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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1300866 |
審判番号 | 不服2013-15839 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-08-15 |
確定日 | 2015-05-11 |
事件の表示 | 特願2011- 68484「ストレージシステムの自動セットアップ方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-203709〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成23年3月25日の出願であって,平成24年5月11日付けで審査請求がなされ,平成25年2月27日付けで拒絶理由通知(同年3月1日発送)がなされ,同年4月25日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,同年5月15日付けで拒絶査定(同年5月17日謄本送達)がなされたものである。 これに対して,「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,平成25年8月15日付けで本件審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされた。 そして,平成25年9月12日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ,同年11月28日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年11月29日発送)がなされ,平成26年1月28日付けで回答書の提出があったものである。 第2 平成25年8月15日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年8月15日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 ア 平成25年8月15日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成25年4月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4の記載 「 【請求項1】 サーバとストレージとがデータ通信用ネットワークを介して相互に接続されたストレージシステムにおいて、 前記サーバと前記ストレージとを相互に接続するセットアップ専用ネットワークであって、当該セットアップ専用ネットワークは前記データ通信用ネットワークとは異なるネットワークである、セットアップ専用ネットワークと、 前記サーバに接続される外部記憶装置と、 を備え、 前記外部記憶装置は、ストレージシステムをセットアップするための一連の手続を行うプログラムが格納され、 前記セットアップ専用ネットワークは、前記サーバ及び前記ストレージが前記データ通信用ネットワークを介してデータ通信するための、前記サーバ及び前記ストレージの固有情報を交換する、 ことを特徴とするストレージシステム。 【請求項2】 前記外部記憶装置が前記サーバに接続されることに応答して、前記プログラムが実行され、ストレージシステムのセットアップが行われることを特徴とする請求項1に記載のストレージシステム。 【請求項3】 サーバとストレージとがデータ通信用ネットワークを介して相互に接続されたストレージシステムをセットアップする方法であって、 前記サーバと前記ストレージとがセットアップ専用ネットワークに接続されるステップであって、当該セットアップ専用ネットワークは前記データ通信用ネットワークとは異なるネットワークである、ステップと、 前記サーバが外部記憶装置に接続されるステップと、 前記外部記憶装置に格納された、ストレージシステムをセットアップするための一連の手続を行うプログラムが実行されるステップと、 前記セットアップ専用ネットワークが、前記サーバ及び前記ストレージが前記データ通信用ネットワークを介してデータ通信するための、前記サーバ及び前記ストレージの固有情報を交換するステップと、 を備えることを特徴とする方法。 【請求項4】 前記ストレージシステムをセットアップするための一連の手続を行うプログラムが実行されるステップは、前記外部記憶装置が前記サーバに接続されることに応答して、前記プログラムが実行されることを特徴とする請求項3に記載の方法。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。) を, 「 【請求項1】 サーバとストレージとがデータ通信用ネットワークを介して相互に接続されたストレージシステムにおいて、 前記サーバと前記ストレージとを相互に接続するセットアップ専用ネットワークであって、当該セットアップ専用ネットワークは前記データ通信用ネットワークとは異なるネットワークである、セットアップ専用ネットワークと、 前記サーバに接続される外部記憶装置と、 を備え、 前記外部記憶装置は、ストレージシステムをセットアップするための一連の手続を行うプログラムが格納され、 前記セットアップ専用ネットワークは、前記サーバ及び前記ストレージが前記データ通信用ネットワークを介してデータ通信するための、前記サーバ及び前記ストレージの固有情報を交換し、 前記外部記憶装置が前記サーバに接続されることに応答して、前記プログラムが実行され、前記ストレージシステムのセットアップが行われる、 ことを特徴とするストレージシステム。 【請求項2】 前記外部記憶装置が前記サーバに接続されることに応答して実行される前記プログラムにより、 前記セットアップ専用ネットワークの通信用の制御ソフトウェアと、前記データ通信用ネットワークの通信用の制御ソフトウェアとが、前記サーバにインストールされ、 前記サーバ及び前記ストレージの固有情報が前記セットアップ専用ネットワーク経由で交換され、前記サーバの固有情報が前記ストレージに登録され、前記ストレージの固有情報が前記サーバに登録され、 前記登録後、前記ストレージに論理ディスクが作成され、前記サーバが前記データ通信用ネットワークを経由して前記論理ディスクにアクセスできるように設定され、 前記データ通信用ネットワークが複数のパスで構成される場合に、障害発生時に自動的にアクセスパスの代替を行うことを可能にするマルチパスソフトウェアがイントールされる、 ことによって、前記ストレージシステムのセットアップが行われることを特徴とする請求項1に記載のストレージシステム。 【請求項3】 サーバとストレージとがデータ通信用ネットワークを介して相互に接続されたストレージシステムをセットアップする方法であって、 前記サーバと前記ストレージとがセットアップ専用ネットワークに接続されるステップであって、当該セットアップ専用ネットワークは前記データ通信用ネットワークとは異なるネットワークである、ステップと、 前記サーバが外部記憶装置に接続されるステップと、 前記外部記憶装置に格納された、ストレージシステムをセットアップするための一連の手続を行うプログラムが実行されるステップと、 前記セットアップ専用ネットワークが、前記サーバ及び前記ストレージが前記データ通信用ネットワークを介してデータ通信するための、前記サーバ及び前記ストレージの固有情報を交換するステップと、 を備え、 前記ストレージシステムをセットアップするための一連の手続を行うプログラムが実行されるステップは、前記外部記憶装置が前記サーバに接続されることに応答して、前記プログラムが実行されることを特徴とする方法。 【請求項4】 前記外部記憶装置が前記サーバに接続されることに応答して実行される前記プログラムにより、 前記セットアップ専用ネットワークの通信用の制御ソフトウェアと、前記データ通信用ネットワークの通信用の制御ソフトウェアとが、前記サーバにインストールされ、 前記サーバ及び前記ストレージの固有情報が前記セットアップ専用ネットワーク経由で交換され、前記サーバの固有情報が前記ストレージに登録され、前記ストレージの固有情報が前記サーバに登録され、 前記登録後、前記ストレージに論理ディスクが作成され、前記サーバが前記データ通信用ネットワークを経由して前記論理ディスクにアクセスできるように設定され、 前記データ通信用ネットワークが複数のパスで構成される場合に、障害発生時に自動的にアクセスパスの代替を行うことを可能にするマルチパスソフトウェアがイントールされる、 ことによって、前記ストレージシステムのセットアップが行われる ことを特徴とする請求項3に記載の方法。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。なお,下線は,補正箇所を示すものとして,出願人が付与したものである。) に補正するものである。 イ そして,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。 2 補正の目的要件 次に,本件補正が,特許法17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。 ア 本件補正は,その記載内容からして,特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的として,補正前の請求項1及び請求項3を削除し,補正前の請求項2及び請求項4を,それぞれ,補正後の請求項1及び請求項3としたものであると認められる。 イ そして,補正後の請求項2及び請求項4は,補正後の請求項1及び請求項3に記載されている「プログラム」の詳細内容に関する,新たな請求項を追加する補正であり,上記特許法第17条の2第5項に規定する何れかを目的としたものであるとは認められない。 ウ したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 独立特許要件 以上のように,本件補正は,「2 補正の目的要件 」で指摘したとおり,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが,仮に,本件補正が,特許法第17条の2第5項第2号の限定的減縮に該当すると仮定した場合に,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか),以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,前記「1 補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次の記載のとおりのものである。 「サーバとストレージとがデータ通信用ネットワークを介して相互に接続されたストレージシステムにおいて、 前記サーバと前記ストレージとを相互に接続するセットアップ専用ネットワークであって、当該セットアップ専用ネットワークは前記データ通信用ネットワークとは異なるネットワークである、セットアップ専用ネットワークと、 前記サーバに接続される外部記憶装置と、 を備え、 前記外部記憶装置は、ストレージシステムをセットアップするための一連の手続を行うプログラムが格納され、 前記セットアップ専用ネットワークは、前記サーバ及び前記ストレージが前記データ通信用ネットワークを介してデータ通信するための、前記サーバ及び前記ストレージの固有情報を交換し、 前記外部記憶装置が前記サーバに接続されることに応答して、前記プログラムが実行され、前記ストレージシステムのセットアップが行われる、 ことを特徴とするストレージシステム。」 (2)引用文献 (2-1)引用文献1 ア 原審の拒絶の査定の理由である上記平成25年2月27日付けの拒絶理由通知において引用され,本願の出願前に頒布された文献である,特開2005-63229号公報(平成17年3月10日出願公開。以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A 「【請求項3】 それぞれが、ネットワークを介して接続されているディスプレイやキーボードや演算装置などのデバイスを通信チャネルで接続することにより構成される、複数のコンピュータシステムにおいて、前記各演算装置が微小な電力無線によって近隣のコンピュータシステムと情報交換可能な狭範囲通信機能を有し、該狭範囲通信機能によって複数の演算装置間でそれぞれのネットワーク上のアドレスを交換して、演算装置相互間の通信チャネルを確立し、前記それぞれのネットワークを介して、あるいは前記狭範囲通信機能を介して、あるコンピュータシステムの演算装置上で動作しているプログラムとそれに付随するデータとからなるエージェントを、当該演算装置と通信チャネルを確立した別の演算装置に移動させることで、前記あるコンピュータシステムの演算装置が提供していたサービスを前記別の演算装置で継続して実行することを特徴とするコンピュータシステムのサービス提供方法。」 B 「【0021】 図1は本発明の請求項1?2を説明するためのシステム構成図である。1?4は、ネットワークを介して接続されるコンピュータデバイス群であって、これらのデバイスが、例えば前記参考文献1や2等の方法により確立される通信チャネル:5で接続されることでコンピュータシステムを構成する。1は演算装置、2はディスプレイ、3は記憶装置、4はキーボードといったデバイスである。図1は、演算装置:1-1とデバイス:2?4が通信チャネル:5-1で接続され、演算装置:1-1におけるプログラムとそのデータからなるエージェント:10によってあるサービスが実行されている状態を示しているものとする。」 C 「【0026】 図3の1?4は、ネットワークを介して接続されているデバイス群であって、これらのデバイスが通信チャネル:5で接続されることでコンピュータシステムを構成する。1は演算装置、2はディスプレイ、3は記憶装置、4はキーボードといったデバイスである。図3は、演算装置:1-1とデバイス:2?4がローカルネットワーク:15-1に収容され、通信チャネル:5-1で接続され、演算装置:1-1におけるエージェント:10によってあるサービスが実行されている状態を示しているものとする。 【0027】 演算装置:1-2は、前記演算装置:1-1とは異なるローカルネットワーク:15-2に接続され、ローカルネットワーク:15-1とローカルネットワーク:15-2は、グローバルネットワーク:15-3に接続されている。また、本例における演算装置:1び1-2は、赤外線や微小電力無線による通信を行うことができる狭範囲通信装置:7-1及び7-2をそれぞれ備え、これらの通信装置により演算装置:1-1と1-2との間でそれぞれのネットワーク上のアドレスを交換して演算装置相互間の通信チャネル:6が確立されている。」 D 「【0028】 次いで、図4のフローを参照して動作の流れを説明する。 【0029】 まず、演算装置:1-1と演算装置:1-2における狭範囲通信装置:7-1と7-2を経由する通信チャネル:6により、これら両演算装置間にてそれぞれの演算装置のネットワーク上のアドレスを交換し(ステップS11)、演算装置:1-1と演算装置:1-2との間の、ローカルネットワーク:15-1及び15-2とグローバルネットワーク15-3を経る通信チャネル:5-3を確立する(ステップS12)。」 イ 上記Bで「参考文献1」として引用され,本願の出願前に頒布された文献である,特開2004-242023号公報(平成16年8月26日出願公開。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) E 「【0020】 次いで、図2のフローチャートを参照して、キーボード14と演算装置13とを例にして、これらのデバイス間に通信チャネルを確立する動作手順を説明する。 ・・・(中略)・・・ 【0024】 前記図2の手順を記憶装置11と演算装置13、及びディスプレイ12と演算装置13にも行うことで図1のようなコンピュータシステム10を構成する。」 ウ ここで,上記引用文献1に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Bの「1?4は、ネットワークを介して接続されるコンピュータデバイス群であって、これらのデバイスが、例えば前記参考文献1・・・の方法により確立される通信チャネル:5で接続されることでコンピュータシステムを構成する」との記載,上記Eの「キーボード14と演算装置13とを例にして、これらのデバイス間に通信チャネルを確立する動作手順を説明する・・・前記図2の手順を記憶装置11と演算装置13、及びディスプレイ12と演算装置13にも行うことで図1のようなコンピュータシステム10を構成する」との記載,上記Cの「図3の1?4は、ネットワークを介して接続されているデバイス群であって、これらのデバイスが通信チャネル:5で接続されることでコンピュータシステムを構成する。1は演算装置、2はディスプレイ、3は記憶装置、4はキーボードといったデバイスである」との記載からすると,引用文献1の各デバイス(演算装置,ディスプレイ,記憶装置,キーボード)間で通信チャネルを確立する動作においては,各デバイスは同等の動作をするものと認められる。 (イ)上記(ア)の検討内容,上記Aの記載からすると,引用文献1には, “それぞれが,ネットワークを介して接続されている演算装置や記憶装置などのデバイスを通信チャネルで接続することにより構成される,コンピュータシステムにおいて, 前記各デバイスが無線によって近隣のコンピュータシステムと情報交換可能な狭範囲通信機能を有し,該狭範囲通信機能によってデバイス間でそれぞれのネットワーク上のアドレスを交換して,デバイス相互間の通信チャネルを確立する, ことを特徴とするコンピュータシステム” が記載されているものと解される。 (ウ)上記(イ)の「それぞれが,ネットワークを介して接続されている演算装置などのデバイスを通信チャネルで接続することにより構成される,コンピュータシステム」との記載からすると,引用文献1には, “ネットワークを介して相互に接続されている演算装置などのデバイスにより構成されるコンピュータシステム” が記載されていると解される。 (エ)上記(イ)の検討内容,上記Cの「演算装置:1-2は、前記演算装置:1-1とは異なるローカルネットワーク:15-2に接続され、ローカルネットワーク:15-1とローカルネットワーク:15-2は、グローバルネットワーク:15-3に接続されている」との記載からすると,引用文献1には, “デバイス間を相互に接続するローカルネットワーク及びグローバルネットワーク” を備える態様が記載されていると解される。 (オ)上記(イ)の「前記各デバイスが無線によって近隣のコンピュータシステムと情報交換可能な狭範囲通信機能を有し,該狭範囲通信機能によってデバイス間でそれぞれのネットワーク上のアドレスを交換して,デバイス相互間の通信チャネルを確立」との記載からすると,引用文献1には, “デバイス間を無線によって相互に接続する通信チャネル(以下,「狭範囲無線ネットワーク」という。)” を備える態様が記載されていると解される。 (カ)上記(イ)及び(オ)の検討内容,上記Dの「演算装置:1-1と演算装置:1-2における狭範囲通信装置:7-1と7-2を経由する通信チャネル:6により、これら両演算装置間にてそれぞれの演算装置のネットワーク上のアドレスを交換し(ステップS11)、演算装置:1-1と演算装置:1-2との間の、ローカルネットワーク:15-1及び15-2とグローバルネットワーク15-3を経る通信チャネル:5-3を確立する」との記載からすると,引用文献1には, “狭範囲無線ネットワークは,各デバイスがローカルネットワーク及びグローバルネットワークを介した通信チャネルを確立するための,前記各デバイスのネットワークアドレスを交換する” 態様が記載されていると解される。 エ 以上,(ア)ないし(カ)で指摘した事項を踏まえると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ネットワークを介して相互に接続されている演算装置や記憶装置などのデバイスにより構成されるコンピュータシステムにおいて, 前記デバイス間を相互に接続するローカルネットワーク及びグローバルネットワークと, 前記デバイス間を無線によって相互に接続する狭範囲無線ネットワークと, を備え, 前記狭範囲無線ネットワークは,前記各デバイスが前記ローカルネットワーク及び前記グローバルネットワークを介した通信チャネルを確立するための,前記各デバイスのネットワークアドレスを交換する, ことを特徴とするコンピュータシステム。」 (2-2)引用文献2 ア 原審の拒絶の査定の理由である上記平成25年2月27日付けの拒絶理由通知において引用され,本願の出願前に頒布された文献である,特開2009-163563号公報(平成21年7月23日出願公開。以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) F 「【0033】 <役割設定に関わる問題> 上述したように、各コンピュータのディスク内容は基本的に一致している。しかしながら、複数のコンピュータに別々の役割を割り当て、それらを協働させる以上、各コンピュータに役割固有の情報(以下「役割設定情報」という)を与えなければならない。役割設定情報としては、たとえば、ホスト名、IPアドレスやゲートウェイアドレスなどのネットワーク設定、役割の種別を表す役割識別子、主位サーバか二次サーバかの別、ロードするモジュール、などが想定される。これらの役割設定情報については、役割ごと(あるいはコンピュータごと)に異なる内容にならざるを得ない。」 G 「【0037】 まず、各コンピュータに割り当てる役割に対応して、複数の外部記憶媒体を用意する。このとき、外部記憶媒体と役割とは一対一に対応させる。役割A用の外部記憶媒体、役割B用の外部記憶媒体、・・・という具合である。そして、それぞれの外部記憶媒体に、対応する役割に関わる情報と機能を集約する。具体的には、役割固有の情報である役割設定情報と、コンピュータに役割を割り当てる処理を実行する役割設定プログラムとを、各外部記憶媒体に格納する。役割設定プログラムには、上述した作業を自動化するための機能、すなわち、外部記憶媒体が取り付けられたコンピュータに対し役割設定情報を設定する機能と、その役割の実行に必要なデータ(プログラム含む)を当該コンピュータのディスクにコピーする機能と、をもたせる。 【0038】 これにより、たとえば、予備の(空の)コンピュータに「役割A」の外部記憶媒体を取り付けて役割設定プログラムを実行するだけで、当該コンピュータに役割Aをセットアップすることができる。また、あるコンピュータの役割をAからBに変更したい場合には、当該コンピュータから役割Aの外部記憶媒体を取り外し、代わりに役割Bの外部記憶媒体を取り付けて、役割設定プログラムを実行するだけでよい。また、故障したコンピュータから別のコンピュータへと外部記憶媒体を移動させるだけで、障害の復旧が可能となる。」 イ 上記F及びGの記載から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されているということができる。 “ネットワーク設定等の役割設定を行うプログラムを外部記憶媒体に格納し,当該外部記憶媒体をコンピュータに取り付けて当該プログラムを実行するだけで,当該コンピュータに必要な役割設定を行う”技術。 (2-3)引用文献3 原審の拒絶の査定の理由である上記平成25年2月27日付けの拒絶理由通知において引用され,本願の出願前に頒布された文献である,特開2005-216292号公報(平成17年8月11日出願公開。以下,「引用文献3」という。)には,関連する図面(特に図5)とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) H 「【0036】 本発明の一実施形態で、USBフラッシュドライブ508に、さらに、wireless.cfg 518などの自動実行(autorun)ファイルが格納される。USBフラッシュドライブ508が、自動実行ファイルを認識する互換装置に接続されると、wireless.cfg 518の検出によって、装置によるネットワークセットアッププログラム514の実行がトリガされる。このように、USBフラッシュドライブ508が接続された後に、ネットワーク設定を装置に転送するのに、ユーザ介入は必要ない。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア (ア)本件補正発明の「サーバ」と「ストレージ」は,いずれも「デバイス」といえるものである。 (イ)引用発明の「ローカルネットワーク及びグローバルネットワーク」は,本件補正発明の「データ通信用ネットワーク」に対応する。 (ウ)そうすると,引用発明と本件補正発明とは,“各デバイスがデータ通信用ネットワークを介して相互に接続されたシステム”である点で共通するといえる。 イ (ア)引用発明の「狭範囲無線ネットワーク」は,デバイス間の通信チャネルを確立(セットアップ)するために用いられるものであることから,本件補正発明の「セットアップ専用ネットワーク」に対応する。 (イ)また,引用発明の「狭範囲無線ネットワーク」は,上記Bの記載や引用文献1の図3の記載を参酌すると,「ローカルネットワーク及びグローバルネットワーク」とは異なるネットワークであることは明らかである。 (ウ)そうすると,引用発明と本件補正発明とは,“各デバイスを相互に接続するセットアップ専用ネットワークであって,当該セットアップ専用ネットワークは前記データ通信用ネットワークとは異なるネットワークである,セットアップ専用ネットワーク”を備える点で共通するといえる。 ウ (ア)引用発明の(各デバイスの)「ネットワークアドレス」は,各デバイスを識別するための情報といえるから,本件補正発明の(サーバ及びストレージの)「固有情報」に相当する。 (イ)そうすると,引用発明と本件補正発明とは,“セットアップ専用ネットワークは、各デバイスがデータ通信用ネットワークを介してデータ通信するための、前記各デバイスの固有情報を交換する”点で共通するといえる。 エ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 [一致点] 「各デバイスがデータ通信用ネットワークを介して相互に接続されたシステムにおいて, 前記各デバイスを相互に接続するセットアップ専用ネットワークであって,当該セットアップ専用ネットワークは前記データ通信用ネットワークとは異なるネットワークである,セットアップ専用ネットワーク, を備え, 前記セットアップ専用ネットワークは、前記各デバイスが前記データ通信用ネットワークを介してデータ通信するための、前記各デバイスの固有情報を交換する, ことを特徴とするシステム。」 [相違点1] ネットワークを介して相互に接続されるデバイスに関して,本件補正発明が,「サーバとストレージ」であるのに対して,引用発明は,「演算装置や記憶装置などのデバイス」である点。 [相違点2] セットアップ専用ネットワークに関して,本件補正発明が,特に限定がなされていない「セットアップ専用ネットワーク」であるのに対して,引用発明は,「狭範囲無線ネットワーク」を用いている点。 [相違点3] セットアップ専用ネットワークを用いたセットアップに関して,本件補正発明が,「サーバに接続される外部記憶装置」を備え,「前記外部記憶装置は、ストレージシステムをセットアップするための一連の手続を行うプログラムが格納され」,「前記外部記憶装置が前記サーバに接続されることに応答して、前記プログラムが実行され、前記ストレージシステムのセットアップが行われる」ことで,セットアップが実行されるものであるのに対して,引用発明は,狭範囲無線ネットワークを用いて,デバイス間の通信チャネルを確立する際に,どのようにして各デバイスのネットワークアドレスを交換するのか,特に明記されていない点。 (4)当審の判断 上記相違点1ないし相違点3について検討する。 ア 相違点1について (ア)上記Cに「図3の1?4は、ネットワークを介して接続されているデバイス群であって、これらのデバイスが通信チャネル:5で接続されることでコンピュータシステムを構成する。1は演算装置、2はディスプレイ、3は記憶装置、4はキーボードといったデバイスである」と記載されるように,引用発明の「デバイス」の態様として,演算装置,ディスプレイ,記憶装置,キーボードが考えられるところ,これらの中からどの態様のデバイスを採用するかについては,当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項にすぎない。 (イ)そうすると,引用発明においても,「デバイス」を,「演算装置と記憶装置」として構成すること,すなわち上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について (ア)引用発明においては,「セットアップ専用ネットワーク」として「狭範囲無線ネットワーク」を用いているが,セットアップ専用のネットワークとして,どのようなネットワークを用いるかは,当業者が必要に応じて適宜選択すべき事項である。 (イ)よって,上記相違点2は実質的な相違点とはいえないものである。 ウ 相違点3について (ア)引用文献2(上記F及びG等参照)に記載されるように,“ネットワーク設定等の役割設定を行うプログラムを外部記憶媒体に格納し,当該外部記憶媒体をコンピュータに取り付けて当該プログラムを実行するだけで,当該コンピュータに必要な役割設定を行う”技術は,本願出願前において,周知技術であった。 (イ)また,引用文献3(上記H等参照)に記載されるように,外部媒体(USBフラッシュドライブ)を接続するだけで,当該外部媒体に格納されているネットワーク設定プログラムが自動的に実行される技術についても,本願出願前において,周知技術であった。 (ウ)そして,引用発明においても,各デバイス間でネットワークアドレスを交換して通信チャネルを確立(セットアップ)する際に,何らかのネットワーク設定プログラムが実行されることは,当業者にとって自明の事項である。 (エ)してみると,引用発明においても,ネットワークを設定(セットアップ)するための一連のプログラムを外部記憶装置に格納しておき,当該外部記憶装置が演算装置などのデバイスに接続されることに応答して,当該外部記憶装置に格納されてあるプログラムが実行され,ネットワーク設定(セットアップ)が行われるように構成すること,すなわち上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 エ 小括 上記で検討したごとく,相違点1ないし相違点3は格別のものではなく,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本件補正発明は,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび ア 以上のとおり,本件補正は,上記「2 補正の目的要件」で指摘したとおり,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 イ また,仮に,本件補正が,特許法第17条の2第5項第2号の限定的減縮に該当すると仮定した場合であっても,上記「3 独立特許要件」で指摘したとおり,補正後の請求項1に記載された発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求の成否について 1 本願発明の認定 平成25年8月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成25年4月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「サーバとストレージとがデータ通信用ネットワークを介して相互に接続されたストレージシステムにおいて、 前記サーバと前記ストレージとを相互に接続するセットアップ専用ネットワークであって、当該セットアップ専用ネットワークは前記データ通信用ネットワークとは異なるネットワークである、セットアップ専用ネットワークと、 前記サーバに接続される外部記憶装置と、 を備え、 前記外部記憶装置は、ストレージシステムをセットアップするための一連の手続を行うプログラムが格納され、 前記セットアップ専用ネットワークは、前記サーバ及び前記ストレージが前記データ通信用ネットワークを介してデータ通信するための、前記サーバ及び前記ストレージの固有情報を交換する、 ことを特徴とするストレージシステム。」 2 引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献及びその記載事項は,前記「第2 平成25年8月15日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用文献」に記載したとおりである。 3 対比・判断 ア 本願発明は,前記「第2 平成25年8月15日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」で検討した本件補正発明から「前記外部記憶装置が前記サーバに接続されることに応答して、前記プログラムが実行され、前記ストレージシステムのセットアップが行われる」を削除したものである。 イ そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,上記「第2 平成25年8月15日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(3)対比」及び「(4)当審の判断」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-16 |
結審通知日 | 2015-03-17 |
審決日 | 2015-03-30 |
出願番号 | 特願2011-68484(P2011-68484) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(G06F)
P 1 8・ 571- Z (G06F) P 1 8・ 575- Z (G06F) P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 稲垣 良一、金子 秀彦 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
木村 貴俊 田中 秀人 |
発明の名称 | ストレージシステムの自動セットアップ方法 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 土屋 徹雄 |
代理人 | 内藤 和彦 |