、スウェーデン)を国際出願日とする出願であって、平成25年1月28日付けの拒絶理由通知に対して、同年5月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月20日付け(発送日:同年11月26日)で拒絶査定がされ、これに対して、平成26年3月19日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年5月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
外輪(6)と転がり要素(5)と二分割式内輪(A)とを備えている軸受(4)であって、
前記二分割式内輪(A)が、
ラジアル方向外面(11)と内部ボア(12)とを有している第1の部分(1)であって、前記ラジアル方向外面(11)が、相違する直径を有していると共にアキシアル方向に離隔されている少なくとも2つの部分を有している前記第1の部分(1)と、
ラジアル方向内面(21)と前記転がり要素のための少なくとも1つの軌道(22)とを有している第2の部分(2)であって、前記少なくとも1つの軌道(22)が、外面に配置されており、前記ラジアル方向内面(21)が、相違する直径を有していると共にアキシアル方向に離隔されている少なくとも2つの部分を有している前記第2の部分(2)と、
前記ラジアル方向内面(21)に適合している前記ラジアル方向外面(11)と、
利用時に前記第1の部分(1)と前記第2の部分(2)との間において圧力チャンバとして機能し、前記外輪(6)のアキシアル方向の幅(B)内に配置されているキャビティ(3)であって、少なくとも部分的に周方向に延在している前記キャビティ(3)と、
を備えている前記軸受(4)において、
前記キャビティ(3)が、前記第1の部分(1)に形成された第1の表面(13)と、前記第2の部分(2)に形成された第2の表面とから成り、
前記第1の表面(13)の法線ベクトルと前記第2の表面(23)の法線ベクトルとが、アキシアル方向のベクトル成分を有しており、これにより前記キャビティ(3)を加圧した場合に、前記第1の部分(1)と前記第2の部分(2)とがアキシアル方向において相対運動するようになっており、
前記第1の部分(1)の外径と前記第2の部分(2)の内径とのうち少なくとも1つの径が、前記キャビティ(3)から前記軸受(4)の挿入方向に向かって大きくなっており、
前記軸受(4)が、
前記第1の部分(1)と前記第2の部分(2)との間に、且つ、前記外輪(6)のアキシアル方向における幅(B)内に配置されているリング状要素(9)であって、前記第1の部分と前記第2の部分とのうち少なくとも1つの部分のアキシアル方向の端部に配設されている前記リング状要素(9)と、
前記キャビティ(3)の表面を形成している前記リング状要素(9)のアキシアル方向内側と、
を備えていることを特徴とする軸受(4)。」

第3 刊行物に記載された事項
1.原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された実公昭50-14071号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「流体圧作動接手単位体」に関し、図面(特に、第2、3図参照)とともに、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与するものである。

ア.第1頁第2欄第18行?第2頁第3欄第23行
「第1図に示す実施例は外部環状部材10を有する。この環状部材10は、内部部材12と共に、軸に取付けられるようになつている。部材10、12は接手単位体を形成する。部材12の外面および部材10の内面は僅かに円錐形であり、接触面13を形成する。圧力流体は外部部材に設けられた通路14でもって接触面へ供給される。接触面一面にある圧力流体を分布する溝は外部部材に配置される。内部部材の一つの端面には凹み部分Bが形成される。この凹み部分は、外部部材の並置面と共に、作用室を形成する。環状覆16は、外部部材にねじつけられ、内部部材に接する面に密封リング22を有する。内部部材に接する前記面では摺動運動が起る。室18への圧力流体を供給する通路20は外部部材に設けられ、但し通路14から離れている。
圧力流体が通路14から接触面へ供給されると内部部材12は、通路20から供給される圧力流体でもつて左方へ動かされ得る。このようにして半径方向に作用する可なりの力が外部部材と軸との間に生ずる。
単位体を取はずしたいときには、圧力流体は通路14から再び供給される。単位体内の半径方向の力は、円錐面の作用で、内部部材を右方へ自動的に押す。この運動を調節するために、制限弁はなるべく通路20に設けられる。
第2図による実施例は本質的には第1図と同じ設計である。しかしながら、室18は外部部材10に、供給通路20は覆16に形成されている。覆16は、前の実施例のように、内部部材と外部部材との間に取付けられる。接触面への供給通路は、図面に示されていないが、覆16から遠い方の内部部材の端になるべく配置される。
第3図による実施例は、第2図と同じ考えで設計されている。この場合、室18は内部部材12に形成され、接触面13および室18への供給通路は両方共内部部材12になるべく形成され、共通供給源23に連結される。しかしながらこれは通路は別々の通路に設計され、他の一つは(図示されていない)通路20に平行である。
この考案による単位体は異る種類の機械成分例えばベルトプーリ、スプロケツト車、歯車、軸受等を軸またはケーシングに取付けるために用いられ得る。」

イ.実用新案登録請求の範囲
「内部部材12および外部環状部材10が、僅かに円錐形になつている接触面13に沿つて互に作用しあい、取付けおよび取はずし中軸方向への移動を容易にするため、内部部材および外部環状部材が、圧力液体を接触面に供給することによつて無理に押し離されるようになつている流体圧作動接手単位体において、接触面に対して凹んでいる環状室18が、内部部材12または外部環状部材10の何れかに形成され、環状室18の周囲壁が前記の内部部材および外部環状部材で形成され、環状覆部材16を取付けて前記の環状室を閉じることによつて、前記の環状室へ圧力流体を供給する通路20が、前記の環状室に面する部分の何れかに形成されることを特徴とする流体作動接手単位体。」

ウ.図面の簡単な説明
第1図は、スリーブを軸に取付けるために利用されるこの考案による流体作動接手単位体の断面図である。第2、3図は、軸受の取付けに利用される、部材を軸方向に動かすための設計を示す。


上記記載事項ア?ウから次の事項が理解できる。
エ.第3図は軸受の取付けに利用される例であり、その軸受は図示のとおり外輪と2つの転がり要素と内輪とを有し、内部部材12及び外部環状部材10が軸受の内輪を構成し、内部部材12の内面に軸が取り付けられ、上記外部環状部材10の外面に2つの転がり要素の軌道面が形成されるものである。

オ.第2、3図は、共に同じ考えで設計された実施態様であるから、第2図から上記エの認定事項と同様の軸受を把握できる。

カ.上記認定事項オの軸受において、内部部材12の外面は、僅かに円錐形になっているから、相違する直径を有しているといえ、また、内部部材12はねじつけにより一体化された環状覆部材16を備えており、内部部材12の外面と環状覆部材16の外面はアキシアル方向に離隔されているといえる。

キ.同じく、外部環状部材10の内面は、僅かに円錐形になっているから、相違する直径を有しているといえ、また、外部環状部材10の内面はアキシアル方向に離隔されている部分を有しており、さらに、外部環状部材10は外面に転がり要素のための軌道を有しているといえる。

ク.上記軸受には、内部部材12と外部環状部材10との間に周囲壁が内部部材12及び外部環状部材10で形成され、かつ、外輪のアキシアル方向の幅外に配置された環状室18が設けられている。

ケ.上記環状室18は、内部部材12にねじつけられた環状覆部材16のラジアル方向の面と、外部環状部材10に形成されたラジアル方向の面を有しており、内部部材12にねじつけられた環状覆部材16のラジアル方向の面の法線ベクトルと外部環状部材10に形成されたラジアル方向の面の法線ベクトルとが、アキシアル方向のベクトル成分を有しているといえ、環状室18に圧力流体が供給されると内部部材12と外部環状部材10とがアキシアル方向に相対運動するようになっている。

コ.上記軸受は、内部部材12の外径と外部環状部材10の内径が、環状室18から離れる方向に向かって大きくなっている。

サ.外輪のアキシアル方向の幅外に配置されている環状覆部材16は、内部部材12のアキシアル方向の端部に取付けられており、環状覆部材16のアキシアル方向内側面が環状室18の表面を形成している。

これら記載事項、図示内容及び上記認定事項を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「外輪と2つの転がり要素と内部部材12及び外部環状部材10からなる内輪を備えている軸受であって、
内部部材12及び外部環状部材10からなる内輪は、
外部環状部材10との接触面13を形成する外面と軸が取り付けられる内面を有している内部部材12であって、前記接触面13を形成する内部部材12の外面は、相違する直径を有していると共に内部部材の外面と内部部材12にねじつけにより一体化された環状覆部材16の外面はアキシアル方向に離隔されている前記内部部材12と、
前記接触面13を形成する内面と前記2つの転がり要素のための軌道を有している前記外部環状部材10であって、前記軌道が、外面に配置されており、前記接触面13を形成する外部環状部材10の内面は、相違する直径を有していると共にアキシアル方向に離隔されている部分を有している前記外部環状部材10とからなり、
前記内部部材12と前記外部環状部材10との間に周囲壁が前記内部部材及び前記外部環状部材で形成され、かつ、前記外輪のアキシアル方向の幅外に配置された圧力流体が供給される環状室18が設けられた、
軸受において、
前記環状室18が、前記内部部材12にねじつけられた前記環状覆部材16のラジアル方向の面と、前記外部環状部材10に形成されたラジアル方向の面を有しており、
前記内部部材12にねじつけられた前記環状覆部材16のラジアル方向の面の法線ベクトルと前記外部環状部材10に形成されたラジアル方向の面の法線ベクトルとが、アキシアル方向のベクトル成分を有し、環状室18に圧力流体が供給されると内部部材12と外部環状部材10とがアキシアル方向に相対運動するようになっており、
前記内部部材12の外径と前記外部環状部材10の内径が、アキシアル方向において前記環状室18から離れる方向に向かって大きくなっており、
前記軸受が、
前記内部部材12と前記外部環状部材10との間に、かつ、外輪のアキシアル方向の幅外に配置されている環状覆部材16であって、前記内部部材12のアキシアル方向の端部に取付けられる環状覆部材16を備え、
前記環状覆部材16のアキシアル方向内側面が環状室18の表面を形成している、
軸受。」

2.同じく引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された特公昭57-59448号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「船のボスから取外しできるプロペラ軸のためのころ軸受の支持装置」に関し、図面(特に、第2図参照)とともに、次の事項が記載されている。

シ.第2頁第3欄第29行?第3頁第5欄第24行
「図面において4はプロペラの軸を示し、プロペラのハブは5で示される。軸4はころ軸受6で支持され、その内方リング7は取付スリーブ8によつて軸に固定される。軸受の外方リング9は内方締付スリーブ10bにはまり、この内方締付スリーブ10bは外方締付スリーブ10aと共にブツシユ10を形成する。このブツシユはボス13の座12の中に配置される。両締付スリーブ10a,10bは僅かに先細になつた互に接触係合する面を有する。1つの方向の相対的軸線方向運動でこれらスリーブは弾性的に変形し、その際に外方スリーブは半径方向に押し広げられてその外径が増大しかつ内方スリーブは半径方向に絞られてその内径が減小する。外方締付スリーブ10aの半径方向厚さは内方締付スリーブ10bの半径方向厚さよりもかなり小さく、これは内方締付スリーブが外方締付スリーブより剛く形成されていることを意味する。このような構成のブツシユの作用および技術的利点については、軸受支持装置の取付けおよび分解について説明するときに詳細に説明する。
もちろん軸受は水および異物から保護されなければならず同時に潤滑剤この場合には油は軸受内に保持されなければならない。これらの理由で軸受はプロペラ側ではシール11によつて反対側ではシール14によって密閉されなければならない。シール11および14は第1図には略示される。
シールおよび軸受を検査しまたは交換するときに船を乾ドツクに入れる必要がなく船が浮んでいるときにこれら作業ができるということは経済的に非常に重要である。この目的のため軸受支持装置はラビリンス15からなる静止密閉装置を備え、ラビリンスを形成する部分16,17はプロペラハブ5およびボス13またはそれらに連結された構成要素にそれぞれ設けられる。静止シール18はラビリンスの非回転部分すなわちボス部分に配備される。一般にシールは膨脹できる1つまたはいくつかの管からなり、これは膨脹によつてラビリンスの1つの間隙を満してこれを静的に密閉することができる。更にラビリンス構成要素16および17は作動状態で互に接触しない隣接する環状支持面19および20をそれぞれ有する。これら支持面の作用については軸受支持装置の分解について説明するときに一緒に説明する。
第2図はブツシユ10の設計および作用を詳しく示す。この図において21はリングフランジを示し、これは2つの部分21a,21bからなりかつ外方締付スリーブ10aに連結される。リングフランジ21は密閉された2つの環状圧力室すなわち内方圧力室22と外方圧力室23を互に分離し、これら圧力室にダクト24,25がそれぞれ通じる。一方のダクト24は内方締付スリーブ10bの中に配置され他方のダクト25はこのスリーブ10bの近くに配置される。これらダクトを介して圧力室は流体圧力源例えば加圧油源に連結される。外方締付スリーブ10aはボルト27によつてボス13に固定できるフランジ26に連結される。1つのダクトは両締付スリーブの先細面へ加圧油を送る。圧力室22内に存するかも知れない圧力を低下できるようにしかつ圧力室22内に収容される液圧媒体を排出すると同時に液圧をダクト25に加え同時に圧力室23にも加えると、始めには応力を受けていない締付スリーブ10aおよび10bは相対移動し、その際に外方締付スリーブ10aは内方締付スリーブ10bによつて押し広げられて膨張しかつ内方締付スリーブ10bは外方締付スリーブ10aによって絞られて収縮する。圧力室23内の圧力を低減すると同時に圧力をダクト32に加え同時に圧力室22にも加えると反対の現象が起る。すなわち外方締付スリーブ10aが内方締付スリーブ10bから離れる方向に摺動して応力を受けない状態になる。リングフランジ21は2つの環状部分21aおよび21bからなり、環状部分21aは外方締付スリーブに直接連結され環状部分21bはフランジ26に直接連結される。O-リングがリングフランジ21aと21bとの間のシールとして作用する。外方締付スリーブをフランジ26にしつかりと固定しないことによつて得られる利点はフランジが締付スリーブの膨張と共に動かずこれによつてO-リングシール33および34を通る漏洩が消去できることにある。外方締付スリーブは所望の位置へ動いたときに固定ねじ35によって適所に固定される。」

ス.


第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1.引用発明の「外輪」、「2つの転がり要素」、「内部部材12及び外部環状部材10からなる内輪」及び「軸受」は、その機能、構造からみて、本願発明の「外輪(6)」、「転がり要素(5)」、「二分割式内輪(A)」及び「軸受(4)」に、それぞれ相当する。

2.引用発明の「内部部材12」と「環状蓋部材16」はねじつけにより一体化されているので、それらをあわせた部材は、「外部環状部材10との接触面13を形成する外面」と「軸が取り付けられる内面」を有しており、かつ、「接触面13を形成する内部部材12の外面は、相違する直径を有していると共に内部部材12の外面と内部部材12にねじつけにより一体化された環状蓋部材16の外面はアキシアル方向に離隔されている」から、本願発明の「ラジアル方向外面(11)と内部ボア(12)とを有している第1の部分(1)であって、前記ラジアル方向外面(11)が、相違する直径を有していると共にアキシアル方向に離隔されている少なくとも2つの部分を有している」「第1の部分(1)」に相当する。

3.引用発明の「外部環状部材10」は、「接触面13を形成する内面」と「2つの転がり要素のための軌道」を有しており、「軌道が、外面に配置されており」、外部環状部材10の内面は「相違する直径を有していると共にアキシアル方向に離隔されている部分を有している」から、本願発明の「ラジアル方向内面(21)と前記転がり要素のための少なくとも1つの軌道(22)が、外面に配置されており、前記ラジアル方向内面(21)が、相違する直径を有していると共にアキシアル方向に離隔されている少なくとも2つの部分を有している」「第2の部分(2)」に相当する。

4.引用発明において、内部部材12の外面と外部環状部材10の内面は接触面13を形成するから、引用発明は、本願発明の「ラジアル方向内面(21)に適合している前記ラジアル方向外面(11)」との構成を有している。

5.引用発明の「環状室18」は、「前記内部部材12と前記外部環状部材10との間に周囲壁が前記内部部材12及び前記外部環状部材10で形成され」、「圧力流体が供給される」るものであり、環状室18に圧力流体が供給される時、すなわち、環状室18の利用時、環状室18は圧力チャンバとして機能すると認められるから、本願発明の「利用時に前記第1の部分(1)と前記第2の部分(2)との間において圧力チャンバとして機能し」、「少なくとも部分的に周方向に延在している」「キャビティ(3)」という限りで「キャビティ(3)」に相当する。

6.また、引用発明の「環状室18」が、「前記内部部材12にねじつけられた前記環状蓋部材16のラジアル方向の面と、前記外部環状部材10に形成されたラジアル方向の面を有しており、内部部材12にねじつけられた前記環状蓋部材16のラジアル方向の面の法線ベクトルと外部環状部材10に形成されたラジアル方向の面の法線ベクトルとが、アキシアル方向のベクトル成分を有し、環状室18に圧力流体が供給されると内部部材12と外部環状部材10とがアキシアル方向に相対運動するようになって」いることは、本願発明の「キャビティ(3)」が、「前記第1の部分(1)に形成された第1の表面(13)と、前記第2の部分(2)に形成された第2の表面とから成り、前記第1の表面(13)の法線ベクトルと前記第2の表面(23)の法線ベクトルとが、アキシアル方向のベクトル成分を有しており、これにより前記キャビティ(3)を加圧した場合に、前記第1の部分(1)と前記第2の部分(2)とがアキシアル方向において相対運動するようになって」いることに相当する。

7.引用発明の「前記内部部材12の外径と前記外部環状部材10の内径が、アキシアル方向において前記環状室18から離れる方向に向かって大きくなって」いることは、本願発明の「前記第1の部分(1)の外径と前記第2の部分の内径とのうち少なくとも1つの径が、前記キャビティ(3)から前記軸受(4)の挿入方向に向かって大きくなって」いることに相当する。

8.そして、引用発明の「環状覆部材16」は、「内部部材12と外部環状部材10との間に、かつ、内部部材12のアキシアル方向の端部に取付けられる」ものであるから、本願発明の「前記第1の部分(1)と前記第2の部分(2)との間に」「配置されているリング状要素(9)であって、前記第1の部分と前記第2の部分とのうち少なくとも1つの部分のアキシアル方向の端部に配設されている」「リング状要素」という限りで「リング状要素」に相当する。

9.また、引用発明の「環状覆部材16のアキシアル方向内側が環状室18の表面を形成している」ことは、本願発明の「キャビティ(3)の表面を形成している前記リング状要素(9)のアキシアル方向内側と、を備えている」ことに相当する。

以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「外輪と転がり要素と二分割式内輪とを備えている軸受であって、
前記二分割式内輪が、
ラジアル方向外面と内部ボアとを有している第1の部分であって、前記ラジアル方向外面が、相違する直径を有していると共にアキシアル方向に離隔されている少なくとも2つの部分を有している前記第1の部分と、
ラジアル方向内面と前記転がり要素のための少なくとも1つの軌道とを有している第2の部分であって、前記少なくとも1つの軌道が、外面に配置されており、前記ラジアル方向内面が、相違する直径を有していると共にアキシアル方向に離隔されている少なくとも2つの部分を有している前記第2の部分と、
前記ラジアル方向内面に適合している前記ラジアル方向外面と、
利用時に前記第1の部分と前記第2の部分との間において圧力チャンバとして機能し、少なくとも部分的に周方向に延在している前記キャビティと、
を備えている前記軸受において、
前記キャビティが、前記第1の部分に形成された第1の表面と、前記第2の部分に形成された第2の表面とから成り、
前記第1の表面の法線ベクトルと前記第2の表面の法線ベクトルとが、アキシアル方向のベクトル成分を有しており、これにより前記キャビティを加圧した場合に、前記第1の部分と前記第2の部分とがアキシアル方向において相対運動するようになっており、
前記第1の部分の外径と前記第2の部分の内径とのうち少なくとも1つの径が、前記キャビティから前記軸受の挿入方向に向かって大きくなっており、
前記軸受が、
前記第1の部分と前記第2の部分との間に配置されているリング状要素であって、前記第1の部分と前記第2の部分とのうち少なくとも1つの部分のアキシアル方向の端部に配設されている前記リング状要素と、
前記キャビティの表面を形成している前記リング状要素のアキシアル方向内側と、
を備えている軸受。」
である点で一致し、

次の点で相違する。
[相違点]
キャビティ及びリング状要素について、本願発明では、外輪(6)のアキシアル方向の幅(B)内に配置されているのに対して、引用発明では、外輪のアキシアル方向の幅外に配置されている点。

第5 判断

1.上記相違点について検討する。
(1)刊行物2には、上記記載事項シから、内方圧力室22(引用発明における「環状室18」に相当する。)が軸受の外方リング9(引用発明における「外輪」に相当する。)のアキシアル方向の幅内に配置されていることが記載されている。
また、刊行物2には、上記記載事項シ及びスから、環状部分21aの一部が内方圧力室22と環状部分21bに挟まれていること(以下、この挟まれた環状部分21aの一部を「挟まれた環状部分」という。)が記載されている。
当該挟まれた環状部分は、内方圧力室22に液圧が加わったとき、締付スリーブ10aおよび10bを相対移動させる機能、構造を有すると解されるところ、挟まれた環状部分と内方圧力室22の関係は、その機能、構造からみて、引用発明における環状室18と環状覆部材16の関係に相当する。
そうすると、刊行物2には、引用発明における環状室18と環状覆部材16の関係に相当する構成が、軸受の外方リング9のアキシアル方向の幅内に配置されていることが記載されていると解される。

(2)上記(1)のように、引用発明における環状室18と環状覆部材16の関係に相当する構成を、外輪のアキシアル方向の幅内に配置する例もある上に、軸受に限らず、装置の小型化を図ることは周知の課題であるから、引用発明において、環状室18及び環状覆部材16を外輪のアキシアル方向の幅内に配置してアキシアル方向において小型化することは、当業者が普通に採用する設計事項にとどまる。
しかも、刊行物1の第2図において、環状室18及び環状覆部材16を外輪のアキシアル方向の幅内に配置するスペースがあることは優に認められる。
してみれば、軸受の小型化を図るために、引用発明において、外輪のアキシアル方向の幅外に配置されている環状室18及び環状覆部材16を外輪のアキシアル方向の幅内に配置する程度のことは、当業者が普通に採用する設計事項であって、当業者が容易に想到し得たことである。

2.作用効果について
そして、本願発明による効果も、引用発明及び刊行物2記載の技術事項から当業者が予測し得た程度のものである。

3.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-21 
結審通知日 2014-11-25 
審決日 2014-12-11 
出願番号 特願2010-522859(P2010-522859)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 小柳 健悟
中川 隆司
発明の名称 軸受、及び該軸受の取り扱い方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

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