• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F03G
管理番号 1300858
審判番号 不服2014-1373  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-07 
確定日 2015-05-15 
事件の表示 特願2012-289397「気圧のエネルギーと液体の比重を利用し眞空を作り、動力エネルギーを発生させる眞空発電装置。」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日出願公開、特開2014-114797〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年12月10日の出願であって、平成25年5月10日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成25年7月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年10月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成26年1月7日に拒絶査定に対する審判請求がされた後、平成26年3月19日に審判請求書の請求の理由を変更する手続補正書(方式)が提出されたものである。
そして、本願は、当審において平成26年8月21日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成26年11月27日に上申書が提出され、平成26年12月12日に意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年7月31日に提出された手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
気圧のエネルギーと液体の比重を利用して真空を発生させ、真空領域となる真空室を回転させて断続的に大気圧のエネルギーを電気エネルギーに転換させる発電装置において、試験管(1)内の分岐点部に空気室を設け、前記空気室内には感知センサーを設け、前記感知センサーの信号によりモーター13が動作し、物体10を上下運動させることで、液体面が分岐点の高さに保たれることを特徴とする真空発電装置。」

3.平成26年8月21日付けで通知した拒絶理由の内容
当審が平成26年8月21日付けで通知した拒絶理由のうち、理由3の内容は、次のとおりである。

「<理由3>
本願は、明細書の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が、次の点で不備であるから、本件出願は特許法第36条第4項第1号及び同第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)「空気室」に関し、どのような構造を有するのか、どのようにして「空気室の気圧を一定に保つ」(段落【0022】)のか不明である。具体的には、図10において、空気室11が、眞空の発生する分岐点3とほぼ同じ高さに位置していると看取されるところ、空気室内の空気圧は極端に小さくなって、極限まで膨張すると考えられるが、どのようにして空気室の気圧を一定に保つのか?

…(中略)…

(3)水槽5内の液体6の上面に作用する気圧を、試験管1内の液体に伝えるためには、ピストン8が自由に上下動する必要があると考えるが、試験管1に対するピストン8の摺動抵抗、及びクランク9がピストン8に及ぼす荷重が、どの程度であるか不明である。

このため、本願の請求項1に係る発明は明確でなく、さらに、本願の明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 」

4.平成26年12月12日提出の意見書における主張
当審が平成26年8月21日付けで通知した拒絶理由の理由3に対して、平成26年12月12日提出の意見書における請求人の主張は、次のとおりである。
「(3)拒絶理由3は、明細書の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が(空気室)不備で要件を満たしていない。
上記については前回の特願2010-167555の拒絶理由通知書(発送番号056208・審判請求の番号、不服2011-20461)の記〔1〕-2により、仮に真空が断続的に発生したとしても、大気圧は常に変動し、一定でないため「真空となる管2」内に真空4が断続的に発生し得ない可能性があるとの御指摘を受けました。本案の心臓部である真空4が断続的に発生しなければ、本案の発明の意味がない。
ついては、大気圧に変動があっても、大気圧が液体と真空とに分れる分岐点3が常に一定の位置に保たなければならない。
したがって、今回、新たに空気室を設け、空気室の気圧の変化をセンサーが察知し、錘10により常に分岐点の位置は変わらない様、液体の水位を上下させ、新たに特許申請を申し上げた次第であります。
<空気室の機能>
(1)空気室は、真空が発生する基本となる高さに設置し、場所は図10のように液体の入っている番号6より枝分かれのような空気室を取り付ける。
(2)枝分かれした空気室の上部には空気を入れ、下部は番号6の液体が入っている。
(3)大気圧の外気が弱くなると、空気室の空気はうすくなり、空気室のセンサーによって、番号13のモーターに伝導し、番号10の錘が働き、錘が下がると液体全体が上昇し、真空を作る基準点まで押し上げる。真空となる高さを一定に保つ。逆に大気圧が強ければ、錘が上がり液体全体が下がる。
(4)いかにして、断続的に真空を発生させ回転させることが肝要である。
以上の通り意見書を提出いたしましたので、よろしくご検討下さいますようお願い申し上げます。
※真空を利用し、大気圧のエネルギーを産業上に利用しているものが見受けられる。
その1つとして「米袋用カンタンハンド」があり、30kgの米俵を軽がると持ち上げ1日何万袋も移動させている。
この構造は、原理は本案で同じで、空気を抜いて真空にし、真空を直接、米紙袋にあて、大気圧の力を利用して持ち上げている。
又、福島産米は原発事故による放射線の検査を全袋行っており「米袋用カンタンハンド」は大いに社会に貢献している。」

5.平成26年8月21日付けで通知した拒絶理由の理由3についての検討
平成26年12月12日提出の意見書の内容を検討しても、「空気室」が、どのような構造を有するのか、どのようにして「空気室の気圧を一定に保つ」のかが、不明である。
すなわち、上記意見書には、「空気室は、真空が発生する基本となる高さに設置し」と記載されているが、図10において、試験管1の上部に真空4が発生しているということは、真空4が発生している位置とほぼ同じ高さに位置する空気室11の中の空気は、極めて低い気圧となり、極限まで膨張することにより、空気室内に空気を維持することは困難であると考えられる。その状態において、どのようにして空気室の気圧を一定に保つのかが不明であるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ充分に記載したものであるとはいえない。

また、図11において、水槽5内の液体6の上面に作用する気圧が、試験管1内の液体に伝わるためには、ピストン8上方の試験管1開口部における圧力が、ピストン8下方の試験管1内の圧力と一致する必要があるから、ピストン8が自由に上下動する必要があると考えられる。しかし、その一方で、試験管1内に封入された液体が漏れないように、ピストン8と試験管1の内壁を摺接させる場合には、試験管1とピストン8の摺動抵抗は無視できない程度に大きいものになると考えられる。さらに、発電機を回すためにクランク9にかかる荷重は、ピストン8の上記自由な上下動を制約することになる。
そして、上記摺動抵抗と上記荷重に関わらず、どのようにしてピストン8の上記自由な上下動を可能とするかが不明であるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ充分に記載したものであるとはいえない。

6.むすび
上記のとおり、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-30 
結審通知日 2015-02-24 
審決日 2015-03-10 
出願番号 特願2012-289397(P2012-289397)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (F03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安井 寿儀  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 藤原 直欣
中村 達之
発明の名称 気圧のエネルギーと液体の比重を利用し眞空を作り、動力エネルギーを発生させる眞空発電装置。  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ