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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1300862
審判番号 不服2014-8576  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-08 
確定日 2015-05-15 
事件の表示 特願2008-150469号「ペット用冷暖房装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日出願公開、特開2009-291165号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年6月9日の出願であって、平成26年3月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
平成26年1月28日受付けの手続補正は同年3月17日に却下されているので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成25年5月20日受付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるところ、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「ペットの巣箱や飼育ケースの底面全体あるいは一部に当接させ、該当接された床面を熱伝導で熱を伝導させることができる、あるいはペットの犬や猫がねそべることができる熱伝導板と、この熱伝導板に吸熱側を取り付けたペルチェ素子と、このペルチェ素子の放熱側に取り付けたファンを用いない放熱板と、前記ペルチェ素子の駆動装置とからなることを特徴とするペット用冷暖房装置。」

第3 引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平7-322785号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】省略。
【請求項2】側部または底部に吸気口と排気口を備えた筐体と、当該筐体に収納して、上記吸気口の空気と熱交換して上記排気口へ排気する、冷却できる手段と加温できる手段を備えた装置と、上記筐体の上面部に設けてほぼ水平方向に保持した熱伝導体のマットと、当該マットと上記装置を熱伝導部材で接続した温度調節ができる動物用マット。
【請求項3】乃至【請求項7】省略。
【請求項8】請求項1?7の温度調節ができる動物用マットにおいて、冷却できる手段と加温できる手段を備えた装置に、熱電変換素子を用いた温度調節ができる動物用マット。
【請求項9】請求項1?7の温度調節ができる動物用マットにおいて、冷却できる手段と加温できる手段を備えた装置に、熱電変換素子と、当該熱電変換素子と熱伝導接続する放熱フィンと、当該放熱フィンと熱交換する空気流を生成する冷却ファンを用いた温度調節ができる動物用マット。
【請求項10】乃至【請求項17】省略。
【請求項18】請求項1?17の温度調節ができる動物用マットにおいて、1または複数箇所の開口部を備え、マットの上面部を床の要所として、マットの上部に配置するカプセルをさらに備えた温度調節ができる動物用マット。
【請求項19】省略。」

(2)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】温度調節ができる動物用マットに関し、軽量で小型な外形とし、家屋内で手軽に取り扱えるように箱形状に制約されない構成と、冷却の反作用として発生する排熱が、マット面の冷却効果を損なうことのない構造と、ペット等の習性に対してより快適な居住性を与える温度調節ができる動物用マットを提供する。」

(3)「【0007】
【実施例】図を用いて実施例を説明する。 図1は外観例で、1はプラスチックで成形した筐体、2はマットで熱伝導率の高いアルミ材平板を用いている。3は断熱部、4は障壁部で共にコルク等で構成している。障壁部4は、本動物用マットへ接近中のペット等に対しては障壁となるが、マット2面上に居るペット等にとっては、例えば寄りかかったり、顎を載せてリラックスして眠る時の快適な枕部となる等の二次的な機能もある。5は冷却/加温手段の吸気口で、通常埃やペット等の抜け毛等による目詰まりで吸気機能が低下しないよう筐体の側面部や底部の隙間等にも開口する。6は冷却/加温手段の排気口で、吸気口5と共に格子状の窓を設けて空気の流入流出に障害とならず、かつ小型のペット等が手足を差し込めない開口とする配慮が成されている。7は直流電源用コードとコネクターで、汎用直流電源装置(図示説明は省略)から所定の電圧電流、例えば12V3Aの直流を受電する。
【0008】図2は動物用マットの構造を示す断面図である。この説明では、例えば冷却の場合として述べる。各符号は図1と同じであるが、8は熱電変換素子(ペルチェ素子)である。コネクター7から所定の直流が供給されるとマット2側を冷却する極性に結線する。9は熱伝導率の高いアルミ材を用いた熱伝導部材で、熱電変換素子8に熱伝導良く接続させてある。効率良く熱伝導接続する手法には、ネジと伝熱グリスを用いた機械的圧接法や例えばエポキシ系の伝熱接着剤による方法等があるが、これは従来の技術で良く接続部位に応じて使い分けることとして個々の説明は省略する。熱伝導部材9のもう一方は、やはり熱伝導良く接続させた放熱フィン10と組合わせる。マット2、熱伝導部材9、熱電変換素子8、放熱フィン10の各部間は断熱と機械的強度を得る目的で断熱部3のコルク材等で一体化構成する。熱伝導部材9は本実施例では2分割して、熱電変換素子8を挟み込む構造としている。これはマット2、熱電変換素子8、放熱フィン10を効率良く熱伝導接続するための介在部であって、マット2と熱電変換素子8の接続部の形状、熱電変換素子8と放熱フィン10の接続部の形状によっては、熱伝導部材9の片方または両方を介在せず直接接続する構成とすることもできる。
【0009】続いて図3の回路図と併せて説明すると、11は冷却ファンで、コネクター7から所定の例えば12V直流電源が供給されると、吸気口5から外気を吸入し、放熱フィン10、排気口6の方向に空気流を発生する極性に結線する。マット2の下面にサーモスタット12が熱伝導良く接続してある。サーモスタット12の規格は、例えばマット2の温度が33℃以下になると電源回路をOFFにして、熱電変換素子8、冷却ファン11の作動を停止してマット面の冷え過ぎを制御するものとする。そして室内空気温度、ペット等の体温によってマット面が温度上昇すると、再びサーモスタット12がONとなって、熱電変換素子8、冷却ファン11等を備えた冷却手段が作動を繰り返す。」

(4)「【0012】また上記実施例の説明では冷却の場合としたが、冷却/加温手段が熱電変換素子(ペルチェ素子)方式であるため、当該素子への電流の極性を反転させると、マット2面を加温し、いわゆる暖房マットとすることができる。この場合、熱移動が逆であること、サーモスタット12の規格を変更すること、図4の比較回路16の入力信号の極性を逆にする等の他は同様であるので説明の詳細は省略する。」

(5)「【0017】図9は他の実施例である。人の出入りの特に激しい部屋や速い空気流に常に曝されている場所では、ペット等が精神的に不安定になるばかりでなく、マット2面の温度制御が設定どおりにならない場合がある。18はカプセルであり、プラスチック板あるいは金属の骨組みと塩化ビニルシート等の材料で構成する。カプセル18はペット等の出入口用の開口部を壁面に1箇所または適当数設けてあるが、床の無いドーム形状を基本としている。これをマット2面上におおい被せて使用する。このようにカプセル18は風防の効果を発揮する。マット2面に冷/温熱面があるため、カプセル18によって本来の機能が損なわれる事がなく、神経質なペット等に必要な囲いを与えることができる。また上記の何れの実施例の動物用マットにも用いることができる。」

(6)「【0020】・・・。
【発明の効果】・・・。請求項18の発明による効果は、請求項1?17の温度調節ができる動物用マットにおいて、マットの上部に配置するカプセルをさらに備えて、風通しの激しい場所でも当該動物用マットの機能を発揮でき、また従来の箱形状の犬舎等としても使用できる温度調節ができる動物用マットを構成したことである。・・・。」

(7)上記記載事項(1)、(3)を参照すると、冷却の場合、マット2側を冷却する極性に結線するから、マット2と冷却できる手段と加温できる手段(以後、「冷却/加温手段」という。)を備えた装置を接続する熱伝導部材9は熱電変換素子(ペルチェ素子)8(以後、「ペルチェ素子8」という。)の吸熱側に接続され、ペルチェ素子8の放熱側に放熱フィン10が接続されることが明らかである。また、記載事項(1)、(3)を参照して特に図2、5をみると、上記熱伝導部材9は、マット2の一部に当接しており、放熱フィン10は板状であることが明らかである。

これら記載事項及び図面の記載から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「熱伝導体のマット2と熱伝導部材9で接続される、温度調節ができる動物用マットに用いられる冷却/加温手段を備えた装置であって、ペルチェ素子8と、当該ペルチェ素子8と熱伝導部材9を介して熱伝導接続する放熱フィン10と、当該放熱フィン10に空気流を発生する冷却ファン11と、所定の直流が供給される直流電源用コードとコネクター7を用い、マット2の上面部を床の要所として、マット2の上部にカプセル18を配置して従来の箱形状の犬舎としても使用でき、上記マット2と冷却/加温手段を備えた装置を接続する熱伝導部材9は、熱伝導率の高いアルミ材を用い、マット2の一部に当接しており、冷却の場合は、マット2側を冷却する極性に結線するから、該熱伝導部材9はペルチェ素子8の吸熱側に接続され、ペルチェ素子8の放熱側に板状の放熱フィン10が接続され、また、マット2面を加温し、いわゆる暖房マットとする場合は、素子への電流の極性を反転させる、温度調節ができる動物用マットに用いられる冷却/加温手段を備えた装置。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「動物用マットに用いられる冷却/加温手段を備えた装置」は、本願発明の「ペット用冷暖房装置」に相当し、同様に、
「箱形状の犬舎」として使用した場合の「マット2」は「ペットの」「飼育ケース」の「底の一部面」に、
「熱伝導率の高いアルミ材を用い、マット2」「に当接」は「当接された床面を熱伝導で熱を伝導させることができる」に、
「熱伝導部材9」は「熱伝導板」に、
「板状の放熱フィン10」は「放熱板」に、
「所定の直流が供給される直流電源用コードとコネクター7」は「ペルチェ素子の駆動装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における、冷却の場合の、「熱伝導部材9は」「ペルチェ素子8」の「吸熱側に接続され」、「放熱側に板状の放熱フィン10」が「接続され」は、本願発明の「熱伝導板に」「ペルチェ素子」の「吸熱側を取り付け」、「放熱側に」「放熱板」を「取り付け」に相当する。

したがって、両者は、次の点で一致している。
(一致点)
「ペットの飼育ケースの底面の一部に当接させ、該当接された床面を熱伝導で熱を伝導させることができる熱伝導板と、この熱伝導板に吸熱側を取り付けたペルチェ素子と、このペルチェ素子の放熱側に取り付けた放熱板と、前記ペルチェ素子の駆動装置とからなるペット用冷暖房装置。」

そして、次の点で相違している。
(相違点)
放熱板について、本願発明では、ファンを用いないのに対し、引用発明では、ファンを用いている点。

第5 判断
ペルチェ素子を用いた熱交換装置において、放熱用のファンを用いないことは、例えば、特開2000-216445号公報(【0027】参照)、特開2001-133074号公報(【0021】参照)、特開平7-253264号公報(【0013】参照)のように、本願出願前から周知の技術であり、自然対流で放熱できれば、放熱用のファンは必ずしも必要としないことは広く知られていることである。
一方、引用発明のペット用冷暖房装置は、ペット用故、装置規模も大きくなく、温度調整幅もさほど大きくないから、放熱量もさほど大きくないことは明らかである。
そうすると、放熱量がさほど大きくない引用発明において、前記周知技術を採用し、放熱板にファンを用いないようにすること、すなわち前記相違点に係る本願発明の構成にすることは当業者なら容易になし得ることである。
そして、本願発明の効果は、引用発明及び周知の技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-03 
結審通知日 2015-03-10 
審決日 2015-03-24 
出願番号 特願2008-150469(P2008-150469)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 靖典  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 竹村 真一郎
本郷 徹
発明の名称 ペット用冷暖房装置  

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